説明

ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法

本発明は、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法であって、少なくとも、酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、アルコールおよびアルコールよりも強い有機塩基と反応させることを含む、前記方法に関する。本発明はさらに、この方法により製造された塩およびイオン性液体としてのこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法、およびこの方法により製造された塩およびイオン性液体としてのこの使用に関する。
【0002】
第四アンモニウムおよびホスホニウム塩は、典型的には、アミン類またはホスフィン類のアルキル化により製造される。このために、種々のアルキル化剤、例えば特にハロゲン化アルキル類、アルキルサルフェート類、アルキルトリフレート類が用いられる。この方法をまた、複素環式カチオンを含む塩の合成のために用いることができる。この方法における欠点は、アルキル化剤の高い費用、これらのアルキル化剤の毒性(例えばジメチルサルフェートは高度に有毒である)である。さらに、あるアニオンを含む塩のみが、この方法により得られる。他のアニオンを含む塩を得るために、ブレンステッド酸を有する塩または金属塩の反応によるイオン交換が、追加の段階として必要である。これにより、あるアニオンを含む有機塩の合成が、極めて高価になる。
【0003】
近年、極めて低い融点を有する有機塩における関心が、高まっている。近年におけるいくつかの概説記事(P. Wasserscheid, W. Keim, "Ionische Fluessigkeiten - neue Loesungen fuer die Uebergangsmetallkatalyse" [Ionic Liquids - Novel Solutions for Transition-Metal Catalysis], Angew. Chem. 112 (2000) pp. 3926-3945; R. Sheldon, "Catalytic reactions in ionic liquids", Chem. Commun. 2001, pp. 2399-2407; M. J. Earle, K. R. Sheldon, "Ionic liquids. Green solvent for the future", Pure Appl. Chem. 72, No. 7 (1999), pp. 1391-1398; T. Welton, "Room temperature ionic liquids of alkylimidazolium cations and fluoroanions", J. of Fluorine Chem. 105 (2000) pp. 221-227)により確認されているように、これらの化合物は、これらの低い融点のために、ますますイオン性液体として用いられている。イオン性液体の用語は、ここでは、化合物が、室温または比較的低い温度で液体であることを示す。さらに、これは、有機カチオン、例えばテトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、N−アルキルピリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウムおよびトリアルキルスルホニウムカチオン、並びに通常は無機のアニオン、例えばBF、PF、SbF、NO、CFSO、(CFSO、ArSO、CFCO、CHCO、AlClを含む。
【0004】
イオン性液体の特性、例えば融点、熱的および電気化学的安定性並びに粘度は、アニオンおよびカチオンの性質により強力に影響される。極性および親水性または親油性を、好適なカチオン/アニオン対の選択により調整することができる。各々の新たなアニオンおよび各々の新たなカチオンは、イオン性液体の特性を調整するためのさらなる可能性を開拓する。
【0005】
イオン性液体の実際の使用のために、経済性、即ち価格は、臨界的に重要である。かつこの要因により判定して、即ちこれらの極めて高い生産費用のために、現在知られているイオン性液体は、通常の有機溶媒に匹敵しない。従って、イオン性液体の生産費用を減少させる新規な方法の開発は、極めて重要である。
【0006】
ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸の製造方法は、最近開発された(DE 102 169 97)。有機塩基、例えば水酸化テトラブチルアンモニウムを用いたこれらの酸の中和の結果、対応する塩の生成がもたらされる。ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸を、さらに、有機塩化物の、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩への、HClの遊離を伴う変換のために用いることができる。しかし、上記したアルキル化方法による対応する塩化物(もしくは臭化物)の合成または高価な水酸化アルキルアンモニウムもしくは水酸化アルキルホスホニウムを用いることはまた、ここでは最初に必要である。
【0007】
ジメチルエーテルおよびビス(ヘプタフルオロプロピル)ホスフィン酸の生成をもたらす、酸化トリス(ヘプタフルオロプロピル)ホスフィンのメタノールとの反応は、従来技術から知られている(N. V. Pavlenko, et al., J, Gen. Chem. USSR(英訳)、59, No. 3 (1989) pp. 474-476)。この生成物の生成は、ビス(ヘプタフルオロプロピル)ホスフィン酸のジメチルエステルの中間体生成により説明され、これが次に出発物質のメタノールをアルキル化して、ジメチルエーテルを生成する。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を有しない、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む塩を製造するための、工業的および経済的に有利な方法を示すことにある。特に、本発明の目的は、良好な収率を有し、従来技術から知られている方法よりも単純であり、安価である方法を提供することにある。
【0009】
この目的は、本発明において、独立請求項および従属請求項の特徴により達成される。
本発明は、酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンが、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む対応する塩を、アルコールおよびアルコールよりも強力に塩基性の有機塩基との単純な反応により、良好な収率で生成するという事実により、区別される。
ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンは、式[(RP(O)O]により表すことができ、ここで、Rは、各々の場合において、互いに独立して、以下に記載するようにパーフルオロアルキル基を示す。
【0010】
酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンは、式[(RP=O]により記載することができ、ここで、Rは、各々の場合において、互いに独立して、以下に記載するようにパーフルオロアルキル基を示す。
アルコールよりも強力な塩基の存在により、ジアルキルエーテルの不所望な生成が抑制され、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む対応する有機塩が生成する。
本発明の方法において副生成物として生成したモノヒドロパーフルオロアルカン類は、同様に、有用な物質である。これらを、例えばDE 102 16 995中に示されているように、種々の用途のために単離し、用いることができる。
【0011】
従って、本発明の方法において、廃棄しなければならない余分な物質は、事実上生成しない。さらに、用いる出発物質および単一の反応段階のために、本発明の方法を、安価に行うことができる。
本発明の方法は、有利には、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む化合物を、単一のプロセス段階のみで製造することを可能にする。さらに、カチオンの新たに導入されるアルキル基に必要な出発物質は、高価なアルキル化剤ではなく、代わりに安価なアルコール類である。
従って、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩を製造するための本発明の方法は、少なくとも、酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、アルコールおよびアルコールよりも強力に塩基性である有機塩基と反応させることを含む。
【0012】
本発明の方法の好ましい変法において、用いる有機塩基は、一般式(1)
X (1)
または一般式(2)
Y (2)
式中:
Xは、
【化1】

