説明

ビーム加工装置およびビーム観察装置

【課題】簡易な構成で、加工対象物を広範囲で加工することが可能なビーム加工装置を提供すること。
【解決手段】ビーム加工装置1は、ワーク2の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源13と、ビーム出射源13が出射されたビームが通過する第1経路34を有する真空チャンバー3と、第1経路34に連通し第1経路34を通過したビームが通過する第2経路40およびワーク2に向けてビームを出射する出射孔78aを有する局所真空チャンバー27と、ビームの照射位置を検出するために、出射孔78a等に配置される被照射部材53を有する検出手段とを備えている。このビーム加工装置1は、ビームを用いて真空チャンバー3および局所真空チャンバー27の外部の大気圧中に少なくとも一部が配置されるワーク2の加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビームを用いて加工対象物の加工を行うビーム加工装置、および、ビームを用いて観察対象物の観察を行うビーム観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物(ワーク)に対する加工を行う加工装置として、集束イオンビームでワークを加工する集束イオンビーム加工装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、ワークに対する加工を行う加工装置として、電子ビームでワークを加工する電子ビーム加工装置も知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された集束イオンビーム加工装置では、集束イオンビームの散乱を防止するため、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされたワークに対して集束イオンビームが照射され、ワークの加工が行われる。また、特許文献2に記載された電子ビーム加工装置でも同様に、電子ビームの散乱を防止するため、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされたワークに対して電子ビームが照射され、ワークの加工が行われる。
【0004】
また、集束イオンビームを用いて観察対象物の観察を行う集束イオンビーム観察装置も知られている(たとえば、特許文献3参照)。また、一般に、電子ビームを用いて観察対象物の観察を行う電子ビーム観察装置も知られている。かかる集束イオンビーム観察装置や電子ビーム観察装置でも、真空チャンバー内に配置されたステージ上にセットされた観察対象物に対して集束イオンビームや電子ビームが照射されて、観察対象物の観察が行われる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−32154号公報
【特許文献2】特開2004−167536号公報
【特許文献3】特開平10−162766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の集束イオンビーム加工装置および特許文献2に記載の電子ビーム加工装置では、ワークがセットされるステージが真空チャンバー内に配置されているため、ステージによるワークの移動範囲には限界がある。すなわち、特許文献1に記載の集束イオンビーム加工装置や特許文献2に記載の電子ビーム加工装置では、大きなワークを広範囲で加工することは困難である。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の集束イオンビーム加工装置や特許文献2に記載の電子ビーム加工装置でも、真空チャンバーを大きくすることで、大きなワークを広範囲で加工することは可能となる。しかしながら、真空チャンバーを大きくすると加工装置が大型化するとともに、加工装置の製造コストおよびランニングコストが嵩む。また、従来の集束イオンビーム観察装置や電子ビーム観察装置においても、同様の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成で、加工対象物を広範囲で加工することが可能なビーム加工装置を提供することにある。また、本発明の課題は、簡易な構成で、観察対象物を広範囲で観察することが可能なビーム観察装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のビーム加工装置は、加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、ビーム出射源から出射されたビームが通過する第1経路を有しビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、第1経路に連通し第1経路を通過したビームが通過する第2経路および加工対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、ビームの照射位置を検出するために、出射孔から出射されるビームの出射方向における出射孔の外側または出射孔に配置される被照射部材を有する検出手段とを備え、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される加工対象物の加工を上記ビームを用いて行うことを特徴とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するため、本発明のビーム観察装置は、観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、ビーム出射源から出射されたビームが通過する第1経路を有しビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、第1経路に連通し第1経路を通過したビームが通過する第2経路および観察対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、ビームの照射位置を検出するために、出射孔から出射されるビームの出射方向における出射孔の外側または出射孔に配置される被照射部材を有する検出手段とを備え、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される観察対象物の観察をビームを用いて行うことを特徴とする。
【0011】
ここで、本明細書において、「局所真空チャンバー」とは、加工対象物あるいは観察対象物の一部分のみを真空状態とするための真空チャンバーをいう。
【0012】
本発明のビーム加工装置では、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される加工対象物をビーム用いて加工している。そのため、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に配置される所定の移動手段を用いて加工対象物を移動させる簡易な構成で、加工対象物を広範囲で加工することが可能になる。また、本発明のビーム観察装置では、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される観察対象物をビームを用いて観察しているため、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に配置される所定の移動手段を用いて観察対象物を移動させる簡易な構成で、観察対象物を広範囲で観察することが可能になる。
【0013】
また、本発明のビーム加工装置およびビーム観察装置は、ビーム出射源から出射されたビームの照射位置を検出するために、出射孔から出射されるビームの出射方向における出射孔の外側または出射孔に配置される被照射部材を有する検出手段を備えている。そのため、加工対象物あるいは、観察対象物が真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部に配置される場合であっても、検出手段での検出結果に基づいて、ビームを出射孔から確実に出射して加工対象物、あるいは、観察対象物に照射することが可能になる。その結果、加工対象物の適切な加工、あるいは、観察対象物の適切な観察が可能になる。
【0014】
本発明において、検出手段は、被照射部材としての検出用電極と、第1経路および/または第2経路に配置されるビームの偏向装置と、検出用電極で検出される検出電流値と偏向装置によるビームの偏向位置とに基づいて偏向位置に対応する検出電流値を画像化する画像生成装置とを備えることが好ましい。このように構成すると、画像化された検出電流値を目視で確認することで、ビームの照射位置を検出できる。そのため、ビームの照射位置の検出が容易になる。
