説明

ビフェニルテトラスルホン酸化合物、その製造方法、重合体及び高分子電解質

【課題】イオン伝導性が付与された重合体のモノマーに好適な、新規なスルホン酸基を有するモノマー及び該モノマーを重合して得られる重合体を提供する。
【解決手段】式(1)


で表わされる化合物であることを特徴とするビフェニルテトラスルホン酸化合物及び式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位を含む重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビフェニルテトラスルホン酸化合物、その製造方法、重合体及び高分子電解質等に関する。
【背景技術】
【0002】
両末端が塩素化された芳香族ポリエーテルなどの脱離基を有する高分子に、イオン伝導性を付与するモノマーとして、−SO−の部分構造(以下、「スルホン酸基」と記すことがある)を有するモノマーが知られている。かかるスルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル等が知られており、これらのモノマーから得られるスルホン酸基を有する重合体も知られている(特許文献1)。また、該スルホン酸基を有する重合体は、燃料電池用高分子電解質膜として使用できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−270118号公報(実施例)
【特許文献2】特開2007−177197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、脱離基を有する高分子にイオン伝導性を付与し得る新規なモノマー、該モノマーを重合して得られる新規な重合体及び該重合体を含む新規な高分子電解質等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは、スルホン酸基を有するモノマーについて鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。すなわち、本発明は、
<1> 式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物;
<2> 式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物に含まれるRの少なくとも1つが、水素原子又はカチオンであり、Rの少なくとも1つが水素原子である<1>記載の化合物;
<3> 式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物に含まれるRの少なくとも1つが、炭素数1〜6のアルキル基である<1>又は<2>記載のビフェニルテトラスルホン酸化合物;
【0006】
<4> 式(2)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物をカップリング反応させる工程を含む式(1)

(式中、R、R、Xは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物の製造方法;
<5> カップリング反応させる工程が、金属銅及び1価のハロゲン化銅の存在下にカップリング反応させる工程である<4>記載の製造方法;
【0007】
<6>式(2)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物の製造方法であって、
式(3)

(式中、R、R、Xは前記と同じ意味を表わし、AはNHを表わす。)
で示されるアニリン化合物に亜硝酸化合物を反応させてジアゾニウム化合物を生成させる工程、及び
前記工程で得られたジアゾニウム化合物に、ハロゲン化合物を反応させて、式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物を得る工程
を含むベンゼンジスルホン酸化合物の製造方法;
【0008】
<7> <1>〜<3>のいずれか記載の式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位を含む重合体;
<8> 式(X)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む<7>記載の重合体。
<9> 式(5)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、nは2以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む<7>又は<8>記載の重合体。
<10> 式(5’)


(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、n’は5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む<7>又は<8>記載の重合体;
<11> 請求項1〜3のいずれか記載の式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位からなる重合体。
<12> 式(5)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、nは2以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位を含む高分子及び式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる工程を含む重合体の製造方法。
<13> 式(5’)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、n’は5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位を含む高分子及び式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる工程を含む重合体の製造方法;
等である。
<14> <7>〜<11>いずれか記載の重合体を含む高分子電解質。
<15> <14>記載の高分子電解質を含む高分子電解質膜。
<16> <14>記載の高分子電解質と、多孔質基材とを有する高分子電解質複合膜。
<17> <14>記載の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物。
<18> <15>記載の高分子電解質膜、<16>記載の高分子電解質複合膜及び<17>記載の触媒組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する膜電極接合体。
<19> <18>記載の膜電極接合体を有する高分子電解質形燃料電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脱離基を有する高分子にイオン伝導性を付与し得るモノマー、該モノマーを重合して得られる新規な重合体及び該重合体を含む新規な高分子電解質等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、前記式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物である。
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。
がカチオンである場合、このRと−SO−の部分構造(スルホン酸基)に含まれる酸素原子とは、イオン結合で結合している。具体的にはカチオンがナトリウムイオン(Na)である場合を例示すると、−SONaとなっている。
ここで、カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、セシウムイオン(Cs)などのアルカリ金属イオン等、例えば、アンモニウムイオン(NH)、メチルアンモニウムイオン(CHNH)、ジエチルアンモニウムイオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、ジイソプロピルジエチルアンモニウムイオン、テトラ(n−オクチル)アンモニウムイオン、テトラ(n−デシル)アンモニウムイオン及びトリフェニルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0011】
が水素原子、又は前記炭化水素基である場合、このRとスルホン酸基に含まれる酸素原子とは、共有結合で結合している。具体的には炭化水素基がメチル基(Me)である場合を例示すると、−SOMeとなっている。
【0012】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキル基、
【0013】
例えば、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基等のアリール基等を挙げることができる。
【0014】
置換基を有していてもよい炭化水素基における置換基としては、例えば、フッ素原子、例えば、シアノ基、
例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の炭素数1〜20のアルコキシ基、
例えば、前記で例示されたアリール基、
例えば、フェノキシ基、n−ブチルフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及び2−アントリルオキシ基等の前記に例示したアリール基と酸素原子とからなる炭素数6〜20のアリールオキシ基等
を挙げることができる。
【0015】
好ましいRとしては、例えば、水素原子、アルカリ金属イオン、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、水素原子、ナトリウムイオン(Na)、2,2−ジメチルプロピル基、ジイソプロピル基等が挙げられる。
イオン伝導性を付与するモノマーとして、本発明のビフェニルテトラスルホン酸化合物を用いる場合、Rとしては、分子内の少なくとも2つのR、好ましくは、分子内の3つ又は4つのRが、酸、塩基又はハロゲン化合物で脱保護し得る炭化水素基が好ましい。すなわち、Rは、式(1)中の−ORからROHとして脱保護し得る炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、例えば、2,2−ジメチルプロピル基、ジイソプロピル基等が好ましい。
【0016】
式(1)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、前記Rとして例示されたものを挙げることができる。
【0017】
炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(4,6−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基及びアントラセニルメチル基等を挙げることができる。
置換基を有していてもよいアラルキル基における置換基としては、前記に例示された置換基を挙げることができる。
【0018】
炭素数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基及びアントラセニルメトキシ基等を挙げることができる。
置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基における置換基としては、前記に例示された置換基を挙げることができる。
【0019】
前記式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物におけるRは、分子内で同一でも異なっていてもよいが、後述するビフェニルテトラスルホン酸化合物の製造方法における製造の容易さから、いずれも同一であるものが好ましい。
好ましいRとしては、例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、水素原子等が挙げられる。また、分子内の4つのR2のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましいが、製造の容易さから、分子内4つのR2のうち2つ以上が水素原子である式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物がさらに好ましく、分子内の4つのRがいずれも水素原子である式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物がとりわけ好ましい。
【0020】
式(1)中、Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表わす。
は、分子内で同一でも異なっていてもよいが、製造の容易さから同一であるものが好ましい。
好ましいXとしては、例えば、塩素原子、臭素原子等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、塩素原子等を挙げることができる。
【0021】
式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物としては、例えば、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム、4,4’−ジブロモ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム、4,4’−ジヨード−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラメチル、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラエチル、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラフェニル、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラアンモニウム、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸ジメチルジナトリウム、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物の異なる例示としては、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である化合物であり、より好ましくは、Rが炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが水素原子であり、Xが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であるビフェニルテトラスルホン酸化合物等を例示することができる。
具体的には、例えば、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラメチル、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラエチル、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラフェニル等を挙げることができる。
【0023】
重合体にイオン伝導性を付与するモノマーとして、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を用いる場合、該化合物を含む重合体の製造の容易さから、該化合物としては、分子内の少なくとも2つのRが置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であるビフェニルテトラスルホン酸化合物等が好ましい。該ビフェニルテトラスルホン酸化合物の製造方法としては、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物のRがいずれもカチオンであるものをアルコールで保護する方法等が挙げられる。
具体的には、例えば、[1]Rがカチオンである式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機塩基存在下、塩化チオニルなどの亜硫酸のハロゲン化物を反応させ、
別途、[2]アルコールにブチルリチウムなどの塩基を反応させて、アルコキサイドを調製し、
[3][1]の反応で得られたマスと[2]の反応で得られたマスを混合する方法などを挙げることができる。
【0024】
式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物について、前記と異なる製造方法としては、例えば、式(2)