を示し、
Yは、−O−、−S−、−Se−、−C(=O)−、−C(=S)−または−C(=Se)−を示し、
【0013】
Rは、Y≠Oについて−Hを示し、ここで、式(2)の場合において、すべてのRは、同時にHであってはならず、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニルまたは
3〜7個のC原子を有する飽和の、部分的に、もしくは完全に不飽和のシクロアルキル、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよいフェニル
を示し、
【0014】
ここで置換基Rは、各々の場合において、同一であるかまたは異なっており、
ここで置換基Rは、互いに単結合または二重結合により対に結合していてもよく、
ここで、1つまたは2つ以上であるが、すべてではない置換基Rは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的に、もしくは完全に置換されているか、または−CNもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、
かつここで、置換基Rの1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NH−、−C(O)NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)NH−、−S(O)NR’−、−S(O)O−、−S(O)−、−S(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR’−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PH−、−PR’−、−P(O)R’−、−P(O)R’−O−、−O−P(O)R’−O−および−PR’=N−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここで、R’=フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換もしくは置換フェニルまたは非置換もしくは置換複素環である、
で表される化合物である。
【0015】
従って、水素に加えて、本発明において用いる有機塩基の好適な置換基Rは、以下のものである:C〜C20、特にC〜C12アルキル基、およびC〜Cアルキル基により置換されていてもよい飽和または不飽和、即ちまた芳香族のC〜Cシクロアルキル基、特にフェニル。しかし、式(2)で表される塩基の場合において、すべてのRは、同時には水素であってはならず、即ち、塩基は、HO、HSまたはHSeであってはならない。
【0016】
1〜12個のC原子を有するアルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルもしくはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルを意味するものと解釈される。アルキル基はまた、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的に、または完全に置換されていてもよい。フッ素化されているアルキル基は、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロブチルまたはノナフルオロブチルである。パーフルオロアルキル基は、アルキル基のすべてのH原子がF原子により置換されていることを意味する。
【0017】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の二重結合がまた存在し得る、直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039;好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニルであり、好ましいのは、さらに、4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0018】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の三重結合がまた存在し得る、直鎖状または分枝状アルキニルは、例えば、エチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15、−C1017〜−C2037、好ましくはエチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0019】
従って、3〜7個のC原子を有する非置換の飽和の、または部分的に、もしくは完全に不飽和のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニルであり、これは、C〜Cアルキル基により置換されていてもよく、ここで、シクロアルキル基またはC〜Cアルキル基により置換されているシクロアルキル基は、次にまた、ハロゲン原子、例えばF、Cl、BrまたはI、特にFまたはCl、CNまたはNOにより置換されていてもよい。
【0020】
有機塩基の3つまたは2つの置換基Rは、同一であるかまたは異なっていてもよい。置換基Rはまた、単環式、二環式または多環式塩基、例えば好ましくは各々が随意に
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニルまたは
3〜7個のC原子を有する飽和の、部分的に、もしくは完全に不飽和のシクロアルキル、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよいフェニル
により置換されていてもよい複素環式化合物ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、インドリン、キノリン、イソキノリンまたはアニリンが生成するように、対に結合していてもよい。
示した複素環は、好ましくは、非置換であるか、または1〜20個のC原子、特に1〜12個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基により置換されている。
【0021】
置換基Rは、ハロゲン原子、特にFおよび/またはClにより部分的に、もしくは完全に、またはCNもしくはNOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、すべての置換基Rは、完全にハロゲン化された形態であってはならない。さらに、置換基Rは、O、C(O)、C(O)O、C(O)NH、C(O)NR’、S、S(O)、S(O)NH、S(O)NR’、S(O)O、SO、SOO、SONH、SONR’、N、N=N、NH、NR’、PH、PR’、P(O)R’、P(O)R’O、OP(O)R’OおよびPR’=Nの群から選択された1個または2個の隣接していないヘテロ原子または原子団を含んでいてもよく、ここで、R’は、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換であるか、もしくは置換されているフェニルまたは非置換であるか、もしくは置換されている複素環であってもよい。
【0022】
R’において、C〜Cシクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0023】
R’において、置換されているフェニルは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、OH、C〜Cアルコキシ、CN、SCN、SCF、SOCF、C(O)O−C〜Cアルキル、NH、C〜CアルキルアミノまたはC〜Cジアルキルアミノ、C(O)NR”、SOOR”、SOX’、SONR”またはNHC(O)R”により置換されているフェニルを示し、ここで、X’は、F、ClまたはBrを示し、R”は、R’について定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキル、例えばo−、m−もしくはp−メチルフェニル、o−、m−もしくはp−エチルフェニル、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−もしくはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−もしくはp−アミノフェニル、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルを示す。
