説明

ピストン型ポンプ

【課題】 簡単な弁構造を採用し、ポンプを各種の用途に使用することができること。
【解決手段】 シリンダーと、ピストンを有する作動杆とを備えたピストン型ポンプであり、シリンダーに形成された複数個の吸引孔及び吐出孔にそれぞれ連通する弁収納部を有する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段をそれぞれ連結し、前記各弁収納部には、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体をそれぞれ内装し、ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段並びに第2の吐出弁手段の各磁性弁体は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となる反面、第1吐出弁手段並びに第2吸引弁手段の各磁性弁体は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン型ポンプに関し、特に作動杆が往復動するピストン型ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「連続フローのためのスリット付き球バルブ」の発明が記載されている。この発明の球バルブは、第1バルブ手段と第2バルブ手段とを直列に連結してパイプ状のバルブ本体を形成し、該バルブ本体のチャンバ内に所定間隔を有して第1の球体可動弁体と、第2の球体可動弁体とをそれぞれ設け、これらの球体弁の弁座に対する支持位置が、バルブ本体の外周壁を包むように配設された電磁石によって開弁する。
【0003】
また、上記構成の発明は、可動弁体は球体であるものの、球体自体はマグネットではなく、バルブ本体の周囲の電磁石による磁界作用によって開放位置が支持されるものであるから、巻線、巻線取付け部等が必要となり、バルブ本体等の構成が複雑になるという問題点がある。
【0004】
一方、特許文献2には、ダイヤフラムの脈動を解消するために外周面に等速カム輪郭を有する駆動カムを採用したポンプが開示されている。また、特許文献3には、円筒カム機構によって往復動するプランジャー型ポンプが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2、3のポンプは、いずれも装置が複雑であるという問題点がある。そこで、現在、簡単な弁構造を採用し、かつ、簡単な構成と合理的機構により、吐出(或いは排出)する流体の合成波形を、略一定(無動脈)にすることができるピストン型ポンプの出現が要望されている。
【特許文献1】特表2003−506645号公報
【特許文献2】特許公開2002−61584号公報
【特許文献3】特開平6−10829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な弁構造を採用し、かつ、簡単な構成と合理的機構により、吐出(或いは排出)する流体の合成波形を、略一定(無動脈)にすることができるピストン型ポンプを提案することである。また、従属的な目的として、部品の交換が容易、洗浄が簡単、装置全体をコンパクト化等を実現することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のピストン型ポンプは、シリンダーと、ピストンを有する作動杆とを備えたピストン型ポンプであり、シリンダーに形成された複数個の吸引孔及び吐出孔にそれぞれ連通する弁収納部を有する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段をそれぞれ連結し、或いはシリンダーそのものに内設し、前記各弁収納部には、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体をそれぞれ内装し、ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段並びに第2の吐出弁手段の各磁性弁体は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となる反面、第1吐出弁手段並びに第2吸引弁手段の各磁性弁体は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮することを特徴とする。
【0008】