【0015】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明のビーム加工装置は、加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、ビーム出射源から出射されたビームが通過する第1経路を有しビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、第1経路に連通し第1経路を通過したビームが通過する第2経路および加工対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、ビームの進行方向と出射孔との位置合せを行うための位置調整手段とを備え、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される加工対象物の加工をビームを用いて行うことを特徴とする。
【0016】
さらにまた、上記の課題を解決するため、本発明のビーム観察装置は、観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、ビーム出射源から出射されたビームが通過する第1経路を有しビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、第1経路に連通し第1経路を通過したビームが通過する第2経路および観察対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、ビームの進行方向と出射孔との位置合せを行うための位置調整手段とを備え、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される観察対象物の観察をビームを用いて行うことを特徴とする。
【0017】
本発明のビーム加工装置では、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される加工対象物をビームによって加工しているため、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に配置される所定の移動手段を用いて加工対象物を移動させる簡易な構成で、加工対象物を広範囲で加工することが可能になる。また、本発明のビーム観察装置では、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される観察対象物をビームによって観察しているため、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部の大気圧中に配置される所定の移動手段を用いて観察対象物を移動させる簡易な構成で、観察対象物を広範囲で観察することが可能になる。
【0018】
また、本発明のビーム加工装置およびビーム観察装置は、ビーム出射源から出射されたビームの進行方向と出射孔との位置合せを行うための位置調整手段を備えている。そのた、加工対象物、あるいは、観察対象物が真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部に配置される場合であっても、位置調整手段を用いて、ビームを出射孔から確実に出射して加工対象物、あるいは、観察対象物に照射することが可能になる。その結果、加工対象物の適切な加工、あるいは、観察対象物の適切な観察が可能になる。
【0019】
本発明において、局所真空チャンバーは、出射孔が形成されるビーム出射部を備え、位置調整手段は、ビームの出射方向に直交する方向に、ビーム出射部を移動させる移動機構と、ビーム出射部を固定する固定機構とを備えることが好ましい。このように構成すると、ビームが出射される出射孔を直接移動させて、ビームの進行方向と出射孔との位置合せを行うことができるため、ビームの進行方向と出射孔との位置合せが容易になる。
【0020】
本発明において、局所真空チャンバーには、出射孔の外周側に配置される吸気口が形成されるとともに、ビーム加工装置およびビーム観察装置は、吸気口から局所真空チャンバーの内部に向かって吸気を行う吸気手段を備えることが好ましい。このように構成すると、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部に加工対象物、あるいは、観察対象物が配置される場合であっても、加工対象物の加工部位、あるいは、観察対象物の観察部位の周辺の圧力を適切に下げることができる。そのため、加工対象物、あるいは、観察対象物への適切なビームの照射が可能になる。
【0021】
本発明のビーム加工装置において、出射孔から出射されるビームは集束イオンビームであり、ビーム加工装置は、加工対象物の加工を行うためのレーザビームを出射するレーザ出射手段を備えるとともに、集束イオンビームとレーザビームとを用いて加工対象物の加工を行うことが好ましい。レーザビームの特性上、レーザビームを用いた直接加工では、加工対象物に対して数μm(マイクロメートル)のレベルでしか加工を行うことができない。これに対して、集束イオンビームを用いた加工では、数百nm(ナノメートル)〜数十nmのレベルで加工対象物を加工することは可能であるが、数百nm〜数十nmのレベルでの加工に加え、数μmレベルでの加工を加工対象物に対して行う必要がある場合に、集束イオンビームでは加工時間がかかり、生産性は低下する。
【0022】
そのため、このように構成すると、比較的精度が低い粗加工をレーザビームで行い、精度の必要な微細加工を集束イオンビームで行うことができる。したがって、たとえば、加工対象物に対して、数十μmレベルから数十nmレベルまでの加工を行う必要がある場合であっても、加工対象物に対する微細な加工を短時間で行うことが可能になる。また、加工対象物は、真空チャンバーおよび局所真空チャンバーの外部に配置されるため、レーザ出射手段から出射されるレーザビームを用いたレーザ加工は、大気中で行うことができる。そのため、レーザ加工の際にアシストガスが必要になる場合であっても、アシストガスを用いた適切なレーザ加工を行うことが可能になる。
【0023】
本発明において、ビーム加工装置は、加工対象物が固定される固定手段を備えるとともに、集束イオンビームで加工対象物の加工が行われるイオンビーム加工領域と、レーザビームで加工対象物の加工が行われるレーザ加工領域との間で固定手段を移動させる移動手段を備えることが好ましい。このように構成すると、集束イオンビームによる加工とレーザビームによる加工との間で、加工対象物の着脱を行う必要がなくなる。そのため、集束イオンビームとレーザビームとの両者を用いて、加工対象物の加工を行う場合であっても、加工対象物の着脱誤差がなくなり、加工対象物の加工精度を高めることができる。
【0024】
本発明において、ビーム加工装置は、加工対象物の加工状態を測定する測定手段を備え、移動手段は、測定手段で加工対象物の加工状態の測定が行われる測定領域へ固定手段を移動可能に構成されていることが好ましい。このように構成すると、加工対象物の着脱を行うことなく、加工の途中で、加工対象物の加工状態を測定できる。そのため、加工対象物の加工精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明のビーム加工装置では、簡易な構成で、加工対象物を広範囲で加工することが可能になる。また、本発明のビーム観察装置では、簡易な構成で、観察対象物を広範囲で観察することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(ビーム加工装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるビーム加工装置1の概略構成を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すビーム加工装置1の主要部の構成を模式的に示す図である。
【0028】
本形態のビーム加工装置1は、所定の加工対象物(ワーク)2の加工を行うためのビームとしての集束イオンビームと、レーザビームとを用いて、ワーク2に対して除去加工等の微細な加工を行う加工システムである。このビーム加工装置1は、図1および図2に示すように、集束イオンビーム(FIB(Focused Ion Beam))を出射するためのビーム出射源13および真空チャンバー3と、ワーク2の加工を行うためのレーザビームを出射するレーザ出射手段4と、FIBの拡散を防止するための真空生成手段5と、ワーク2の加工状態を測定する測定手段6と、ワーク2が載置されるとともにワーク2を移動させる移動手段7と、ビーム加工装置1の各種の制御を行う制御部8と、真空チャンバー3や測定手段6等が固定された本体フレーム9と、本体フレーム9が固定されるとともに移動機構7等が搭載された本体ベース10と、ビーム加工装置1の設置面と本体ベース10との間の相対的な振動を除去するための制振装置11と、FIBの照射位置を検出するための後述の検出手段57を構成する検出部12とを備えている。なお、本形態のビーム加工装置1は、大気圧中に配置されている。また、以下では、図1に示すように、図1の前後方向Y方向、左右方向をX方向、上下方向をZ方向と表記する。