【0024】
R’において、複素環は、5〜13個の環要素を有する飽和または不飽和の単環式または二環式複素環式基を意味するものと解釈され、ここで、1個、2個もしくは3個のNおよび/または1個もしくは2個のSもしくはO原子が存在していてもよく、複素環式基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、OH、C〜Cアルコキシ、CN、SCN、SCF、SOCF、C(O)O−C〜Cアルキル、NH、C〜CアルキルアミノまたはC〜Cジアルキルアミノ、C(O)NR”、SOOR”、SOX’、SONR”またはNHC(O)R”により単置換または多置換されていてもよく、ここで、X’およびR”は、上記で示した意味を有する。
【0025】
複素環式基は、好ましくは、置換もしくは非置換2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2−、4−もしくは5−イミダゾリル、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソオキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、さらに好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、2−、3−、4−、5−もしくは6−2H−チオピラニル、2−、3−もしくは4−4H−チオピラニル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−1H−インドリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾオキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリニル、1−、2−、3−、4−もしくは9−カルバゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−アクリジニル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニルまたは1−、2−もしくは3−ピロリジニルである。
【0026】
一般性を制限せずに、本発明において用いる有機塩基の置換基Rの例は、以下のものである:
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
本発明の方法に適する塩基の選択は、当業者に、絶対的に困難を提示しない。特に好ましいのは、本発明において、(CN、(CNH、(CP、(CO)P、(CP、CH−S−CH、(CHN−C(O)−N(CH、C−Se−C、グアニジン、ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ベンジルアミン、N−エチルベンジルアミンまたは硫化ジフェニルの群から選択された塩基である。
【0029】
好適なアルコールを、所望のカチオンが、用いられる塩基のアルキル化の後に生成するように選択する。対応する選択は、当業者に、絶対的に困難を提示しない。一般性を制限せずに、本発明の方法のために用いられる、式の観点においてROH−OHにより記載されるべきであるアルコールは、好ましくは脂肪族アルコールであり、即ちROHは、この場合において、脂肪族基を示す。特に好ましいのは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アリルアルコール、ブタノール、ヘキサノールまたはベンジルアルコール、しかしまたフッ素化されている脂肪族アルコール類、例えば4,5,5−トリフルオロペント−4−エン−1−オールまたは3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンタン−1−オールの群から選択されたアルコールを用いるプロセスの変法である。
【0030】
本発明において用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィン類を、当業者に知られている慣用の方法により製造することができる。これらの化合物を、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンとの反応により製造する(V. Ya. Sememii et al., J. Gen. Chem. USSR(英訳)55, No. 12 (1985), 2415-2417)。対応する記載を、参照により本明細書中に導入し、開示の一部と見なす。
【0031】
また、本発明において、2種または3種以上の酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィン類の混合物を、用いることができる。好ましくは、1種のみの酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、各々の場合において、本発明の方法において反応させる。
本発明において用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィン類またはこれらの対応する誘導体は、同一であるかまたは異なる、上記でRと略した3つのパーフルオロアルキル基を有する。好ましいのは、各々の場合において同一のパーフルオロアルキル基を有する酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィン類を用いることである。
【0032】
本発明の方法の好ましい態様において、パーフルオロアルキル基が1〜20個のC原子を含み、直鎖状または分枝状である酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを用いる。特に好ましいのは、パーフルオロアルキル基が1〜12個のC原子を有する出発物質である。
一般性を制限せずに、用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンは、(CFP(O)、(CP(O)、(CP(O)および(CP(O)の群から選択された化合物である。
【0033】
本発明の方法に適する反応媒体は、好ましくは、当業者に知られている慣用の極性または無極性溶媒である。あるいはまた、本発明の方法を、溶媒を用いずに行うことができる。一般性を制限せずに、用いる極性溶媒は、特に好ましくはジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、ベンゼンまたはこれらの混合物である。
反応を本発明において好ましく行う温度は、−20℃〜200℃である。反応を、特に好ましくは、0℃〜100℃の温度において行う。反応温度は、極めて特に好ましくは室温である。
【0034】
本発明の方法の好ましい変法において、モル量に基づいて、反応体の1種の過剰量を用いずに、または5倍までの過剰量を用いて、行う。反応を、特に好ましくは、ほぼ等モル量の出発物質を用いて行う。
本発明はさらに、本発明の方法により製造されるビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩に関する。
【0035】
本発明の方法により製造された化合物は、塩様の特性、比較的低い融点(通常100℃より低い)を有し、イオン性液体として用いることができる。
本発明の方法により製造された塩を、多くの合成または触媒反応、例えばフリーデル−クラフツアシル化およびアルキル化、ディールス−アルダー付加環化、水素添加および酸化反応、ヘック(Heck)反応、スズキカップリング(Suzuki coupling)、ヒドロホルミル化のための溶媒として用いることができる。
【0036】
また、本発明の方法により製造された化合物を、非水性電解質として、随意に当業者に知られている他の電解質と組み合わせて、または電気化学電池における導電性塩として用いることが、可能である。
さらに、本発明の方法により製造された塩を、好適な反応における非水性極性物質として相間移動触媒として、界面活性剤(surfactant)(界面活性剤(surface active agent))として、可塑剤として、または均一触媒の不均一化のための媒体として、用いることができる。
【0037】
一般的なスキームは、本発明の方法を要約する:
【化4】

