説明

ピペリジニルピペリジンタキキニン受容体アンタゴニスト

本発明は、ニューロキニン−1(NK−1)受容体アンタゴニスト、タキキニン、特にサブスタンスPの阻害剤として有用な、特定のピペリジン化合物に関する。本発明は、また、活性成分としてこれらの化合物を含有する医薬組成物、及び嘔吐、尿失禁、うつ病及び不安を含む、特定の疾患の治療における、該化合物及びそれらの組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
サブスタンスPは、ペプチドのタキキニンファミリーに属する、自然に存在するウンデカペプチドであり、後者は、血管外の平滑筋組織における、それらの迅速な収縮作用のためにそのように名付けられている。タキキニンは、保存されたカルボキシル末端配列によって区別される。サブスタンスPに加え、公知のほ乳類タキキニンには、ニューロキニンA及びニューロキニンBが含まれる。最新の命名法は、サブスタンスP、ニューロキニンA、及びニューロキニンBについての受容体を、ニューロキニン−1(NK−1)、ニューロキニン−2(NK−2)及びニューロキニン−3(NK−3)として命名する。タキキニン、特にサブスタンスPアンタゴニストは、過剰のタキキニン、特にサブスタンスP活性の存在によって特徴づけられる、中枢神経系の障害、痛覚及び痛み、胃腸病、膀胱機能の障害及び呼吸器疾患を含む臨床状態の治療に有用である。上述された種々の障害及び疾患を更に効果的に治療するために、サブスタンスP及び他のタキキニンペプチドの受容体についてのアンタゴニストを提供する試みがなされてきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(発明の要旨)
本発明は、ニューロキニン−1(NK−1)受容体アンタゴニスト、及びタキキニン、特にサブスタンスPの阻害剤として有用な、特定のアミノラクタム化合物に関する。本発明は、また、活性成分としてこれらの化合物を含む医薬組成物、及び嘔吐、尿失禁、うつ病及び不安を含む、特定の疾患の治療における、これらの化合物及び製剤の使用に関する。
【0003】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式I:
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、Qは、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、及び
(3)C1−6アルキル−OH
からなる群から選択され;

Xは、
(1)単結合、
(2)−CO−、及び
(3)−C1−6アルケニル
からなる群から選択され;

は、
(1)ピロリジニル、
(2)ピペリジニル、
(3)ピペラジニル、及び
(4)モルホリニル
からなる群から選択され、それらはR1a、R1b及びR1c(ここにおいてR1a、R1b及びR1cは、独立して、
(a)水素、
(b)C1−6アルキル、
(c)(C1−6アルキル)−フェニル、
(d)(C1−6アルキル)−ヒドロキシ、
(e)(C1−6アルキル)−(C1−4アルコキシ)、
(f)ヒドロキシ、
(g)オキソ、
(h)C1−6アルコキシ、
(i)フェニル−C1−3アルコキシ、
(j)フェニル、
(k)−CN、
(l)ハロ、
(m)−NR10{ここでR及びR10は、独立して、
(I)水素、
(II)C1−6アルキル、
(III)フェニル
(IV)(C1−6アルキル)−フェニル、
(V)(C1−6アルキル)−ヒドロキシ、及び
(VI)(C1−6アルキル)−(C1−4アルコキシ)から選択される}、
(n)−NR−COR10
(o)−NR−CO10
(p)置換されていないか、又はC1−6アルキル又はハロで置換されている複素環であって、
(A)イミダゾリル、
(B)イソオキサゾリル、
(C)オキサジアゾリル、
(D)オキサゾリル、
(E)ピラジニル、
(F)ピラゾリル、
(G)ピリダジニル、
(H)ピリジル、
(I)ピリミジル、
(J)ピロリル、
(K)キノリル、
(L)テトラゾリル、及び
(M)トリアゾリルからなる群から選択される複素環、
(q)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている、−シクロペンテノン、
(r)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている、−NR−シクロペンテノン、
(s)−CO−NR10
(t)−SO−NR10
(u)−SO−NR10
(v)−COR、及び
(w)−COから選択される)で置換され;

、R及びRは、独立して、
(1)水素、
(2)C1−6アルコキシ、
(3)ハロ、
(4)置換されていないか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1−6アルコキシ、
(d)フェニル−C1−3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択される1又はそれ以上の置換基で置換されているC1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−CN、