上記構成に於いて、吸引弁手段及び吐出弁手段は、ピストンで区画された第1加圧室側と第2加圧室側にそれぞれ設けられ、第1加圧室側の吸引弁手段の磁性弁体が開弁状態となって流体を第1加圧室に流して逃がし弁の機能を果たしている時には、第2加圧室側の吐出弁手段の磁性弁体も開弁状態となって流体を第2加圧室からシリンダーの外へと流す逃がし弁の機能を果たすことを特徴とする。また、前記磁性弁体は、球状磁石であることを特徴とする。さらに、作動杆の両端部は、シリンダーの両側壁から常時突出し、これらの突出先端部は、筒状回転部材の内部に設けられた等速カム輪郭に摺接し、該作動杆は筒状回転部材の回転により往復動することを特徴とする。加えて、前記筒状回転部材は、固定部材の内部空間に支持部材或いは玉軸受けを介して配設され、該回転部材が駆動源の駆動力により回転すると、前記作動杆は、回転部材の駆動回転により往復動し、第1及び第2の吐出弁手段から流れる流体の合成波形Wは、略一定になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)簡単な弁構造を採用したので、ポンプを各種の用途に使用することができる。特に、磁性弁体が球体である実施例の場合には、流体の流れが上下又は左右であっても、流れの方向に関係なく、磁性弁体は磁性体の極性に対応して磁性弁座に着座する。
(2)付勢手段等を用いる必要がないから、耐久性に優れている。また、部品交換や洗浄も簡単である。
(3)請求項5に記載の発明は、簡単な構成と合理的機構により、流体の合成波形Wを、略一定(無動脈)にすることができる。
(4)請求項6に記載の発明は、回転部材の内部に少なくとも一つ以上のポンプ本体を組み込んだので、装置全体をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、図1乃至図12は、本発明の第1実施例である。この最良の実施形態により本発明を詳細に説明する。
【0011】
(1)実施の環境
ここでは、図1乃至図3を参照にして駆動源側の構成部材を中心に実施の環境を説明する。1は床面、ベース板、基台などのポンプ用台で、このポンプ用台1は、不動産(建物)又は動産(電車、自動車、船舶など)の適宜箇所に取り付けられる。2はポンプ用台1の上面に支持台を介して固定された駆動モータで、この駆動モータ2は、駆動源(例えば電源)3により起動する。ここで駆動源3は、駆動モータ2又は/及び電源3を意味する。
【0012】
4は駆動モータ2の駆動軸5により作動する減速歯車機構で、この減速歯車機構4は、前記ポンプ用台1に直接又は間接的にポンプX側の後述する回転部材との間に配設されている。減速歯車機構4の具体的構成については、図2で簡単に図示する。減速歯車機構4は、例えば駆動モータ2の駆動軸5で回転する駆動歯車4a、この駆動歯車の噛合する伝動歯車4b、伝動歯車を有する出力軸6を備えている。
【0013】
本実施例では、駆動モータ2又は/及び減速歯車機構4は、駆動モータ用の高さ調節台7を介して適宜に設けられている。なお、出力軸6の軸受け部材8.8は、ポンプ用台1又は調節台7に固定的に設けられる。
【0014】
(2)ポンプXの基本的な構成部材
本発明のポンプXは、駆動源の駆動力により、中央部にピストンを有する作動杆が往復動するピストン型ポンプである。第1実施例は、ポンプ本体、作動杆及びポンプ本体に連結される弁収納部を有する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段が発明の特定要件である。
【0015】
さて、ピストン型ポンプXは図2で示すように、ポンプ用台1の上面で、かつ、高さ調節台7の隣に設置されている。このピストン型ポンプXは、ポンプ用台1の上面に固定された固定部材11と、この固定部材11の内部空間12に、前述した駆動モータ2の駆動力により低速回転するように設けられ、かつ、カム機能を有する回転部材13と、この回転部材13に形成した内部(凹所内)14に固定側の支持部材を介して固定的に配設されたポンプ本体15と、該ポンプ本体15の両側壁を貫通し、かつ、中央部にピストン17を有する作動杆16と、前記ポンプ本体15のシリンダー18に形成された第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24にそれぞれ連通する弁収納部35を有する第1と第2の吸引弁手段21A.22A及び第1と第2の吐出弁手段23A.24Aとを備えている。そこで、以下、これらの基本的な構成部材を詳細に説明する。
【0016】
(3)固定部材11
図2で示すように、ベース部10を有する固定部材11は、例えば一側面開口の筒状体に形成されている。固定部材11の外周壁の形態は問わない。固定部材11は、配管用の貫通孔、案内部等を有するが、細部的事項は割愛する。
【0017】
25は固定部材11に固定的に設けられた単数又は複数本のアーム状の支持部材でる。これらの支持部材25は、固定部材11の垂直壁部11aから回転部材13の内部14へと水平状態に延び、ポンプ本体15を直接的ないし間接的に支持する。
【0018】
しかして、本実施例では、前記垂直壁部11aの内壁面の適宜部位から水平状態に延設し、ポンプ本体15及びその作動杆16の突出端部を支持している。なお、図3に示すように、例えば支持部材25を複数本にして、作動杆16の突出部16a、16aも支承する場合には、それらの支持部材25を軸受け腕に形成するのが望ましい。