式中、R、R、X、YおよびROHは、明細書中に示した意味を有する。モノヒドロパーフルオロアルカンRHの場合において示した矢印は、化合物が揮発性であることを意味する。
【0038】
本明細書中に述べたすべての出願明細書、特許明細書および刊行物の完全な開示内容は、参照により本出願中に導入される。
さらなるコメントを伴わなくても、当業者は、前述の記載を最も広い範囲において用いることができることが、推測される。従って、好ましい態様および例は、単に記載的な開示であり、これは絶対的にいかなる方法によっても限定的ではないと考慮されるべきである。
【0039】
NMRスペクトルを、重水素を含む溶媒に溶解した溶液上で、20℃で、重水素ロックを有する5mmのH/BB広帯域ヘッドを有するBruker Avance 300分光計上で測定した。種々の核の測定周波数は、以下の通りである:H:300.13MHz、11B:96.92MHz、19F:282.41MHzおよび31P:121.49MHz。参照方法を、各々のスペクトルまたは各々のデータの組について別個に示す。
【0040】
例:
例1:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−エチルピリジニウム
【化5】

15.69g(38.8mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmのジクロロメタンおよび3.09g(39.1mmol)のピリジンと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に冷却した50mlのフラスコ中で混合する。1.85g(40.2mmol)のエタノールを、15分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを、蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、14.56gの暗赤色の極めて粘性の物質が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−エチルピリジニウムの収率は、91.7%である。
【0041】
【化6】

