説明

ヒートシンク

【課題】プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、厚さ方向に熱伝導素材が配向され、熱伝導率の良好なヒートシンクを提供する。
【解決手段】連続供給される芯材11が熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した材料の配向方向を誘導し、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーの配向を均一化させ、また、熱伝導性フィラーは繊維長0.1mm乃至12mmと長いことから、熱伝導性フィラーの配向を単一化することができ、熱伝導特性に合った配向が得られる。そして、前記ストランド30Aは、押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断したものであるから、ストランド30Aの列が特定でき、配向特性を整理し易く、一次成型体のみならず目的の成形体として特定方向に熱伝導状態を良好とすることができる。更に、材料的に軽量であり、かつ、加工性に富むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の熱源の放熱特性を良好にするヒートシンク(Heat sink)に関するものである。ここで、ヒートシンクとは、発熱する機械部品、電気部品に取付けて、熱の放散によって対象物の温度を下げる部品であり、放熱器とか、板状のものを放熱板、冷却フィン等と呼ばれている広義の冷却部品、放熱部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のみを見ても、車両に搭載される電子部品数は増加の一途にあり、かつ、小型化、高性能化に伴いその発熱量が高くなってきている。電子部品の発熱量が高くなると、電子部品の温度が上昇し、電子部品が熱により破損する可能性があることから、放熱設計が重要になっている。一般には、電子部品の放熱のために、アルミニウム等で作られたヒートシンクを密着させている。また、電子部品とヒートシンクとの密着性を良くする方法として、熱伝導率の良い接着剤やグリス、シート等が一般的に知られている。
しかし、接着剤やグリスは電子部品とヒートシンクとの隙間をなくして伝熱できるが、熱伝導率が低く、数W/mkの値であったり、接着剤やグリスを硬化させるのに時間がかかったりする。
一方、熱伝導材料として使用する繊維としてカーボン繊維がある。銅やアルミニウム等の金属をこえる高い熱伝導素材であるカーボン繊維では、例えば、900W/mkや600W/mkという熱伝導率の高いものがある。
熱伝導率の高い石油ピッチ(Pitch)系のカーボン繊維は、PAN(Poly acrylo nitrile)系のカーボン繊維と比べるともろい繊維であり、熱伝導率の高い繊維になると更にもろいものとなり、通常、ガラス繊維やカーボン繊維、アラミド繊維を配向させる方法として知られ、量産化に適するプルトルージョン成形(引抜成形)技術では、成形は困難とされている。
【0003】
特許文献1では、異方性を有する熱伝導性の無機粉末を含有してなる合成樹脂組成物を、複数の構造からなる押出金型を通過させて配向を行うものであり、合成樹脂組成物は押出金型内に設けられた複数のスリットまたは円または多角形形状を持つ流路を通過させることで、合成樹脂組成物内に配合された異方性を有する無機粒子をシートの厚さ方向に配向させ、引き続き、押出金型内に設けた圧縮エリアを通過させることで異方性を有する無機粒子の配向状態を乱すことなく成形させ、金型出口よりブロック体として押し出し、形成された成形体は合成樹脂に適した方法で硬化させた後、シートの幅方向で切断するものである。この成形体で形成れた放熱部材及びそのシートは、熱伝導性が高く、放熱部材として優れているから、特に、電子機器の放熱部品の製造に好適なものである。
【0004】
また、特許文献2の熱伝導性フィラーの配向方法では、厚さ方向に熱伝導性の良い異方性放熱シートの製造方法において、硬化させた後に弾性を有するゴムまたは合成樹脂を主成分とするバインダと熱伝導性フィラーとを混練し、この混練物を押出して、押出し方向にフィラーを配向させた後、硬化させて硬化物ブロックを作製し、その作成した硬化物ブロックをフィラーの配向方向と直角に、所定厚みにスライスして製作する放熱シートの製造方法により、押し出し時に広断面積貯留域から狭断面積吐出口を通して押出すことにより押出し方向にフィラーを配向させるものである。このように、混練物を押し出すにあたって広断面積貯留域から狭断面積吐出口を通して押し出すことにより、混練物にせん断変形を与えて混練物中の高密度の高熱伝導性フィラーを押出し方向に確実に配向させ、高価な装置を必要とすることなく熱伝導性の飛躍的に優れた放熱シートを得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−94110
【特許文献2】特開2005−303240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、合成樹脂と異方性を有する無機粉末を含有してなるシート状の放熱部材であり、この合成樹脂はシリコーン樹脂またはアクリル樹脂であり、また、異方性を有する無機粉末は、窒化ホウ素、黒鉛及び鱗片状または板状に加工した金属粉末であり、熱伝導率の高い熱伝導材料としてのカーボン繊維の使用については説明されていない。