【0029】
ビーム出射源13は、ガリウム(Ga)等の液体金属をイオン源としてイオンビームを出射する。また、ビーム出射源13は、真空チャンバー3の一端側(図2の上端側)に取り付けられている。真空チャンバー3の内部には、ビーム出射源13から出射されたイオンビームが通過する第1経路34が形成されている。第1経路34には、通過するイオンビームを集束させるための所定のイオン光学系(図示省略)等が配置されている。また、第1経路34には、後述の検出手段57を構成する偏向装置59の一部が配置されている(図10参照)。本形態では、真空チャンバー3の他端側(図2の下端側)からFIBが出射される。たとえば、20〜30kVに加速されたGaイオンビーム(すなわち、FIB)が出射され、スパッタリング現象を用いて、ワーク2の加工が行われる。本形態では、このFIBによって、ワーク2は、数百nmのレベルで加工される。なお、本形態のビーム加工装置1は、第1経路34を真空状態とするための真空ポンプ(図示省略)を備えている。
【0030】
レーザ出射手段4は、複数種類のレーザビームを出射するように構成されている。本形態のレーザ出射手段4は、3種類のレーザビームを出射するように構成されており、図2等に示すように、第1レーザ出射機構14、第2レーザ出射機構15および第3レーザ出射機構16の3つのレーザ出射機構を備えている。
【0031】
第1レーザ出射機構14は、比較的波長の短い短波長レーザビームを出射するように構成され、レーザビームを発生させる第1レーザ光源17と、本体フレーム9に固定され、ワーク2に向かって下端からレーザビームを照射する第1レーザヘッド18と、所定の光学系で構成され第1レーザ光源17で発生したレーザビームを第1レーザヘッド18へと導く光路19とを備えている。本形態の第1レーザ出射機構14は、UV(紫外線)レーザビームを出射する。また、本形態では、第1レーザ出射機構14から出射されるUVレーザビームによって、ワーク2は、数十μmのレベルで加工される。
【0032】
第2レーザ出射機構15は、パルスの時間幅がピコ秒(ps)やフェムト秒(fs)といった非常に短い極短パルスレーザビームを出射するように構成され、レーザビームを発生させる第2レーザ光源20と、本体フレーム9に固定され、ワーク2に向かって下端からレーザビームを照射する第2レーザヘッド21と、所定の光学系で構成され第2レーザ光源20で発生したレーザビームを第2レーザヘッド21へと導く光路22とを備えている。本形態の第2レーザ出射機構15は、パルスの時間幅がフェムト秒であるfsレーザビームを出射する。また、本形態では、第2レーザ出射機構15から出射されるfsレーザビームによって、ワーク2は、数μmのレベルで加工される。
【0033】
第3レーザ出射機構16は、ビーム成形されたレーザビームを出射するように構成されている。本形態の第3レーザ出射機構16は、赤外線レーザビームを出射するファイバーレーザであり、レーザビームを発生させる第3レーザ光源23と、本体フレーム9に固定され、ワーク2に向かって下端から成形されたレーザビームを照射する第3レーザヘッド24と、第3レーザ光源23で発生したレーザビームを第3レーザヘッド24へと導くファイバーケーブル25とを備えている。本形態では、第3レーザ出射機構16から出射されるビーム成形された赤外線レーザビームによって、十μmレベルの加工がワーク2に対して行われる。
【0034】
なお、本形態のレーザ出射手段4は、ワーク2のレーザ加工を適切に行うため、レーザ加工中にアシストガスを噴射するガス噴射装置(図示省略)を備えている。ガス噴射装置から噴射されるアシストガスは、たとえば、レーザ加工中のワーク2の酸化を防止したり、あるいは、レーザ加工で生じる飛散物を除去するための窒素ガスやヘリウムガス等である。
【0035】
真空生成手段5は、真空チャンバー3の他端側に取り付けられ、FIBが通過する局所真空チャンバー27と、局所真空チャンバー27の内部等を真空状態とするための各種の機器や制御装置等を有する真空装置本体28とを備えている。この真空生成手段5の詳細な構成については後述する。
【0036】
測定手段6は、FIBやレーザビームで加工されたワーク2の加工状態(加工形状)を測定するように構成され、本体フレーム9に固定されている。本形態の測定手段6は、原子間力顕微鏡であり、片持ち梁の先端に固定されたプローブ(図示省略)とワーク2の加工部位との間に働く原子間力の変動を利用して、ワーク2の加工部位の三次元形状を数nmレベルで測定する。なお、測定手段6は、微細形状を測定可能なものであれば良く、たとえば、走査型レーザ顕微鏡等であっても良い。
【0037】
移動手段7は、図2に示すように、ワーク2が固定されるチャック等の固定手段29が取り付けられワーク2をZ方向へ移動させるZ方向移動機構30と、Z方向移動機構30とともにワーク2をX方向へ移動させるX方向移動機構31と、Z方向移動機構30およびX方向移動機構31とともにワーク2をY方向へ移動させるY方向移動機構32とを備えるいわゆるXYZステージである。なお、本形態では、ワーク2側からZ方向移動機構30、X方向移動機構31およびY方向移動機構32がこの順番で配置されているが、Z方向移動機構30、X方向移動機構31およびY方向移動機構32は、ワーク2側からどのような順番で配置されても良い。
【0038】
Z方向移動機構30、X方向移動機構31およびY方向移動機構32はそれぞれ、モータ等の駆動源を備えている。また、Z方向移動機構30、X方向移動機構31およびY方向移動機構32はそれぞれ、移動機構制御部33に接続されており、移動機構制御部33からの制御指令に基づいて、各方向へワーク2を移動させる。なお、本形態のZ方向移動機構30、X方向移動機構31およびY方向移動機構32はそれぞれ、数十nmレベルでワーク2を各方向へ移動させることができる。また、本形態のX方向移動機構31およびY方向移動機構32の移動範囲(ストローク)は250mmである。
【0039】
本形態のビーム加工装置1は、X方向移動機構31およびY方向移動機構32によって、局所真空チャンバー27、第1から第3レーザヘッド18、21、24および測定手段6のいずれの下方にもワーク2を配置できる構成となっている。すなわち、本形態では、移動手段7によって、FIBでワーク2の加工が行われるイオンビーム加工領域である局所真空チャンバー27の下方と、レーザビームでワーク2の加工が行われるレーザ加工領域である第1から第3レーザヘッド18、21、24の下方と、ワーク2の加工状態の測定が行われる測定領域である測定手段6の下方との間で、固定手段29とともにワーク2を移動させることが可能である。
【0040】
制御部8には、図2に示すように、ビーム出射源13、第1から第3レーザ光源17、20、23、測定手段6、真空装置本体28、移動機構制御部33および検出部12等が接続されている。本形態では、制御部8は、これらの機器がそれぞれ個別に接続される複数の個別制御部(図示省略)によって構成されている。また、検出部12が接続される個別制御部は、検出部12等とともに後述の検出手段57を構成する後述の信号混合回路60および画像処理回路61等の制御回路を備えている(図9参照)。この信号混合回路60および画像処理回路61の詳細な構成については後述する。なお、検出部12が接続される個別制御部を制御部8から分離して、信号混合回路60および画像処理回路61等の制御回路を有する制御部を別途、設けても良い。
【0041】
本体フレーム9は、たとえば、石で形成されるとともに、門型に形成されている。この本体フレーム9には、ワーク2の上面にレーザビームが照射可能となるように、第1から第3レーザヘッド18、21、24がそれぞれ固定され、ワーク2の上面にFIBが照射可能となるように、真空チャンバー3が固定されている。また、測定手段6のプローブの先端がワーク2の上面に対向可能となるように、本体フレーム9に測定手段6が固定されている。
【0042】
本体ベース10は、厚い石板で平板状に形成されたいわゆる石定盤である。この本体ベース10には、本体フレーム9の他に、第1レーザ光源17、第2レーザ光源20およびY方向移動機構32等が取り付けられている。