で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物をカップリング反応させる工程(以下、カップリング反応工程と記すことがある)を含む方法等を挙げることができる。
ここで、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表わし、好ましくは、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくは、Xが塩素原子の場合にはXは臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、Xが臭素原子の場合にはXはヨウ素原子が好ましい。
【0025】
カップリング反応工程は、例えば、遷移金属単体及び/又は遷移金属化合物存在下に行うことが好ましい。遷移金属単体及び遷移金属化合物を併用する場合には、遷移金属単体と遷移金属化合物のそれぞれの遷移金属元素は同一でも異なっていてもよい。
かかる遷移金属元素としては、例えば、銅を挙げることができる。
【0026】
カップリング反応工程に遷移金属単体として銅を使用する場合、金属銅が好ましい。その使用量としては、式(2)で示されるベンゼンジスルホン酸化合物1モルに対して、例えば、0.5〜10モルの範囲等を挙げることができる。0.5モル以上であると、後処理が容易になる傾向があることから好ましく、10モル以下であると、収率が向上する傾向があることから好ましい。
金属銅の形状は、例えば、粉体状、削り状、粒子状等を挙げることができ、操作性の点からは粉体状が好ましい。このような金属銅は、市場から容易に入手可能である。
市販の金属銅は、その表面のごく一部が、環境中の酸素により酸化され酸化銅になっていることもある。酸化銅を含む金属銅はそのままカップリング反応工程に供してもよいし、酸化銅を除去した後にカップリング反応工程に供してもよい。
【0027】
カップリング反応工程に金属銅を使用する場合、遷移金属化合物として1価のハロゲン化銅を併用することが好ましい。かかる1価のハロゲン化銅としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等が挙げられ、好ましくはヨウ化銅である。かかる1価のハロゲン化銅の使用量は、式(2)で示されるベンゼンジスルホン酸化合物1モルに対して、例えば、0.1〜50モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは0.5〜10モルの範囲が挙げられる。
【0028】
カップリング反応工程は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物及び式(2)で示されるベンゼンジスルホン酸化合物が溶解し得る溶媒であればよい。かかる溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。かかる溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
好ましい溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、さらに好ましくは、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
溶媒の使用量は、式(2)で示されるベンゼンジスルホン酸化合物1重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは1〜10重量倍が挙げられる。
【0029】
カップリング反応工程は、例えば、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
カップリング反応工程における反応温度としては、例えば、0〜300℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、50〜250℃の範囲等が挙げられ、より好ましくは、例えば、100〜200℃の範囲等が挙げられ、とりわけより好ましくは、例えば、140〜180℃の範囲等が挙げられる。該反応温度が0℃以上であると、式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物の収率が向上する傾向があることから好ましく、300℃以下であると分解反応等の副反応が抑制される傾向があることから好ましい。
カップリング反応工程における反応時間としては、例えば、1〜48時間の範囲等を挙げることができる。
【0030】
カップリング反応工程に供せられる式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物の製造方法としては、例えば、式(3)