また、上記特許文献2では、押出成形でいきなりブロックを形成しているので、例えば、100mm×100mmのシートを作るとき、大きいブロックを作る必要があり、配向が崩れ、性能が低下することになる。また、熱可塑性樹脂を押出してブロックを形成するのは現実的でなく、実際に成形したとしても、内部にボイドが発生する等の問題が生じる。このボイドの発生は、熱伝導率を低下することになる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明にかかるヒートシンクは、熱可塑性樹脂と繊維状の熱伝導性フィラーとを主材料として混練し、その混練した材料を連続供給される芯材と共に押出して、前記芯材の周囲に前記混練した材料を形成し、かつ、前記芯材の長さ方向に前記熱伝導性フィラーを配向させたストランドとし、前記ストランドを押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断し、前記切断した複数本のストランドを特定した前記ストランドの長さ方向を揃えて一体とした一次成型体を形成したものである。
ここで、熱可塑性樹脂としては、エンジニアリング・プラスチック(以下、「エンプラ」ともいう。)、スーパー・エンジニアリング・プラスチック(以下、「スーパーエンプラ」ともいう。)を用いることができる。具体的には、エンプラとしては、ポリアミド(ナイロン等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等がある。そして、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド等がある。
また、繊維状の熱伝導性フィラーとしては、熱伝導率の高い石油ピッチ(Pitch)系のカーボン繊維、PAN 系のカーボン繊維、銅やSUS等の金属繊維の使用が可能である。繊維状の熱伝導性フィラーの繊維長は、ストランドの径によって決定されるが、本発明を実施する場合のストランド径は2mmφ以上とするものであり、例えば繊維長が0.1mm乃至12mmのものが使用できる。
そして、上記の熱可塑性樹脂と繊維状の熱伝導性フィラーを主材料として混練した材料を連続供給される芯材と共に押出して、前記芯材の周囲に前記混練した材料を形成し、かつ、前記芯材の長さ方向に前記熱伝導性フィラーを配向させたストランドとする。ここで、連続供給される芯材は、金属繊維、ガラス繊維、有機繊維等の切れ難い繊維糸または銅、ステンレス、鉄、黄銅等の線であればよく、好ましくは、熱可塑性樹脂との接合性の良好なものであり、熱可塑性樹脂との接触抵抗が高いものが望ましい。
ここで、上記ストランドを押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断とは、例えば、ストランド長が特定できる10mm以上とすれば、切断した複数本のストランドの長さ方向とその直角方向が分けやすく、ストランド中に含まれる繊維状熱伝導性フィラーの配向を特定方向に並べやすくしたものであり、通常では、10mm以上であれば、ストランドの列が特定でき、配向特性を整理し易いことになる。
更にまた、長さ方向を揃えて一体とした一次成型体の形成とは、配向を特定させて一体とした成形である。
【0009】
請求項2の発明にかかるヒートシンクは、熱可塑性樹脂と、例えば、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練し、その混練した材料を連続供給される芯材と共に押出して、前記芯材の周囲に前記混練した材料を形成し、かつ、前記芯材の長さ方向に前記熱伝導性フィラーを配向させたストランドとし、前記ストランドを押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断し、前記切断した複数本のストランドを特定した前記ストランドの長さ方向を揃えて一体とした一次成型体を形成し、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向に対し切断する方向にカッティングしたものである。
【0010】
請求項3の発明にかかるヒートシンクの前記一次成型体の形状は、直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングしたものである。
【0011】
請求項4の発明にかかるヒートシンクの前記一次成型体の形状は、直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングし、前記カッティングした一次成型体の短辺の長さを揃えて積層して一体とした2次成形体としたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明のヒートシンクは、熱可塑性樹脂と、繊維状の熱伝導性フィラーとを主材料として混練した材料を、連続供給される芯材と共に押出して、前記混練した材料によて前記芯材を被覆しつつ前記芯材の周囲に円形等の所望の断面形状を形成し、かつ、前記芯材の長さ方向に前記熱伝導性フィラーを配向させたストランドとし、前記ストランドを所定長に切断し、前記ストランドの長さ方向を揃えて一体に一次成型体を形成したものである。
