説明

ビナフチル化合物の還元によるH8−ビナフチル誘導体の合成法

【課題】1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体から所望のH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を、高い選択性、且つ、高い収率で、光学純度を保持して製造する技術を提供する。
【解決手段】炭素ナノ繊維担体上に担持された金属触媒を用いて、1,1’−ビ−ナフチル誘導体を水素化還元して製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属錯体の配位子などに幅広く利用される有用な化合物である5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体(以下「H8−ビナフチル誘導体」という)を、対応するビナフチル誘導体から収率良く、しかも光学純度を保持したまま選択的に還元して製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2’−位が官能基化された1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体、例えば1,1’−ビ−2−ナフトール(以下「BINOL」と略記)、2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフチル(以下「DABN」と略記)は、不斉触媒反応において有効であると実証されている光学活性配位子である(非特許文献1−3)。さらにナフチル環を部分水素化したH8−ビナフチル骨格を基礎とする配位子は、有機溶媒に対する溶解性、2つのナフチル環が構成する2面角、ならびに電子供与性が向上すること、さらに対応するビナフチル誘導体と比較して、頻繁により高い不斉誘導を示すことから、近年、更なる開発の注目を集めている(非特許文献4)。
【0003】
このようなH8−ビナフチル誘導体のうち、市販の例はH8−1,1’−ビ−2−ナフトール(以下「H8−BINOL」と略記)のみであり、例えば東京化成(純度99%以上)、和光純薬(純度97%)、Aldrich社(純度99%)の製品として販売されているが、それ以外のH8−ビナフチル誘導体はH8−BINOLからの合成か、相応の2,2’−位が官能基化された1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体の還元によって得ている。
【0004】
上記1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体の還元は、一般にはCramらによって開発されたPtO2触媒を用いて酢酸の存在下で実施する方法が用いられる(非特許文献5)。しかしながら、該方法の実施には多くの触媒量(基質/触媒金属のモル比=約7)が必要である。更にBINOL等の2,2’−位に水酸基を有する化合物の反応では、光学純度を保持するには、低い温度で反応を行う必要があるため、1週間以上の長い還元時間が必要となる。
【0005】
また、ラネーNi/Al化合物をアルカリ溶液中で使用する還元法も知られている(非特許文献6、7)。その方法では、DABNや2−アミノ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(以下「NOBIN」と略記)の還元において光学純度が保持されるものの、BINOLでは部分ラセミ化が観測される。さらに多量の触媒と溶媒が必要であり、また、2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル(以下「BINOL−MOM2」と略記)の還元では、片側のナフチル環のみが部分還元されたH4−BINOL−MOM2が得られるに過ぎない。
【0006】
さらなる還元法として、活性炭や酸化アルミニウムの多孔質担体に担持されたパラジウム及びルテニウム触媒が知られている(特許文献1、非特許文献8)。その方法では反応温度50〜100℃、初期水素圧5〜6MPaで実施できるが、比較的多くの触媒量(基質/触媒金属のモル比=14)が必要である。BINOLの還元において、基質/触媒金属のモル比=100での実施も可能であるが、100℃、5時間半の反応で初期水素圧8MPa気圧の条件が必要である。更にBINOLの水酸基をアルキル基で保護した2,2’−ジアルコキシ−1,1’−ビナフチル誘導体の反応では1〜5%のラセミ化が観測され、得られるH8−ビナフチル誘導体の光学純度は90〜98%に低下する。
【0007】
【特許文献1】特開2005−126433号公報
【非特許文献1】C.Rosini,L.Franzini,A.Raffaelli,P.Salvadori,Synthesis,503 (1992)
【非特許文献2】L.Pu,Chem.Rev.,98,2405 (1998)
【非特許文献3】M.McCarthy,P.J.Guiry,Tetrahedron,57,3809 (2001)
【非特許文献4】T.T.−L.Au−Yeung,S.−S. Chan,A.S.C.Chan,Adv.Synth.Catal.345,537(2003)
【非特許文献5】D.J.Cram,R.C.Helgeson,S.C.Peacock,L.J.Kaplam,L.A.Domeier,P.Moreau,K.Koga,J.Mayer,Y.Chao,M.G.Siegel,D.H.G.Hoffman,D.Y.Sogah,J.Org.Chem.43,1930(1978)
【非特許文献6】H.Guo,K.Ding,Tetrahedron Lett.41,10061(2000)
【非特許文献7】X.Shen,H.Guo,K.Ding,Tetrahedron:Asymmetry,11,4321(2000)
【非特許文献8】A.Korostylev,V.I.Tararov,C.Fischer,A.Monsees,A.Borner,(oにはウムラウトが付く)J.Org.Chem.69,3220(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体から所望のH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を、高い選択性、且つ、高い収率で、光学純度を保持して、製造する新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、炭素ナノ繊維担体上に担持された金属触媒の存在下で、1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を水素化還元することによって、目的のH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を高い選択性で、且つ、高い収率で、光学純度を保持して製造できることを見いだした。
【0010】
即ち、本発明は、以下の項目の発明を提供する。
[項1]
下記一般式(1)で表される1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を、炭素ナノ繊維を担体とする金属触媒存在下で、水素化還元し、下記一般式(2)で表される5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を製造する方法。
【化1】

