説明

ビール産業における酸洗浄のための方法

【課題】ビール産業における酸洗浄方法に関し、より詳細には、ビールおよび他の関連発酵飲料の製造に用いられる様々な構成要素および容器の酸洗浄のための改善である。
【解決手段】少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物を用いて洗浄を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール産業における酸洗浄のための方法に関し、より詳細にビールおよび他の関連発酵飲料の調製に用いられる様々な構成要素および容器の酸洗浄のための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最初に、ビール調製のための方法は通常連続する4つの工程にて行われることを思い起こさなければならない。
1.醸造:この工程は、穀類(オオムギ、麦芽(発芽オオムギ)、コーン、コメ)を、熱水(40℃から100℃の温度の段階での)および芳香植物(ホップおよび場合により多種多様なスパイスなど)と混合することよりなる。この工程により、糖および蛋白質を穀類から抽出して麦汁(または果醪)とよばれるものを形成することができる。
2.濾過:こうして得られた果醪を濾過して、一方はいわゆる冷精製麦汁と呼ばれるものともう一方はビールかすと呼ばれる穀類の不溶性固形残渣とを得る。
3.発酵:冷精製麦汁を、FVTと呼ばれる発酵タンク(または発酵槽、通常は円筒円錐形の反応器)に導入する。酵母菌を加え、全体を6から10℃の間の温度で3から7日間漬け込む。この工程により、グルコースおよび糖がエタノールと二酸化炭素に変換される。
4.保護:発酵が終わると、混合物に3℃にて低温衝撃を与え、酵母菌および蛋白質を凝固させる。この工程は、発酵槽中または別のタンク中において行われる。こうして得られたビールは保護反応器に入れたまま熟成させ、次いで濾過される。
【0003】
これら4つの調製工程の後、ビールは樽、瓶またはビール缶にさえ入れて整えられる。
【0004】
発酵工程(工程3)の間、酵母菌リングがしばしば気相/液相の境界に形成される。酵母菌リングは主に、不溶性有機物、酵母菌残渣、細胞壁残渣、不溶性糖を含む。
【0005】
そのうえ、通常ビール石が発酵槽の底および壁に形成される。ビール石は主にシュウ酸カルシウムおよび様々な有機物からなる。
【0006】
その結果、発酵槽は2種のまったく異なる汚れ、有機性汚染(主に酵母菌リング)と無機性汚染(主にビール石)により汚染される。
【0007】
しかしながら、ビールまたは他の関連発酵飲料の調製における主要な側面の1つは、樽、容器、発酵槽、液抜き管、ならびに前述したビールおよび他の関連発酵飲料の調製に用いられる液体を輸送しまたは保護する他の装置を用いなければならず、これらは完全に清潔で、特に有機性汚染および無機性汚染のいかなる痕跡もないものである。実際、こうした汚染は、調製された製品に細菌または他のなんらかの有害な要素の存在および成長をもたらす恐れがあり、製品が消費に適さなくなる恐れさえある。
【0008】
有機性汚染および無機性汚染を回避するために、各々の反応器(より一般的に容器、入れ物、液抜き管および同種物)は、ビール調製の具体的な工程に依存して、塩基性媒体または酸性媒体中で洗浄される。ビール調製に用いられる醸造設備の様々な構成要素の洗浄は、通常、以下の工程に従って行われる。
A)醸造反応器:水酸化ナトリウムを用いる塩基性媒体洗浄
B)有機性汚染および無機性汚染を含む発酵容器:3工程での混合洗浄
1.清水を用いる(汚染の10%が除去される)か、速い「ショット」の形態における希釈ソーダの存在下での(汚染の80から90%が除去される)の、「ワンウェイ」洗浄と呼ばれる予備洗浄(その場所での直接除去)。これにより、よりよい汚染の除去が可能になる。しかしながら、水酸化ナトリウムを大量に用いることはできない。なぜならば、発酵タンクは、減圧によるタンクの内破に関与し得る、水酸化ナトリウムと反応する可能性がある二酸化炭素を含んでいるからである。
2.リン酸(通常、リン酸56重量%の溶液の1.5容積%にて)を用いる清浄化。および
3.低含量の硫酸の殺生物剤との混合物を一緒に用いる滅菌。
現在のところ、洗浄工程2および3は、2種の異なる酸を用いる連続する仕方で行われ、それぞれ1つは1種類の汚染の除去に効果的である。
−リン酸は酵母菌リングを除去するのに用いられる。
−硫酸はビール石を除去するのに用いられる。リン酸はこの種の汚染(シュウ酸カルシウム)に関して効果がない。しかしながら、硫酸の腐食能力のため、その使用は不利な点なしではない。しかし、この腐食作用は、低温における作業の間は、緩和され得る。
C)保護:この現実の工程では、汚染は発酵槽よりも少なく、特に酵母菌リングは殆どまたは全くない。したがって、通常、水により簡単に清浄化し、続いて上記のように硫酸+殺生物剤混合物により清浄化する。
【0009】