【0043】
制振装置11は、たとえば、ビーム加工装置1の設置面に対する本体ベース10の揺れの方向と反対方向へ重り(図示省略)を動かして、本体ベース10の揺れを打ち消すアクティブ制振装置である。
【0044】
検出部12は、上述のように、FIBの照射位置を検出するための検出手段57の一部を構成している。この検出部12は、図2に示すように(K部の拡大部分参照)、検出用電極53と、検出用電極53が固定された基板54と、検出用電極53と基板54とを電気的に接続する接続線55とを備えている。
【0045】
検出用電極53は、導電性を有する芯線53aと、芯線53aの周りを覆う絶縁性の被覆53bとから構成され、基板54の表面から突出するように基板54に固定されている。また、検出用電極53は、後述のように、FIBの照射位置を検出する際に、局所真空チャンバー27に形成された後述の出射孔78aに挿入される。基板54は、出射孔78aへ挿入された検出用電極53を固定するための固定治具としての機能を果たしている。また、基板54には、後述のように、検出用電極53で検出される検出電流を電圧に変換して増幅する電流増幅回路58が実装されている。接続線55は、芯線53aと電流増幅回路58とを電気的に接続している。本形態では、検出用電極53は、FIBの照射位置を検出する際に、FIBが照射される被照射部材である。
【0046】
(局所真空チャンバーの構成)
図3は、図2に示す局所真空チャンバー27の平面図である。図4は、図3のE−E断面を示す断面図である。図5は、図3のF−F断面を示す断面図である。図6は、図3のH−H断面を示す断面図である。図7は、図4のJ部を拡大して示す拡大断面図である。
【0047】
局所真空チャンバー27は、図3から図7に示すように、底部を有する鍔付の略円筒状に形成されている。この局所真空チャンバー27は、略円筒状の本体部35と、底部を形成する第1底面部76および第2底面部37と、ワーク2に向けてFIBが出射される出射孔78aが形成されたビーム出射部78と、第1底面部76に対して、径方向(すなわち、FIBの出射方向に直交する方向)で、ビーム出射部78の位置調整を行って、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うための位置調整手段80(図7参照)とを備えている。
【0048】
本体部35は、径方向内側に配置された内筒部35aと、内筒部35aの径方向外方に配置された外筒部35bとを有する二重構造となっている。また、本体部35の上端には、径方向外側へ広がる鍔部35cが形成されている。鍔部35cには、真空チャンバー3の下端に本体部35を固定するための固定ネジ(図示省略)が挿通される複数の貫通孔35dが形成されている。本形態では、内筒部35aと第1底面部76等とによって、局所真空チャンバー27の径方向の中心部に第1空間40が形成され、内筒部35a、外筒部35b、第1底面部76および第2底面部37等によって、第1空間40の径方向外方および下方に第2空間41が形成されている。なお、第1空間40は、真空チャンバー3の第1経路34に連通している(図8参照)。また、本形態では、第1空間40は、第1経路34を通過したFIBが通過する第2経路となっている。
【0049】
また、本体部35には、後述のように、第1空間40を真空状態とするための排気を行う第1排気孔35eが、外周面から第1空間40に連通するように形成され(図5参照)、第2空間41を真空状態とするための排気を行う第2排気孔35fが、外周面から第2空間41に連通するように形成されている(図4参照)。
【0050】
第1底面部76は略円板状に形成され、図7に示すように、その上面および下面は、径方向外側から内側に向かうにしたがって下方向へ緩やかに傾斜している。第1底面部76の径方向中心位置には、FIBが通過する貫通孔76aが形成されている。この貫通孔76aは、下側に向かうにしたがって径が小さくなっている。また、第1底面部76の下面には、ビーム出射部78および後述の固定部材81が配置される凹部76bが形成されている。この第1底面部76は、内筒部35aの下端に固定されている。また、内筒部35aと第1底面部76との間には、第1空間40からの空気の漏れを防止するシール部材42が配置されている。
【0051】
位置調整手段80は、第1底面部76に固定される略円筒状の固定部材81と、固定部材81の内周側から突出してビーム出射部78の位置調整を行う調整ネジ82とを備えている。固定部材81は、第1底面部76の凹部76bの中に配置された状態で、固定ネジ83によって、第1底面部76の下面に固定されている。調整ネジ82は、頭部を有しない六角穴付止めネジであり、径方向に貫通するように固定部材81に形成されたネジ孔81aに螺合した状態で、固定部材81の内周側から突出している。本形態では、たとえば、固定部材81には、90°ピッチで4箇所にネジ孔81aが形成され、それぞれのネジ孔81aに調整ネジ82が螺合している。なお、調整ネジ82を回転させるためのモータ等の駆動機構が位置調整手段80に設けられても良い。
【0052】
ビーム出射部78は、上下方向に貫通する出射孔78aと上端側で径方向外側へ広がる鍔部78bとを有する鍔付の略円筒状に形成されている。出射孔78aの上端側は、上側に向かうにしたがって、径が次第に大きくなる略すり鉢状に形成されており、出射孔78aは、第1底面部76の貫通孔76aを介して、第1空間40に連通している。このビーム出射部78は、固定部材81の内周側に配置された状態で、第1底面部76の凹部76bの中に配置され、第1底面部76の下面と固定部材81の上面と間に鍔部78bが挟まれた状態で、第1底面部76に対して固定されている。また、第1底面部76の下面と鍔部78bの間には、第1空間40からの空気の漏れを防止するシール部材43が配置されている。
【0053】
図7に示すように、ビーム出射部78の外周面には調整ネジ82が当接し、ネジ孔81aへの調整ネジ82のネジ込み量によって、ビーム出射部78の径方向の位置調整が行われる。すなわち、本形態では、固定部材81に形成されたネジ孔81aと調整ネジ82によって、FIBの出射方向に直交する方向へビーム出射部78を移動させる移動機構が構成されている。また、本形態では、固定部材81と固定ネジ83とによって、ビーム出射部78を固定する固定機構が構成されている。
【0054】
第2底面部37は、略円板状に形成されている。第2底面部37の中心部には、ビーム出射部78の下端側が配置される貫通孔37aが形成されている。また、第2底面部37の上面は、径方向外側から内側に向かうにしたがって下方向へ緩やかに傾斜する傾斜面37bとなっている。そして、第1底面部76の下面および固定部材81の下面と、傾斜面37bとの間に形成された空間は、第2空間41の一部となっている。さらに、第2底面部37の下面は、貫通孔37aの周囲に形成された第1平坦面37cと、第1平坦面37cから径方向外方に向かって上方向へ傾斜するように形成された傾斜面37dと、傾斜面37dから径方向外方に向かって形成された第2平坦面37eとから構成されている。第2底面部37は、外筒部35bの下端に固定されている。また、外筒部35bと第2底面部37との間には、第2空間41からの空気の漏れを防止するシール部材44が配置されている。
【0055】
第2底面部37の貫通孔37aの径は、ビーム出射部78の下端部の外径D1よりも大きくなっている。また、本形態では、ビーム出射部78の底面78dと、第1平坦面37cとが同一平面上に配置されている。そして、貫通孔37aにおけるビーム出射部78の径方向外方には、局所真空チャンバー27の底面から第2空間41に連通する吸気口45が形成されている。すなわち、本形態の局所真空チャンバー27には、出射孔78aの外周側に配置される吸気口45が形成されている。
【0056】
なお、出射孔78aの径は0.1〜2mmであることが好ましく、ビーム出射部78の下端部の外径D1は1〜60mmであることが好ましく、吸気口45の外径(すなわち、貫通孔37aの径および第1平坦面37cの内径)は5〜100mmであることが好ましく、第1平坦面37cの外径D2は25〜120mmであることが好ましい。また、本形態では、たとえば、傾斜面37dの外径D3は57mm、内筒部35aの内径は53mm、内筒部35aの外径は73mm、外筒部35bの内径は100mm、外筒部35bの外径は120mmとなっている。また、第1平坦面37cと第2平坦面37eとの距離D4はたとえば3mmとなっている。
【0057】
(真空生成手段の構成)
図8は、図2に示す局所真空チャンバー27と第1真空ポンプ47等との接続関係を説明するための模式図である。図9は、図2に示す真空生成手段5において、各種のパラメータを変化させたときの第1空間40および第2空間41の真空度の実測データを示す表である。