(7)−CF
(8)−NO
(9)−SR14{R14は水素又はC1−6アルキルである}、
(10)−SOR14
(11)−SO14
(12)−NR−COR10
(13)−CO−NR−COR10
(14)−NR10
(15)−NR−CO10
(16)−COR、及び
(17)−COからなる群から選択され;

11、R12及びR13は、独立して、
(1)水素、
(2)置換されていないか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1−6アルコキシ、
(d)フェニル−C1−3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択される、1又はそれ以上の置換基で置換されているC1−6アルキル;
(3)ハロ、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−NO
(7)ヒドロキシ、
(8)C1−6アルコキシ、
(9)−COR、及び
(10)−COからなる群から選択される]で表される化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々のジアステレオマーに関する。
【0006】
本発明の実施態様は、式Ia:
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、R及びXは、本明細書で定義される)で表わされる化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0009】
本発明の実施態様は、式Ib:
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは、本明細書で定義される)で表わされる化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0012】
本発明の実施態様は、式Ic:
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R1a、R1b、及びR1cは、本明細書で定義される)で表わされる化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0015】
本発明の実施態様は、式Id:
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1a、R1b、及びR1cは、本明細書で定義される)で表わされる化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0018】
本発明の実施態様は、式Ie:
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、R1a、R1b、及びR1cは、本明細書で定義される)で表わされる化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0021】
本発明の実施態様は、Qが
(1)水素、及び
(2)メチルからなる群から選択される化合物を含む。
この実施態様の範囲内で、本発明は、Qがメチルである化合物を含む。
【0022】
本発明の実施態様は、Xが単結合である化合物を含む。
【0023】
本発明の実施態様は、R
(1)ピロリジニル、及び
(2)ピペリジニルからなる群から選択され、それらがR1a、R1b及びR1cで置換されている化合物を含む。
【0024】
本発明の実施態様は、R1a、R1b及びR1cが、独立して、
(a)水素、
(b)置換されていないか、又はC1−6アルキル又はハロで置換されている複素環であって、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択される複素環;
(c)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている−シクロペンテノンから選択される化合物を含む。
【0025】
この実施態様においては、本発明は、R1a、R1b及びR1cの2つが水素であり、R1a、R1b及びR1cの1つが、独立して、
(a)置換されていないか、又はメチル若しくはブロモで置換されている複素環であって、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択される複素環;
(b)置換されていないか、又はメチルで置換されている−シクロペンテノン
から選択される化合物を含む。
【0026】
本発明の実施態様は、R、R、及びRが、独立して、
(1)水素、及び
(2)−CF
からなる群から選択される化合物を含む。
【0027】
この実施態様においては、本発明は、R、R及びRが、それらが結合して3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル環を形成するフェニル環である化合物を含む。
【0028】
本発明の実施態様は、R11、R12、及びR13が、独立して、
(1)水素、及び
(2)−フルオロ