[a及びbはそれぞれ0〜6の整数を表す。a個のR及びb個のRは同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。X及びYは同一又は異なって、
式(A)、
【化2】

{式中、Rは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。mは0〜12の整数を表す。}
式(B)、
【化3】

{式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
式(C)、
【化4】

{式中、R及びRは同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
又は式(D)
【化5】

{式中、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。Rは炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
で表されるいずれかの基を表す。]
【化6】

[式中、a、b、X、Y、R及びRはそれぞれ、上記一般式(1)におけると同義である。]
【0011】
[項2]
金属触媒が、金属錯体を有機溶媒中で炭素ナノ繊維と混合して得られる触媒である、上記項1に記載の方法。
【0012】
[項3]
金属触媒が、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd及びPtからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含有する触媒である、上記項1又は2に記載の方法。
【0013】
[項4]
金属触媒が、Ru、Rh、Pd及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有する触媒である、上記項3に記載の方法。
【0014】
[項5]
1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体(S)に対する、金属触媒中の金属(C)のモル比(S/C)が、S/C=100〜10000の範囲内で水素化還元する、上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
【0015】
[項6]
一般式(1)においてa及びbがそれぞれ0で表される1,1’−ビ−2−ビナフチル誘導体を還元する、上記項1〜5のいずれかに記載の方法。
【0016】
[項7]
一般式(1)において、X及びYが同一又は異なって、それぞれ
式(E)、
【化7】