【0058】
本形態では、局所真空チャンバー27は、図8に示すように、真空チャンバー3の下端に取り付けられ、FIBによるワーク2の加工時に、真空チャンバー3とワーク2との間に配置される。そして、第1経路34を通過したFIBは、第1空間40(すなわち、第2経路)を通過して、出射孔78aから出射され、微小な隙間Gを介してイオンビーム加工領域に配置されるワーク2に集束する。すなわち、本形態の真空生成手段5は、第1空間40を真空状態にするとともに、隙間Gを介して対向配置された局所真空チャンバー27の下面(具体的には、ビーム出射部78の底面78d)とワーク2との間に形成される空間50(以下、「局所空間50」とする)も真空状態とすることで、ワーク2へ向かうFIBの拡散を防止している。なお、隙間Gはたとえば、10μmである。この隙間Gは、10μm〜200μmであることが好ましい。
【0059】
FIBの拡散を防止するために、第1空間40および局所空間50を、所定の真空度まで減圧する必要がある。しかしながら、第1空間40のみを真空状態としたのでは、第1空間40および局所空間50を所定の真空度まで減圧することは困難である。そこで、本形態では、第2空間41も真空状態とすることで、第1空間40および局所空間50を所定の真空度まで減圧することを可能としている。すなわち、本形態の真空生成手段5は、いわゆる差動排気式の真空装置である。
【0060】
なお、図8に示すように、加工が行われるワーク2の加工部位を中心とするワーク2の一部分が真空状態となる局所空間50に臨むように配置され、ワーク2のその他の部分は、局所真空チャンバー3の外部の大気圧中に配置されている。
【0061】
上述のように、真空生成手段5は、局所真空チャンバー27に加え、真空装置本体28を備えている。真空装置本体28は、第1空間40を真空状態とするための第1ポンプ47および第2ポンプ48を備えている。すなわち、第1空間40は、第1ポンプ47および第2ポンプ48によって、ワーク2に向かうFIBが通過する真空空間となる。また、真空装置本体28は、第2空間41を真空状態とするための第3ポンプ49を備えている。本形態では、第3ポンプ49は、吸気口45から局所真空チャンバー27の内部に向かって吸気を行う吸気手段である。また、図8に示すように、第1ポンプ47および第2ポンプ48は、第1排気孔35eに接続された配管50を介して、第1空間40に接続され、第3ポンプ49は、第2排気孔35fに接続された配管51を介して、第2空間41に接続されている。
【0062】
第1ポンプ47は、吸引容量は比較的小さいが、比較的高い真空到達度を得ることが可能な(すなわち、第1空間40を比較的低い圧力まで減圧することが可能な)ポンプであり、たとえば、ターボ分子ポンプである。また、第2ポンプ48および第3ポンプは、吸引容量は大きいが、高い真空到達度を得ることができないポンプであり、たとえば、ロータリポンプである。
【0063】
本形態の真空生成手段5では、ワーク2が、移動手段7によって移動され、隙間Gを介して局所真空チャンバー27の下面に対向配置されると、まず、第3ポンプ49が作動して、第2空間41が減圧される。第2空間41が減圧されると、吸気口45から空気が吸引され、局所空間50も減圧される。そして、第2空間41が所定の真空度まで減圧されると、第2ポンプ48、第1ポンプ47がこの順番で作動する。第3ポンプ49の作用で、局所空間50が減圧されているため、第2ポンプ48および第1ポンプ47によって、第1空間40および局所空間50は、FIBの拡散を防止するために必要な真空度まで短時間で減圧される。
【0064】
また、本形態では、ビーム出射部78の底面78dと、第1平坦面37cとが同一平面上に配置されるとともに、第1平坦面37cの径方向外方には傾斜面37dが形成されている。そのため、第2底面部37とワーク2との干渉を防止しつつ、ビーム出射部78の底面78dとワーク2とを近接させることができる。また、第1平坦面37cとワーク2とを近接させることができるため、第1空間40や第2空間41を減圧する際に、局所空間50への空気の流入を防止して、局所空間50を効率良く減圧できる。
【0065】
なお、本形態の真空生成手段5では、出射孔78aの径、ビーム出射部78の下端部の外径D1、吸気口45の外径、第1平坦面37cの外径D2、および、隙間Gをパラメータとして、それぞれのパラメータを変化させたときに測定された第1空間40および第2空間41の真空度は、図9に示すようになった。たとえば、出射孔78aの径が1mm、ビーム出射部78の下端部の外径D1が5mm、吸気口45の外径が20mm、第1平坦面37cの外径D2が35mm、隙間Gが10μmである場合、第1空間40の真空度は5×10−3Paとなり、第2空間41の真空度は30Paとなった。
【0066】
(検出手段の構成)
図10は、図8に示す集束イオンビーム(FIB)の照射位置を検出するための検出手段57の概略構成を示す図である。図11は、図8に示す集束イオンビーム(FIB)の照射位置を検出する際の検出部12の状態を示す図である。図12は、図10に示す表示装置62に表示される画像の一例を模式的に示す図である。
【0067】
本形態のビーム加工装置1は、上述のように、FIBの照射位置を検出するための検出手段57を備えている。検出手段57は、図10に示すように、検出部12に加え、第1経路34の内部等に配置された偏向装置59と、制御部8の一部を構成する信号混合回路60および画像処理回路61と、表示装置62とを備えている。
【0068】
検出部12は、上述のように、検出用電極53と基板54と接続線55とを備えている。また、基板54には、電流増幅回路58が実装されており(図10参照)、検出用電極53で検出された検出電流は、電流増幅回路58で電圧に変換されて増幅される。FIBの照射位置を検出する際には、図11に示すように、検出部12が配置される。すなわち、検出用電極53が出射孔78aへ挿入され、基板54の上面がビーム出射部78の底面78dに当接した状態で、基板54がビーム出射部78に固定される。本形態では、FIBの照射位置の検出時以外には、検出部12は、ビーム出射部78から取り外され、所定の収納部に収納されている。なお、検出部12が固定手段29に固定され、FIBの照射位置の検出時には、移動手段7によって、図11に示すように検出部12が配置されても良い。
【0069】
偏向装置59は、ビーム出射源13から出射されたイオンビームを第1経路34内および第1空間40(すなわち、第2経路)内で偏向して走査させる。この偏向装置59は、図10に示すように、イオンビームをX方向へ偏向して走査させるため、第1経路34内に配置された一対のX方向偏向電極64と、イオンビームをY方向へ偏向して走査させるため、第1経路34内に配置された一対のY方向偏向電極65と、X方向偏向電極64を制御するX方向走査信号を出力するX方向走査信号発生回路66と、Y方向偏向電極65を制御するY方向走査信号を出力するY方向走査信号発生回路67とを備えている。本形態の偏向装置59は、たとえば、FIBをX方向およびY方向にそれぞれ1.2mm走査させる。
【0070】
信号混合回路60には、図10に示すように、電流増幅回路58で増幅された電圧信号と、X方向走査信号発生回路66から出力されるX方向走査信号と、Y方向走査信号発生回路67から出力されるY方向走査信号とが入力される。また、信号混合回路60は、X方向走査信号およびY方向走査信号に基づくFIBの偏向位置と検出用電極53で検出された検出電流値とを対応づけた出力信号を出力する。画像処理回路61は、信号混合回路60からの出力信号に基づいて、FIBの偏向位置に対応する検出電流値を画像化するためのAD変換等の所定の処理を行う。なお、本形態では、信号混合回路60と画像処理回路61とによって、検出用電極53で検出される検出電流値と偏向装置59によるFIBの偏向位置とに基づいて偏向位置に対応する検出電流値を画像化する画像生成装置が構成されている。
【0071】
表示装置62には、画像処理回路61からの出力信号に基づいて、FIBの走査範囲内での各偏向位置に対応する検出電流値が画像化されて表示される。具体的には、図12に示すように、FIBの各偏向位置に対応する検出電流値の大きさが表示装置62に濃淡によって表示される。すなわち、FIBの各偏向位置に対応する検出電流値の大きさが明るさに変換されて表示装置62に表示される。より具体的には、図12に示すように、FIBの走査範囲内に検出用電極53がある場合、FIBの偏向位置が芯線53aと一致する箇所では検出電流値が大きくなるため、表示装置62には色の濃い芯線対応部153aが表示される。また、FIBの偏向位置が被覆53bと一致する箇所に対応する薄い被覆対応部153bは、芯線対応部153aより淡い色となり、FIBの偏向位置が検出用電極53から外れている箇所に対応する部分の画像は、被覆対応部153bよりもさらに淡い色となる。