からなる群から選択される化合物を含む。
【0029】
この実施態様においては、本発明は、R11、R12及びR13が、それらが結合して4−フルオロフェニル環を形成するフェニル環である化合物を含む。
【0030】
本発明の特定の実施態様は、本明細書における実施例の主題の化合物、及びその医薬として許容される塩、及びその個々の鏡像異性体及びジアステレオマーからなる群から選択される化合物を含む。
【0031】
本発明の化合物は、1又はそれ以上の不斉中心を含んでいてもよく、それ故に、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在し得る。追加の不斉中心は、分子上の種々の置換基の種類に依存して存在し得る。このような各不斉中心は2種の光学異性体を独立的に生成するが、本発明は、混合物、及び純粋であるか、又は部分的に精製された化合物として混合物中に存在し得る全ての光学異性体及びジアステレオマーを含むことを意図する。本発明は、これらの化合物の、このような全ての異性体形態を含むことを意味する。式Iは、好ましい立体化学なしで化合物のクラスの構造を示す。それらのジアステレオマーの独立的な合成、又はそれらのクロマトグラフィー分離は、本明細書に開示された方法の適切な修飾によって、当業界において知られているように達成される。それらの絶対立体化学は、必要に応じ公知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶性の生成物、又は結晶性中間体のX線結晶学によって決定することができる。所望により、個々の鏡像異性体を分離するために、化合物のラセミ混合物を分離する。分離は、鏡像異性的に純粋な化合物に、化合物のラセミ混合物をカップリングしてジアステレオマー混合物を形成し、次いで分別結晶又はクロマトグラフィー等の標準的方法によって個々のジアステレオマーを分離する等の、当業界において周知の方法によって実施することができる。カップリング反応は、しばしば、鏡像異性的に純粋な酸又は塩基を用いて塩を形成する。次いで、加えられたキラル残基の切断によって、ジアステレオマー誘導体を純粋な鏡像異性体に変換する。化合物のラセミ混合物は、また、当業界で周知である、キラル固定相を用いたクロマトグラフ法によって直接分離することができる。また、化合物の、いずれの鏡像異性体も、当業界で周知の方法によって、光学的に純粋な出発物質、又は公知の立体配置の試薬を用いた、立体選択的合成によって得ることができる。
【0032】
当業者によって認識されるように、本明細書で用いられる、ハロ又はハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。同様に、C1−6アルキルにおけるC1−6は、直線又は枝分かれ配列において1、2、3、4、5又は6個の炭素を有するような基を同定すると定義され、このようなC1−6アルキルは、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。独立的に置換基で置換されるように指定された基は、複数のこのような置換基で置換されてもよい。
【0033】
「医薬として許容される塩」なる用語は、無機又は有機の塩基、及び無機又は有機の酸を含む、医薬として許容される非毒性の塩基又は酸から製造される塩を意味する。無機塩基から由来する塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。特に好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。固体形態における塩は、1以上の結晶構造で存在し得、また水和物の形態で存在し得る。医薬として許容される有機の非毒性塩基から由来する塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の、一級、二級及び三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂が含まれる。本発明の化合物が塩基性である場合、塩は、無機及び有機の酸を含む、医薬として許容される非毒性の酸から製造され得る。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。特に好ましくは、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸及び酒石酸である。本明細書で用いられるように、本発明の化合物への言及は、医薬として許容される塩をも含むことを意味することが理解されるだろう。
【0034】
本発明の例示は、実施例及び明細書に開示された化合物の使用である。本発明における特定の化合物には、以下の実施例に開示された化合物、及びその医薬として許容される塩及び個々のジアステレオマーからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0035】
