説明

ヒートシンク付き半導体装置の製造方法

【課題】本発明の目的は、型締め処理時における金属異物発生の抑制、かつ、モールド金型の長寿命化を図ることが可能な、ヒートシンク付き半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子が集積された半導体チップが設置される上面を上向きにした状態で、ヒートシンク10を下側金型110のステージ111に載置する。ヒートシンク10の上面を上側金型120で押さえ付ける。その後、モールド樹脂止め用のスライド金型130をスライド移動させて、ステージ111上のヒートシンク10の側面に押し当てる。これにより、ヒートシンク10が樹脂モールドされる箇所と、ヒートシンク10が樹脂モールドされずに外部に露出する箇所との境界部分を、モールド金型100において確実に樹脂止めできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク付き半導体装置の製造方法に関し、より特定的には、ヒートシンクの一部をモールド樹脂などから露出させたパッケージを有した半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱する半導体素子を樹脂などでモールドして半導体装置を形成するには、高放熱型の半導体パッケージを使用する必要がある。この高放熱型の半導体パッケージの一例として、半導体素子が発生する熱を効率よく放出するために、一部分をモールド樹脂の外側に露出させたヒートシンク(放熱板)を備えたものがある。例えば、図6に示すヒートシンクを備えたシングル・インライン・パッケージ(HSIP)などが、高放熱型の半導体パッケージとして挙げられる。
【0003】
図6に示した一部分をモールド樹脂40の外側に露出させたヒートシンク10を備えた半導体パッケージを製造する場合、つまりヒートシンク10、半導体素子が集積された半導体チップ20、およびリード端子30を、金型を使用して樹脂モールド化する際には、モールド処理に用いる金型において次のことを考慮する必要がある。
具体的には、モールド樹脂40内に半導体チップ20と共に封入される(樹脂で覆われている)ヒートシンク10の一部分と、モールド樹脂40の外側に露出する(樹脂で覆われていない)ヒートシンク10の残る一部分との境界(図6における破線円の部分)で、確実に樹脂止め(樹脂の回り込み防止を)しなければならないということである。
【0004】
この確実な樹脂止めを行うため、従来の技術では、以下のような手法を用いている。例えば、特許文献1を参照。
図7は、従来のヒートシンク付き半導体装置の製造方法に用いられるモールド金型の下側金型510の一例を示した概略斜視図である。図8は、図7に示した下側金型510のステージ511に、半導体装置としてパッケージ化する各種部品、すなわちヒートシンク10、半導体チップ20、およびリード端子30を載置した状態を上面方向から見下ろした図である。
【0005】
図7および図8に示すように、従来の下側金型510には、ヒートシンク10が載置されるステージ511の側面に、先端間がヒートシンク10の横幅よりも狭い2つの突起部512を設けている。そして、従来の手法では、モールド処理の際にヒートシンク10をこの下側金型510のステージ511に嵌め込む。つまり、2つの突起部512の間にヒートシンク10を押し込んで双方を摺り合わせる(かじらせる)ことで、突起部512とヒートシンク10とを隙間なく密着させている。
【0006】
この手法により、従来の技術では、型締め処理完了後のモールド金型の注入口200から注入した樹脂600を突起部512の部分で堰き止めて、露出させるヒートシンク10の一部分側に樹脂600が回り込むことを防止している。図9は、図8の点線円Dを拡大した図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−61400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した下側金型510の2つの突起部512の間にヒートシンク10を押し込んで双方を摺り合わせることで、突起部512とヒートシンク10とを隙間なく密着させる従来の技術では、その間より幅が広いヒートシンク10を2つの突起部512の間に強引に押し込むため、ヒートシンク10側面の金属余肉がヒートシンク10の上面に飛び出して現れる。そして、従来の手法では、この金属余肉が現れた状態で上側金型(図示せず)を下側金型510と合わせて型締め処理を行うため、ヒートシンク10の上面に飛び出した金属余肉が上側金型によって潰されて、金属異物が生じてしまう。このような金属異物は、半導体チップ20やリード端子30などに接触して短絡不良を引き起こすおそれがある。
