説明

ビンロウ子抽出物を含有する薬用化粧料組成物

本発明は、ビンロウ子(Areca catechu seed)と甘草(Glycyrrhiza glabra )との混合抽出物を含有する繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖促進用組成物、及び、前記抽出物を含む皮膚美白及び皮膚しわ改善用化粧料組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維芽細胞及び角質形成細胞促進用組成物と、皮膚美白及び皮膚しわ改善用化粧料組成物に関するものであって、より具体的には、ビンロウ子抽出物(Areca catechu seed extract)と甘草抽出物(Glycyrrhiza glabra extract)とを含有する繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖促進用組成物、及び、前記抽出物を含む化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体を成している最も大きな器官である皮膚は、外部から皮膚内側の多様な器官を保護する機能と、内部の水分及び有用成分が外部に流出されることを防ぐ障壁機能、温度調節機能、排泄機能、呼吸機能などの多様な生理的機能を担当している重要な器官である。
【0003】
しかし、年を取るにつれて表皮、真皮及び皮下組織の厚さが薄くなり、皮膚障壁の機能が低下して、皮膚の水分含量の急激な減少により皮膚が乾燥するなど、皮膚の生理的な機能が低下し、これによる多様な変化で老化が進行される。
【0004】
老化による皮膚の生理的変化としては、(a)皮膚の構成成分である表皮、真皮及び皮下組織の厚さが薄くなる現象;(b)皮膚障壁の機能を行う脂質膜(lipid barrier)の脂質組成と含量が変化するにつれてその機能が急激に低下し、皮膚の水分含量が減少して、皮膚が乾燥する現象;及び(c)シミ、雀斑、色素沈着及び多様な皮膚トラブルが誘発される現象などがある。
【0005】
特に、紫外線量の増加と大気汚染及び現代人の過度の疲労とストレスなどにより生成される、反応性の高い活性酸素と自由ラジカルは、生体成分(例えば、タンパク質、核酸、細胞膜脂質など)を酸化または変性させることにより、皮膚老化の主原因として作用する。従って、皮膚老化によるしわ形成、皮膚弾力の減少、色素沈着、シミ、雀斑及び乾燥などを予防及び治療するための化粧料分野の研究が行われてきた。
【0006】
日本特開平5−246838号には、コラーゲン合成による皮膚しわの改善方法が紹介されているが、これによると、年をとるにつれてコラーゲン及びエラスチンが分解され、皮膚組織のしわ形成が増加するようになる。
【0007】
皮膚でエラスチン繊維は、コラーゲン繊維と共に真皮(epidermis)の内側で架橋結合を形成する。年をとるにつれて、エラスチン分解酵素であるエラスターゼの作用により皮膚の弾力が急激に低下して、たるみ(sagging)が生じる。また、組織学的には、年をとるにつれて炎症細胞の浸潤が増加し、エラスチン繊維の欠乏と凝集、コラーゲン繊維の減少が生じて、生化学的には、エラスターゼの活性度が著しく減少する。エラスターゼは、エラスチンを分解することのできる、今まで知られた唯一な酵素であって、このような活性または生成の阻害は、皮膚老化を根本的に遅延させることのできる方法となる。
【0008】
皮膚老化を遅延させるために、従来は、化粧料組成物に保湿剤、抗炎症剤、エラスチン及びコラーゲン架橋結合の破壊されている組織に栄養及び添加剤などを含ませた。しかし、このような組成物は、根本的に老化を遅延させるに限界がある。従って、エラスチン及びコラーゲンの分解を根本的に阻害する阻害剤が要求されている実情である。
【0009】
本発明者らは、皮膚老化防止に使用される従来の製剤の限界を克服するために努力した結果、生薬などとして使用されてきた天然物のビンロウ子抽出物がエラスターゼに対する著しい阻害効果、自由ラジカルの消去効果などの安定性に優れているだけではなく、多様な薬効成分を含有しており、老化防止の効果があることを報告した(大韓民国特許出願第1997−78817号、第1999−0056924号及びInt.J.Cosmet.Sci., 21:275-294(1999))。
【0010】
ヒトの肌の色は、大きく、メラニンの量、カロチン及びヘモグロビンなどによって決定されるが、これらの中でもメラニンが最も重要な役割をする。メラニンは、ヒトの皮膚色を決定するだけではなく、紫外線の吸収作用及び自由ラジカルスカベンジャー(scavenger)の役割をするが、外部の環境変化(例えば、紫外線の過多露出、大気汚染、精神的ストレスなど)により皮膚内に過多生成されると、皮膚内で色素沈着現象が生じ、皮膚色が黒くなるか、シミ、雀斑などの原因となる。
【0011】
メラニン合成過程は、以下のようである:まず、メラノサイトで、チロシンを基質としてチロシナーゼという酵素がドパキノン(DOPA quinone)を生成して、ドパキノンから自動酸化反応と酵素反応を経て共重合体のメラニンが生成される。このように生成されたメラニンは、メラノソームを通じて角質形成細胞に移され、角質形成細胞で28日間の角化過程を経て皮膚表面に出るようになる。しかし、この過程でメラニン生成を促進する要因によりメラニンが過量生成されて、角化によりメラニンが完全に消えないと、色素沈着(Pigmentation)現象が現れるようになる。従って、このような色素沈着現象を防止は、メラニン生成過程における一部過程を調節することにより可能になる。
【0012】
メラニン合成を阻害する機作は様々な形態がある。代表的な合成阻害過程は、メラニン合成の重要な酵素であるチロシナーゼを阻害することである。コウジ酸(kojic acid)のようなキレーター(chelator)、アルブチン(Arbutin)のような基質擬似物質がチロシナーゼに対する活性を阻害すると知られている。また、桑白皮抽出物及び甘草抽出物がこのような阻害活性を有すると報告された(Jpn J. Dermatol. 102:679-689(1992))。しかし、上述した皮膚美白原料は、安定性が低いため、効果が長く持続されないという短所があり、製品の適用範囲が非常に狭い。
【0013】
本明細書全体にかけて多数の引用文献及び特許文献が参照されてその引用が表示されている。引用された文献及び特許の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、しわ改善及び皮膚美白の二重機能性を有する組成物を開発するために鋭意研究した結果、ビンロウ子及び甘草の混合抽出物を利用する場合、前記二重機能を奏するたけではなく、それぞれの成分の固有の効果が、単独で利用する時より相乗的に増加することを確認した。また、前記混合抽出物を適切な形態で剤形化する場合、効果の改善及び安定性を達成することができることを確認し、本発明を完成した。
【0015】
従って、本発明の目的は、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖用組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、インテグリン合成増進用組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の目的は、しわ改善及び美白の二重機能性化粧料組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明及び請求の範囲によりさらに明白になる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一様態によると、本発明は、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を有効成分として含む、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖用組成物を提供する。
【0020】
本発明者らは、漢医薬の原料として利用されるビンロウ子及び甘草の抽出混合物が、皮膚しわの改善に関与する繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖を促進することを発見した。
【0021】