【0072】
なお、表示装置62の画面上には、図12に示すように、出射孔78aに対応する円形の出射孔対応線178aも現れる。また、FIBの走査範囲内に検出用電極53および出射孔78aがない場合には、表示装置62の画面全体が淡い色となる。
【0073】
本形態では、上述のように、電流増幅回路58は、検出用電極53が固定された基板54に実装されている。すなわち、電流増幅回路58は、検出用電極53に近い位置に配置されている。検出用電極53で検出される電流は微量(たとえば、5〜10nA)であるため、このように構成することで、検出用電極53で検出され電流増幅回路58で増幅される検出電流のノイズを低減できる。また、信号混合回路60および画像処理回路61は、制御部8の内部、あるいは、個別のパーソナルコンピュータ等の内部または近傍に配置され、電流増幅回路58から離れた位置に配置されている。そのため、信号混合回路60や画像処理回路61に起因する電流増幅回路58でのノイズの発生を抑制できる。
【0074】
(集束イオンビームの進行方向と出射孔との位置合せ方法)
【0075】
本形態では、ビーム加工装置1の初期設定時に、検出手段57を用いて、FIBの照射位置を検出し、出射孔78aからFIBが適切に出射されるように、位置調整手段80によって、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行う。また、ビーム出射源13は、経時的に消耗するため、ビーム出射源13は定期的に取り替える必要があり、取替後に、ビーム出射源13から出射されるFIBの照射位置がずれる場合もある。そのため、ビーム出射源13の取替後には、検出手段57を用いて、FIBの照射位置を検出し、位置調整手段80によって、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行う。
【0076】
具体的には、第2底面部37を取り外した状態で、検出用電極53を出射孔78aへ挿入し、基板54の上面をビーム出射部78の底面78dに当接させて、基板54をビーム出射部78に固定する。その後、偏向装置59によって、FIBを所定範囲内で走査させ、表示装置62に、FIBの各偏向位置に対応する検出電流値を表示させる。そして、表示装置62の表示を確認しながら、FIBの走査範囲内に検出用電極53が現れるまで、ネジ孔81aへの調整ネジ82のネジ込み量を変えて、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行う。
【0077】
たとえば、X方向偏向電極64およびY方向偏向電極65に電圧を印加しない状態(すなわち、X方向偏向電極64およびY方向偏向電極65によるFIBのX方向およびY方向の偏向量が0のとき)のFIBの進行方向が、表示装置62の画面上の中心位置と一致する場合には、図12に示すように、表示装置62の画面上の中心位置と、芯線対応部153aの中心位置とが一致するように、表示装置62の表示を確認しながら、ネジ孔81aへの調整ネジ82のネジ込み量を変えて、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行う。
【0078】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のビーム加工装置1は、局所真空チャンバー27の外部に微小な隙間Gを介して配置されるとともに、その大半部分が大気圧中に配置されるワーク2をFIBによって加工している。そのため、局所真空チャンバー27の外部の大気圧中に配置されるワーク2を移動手段7で移動させながら、FIBを用いてワーク2に対して広範囲の加工を行うことできる。すなわち、ワーク2が大きい場合であっても、ワーク2の全体(あるいは、ワーク2に加えて移動手段7等)を別途、真空チャンバーで覆う必要がないため、ワーク2を移動手段7で移動させながら、FIBを用いてワーク2に対する広範囲の加工を行うことができる。
【0079】
また、ビーム加工装置1は、FIBの照射位置を検出するための検出手段57を備えている。そのため、ワーク2が局所真空チャンバー27の外部に配置される場合であっても、検出手段57での検出結果に基づいて、FIBを出射孔78aから確実に出射してワーク2に照射することが可能になる。また、本形態のビーム加工装置1は、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うための位置調整手段80とを備えている。そのため、ワーク2が局所真空チャンバー27の外部に配置される場合であっても、出射孔78aの位置を調整して、出射孔78aから出射されるFIBを確実にワーク2に照射することができる。すなわち、ワーク2の加工部位でFIBを適切に集束させることが可能となり、その結果、ワーク2の適切な加工が可能になる。
【0080】
本形態では、検出手段57が、出射孔78aに配置される検出用電極53と、第1経路34に配置され、ビーム出射源13から出射されたイオンビームを偏向させる偏向装置59と、検出用電極53で検出される検出電流値と偏向装置59によるFIBの偏向位置とに基づいて各偏向位置に対応する検出電流値を画像化する信号混合回路60および画像処理回路61とを備えている。そのため、画像化された検出電流値を目視で確認することで、FIBの照射位置を検出でき、FIBの照射位置の検出が容易になる。また、画像化された検出電流値を目視で確認しながら、位置調整手段80を用いてFIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うことができ、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せが容易になる。
【0081】
本形態では、位置調整手段80は、径方向に、ビーム出射部78を移動させる移動機構としてのネジ孔81aと調整ネジ82と、ビーム出射部78を固定する固定機構としての固定部材81と固定ネジ83とを備えている。そのため、FIBが出射される出射孔78aを直接移動させて、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うことができ、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せが容易になる。
【0082】
本形態では、局所真空チャンバー27に、出射孔78aの外周側に配置される吸気口45が形成されるとともに、第3ポンプ49によって、吸気口45から局所真空チャンバー27の内部に向かって吸気を行っている。そのため、局所真空チャンバー27の外部(具体的には、局所空間50)にワーク2の加工部位が配置される場合であっても、局所空間50の圧力を適切に下げることができる。その結果、ワーク2に対してFIBを適切に照射することができる。
【0083】
本形態では、ビーム加工装置1は、FIBを出射するビーム出射源13および真空チャンバー3等と、レーザビームを出射するレーザ出射手段4とを備え、FIBとレーザビームとを用いてワーク2の加工を行っている。そのため、ビーム加工装置1では、比較的精度が低い粗加工をレーザビームで行い、精度の必要な微細加工をFIBで行うことができる。したがって、たとえば、ワーク2に対して、数十μmレベルから数百nmレベルまでの加工を行う必要がある場合であっても、ワーク2に対する微細な加工を短時間で行うことができる。また、1つのビーム加工装置1で、粗加工から微細な仕上加工までの一貫加工を行うことができる。特に、本形態のレーサ出射手段4は、3種類のレーザビームを出射するように構成されているため、加工精度や加工量に合わせた効率の良いかつ適切なレーザ加工を行うことができる。
【0084】
本形態では、ワーク2へ向かうFIBが通過する第1空間40が形成された局所真空チャンバー27が、真空チャンバー3の下端に取り付けられ、FIBによるワーク2の加工時には、微小な隙間Gを介して対向配置されるビーム出射部78の底面78dとワーク2との間に形成される局所空間50は真空状態とされている。そのため、FIBの散乱が抑制され、FIBによるワーク2の適切な加工が可能になる。また、局所真空チャンバー27は、真空チャンバー3とワーク2との間に配置されているため、レーザ出射手段4から出射されるレーザビームを用いたレーザ加工は大気中で行われている。そのため、レーザ加工の際に、ガス噴射装置(図示省略)からアシストガスを容易かつ適切に噴射することが可能になる。したがって、本形態では、アシストガスを用いた適切なレーザ加工を行うことができる。