【0009】
また、上記従来の技術では、その間より幅が広いヒートシンク10を2つの突起部512の間に強引に押し込むため、モールド処理を何度も繰り返して行うと下側金型510の突起部512が摩耗して、突起部512とヒートシンク10との密着性が劣化する。従って、従来の技術では、モールド金型の寿命が短くなり頻繁にモールド金型を交換する必要があるため、金型コストが高価になるという問題も生じる。
【0010】
それ故に、本発明の目的は、型締め処理時における金属異物発生の抑制、かつ、モールド金型の長寿命化を図ることが可能な、ヒートシンク付き半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、半導体素子とヒートシンクとがパッケージ化された半導体装置の製造方法に向けられている。そして、上述した目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法では、半導体素子を集積した半導体チップが設置された上面を上向きにしたヒートシンクを第1の金型(下側金型)に載置し、この第1の金型に載置されたヒートシンクの上面を第2の金型(上側金型)で押さえ付け、この上面が押さえ付けられたヒートシンクの側面にモールド材料止め用の第3の金型(スライド金型)を押し当てて、ヒートシンクをモールド金型に固定する型締め工程、を含むことを特徴とする。
【0012】
第3の金型が押し当てられるヒートシンクの側面は、ヒートシンクがモールド封止される箇所と、ヒートシンクがモールドされずに露出する箇所との境界である。一般的には、上述した型締め工程が完了した後に、ヒートシンクが固定されたモールド金型の内部にモールド材料(樹脂など)を注入して、第3の金型が押し当てられたヒートシンクの側面までを、モールド材料で封止するモールド処理工程をさらに行うことで、半導体パッケージが完成する。
【0013】
かかる工程により、従来技術のように突起部によるヒートシンクの摺り合わせが必要なくなり、金属異物を発生させることなく、ヒートシンクがモールド封止される箇所と、ヒートシンクがモールドされずに外部に露出する箇所との境界部分を、確実に樹脂止めすることができる。たとえ、第3の金型によってヒートシンクの側面を押さえ付ける際に金属異物が生成されてしまったとしても、金属異物の生成前にすでに第2の金型によってヒートシンクの上面を押さえ付けているので、ヒートシンク上面の半導体チップが存在する領域内に金属異物が混入するおそれがない。よって、従来で発生していた金属異物が原因の短絡不良などを回避することができる。
【0014】
好ましくは、第2の金型によるヒートシンクの上面の押さえ付け動作に連動して、第3の金型によるヒートシンクの側面への押し当て動作が行われる。
この連動は、第2の金型に形成されるヒートシンクの上面に向かって傾斜する傾斜ピンと、第3の金型に形成される傾斜ピンと嵌合可能な孔部とを用い、第2の金型に形成された傾斜ピンを第3の金型に形成された孔部に挿入した状態で、第2の金型をヒートシンクの上面に近付けることで、第3の金型が連動してヒートシンクの側面に近付く動作を実現できる。
かかる構造により、モールド処理工程の型締め処理において、ヒートシンクの上面を押さえ付けた後、ヒートシンクの側面を押さえ付けるといった一連の動作を簡単に実現することができる。
【0015】
なお、第3の金型は、ヒートシンクの側面へ押し当てられる箇所に突起部が設けられていてもよい。
かかる形状により、第3の金型を従来のようにヒートシンクの側面へ摺り合わせることが可能となる。この場合、余肉の発生が懸念されるが、モールド処理工程の型締め処理においてヒートシンクの上面を押さえ付けた後にヒートシンクの側面を押さえ付けているため、ヒートシンクの側面を押さえ付けた際に生じた余肉から生まれる金属異物は、半導体チップがあるヒートシンクの上面に入り込むことがない。よって、金属異物が原因の短絡不良などを回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、金属異物の発生を抑制しつつ、ヒートシンクが樹脂などでモールドされて封止される箇所と、ヒートシンクが樹脂などでモールドされずに露出する箇所との境界部分を、モールド金型において確実に樹脂止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートシンク付き半導体装置の製造方法に用いられるモールド金型100の一例を示した概略斜視図