加えて、樽は、リン酸および熱清浄化温度では上記のように腐食性である硫酸による手段により熱清浄化(代表的には約80℃)される。
【0010】
その上、各清浄化工程の間に、清水によるすすぎが行われることを理解されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の最初の目的は、従来用いられていたものと比較してより簡単でより速い、ビールの製造および貯蔵に用いられる設備の清浄化方法にある。
【0012】
本発明の別の目的は、ビール石と酵母菌リングを効果的に同時に清浄化することを可能にする簡単で効果的な方法にある。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、あらゆる種類の汚染、特にビール石および酵母菌リングの除去を可能にする単一の配合物による、ビールおよび他の関連発酵飲料の調製および貯蔵のときに用いられる設備の清浄化方法にある。
【0014】
他の利点は、以下に記載される本発明の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
アルカンスルホン酸を基礎とする配合物を用いることによりビール製造に用いられる設備の完全で効果的な清浄化を行うことが可能であるということが、まったく驚くべき方法にて、見いだされた。
【0016】
アルカンスルホン酸を基礎とする配合物が、酵母菌リング(通常リン酸を用いて除去される。)の除去とビール石(通常硫酸を用いて除去される。)の除去を同時に可能にすることが、実際証明された。
【0017】
したがって、アルカンスルホン酸を基礎とする配合物の使用により、リン酸を基礎とする配合物および硫酸を基礎とする配合物などの複数の清浄化配合物の使用を回避することが可能になる。アルカンスルホン酸をベースとする配合物の使用により、複数の連続する洗浄操作および複数の中間すすぎも回避することが可能になる。
【0018】
したがって、利点は、主に、時間、コスト、生産性、エネルギーの節約であり、また製造場所に存在する清浄化用化学物質の数の低減である。
【0019】
加えて、通常用いられるリン酸はリン酸塩の形で放出されるが、この放出は環境に悪影響を及ぼす恐れがあり、こうしたリン酸塩の放出を禁止する目的で環境基準が益々厳しくなっている。
【0020】
したがって、本発明の最初の目的は、以下の工程を含むビールまたは他の関連発酵飲料の調製に用いられる設備の清浄化方法にあり、この方法は、
a)場合により設備の予備洗浄工程、
b)少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物の有効量の前記設備中における循環による前記設備の洗浄工程、および
c)すすぎ溶液の循環による前記設備のすすぎ工程
を含む。
【0021】
したがって、本発明の方法により、一方で清浄化工程の数を減少させ、他方で酸配合物数を2種(リン酸および硫酸)からたった1種の汚染清浄化配合物に減少させることが可能になる。
【0022】
さらに、本発明の方法において用いられる配合物は、硫酸ほど腐食性がなく、樽の熱清浄化に用い得る。
【0023】
より詳細に、本発明の方法は、ビールおよび他の関連発酵飲料の調製および貯蔵に用いられる設備の清浄化に関する。
【0024】
当説明および請求項において、「設備」は醸造に通常用いられる様々な構成要素、特にタンク、容器、樽、発酵槽、液抜き管、弁、瓶、ビール缶など、すなわちビールおよびビール調製に必要な他の液体または固体と接触することになる可能性がある全ての構成要素を意味する。
【0025】
設備の様々な部品の材料は、通常、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、被覆され(例えばエポキシ樹脂、プラスチック材料、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)にて)またはされていない鋼、ガラスおよび同種物中から選択される。
【0026】
好ましい実施形態によれば、醸造設備に用いられる材料は、304Lまたは316Lグレードのステンレス鋼、アルミニウムおよびエポキシ樹脂被覆鋼から選択される。
【0027】
本発明の方法は、ビールおよび他の関連発酵飲料の調製に用いられる設備全体をまたはその1部もしくはそれ以上の部分のみに適用されることが理解されなければならない。当説明および請求項において、「設備」という用語は、設備全体をまたはその1部もしくはそれ以上の部分のみを示す。
【0028】
本発明による方法は、不純物の大部分を、機械的方法により除去することを目的とする予備洗浄の最初の工程を場合により含む。この予備洗浄は、水の、単独によるまたはアルカリ溶液の(好ましくは例えばナトリウムもしくは水酸化カリウムの希釈水溶液の)「ショット」との組み合わせによる循環により行われる。「ショット」は、設備の清浄化されるべき部分に、通常短時間に反応作用するようにわずかに濃縮されているアルカリ溶液を送ることを意味する。「短時間」は、数秒から数分、数時間までもの範囲の期間を意味する。