【0042】
例2:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸エチルジメチルスルホニウム
【化7】

4.92g(12.2mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmの1,2−ジメトキシエタンおよび0.775g(12.5mmol)の硫化ジメチルと、還流凝縮器を取り付けた50mlのフラスコ中で混合する。0.560g(12.2mmol)のエタノールを、1分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、還流下で5時間沸騰させ、1,2−ジメトキシエタンを、蒸留して除去する。残留物を、40℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、4.18gの固体物質が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸エチルジメチルスルホニウムの収率は、87.4%である。
【0043】
【化8】

【0044】
例3:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−メチルベンゾオキサゾリウム
【化9】

9.40g(23.3mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmの乾燥1,2−ジメトキシエタンおよび2.77g(23.3mmol)のベンゾオキサゾールと、還流凝縮器を取り付けた50mlのフラスコ中で混合する。0.745g(23.3mmol)のメタノールを、5分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、1時間撹拌し、1,2−ジメトキシエタンを蒸留して除去する。残留物を、40℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、9.44gの固体物質(融点78〜79℃)が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−メチルベンゾオキサゾリウムの収率は、93.1%である。
【0045】
【化10】

【0046】
例4:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリエチル−i−プロピルアンモニウム
【化11】

9.30g(23.0mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、8.34g(82.4mmol)のトリエチルアミンと、還流凝縮器およびマグネチックスターラーを取り付けた50mlのフラスコ中で混合する。1.41g(23.5mmol)のi−プロパノールを、この反応混合物に0℃(氷浴冷却)で、撹拌しながら加える。反応混合物を、0℃で5時間、および室温で36時間撹拌する。すべての揮発性生成物を、50℃で1.4Paの高度な減圧下で除去し、37%のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリエチルアンモニウムおよび63%のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリエチル−i−プロピルアンモニウムからなる9.25gの固体物質が得られる。
【0047】
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリエチル−i−プロピルアンモニウムを単離するために、この混合物を、15cmの水に溶解し、室温で水性KOH(5cmの水中の0.477gのKOH)で処理する。水を、回転蒸発器中で除去し、残留物を、3時間50℃で、高度な減圧(1.4Pa)の下で乾燥し、8.70gの固体物質が得られ、これを、15cmのジクロロメタン中に懸濁させ、沈降物を濾別し、フィルター上で5cmのジクロロメタンで2回洗浄する。ジクロロメタンを除去した後に、5.9gの固体塩が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリエチル−i−プロピルアンモニウムの収率は、酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィンを基準として57.7%である。
【0048】
【化12】

【0049】
例5:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸エチルトリブチルホスホニウム
【化13】

12.00g(29.7mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmのジクロロメタンおよび6.00g(29.7mmol)のトリブチルホスフィンと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に保持した50mlのフラスコ中で混合する。1.37g(29.7mmol)のエタノールを、3分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、15.60gの固体物質(融点42〜43℃)が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸エチルトリブチルホスホニウムの収率は、98.7%である。
【0050】
【化14】

【0051】
例6:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸テトラエチルアンモニウム
【化15】