したがって、連続供給される芯材が、混練した材料内の繊維状の熱伝導性フィラーの配向方向を押し出される混練材料の内側から誘導し、また、押出金型が外側から誘導し、繊維状の熱伝導性フィラーの配向を均一化させ、単一化することができ、熱伝導特性に合った配向が得られる。そして、前記ストランドは、押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断したものであるから、ストランドの列が特定でき、配向特性を整理し易く、一次成型体の特定方向に熱伝導状態を良好とすることができる。更に、熱可塑性樹脂による成形体のため材料的に軽量であり、かつ、加工性に富むものである。また、混練材料を押出時に切れ難い糸状の芯材を連続して供しているため、押出成形されてできたストランドは芯材による補強硬化によって切れ難いものになっていて押出成形時の生産性を向上させている。
よって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクが得られる。
【0013】
請求項2の発明のヒートシンクは、前記一次成型体を特定した熱伝導性フィラーの配向方向に対し切断する方向にカッティングしている。従って前記一次成型体の切断面には熱伝導性フィラーが露出しやすくなるため、この切断面を通じて良好な熱伝導性が得られやすくなる。
【0014】
請求項3の発明のヒートシンクの前記一次成型体の形状は、直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングしたものであるから、請求項2に記載の効果に加えて、より簡便にヒートシンクとして高い熱伝導素材が得られる。
【0015】
請求項4の発明のヒートシンクの前記一次成型体の形状は、直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングし、前記カッティングした一次成型体の短辺の長さを揃えて積層して一体とした2次成形体としたものであるから、請求項2または請求項3に記載の効果に加えて、芯材の移動にともなって熱伝導性フィラーの配向が一義的に決定され、熱伝導性フィラーの配向の乱れを無くすことができ、さらにヒートシンクとして高い熱伝導素材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施の形態のヒートシンクの製造方法の全体の構成を説明する全体構成説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態のヒートシンクの製造途中のストランドの断面の顕微鏡写真をスケッチした説明図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態のヒートシンクの熱伝導率の特性図(a)と単純に材料を混練したストランドの熱伝導率の特性図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施する形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
図1において、芯材ロール10は芯材11を巻回しているロールで、この芯材11とは銅、ステンレス、鉄、黄銅等の金属線、或いはそれらの繊維、または、ガラス繊維、有機繊維等の切れ難い繊維糸で、好ましくは、熱可塑性樹脂との接合性の良好なものであり、使用する熱可塑性樹脂との接触抵抗が高いものが望ましい。
【0018】
芯材11が巻回された複数の芯材ロール10は、複数個の必要数のガイドローラ12に案内されて、押出金型20の方に送り出される。初期設定では、押出金型20を相通し、後述する引き取り機31に挟まれている。押出金型20の押出口の数だけ芯材ロール10が設けられている。
押出金型20には、熱可塑性樹脂と、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した混練材料を押出機21から供給する。そして、押出金型20で芯材11の周囲に混練された熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを一体化させ、ストランド30として押出すものである。
【0019】
ここで、熱可塑性樹脂としては、エンジニアリング・プラスチック、スーパー・エンジニアリング・プラスチックを用いることができる。具体的には、エンプラとしては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等がある。そして、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等から選択されるものである。因みに、本実施の形態では、ポリアミド6を使用した。
【0020】
また、熱伝導性フィラーとしては、熱伝導率の高い石油ピッチ(Pitch)系のカーボン繊維、PAN 系のカーボン繊維、銅やSUS等の金属繊維の使用が可能である。繊維長0.1mm乃至12mmとは、ストランド30の径によって決定されるが、2mmφ以上のストランド径とするものである。因みに、本実施の形態では、石油ピッチ(Pitch)系のカーボン繊維を使用した。
【0021】
そして、連続供給される芯材11は、銅、ステンレス、鉄、黄銅等の金属繊維、ガラス繊維、有機繊維等の切れ難い繊維糸または銅、ステンレス、鉄、黄銅等の金属線であればよく、好ましくは、熱可塑性樹脂との接合性の良好なものであり、熱可塑性樹脂との接触抵抗が高いものが望ましい。因みに、本実施の形態では0.2mmφの銅線を使用した。
【0022】