(式中、R、R、Xは前記と同じ意味を表わし、AはNHを表わす。)
で表わされる化合物(以下、アニリン化合物と記すことがある)に亜硝酸化合物を反応させてジアゾニウム化合物を生成させる工程、及び、前記工程で得られたジアゾニウム化合物に、ハロゲン化合物を反応させて、式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物を得る工程を含む反応(いわゆる、Sandmeyer反応)によって製造する方法等を挙げることができる。
【0031】
亜硝酸化合物としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸アルカリ金属塩、例えば、亜硝酸エチル、亜硝酸−t−ブチルなどの炭素数1〜6のアルキル基を有する亜硝酸アルキルエステルなどが挙げられ、その使用量はアニリン化合物1モルに対して、例えば、0.8〜1.5モルの範囲等を挙げることができる。かかる亜硝酸化合物は、希釈せずに用いてもよいし、水などに溶解させて溶液として用いてもよい。
亜硝酸化合物を反応させる工程は、例えば、アニリン化合物を含む酸性溶液に亜硝酸化合物を加える方法等を挙げることができ、亜硝酸化合物を加える際の温度は、例えば、−30〜40℃の範囲等をあげることができ、好ましくは、例えば、−10〜20℃の範囲等が挙げられる。
亜硝酸化合物を反応させる工程により、アニリン化合物におけるAがジアゾニオ基(−N≡N)に置換されたジアゾニウム化合物を得る。
【0032】
前記工程で得られたジアゾニウム化合物に、ハロゲン化合物を反応させて、式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物を得る工程に用いられるハロゲン化合物としては、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、酸化銅(I)、ヨウ化銅(I)、シアン化銅(I)などの1価のハロゲン化銅、例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)、酸化銅(II)、ヨウ化銅(II)、シアン化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)などの2価のハロゲン化銅、例えば、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素などが挙げられる。かかるハロゲン化合物はそれぞれ単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
好ましくは、ハロゲン化合物を二種以上の組み合わせて用いることが好ましく、例えば、塩化銅(I)と塩化水素、塩化銅(I)と臭化水素、塩化銅(I)とヨウ化水素、臭化銅(I)と塩化水素、臭化銅(I)と臭化水素、臭化銅(I)とヨウ化水素、ヨウ化銅(I)と塩化水素、ヨウ化銅(I)とヨウ化水素、ヨウ化銅(I)とヨウ化水素などの1価のハロゲン化銅とハロゲン化水素との組み合わせ、例えば、臭化銅(I)と臭化水素と臭化カリウム、臭化銅(I)と臭化水素とヨウ化カリウム、臭化銅(I)とヨウ化水素と臭化カリウム、臭化銅(I)とヨウ化水素とヨウ化カリウム、ヨウ化銅(I)とヨウ化水素とヨウ化カリウム、塩化銅(I)とヨウ化水素とヨウ化カリウムなどの1価のハロゲン化銅とハロゲン化水素とハロゲン化金属との組み合わせ等が挙げられる。
ハロゲン化合物の使用量はジアゾニウム化合物1モルに対して、例えば、合計で0.5〜10モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1〜5モルの範囲等が挙げられる。
式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物を得る工程における反応温度としては、例えば、−10〜100℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは0〜70℃の範囲等が挙げられる。
【0033】
アニリン化合物は、例えば、式(4)

(式中、R、R及びXは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物を、硫酸及び/又は発煙硫酸でスルホン化する方法(Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1964,29,(1969)参照)等によって調製することができる。
【0034】
本発明の重合体は、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位を含む重合体であり、該重合体は、イオン伝導性を有することから高分子電解質として用いることができる。式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位としては、例えば、式(1’)

で示される構造単位(式(1’)中、R及びRは前記と同じ意味を表わす。)が好ましい。
重合体としては、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物のホモポリマー、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物と他のモノマーとの共重合体、例えば、芳香族ポリエーテル及び式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物の共重合体等を挙げることができる。
ここで、芳香族ポリエーテルとは、置換基を有していてもよい2価の芳香族基とエーテル結合とからなる構造単位を含む高分子を意味し、該エーテル結合は、−O−(エーテル結合)、−S−(チオエーテル結合)を意味する。
【0035】
また該重合体は、水に不溶なことが好ましい。水に不溶であるとは、23℃の水への溶解度が5重量%以下であることを意味する。このような水に不溶な重合体は、式(1)で表されるビフェニルテトラスルホン酸化合物と他のモノマーとを共重合することにより調製することができる。
【0036】
好ましい共重合体としては例えば、式(X)で表わされる構造単位と、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位とを含む重合体等が挙げられる。

【0037】
式(X)中、Arは、2価の芳香族基を表わす。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
【0038】
また、Arで表される2価の芳香族基には、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はアシル基が結合していてもよく、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0039】
ここで、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、ノニル等の炭素数1〜10のアルキル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアルキル基等が挙げられる。
【0040】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアルコキシ基等が挙げられる。
【0041】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル等の炭素数6〜10のアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアリール基等が挙げられる。
【0042】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜10のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアリールオキシ基等が挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよいアシル基としては、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換したアシル基が挙げられる。
【0044】
また、Arで表される2価の芳香族基が、置換基を有していてもよいアシル基を有する場合、該アシル基を有する2つの構造単位が隣接し、該2つの構造単位にあるアシル基同士が結合したり、このようにしてアシル基同士が結合した後、転位反応を生じたり、する場合がある。また、このように芳香環上の置換基同士が結合したり、結合後に転位反応を生じたりするような反応が生じたか否かは、例えば13C−核磁気共鳴スペクトルの測定により確認することができる。
【0045】
式(X)で表わされる構造単位を有する化合物としては、例えば、式(X)で表わされる構造単位にXと反応して結合を形成できる基を有するものであり、ハロゲン原子などの脱離基を複数有する化合物(以下、化合物(Y)と略記する)等を挙げることができる
【0046】
また、好ましい共重合体としては、例えば、式(5)

(式中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0又は1を表わし、nは2以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基を有していてもよい。
及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で表わされる構造単位と、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位とを含む重合体、等が挙げられる。
【0047】
a、b及びcは、互いに独立に0又は1を表わす。nは、例えば、2以上の整数を挙げることができ、好ましくは、例えば、2〜200の範囲の整数等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、5〜200の範囲の整数等を挙げることができる。
【0048】
Ar、Ar、Ar及びArは、互いに独立に2価の芳香族基を表わす。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
【0049】
また、Ar、Ar、Ar及びArは、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又はアシル基が結合していてもよく、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0050】
ここで、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、ノニル等の炭素数1〜10のアルキル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアルキル基等が挙げられる。
【0051】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアルコキシ基等が挙げられる。
【0052】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル等の炭素数6〜10のアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアリール基等が挙げられる。
【0053】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6〜10のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の置換基が結合したアリールオキシ基等が挙げられる。
【0054】
置換基を有していてもよいアシル基としては、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換したアシル基が挙げられる。
【0055】
及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。また、Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。
【0056】
式(5)で表わされる構造単位のポリスチレン換算の重量平均式量としては、例えば、1,000〜2,000,000の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1,000〜500,000の範囲等をあげることができる。本発明の重合体を固体高分子型燃料電池用の高分子電解質として用いる場合の好ましいポリスチレン換算の重量平均式量としては、例えば、2,000〜2,000,000の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、2,000〜1,000,000の範囲等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、3,000〜800,000の範囲等が挙げられる。
【0057】
式(5)で表わされる構造単位の具体例としては、例えば、下記式(5a)〜(5z)で示される構造単位等が挙げられる。なお、下記式中、nは前記と同一の意味を表わし、具体的には、例えば、2〜200の範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば5〜200の範囲等が挙げられる。かかる式(5)で表わされる構造単位のポリスチレン換算の重量平均式量は、例えば、少なくとも1,000等を挙げることができ、好ましくは、例えば少なくとも2,000等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、少なくとも3,000等が挙げられる。