本発明で利用されるビンロウ子(Areca catechu seed)は、中国南部、台湾及びマレーシアなどで広範囲に分布して栽培される。ビンロウ子は、東洋で、消化不良、便秘及び腹痛の治療に医学的に使用された(日本特開平5−320037号)。また、ビンロウ子は、本発明者らにより、エラスターゼの阻害及び自由ラジカルの消去効果を通じて皮膚老化を抑制することができるということが証明された(大韓民国特許出願第1997−78817号、第1999−56924号及びInt.J.Cosmet.Sci., 21:275-294(1999)参照)。
【0022】
本発明で利用される甘草(Glycyrrhiza glabra)は、マメ科の多年草植物であって、抗炎症活性、抗アレルギー活性、抗菌活性及び皮膚美白効果を示すことが知られている。
【0023】
本発明の好ましい具現例において、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物は、下記の多様な抽出溶媒から得られる:例えば、(a)水、(b)炭素数1〜4の無水または含水低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、(c)前記低級アルコールと水との混合溶媒、(d)アセトン、(e)エチルアセテート、(f)クロロホルム、(g)1,3-ブチレングリコール、(h)ブチルアセテート。一方、他の抽出溶媒を利用しても実質的に同一な効果を奏するビンロウ子抽出物及び甘草抽出物が得られることは、当業者に自明なことである。
【0024】
また、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物は、当業界の周知の方法を用いて精製できる。例えば、一定な分子量カット−オフ値を有する限外濾過膜による分離、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために製作されたもの)による分離なども本発明のビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を製造するために利用できる。また、気体クロマトグラフィー、ヘッドスペース気体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーも本発明に使用できる。
【0025】
本発明のビンロウ子抽出物及び甘草抽出物は、凍結乾燥及び噴霧乾燥などのような追加的な過程により、粉末状態として製造できる。
【0026】
ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物のそれぞれは、皮膚しわの改善及び皮膚弾力の増大に重要な役割をすると知られた繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖を増進させることができる。ビンロウ子及び甘草の混合抽出物が繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖において相乗的効果を示すことが確認された。繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖は、皮膚しわを改善して皮膚弾力を増大する重要なタンパク質であるコラーゲン、インテグリン及びラミニンの生合成に密接に関連している。
【0027】
本発明の他のよう様態によると、本発明は、ビンロウ子抽出物を有効成分として含む繊維芽細胞のインテグリン合成増進用組成物を提供する。
【0028】
インテグリンは、細胞間の結合力を増進させ、細胞相互間の信号伝達及び細胞活性を促進する結合タンパク質である。本発明のビンロウ子抽出物は、繊維芽細胞のインテグリンの生合成を促進するにおいて非常に成功的である。従って、本発明のビンロウ子抽出物が、皮膚の状態を決定するに重要な繊維芽細胞に作用する場合、増加されたインテグリンにより繊維芽細胞の活性が増加し、皮膚しわの改善をもたらす。
【0029】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、(a)有効成分としてビンロウ子抽出物及び甘草抽出物;及び(b)化粧品学的に許容可能な担体を含む、皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物を提供する。
【0030】
本発明者らの研究結果によると、本発明の化粧料組成物において、ビンロウ子抽出物は、甘草抽出物のチロシナーゼ活性抑制効果及びメラノサイトにおけるメラニン合成抑制効果を相乗的に増加させる機能をする。従って、本発明の組成物により達成される皮膚−美白効果は、甘草抽出物を単独で利用する場合より相乗的に増加して、このような点は、本発明の特徴の一つである。
【0031】
また、上述のように、ビンロウ子抽出物のインテグリン生合成を増加させる活性は、本発明の組成物がしわ改善効果を奏するようにする。
【0032】
しかも、本発明の化粧料組成物に含まれるビンロウ子及び甘草の混合抽出物は、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖を増進する作用をして、このような細胞増殖を増進する作用は、本発明の化粧料組成物がしわ改善効果を奏するようにする。
【0033】
従って、本発明の化粧料組成物は、次のような新規且つ非自明な結果を達成することができる:(a) ビンロウ子及び甘草抽出物の単独使用時に比べ、混合使用時、その固有の効果(皮膚しわ改善または皮膚美白)が相乗的に増加すること;(b)ビンロウ子抽出物が繊維芽細胞でインテグリンの生合成を増加させること;(c)ビンロウ子及び甘草の混合抽出物は、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖を増進する作用をすること;そして(d)化粧料組成物に含有された甘草抽出物の不安定性をビンロウ子抽出物の助けで解決できること。
【0034】
本発明の好ましい具現例によると、前記ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物の含量は、前記化粧料組成物の総重量に対し、それぞれ0.001〜1.0重量%であり、より好ましくは、それぞれ0.002〜0.5重量%である。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のビンロウ子及び甘草の混合抽出物は、小嚢構造内に含有されている。本明細書で小嚢構造は、リポソーム、ニオソーム(niosome)、バイオソーム(biosome)及びファーマコソーム(pharmacosome)を含む概念である。最も好ましくは、本発明の皮膚適用に好適な担体は、バイオソームである。
【0036】
最も好適な担体であるバイオソームは、前記二つの有効成分(ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物)の安定化及び皮膚浸透度を改善して、これにより、皮膚しわ改善及び皮膚美白効果を大きく増加させて、可視的臨床結果に必要な使用期間を大幅に短縮させる。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、前記バイオソームの含量は、化粧料組成物の総重量に対し、0.05〜20重量%であり、より好ましくは、0.1〜10.0重量%である。
【0038】
本発明で利用されるバイオソーム担体は、当業界に公知された通常的な方法を利用して製造できる。好ましくは、非イオン性界面活性剤を利用いて製造されて、前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリグリセリルアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル及びシュガージエステルである。前記非イオン界面活性剤の適合した含量は、バイオソームの総重量に対し10〜50重量%であり、好ましくは、30〜40重量%である。
【0039】
本発明の好ましい具現例によると、前記非イオン性界面活性剤は、これのベースとして、PEG−5−ソイステロール及びオレイン酸コレステリルを共に使用する。
【0040】
また、前記非イオン界面活性剤のみを持っては、皮膚の脂質が有している役割を期待することができないため、バイオソームを製造するための組成物は、グリセリン骨格にセラミドを結合したものをさらに添加することが好ましい。グリセリン骨格に結合したセラミドは、両側親媒性を呈して、これにより細胞膜の天然脂質と類似した特徴を有するようになる。セラミドの含量は、バイオソームの総重量に対し、0.1〜10重量%、好ましくは2.0〜6.0重量%である。
【0041】
前記セラミドは、好ましくは、セラミド3または次の化学式1で表される擬似セラミドである。
【0042】
【化1】