次に本発明のヒートシンクの作製方法について説明する。熱可塑性樹脂と繊維状の熱伝導性フィラーとを主材料とした原料が、混練工程にて混練機で混練され、この原料を混練した混練材料を押出機21から押出金型20に供給し、芯材ロール10からの芯材11に混練材料を被覆する被覆工程によって芯材11の周囲に熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーを配置させて一体化させる。これら一体化させた芯材11と混練材料を押出金型20から押出す押出工程によって芯材11の移動方向に熱伝導性フィラーを配向させた所望の断面を有するストランド30が形成する。ここで、混練工程の混練機は押出機21を使用し、原料の混練と押出金型20への供給を同時に行っても良いし、押出機21とは別に混練機を使用し予め原料を混練しても良い。
【0023】
さらに、所望の断面形状を有するストランド30(本実施形態では円形の断面形状)を冷却し、引き取り機31で押し出し方向に引っぱり出している。引き取り機31で引き出されたストランド30は、切断機40によって所定の長さにカッティングされる。即ち、切断機40によって所定の長さにカッティングされる工程は、押出工程で押出したストランド30の長さ方向に整理できるような所定長に切断するストランド切断工程となっている。
【0024】
ストランド切断工程では、切断機40によって通常30mm以上の長さ、特に、好適には100mm前後にカッティングされる。このカッティングされる長さは、電子部品のハウジング、放熱機能部品等のヒートシンクのサイズに合わされるのが好適である。
また、カッティングされる長さは、ストランド30を押出した長さ方向に整理できるような長さであればよく、特定したストランド30Aの長さ方向を揃えることができればよく、熱伝導性フィラーの配向を特定できる一次成型体60を形成できればよい。
【0025】
即ち、一次成型体60は、30mm以上の長さのストランド30Aを成形枠50に、ストランド30Aの長さ方向を合わせて充填する。ストランド30Aの長さ方向を合わせて充填するということは、熱伝導性フィラーの配向を均一に一致させることを意味する。
更に、成形枠50に30mm以上の長さのストランド30Aを、ストランド30Aの長さ方向を合わせて充填した後、内部にボイドが発生しないように加熱圧縮する。因みに、本実施の形態では、温度245℃、加圧力1.3tによって内部にボイドのない一次成型体60が得られた。
【0026】
但し、一次成型体60の熱伝導性フィラーの配向は特定方向に均一に向いている。図1においては、一次成型体60の熱伝導性フィラーの配向は、長さ方向に配向されている。したがって、一次成型体60の熱伝導は、その長さ方向に熱伝導性フィラーの配向がなされているので、その方向に熱伝導が良好になっている。ここで、本実施の形態では一次成型体60を加熱圧縮して一体に形成しているが、形成方法はこれに限定するものではない。
【0027】
また、本実施の形態では、このように、熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した材料を、芯材ロール10から押出金型20に連続供給される芯材11と共に押出して、芯材11の周囲に混練した材料を形成し、かつ、芯材11の長さ方向に熱伝導性フィラーを配向させたストランド30とし、ストランド30を所定長に切断してなるストランド30Aとし、そのストランド30Aの長さ方向を揃えて加熱圧縮して一次成型体60を形成したものである。
【0028】
したがって、押出金型20に連続供給される芯材11の移動により、熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した材料の配向方向を芯材11の移動方向に誘導し、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーの配向を芯材の移動方向と同じ方向に向かせることができることから、熱伝導フィラーの配向を一方向に単一化することができ、熱伝導特性に合った配向が得られる。そして、ストランド30Aは、押出した長さ方向にその長さを揃えて整理できるような所定長に切断されたものであるから、ストランド30Aの列が特定でき、配向特性を整理し易く、一次成型体60のみならず目的の成形体として特定方向に熱伝導状態を良好とすることができる。更に、材料的に軽量であり、かつ、加工性に富む。よって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクが得られる。ここで、一次成型体60の形状は所望の形に形成することができ、例えば直方体や円柱状、さらには要求仕様にあった形状に形成することができる。そして一次成型体60をそのままヒートシンクにすることも有り得る。
【0029】
更に、一次成型体60の厚みに対して短冊状または円板状等にカッティングする。本実施の形態の短冊状または円板状等にカッティングする方向は、一次成型体60の特定された熱伝導性フィラーの配向方向に対して直角に切断する。本実施形態では一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向方向が長手方向になるような直方体形状に形成し、これを短冊状にカッティングしている。従って、カッティングした短冊状の短辺方向(切断面相互方向)に熱伝導を良好としている。このように、一次成形工程で形成した一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従って短冊状にカッティングして切片61を形成する工程は、カッティング工程となっている。