【0019】
また、固定部材11の垂直壁部11aには突出壁部11bが連設している。この突出壁部11bは、垂直壁部11aの内壁面に対して直交する環状の内周壁面を有する。この内周壁面は、前述した回転部材13用の内部空間12を形成する。なお、内周壁面には、図示しない固定の支持部材あるいは可動の支持部材(案内レール、案内リング、案内溝、ベアリングなど)を適宜に設けても良い。
【0020】
(4)回転部材13
回転部材13も、固定部材11と同様に、一側面開口の筒状体に形成されている。回転部材13は、図2で示すように、駆動源側の出力軸6に支持されるように該出力軸6の先端部に一体的に連結された垂直の円形回転板26と、この円形回転板26の周縁部に突壁状態に周設された環状板27とから成る。前記円形回転板26の中心部に出力軸6が適宜に固定されている。また回転部材13の環状板27の外径寸法は、固定部材11の突出壁部11bの内径寸法を考慮して適宜に設定されている。さらに、環状板27の横向凹所14は、少なくとも1個のポンプ本体15を十分に収納する大きさに設定されている。また、横向凹所14は2個のポンプ本体を十分に収納する大きさに設定するのが望ましい。
【0021】
しかして、本実施例では、前記環状板26の横向凹所14の内周壁面に等速カム輪郭28が形成されている。等速カム輪郭28は、図3で示すように心臓カムである。
【0022】
したがって、図3を基準にすると、ハート型のカム28は、弧状の突出部分28aと、この突出部分と対向する弧状の凹所部分28bとを有する。それ故に、例えば図3に示した作動杆16を基準にすると、回転部材13の角度を二等分することができる。
【0023】
(5)ポンプ本体15
本実施例のポンプXは、ポンプ本体(シリンターと作動杆とから成る)15を備え、ポンプ本体15から供給を受ける対象へ圧送する流体の合成波形Wを一定(無動脈)にする目的を有している。そこで、ポンプ本体15の作動杆16を、前述した回転部材13を内設する固定部材11側の支持部材25を介して支承している。駆動源23の駆動力により回転部材13が回転すると、作動杆16は、図3で示すように、その突出先端部16a.16aがハート型カム面28を直接又は間接的に摺接(或いは転動)するから、回転部材13が回転している限り上下方向に往復動する。
【0024】
ところで、図1は、第1実施例の基本的な構成部材を示す概念図であるから、具体的な実施レベルでは、前記カム面28には、例えば単数又は複数の周溝29を形成し、一方、作動杆16の突出先端部16aには、前記周溝29に対応するローラ、ボールなどの転動体30を設ける。
【0025】
なお、ポンプ本体15が二連式の場合には、各ポンプ本体15の作動杆16が交差状になるように回転部材13に内設するのが望ましい。そして、交差する各作動杆16の突出先端部は、共用する幅広の案内溝(単独)、又は左右一対の個別的な周溝29をローラシャフト及び転動体30を介してそれぞれ移動するように構成する(図2、図3参照)。
【0026】
(6)作動杆の作動
図4で示すように、作動杆16は、中央部にピストン17を有しかつシリンダー18の両側壁を貫通している。第1実施例の回転部材13は、駆動モータ2を含む駆動源3の駆動力により回転するが、該回転部材13が回転すると、ポンプ本体15の作動杆16は、回転部材13のカム面28により往復動する。したがって、回転部材13は、ポンプ本体15に対する駆動部材である。
【0027】
そして、第1と第2の吐出弁手段23A.24Aから押し出される流体の合成波形Wは、後述するように略一定(無動脈)である。なお、図示しないニ連式のポンプ本体15の場合には、他方のポンプ本体は補正ポンプの役割を果たす。
【0028】
(7)吸引弁手段及び吐出弁手段
ポンプ本体15のシリンダー18は、ピストン17で区画された第1加圧室31と第2加圧室32とを有する。またシリンダー18は、これらの第1と第2の加圧室31.32にそれぞれ連通する第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24を有する。
【0029】
第1吸引弁手段21A、第2吸引弁手段22A、第1吐出弁手段23A、第2吐出弁手段24Aは、それぞれシリンダー18の周胴部に突出した合計4個の連結部33に取り外し可能に連結され、これらの手段21A.22A.23A.24Aに設けられた各弁収納部35は、対応する前記第1吸引孔21、第2吸引孔22、第1吐出孔23、第2吐出孔24にそれぞれ連通している。
【0030】
ここで、図5及び図6を参照にして第1吸引弁手段21Aの構成を説明する。なお、第2吸引弁手段22Aの構成は、第1吸引弁手段のそれと同一なので、同一の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0031】