【0043】
より好ましくは、前記化学式1で表される擬似セラミドは、次の化学式2、3または4の化合物である:
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
上述の擬似セラミドの具体例及び製造方法は、PCT/KR02/00314に開示されており、参照として本願に取り込まれる。前記擬似セラミドは、天然セラミドと同一な機能を発揮しながらも、溶解度が大きいため、化粧料組成物に対する適用性に優れており、消費用として合成できるという長所がある。
【0048】
本発明の好ましい具現例によると、バイオソームの製造時、モノグリセロール、ジグリセロール及びトリグリセロールなどの補助乳化剤をさらに含む。最も好ましくは、ジグリセロールが利用される。補助乳化剤の含量は、バイオソームの総重量に対し、好ましくは、1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
【0049】
バイオソームを製造するための組成物は、好ましくは、コレステリルノナノエート、コレステリルステアレート、コレステリルイソステアレート及びコレステリルイソステアリルカーボネートなどのコレステリルアルキルエステルを含む。
【0050】
本発明のビンロウ子抽出物及び甘草抽出物は、バイオソームの総重量に対し、0.1〜10重量%がバイオソーム内に含有される。
【0051】
また、本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として前記ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物(またはビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を含有するバイオソーム)の他に、担体のみならず補助成分を含むことができる。
【0052】
補助成分に制限はないが、例えば、保存剤、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、香料または前記成分の混合物を含む。
【0053】
本発明の組成物は当業界で通常的に製造されるいかなる剤形としても製造できて、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどとして剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、本発明の組成物が化粧料組成物として使用される場合は、柔軟化粧水(スキンローション)、収斂化粧水、栄養化粧水(ミルクローション)、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、フェイシャルパック、スプレーまたはパウダーの剤形として製造することができる。
【0054】
本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、剤形のタイプによって様々である。例えば、本発明の剤形が軟膏、ペースト、クリームまたはゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛または前記成分の混合物が利用できる。
【0055】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダー及び前記成分の混合物が利用できる。特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体をさらに含むことができる。
【0056】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤及び乳濁化剤が利用されて、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、綿種油、ピーナッツオイル、とうもろこし胚種油、オリーブオイル、蓖麻子油及びごま油などのオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステルまたは前記成分の混合物がある。
【0057】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天またはトラガカントまたは前記成分の混合物が利用できる。
【0058】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、エトキシル化グリセロール脂肪酸エステルまたは前記成分の混合物が利用できる。
【0059】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
製造例1:バイオソームの製造方法
本発明に使用されたバイオソームは、非イオン性界面活性剤、補助乳化剤、コレステロール、コレステロールエステル及びソイステロールを混合使用し、高圧乳化させて、閉鎖された二重層構造を有したバイオソームを完成する方法により製造した。この閉鎖された二重層構造に本発明の有効成分であるビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を含有させることにより、効果的に安定化して、有効成分の効果を極大化することができた。
【0061】
非イオン性界面活性剤のベースとして、40重量%のポリオキシエチレンアルキルエーテル、25重量%のPEG−5−ソイステロール及びオレイン酸コレステリル、グリセリンに3.0重量%のセラミド3が結合したもの、補助乳化剤として5.0重量%のジグリセロール、コレステリルステアレート、及び、残量の蒸留水を加熱して、75℃で混合した。その後、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物のそれぞれを3重量%で前記混合物に加えた後、1000barの高圧下で乳化し、100nmの粒子サイズを有したバイオソームを製造した。
【0062】
製造例2:ビンロウ子抽出物の製造方法
ビンロウ子を精製水で洗浄し乾燥した。乾燥したビンロウ子1kgを70%のエタノール5lに入れて、4〜40℃で5日間抽出した。次いで、抽出液を300メッシュ濾過布で濾過し、5〜10℃で7〜10日間放置して熟成した後、ワットマンペーパーNo.5で濾過した。濾過液を回転減圧蒸発器で乾燥し、ビンロウ子抽出物パウダーを得た。ビンロウ子抽出物パウダー100gを、水と1,3−ブチレングリコールとを同量にした溶液1lに溶解し、ビンロウ子抽出物を得た。
【0063】
下記の実施例及び比較実施例に記載されたビンロウ子抽出物の含量は、パウダーの濃度で表わしたものである。
【0064】
製造例3:甘草抽出物の製造方法
甘草を精製水で洗浄し乾燥した。乾燥した甘草1kgを70%のエタノール5lに入れて、4〜40℃で5日間抽出した。次いで、抽出液を300メッシュ濾過布で濾過し、5〜10℃で7〜10日間放置し熟成した後、ワットマンペーパーNo.5で濾過した。濾過液を回転減圧蒸発器で乾燥し、甘草抽出物パウダーを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
実験例1:チロシナーゼ活性抑制能の分析
甘草抽出物、ビンロウ子抽出物及びこれらの混合物に対するチロシナーゼ活性抑制能試験を行った。
【0067】
チロシナーゼは、キノコから分離及び精製されたものであって、SIGMA社から購入し使用した。基質であるチロシンは、0.05M燐酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶かして、0.1mg/ml溶液にして使用した。
【0068】
前記各抽出物(パウダー状態)を1,3−ブチレングリコールに高濃度で溶解して、再び緩衝液に稀釈し適当な濃度に調節して、抽出物を同量混合し、試料液として使用した。
【0069】
チロシン溶液(0.5ml)を試験管に入れて、これに混合抽出物(0.5ml)を加えた。前記試験管を37℃恒温器で10分間放置した後、200U/mlチロシナーゼ(0.5ml)を入れて、37℃で10分間反応した。この際、対照群として、混合抽出物の代わりに、ビンロウ子抽出物または甘草抽出物(0.5ml)のみを入れた。この反応液の入っている試験管を氷の上に載置し急冷させて、反応を中止した。分光光度計を用いて波長475nmで吸光度を測定した。
各抽出物のチロシナーゼ活性の阻害効果は、下記の式で求めた。
【0070】
[数式1]
チロシナーゼ活性阻害率(%)=100−[(各抽出物の吸光度/対照群の吸光度)×100]
実験結果は、表2に示した。
【0071】
【表2】