【図2】モールド金型100における、下側金型110およびスライド金型130のA−A線断面図と、上側金型120のB−B線断面図
【図3】下側金型110のステージ111に半導体装置としてパッケージ化する各種部品を載置した状態を上面方向から見下ろした図
【図4A】各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を説明した図
【図4B】各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を説明した図
【図4C】各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を説明した図
【図4D】各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を説明した図
【図4E】各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を説明した図
【図5A】スライド金型130が備える側面押さえ付け部132の形状例を示した図
【図5B】スライド金型130が備える側面押さえ付け部132の形状例を示した図
【図5C】スライド金型130が備える側面押さえ付け部132の形状例を示した図
【図6】高放熱型の半導体パッケージの一例を示した図
【図7】従来のヒートシンク付き半導体装置の製造方法に用いられるモールド金型の下側金型510の一例を示した概略斜視図
【図8】下側金型510のステージ511に半導体装置としてパッケージ化する各種部品を載置した状態を上面方向から見下ろした図
【図9】図8の点線円Dを拡大した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明が提供するヒートシンク付き半導体装置の製造方法は、樹脂などのモールド部材の外側に一部分を露出させたヒートシンクを備える様々なパッケージの半導体装置に適用可能である。下記の一実施形態では、本発明のヒートシンク付き半導体装置の製造方法を、適用可能な半導パッケージの1つである図6に示したヒートシンク付きシングル・インライン・パッケージ(HSIP)に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートシンク付き半導体装置の製造方法に用いられるモールド金型100の一例を示した概略斜視図である。
図1に示した本実施形態のモールド金型100は、第1の金型である下側金型110と、第2の金型である上側金型120と、第3の金型である2つのスライド金型130とで構成される。2つのスライド金型130は、部品形状が同じであり、下側金型110内部の対称的な格納位置112に、それぞれ下側金型110のモールドされる各種部品が載置されるステージ111と平行な横方向にスライド可能な状態で、組み込まれる。このスライド金型130が組み込まれる格納位置112は、ヒートシンクが樹脂などでモールドされて封止される箇所と、ヒートシンクが樹脂などでモールドされずに露出する箇所との境界となる、ヒートシンクの側面(図6中の点線円部分)に該当する位置である。また、下側金型110には、モールド用の樹脂などを注入するための注入口200が形成されている。
【0020】
図2は、図1に示した本実施形態のモールド金型100における、下側金型110およびスライド金型130のA−A線による断面図と、上側金型120のB−B線による断面図とを示した図である。この下側金型110およびスライド金型130のA−A線と、上側金型120のB−B線とは、下側金型110と上側金型120とを合わせた(型締め処理の)際に一致する線である。
【0021】
図2を用いて、上側金型120を説明する。
上側金型120は、金型ベース121と、上面押さえ付け部122と、スプリング部123と、アンギュラピン124とを備えている。上面押さえ付け部122およびスプリング部123は、下側金型110のステージ111に載置されたヒートシンクの上面を押さえ付ける上面押さえ機構を構成する。
【0022】
スプリング部123は、バネなどの弾性体である。図2では、コイル状のバネを使用した例を示しているが、この他にも渦巻き状のバネや板バネを使用してもよいし、ゴムを使用してもよい。
【0023】