第1吸引弁手段21Aは、シリンダー18の吸引側連結部33に螺合する第1螺合部を有する第1連結具41と、この第1連結具41の第2螺合部に螺合する第2連結具42と、これらの連結具41.42の係合により形成された弁収納部35と、この弁収納部35に収納された曲面を有する磁性弁体43とから成り、前記磁性弁体43は、前記第2連結具42側の磁性弁座44に対して極性に対応して着座自在である。
【0032】
しかして、前記磁性弁体43は、本実施例では、球状磁石(マグネットボール)が使用されている。そして、この球状磁石43の表面には防錆ないし衝撃防止の観点から弗素樹脂がコーティングされている。防錆剤の一例は、ポリテトラフルオロチレンである。
【0033】
一方、前記磁性弁座44は、本実施例では、磁性パッキン(マグネットシート)が使用されている。もちろん、磁性弁座44は設計変更可能である。例えば第2連結具42の断面コ字型状の第1螺合部の内壁面にすり鉢形状の磁性弁座44を形成しても良い。この場合には、磁性弁座44を磁性弁体43が吸着可能な材質(ステンレススチール)で形成し、望ましくは前述した防錆剤ないし衝撃防止剤をコーティングする。
【0034】
このように磁性弁体43と磁性弁座44との吸着関係は、両方が「異磁極による吸着力」を発揮すれば良いから、例えば両方を磁石にし、又は一方を磁石にする反面、他方を磁性体材質の第2連結具にすることができる。しかも、磁性弁座44を第2連結具42の第1螺合部の内壁面に形成し、又は第1螺合部の凹所の内壁面に密嵌合する磁性パッキンにすることも可能である。
【0035】
ここで、第1吸引弁手段21Aの各部位に符号を付す。45は第1連結具41の第1螺合部(例えばメネジ部)で、この第1螺合部45の外周壁46は、袋ナット形状に形成さている。47は第1螺合部45に突起状に連設する第2螺合部(例えばオネジ部)で、この第2螺合部47には、端面から第1螺合部45の流体用貫通孔48に向かって磁性弁体43用凹所49が形成されている。この凹所49は磁性弁体43が自由に動けるように余裕を持って設定されている。本実施例では、磁性弁体43が前記流体用貫通孔48を塞がないようにするために、貫通孔48は、図6で示すように横向き凹所49の上位の位置に形成されている。
【0036】
次に、51は流体用貫通孔を有する第2連結具42の第1螺合部(例えばメネジ部)で、この第1螺合部51には、本実施例では磁性弁座44用凹所52が形成されている。この凹所52の奥行きは、磁性弁座44を第2連結具42とは別体の磁性パッキンにするか否かによって決まる。53は第1螺合部51の一側壁に連設する第2螺合部で、この第2螺合部(例えばメネジ部)53には吸引側の配管54の一端部が螺合可能である。
【0037】
以上が第1吸引弁手段21A及び第2吸引弁手段22Aの構成であるが、図7及び図8に示す第1吐出弁手段23A、第2吐出弁手段24Aも、吸引弁手段と同様の構成である。
【0038】
したがって、吸引弁手段の符号を借用して第1吐出弁手段23A(第2吐出弁手段24Aの構成も第1吐出弁手段23Aと同一)を説明する。
【0039】
すなわち、42Aはシリンダー18の吐出側連結部33に螺合する第1連結具である。この第1連結具42Aは、吸引弁手段21A(22A)側の第2連結具42の構成と同様になっている。したがって、51は流体用貫通孔を有する第1螺合部(例えばメネジ部)で、この第1螺合部51には、磁性弁座44用凹所52が形成されている。53は第1螺合部51の一側壁に連設する第2螺合部で、この第2螺合部(例えばメネジ部)53は、吐出側の配管54Aではなく、シリンダー18の吐出側連結部33に螺合する。
【0040】
一方、41Aは第1連結具42Aと前記吐出側の配管54Aにそれぞれ螺合する第2連結具である。この第2連結具41Aは、吸引弁手段21A(22A)側の第1連結具41の構成と同様になっている。したがって、45は第1螺合部で、この第1螺合部45は、シリンダー8ではなく、吐出側の配管54Aに螺合可能である。一方、47は第1連結具42Aの第1螺合部51に螺合する第2螺合部である。49は磁性弁体43用凹所である。48は吐出側の流体用貫通孔である。46は袋ナット形状の外周壁である。
【0041】
上記のように、第1吐出弁手段23A、第2吐出弁手段24Aも第1吸引弁手段21A及び第2吸引弁手段22Aと同様に、シリンダー18に取り外し可能に螺合する第1連結具42Aと、この第1連結具42Aの螺合部に螺合する第2連結具41Aと、これら第2と第2の連結具42A.41Aの係合により形成された弁収納部35と、この弁収納部35に収納され、かつ、曲面を有する磁性弁体43とから成り、前記磁性弁体43は、前記第1連結具42A側の磁性弁座44に対して極性に対応して着座自在である。
【0042】
(8)各磁性弁体の機能
