説明

ヒートシール装置

【課題】設定温度と実際のシール面の温度差を確認でき、連続シール作業を行った際のシール面の低下温度と加熱応答性を正確に把握でき、シール面の温度低下や熱分布の悪化によるシール不良等の不具合を防止可能なヒートシール装置を提供する。
【解決手段】少なくともヒーターブロックとシールバーが接合したシールヘッドを有し、加熱されたシールバーを押し当てることにより、フィルムやシーラントを熱し、フィルムやシーラントの温度を溶融温度付近まで上げることで、フィルム同士やフィルムと容器等を熱溶着せしめるヒートシール装置において、前記ヒーターブロックの温度制御用熱電対とは別に、前記シールバーのシール面直近に、温度測定用熱電対を該シールバーの長手幅方向に1つ以上具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されたシールバーによりフィルムやシーラントを熱することで、フィルムやシーラントの温度を溶融温度付近まで上げ、フィルム同士や、フィルムと容器等を熱溶着せしめるヒートシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱されたシールバーを押しつけることにより、フィルムやシーラントを熱し、フィルムやシーラントの温度を溶融温度付近まで上げることで、フィルム同士や、フィルムと容器等を熱溶着せしめるヒートシール装置において、特に、連続的にシール作業を行う時のシールバーの温度を管理することは非常に重要である。
【0003】
従来、シールバーの温度管理は、実際には、シールバーのシール面から離れた場所の温度、すなわち、ヒートブロック付近の温度を熱電対等の温度測定手段により測定し、温度の制御を行っている。しかしながら、シールバーのシール面温度と、制御用の温度測定手段の位置では、実際には温度が大きく異なっている問題がある。
【0004】
その為、オフラインにて出したシール条件をもとに、ヒートシール装置における生産条件を決めてしまうと、実際連続作業でのシール面温度は適性なシール条件温度からは外れてしまい、製品を正常に作ることが出来ないということがよくある。
【0005】
そこで、シールバーのシール面温度を直接測定することにより、シールにおけるシールバーの温度変化を把握することが可能となるが、シール面の直近に熱電対を埋め込むと、シール面の熱分布が悪くなり、シール不良等の不具合を発生させてしまう。
【0006】
そこで、熱電対をシール面直近に耐熱テープ等により貼り付けることも考えられるが、通常、シールバーは200℃以上の高温となる場合が多く、この場合、耐熱テープの粘着力が弱くなり、はがれてしまうことがあり、機能を果たさない。
【0007】
これに加え、シールバーの直近に熱電対を取り付けることができても、シールバー直近の熱電対を温度制御用として用いると、温度が激しく変動する為に、ヒーターの温度が逆に安定しないという不具合が発生する。
【0008】
このように、シールバーの直近に熱電対を取り付けることが困難であることから、シールをする度に、ヒーターの設定温度を徐々に上げていき、シール面の温度をなるべく一定にすることを目的とした温度制御方法が提案されている。例えば、特許文献1には、シール強度の温度依存性とシール強度のショット依存性を調べ、運転停止から運転再開時のシール強度が安定するまでのショット数(n)と温度低下幅(δ)を求め、所望のシール温度(T)を停止状態での初期値とし、1ショット毎にδ/nの温度を加算して入力し、nショット後に制御温度をT+δにし、その後のショットはT+δの温度制御を維持するシール温度の制御技術が開示されている。
【0009】
上記した温度制御方法をとることで、通常の温度制御と比べ、シール面の温度は確かに変動が少なくなる。しかし、この場合でも、実際のシール面温度がどの程度低下しているかは分からない。更に、温度制御用熱電対のシール面からの距離により、応答性も大きく変化してしまい、安定した制御が難しい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−189324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、設定温度と実際のシール面の温度差を確認でき、連続シール作業を行った際のシール面の低下温度と加熱応答性を正確に把握でき、シール面の温度低下や熱分布の悪化によるシール不良等の不具合を防止可能なヒートシール装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくともヒーターブロックとシールバーが接合したシールヘッドを有し、加熱されたシールバーを押し当てることにより、フィルムやシーラントを熱し、フィルムやシーラントの温度を溶融温度付近まで上げることで、フィルム同士やフィルムと容器等を熱溶着せしめるヒートシール装置において、前記ヒーターブロックの温度制御用熱電対とは別に、前記シールバーのシール面直近に、温度測定用熱電対を該シールバーの長手幅方向に1つ以上具備することを特徴とするヒートシール装置である。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記温度測定用熱電対が熱伝導率の高い接着用手段によって前記シールバーに固定されていることを特徴とする請求項1に記載するヒートシール装置である。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記温度測定用熱電対が、前記シールバー側面で、該シールバーの法線方向より一定の力をかけ続ける手段により挟持されていることを特徴とする請求項1に記載するヒートシール装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヒートシール装置では、温度制御用熱電対とは別に、シール面直近に、温度測定用熱電対をシールバーの長手幅方向に1つ以上有することにより、実際のシール面の温度に近い温度を測定できる為、シール面の実際の温度を把握することが出来る。
【0016】
これにより、設定温度と、実際のシール面温度の差を確認することができ、更に、連続シールを行った際、どの程度シールバーの温度が下がり、安定するかをより正確に把握することが可能となる。
【0017】
また、このデータをもとに、新しい製品のシール条件を決定する際には、まずテストシール機により、シールの温度条件を出し、次に本発明のヒートシール装置において、製品に合ったシール温度条件を正確に把握することが出来るようになる。
【0018】