このカッティング工程では、短冊状にカッティングする方向を一次成型体60の熱伝導性フィラーの配向に対して直角に切断したものであるが、本発明を実施する場合には、一次成型体60の熱伝導性フィラーの配向に対して平行に切断してもよい。即ち、カッティングした短冊状の切片61の長さ方向(図1の長辺方向)に熱伝導を良好とすることができる。そして、この一次成型体60のカッティング品をヒートシンクにすることも有り得る。
【0030】
本実施の形態の短冊状にカッティングする方向として、一次成型体60の熱伝導性フィラーの配向に対して直角に切断した切片61は、その短辺方向の図1の左右方向に熱伝導を良好とする配向させている。このカッティングした切片61は、配向方向が揃った短辺を揃えて成形枠70に積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80を形成し、必用に応じて、スライス、研磨等の仕上げ加工を施して完成させる。
即ち、カッティング工程でカッティングした短冊状の切片61を、一次成型体60の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層する工程を二次成形工程とするものである。
【0031】
この二次成形工程では、二次成型体80としてカッティング工程でカッティングした切片61を積層して形状を整えるだけではなく、熱源と放熱フィンとの間のヒートシンク等の放熱機能部品とするだけでなく、電子部品等のハウジングに形成して熱の放散のよい部品としても形状できる。
【0032】
このように、本実施の形態のヒートシンクは、熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した混練材料を、芯材ロール10から押出金型20に連続供給される芯材11と共に押出して、芯材11の周囲に混練した材料を形成し、かつ、芯材11の長さ方向に熱伝導性フィラーを配向させたストランド30とし、ストランド30を所定長に切断してストランド30Aとし、ストランド30Aの長さ方向を揃えて加熱圧縮して一次成型体60を形成し、一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従ってカッティングして切片61とし、前記カッティングした切片61の一次成型体60の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80としたものである。
【0033】
したがって、連続供給される芯材11が熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として混練した混練材料の配向方向を誘導し、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーの配向を芯材11が移動する引き取り方向とする特定方向に均一化させて単一化することができる。また、熱伝導性フィラーを単一化することで一方向の熱の伝導特性を大幅に向上させることができる。そして、ストランド30は、芯材11によって補強されているため引き取り機31に引き取られる際切れることが無く、押出した長さを基準として整理できる所定長に切断してストランド30Aとするものであるためプルトルージョン成形が可能となる。従って、ストランド30Aの列が特定でき、配向特性を整理し易く、一次成型体60のみならず目的の成形体として特定方向に熱伝導状態を良好とすることができる。更に、このヒートシンクは、材料的に軽量であり、かつ、加工性に富む。加えて、一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従って短冊状にカッティングして切片61とし、そのカッティングした切片61の一次成型体60の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80としたものであるから、二次成型体80の任意の方向に熱の伝導方向を設定することができる。また、積層によって目的の形状を形成することもできる。
よって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクとなる。なお、本実施の形態では、一次成型体60を形成した後、一次成型体60をカッティングし、さらに積層して二次成型体80を形成している。このようにすることにより一次成型体60の成形枠50が小さくて済み、また、ストランド30Aを確実に溶融させて良好な配向を有する一次成型体60の形成が可能となる。なお、ヒートシンクの形状及び加熱方法によっては成形枠50を所望の形状として一次成型体60を形成することで目的とするヒートシンクが得られる場合も有り得る。
【0034】
[実施例]