各弁収納部35の各磁性弁体43は、駆動源(例えば駆動モータ2)の駆動力により、例えば図15で示すように、ピストン17が作動杆16を介して第1と第2の加圧室31.32内を矢印A方向へ摺動すると、該ピストン17の摺動に起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段21A並びに第2の吐出弁手段24Aの各磁性弁体43.43は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座44.44から同時に離れて開弁状態となる(図15)。
【0043】
したがって、第1の吸引弁手段21A並びに第2の吐出弁手段24Aの各磁性弁体43.43は、圧力流体をシリンダー18内に入れる機能と、圧力流体をシリンダー18から外へ流す(逃がす)機能を同時に行う。一方、この時、第1加圧室側31の第1吐出弁手段23A並びに第2加圧室側32の第2吸引弁手段22Aの各磁性弁体43.43は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮する。
【0044】
これに対して、図16で示すように、ピストン17が矢印B方向へ摺動すると、図15の場合とは逆になり、第2の吸引弁手段22A並びに第1の吐出弁手段23Aの各磁性弁体43.43は、圧力流体ないし磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座44.44から同時に離れて開弁状態となる。したがって、第2の吸引弁手段22A並びに第1の吐出弁手段23Aの各磁性弁体43.43は、圧力流体をシリンダー18内に入れる機能と、圧力流体をシリンダー18から外へ流す(逃がす)機能を同時に行う。以下、同様である。
【0045】
(9)供給源、配管、ポンプ本体、供給を受ける対象
図9は、ポンプ本体15と配管54.54Aとの接続関係を概略的に示している。
本発明のピストン型ポンプXは、多用途である。供給源(タンク、容器など)55に収納される流体56を列挙すると、液体水素、気体水素、電解溶液、高圧ガス、メタンガス、アンモニア、塩素ガス、都市ガス、LPガス、天然ガスなどである。
【0046】
もちろん、流体56はこれらの気体や液体に限定されるものではない。例えば供給を受ける対象57が人体であれば、人体に適合する溶液となり、また供給を受ける対象57が包装容器であれば、該包装容器に適合する材料、食料等が流体56となる。
【0047】
したがって、現時点で発明者が認識しない流体を対象に圧送する場合にも、ポンプXは利用される可能性がある。
【0048】
なお、図9に於いて、供給源55は、1個示しているが、これは説明の便宜上であり、流体56が2以上の試薬、塗料、食品などの場合には、供給源55を2個にしても良いことはもちろんである。
【0049】
(10)合成波形W
ここで、図10を参照にして合成波形Wが略一定(無動脈)である理由を説明する。
図3で示すように、駆動モータ2の駆動力により回転部材13が矢印で示す時計方向へと低速回転すると、図10で示すように、回転部材13の速カム輪郭28の各黒点「●」部分は、駆動源側の出力軸6を中心にしてそれぞれ同心円状の軌跡を描く。
【0050】
したがって、図10を基準にすると、●aは出力軸6に最も近い位置に存在する反面、●bは出力軸6から最も離れた位置にあるから、ポンプ本体15の作動杆16の転動体30がカム28の凸部分28a並びに凹所部分28bの位置にきた時が、いわばピストン17の死点に相当するといえる。この死点は、回転部材13が180度回転すると、前記●aと、●bの位置が入れ替わる。
【0051】
したがって、ポンプ本体15の作動杆16は、180度の位相差を有して吸引と吐出が切り替わるということになる。この場合、例えばポンプ本体が「単体」である場合、すなわち、作動杆16を備えたポンプ本体15のみである場合には、上死点側或いは下死点側に相当する部分で、流体入力と流体出力が、いわば停止状態となり、その結果、流体の出力側の波形が、図11の左図で示すように「サインカーブ(通称)」となってしまう。
【0052】
しかしながら、本発明では、少なくとも一つのポンプ本体15が回転部材13の内部14に配設され、かつ、作動杆16の突出する先端部が回転部材13のハート型カム面を摺接或いは転動するから、図11の右図で示す線図のように作動杆16が作動する限り、サインカーブを解消することができる。
【実施例】
【0053】
この欄では、第1実施例を回避する場合の変形例(第2実施例、第3実施例)を簡単に説明する。なお、第2実施例及び第3実施例の説明に当たって、第1実施例と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
(11)第2実施例