【0072】
上記表2から確認できるように、甘草抽出物のチロシナーゼ活性抑制効果は、ビンロウ子抽出物を共に含有することにより、その効果が相乗的に増加した。ビンロウ子抽出物が甘草抽出物のチロシナーゼ活性抑制効果を促進するということは、新規で且つ驚くべきことであった。従って、本発明のビンロウ子及び甘草の混合抽出物を低い濃度で剤形に混合しても、甘草抽出物などの皮膚美白用の通常の成分に比べ、チロシナーゼ活性の抑制、即ち皮膚美白効果を達成することができることが分かる。
【0073】
実験例2:メラノサイト(Melanocyte)においてメラニン生成に対する阻害効果の分析
メラノサイトは、マウス由来のB−16メラノマ細胞株(ATCC CRL 6323)を購入して使用した。メラノマ細胞株を4.5g/lブドウ糖、10%牛胎児血清及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンの含有されたDMEM培地に接種し、50mlのT−フラスコに入れ37℃で培養した。5%CO2条件下で24時間培養した後、0.02%EDTAの含有された0.05%トリプシン(Trypsin)を処理して細胞を分離した後、さらに48時間培養した。この際、細胞数は、5.76×106細胞/フラスコである。ここで、前記混合抽出物をDMEMに適当な濃度で稀釈し、培養されたメラノマ細胞に処理して、37℃で5日間培養した。
【0074】
培養後、培地を全部除去して、0.02%EDTAと0.05%トリプシンとを含有したPBSを1ml処理して細胞を分離した後、5分間遠心分離し、細胞のみを収集した。収集された細胞にトリクロロアセト酸を処理し攪拌して、遠心分離した。沈澱されたメラニンをPBSで洗浄し、1N NaOHを処理してメラニンを溶解させた。475nmで吸光度を測定した。メラニン濃度は、合成メラニン(Sigma社)の標準濃度曲線から決定した。実験結果は、表3に示した。
【0075】
【表3】