12.62g(31.2mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmのジクロロメタンおよび3.16g(31.2mmol)のトリエチルアミンと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に保持した50mlのフラスコ中で混合する。1.44g(31.2mmol)のエタノールを、3分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、13.07gの固体物質(融点103〜105℃)が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸テトラエチルアンモニウムの収率は、97.1%である。
【0052】
【化16】

【0053】
例7:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−エチルベンゾチアゾリウム
【化17】

10.74g(26.6mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmのジクロロメタンおよび3.53g(26.1mmol)のベンゾチアゾールと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に保持した50mlのフラスコ中で混合する。1.22g(26.5mmol)のエタノールを、5分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、13.07gの固体物質(融点76〜77℃)が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−N−エチルベンゾチアゾリウムの収率は、ベンゾチアゾールを基準として82.0%である。
【0054】
【化18】

【0055】
例8:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸N,N’−ジメチルイミダゾリウム
【化19】

20.49g(50.7mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、30cmのジクロロメタンおよび4.16g(50.7mmol)のN−メチルイミダゾールと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に保持した100mlのフラスコ中で混合する。1.623g(50.7mmol)のメタノールを、15分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、19.23gの固体物質が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸N,N’−ジメチルイミダゾリウムの収率は、95.2%である(融点35〜37℃)。
【0056】
【化20】

【0057】
例9:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
【化21】

23.22g(57.5mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、30cmのジクロロメタンおよび4.72g(57.5mmol)のN−メチルイミダゾールと、還流凝縮器を取り付け、−65〜−70℃に保持した100mlのフラスコ中で混合する。2.643g(57.4mmol)のエタノールを、15分間にわたり室温で加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ジクロロメタンを蒸留して除去する。残留物を、60℃において1.4Paの減圧下で乾燥し、21.97gの液体物質が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムの収率は、92.9%である。
【0058】
【化22】

【0059】
例10:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−2−メチル−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウム
【化23】

6.72g(16.6mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、15cmのジメトキシエタンおよび1.93g(16.6mmol)のテトラメチル尿素と、還流凝縮器を取り付けた25mlのフラスコ中で混合する。0.532g(16.6mmol)のメタノールを、この混合物に加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、5時間沸騰させ、すべての揮発性の生成物を、50℃において高度の減圧(1.4Pa)の下で除去し、6.59gの粘性液体が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−2−メチル−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムの収率は、91.9%である。
【0060】
【化24】

【0061】
例11:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸メチルジフェニルセレノニウム
【化25】

6.08g(15.05mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、15cmのジメトキシエタンおよび3.51g(15.05mmol)のセレン化ジフェニルと、還流凝縮器を取り付けた25mlのフラスコ中で混合する。0.482g(15.05mmol)のメタノールを、この混合物に加え、この間反応混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、8時間沸騰させ、すべての揮発性の生成物を、50℃において高度の減圧(1.4Pa)の下で除去する。残留物を、ペンタン(5cmで3回)で洗浄し、1時間50℃で1.4Paの減圧下で乾燥し、4.06gの黄緑色の粘性液体が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸メチルジフェニルセレノニウムの収率は、49.2%である。
【0062】
【化26】

【0063】
例12:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−(4,5,5−トリフルオロ−4−ペンテニル)−3−メチルイミダゾリウム
【化27】

8.61g(21.3mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmの乾燥ベンゼンおよび1.75g(21.3mmol)のN−メチルイミダゾールと、還流凝縮器を取り付け、−25℃に保持したフラスコ中で混合する。2.98g(21.3mmol)の4,5,5−トリフルオロペント−4−エン−1−オールを、この混合物に室温で加え、この間マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、100℃の油浴温度において20分間加熱する。室温に冷却した後に、ホスフィン酸塩を、ベンゼン相から分離し、10cmのベンゼンで2回洗浄する。60℃(2時間)において13.3Paの減圧下で乾燥することにより、10.53gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸1−(4,5,5−トリフルオロ−4−ペンテニル)−3−メチルイミダゾリウムが、液体として得られる。収率は、97.6%である。
【0064】
【化28】

【0065】
例13:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル)−3−メチルイミダゾリウム
【化29】