上面押さえ付け部122は、直方体の部材(典型的には、金型ベース121と同じ金属材料)であり、金型ベース121に設けられた窪み部125に、スプリング部123を介して動作可能に装着される。この上面押さえ付け部122は、スプリング部123が伸縮していない定常状態では、ヒートシンクの上面を押さえ付ける平面部分が金型ベース121から突出し、この平面部分に圧力がかかるとスプリング部123が縮小して窪み部125内に全て格納される動作を行えるように、金型ベース121に装着されている。また、上面押さえ付け部122は、後述する図3で示すように、下側金型110の格納位置112がステージ111に接する場所を覆う位置に設けられる。
【0024】
アンギュラピン124は、下側金型110と合わされる金型ベース121の平面に対して所定の角度αを有して、金型ベース121の外周方向に傾斜する突起物であり、例えば断面が円形の直線棒である。このアンギュラピン124は、後述するスライド金型130に設けられる孔部135と協働して、下側金型110のステージ111に載置されたヒートシンクの側面方向にスライド金型130を移動させるスライド機構を構成する。なお、アンギュラピン124は、摩擦係数が小さい材料であることが好ましい。
【0025】
図2を用いて、スライド金型130を説明する。
スライド金型130は、金型ベース131と、側面押さえ付け部132と、第1のスプリング部133と、第2のスプリング部134とを備えている。金型ベース131には、上側金型120のアンギュラピン124が嵌入される孔部135が設けられている。この孔部135は、アンギュラピン124と同じ角度α、方向、および形状の傾斜で形成されている。
【0026】
第1のスプリング部133は、バネなどの弾性体である。図2では、コイル状のバネを使用した例を示しているが、この他にも渦巻き状のバネや板バネを使用してもよいし、ゴムを使用してもよい。なお、第2のスプリング部134も、第1のスプリング部133と同様にバネなどの弾性体であり、コイル状、渦巻き状、および板状のバネやゴムを使用することが可能である。
【0027】
金型ベース131は、側面押さえ付け部132を搭載するための基台であり、第1のスプリング部133を介して動作可能に下側金型110の格納位置112に設置される。この金型ベース131は、第1のスプリング部133が伸縮していない定常状態では、ヒートシンクを載置する下側金型110のステージ111から最も離れ、上側金型120と協働するスライド機構が作動すると第1のスプリング部133が縮小してステージ111に徐々に近付く動作を行えるように、下側金型110の格納位置112に設置される。
【0028】
側面押さえ付け部132および第2のスプリング部134は、下側金型110のステージ111に載置されたヒートシンクの側面を押さえ付ける側面押さえ機構を構成する。この側面押さえ付け部132は、第2のスプリング部134を介して動作可能に金型ベース131上に設置される。側面押さえ付け部132は、金型ベース131と連動して下側金型110のステージ111に近付き、最終的にはステージ111に載置されたヒートシンクの側面を押さえ付ける。
【0029】
次に、上述した構造による下側金型110、上側金型120、およびスライド金型130を用いた本発明の一実施形態に係るヒートシンク付き半導体装置の製造方法を、図3および図4A〜図4Eをさらに参照して説明する。
【0030】
図3は、図1に示した下側金型110のステージ111に、半導体装置としてパッケージ化する各種部品、すなわちヒートシンク10、半導体素子が集積された半導体チップ20、およびリード端子30(半導体チップ20にワイヤボンディング済み)を載置した状態を上面方向から見下ろした図である。
図4A〜図4Eは、図3に示した各種部品をステージ111に載置した下側金型110に上側金型120を合わせて締め付ける段階的な過程を、図3のC−C線による断面箇所に注目して説明した図である。
【0031】
まず、型締め処理前における下側金型110と上側金型120とは、図4Aに示す位置関係を有している。つまり、上側金型120に設けられているアンギュラピン124の先端の鉛直方向(図中の矢印)に、下側金型110に設けられている孔部135の挿入口が一致する位置関係である。
【0032】
図4Aに示す位置関係から、上側金型120を鉛直方向に徐々に下降させてゆくと、上側金型120に設けられているアンギュラピン124の先端が、下側金型110に設けられている孔部135の挿入口に入り込む(図4B)。このときはまだ、上面押さえ付け部122によるヒートシンク10の上面の押さえ付けも、側面押さえ付け部132によるヒートシンク10の側面の押さえ付けも、行われていない。