まず、本実施例のヒートシンクの製造方法は、熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として図示しない加圧式ニーダー等の混練機で予め混練する混練工程と、混練工程で混練した混練材料を押出機21から押出金型20に供給することで、芯材ロール10から押出金型20に連続して供給される芯材11に混練した材料を被覆するとともに、芯材11の周囲に混練材料を配置させて一体化させる被覆工程と、混練材料を芯材11と共に押出金型20から押出して、芯材11の周囲に混練材料を所望の断面形状に形成し、かつ、芯材11の移動方向に熱伝導性フィラーを配向させたストランド30とする押出工程と、その押出工程で押出した長さ方向に、その長さを揃えて(その長さを基準として)整理できるような所定長に切断したストランド30Aとするストランド切断工程と、そのストランド切断工程で切断したストランド30Aの長さ方向を揃えて加熱圧縮して一次成型体60を形成する一次成形工程と、その一次成形工程で形成した一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従って短冊状にカッティングするカッティング工程と、前記カッティング工程でカッティングした短冊状の一次成型体60の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80を形成する二次成形工程とを具備するものである。
【0035】
本実施例の混練工程は、熱可塑性樹脂と繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーとを主材料として図示しない加圧式ニーダー等の混練機で混練する工程である。
具体的には、加圧式ニーダー(混練機)を使用し、ポリアミド6(以下、単に「PA6」という;東レ CM1021)を60vol%、熱伝導性フィラーとしてカーボン繊維(以下、単に「CF」という;日本グラファイトファイバー XN−100−06Z、繊維長6mm)を40vol%の体積比として混練した。混練条件としては、設定温度260℃、回転数24rpm、正転、4minとした。但し、4分間の混練とは、CFの嵩が大きいために、少量ずつ投入し、10sec/回転を繰り返し、全てを投入した後に4分間の混練を行ったことを意味する。
本実施例では、加圧式ニーダーを使用したが、正常に混練でき、押出しストランド化ができた。しかし、更に、双腕式ニーダーを使用すれば、より均一分布が可能となる。
【0036】
念のため、PA6を60vol%、熱伝導性フィラーとしてCFを40vol%の体積比及び物性値等を表1に示す。なお、本実施例においては、PA6及びCFをストランド化した混練材料で説明するが、本発明を実施する場合には、前述した熱可塑性樹脂及び熱伝導性フィラーであればよい。本実施例においては、PA6及びCFをストランド化した混練材料であれば、従来の技術に比較して4〜5倍以上の熱伝導率が得られることが判明した。
【0037】
【表1】

【0038】
本実施例によれば、PA6及びCFを予め混練した混練材料を押出機21に供給し、押出金型20からプルトルージョン法、即ち、引き取り機31によって金型20から成形品を芯材11としての銅線と共に引き抜き、後の工程で、所定の長さに切断して製品化するものであり、効率良く単一製品を作ることができる。
即ち、押出工程は、混練工程で混練した材料を芯材ロール10から押出金型20に連続供給される芯材11と共に押出すプルトルージョン成形とし、芯材11の周囲に混練材料を形成し、かつ、芯材11の方向に熱伝導性フィラーを配向させたストランド30とする工程である。このプルトルージョン条件としては、押出機の温度を280℃、引き取り速度4.7m/min、スクリュー回転数30rpm、押出金型温度280℃で行った。念のため、ストランドの配合値等を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
プルトルージョン成形で得たストランド30は、図2に示す通り、CFがその流れ方向に配向していることが確認された。しかし、このストランド30には、一部にボイドが生じており、そのボイドによってCFの配向が乱れている個所も確認された。このボイドによるCFの配向の乱れは、熱伝導効率の向上を妨げる原因に成る場合がある。
そこで、ストランド切断工程で、通常30mm以上の長さ、即ち、ストランド30を押出した長さ方向に整理できるような長さ、好適には100mm前後にカッティングし、ストランド30の長さ方向を揃え、加熱圧縮して熱伝導性フィラーの配向を特定できる一次成型体60を形成することにより、ボイドは全てなくなった。因みに、一次成型体60を得る加熱圧縮温度は、温度245℃で、加圧力1.5tであった。
【0041】
即ち、押出工程で押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断したストランド30Aとするストランド切断工程と、そのストランド切断工程で切断したストランド30Aの長さ方向を揃えて加熱圧縮して一次成型体60を形成する一次成形工程を経ることによって、熱伝導性フィラーの配向を特定でき、また、一次成型体60の形成によりボイドは全てなくなった。
【0042】
結果、PA6を60vol%、CFを40vol%混練した材料の熱伝導率を温度傾斜法にて測定すると図3(b)の結果からその熱伝導率は4.8W/mkであったが、本発明の実施例のプルトルージョン法で得たストランド30を、ストランド切断工程で100mm前後にカッティングし、ストランド30の長さ方向を揃え、温度245℃で、加圧力1.5tで加熱圧縮して熱伝導性フィラーの配向を特定した一次成型体60の熱伝導率は、図3(a)の結果から28.7W/mkとなり、前者に比して5乃至6倍熱伝導率が良好になることが確認された。
【0043】