【0076】
上記表3に記載のように、甘草抽出物のメラニン生成の抑制効果は、ビンロウ子抽出物と混合することにより、その程度が相乗的に増加した。ビンロウ子抽出物が甘草抽出物のメラニン生成抑制効果を向上させるという結果は、新規で且つ驚くべきことであった。このような結果は、実験例1の結果と一致するものである。
【0077】
実験例3:エラスターゼ活性阻害効果の分析
実験のために、豚膵臓エラスターゼをシグマ(Sigma)社から購入した。Succ−Ala−Ala−Ala−p−ニトロアニリンを含有する基質溶液1mlを試験管に添加し、燐酸ナトリウム緩衝液と蒸留水を加えた。エタノールに適当な濃度で含有させた0.2mlのビンロウ子抽出物試料液を反応液に入れた後、10μlのエラスターゼ溶液に添加し、37℃で10分間反応した。分泌されたp−ニトロアニリンを検出するために410nmで吸光度を測定した。この際、対照群は、各抽出物の代わりに蒸留水のみを入れた。エラスターゼ活性の阻害率は、下記式で求めた。
[数式2]
エラスターゼ活性の阻害率(%)=[1−(抽出物−処理群のエラスターゼ活性度/対照群のエラスターゼ活性度)]×100
【0078】
【表4】