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】
式(5)で表わされる構造単位を有する高分子としては、例えば、式(5)で表わされる構造単位の両末端にXと反応して結合を形成できる基を有するものであり、両末端にハロゲン原子などの脱離基を有する高分子(以下、高分子(6)と略記する)等を挙げることができる。高分子(6)の製造方法としては、例えば、特開2003−113136号公報、特開2007−138065号公報等に記載された方法等が挙げられる。
高分子(6)の好ましいポリスチレン換算の重量平均分子量としては、例えば、1,000以上の値を挙げることができ、好ましくは、2,000以上の値を挙げることができ、より好ましくは3,000以上の値が挙げられる。
また、市販されている高分子(6)を使用してもよく、市販されている高分子(6)としては、例えば、スミカエクセル(住友化学(株)登録商標)PES 3600P、4100P、4800P、及び5200Pを挙げることができる。
【0066】
化合物(Y)及び/又は高分子(6)に式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を重合する方法(以下、重合反応と記すことがある)としては、例えば、化合物(Y)及び/又は高分子(6)及び式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる方法、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物をニッケル化合物の存在下に重合させた後、化合物(Y)及び/又は高分子(6)を加えてさらに重合する方法などを挙げることができる。
上記方法に用いられるニッケル化合物としては、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ニッケル(0)(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)等のゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル(例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル)、ニッケルカルボン酸塩(例えば、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル)、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル等の2価ニッケル化合物等が挙げられ、好ましくは、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)及びハロゲン化ニッケルが挙げられる。
ニッケル化合物の使用量としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物、化合物(Y)及び高分子(6)の総モル量に対して、例えば、0.01〜5モル倍の範囲等が挙げられる。
【0067】
触媒として2価のニッケル化合物を用いて重合する際に、含窒素二座配位子の存在下に行うことが好ましい。含窒素二座配位子としては、例えば、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられ、2,2’−ビピリジンが好ましい。含窒素二座配位子を用いる場合の使用量としては、ニッケル化合物1モルに対して、例えば、0.2〜2モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1〜1.5モルの範囲等が挙げられる。
【0068】
触媒として2価のニッケル化合物を用いて重合する際に、さらに、亜鉛を併用することが好ましい。亜鉛は、通常粉末状のものが用いられる。亜鉛を用いる場合の使用量としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物、化合物(Y)及び高分子(6)の総モル量に対して、例えば、0.5〜1.5モル倍の範囲等を挙げることができる。
【0069】
重合反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物、化合物(Y)及び高分子(6)及び得られる重合体が溶解し得る溶媒であればよい。かかる溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。かかる溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エーテル溶媒及び非プロトン性極性溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
溶媒の使用量は、用いられる式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物、化合物(Y)及び高分子(6)の総重量に対して、通常、1〜200重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。1重量倍以上であると分子量の大きい重合体が得られやすい傾向があり、200重量倍以下であると重合及び重合反応終了後の重合体の取り出し等の操作性に優れる傾向があることから好ましい、
【0070】
重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
重合反応の反応温度としては、例えば、0〜250℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは30〜100℃の範囲等が挙げられる。重合時間は、例えば、0.5〜48時間の範囲等が挙げられる。
【0071】
重合反応終了後、反応混合物に生成した重合体を溶解しにくい溶媒を混合させて重合体を析出させ、析出した重合体を濾過することにより、反応混合物から分離し、本発明の重合体を取り出すことができる。
生成した重合体を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒と反応混合物を混合した後、酸を加え、析出した重合体を濾過することにより、反応混合物から分離してもよい。
生成した重合体を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等が挙げられ、水及びメタノールが好ましい。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。酸の使用量は、反応混合物を酸性化するに必要な量であればよい。
【0072】
また、好ましい重合体としては、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位からなる重合体があげられる。
【0073】
式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を重合する方法としては、例えば、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる方法などを挙げることができる。
ニッケル化合物としては、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ニッケル(0)(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)等のゼロ価ニッケル化合物、ハロゲン化ニッケル(例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル)、ニッケルカルボン酸塩(例えば、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル)、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル等の2価ニッケル化合物等が挙げられ、好ましくは、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)及びハロゲン化ニッケルが挙げられる。
ニッケル化合物の使用量としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物1モルに対して、例えば、0.01〜5モルの範囲等が挙げられる。
【0074】
触媒として2価のニッケル化合物を用いて重合する際に、含窒素二座配位子の存在下に行うことが好ましい。含窒素二座配位子としては、例えば、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられ、2,2’−ビピリジンが好ましい。含窒素二座配位子を用いる場合の使用量としては、ニッケル化合物1モルに対して、例えば、0.2〜2モルの範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、1〜1.5モルの範囲等が挙げられる。
【0075】
触媒として2価のニッケル化合物を用いて重合する際に、さらに、亜鉛を併用することが好ましい。亜鉛は、通常粉末状のものが用いられる。亜鉛を用いる場合の使用量としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物1モルに対して、例えば、0.5〜1.5モルの範囲等を挙げることができる。
【0076】
重合反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。溶媒としては、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物、及び得られる重合体が溶解し得る溶媒であればよい。かかる溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。かかる溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、エーテル溶媒及び非プロトン性極性溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
溶媒の使用量は、用いられる式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に対して、通常、1〜200重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。1重量部以上であると分子量の大きい重合体が得られやすい傾向があり、200重量部以下であると重合及び重合反応終了後の重合体の取り出し等の操作性に優れる傾向があることから好ましい、
【0077】
重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
重合反応の反応温度としては、例えば、0〜250℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは30〜100℃の範囲等が挙げられる。重合時間は、例えば、0.5〜48時間の範囲等が挙げられる。
【0078】
重合反応終了後、反応混合物に生成した重合体を溶解しにくい溶媒を混合させて重合体を析出させ、析出した重合体を濾過することにより、反応混合物から分離し、本発明の重合体を取り出すことができる。
生成した重合体を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒と反応混合物を混合した後、酸を加え、析出した重合体を濾過することにより、反応混合物から分離してもよい。
生成した重合体を溶解しない溶媒もしくは溶解しにくい溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル等が挙げられ、水及びメタノールが好ましい。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。酸の使用量は、反応混合物を酸性化するに必要な量であればよい。
【0079】
得られた重合体の式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位が、RO−を含み、かつ、Rが炭化水素基である場合、脱保護反応を行い、Rを水素原子又はカチオンにする必要がある。かかる脱保護反応は、特開2007−270118号公報等に記載の方法に準じて行われる。
かくして得られる重合体のイオン交換容量(滴定法により測定)は、例えば、0.5〜8.0meq/gの範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、0.5〜6.5meq/gの範囲等が挙げられる。
得られた重合体の分子量や構造は、ゲル浸透クロマトグラフィ、NMR等の通常の分析手段により分析することができる。
【0080】