{式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。}
式(F)、
【化8】

{式中、R10はメチル基又はエチル基を表す。pは、1又は2の整数を表す。}
式(G)、
【化9】

{式中、R11は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。}
又は式(H)
【化10】

で表されるいずれかの基である、上記項1〜6のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従えば、炭素ナノ繊維担体に担持された金属担持触媒の存在下で、高選択率、且つ高収率で、光学純度を維持したままH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において用いられる炭素ナノ繊維(カーボンナノファイバー)は、特に限定されるものでない。また、一般公知のものを使用することができる。例えば、サブミクロンオーダーの繊維径をもつ炭素繊維が好ましい。炭素ナノ繊維は、炭素ヘキサゴン表面の配列が繊維軸に垂直なもの、ある角度をもつもの、あるいは平行なものの3種類に分類され、それぞれ、プレートレット(平板積層)、ヘリングボーン(魚骨状積層)、チューブラー(筒状)と名付けられている(例えば、「高圧ガス、Vol.141,No.2,10−18頁(2004)」参照)。本明細書においては、プレートレット(平板積層)炭素ナノ繊維を「CNF−P」、ヘリングボーン(魚骨状積層)炭素ナノ繊維を「CNF−H」、チューブラー(筒状)炭素ナノ繊維を「CNF−T」と略記する。このような炭素ナノ繊維は、公知の方法で得ることができる(例えば、H.Murayama,T.Maeda、Nature,1990,345,791、U.S. Patent,5149584、A.Chambers,NMRodriguez,R.T.K.Bakere,Langmuir,1995,11,3862)。
【0019】
本発明においては、上記のような炭素ナノ繊維で、表面にアモルファス層がなく、きれいな組織を有するものを使用するのが好ましい。例えば、CNF−HについてはM.−S.Kim,Dr.Thesis,Auburn University(1991)、CNF−P及びCNF−Tについては、A.Tanaka,S−H.Yoon,I Mochida,Carbon,2004,42,591、A.Tanaka,S.−H.Yoon,I Mochida,Carbon,2004,42,1291である。この条件を満たす市販の例は、米国のCatalytic Materials LLC社の製品であり、CNF−Pについては「Platelet GNF」、CNF−Hについては「Herringbone」、CNF−Tについては「Multi−walled Nanotubes」の商品名で、いずれも純度99.0%の製品として販売されている。金属触媒は適宜選択されるが、高選択率で、且つ、高収率で、光学純度を保持したまま目的化合物が得られるという観点からはCNF−Pが最も好ましい。
【0020】
本発明に係る炭素ナノ繊維を担体とする金属触媒は、一般的に水素化還元に用いられる金属が使用できる。金属の種類の好ましい例として、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt等の金属が挙げられる。好ましくは、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptの白金族金属であり、少なくとも1つの金属を含有していることが推奨される。より好ましくはRu、Rh、Pd、Ptであり、特にRuが推奨される。前記金属には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の金属が含まれてもよい。
【0021】
本発明に係る炭素ナノ繊維を担体とする金属触媒は、好ましくは金属錯体を溶解した有機溶媒中で炭素ナノ繊維と混合して得られる触媒が推奨される。調製方法しては、均一且つ安定的に担持されるという観点から、金属錯体を溶解した有機溶媒中に炭素ナノ繊維を懸濁させて、該懸濁液を水素化分解する方法、熱分解する(例えば熱還流)する方法、超音波を照射する方法などが推奨される。前記有機溶媒は、広範囲の中から適宜選択することができる。
また前記金属錯体としては、Ru(CO)12、Co(CO)、Fe(CO)、Os(CO)12、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Ir(CO)12、Cr(CO)、W(CO)、Mn(CO)10等の金属カルボニル錯体、Pd(dba)(CHCl)、Pt(dba)等のジベンジリデンアセトン錯体(dbaはジベンジリデンアセトンの略記)、Ni(cod)、Ru(cod)(cot)等のシクロオクタエン錯体(codはシクロオクタ−1,5−ジエンの略記、cotは1,3,5,7−シクロオクタテトラエンの略記)が例示される。
公知文献としては、例えば、Y.Motoyama,M.Takasaki,K.Higashi,S−H.Yoon,I Mochida,H.Nagashima,Chemistry Letters,2006,35,876、 特開2006−281201号公報などが例示される。
【0022】
本発明に係る炭素ナノ繊維を担体とする金属触媒は、上記の公報と同様に、平均粒子径を測定することができる。本発明における金属触媒の大きさは、一般に1〜20nmの範囲であり、好ましくは1〜10nmの範囲、より好ましくは1〜5nmの範囲である。
【0023】
本発明の製造方法において、1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体と金属触媒中の金属のモル比(S/C)がS/C=100〜10000の範囲で、金属触媒を使用することが好ましい。より好ましくはS/C=250〜3500の範囲であり、さらにS/C=300〜1500の範囲が最も好ましい。S/C=10000を超えると反応時間が長くなり、一方、S/C=100より低いと、金属触媒量に見合った効果はない。
【0024】
本発明における金属触媒中の金属担持量は、特に規定されるものではないが、金属触媒中、0.1〜20wt%の担持量が好ましく、さらには1〜15wt%の担持量がより好ましい。
【0025】
本発明における1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体は、上記一般式(1)で表される化合物である。該誘導体は、市販の化合物を用いても良く、また公知の方法で製造されたものを用いても良い。前記一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ同一又は異なって、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜6のアルキル基が推奨される。また、前記一般式(1)におけるa及びbは、それぞれ0〜6の整数であり、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0の整数である。