8.27g(20.5mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmの乾燥ベンゼンおよび1.67g(20.3mmol)のN−メチルイミダゾールと、還流凝縮器を取り付け、−25℃に保持したフラスコ中で混合する。4.37g(20.4mmol)の3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンタン−1−オールを、この混合物に室温で加え、この間マグネチックスターラーを用いて撹拌する。反応混合物を、100℃の油浴温度において20分間加熱する。室温に冷却した後に、ホスフィン酸塩を、ベンゼン相から分離し、10cmのベンゼンで2回洗浄する。60℃(2時間)において13.3Paの減圧下で乾燥することにより、11.55gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル)−3−メチルイミダゾリウムが、液体として得られる。収率は、97.5%である。
【0066】
【化30】

【0067】
例14:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−アリル−3−メチルイミダゾリウム
【化31】

17.81g(44.1mmol)の酸化トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(CP=Oを、20cmの乾燥ベンゼンおよび3.62g(44.1mmol)のN−メチルイミダゾールと、還流凝縮器を取り付け、−65℃〜−70℃に保持したフラスコ中で混合する。2.56g(44.1mmol)のアリルアルコールを、この混合物に15分間にわたり室温で加え、この間マグネチックスターラーを用いて撹拌する。還流凝縮器を、室温に加温し、ベンゼンを蒸留して除去する。残留物を、80℃において13Paの減圧下で乾燥し、16.97gの粘性液体物質が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸−1−アリル−3−メチルイミダゾリウムの収率は、90.7%である。
【0068】
【化32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法であって、少なくとも、酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、アルコールおよびアルコールよりも強力に塩基性である有機塩基と反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
用いる有機塩基が、一般式(1)
X (1)
または一般式(2)
Y (2)
式中、
Xは、
【化1】

を示し、
Yは、−O−、−S−、−Se−、−C(=O)−、−C(=S)−または−C(=Se)−を示し、
Rは、Y≠Oについて−Hを示し、ここで、式(2)の場合において、すべてのRは、同時にHであってはならず、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニルまたは
3〜7個のC原子を有する飽和の、部分的に、もしくは完全に不飽和のシクロアルキル、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよいフェニル
を示し、
ここで置換基Rは、各々の場合において、同一であるかまたは異なっており、
ここで置換基Rは、互いに単結合または二重結合により対に結合していてもよく、
ここで、1つまたは2つ以上であるが、すべてではない置換基Rは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的に、もしくは完全に置換されているか、または−CNもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、
かつここで、置換基Rの1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NH−、−C(O)NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)NH−、−S(O)NR’−、−S(O)O−、−S(O)−、−S(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR’−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PH−、−PR’−、−P(O)R’−、−P(O)R’−O−、−O−P(O)R’−O−および−PR’=N−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここで、R’=フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換もしくは置換フェニルまたは非置換もしくは置換複素環である、
で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法。
【請求項3】
用いる有機塩基が、(CN、(CNH、(CP、(CO)P、(CP、CH−S−CH、(CHN−C(O)−N(CH、C−Se−C、グアニジン、ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ベンジルアミン、N−エチルベンジルアミンまたは硫化ジフェニルの群から選択された化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
用いるアルコールが、脂肪族アルコールであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法。
【請求項5】
用いるアルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、ヘキサノールおよびベンジルアルコールの群から選択された化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
用いるアルコールが、フッ素化された脂肪族アルコールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
用いるアルコールが、不飽和アルコールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンが、3個のパーフルオロアルキル基が同一であるかまたは異なっている酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法。
【請求項9】
用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンが、パーフルオロアルキル基が1〜12個のC原子を含み、直鎖状または分枝状である酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法。
【請求項10】
用いる酸化トリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンが、(CFP(O)、(CP(O)、(CP(O)または(CP(O)の群から選択された化合物であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
反応を、−20℃〜200℃の温度において行うことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の、イオン性液体としての使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の、相間移動触媒または界面活性剤としての使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の、電気化学電池における導電性塩としての使用。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法により製造されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸アニオンを含む有機塩の、可塑剤としての使用。

【公表番号】特表2007−516959(P2007−516959A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538694(P2006−538694)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012074
【国際公開番号】WO2005/049555
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】