かくして得られた重合体は、いずれも燃料電池用の部材として好適に用いることができる。本発明の重合体は、燃料電池等の電気化学デバイスの高分子電解質として好ましく使用され、高分子電解質膜として、特に好ましく使用される。すなわち、本発明の高分子電解質は、本発明の重合体を含有する高分子電解質であり、本発明の高分子電解質膜は、本発明の高分子電解質を含有する高分子電解質膜である。なお、以下の説明においては、上記高分子電解質膜の場合を主として説明する。
【0081】
この場合は、本発明の高分子電解質を膜の形態へ転化する。この方法(製膜法)には特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)を用いて製膜することが好ましい。溶液キャスト法は、高分子電解質膜製造として当業分野で、これまで広範に使用されている方法であり、工業的に特に有用である。
【0082】
具体的には、本発明の高分子電解質を適当な溶媒に溶かして高分子電解質溶液を調製し、該高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。かかる支持基材としては、例えば、ガラス板や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0083】
溶液キャスト法に使用する溶媒(キャスト溶媒)は、本発明の高分子電解質を十分溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、NMP、DMAc、DMF、DMI、DMSOは、本発明の高分子電解質の溶解性が高く、また、耐水性の高い高分子電解質膜が得られるため好ましい。
【0084】
このようにして得られる高分子電解質膜は、水蒸気透過性能に優れる。すなわち、このような高分子電解質膜は、[(水蒸気透過係数)/(重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率)]で定義されるパラメータ値が既存の炭化水素系高分子電解質に比して大きい。該高分子電解質膜を構成する重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率は、例えば、0.05〜0.85の範囲等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、0.10〜0.80の範囲等を挙げることができ、さらに好ましくは、0.15〜0.75の範囲等が挙げられる。高分子電解質膜を構成する重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率が0.05より大きいと、発電性能が向上する傾向があるため好ましく、0.90より小さいと、耐水性が向上する傾向があるため好ましい。また、該高分子電解質膜の水蒸気透過係数は、例えば、3.0×10−10mol/sec/cm以上等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、4.0×10−10mol/sec/cm以上等を挙げることができ、さらに好ましくは、5.0×10−10mol/sec/cm以上等が挙げられる。該高分子電解質膜の水蒸気透過係数が3.0×10−10mol/sec/cmより大きいと、発電性能が向上する傾向があるため好ましい。また、該高分子電解質膜の水蒸気透過係数を、該高分子電解質膜を構成する重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率で除した値は、例えば、2.0×10−9mol/sec/cm以上等を挙げることができ、より好ましくは、例えば、2.2×10−9mol/sec/cm以上等を挙げることができ、さらに好ましくは、2.4×10−9mol/sec/cm以上等が挙げられる。
【0085】
該高分子電解質膜を構成する重合体を重合する際、式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物と化合物(Y)及び/又は高分子(6)との仕込み比を制御することで、所望の水蒸気透過係数を有する高分子電解質膜を得ることができる。
【0086】
このようにして得られる高分子電解質膜の厚みは、特に制限はないが、燃料電池用高分子電解質膜(隔膜)としての実用的な範囲で5〜300μmが好ましい。膜厚が5μm以上の膜では実用的な強度が優れるため好ましく、300μm以下の膜では膜抵抗自体が小さくなる傾向があるので好ましい。膜厚は、上記溶液の濃度及び支持基材上の塗膜の塗布厚により制御できる。
【0087】
また、膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の重合体に添加して、高分子電解質を調製してもよい。また、同一溶剤に混合共キャストする等の方法により、他の重合体を本発明の共重合体と複合アロイ化して高分子電解質を調製することも可能である。このように、本発明の重合体と、添加剤及び/又は他の重合体とを組み合わせて高分子電解質を調製する場合には、該高分子電解質を燃料電池用部材に適用したときに、所望の特性が得られるようにして、添加剤及び/又は他の重合体の種類や使用量を決定する。
【0088】
さらに燃料電池用途においては、燃料電池内で発生する水を有効に利用するために、無機又は有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、このようにして得られた高分子電解質膜に関し、その機械的強度向上等を目的として、電子線・放射線等を照射するといった処理を施してもよい。
【0089】
また、本発明の高分子電解質を用いた高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明の重合体を含む高分子電解質を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、高分子電解質複合膜(以下、「複合膜」という。)とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。
【0090】
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布等が挙げられ、上述の使用目的にかなうものであれば、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子が好ましい。
【0091】
本発明の高分子電解質を用いた複合膜を、高分子電解質膜として使用する場合、多孔質基材の膜厚は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。多孔質基材の孔径は、好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmである。多孔質基材の空隙率は、好ましくは20〜98%、さらに好ましくは40〜95%である。
【0092】
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が燃料電池用高分子電解質膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明の重合体の充填がより容易となり、100μm以下であると、補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、高分子電解質膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
【0093】
また、本発明の高分子電解質を用いてなる複合膜と、本発明の高分子電解質を用いてなる高分子電解質膜とを積層してプロトン伝導膜として用いることもできる。
【0094】
次に本発明の燃料電池について説明する。
燃料電池の基本的な単位となる、本発明の膜電極接合体(以下、「MEA」ということがある。)は、本発明の高分子電解質膜、本発明の高分子電解質複合膜、及び、本発明の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いて製造することができる。
ここで触媒成分としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
カーボンに担持された白金又は白金系合金(カーボン担持触媒)を、本発明の高分子電解質の溶液及び/又は高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化した触媒組成物を、ガス拡散層及び/又は高分子電解質膜及び/又は高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。このようにして、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成させることで、MEAが得られる。なお、該MEAの製造において、ガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した場合は、得られるMEAは高分子電解質膜の両面にガス拡散層と触媒層とをともに備えた膜−電極−ガス拡散層接合体の形態で得られる。また、ペースト化した触媒組成物を高分子電解質膜に塗布して高分子電解質膜上に触媒層を形成させた場合は、得られた触媒層上にさらにガス拡散層を形成させることで、膜−電極−ガス拡散層接合体が得られる。
ガス拡散層には公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布又はカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造されたMEAを備えた燃料電池は、燃料として水素ガス又は改質水素ガスを使用する形式はもとより、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0096】
実施例4に記載の重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィ(以下、GPCと略記する。)により分析(分析条件は下記のとおり)し、分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。
<分析条件1>
GPC測定装置:CTO−10A(株式会社島津製作所製)
カラム:TSK−GEL GMHHR−M (東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:臭化リチウム含有N,N−ジメチルアセトアミド(臭化リチウム濃度:10mmol/dm
流量:0.5mL/分
検出波長:300nm
【0097】
実施例5〜8に記載の重合体は、GPCにより分析(分析条件は下記のとおり)し、分析結果からポリスチレン換算のMw及びMnを算出した。
<分析条件2>
GPC測定装置:Prominence GPCシステム(株式会社島津製作所製)
カラム:TSKgel GMHHR−M(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相溶媒:臭化リチウム含有DMF(臭化リチウム濃度:10mmol/dm
溶媒流量:0.5mL/分
検出:示差屈折率
【0098】
イオン交換容量(IEC)の測定:
測定に供する重合体(高分子電解質)を溶液キャスト法により成膜し高分子電解質膜を得、得られた高分子電解質膜を適当な重量になるように裁断した。裁断した高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させた高分子電解質膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、高分子電解質膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、裁断した高分子電解質膜の乾燥重量と中和に要した塩酸の量から、高分子電解質のイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
【0099】
水蒸気透過性の測定:
高分子電解質膜の両側に、ガス通路用の溝を切削加工した燃料電池用カーボン製セパレータ(ガス流通面積1.3cm)を配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることで、水蒸気透過性測定用のセルを組み立てた。なお、高分子電解質膜とカーボン製セパレータの間には、セパレータのガス流通部と同じ形状の1.3cmの開口部を持つシリコン性ガスケットを配置した。
セルの温度を85℃とし、セルの片側に、相対湿度20%の水素ガスを流量1000mL/minにて、またもう一方の側には相対湿度約0%の空気を流量200mL/minにて流した。なお、背圧は両側とも0.04MPaGに設定した。空気出口側に露点計を設置し、出口ガスの露点を計測することにより、出口空気中に含まれる水分量を測定し、水蒸気透過係数[mol/sec/cm]を算出した。
【0100】
[実施例1]
1−ブロモ−4−クロロ−2,6−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウムの合成