【0026】
本発明において、一般式(1)で表される1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体のX及びYは、同一又は異なって、それぞれ上記式(A)〜(D)で表され、好ましくは式(A)、式(B)又は式(C)であり、さらに式(E)、式(F)、式(G)又は式(H)がより好ましい。
【0027】
最も好ましいX及びYは、−OH、−OCH、−OCOC(CH、−O−CH−O−CH又は−NHから選択される有機基である。このような有機基を有する1,1−ビ−2−ナフチル誘導体として、具体的には、1,1’−ビ−2−ナフトール、2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル、2−メトキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、2−ピバロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフチルなどが挙げられる。
【0028】
本発明における1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体の純度は、特に限定されるものではなく、所望する目的物の純度によって適宜選択されるが、歩留まりなどを考慮すれば高純度であることが好ましい。また、該誘導体の光学純度は、99.0%以上が好ましく、より光学純度の高い目的物を得るという観点から、より好ましくは99.9%以上である。
【0029】
水素化還元における反応溶媒は、該反応に悪影響を与えないものであれば、反応条件に応じて適宜選択することができる。具体的には、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、含塩素系溶媒等が挙げられるが、一般的には、メタノール、エタノール、プロパノールなどが使用される。
また、反応温度は、1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体及び金属触媒の種類にもよるが、20℃〜150℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。反応時間は、通常1〜50時間である。
【0030】
基質濃度は、特に規定されるものではないが、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲が推奨される。
【0031】
反応水素圧は、原料である1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体に主として依存するが、1〜20MPaが好ましく、より好ましくは3〜7MPaである。
【0032】
上記で例示された製造条件で水素化還元した後、冷却し、減圧吸引ろ過、遠心分離等により、金属触媒と反応溶液とを分離して、目的物の溶液を得ることができる。分離された反応溶液から再沈殿や再結晶、或いは該反応溶液の反応溶媒を留去するなどを行った後、乾燥して、所望のH−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体が得られる。また、分離された触媒は、必要に応じて再調整して、再利用が可能である。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0034】
本実施例で用いた炭素ナノ繊維担持ルテニウム触媒は、上述の文献(Y.Motoyama,M.Takasaki,K.Higashi,S.−H.Yoon,I Mochida,H.Nagashima,Chemistry Letters,2006,35,876,特開2006−281201号公報)に従って合成したものである。
【0035】
実施例で使用した光学活性(R)−BINOLには、東京化成社製:Cat.No.B1142(99.1%ee)のものを、エーテル/ヘキサンから再結晶して純度>99.9%eeとしたものを用いた。他の1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体は、(R)−BINOL(>99.9%ee)から以下の文献に従って合成し、その光学純度(>99.9%ee)をキラルHPLCで確認したものを用いた。
K.Maruoka,S.Sato,H.Yamamoto,J.Am.Chem.Soc.,117,1165(1995)
H.Hocke,Y.Uozumi、Tetrahedron,59,619(2003)
D.S.Lingenfelter,R.C.Helgeson,D.J.Cram,J.Org.Chem,46,393(1981)
H.Kitajima,K Ito,Y.Aoki,T.Katsuki,Bull,Chem,Soc,Jpn.,70,207(1997)
【0036】
(製造例1) 金属触媒の調製方法
30mLの2口フラスコの片方に上部に三方コックをつけた冷却管、もう一方に活栓を付け、磁気撹拌子を加えて、0.01MPaで減圧乾燥下後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。平板積層炭素ナノ繊維(100mg)とRu(CO)12(31.9mg、0.05mmol)をフラスコに加え、5.3×10−6MPaで約10分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。トルエン(17mL)をシリンジで加えて錯体を溶解した。この炭素繊維が懸濁した錯体溶液を24時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却した後、メンブランフィルターを用いて濾別し、そのままトルエン(50mL)と引き続きエーテル(50mL)で洗浄した。得られた炭素繊維を30mLナスフラスコに移し、その上部に三方コックをつけた後、5.3×10−6MPaの減圧下、室温で乾燥することにより、ルテニウム担持平板積層炭素ナノ繊維構造体(102mg)を得た。
以上の操作により得られたRu/CNF−Pのルテニウム担持量をICP−MS(ICP質量分析)により測定したところ、1.7wt%であった。
【0037】
(実施例1) (R)−1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)の水素化
【化11】