【0079】
上記表4から確認できるように、ビンロウ子抽出物は、高濃度でエラスターゼの活性をほぼ100%抑制した。
【0080】
実験例4:細胞増殖に対する効果の分析
実験例4−1:ケラチノサイトの増殖に対する効果
人体正常角質形成細胞(Human normal Keratinocyte)を96−ウェルマイクロプレート(96-well microplate)の各ウェルに1×104細胞となるように接種して、DMEMで24時間培養した。培養後、前記マイクロプレートの培地を、ジメチルスルフォキシド(DMSO:Dimethyl sulfoxide)にビンロウ子と甘草との混合抽出物250μg/mlを含む無血清DMEMに交替し溶解させて、24時間さらに培養した。MTT溶液[3-(4,5-Dimethyl-thiazole-2-yl) 2,5-diphenyl tetrazolium bromide : 5mg/ml]10μlずつ各ウェルに添加して4時間放置後、培地部分を捨てた。各ウェル当たり100μlのDMSO溶液を加えて、20分間攪拌した後、マイクロプレート測定機を用いて570nmで吸光度を測定した。実験結果は、表5に要約されており、その値は、3回の独立試験の平均値である。細胞増殖効果は、次の式により算出された。
[数式3]
細胞増殖効果(%)=[(抽出物処理群の吸光度−対照群の吸光度)/対照群の吸光度]×100
【0081】
【表5】

【0082】
上記表5に記載のように、甘草及びビンロウ子の混合抽出物は、角質形成細胞の増殖を濃度依存的に増加させる。従って、前記混合抽出物が皮膚しわの改善に非常に効果的であることが分かる。
【0083】
実験例4−2:繊維芽細胞の増殖に対する効果
人体正常繊維芽細胞を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに1×104細胞となるように接種し、DMEMで24時間培養した。培養後、前記マイクロプレートの培地を、ジメチルスルフォキシドにビンロウ子と甘草との混合抽出物250μg/mlを含む無血清DMEMに交替し、24時間さらに培養した。MTT溶液[3-(4,5-Dimethyl-thiazole-2-yl) 2,5-diphenyl tetrazolium bromide : 5mg/ml]10μlずつ各ウェルに添加して4時間放置後、培地部分を捨てた。各ウェル当たり100μlのDMSO溶液を加えて、20分間攪拌した後、マイクロプレート測定機を用いて570nmで吸光度を測定した。実験結果は、表6に要約されており、その値は、3回の独立試験の平均値である。細胞増殖効果は、上記式3により算出された。
【0084】
【表6】

【0085】
表6から分かるように、ビンロウ子抽出物と甘草抽出物のそれぞれは、皮膚しわの改善及び皮膚弾力の増進に重要な役割をすると知られた繊維芽細胞の増殖効果を上昇させた。また、前記混合抽出物は、細胞増殖効果の上昇をもたらした。繊維芽細胞の増殖は、皮膚しわの改善及び皮膚弾力の増進に重要なタンパク質であるコラーゲン、エラスチン、インテグリン及びラミニンの生合成増加と非常に密接な関係を有している。
【0086】
実験例5:インテグリン生合成効果の分析
人体正常繊維芽細胞を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに2×104細胞となるように接種し、DMEMで24時間培養した。培養後、前記マイクロプレートの培地を、ジメチルスルフォキシドにビンロウ子抽出物100μg/mlを含む無血清DMEMに交替し、72時間さらに培養した。培養後、各ウェルのインテグリンの含量は、ELISA方法により分析した。実験結果は、表7に示した。
【0087】
【表7】