30%発煙硫酸265.0gに25℃で市販品の2−アミノ−5−クロロベンゼンスルホン酸53.0gを徐々に加え、120℃に昇温して2時間保温した。反応混合物を冷水265.0gに注ぎ込み、10℃で36%亜硝酸ナトリウム水溶液74.0gを徐々に滴下し、1時間保温した(「ジアゾマス1」とする)。一方で、1価の臭化銅74.0gを48%臭化水素酸369.9gに溶解し、35℃に昇温した。ここに前記「ジアゾマス1」全量を30分かけて滴下し、1時間保温した。反応混合物を−10℃に冷却後に濾過し、得られた固体と水976.8gを混合後に50%水酸化ナトリウム水溶液10.7gを加え、析出した固体を濾別した。濾液を濃塩酸でpH6に調整し、濃縮・乾燥することによって白色固体の1−ブロモ−4−クロロ−2,6−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム72.5g(収率71.8%)を得た。
H−NMR(重水、δ(ppm)):8.11(s、2H)
【0101】
[実施例2]
4,4’−ジクロロ−2,2’,6 , 6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウムの合成

実施例1で合成した1−ブロモ−4−クロロ−2,6−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム72.5gにN,N−ジメチルホルムアミド579.6gを加え、100℃に加熱して溶解させた後に減圧の濃縮し、N,N−ジメチルホルムアミドを395.5g留去した。濃縮マス水分値は276ppmであった。25℃冷却後、銅粉末23.4gと1価のヨウ化銅17.4gと無水N,N−ジメチルホルムアミド101.7gを加え150℃に昇温し、2時間保温した。反応混合物を水1156.3gに注ぎ込み、不溶物を濾別し、濾液を濃縮乾固した。濃縮物を水193.2gで溶解させ、2−プロパノール391.4gを徐々に加え、析出した固体を濾過・乾燥することによって白色固体の4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム44.0g(収率76.1%)を得た。
H−NMR(重DMSO、δ(ppm)):7.23(s、2H)
マススペクトル(ESI、m/z):541(M−1
元素分析:Na(15.1%)
【0102】
[実施例3]
4,4’−ジクロロ−2,2’,6 , 6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウムの合成