図12は、本発明の第2実施例を示すピストン型ポンプX1である。この第2実施例が第1実施例と主に異なる点は、シリンダー18Aの周胴部に、シリンダー18Aに形成された第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24にそれぞれ連通する弁収納部35A.35Aを構成する第1と第2の吸引弁手段21A.22A及び第1と第2の吐出弁手段23A.24Aをそれぞれ連結した点である。この第2実施例は、第1実施例のように、周胴部から突出する吸引用及び吐出用の連結部が存在しない反面、第1実施例の吸引側の第2連結具42に相当する連結具42B及び吐出側の第2連結具41Aに相当する連結具41Bが、直接シリンダー18Aの周胴部にそれぞれ設けられている。したがって、吸引側の1つの連結具42B及び吐出側の1つの連結具41Bが、シリンダー18Aに螺着自在に結合する点が、第1実施例と異なる。
【0055】
この第2実施例のポンプX1も、第1実施例と同様に、シリンダー18Aの周胴部には、ピストン7で区画された第1と第2の加圧室にそれぞれ連通する第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24が形成されている。また、第1と第2の吸引弁手段21A.22A及び第1と第2の吐出弁手段23A.24Aは、吸引側の連結具42Bと吐出側の連結具41Bを介してシリンダー18Aの周胴部にそれぞれ連結されている。前記吸引弁手段21A.22A及び吐出弁手段23A.24Aの各弁収納部35Aには、極性に対応して磁性弁座44に着座し、かつ、曲面を有する磁性弁体43がそれぞれ内装されている。
【0056】
そして、各磁性弁体35Aは、駆動源の駆動力により、作動杆16のピストン17が加圧室31.32内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段21A並びに第2の吐出弁手段24Aの各磁性弁体43.43は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座44.44から同時に離れて開弁状態となる反面、第1吐出弁手段23A並びに第2吸引弁手段22Aの各磁性弁体43.43は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮する。したがって、このように設計変更しても、第1実施例と同一の作用・効果がある。
【0057】
(12)第3実施例
図13は、本発明の第3実施例を示すピストン型ポンプX2である。
この第3実施例が第1実施例と主に異なる点は、シリンダー18Bの周胴部そのものに、シリンダー18Bに形成された第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24にそれぞれ連通する弁収納部35A.35Aを有する第1と第2の吸引弁手段21A.22A及び第1と第2の吐出弁手段23A.24Aを内設するように構成したことである。
【0058】
したがって、図14で示すように、前記シリンダー18Bは、第1実施例の吸引側の第2連結具42及び吐出側の第2連結具41Aにそれぞれ相当する部分を有する外筒体61と、この外筒体61に内装されかつ第1実施例の吸引側の第1連結具41及び吐出側の第1連結具42Aにそれぞれ相当する部分を有する内筒体62とから構成されている。
【0059】
しかして、前記シリンダー18Bの内筒体62には、第1実施例のシリンダー18と同様に、ピストン17で区画された第1と第2の加圧室31.32にそれぞれ連通する第1と第2の吸引孔21.22及び第1と第2の吐出孔23.24が形成されている。
【0060】
一方、前記外筒体61の外周壁には吸引及び吐出用の連結部33.33がそれぞれ設けられ、これらの連結部33には、第1と第2の吸引弁手段21A.22A及び第1と第2の吐出弁手段23A.24Aにそれぞれ連通する吸引及び吐出用の配管54.54Aが連結(螺合)可能である。
【0061】
また、前記吸引弁手段21A.22A及び吐出弁手段23A.24Aの各弁収納部35Aには、極性に対応して磁性弁座44に着座し、かつ、曲面を有する磁性弁体43.43がそれぞれ内装されている。
【0062】
そして、各磁性弁体43は、第1実施例と同様に、駆動源の駆動力により、作動杆16のピストン17が加圧室31.32内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段21A並びに第2の吐出弁手段24Aの各磁性弁体43.43は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座44.44から同時に離れて開弁状態となる反面、第1吐出弁手段23A並びに第2吸引弁手段22Aの各磁性弁体43.43は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮する。したがって、このように設計変更しても、第1実施例と同一の作用・効果がある。