【0033】
図4Bに示す位置関係から、上側金型120を鉛直方向にさらに下降させて、アンギュラピン124が孔部135の奥に挿入されていくと、上面押さえ付け部122がヒートシンク10の上面に近付いていく。この上面押さえ付け部122の動きと共に、アンギュラピン124が有する傾斜によってスライド金型130の金型ベース131が下側金型110のステージ111側に押し出されるため、側面押さえ付け部132が横方向にスライドしてヒートシンク10の側面に近付いていく(図4C)。
【0034】
さらに、上側金型120が下降してアンギュラピン124の孔部135への挿入が進むと、上面押さえ付け部122がヒートシンク10の上面に当接する。また、側面押さえ付け部132は、横方向にスライドしてヒートシンク10の側面にさらに近付いていく(図4D)。
【0035】
最終的に、アンギュラピン124が孔部135に嵌入されると、上面押さえ付け部122はスプリング部123の圧力でヒートシンク10の上面を押さえ付ける。一方、側面押さえ付け部132は、ヒートシンク10の側面に当接して、第2のスプリング部134の圧力でヒートシンク10の側面を押さえ付ける(図4E)。
この手順により、上面押さえ付け部122および側面押さえ付け部132によって樹脂止め(樹脂の回り込み防止)構造が形成され、モールド金型100の型締め処理が完了する。
【0036】
そして、この型締め処理が完了したモールド金型100の注入口200から樹脂などを注入して各種部品をモールドし、HSIP形状にパッケージ化された半導体装置が完成する(図6を参照)。
【0037】
以上のように、本発明の一実施形態に係るヒートシンク付き半導体装置の製造方法によれば、上側金型120を下側金型110に合わせるという1つの作業で、最初に上面押さえ付け部122によってヒートシンク10の上面を押さえ付け、続いて側面押さえ付け部132によってヒートシンク10の側面を押さえ付ける、という一連の動作を連続して行う。
これにより、従来の技術のように金属異物を発生させることもなく、ヒートシンク10が樹脂などでモールドされて封止される箇所と、ヒートシンク10が樹脂などでモールドされずに外部に露出する箇所との境界部分を、モールド金型100において確実に樹脂止めすることができる。
【0038】
たとえ、側面押さえ付け部132によってヒートシンク10の側面を押さえ付ける際に金属異物が生成されてしまったとしても、金属異物の生成前にすでに上面押さえ付け部122によってヒートシンク10の上面を押さえ付けているので、ヒートシンク10の上面における半導体チップ20が存在する領域内に金属異物が混入するおそれがない。よって、従来で発生していた金属異物が原因の短絡不良などを回避することができる。
【0039】
なお、スライド金型130が備える第1のスプリング部133および第2のスプリング部134は、それぞれ省略することが可能である。
第1のスプリング部133を省略する場合は、スライド金型130がヒートシンク10を載置する下側金型110のステージ111から自動的に離れないため、モールド金型100の型締め処理を行う前に手動でスライド金型130を動かしておく必要がある。
第2のスプリング部134を省略する場合は、アンギュラピン124と孔部135とで生じる圧力が下側金型110のステージ111に載置されるヒートシンク10の側面にそのまま加わるため、ヒートシンク10の変形や金属異物の発生に注意する必要がある。
【0040】
また、スライド金型130が備える側面押さえ付け部132の形状は、基本的に下側金型110のステージ111に載置されるヒートシンク10の側面形状に合わせて決定される。
【0041】
例えば、図5Aに示すように、ヒートシンク10の側面形状が直角である場合には(図5A(a)の矢印部分)、側面押さえ付け部132の形状を、L字断面の多面体(図5A(b))で構成すればよい。また、樹脂止めを面領域ではなく線領域で行いたい場合には、側面押さえ付け部132の形状を、ヒートシンク10の側面に接触する部分に突起部136をさらに設けた形状の多面体(図5A(c))で構成してもよい。
【0042】