【0029】
場合による予備洗浄工程の後、少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物を循環させて設備の洗浄が行われる。
【0030】
当説明および請求項において、アルカンスルホン酸は、好ましくは1から4個の炭素原子の、飽和の直鎖または分岐炭化水素鎖を有するアルカンスルホン酸から選択される酸として理解されるべきである。本発明の方法で用い得るアルカンスルホン酸は、特に、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、iso−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、iso−ブタンスルホン酸、sec−ブタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸およびこれらのいずれかの2種または幾つかの種のあらゆる割合における混合物から選択される。
【0031】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法において用いられるアルカンスルホン酸は、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸であり、最も好ましい実施形態において、用いられる酸はメタンスルホン酸である。
【0032】
したがって、本発明の方法において用いるための、少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む清浄化配合物は、1から4個の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素鎖を有するアルカンスルホン酸を1種以上含み、好ましくは少なくともメタンスルホン酸(AMS)を含む。
【0033】
通常、この配合物は、アルカンスルホン酸の0.1から100重量%、より一般的にはアルカンスルホン酸の0.5から90重量%、特にアルカンスルホン酸の0.5から20重量%、より特にアルカンスルホン酸の0.5から5重量%を含む。
【0034】
この配合物は、通常水性配合物であり、これは濃縮混合物の形で調製することができ、末端利用者により希釈される。あるいは、この配合物はすぐに使える配合物、すなわち希釈する必要がないものであってもよい。例えば、ScaIeva(商標)の商品名でArkema companyから販売されている、すぐに使えるまたは水で希釈する70重量%メタンスルホン酸水溶液を、上記の割合で用いることができる。
【0035】
アルカンスルホン酸に加えて、清浄化配合物は、当業者に周知のように、場合により、1種またはそれ以上の、レオロジー添加剤、溶媒、殺生物剤ならびに他の質感剤[この質感剤は溶媒および共溶媒、有機酸または無機酸(例えば、硫酸、リン酸、硝酸、スルファミン酸、クエン酸)、増粘剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤および同種物から選択される。]を含み得る。
【0036】
上に記載されるたもののようなアルカンスルホン酸は、ビールおよび他の関連発酵飲料の調製に用いられる設備に存在する、またはそこに形成された汚染を清浄化するのに有効であることが発見された。
【0037】
したがって、アルカンスルホン酸の使用により、炭水化物、グリース、蛋白質、無機鉱物[炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および、様々な有機化合物および/または金属化合物、半金属、アルカリ化合物またはアルカリ土類化合物を伴っていれるか否かに拘わらず、他の種類のスケール(シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物および/または硫化物など)]ならびにビールおよび他の関連発酵飲料の調製中に存在または発生する他の残渣などの汚染を除去することが可能になる。
【0038】
アルカンスルホン酸は、上に記載されているとおり、ビール石および酵母菌リングとして知られている、両方の種類の残渣を除去するのに特に効果的である。
【0039】
設備の全てまたは部分の洗浄(または清浄化)は、上に記載されているとおり、少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物の有効量の循環により行われる。
【0040】
「有効量」は、正しく除去されないと細菌の発生を導く可能性がある汚染を全て除去することを可能にする量を意味する。本発明の方法は、設備にて調製され、樽、瓶、ビール缶などで貯蔵されるビールおよび他の関連発酵飲料の、全ての種類の汚染、したがって、調製、保存、風味、質感およびヒトにとって無毒であることに対して有害となり得る微生物を除去することができる。
【0041】
この量は、清浄化されるべき設備の容積、除去しようとする汚染の性質および量、用いる配合物の温度および圧などにしたがって、大きな割合で変化し得る。