【0063】
(13)その他
以上の各実施例に於いて、ポンプX、X1及びX2の筒状回転部材13は、筒状固定部材の内部空間14に支持部材25を介して配設されているが、筒状回転部材13は、例えば周壁に永久磁石を有する回転子であり、一方、該固定部材が、駆動源(電源)の供給を受ける固定子である場合(駆動モータ型の場合)には、前記支持部材は、玉軸受けに代えることができる。
【0064】
また、各実施例に於いて、作動杆16の両端部は、シリンダー18(18A,18B)の両側壁から常時突出し、これらの突出先端部は、筒状回転部材の内部に設けられた等速カム輪郭28に摺接し、該作動杆は筒状回転部材の回転により往復動することを特徴とするが、必ずしも作動杆の両端部はシリンダーから貫通状態に突出させる必要はなく、先端部をシリンダーヘッド内で摺動させ、一方、後端部をシリンダーの側壁から突出させ、この突出端部にクランクを連結し、かつ、減速歯車機構を介して該クランクに駆動モータの駆動力を伝達するように構成しても良い。
【0065】
さらに、各実施例に於いて、磁性弁体43は、球状磁石であることを特徴とするが、必ずしも球状磁石にする必要はなく、同一の機能を発揮することができるならば、例えば、球状磁石の形状を「ニードル弁形状」に代えても良い。なお、このニードル弁形状の磁性弁体の具体的構成については、本願発明者が、日本国特許庁に申請中である(特願2003−170842号)。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、主にポンプ業界及び関連業界で製造・販売される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1乃至図11は本発明の第1実施例を示す各説明図。図12は本発明の第2実施例である。図13及び図14は本発明の第3実施例を示す各説明図。図15及び図16は本発明の作用・効果を示す各説明図。
【図1】第1実施例の基本的構成を示す概略説明図。
【図2】ポンプ本体を省略した概略説明図。
【図3】主要部を縦断面で示した概略説明図。
【図4】ポンプ本体の構造を示した概略説明図。
【図5】吸引弁手段の概略横断面説明図。
【図6】吸引弁手段の概略縦断面説明図。
【図7】吐出弁手段の概略横断面説明図。
【図8】吐出弁手段の概略縦断面説明図。
【図9】ポンプ本体と配管との関係を示す概念的な説明図。
【図10】等速カム輪郭と作動杆との関係を示す説明図。
【図11】図10の実施例における発明の効果の説明図。
【図12】本発明の第2実施例を示す概略横断面説明図。
【図13】本発明の第3実施例を示す概略横断面説明図。
【図14】本発明の第3実施例を示す概略縦断面説明図。
【図15】本発明の作用・効果の説明図(第1加圧室側の吸引弁手段の磁性弁体が開弁状態、第2加圧室側の吐出弁手段の磁性弁体も開弁状態)。
【図16】本発明の作用・効果の説明図(図15とは逆)。
【符号の説明】
【0068】
X、X1、X2…ピストン型ポンプ、2…駆動モータ、3…駆動源、4…減速歯車機構、5…駆動軸、6…出力軸、10…ベース部、11…筒状固定部材、12…内部空間、13…筒状回転部材、14…内部、15…ポンプ本体、16…作動杆、17…ピストン、18、18A、18B…シリンダー、21…支持部材、28…等速カム輪郭、29…周溝、30…転動体、21…第1吸引孔、22…第2吸引孔、23…第1吐出孔、24…第2吐出孔、21A…第1吸引弁手段、22A…第2吸引弁手段、23A…第1吐出弁手段、24A…第2吐出弁手段、31…第1加圧室、32…第2加圧室、33…連結部、35、35A…弁収納部、43…磁性弁体、44…磁性弁座、61…外筒体、62…内筒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、ピストンを有する作動杆とを備えたピストン型ポンプであり、シリンダーに形成された複数個の吸引孔及び吐出孔にそれぞれ連通する弁収納部を有する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段をそれぞれ連結し、前記各弁収納部には、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体をそれぞれ内装し、ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、第1の吸引弁手段並びに第2の吐出弁手段の各磁性弁体は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となる反面、第1吐出弁手段並びに第2吸引弁手段の各磁性弁体は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮することを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項2】