100 mLオートクレーブ用ガラス内管に、平板積層炭素ナノ繊維に担持したルテニウム触媒(金属担持量;1.7wt%、Ru/CNF−P;10mg)、(R)−1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)(143.2mg、0.5mmol;>99.9%ee)を加え、エタノール(10mL)に溶解した[基質/金属のモル比(S/C)=297]。このガラス内管をオートクレーブに設置し、ゲージ圧4MPaで反応した。オートクレーブを70℃のオイルバスにつけ、5時間半撹拌した。反応容器を室温まで冷却した後、オートクレーブのコックを徐々に開放して常圧に戻した。反応物とルテニウム触媒を、セライトを助剤にして、ろ過により分離し、ジクロロメタンでオートクレーブ用内管を洗浄した。得られた洗浄液をろ液に加えた後、溶媒を減圧留去することで目的物の(R)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(H−BINOL)を定量的に得た。その後、シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/エーテル=2/1)にて単離した。単離収率は99%であった。反応条件、収率等を表1に示した。
【0038】
得られたH−BINOLは、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトル(NMR)により、その構造及び純度 (>99%) を確認した。
H NMR (396MHz,CDCl):
1.62−1.84 (m,8H),2.16(dt,J=17.4,6.3Hz,2H),2.30(dt,J=17.4,6.3Hz,2H),2.75(t,J=6.3Hz,2H),4.54(s,2H),6.83(d,J=8.2Hz,2H),7.07(d,J=8.2Hz,2H)
13C NMR (99.5MHz,CDCl3):
23.0,23.1,27.2,29.3,113.0,118.9,130.2,131.1,137.2,151.5
【0039】
得られたH−BINOLの光学純度は、キラルHPLC[(DAICEL CHIRALCEL OD−H,UV−Detector 254nm,Hexane/i-PrOH=20/1,Flow Rate0.5mL/min),t=15.1min
(R),17.9min (S)]により>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0040】
(比較例1〜2)
本発明に係る金属触媒を表1に記載の触媒に代えた他は、実施例1と同じ操作を行って、H−BINOLを得た。反応条件、収率等を表1に示した。
なお、「Ru/AC」は、活性炭(関東化学:Cat.No.01085−02)を用いて合成した活性炭担持ルテニウム触媒を指し、「Ru/C」は、市販の炭素担持ルテニウム触媒(N.E.CHEMCAT社製、dry品Aタイプ)を指す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から判るように、本発明に係るRu/CNF-P触媒は高い触媒活性を示す。一方、活性炭担持触媒(Ru/AC)は、中間生成物である片側のナフチル環のみが還元されたテトラヒドロ誘導体(H4-BINOL)が副生し、選択率及び収率が低い。
【0043】
(実施例2) (R)−2−メトキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(BINOL−Me)の水素化
【化12】