【0085】
本形態では、ビーム加工装置1は、ワーク2が固定される固定手段29を、イオンビーム加工領域とレーザ加工領域との間で移動させる移動手段7を備えている。そのため、イオンビーム加工とレーザ加工との間で、ワーク2の着脱を行う必要がなくなる。したがって、レーザビームとFIBとを用いてワーク2を加工する場合であっても、ワーク2の着脱誤差がなくなり、ワーク2の加工精度を高めることができる。また、本形態では、移動手段7によって、ワーク2が固定される固定手段29を測定領域まで移動させることができるため、ワーク2の着脱を行わずに、ワーク2の加工状態の測定ができる。そのため、ワーク2の加工精度をさらに高めることができる。
【0086】
なお、本形態では、測定手段6でのワーク2の加工状態の測定結果に基づいて、その後のワーク2の加工に、3種類のレーザビームおよびFIBのいずれを用いるかを選択し、選択されたレーザビームまたはFIBによって、ワーク2の加工を行うことが可能である。そのため、ワーク2の加工状態に合わせたより適切なレーザビームあるいはFIBを選択して、ワーク2の加工を継続できる。その結果、ワーク2を適切に加工できる。
【0087】
(他の実施の形態)
上述した形態では、局所真空チャンバー27は、ビーム出射部78の位置調整を行って、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うための位置調整手段80を備えている。この他にもたとえば、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うためのビーム出射源13の位置調整手段を備えている場合、あるいは、検出手段57を用いてFIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行うことができる場合等には、局所真空チャンバー27は、位置調整手段80を備えていなくても良い。この場合には、局所真空チャンバー27を図13のように構成すれば良い。以下、位置調整手段80を備えていない局所真空チャンバー27の構成を図13に基づいて説明する。なお、図13では、上述した形態と共通する構成には、共通の符号を付している。
【0088】
図13に示す局所真空チャンバー27は、上述した本体部35および第2底面部37と、内筒部35aの下端に固定された第1底面部36と、FIBが出射される出射孔38aが形成されたビーム出射部38とを備えている。第1底面部36は、径方向外側から内側に向かうにしたがって下方向へ緩やかに傾斜する側壁部36aと底部36bとを備え、底部36bの中心部には、ビーム出射部38が固定される固定孔36cが形成されている。また、ビーム出射部38は、上下方向に貫通する出射孔38aと、シール部材43を固定するためのシール固定部38bとを備えている。シール固定部38bの下面は、径方向外側から内側に向かうにしたがって下方向へ傾斜する傾斜面38cとなっている。ビーム出射部38は、その上端側が固定孔36cによって径方向に位置決めされた状態で、固定孔36cに固定されている。また、ビーム出射部38の底面38dと、第1平坦面37cとは同一平面上に配置されている。
【0089】
なお、ビーム加工装置1は、必ずしも、FIBの進行方向と出射孔78aとの位置合せを行う位置調整手段を備えていなくても良いし、また、FIBの照射方向を検出する検出手段57を備えていなくても良い。
【0090】
上述した形態では、真空生成手段5は、いわゆる差動排気式の真空装置である。この他にもたとえば、局所空間50を適切に減圧できるのであれば、真空生成手段5は、差動排気式の真空装置でなくても良い。すなわち、局所空間50を適切に減圧できるのであれば、真空生成手段5は、出射孔78aのみから吸気を行っても良い。また、上述した形態では、局所真空チャンバー27は、第1空間40および第2空間41を有する二重構造となっているが、局所真空チャンバー27を三重構造以上の多重構造として、真空生成手段5を差動排気式の真空装置としても良い。
【0091】
上述した形態では、ビーム加工装置1は、ワーク2の加工を行うためのビームとしてFIBを用いているが、ビームは電子ビームであっても良い。この場合であっても、局所真空チャンバー27の外部に配置されるワーク2を移動手段7で移動させながら、電子ビームを用いてワーク2に対して広範囲の加工を行うことできる。また、ワーク2が局所真空チャンバー27の外部に配置される場合であっても、出射孔78aの位置を調整して、出射孔78aから出射される電子ビームをワーク2に確実に照射することができる。
【0092】
また、上述した形態では、真空チャンバー3内に配置された所定のイオン光学系等によってFIBが生成されているが、ビーム出射源13から出射されるイオンビームがそのままワーク2に向けて出射されても良い。なお、FIBの代わりにレーザビームを用いても良い。この場合には、局所空間50を真空状態にできるため、レーザ加工時におけるワーク2の酸化を抑制することが可能となる。なお、FIBの代わりにレーザビームを用いる場合には、上述した検出手段57に代えて、被照射部材としてフォトディテクタやCCDを有する検出手段を用いれば良い。
【0093】
上述した形態では、ビーム加工装置1は、レーザ出射手段4を備えているが、ビーム加工装置1は、レーザ出射手段4を備えていなくても良い。この場合であっても、局所真空チャンバー27の外部に配置されるワーク2を移動手段7で移動させながら、FIBを用いてワーク2に対して広範囲の加工を行うことできる。また、ワーク2が局所真空チャンバー27の外部に配置される場合であっても、出射孔78aから出射されるFIBを確実にワーク2に照射することができる。
【0094】
上述した形態では、検出部12は、基板54に突出するように固定された検出用電極53を備えているが、基板54上に検出用電極を実装しても良い。また、ワーク2そのものを検出用電極として用いても良い。すなわち、被照射部材としての検出用電極は、出射孔78aから出射されるFIBの出射方向における出射孔78aの外側に配置されても良い。
【0095】
上述した形態では、レーザ出射手段4は、3種類のレーザビームを出射しているが、レーザ出射手段4は、2種類のレーザビームを出射しても良いし、1種類のレーザビームを出射しても良い。また、4種類以上のレーザビームを出射しても良い。
【0096】
上述した形態では、本発明の実施の形態として、ビーム加工装置1の構成を説明しているが、ビーム加工装置1と同様の構成を、観察対象物の観察を行うビーム観察装置に適用することができる。すなわち、ビーム出射源13、真空チャンバー3および真空生成手段5を用いて、局所真空チャンバー27の外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される観察対象物の観察を行うことが可能である。なお、ビーム加工装置1と同様の構成をビーム観察装置に適用する場合には、局所空間50に所定の検出器が配置される。
【0097】
このように、ビーム加工装置1と同様の構成が適用されるビーム観察装置では、ビーム加工装置1と同様の効果を得ることができる。すなわち、局所真空チャンバー27の外部に配置される移動手段7を用いて観察対象物を移動させる簡易な構成で、観察対象物を広範囲で観察することができるといった効果や、検出手段57や位置調整手段80によって、ワーク2が局所真空チャンバー27の外部に配置される場合であっても、出射孔78aの位置を調整して、出射孔78aから出射されるFIBを確実に観察対象物に照射できるといった効果を得ることができる。また、測定手段6を設けなくても、レーザ出射手段4で加工されたワーク2を観察対象物として、ワーク2の加工状態をビーム観察装置で観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態にかかるビーム加工装置の概略構成を模式的に示す斜視図。
【図2】図1に示すビーム加工装置の主要部の構成を模式的に示す図。
【図3】図2に示す局所真空チャンバーの平面図。
【図4】図3のE−E断面を示す断面図。
【図5】図3のF−F断面を示す断面図。
【図6】図3のH−H断面を示す断面図。
【図7】図4のJ部を拡大して示す拡大断面図。
【図8】図2に示す局所真空チャンバーと第1真空ポンプ等との接続関係を説明するための模式図。
【図9】図2に示す真空生成手段において、各種のパラメータを変化させたときの第1空間および第2空間の真空度の実測データを示す表。
【図10】図8に示す集束イオンビーム(FIB)の照射位置を検出するための検出手段の概略構成を示す図。