請求項1に於いて、吸引弁手段及び吐出弁手段は、ピストンで区画された第1加圧室側と第2加圧室側にそれぞれ設けられ、第1加圧室側の吸引弁手段の磁性弁体が開弁状態となって流体を第1加圧室に流して逃がし弁の機能を果たしている時には、第2加圧室側の吐出弁手段の磁性弁体も開弁状態となって流体を第2加圧室からシリンダーの外へと流す逃がし弁の機能を果たすことを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、第1加圧室側の吐出弁手段の磁性弁体は、磁気吸着作用の吸着力により弁座に着座していると共に、第2加圧室側の吸引弁手段の磁性弁体は、第2加圧室の圧力流体及び異磁極による吸着力により弁座に着座していることを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項4】
請求項1に於いて、磁性弁体は、球状磁石であることを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項5】
請求項1に於いて、作動杆の両端部は、シリンダーの両側壁から常時突出し、これらの突出先端部は、筒状回転部材の内部に設けられた等速カム輪郭に摺接し、該作動杆は筒状回転部材の回転により往復動することを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項6】
請求項5に於いて、筒状回転部材は、固定部材の内部空間に支持部材或いは玉軸受けを介して配設され、該回転部材が駆動源の駆動力により回転すると、前記作動杆は、回転部材の駆動回転により往復動し、第1及び第2の吐出弁手段から流れる流体の合成波形Wは、略一定になることを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項7】
シリンダーと、ピストンを有する作動杆とを備えたピストン型ポンプであり、前記シリンダーの周胴部に、シリンダーに形成された複数個の吸引孔及び吐出孔にそれぞれ連通する弁収納部を構成する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段をそれぞれ連結し、前記吸引弁手段及び吐出弁手段の各弁収納部には、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体をそれぞれ内装し、駆動源の駆動力により前記ピストンが加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が吸着力よりも増さると、前記第1の吸引弁手段並びに第2の吐出弁手段の各磁性弁体は、磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となる反面、前記第1吐出弁手段並びに第2吸引弁手段の各磁性弁体は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮することを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項8】
請求項7に於いて、磁性弁体及び弁座には、弗素樹脂がコーティングされていることを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項9】
請求項7に於いて、磁性弁座は、磁性弁体の曲面に対する断面弧状の曲面を有するパッキンであることを特徴とするピストン型ポンプ。
【請求項10】
シリンダーと、ピストンを有する作動杆とを備えたピストン型ポンプであり、前記シリンダーの周胴部そのものに、シリンダーに形成された複数個の吸引孔及び吐出孔にそれぞれ連通する弁収納部を有する第1と第2の吸引弁手段及び第1と第2の吐出弁手段を内設するように構成し、前記吸引弁手段及び吐出弁手段の各弁収納部には、極性に対応して磁性弁座に着座する磁性弁体をそれぞれ内装し、駆動源の駆動力により前記ピストンが前記加圧室内を摺動することに起因して流体の圧力が磁性体の吸着力よりも増さると、前記第1の吸引弁手段並びに第2の吐出弁手段の各磁性弁体は磁気吸着作用の吸着力に抗して対応する磁性弁座から同時に離れて開弁状態となる反面、前記第1吐出弁手段並びに第2吸引弁手段の各磁性弁体は、磁気作用により逆止弁の機能を発揮することを特徴とするピストン型ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−9679(P2006−9679A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187421(P2004−187421)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503428817)株式会社ベイシティサービス (17)
【Fターム(参考)】