【0088】
前記表7から分かるように、本発明のビンロウ子抽出物は、繊維芽細胞と細胞間の結合力を増進させ、細胞相互間の情報伝達及び細胞活性を促進する結合タンパク質であるインテグリンの生合成を促進させた。
【0089】
実験例6:混合抽出物を含有するバイオソームの皮膚浸透効果の分析
皮膚等価物(Dermal Equivalent)を、3μm多孔性ポリカーボネート材質からなる膜(Membrane)により内側と外側とが区分されたプレートの内側に入れた。皮膚等価物は、次の過程により製造した;人体正常繊維芽細胞1×105細胞/mlを、コラーゲン水溶液3mg/ml:5×DMEM:2.2%炭酸水素ナトリウムと200mM HEPES緩衝溶液との含まれた0.05N水酸化ナトリウムが7:2:1で混合された培地に接種し、5%CO2条件下で、37℃で7日間培養し、皮膚等価物を収得した。
【0090】
次いで、培養された繊維芽細胞を含有する皮膚等価物の表面上に、表皮角質形成細胞1×105細胞/mlを接種した後、EGFとBPEとの含有されたK−SFM培地を内側と外側に入れて7日間培養した。その後、プレート内側の培地を捨てて、空気が培養細胞の表面に接触されるようにした。10%FBSの含有されたK−SFMと、EGFの入っていないDMEMとが同量で混合された培地を外側に入れて、2週間培養し、多層の表皮と真皮が形成された人工皮膚を得た。前記人工皮膚の組織上に、本発明の実施例と比較例の化粧料組成物を適用して、4時間培養した。その後、10%FBSの含有されたK−SEMと、EGFの入っていないDMEMとが同量で混合された培地で、人工皮膚の表皮と真皮を浸透し通過された抽出物の量をHPLCで分析した。実験結果は、表8に示した。
【0091】
【表8】

【0092】
上記表8に示したように、本発明のビンロウ子抽出物と甘草抽出物とを安定化したバイオソームは、比較実施例1に比べ、皮膚浸透効果が約10倍以上優秀であることが分かった。これは、本発明のバイオソームの平均粒子サイズが約100nmで極めて小さいため、皮膚浸透が容易であるからである。このような向上された皮膚浸透性は、下記の実験例7及び8で証明された、皮膚弾力改善の臨床効果をもたらす原因である。
【0093】
実験例7:皮膚弾力の効果の分析
本発明のビンロウ子抽出物と甘草抽出物とを安定化したバイオソームを含有する化粧料組成物に対する皮膚弾力改善の臨床効果を測定した。
【0094】
温度24〜26℃、湿度75%の条件下で、健康な女性30名(平均年齢36.3歳)を3グループに分けて、Aグループには、実施例の化粧料組成物を、Bグループには、比較実施例1の化粧料組成物を、Cグループには、比較実施例2の化粧料組成物を、目元を中心に12週間適用した。その後、皮膚弾力測定機(Cutometer SEM 575, C+K Electronic Co., Germany)を利用して皮膚弾力を測定した。実験結果は、皮膚弾力測定機SEM 575の△R8(R8(12週)−R8(0週))値で表示した。R8値は、皮膚粘弾性(Viscoelasticity)の性質を示す。
【0095】
【表9】

【0096】
表9の結果から分かるように、本発明のバイオソームを含有した実施例の皮膚弾力は、比較実施例1に比べ79.3%増加した。また、本発明のビンロウ子抽出物と甘草抽出物とを共に含有した比較実施例1も、皮膚弾力を非常に効果的に増進させた。
【0097】
実験例8:皮膚美白効果の分析
30歳以上の女性30名を2グループに分けた。Aグループには、バイオソーム(実施例)を含有する剤形を、Bグループには、比較実施例1の剤形を適用した。1日1回ずつ目元及び目下を中心に、0.2mgずつ12週間塗布した。適用した後、抗シャドー(anti-shadow)効果を測定した。クロマメータ(Minolta CR300)を用いて皮膚色の変化(ΔL)を測定した。ここでL値は、色の明るさの程度を表示するが、0(黒色)から10(白色)までの等級により区分される。また、複数の熟練者による客観的な肉眼観察と被検者による主観的な肉眼観察を実施した。肉眼観察は、下記7等級に分類して評価した。
−3:非常に悪化、−2:悪化、−1:若干悪化、0:変化無し、+1:若干改善、+2:改善、+3:非常に改善
【0098】
【表10】

【0099】
上記表10から分かるように、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を安定化した本発明のバイオソームを塗布したAグループのΔL値は、5.6(P<0.01)であり、BグループのΔL値は、1.01(P>0.05)であった。従って、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を安定化したバイオソームが皮膚トーンを非常に効果的に白く明るく改善することが分かる。
【0100】
熟練者による客観的な肉眼評価で、Aグループは、2.1(P<0.01)、Bグループは、0.4(P>0.05)として表れて、被検者による主観的な肉眼評価で、Aグループは、2.1(P<0.01)、Bグループは、0.6(P>0.05)として表れた。
【0101】
以上の結果から、ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を安定化した本発明のバイオソームが、信頼性をもって、皮膚色を白く明るくする効果を奏することが分かる。
【0102】
実験例9:剤形の安定性実験
表1の実施例及び比較実施例1の剤形を、45℃に一定に維持される恒温槽で不透明ガラス容器に入れて12週間保管した。また、前記剤形を、4℃に一定に維持される、完全に遮光された冷蔵庫内で不透明ガラス容器に入れて12週間保管した。保管後、剤形の分離程度及び変色程度を比較測定した。この際、製品分離及び変色程度を次の6等級に分類して評価した。
0:変化無し、1:僅かに分離(変色)、2:若干分離(変色)、3:やや激しく分離(変色)、4:激しく分離(変色)、5:極めて激しく分離(変色)
【0103】
【表11】