【0042】
一般に、清浄化酸配合物の有効量が設備中の循環中に置かれる。十分な時間設定されたこの循環により、汚染の完璧な除去が可能になる。
【0043】
設備の目視検査、または当業者に知られている伝統的な技法に従った設備内の細菌活性の測定により、用いるべき配合物の有効量および汚染の完璧な除去に必要な上述の配合物の循環期間を決めることが可能になる。
【0044】
こうして、配合物の量および循環期間を設定し、一方で、同時に、配合物の最小量(主として経済的および環境的理由のため)および循環期間の可能な最小期間(同じく主として経済的理由のため)を観察しながら、汚染の完璧な除去を可能にする。
【0045】
少なくとも1種の、先に述べたとおりのアルカンスルホン酸を含む上述の配合物による酸清浄化は、発酵槽または貯蔵容器においては通常O℃から100℃、より一般的には5℃から40℃、代表的には5℃から20℃の範囲の、ビールまたは他の関連発酵飲料に用いられる準備容器(樽、瓶またはビール缶)においては60℃から80℃の範囲の任意の温度で行うことができる。
【0046】
少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物を用いる酸洗浄工程の後、設備は、有利に、当業者により通常行われるように、すすぎ溶液(例えば水)を循環させることにより、すすがれる。
【0047】
本発明の方法のおかげで、ビールまたは他の関連発酵飲料の調製に用いられる設備の洗浄は、今日公知の技法とは対照的に、酸洗浄の1段階のみにより行われる。酸洗浄のこの単一段階により、上述のビールおよび他の関連発酵飲料の製造中に形成される、特にビール石だけでなく酵母菌リングも除去することが可能になる。
【0048】
別の目的にしたがって、本発明は、有機汚染ならびに無機汚染[例えば、炭水化物、グリース、蛋白質、無機鉱物(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および、様々な有機化合物および/または金属化合物、半金属、アルカリ化合物またはアルカリ土類化合物を伴っていれるか否かに拘わらず、他の種類のスケール(シュウ酸塩、硫酸塩、水酸化物および/または硫化物など))ならびにビールおよび他の関連発酵飲料の調製中に存在または発生する他の残渣]を除去するための、少なくとも1種のアルカンスルホン酸(特に少なくともメタンスルホン酸)を含む配合物の使用に関する。
【0049】
より詳細には、本発明は、ビールまたは他の関連発酵飲料の調製および/または貯蔵/保存中に形成されるビール石および酵母菌リングを除去するための、少なくとも1種のアルカンスルホン酸(特に少なくとも酸メタンスルホン酸)を含む配合物の使用に関する。
【0050】
「他の関連発酵飲料」により、飲料のいずれもの種類(例えば、ワイン、サイダー、ウイスキー、日本酒)を、より一般的に、その製造方法が酵母菌または二酸化炭素を放出すると思われる他の好気性発酵媒体が関与するアルコール性飲料を意味する。
【0051】
以下の実施例により本発明をさらに例示するが、これらはどのような制限的意味も表さず、したがって付属の請求項において定義されている保護範囲を制限すると理解されるべきでない。
【実施例】
【0052】
実施例1:産業用麦汁による汚染の清浄化
a)発酵の間の標準的な汚染作成工程:
胴が74cm×18cmのおよびコーン長さが17cmの、ステンレス鋼(容積316L)製円柱円錐タンクに、周囲温度(15℃から25℃の間)にて、醸造用精製冷麦汁5Lを導入する。
【0053】
次いで、ビール酵母(サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae))を、産業条件を再現するよう、生きた酵母の必要量を考慮することにより(麦中15Lに対し液体酵母50mL)導入する。
【0054】
周囲温度(15℃から25℃の間)で6日間発酵させる。6日後、タンクを空にする。
【0055】
産業での実施と一致して、円筒円錐形タンクの頂部で、液体/空気界面に酵母菌リング(有機汚染を伴う酵母菌)が観測される。
【0056】
汚染形成の再現性を、複数(約30)の発酵対照群で評価したことで、実施の代表的な汚染レベルと満足な再現性を保証することが可能になる。
【0057】
b)予備洗浄工程
水酸化ナトリウムの1.5%アルカリ溶液の3回5秒間の循環、各循環の間の5分間の休止により、予備洗浄を行う。
【0058】
c)酸洗浄工程
汚染の清浄化を、安定な制御された流体力学的条件下、タンクの上部の位置に固定されたスプリンクラー・ボール(Hacke Mark、標準型M1−1DN8)を用いて、清浄化配合物を循環させて行う。より詳細には、循環は1400L/分に設定し、スプリンクラーの圧は0.2相対バール(1.2絶対バール)にて、溶液は汚染が完全に消失するまで周囲温度(℃から25℃の間)に維持される。タンク中の汚染の消失を目で点検するために、5分ごとに循環を止める。清浄化は目視で評価し、明らかにきれいなタンクを得るために必要な時間をこれにより設定する。