実施例2で合成した4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム15.0gにクロロホルム300.0gとN,N−ジメチルホルムアミド3.5gと塩化チオニル33.9gを加え、55℃に昇温して1時間保温し、反応混合物を濃縮乾固した(「濃縮物1」とする)。一方で、2,2−ジメチル−1−プロパノール20.9gと無水テトラヒドロフラン146.6gから成る溶液に、25℃でn−ブチルリチウムの1.65Mへキサン溶液(115.2mL、190mmol)を滴下し、30分保温した。ここに前記「濃縮物1」を仕込み、25℃で14時間保温した。反応混合物をトルエン276.5g及び水276.5gから成る溶液に注ぎ込み、水層を除去した。5%炭酸ナトリウム水溶液237.8gで洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した。濃縮残渣を、シリカゲルクロマトグラフィ(溶媒;酢酸エチル)により精製し、得られた溶出液を5%炭酸ナトリウム水溶液276.5gで洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した。濃縮物をトルエン21.0gとヘキサン156.0gから成る混合溶媒で洗浄し、濾過後の固体を乾燥することによって白色固体の4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム7.0g(収率38.0%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム、δ(ppm)):0.97(s、27H)、3.83−4.04(c,6H)、7.82(d、1H)、8.00(s、2H)、8.36(s、1H)、
マススペクトル(ESI、m/z):752(M−1
元素分析:C(43.5%)、H(5.3%)、S(15.8%)、Cl(8.7%)、Na(2.9%)
【0103】
[実施例4]
重合体の合成
実施例3で得られた4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム0.75g(0.97mmol)と下記式

【0104】
で示される構造を有するスミカエクセル(住友化学(株)登録商標)PES 3600P(Mn=2.7×10、Mw=4.4×10 ) 0.77gと、2,2’−ビピリジン0.755gと、ジメチルスルホキシド11.3gとを含む溶液を70℃に昇温し、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)1.33gを加えてから4時間攪拌した。得られた反応混合物を25%硝酸水溶液74.3gに注ぎ込み析出物を濾過し、濾過して得られたケーキを水で3回洗浄した。洗浄されたケーキに無水臭化リチウム1.34gとN−メチル−2−ピロリドン22.8gを加え、120℃で4時間攪拌した。
得られた混合物を19%塩酸150.0gに注ぎ込み、結晶を析出させた後、濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、乾燥することによって、4,4’−ジクロロ−2,2,2’ , 2’−ビフェニルテトラスルホン酸に由来する構造単位を有する重合体 0.98gを得た。得られた重合体のMwは7.0×10、Mnは2.5×10であり、イオン交換容量は1.92meq/gであった。
【0105】
[実施例5]
重合体の合成
実施例3で得られた4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム0.56g(0.72mmol)と2,5−ジクロロベンゾフェノン0.53g(2.11mmol)と、2,2’−ビピリジン2.33gと、DMSO32gとを含む溶液を60℃に昇温し、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)3.90gを加えてから5時間攪拌した。得られた反応混合物を25%硝酸水溶液150gに注ぎ込み析出物を濾過し、濾過して得られたケーキを水で3回洗浄した。洗浄されたケーキに無水臭化リチウム0.75gとN−メチル−2−ピロリドン9gを加え、120℃で24時間攪拌した。
得られた混合物を19%塩酸100gに注ぎ込み、結晶を析出させた後、濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、乾燥することによって、下記4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸に由来する構造単位を有する重合体0.41gを得た。得られた重合体のMwは6.3×10、Mnは2.6×10であった。また、得られた重合体は水に不溶である。

【0106】
[実施例6]
重合体の合成
実施例3で得られた4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム1.05g(1.35mmol)と下記式

【0107】
で示される構造を有するスミカエクセル(住友化学(株)登録商標)PES 3600P(Mn=2.7×10、Mw=4.5×10 )0.91gと、2,2’−ビピリジン1.16gと、DMSO24gとを含む溶液を60℃に昇温し、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)1.95gを加えてから5時間攪拌した。得られた反応混合物を25%硝酸水溶液100gに注ぎ込み析出物を濾過し、濾過して得られたケーキを水で3回洗浄した。洗浄されたケーキに無水臭化リチウム1.41gとN−メチル−2−ピロリドン18gを加え、120℃で24時間攪拌した。
得られた混合物を19%塩酸200gに注ぎ込み、結晶を析出させた後、濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、乾燥することによって、下記4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸に由来する構造単位を有する重合体0.88gを得た。得られた重合体のMwは7.4×10、Mnは4.5×10であった。また、得られた重合体は水に不溶である。

【0108】
高分子電解質膜の調製
得られた重合体0.8gをDMSO7.2gに溶解し、重合体溶液を調製した。その後、得られた重合体溶液をガラス基板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約30μmの高分子電解質膜を作製した。得られた高分子電解質膜のイオン交換容量は1.7meq/gであり、重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率はスルホン0.19と計算された。また、得られた高分子電解質膜の水蒸気透過係数は5.1×10−10mol/sec/cmであった。
【0109】
[実施例7]
重合体の合成
実施例3で得られた4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム1.05g(1.35mmol)と下記式

【0110】
で示される構造を有するスミカエクセル(住友化学(株)登録商標)PES 3600P(Mn=2.7×10、Mw=4.5×10 )0.71gと、2,2’−ビピリジン1.15gと、NMP24gとを含む溶液を60℃に昇温し、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)1.93gを加えてから5時間攪拌した。得られた反応混合物を25%硝酸水溶液100gに注ぎ込み析出物を濾過し、濾過して得られたケーキを水で3回洗浄した。洗浄されたケーキに無水臭化リチウム1.41gとN−メチル−2−ピロリドン23gを加え、120℃で24時間攪拌した。
得られた混合物を19%塩酸200gに注ぎ込み、結晶を析出させた後、濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、乾燥することによって、下記4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸に由来する構造単位を有する重合体0.79gを得た。得られた重合体のMwは6.6×10、Mnは4.5×10であった。また、得られた重合体は水に不溶である。