基質として(R)−2−メトキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(BINOL−Me)(150.0mg、0.5mmol、光学純度>99.9%ee)を用いた他は、表2に記載の条件で、実施例1と同様の操作を行った。目的の(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2−メトキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(H8−BINOL−Me)が得られた。シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/2)にて、単離した。単離収率は96%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0044】
得られたH−BINOL−Meは、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルにより、その構造及び純度 (>99%) を確認した。
1H NMR (396MHz,CDCl3):
1.61−1.81(m,8H),2.04−2.21(m,2H),2.21−2.35(m,2H),2.70−2.83(m,4H),3.69(s,3H),4.38(bs,1H),6.78(d,J=8.2Hz,1H),6.81(d,J=8.2Hz,1H),7.01(d,J=8.2Hz,1H),7.13(d,J=8.2Hz,1H)
13C NMR (99.5 MHz,CDCl3):
23.06,23.15,23.19,23.24,27.1,27.3,29.37,29.38,55.8,109.0,112.1,122.0,122.8,129.1,129.5,130.3,130.5,136.2,138.1,150.2,155.6
【0045】
得られたH−BINOL−Meの光学純度は、キラルHPLC[(DAICEL CHIRALCEL OD−H,UV−Detector 254nm,Hexane/i-PrOH=100/1,Flow Rate 0.5mL/min),tR=18.0min (R),19.3min (S)]により>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0046】
(実施例3) (R)−2−ピバロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(BINOL−Piv)の水素化
【化13】

基質として(R)−2−ピバロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(BINOL−Piv)(185 mg、0.5 mmol)、光学純度>99.9%ee)を用いた他は、表2に記載の条件で、実施例1と同様の操作を行った。目的の(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2−ピバロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(H8−BINOL−Piv)が得られた。シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)にて単離した。単離収率は92%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0047】
得られたH−BINOL−Pivは、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルにより、その構造及び純度 (>99%) を確認した。
1H NMR (396 MHz,CDCl):
0.95(s,9H),1.59−1.81(m,8H),2.02(dt,J= 17.4,5.3Hz,1H),2.14(dt,J =17.4,6.0Hz,1H),2.32(dt,J = 17.4,6.3Hz,1H),2.42(dt,J =17.4,6.3Hz,1H),2.63−2.77 (m,2H),2.77−2.88 (m,2H),4.73(bs,1H),6.76(d,J =8.2 Hz,1H),6.87(d,J = 8.2 Hz,1H),6.96(d,J = 8.2 Hz,1H),7.16 (d,J = 8.2Hz,1H)
13C NMR (99.5 MHz,CDCl):
22.7,22.9,23.2,23.3,26.7,26.9,27.3,29.3,29.7,38.7,114.1,119.3,122.5,128.1,129.4,129.8,130.2,135.85,135.92,138.3,147.2,150.8,178.2
【0048】
得られたH−BINOL−Pivの光学純度は、キラル[HPLC (DAICEL CHIRALCEL OD−H,UV−Detector 254 nm,Hexane/i-PrOH =500/1,Flow Rate 0.5 mL/min),t = 20.8min (R),23.0min (S)、 HRMS (EI) Calcd for C30 378.2195,found 378.2194]により>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0049】
(実施例4) (R)−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(BINOL−Me2)の水素化
【化14】