また、図5Bに示すように、ヒートシンク10の側面が面取りされた形状である場合には(図5B(a)の矢印部分)、側面押さえ付け部132の形状を、直角部分を面取り形状に合わせて傾斜させたL字断面の多面体(図5B(b))で構成すればよい。また、樹脂止めを面領域ではなく線領域で行いたい場合には、側面押さえ付け部132の形状を、ヒートシンク10の側面および面取り箇所に接触する部分に突起部136をさらに設けた形状の多面体(図5B(c))で構成してもよい。なお、側面押さえ付け部132のヒートシンク10の面取り箇所に接触する部分だけに、突起部136を設けてもよい(図示せず)。
【0043】
さらに、図5Cに示すように、ヒートシンク10の側面が丸め込みされた形状である場合には(図5C(a)の矢印部分)、側面押さえ付け部132の形状を、直角部分を丸め込み形状に合わせて湾曲させたL字断面の多面体(図5C(b))で構成すればよい。また、樹脂止めを面領域ではなく線領域で行いたい場合には、側面押さえ付け部132の形状を、ヒートシンク10の側面および丸め込み箇所に接触する部分に突起部136をさらに設けた形状の多面体(図5C(c))で構成してもよい。なお、側面押さえ付け部132のヒートシンク10の丸め込み箇所に接触する部分だけに、突起部136を設けてもよい(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の製造方法は、ヒートシンク付き半導体装置を製造する場合等に利用可能であり、特にヒートシンクの一部をモールド樹脂などから露出させたパッケージを有した半導体装置を製造する場合等に有用である。
【符号の説明】
【0045】
10 ヒートシンク
20 半導体チップ
30 リード端子
40 モールド樹脂
100 モールド金型
110、510 下側金型
111、511 ステージ
112 格納位置
120 上側金型
121、131 金型ベース
122 上面押さえ付け部
123、133、134 スプリング部
124 アンギュラピン
125 窪み部
130 スライド金型
132 側面押さえ付け部
135 孔部
136、512 突起部
200 注入口
600 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子とヒートシンクとがパッケージ化された半導体装置の製造方法であって、
第1の金型に載置された前記ヒートシンクを、前記半導体素子を集積した半導体チップが設置された上面から第2の金型で押さえ付け、
前記上面が押さえ付けられた前記ヒートシンクの側面にモールド材料止め用の第3の金型を押し当てて、前記ヒートシンクをモールド金型に固定する、
型締め工程を含んだ、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の金型による前記ヒートシンクの上面の押さえ付け動作に連動して、前記第3の金型による前記ヒートシンクの側面への押し当て動作が行われることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の金型には、前記ヒートシンクの上面に向かって傾斜する傾斜ピンが形成され、
前記第3の金型には、前記傾斜ピンと嵌合可能な孔部が形成されており、
前記第2の金型に形成された前記傾斜ピンを前記第3の金型に形成された前記孔部に挿入した状態で、前記第2の金型を前記ヒートシンクの上面に近付けることで、前記第3の金型が連動して前記ヒートシンクの側面に近付くことを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第3の金型は、前記ヒートシンクの側面へ押し当てられる箇所に突起部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3の金型が押し当てられる前記ヒートシンクの側面は、前記ヒートシンクがモールド封止される箇所と、前記ヒートシンクがモールドされずに露出する箇所との境界であることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ヒートシンクが固定された前記モールド金型の内部にモールド材料を注入して、前記第3の金型が押し当てられた前記ヒートシンクの側面までを、モールド材料で封止するモールド処理工程をさらに含む、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−89908(P2013−89908A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231937(P2011−231937)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】