このように、混練工程で、芯材ロール10から押出金型20に連続供給される芯材11が、PA6を60vol%及びCFを40vol%で混練した材料の配向方向を誘導し、繊維長0.1mm乃至12mmの熱伝導性フィラーの配向を押出工程で押出しながら均一化させ、また、熱伝導性フィラーは繊維長0.1mm乃至12mmと長いことから、熱伝導性フィラーの配向を単一化することができ、熱伝導特性に合った方向の配向が得られる。そして、ストランド30Aは、押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断したものであるから、ストランド30Aの列が特定でき、配向特性を整理し易く、一次成型体60のみならず目的の成形体として特定方向に熱伝導状態を良好とすることができる。更に、PA6を60vol%及びCFを40vol%で混練した材料は、金属等に比較して材料的に軽量であり、かつ、加工性に富むものである。よって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクの製造方法となる。
【0044】
加えて、一次成形工程で形成した一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従って切片61にカッティングするカッティング工程と、そのカッティング工程でカッティングした切片61の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80を形成する二次成形工程を経れば、一次成型体60を熱伝導性フィラーの配向に従って切片61にカッティングし、そのカッティングした短冊状の切片61の一次成型体60の熱伝導性フィラーの方向を合わせて積層し、それを加熱圧縮して二次成型体80としたものであるため、二次成型体の成形時に熱の伝導方向を二次成型体の任意の方向に設定することができる。また、積層によって目的の形状を形成することもできる。よって、プルトルージョン成形が可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を使用して、配向が特定でき、熱伝導率の良好なヒートシンクの製造方法となる。
【0045】
上記実施の形態では、熱伝導性フィラーの繊維長を0.1mm乃至12mmとしているが、実施例の繊維長6mmを中心に検討したところ、繊維長0.1mm乃至12mmが好適であることが判明した。
また、ストランド切断では、100mm前後にカッティングするのが作業性から好適であるが、通常10mm以上の長さであれば、押出した長さ方向の整理が容易であり、かつ、単純に長方形、正方形以外の形状、例えば、凸、凹とすることもできる。
【0046】
上記実施の形態では、ヒートシンクの芯材11の体積比を減じた後のPA6を60vol%及びCFを40vol%で混練した事例で説明したが、発明者らの実験によれば、熱可塑性樹脂としてのPA6を70乃至50vol%とし、また、前記熱伝導性フィラーとしてのカーボン繊維を30乃至50vol%の体積比とした場合でも良好な結果が得られた。逆にPA6が50vol%よりも少ない場合、CFを50vol%よりも多い場合はもろくなり、PA6が70vol%よりも多い場合、CFが30vol%よりも少ない場合は、熱伝導率が低下する。
【0047】
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 芯材ロール
11 芯材
20 押出金型
21 押出機
30 ストランド
30A 切断したストランド
31 引き取り機
40 切断機
60 一次成型体
61 短冊状の切片
80 二次成型体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と繊維状の熱伝導性フィラーを主材料として混練した材料を連続供給される芯材と共に押出して、前記芯材の周囲に前記混練した材料を形成し、かつ、前記芯材の長さ方向に前記熱伝導性フィラーを配向させたストランドとし、前記ストランドを押出した長さ方向に整理できるような所定長に切断し、前記切断したストランドを複数本長さ方向を揃えて一体とした一次成型体を形成したことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
更に、前記一次成型体を形成した後、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向に対し切断する方向にカッティングしたことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記一次成型体の形状が直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングしたことを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記一次成型体の形状が直方体であり、前記一次成型体を熱伝導性フィラーの配向方向が短辺となるように短冊状にカッティングし、前記カッティングした一次成型体の短辺の長さを揃えて積層して一体とした2次成形体としたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−79754(P2012−79754A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220812(P2010−220812)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】