基質として(R)−2,2’−ジメトキシ−1,1’ −ビナフチル(BINOL−Me2)(157.0mg、0.5mmol、光学純度>99.9%ee)を用いた他は、表2に記載の条件で、実施例1と同様の操作を行った。目的の(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(H−BINOL−Me2)が得られた。 NMRによる収率は>99%であり、シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)にて、単離した。単離収率は95%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0050】
得られたH−BINOL−Meは、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルにより、その構造及び純度 (>99%) を確認した。
H NMR (396MHz,CDCl):
1.56−1.81 (m,8H),2.08(dt、J = 17.4, 6.3Hz, 2H), 2.27(dt、J = 17.4, 6.3Hz, 2H),2.66−2.87 (m,4H),3.67(s,6H),6.78(d,J = 8.2Hz,2H),7.06 (d,J =8.2Hz,2H)。
13C NMR(99.5MHz,CDCl):
23.2,23.3,27.2,29.5,56.1,108.9,126.0,128.8,129.6,136.8,154.8
なお、得られたH8−BINOL−Me2の光学純度は、BBrを用いてメチル基を脱離し、H−BINOL として決定した結果、光学純度は>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0051】
(実施例5) (R)−2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル(BINOL−MOM2)の水素化
【化15】

基質として(R)−2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル(BINOL−MOM)(187.2 mg、0.5mmol、光学純度>99.9%ee)を用いた他は、表2に記載の条件で、実施例1と同様の操作を行った。目的の(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル(H8−BINOL−MOM2)が得られた。シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/塩化メチレン=1/1)にて単離した。単離収率は98%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0052】
得られたH−BINOL−MOM2は、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造及び純度 (>99%) を確認した。
H NMR (396MHz,CDCl):
1.60−1.78(m,8H),2.10 (dt,J = 17.4,6.3Hz,2H),2.30(dt,J = 17.4,6.5Hz,2H),2.77 (t,J = 6.0 Hz,4H),3.28(s,6H),4.96(d,J = 6.8Hz,2H),5.02(d,J = 6.8Hz,2H),6.98 (d,J = 8.7Hz,2H),7.04(d,J = 8.7Hz,2H)
13C NMR(99.5 MHz,CDCl):
23.2,23.3,27.4,29.5,55.7,94.8,112.8,127.2,128.9,131.0,136.9,152.2
【0053】
得られたH−BINOL−MOM2の光学純度は、キラル[HPLC (DAICEL CHIRALCEL OD−H,UV−Detector 254nm,Hexane/i-PrOH = 500/1,Flow Rate 0.5mL/min),t = 15.4min (S),16.8min (R),HRMS(EI) Calcd for C30 382.2144,found 382.2144]により>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0054】
(実施例6) (R)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフチル(DABN)の水素化
【化16】

基質として(R)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフチル(DABN)(71.1 mg、0.25 mmol、光学純度>99.9%ee)を用い、100℃で24時間反応したことを用いた他は、表2に記載の条件で、実施例1と同様の操作を行った。目的の(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフチル(H−DABN)が得られた。シリカゲルカラム(溶媒:アセトン)にて単離した。単離収率は80%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0055】
得られたH−DABNは、H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造及び純度 (>99%) を確認した。
H NMR (396 MHz,CDCl):
1.61−1.76 (m,8H),2.17(dt,J = 17.4,6.5Hz,2H),2.28(dt,J = 17.4,6.0Hz,2H),2.71(t,J = 6.0 Hz,4H),3.31 (bs,4H),6.62 (d,J = 8.2Ht,2H),6.92(d,J = 8.2 Hz,2H)
13C NMR (99.5 MHz,CDCl):
23.3,23.5,27.1,29.5,113.2,122.1,127.7,129.3,136.3,141.7
【0056】
得られたH−DABNの光学純度は、キラル[ HPLC (DAICEL CHIRALCEL OD−H,UV−Detector 254nm,Hexane/i-PrOH = 20/1,Flow Rate 0.5mL/min),t=24.7min (R),28.0min (S) ]により>99.9%eeであり、光学純度の低下は観測されなかった。
【0057】
(実施例7) (R)−1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)の水素化(S/C = 1389)
【化17】