【0059】
各実験条件について、試験を少なくとも6回繰り返す(3種類の異なる発酵順序について2回の発酵)。
【0060】
その上、クリーニング試験の相対的比較を強調する目的で、クリーニング参照配合物を試験の順序に系統的に置き、2つのタンク間の比較を設定する。このクリーニング参照配合物は56重量リン酸の1.5容積%水溶液である。
【0061】
試験に用いる酸性配合物は以下のとおりである。
参照配合物A:56重量%リン酸(HPO)の水溶液(d=1.38、すなわち純HPO1.15重量%)。
配合物1(比較):ギ酸55%水溶液(d=1.195すなわち純ギ酸0.98重量%)。
配合物2(本発明によるもの):70重量%メタンスルホン酸の1容積%水溶液(d=1.35、すなわち純メタンスルホン酸0.94重量%)。
【0062】
以下の表1は、目視で評価した汚染の全除去に必要な時間の、参照配合物A(リン酸1.15重量%)で行ったクリーニングと比較した場合に余計に掛かった時間または短縮された時間を分で表す。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明による配合物2は、別の酸性配合物(ギ酸)と比較して40分、参照配合物(リン酸)と比較しても10分もの削減を可能にすることが観測される。
【0065】
実施例2:再構成麦汁による汚染の清浄化
「Brewferm」(コムギベースの白ビール)の名で販売されている市販のビール調製用キットを希釈して再構成麦汁を得る。
【0066】
取扱説明書に従って麦汁を再構成する。濃縮麦汁(1L)を冷水14Lで希釈して糖750gを加える。キットに含まれる凍結乾燥した酵母菌のサシェを発酵工程の直前に再構成麦汁に加える。
【0067】
産業用麦汁と対照的に、再構成麦汁では汚染の初期レベルは低いので、予備洗浄工程は必要ではない。したがって、実施例1の工程c)のように、酸洗浄を直接行う。
【0068】
表1のように、以下の表2も汚染の除去に必要な時間の、参照配合物(リン酸1.15重量%)と比較した場合に余計に掛かった時間または短縮された時間を分で表す。
【0069】
【表2】

【0070】
ここでもまた、本発明による酸性配合物(配合物2)を用いて行った場合、汚染の除去に必要な清浄化の期間が削減される。
【0071】
実施例3:ビール石タイプの汚染の清浄化
ビール石の2つの代表的な試料を醸造中の発酵タンクに集めて、以下の実験に供する。
−堆積物約0.5グラムを、空気を用いて40℃にて24時間事前に乾燥させて正確に秤量する。
−振盪せずに、周囲温度(15℃から25℃の間)で4時間、試験配合物に浸漬する。
−溶液を濾過して不溶性固体を回収する。
【0072】
この固体残渣を40℃にて24時間乾燥させて、秤量する。
【0073】
以下の表3は、用いた各クリーニング配合物について、2つの試料での溶解したビール石の平均割合を示す。
参照配合物A;56重量%リン酸(HPO)の水溶液(d=1.38、すなわち純HPO1.15重量%)。
参照配合物B:78%硫酸(HSO)(密度=1.7、すなわち1.32重量%の純度)。
配合物1(比較):ギ酸55%水溶液(d=1.195すなわち純ギ酸0.98重量%)。
配合物2(本発明によるもの):70重量%メタンスルホン酸の1容積%水溶液(d=1.35、すなわち純メタンスルホン酸0.94重量%)。
【0074】
【表3】

【0075】
メタンスルホン酸を基礎とする配合物は、酵母菌リングの除去に関してリン酸を基礎とする配合物で得られる有効性と同じような有効性を持ち、ビール石の除去という点で硫酸の有効性と同様な有効性を有することが観測される。
【0076】
したがって、本発明の方法により、現在まで推奨されてきたような2種の酸洗浄工程(リン酸および硫酸)を回避することが可能になり、少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む清浄化配合物1種だけでビール石と酵母菌リングとの両方の除去に有効であることが示される。
【0077】
実施例4:シュウ酸カルシウム溶解の有効性
シュウ酸カルシウム(6g)を、70℃で24時間、一方はメタンスルホン酸溶液100g(4g/Lおよび12g/L)に加え、もう一方はリン酸溶液100g(4g/Lおよび12g/L)に加える。
【0078】
次いで、溶液を濾過して、溶液中に存在するカルシウムイオン量の分光分析ICPにより濾液を線量について分析する。結果を以下の表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
これらの結果は、シュウ酸カルシウムを溶解するのにメタンスルホン酸がリン酸よりもはるかに効果的であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)場合により設備の予備洗浄工程、