【図11】図8に示す集束イオンビーム(FIB)の照射位置を検出する際の検出部の状態を示す図。
【図12】図10に示す表示装置に表示される画像の一例を模式的に示す図。
【図13】本発明の他の形態にかかるビーム出射部の周辺構成を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0099】
1 ビーム加工装置
2 ワーク(加工対象物)
3 真空チャンバー
4 レーザ出射手段
6 測定手段
7 移動手段
13 ビーム出射源
27 局所真空チャンバー
29 固定手段
34 第1経路
38 ビーム出射部
38a 出射孔
40 第1空間(第2経路)
45 吸気口
49 第3ポンプ(吸気手段)
53 検出用電極(被照射部材)
57 検出手段
59 偏向装置
60 信号混合回路(画像生成装置の一部)
61 画像処理回路(画像生成装置の一部)
78 ビーム出射部
78a 出射孔
80 位置調整手段
81 固定部材(固定機構)
81a ネジ孔(移動機構)
82 調整ネジ(移動機構)
83 固定ネジ(固定機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記ビーム出射源から出射された上記ビームが通過する第1経路を有し上記ビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、上記第1経路に連通し上記第1経路を通過した上記ビームが通過する第2経路および上記加工対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、上記ビームの照射位置を検出するために、上記出射孔から出射される上記ビームの出射方向における上記出射孔の外側または上記出射孔に配置される被照射部材を有する検出手段とを備え、
上記真空チャンバーおよび上記局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される上記加工対象物の加工を上記ビームを用いて行うことを特徴とするビーム加工装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記被照射部材としての検出用電極と、前記第1経路および/または前記第2経路に配置される前記ビームの偏向装置と、上記検出用電極で検出される検出電流値と上記偏向装置による前記ビームの偏向位置とに基づいて上記偏向位置に対応する上記検出電流値を画像化する画像生成装置とを備えることを特徴とする請求項1記載のビーム加工装置。
【請求項3】
加工対象物の加工を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記ビーム出射源から出射された上記ビームが通過する第1経路を有し上記ビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、上記第1経路に連通し上記第1経路を通過した上記ビームが通過する第2経路および上記加工対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、上記ビームの進行方向と上記出射孔との位置合せを行うための位置調整手段とを備え、
上記真空チャンバーおよび上記局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される上記加工対象物の加工を上記ビームを用いて行うことを特徴とするビーム加工装置。
【請求項4】
前記局所真空チャンバーは、前記出射孔が形成されるビーム出射部を備え、前記位置調整手段は、前記ビームの出射方向に直交する方向に、上記ビーム出射部を移動させる移動機構と、上記ビーム出射部を固定する固定機構とを備えることを特徴とする請求項3記載のビーム加工装置。
【請求項5】
前記局所真空チャンバーには、前記出射孔の外周側に配置される吸気口が形成されるとともに、上記吸気口から前記局所真空チャンバーの内部に向かって吸気を行う吸気手段を備えることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のビーム加工装置。
【請求項6】
前記出射孔から出射される前記ビームは集束イオンビームであり、前記加工対象物の加工を行うためのレーザビームを出射するレーザ出射手段を備えるとともに、上記集束イオンビームと上記レーザビームとを用いて前記加工対象物の加工を行うことを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のビーム加工装置。
【請求項7】
前記加工対象物が固定される固定手段を備えるとともに、前記集束イオンビームで前記加工対象物の加工が行われるイオンビーム加工領域と、前記レーザビームで前記加工対象物の加工が行われるレーザ加工領域との間で上記固定手段を移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項6記載のビーム加工装置。
【請求項8】
前記加工対象物の加工状態を測定する測定手段を備え、前記移動手段は、上記測定手段で前記加工対象物の加工状態の測定が行われる測定領域へ前記固定手段を移動可能に構成されていることを特徴とする請求項7記載のビーム加工装置。
【請求項9】
観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記ビーム出射源から出射された上記ビームが通過する第1経路を有し上記ビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、上記第1経路に連通し上記第1経路を通過した上記ビームが通過する第2経路および上記観察対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、上記ビームの照射位置を検出するために、上記出射孔から出射される上記ビームの出射方向における上記出射孔の外側または上記出射孔に配置される被照射部材を有する検出手段とを備え、
上記真空チャンバーおよび上記局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される上記観察対象物の観察を上記ビームを用いて行うことを特徴とするビーム観察装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記被照射部材としての検出用電極と、前記第1経路および/または前記第2経路に配置される前記ビームの偏向装置と、上記検出用電極で検出される検出電流値と上記偏向装置による前記ビームの偏向位置とに基づいて上記偏向位置に対応する上記検出電流値を画像化する画像生成装置とを備えることを特徴とする請求項9のビーム観察装置。
【請求項11】
観察対象物の観察を行うためのビームを出射するビーム出射源と、上記ビーム出射源から出射された上記ビームが通過する第1経路を有し上記ビーム出射源が取り付けられる真空チャンバーと、上記第1経路に連通し上記第1経路を通過した上記ビームが通過する第2経路および上記観察対象物に向けてビームを出射するための出射孔を有する局所真空チャンバーと、上記ビームの進行方向と上記出射孔との位置合せを行うための位置調整手段とを備え、
上記真空チャンバーおよび上記局所真空チャンバーの外部の大気圧中に少なくとも一部が配置される上記観察対象物の観察を上記ビームを用いて行うことを特徴とするビーム観察装置。
【請求項12】
前記局所真空チャンバーは、前記出射孔が形成されるビーム出射部を備え、前記位置調整手段は、前記ビームの出射方向に直交する方向に、上記ビーム出射部を移動させる移動機構と、上記ビーム出射部を固定する固定機構とを備えることを特徴とする請求項11記載のビーム観察装置。
【請求項13】
前記局所真空チャンバーには、前記出射孔の外周側に配置される吸気口が形成されるとともに、上記吸気口から前記局所真空チャンバーの内部に向かって吸気を行う吸気手段を備えることを特徴とする請求項9から12いずれかに記載のビーム観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−68275(P2008−68275A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247498(P2006−247498)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392015365)株式会社平出精密 (10)
【出願人】(596127299)野村ユニソン株式会社 (10)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】