100 mLオートクレーブ用ガラス内管に、平板積層炭素ナノ繊維に担持したルテニウム触媒(金属担持量;1.7wt%、Ru/CNF-P;15.0mg)、(R)−1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)(1.0g、3.5mmol、光学純度>99.9%ee)を加え、エタノール(15 mL)に溶解した[基質/金属のモル比(S/C)=1460]。このガラス内管をオートクレーブに設置し4MPaの水素を充填した後、このオートクレーブを50℃のオイルバスにつけ、48時間撹拌した。反応容器を室温まで冷却した後、オートクレーブのコックを徐々に開放して常圧に戻した。反応物とルテニウム触媒を、セライトを助剤としたろ過により分離し、ジクロロメタンでオートクレーブ用内管を洗浄した。得られた洗浄液をろ液に加えた後、溶媒を減圧留去することで目的物の(R)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(H8−BINOL)が得られた。シリカゲルカラム(溶媒:ヘキサン/エーテル=2/1)にて単離した。単離収率は99%、光学純度は>99.9%eeであった。反応条件、単離収率、光学純度等を表2に示した。
【0058】
(実施例8) 金属触媒の再利用
【0059】
実施例5と同様に反応を行なった後、ろ過により平板積層炭素ナノ繊維に担持したルテニウム触媒(金属担持量;1.7wt%、Ru/CNF-P)を回収し、該触媒を用いて実施例5と同様の手順で3回繰り返し反応を行なった。その結果、3回の反応において、目的とする(R)−5,5’,6,6’ ,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−2,2’−ジ(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル(H8−BINOL−MOM2)がほぼ定量的に得られ、その光学純度も>99.9%eeであった。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から判るように、いずれの実施例でも、高選択率・高収率で且つ光学純度を保持したまま、目的物のH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体が得られた。特に、実施例4〜6から判るように、比較的反応性の低いジアルコキシ誘導体やジアミノ誘導体においても、定量的に目的物のH−ビナフチル誘導体が光学純度の低下を伴うことなく得られた。
また、実施例8から、比較的少ない触媒量で、目的とするH−ビナフチル誘導体を高選択率で、且つ、高収率に、光学純度を保持したまま、得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によって、H8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を、光学純度を保持したままで、高い選択性で且つ高い収率で製造し得ることが可能となる。その結果、不斉誘導を示すキラル配位子であるH8−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体の開発が進み、各種の有用な材料の開発に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を、炭素ナノ繊維を担体とする金属触媒存在下で、水素化還元し、下記一般式(2)で表される5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体を製造する方法。
【化1】

[a及びbはそれぞれ0〜6の整数を表す。a個のR及びb個のRは同一又は異なって、それぞれ炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。X及びYは同一又は異なって、
式(A)、
【化2】

{式中、Rは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。nは1〜4の整数を表す。mは0〜12の整数を表す。}
式(B)、
【化3】

{式中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
式(C)、
【化4】

{式中、R及びRは同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
又は式(D)
【化5】

{式中、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。Rは炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表す。}
で表されるいずれかの基を表す。]
【化6】

[式中、a、b、X、Y、R及びRはそれぞれ、上記一般式(1)におけると同義である。]
【請求項2】
金属触媒が、金属錯体を有機溶媒中で炭素ナノ繊維と混合して得られる触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属触媒が、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd及びPtからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含有する触媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属触媒が、Ru、Rh、Pd及びPtからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含有する触媒である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1,1’−ビ−2−ナフチル誘導体(S)に対する、金属触媒中の金属(C)のモル比(S/C)が、S/C=100〜10000の範囲内で水素化還元する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
一般式(1)においてa及びbがそれぞれ0で表される1,1’−ビ−2−ビナフチル誘導体を還元する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
一般式(1)において、X及びYが同一又は異なって、それぞれ
式(E)、
【化7】

{式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。}
式(F)、
【化8】

{式中、R10はメチル基又はエチル基を表す。pは、1又は2の整数を表す。}
式(G)、
【化9】

{式中、R11は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。}
又は式(H)
【化10】

で表されるいずれかの基である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2009−46430(P2009−46430A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214115(P2007−214115)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】