b)少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む配合物の有効量の前記設備中における循環による前記設備の洗浄工程、および
c)すすぎ溶液の循環による前記設備のすすぎ工程
を含む、ビールまたは他の関連発酵飲料の調製に用いられる設備の清浄化方法。
【請求項2】
前記設備が、タンク、容器、樽、発酵槽、液抜き管、弁、瓶、ビール缶および同種物から選択される1つ以上の構成要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予備洗浄工程が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水性溶液により行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のアルカンスルホン酸が、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、iso−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、iso−ブタンスルホン酸、sec−ブタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸およびこれらのいずれかの2種または幾つかの種のあらゆる割合における混合物の中から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記清浄化配合物が、少なくともメタンスルホン酸を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記清浄化配合物が、アルカンスルホン酸の0.1から100重量%を、より一般的にアルカンスルホン酸の0.5から90重量%を、特にアルカンスルホン酸の0.5から20重量%をおよびより特にアルカンスルホン酸の0.5から5重量%を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記清浄化配合物が、1種またはそれ以上の、レオロジー添加剤、溶媒、殺生物剤ならびに他の質感剤[この質感剤は溶媒および共溶媒、有機酸または無機酸(例えば、硫酸、リン酸、硝酸、スルファミン酸、クエン酸)、増粘剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤および同種物から選択される。]をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のアルカンスルホン酸を含む前記配合物による前記酸洗浄が、発酵槽または貯蔵容器においては、0℃から100℃の範囲の、より一般的に5℃から40℃の範囲の、代表的に5℃から20℃の範囲の温度にて、ビールまたは他の関連発酵飲料に用いられる準備容器(樽、瓶またはビール缶)においては、60℃から80℃の範囲の温度にて行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
a)希アルカリ溶液を用いる前記設備の場合による予備洗浄工程、
b)少なくともメタンスルホン酸を含む配合物の前記設備中における循環による前記設備の洗浄工程、および
c)水の循環による前記設備のすすぎ工程、
を含む、ビールの調製に用いられる設備を清浄化するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ビールまたは他の関連発酵飲料の調製中において存在するまたは発生する、有機汚染、無機汚染および他の残渣を除去するための、少なくとも1種のアルカンスルホン酸、特に少なくともメタンスルホン酸を含む配合物の使用。
【請求項11】
ビールまたは他の関連発酵飲料の調製および/または貯蔵/保存の間に形成されるビール石および酵母リングを除去するための、請求項10に記載の使用。

【公開番号】特開2009−119445(P2009−119445A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−310231(P2007−310231)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)発行者:アルケマ フランス 刊行物名:PRESS RELEASE 発行年月日:2007年6月1日 (2)掲載年月日:2007年6月4日 掲載アドレス: http://www.arkema.com/sites/group/fr/press/pr_detail.page?p_filepath=/templatedata/Content/Press_Release/data/fr/2007/070604_arkema_presente_scaleva_une_solution_innovante_pour_le_detartrage_industriel_dans_l_agroal.xml
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】