この結果、連続シールした場合のシールバーの温度低下に伴う製品のシール強度の低下に起因するシール不良を防止することが可能となる。
【0019】
又、今までは新しい製品のシール条件を見出す為に、様々な温度条件を振り、性能評価を行っていた為、時間と費用がかかってしまっていた。本発明のヒートシール装置を用いることで、新しい製品のテストシール機にて出したシール温度条件に本発明のヒートシール装置のシール面温度を合わせることが出来るので、正確な製造条件を容易に出すことが可能となり、時間と費用を大きく削減することが可能となる。
【0020】
更に、本発明のヒートシール装置は、シール面直近に複数の温度測定用熱電対を設置することで、シールバーに異物をかみこんでしまった時など、シールされていない部分のシールバー表面温度が不自然に上がってしまうことが確認できる。そのため、これを検知することで、シール不良検知機能を有したヒートシール装置としても活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のヒートシール装置での、熱電対の設置位置の一例を示した概略図。
【図2】本発明のヒートシール装置において、温度測定用熱電対を接着用手段を用いてシールバーに固定した一例を示した概略図。
【図3】本発明のヒートシール装置において、温度測定用熱電対が、シールバー側面に挟持されている一例の概略図。
【図4】本発明のヒートシール装置において、シールバー側面に複数の温度測定用熱電対を設置した異物噛み込みを検知する一例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のヒートシール装置を一実施形態に基づいて以下に説明する。
【0023】
図1は、従来のヒートシール装置での、熱電対の設置位置の一例を示したものである。ヒーターブロック2にカートリッジヒーターが挿入されているか、鋳込みのヒーターブロックにシールバー1が固定されている。このシールバー1の温度を制御する温度制御用熱電対3が、図1(a)に示すように、ヒーターブロック2の側面もしくは、図1(b)に示すように、シールバー1のシール面5から離れた場所に設置されている。図1(c)図は、その側断面から見た概略図である。
【0024】
図2は、シールバーのシール面直近に、熱伝導率の高い接着用手段11によって温度測定用熱電対10が固定された様子を示しており、この温度測定用熱電対10は、シールバーに密着し、かつ熱容量の少ない薄型の熱電対を用い、接着剤として、銀ペースト等の熱伝導率の高い物を用い、確実に接着を行う。なお、接着剤の量が各場所により不均一になってしまうことや、接着剤の量が多すぎる場合に、シールバーの熱が奪われてしまうこともあり、更に接着する場所も誤差の原因になってしまうことに注意を払う必要がある。
【0025】
図3は、温度測定用熱電対10が、シールバー1の側面で、シールバーの法線方向より一定の力をかけ続ける手段により挟持されている具体例を示す。ここで、温度測定用熱電対10は、シールバー1に密着し、かつ熱容量の少ない薄型の熱電対を用い、これを押し付けブロック12にて一定の力で押さえつける機構を有する。押し付けブロック12は、熱伝導率が小さく、かつ熱容量の小さい物が良く、温度測定用熱電対10からの熱を溜め込まない材質を選定する。今回、熱電対の押し付け手段として、スプリング13を用いた一例を示したが、圧縮空気を用いて熱電対を押し付けても同様の効果が得られる。図3(a)、(b)は、それぞれ熱電対押し付け機構をシールバー1の側面に取り付けるか、底面に取り付けるかの違いである。
【0026】
図4は、シール面5直近のシールバー側面に複数の温度測定用熱電対10を取り付けた例であり、図4(a)はシール前で、下部シールバーの上に異物20がある場合を示している。図4(b)は、上部シールバーが下降し、シールした状態を示しており、異物20をかみこんだ状態を示している。この状態で、連続してシールを行うと、本来フィルム等
に奪われる熱が異物部では奪われない為に、シールされていない箇所の温度が上がる。従来ヒートシール装置での温度制御用熱電対3の位置では、この影響をとらえることは難しいが、本発明のヒートシール装置では、シール面5直近のシールバー1に温度測定用熱電対10が複数ついている為に、シールされない箇所があると、すぐに温度が上がり、シール不良を検知することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のヒートシール装置は、以上の構成からなるため、食品や医薬品包装用の袋の製袋機や、食品用カップ容器の密封シール機など、断続的に連続して安定なヒートシールを行うヒートシール装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・シールバー 2・・・ヒーターブロック 3・・・温度制御用熱電対
4・・・ヒーター端子 5・・・シール面 10・・・温度測定用熱電対
11・・・接着剤 12・・・押し付けブロック 13・・・スプリング
14・・・固定治具 20・・・異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともヒーターブロックとシールバーが接合したシールヘッドを有し、加熱されたシールバーを押し当てることにより、フィルムやシーラントを熱し、フィルムやシーラントの温度を溶融温度付近まで上げることで、フィルム同士やフィルムと容器等を熱溶着せしめるヒートシール装置において、前記ヒーターブロックの温度制御用熱電対とは別に、前記シールバーのシール面直近に、温度測定用熱電対を該シールバーの長手幅方向に1つ以上具備することを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
前記温度測定用熱電対が熱伝導率の高い接着用手段によって前記シールバーに固定されていることを特徴とする請求項1に記載するヒートシール装置。
【請求項3】
前記温度測定用熱電対が、前記シールバー側面で、該シールバーの法線方向より一定の力をかけ続ける手段により挟持されていることを特徴とする請求項1に記載するヒートシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−214855(P2010−214855A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66029(P2009−66029)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】