【0104】
上記表11から分かるように、本発明のバイオソーム(実施例)を含有するクリーム剤形は、変色及び分離現象が全くなく、安定した剤形であることが分かった。比較実施例1は、45℃で若干の分離及び変色が生じた。
【0105】
実験例10:皮膚安全性実験
被検者30名(平均年齢27.5歳、年齢分布19歳〜35歳)を2グループに分けてヘイステストチャンバー(Hays's Test Chamber)を利用して皮膚貼付試験(Patch Test)を行った。但し、乾癬(Psoriasis)、湿疹(Eczema)及びその他の皮膚病変保有者や妊娠、授乳婦、及び避妊剤、抗ヒスタミン剤などを服用している人は、本実験から除外した。
【0106】
試験部位を70%エタノールで拭き取り、乾燥した後、上記表1の剤形をそれぞれ15gずつチャンバーに滴下した。Aグループには、本発明のバイオソーム(実施例)を含有する剤形を、Bグループには、比較実施例1を含有する剤形を塗布した。24時間塗布して、貼付を除去した後、マーキングペンで試験部位を表示し、それぞれ24時間、48時間後に試験部位を観察した。皮膚反応は、下記表12の国際接触皮膚炎研究会(International Contact Dermatitis Research Group:ICDRG)の規定により判定した。実験結果は、下記表13に示した。
【0107】
【表12】

【0108】
【表13】

【0109】
上記表13に示したように、ビンロウ子抽出物と甘草抽出物とを安定化したバイオソームを含有した実施例の剤形は、刺激をあらわさず、皮膚に安全な剤形であることが分かった。また、比較実施例1の剤形も、天然植物抽出物の皮膚安全性の長所をありのまま実験結果に表した。
【0110】
剤形例
以下、上記した試験例の結果に基づき、ビンロウ子抽出物と甘草抽出物とを安定化したバイオソームを含有する化粧料を組成して提示する。しかし、本発明の組成物は、その剤形に特に制限はなく、当業者が適宜選定して配合することができる。
【0111】
【表14】

【0112】
【表15】

【0113】
【表16】

【0114】
【表17】

【0115】
【表18】

【0116】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な技術はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とその等価物により定義されると言える。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のビンロウ子及び甘草の混合抽出物は、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖において相乗的効果を奏し、これにより皮膚しわを改善すると共に皮膚弾力を増大して、皮膚美白の効果にも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物を有効成分として含むことを特徴とする、繊維芽細胞及び角質形成細胞の増殖用組成物。
【請求項2】
(a)有効成分としてビンロウ子抽出物及び甘草抽出物;及び(b)化粧品学的に許容可能な担体を含むことを特徴とする、皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項3】
前記ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物のそれぞれの含量は、前記化粧料組成物の総重量に対し、0.001〜1.0重量%であることを特徴とする、請求項2に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項4】
前記ビンロウ子抽出物及び甘草抽出物は、バイオソーム(biosome)内に含有されていることを特徴とする、請求項2に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項5】
前記バイオソームの含量は、前記化粧料組成物の総重量に対し、0.05〜20重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項6】
前記ビンロウ子抽出物及び前記甘草抽出物は、前記バイオソームの総重量に対し、0.01〜5.0重量%で配合されることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項7】
前記バイオソームは、非イオン性界面活性剤及びグリセリンに結合したセラミドを用いて製造されたことを特徴とする、請求項4に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。
【請求項8】
前記セラミドは、次の化学式1で表される擬似セラミドであることを特徴とする、請求項7に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物:
【化1】

【請求項9】
前記擬似セラミドは、次の化学式2、3または4で表される化合物であることを特徴とする、請求項8に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物:
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項10】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーからなる群から選ばれる剤形を有することを特徴とする、請求項2に記載の皮膚しわ改善及び皮膚美白の二重機能性化粧料組成物。

【公表番号】特表2006−514979(P2006−514979A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570575(P2004−570575)
【出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【国際出願番号】PCT/KR2003/000733
【国際公開番号】WO2004/089327
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502091135)コリアナ・コズメティック・カンパニー・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】