【0111】
高分子電解質膜の調製
得られた重合体0.6gをDMSO5.4gに溶解し、重合体溶液を調製した。その後、得られた重合体溶液をガラス基板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約45μmの高分子電解質膜を作製した。得られた高分子電解質膜のイオン交換容量は2.0meq/gであり、重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率は0.24と計算された。また、得られた高分子電解質膜の水蒸気透過係数は8.7×10−10mol/sec/cmであった。
【0112】
[実施例8]
重合体の合成
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル10.2g(54.7mmol)、炭酸カリウム8.32g(60.2mmol)、DMAc96g、トルエン50gを加えた。バス温155℃で2.5時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、室温まで放冷し、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン22.0g(76.6mmol)を加えた。バス温を160℃に昇温し、14時間保温撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物27.2gをDMAc97gに溶解し、不溶物を濾過した後、メタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥し下記式で表される芳香族ポリエーテルAを25.9g得た。得られた芳香族ポリエーテルAのMwは3.2×103、Mnは1.7×10であった。

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0113】
実施例3で得られた4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸トリス(2,2−ジメチル−1−プロピル)ナトリウム0.90g(1.16mmol)と芳香族ポリエーテルA0.38gと、2,2’−ビピリジン2.53gと、NMP8gとを含む溶液を60℃に昇温し、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)4.24gを加えてから5時間攪拌した。得られた反応混合物を25%硝酸水溶液100gに注ぎ込み析出物を濾過し、濾過して得られたケーキを水で3回洗浄した。洗浄されたケーキに無水臭化リチウム1.01gとNMP11gを加え、120℃で24時間攪拌した。得られた混合物を19%塩酸200gに注ぎ込み、結晶を析出させた後、濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、乾燥することによって、下記4,4’−ジクロロ−2,2,2’ , 2’−ビフェニルテトラスルホン酸に由来する構造単位を有する重合体0.63gを得た。得られた重合体のMwは3.6×10、Mnは1.8×10であった。また、得られた重合体は水に不溶である。

【0114】
高分子電解質膜の調製
得られた重合体0.6gをDMSO3.4gに溶解し、重合体溶液を調製した。その後、得られた重合体溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約30μmの高分子電解質膜を作製した。得られた高分子電解質膜のイオン交換容量は4.2meq/gであり、重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率は0.49と計算された。また、得られた高分子電解質膜の水蒸気透過係数は4.1×10−9mol/sec/cmであった。
【0115】
上記実施例の水蒸気透過係数を、高分子電解質膜を構成する重合体に対する、スルホン酸基を有する構造単位の重量分率で除した値の結果を、表1にまとめる。
【0116】
【表1】

【0117】
[実施例9]
4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)の合成

実施例2で合成した4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラナトリウム0.05gにクロロホルム1.0gと五塩化リン0.33gを加え、得られた混合物を60℃に昇温して6時間保温し、反応混合物を水10.0gに注ぎ込んだ。分液後、有機相を濃縮乾固した。得られた濃縮残渣を「濃縮物1」と称する。一方で、2,2−ジメチル−1−プロパノール0.07gと無水テトラヒドロフラン1.0gから成る溶液に、25℃でn−ブチルリチウムの1.65Mへキサン溶液(0.4mL、0.65mmol)を滴下し、30分保温した。ここに前記「濃縮物1」を仕込み、25℃で14時間保温した。反応混合物をシリカゲルプレート(PLC Silica gel 60 RP−18 F254s、移動相:アセトニトリル)で精製し、得られた溶出液を濃縮乾固することによって白色固体の4,4’−ジクロロ−2,2’,6 , 6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)0.03g(収率45%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム、δ(ppm)):0.88(s、36H)、3.83(s,8H)、8.12(s、4H)
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によれば、脱離基を有する高分子にイオン伝導性を付与し得るモノマー、該モノマーを重合して得られる新規な重合体及び該重合体を含む新規な高分子電解質等を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物。
【請求項2】
式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物に含まれるRの少なくとも1つが水素原子又はカチオンであり、Rの少なくとも1つが水素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(1)で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物に含まれるRの少なくとも1つが、炭素数1〜6のアルキル基である請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
式(2)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物をカップリング反応させる工程を含む式(1)

(式中、R、R、Xは前記と同じ意味を表わす。)
で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物の製造方法。
【請求項5】
カップリング反応させる工程が、金属銅及び1価のハロゲン化銅の存在下にカップリング反応させる工程である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
式(2)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わし、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物の製造方法であって、
式(3)

(式中、R、R、Xは前記と同じ意味を表わし、AはNHを表わす。)
で示されるアニリン化合物に亜硝酸化合物を反応させてジアゾニウム化合物を生成させる工程、及び
前記工程で得られたジアゾニウム化合物に、ハロゲン化合物を反応させて、式(2)で表わされるベンゼンジスルホン酸化合物を得る工程
を含むベンゼンジスルホン酸化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか記載の式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位を含む重合体。
【請求項8】
式(X)

(式中、Arは、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む請求項7記載の重合体。
【請求項9】
式(5)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、nは2以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む請求項7又は8記載の重合体。
【請求項10】
式(5’)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、n’は5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位をさらに含む請求項7又は8記載の重合体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか記載の式(1)で表わされるビフェニルテトラスルホン酸化合物に由来する構造単位からなる重合体。
【請求項12】
式(5)

(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、nは2以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位を含む高分子及び式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる工程を含む重合体の製造方法。
【請求項13】
式(5’)


(式中、a、b及びcはそれぞれ独立に0又は1を表わし、n’は5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表わす。Y及びYは、それぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される構造単位を含む高分子及び式(1)

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、カチオン又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表わす。Xは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
で示されるビフェニルテトラスルホン酸化合物を含む組成物を、ニッケル化合物の存在下に重合させる工程を含む重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項7〜11いずれか記載の重合体を含む高分子電解質。
【請求項15】
請求項14記載の高分子電解質を含む高分子電解質膜。
【請求項16】
請求項14記載の高分子電解質と、多孔質基材とを有する高分子電解質複合膜。
【請求項17】
請求項14記載の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物。
【請求項18】
請求項15記載の高分子電解質膜、請求項16記載の高分子電解質複合膜及び請求項17記載の触媒組成物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する膜電極接合体。
【請求項19】
請求項18記載の膜電極接合体を有する高分子電解質形燃料電池。

【公開番号】特開2011−190237(P2011−190237A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201758(P2010−201758)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】