本発明の化合物は、過剰のタキキニン、特にサブスタンスPの活性の存在によって特徴づけられる多種多様の臨床状態の予防及び治療に有用である。したがって、例えば、過剰のタキキニン、特にサブスタンスPの活性は、種々の中枢神経系の疾患に関係する。このような疾患には、うつ病又は特に抑うつ的な疾患等の気分障害、例えば、単一発作性又は再発性の大うつ病性障害及び気分変調性障害、双極性障害、例えば、双極性I障害、双極性II障害及び循環病;広所恐怖症を伴うか又は伴わないパニック障害、パニック障害の病歴のない広所恐怖症、例えば、特定の動物恐怖症、対人恐怖症等の特定の恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を含む、ストレス障害、及び広汎性不安障害等の不安障害;統合失調症及び他の精神異常、例えば、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、一時的精神異常、共用精神異常及び妄想又は幻覚を伴う精神異常;アルツハイマー病、老人性痴呆、アルツハイマー型痴呆、血管性痴呆、及び他の痴呆、例えば、HIV疾患、頭蓋骨損傷、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、又は複合病因によるもの等の、精神錯乱、認知症、及び健忘性及び他の認識力障害又は神経変性障害;神経安定薬誘発性パーキンソン症、神経安定薬性悪性症候群、神経安定薬誘発性急性ジストニア、神経安定薬誘発性急性アカシジア、神経安定薬誘発性遅発性ジスキネジア及び薬物誘発性起立性振戦等の薬物誘発性運動障害等の、パーキンソン病及び他の錐体外路系運動障害;アルコール、アンフェタミン(又はアンフェタミン様物質)、カフェイン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤及びエアゾール噴射剤、ニコチン、オピオイド、フェニルグリシジン誘導体、鎮痛剤、睡眠剤、及び抗不安薬の使用から発生する、依存症及び乱用、中毒、禁断症状、中毒精神錯乱、禁断精神錯乱、持続性痴呆、精神異常、気分障害、不安障害、性的機能不全及び睡眠障害である物質関連障害;てんかん;ダウン症候群;MS及びALS、及び糖尿病及び化学療法誘発性神経障害、及びヘルペス後神経痛、三叉神経痛、分節性又は肋間神経痛及び他の神経痛等の、末梢神経疾患等の他の神経病理学的疾患等の脱髄疾患;及び脳梗塞、くも膜下出血又は脳性浮腫等の、急性又は慢性の脳血管性障害による脳血管疾患が含まれる。
【0036】
タキキニン、特にサブスタンスP活性は、また、痛覚及び痛みに関与する。したがって、本発明の化合物は、急性外傷、変形性関節症、リウマチ様関節炎、筋骨格痛、特に外傷後の筋骨格痛、脊髄痛、筋筋膜疼痛症候群、頭痛、会陰痛、及び火傷等の軟部組織及び末梢性の障害;心臓痛、筋肉痛、眼痛、歯痛等の口腔顔面痛、腹痛、生理痛及び分娩痛等の婦人科疾患痛等の深部及び内臓痛;神経絞扼及び腕神経叢剥離等の末梢神経障害に関連する痛み、切断、末梢神経疾患、三叉神経痛、非定型顔面痛、神経根損傷及びくも膜炎等の神経及び神経根損傷に関連する痛み;しばしば癌疼痛として言及される癌に関連する痛み;脊髄又は脳幹の創傷による中枢神経痛;腰痛;坐骨神経痛;強直性脊椎炎;痛風及び傷跡の痛み等の痛みが支配する疾患及び健康状態の予防及び治療に有用である。
【0037】
タキキニン、及び特にサブスタンスPアンタゴニストは、また、特に、慢性閉塞性気道疾患、気管支肺炎、慢性気管支炎、嚢胞性線維症及び喘息、成人呼吸窮迫症候群、及び気管支痙攣等の過剰粘液分泌と関連する、呼吸器疾患;炎症性腸疾患、乾癬、結合組織炎、変形性関節症、リウマチ様関節炎、そう痒症及び日焼け等の炎症性疾患;湿疹及び鼻炎等のアレルギー;ツタウルシによる発疹等の過敏症疾患;結膜炎、春季カタル等の眼疾患;増殖性硝子体網膜症等の細胞増殖に関連する眼状態;接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、じんま疹、及び他の湿疹様皮膚炎等の皮膚疾患の治療に有用であり得る。タキキニン、特にサブスタンスPアンタゴニストは、また、乳房腫瘍、神経節細胞芽細胞腫及び小細胞肺癌等の小細胞癌を含む腫瘍の治療に有用であり得る。
【0038】
タキキニン、特にサブスタンスPアンタゴニストは、また、胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃癌、胃リンパ腫、内臓の神経調節に関連する疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性大腸症候群、並びに化学療法、放射線、毒物、ウイルス又は細菌感染、妊娠、乗り物酔い、眩暈症、めまい及びメニエル病等の前庭障害、手術、偏頭痛、頭蓋内圧の変動、逆流性胃−食道疾患、胃酸過多、飲食物の過耽溺、酸性の腹部、胸焼け、又は逆流、偶発性、夜間性又は食事に誘発される胸焼け等の胸焼け、及び消化不良等によって誘発される急性及び遅延型又は予測的嘔吐を含む嘔吐等の、胃腸(GI)の炎症性障害及び疾患を含む胃腸(GI)病の治療に有用であり得る。
【0039】
タキキニン、特にサブスタンスPアンタゴニストは、また、ストレス関連身体疾患;肩腕症候群等の灼熱痛;移植組織の拒絶等の不利な免疫反応及び全身性エリテマトーデス等の免疫促進又は抑制に関連する疾患;サイトカイン化学療法から発生する血漿浸出、及び緊急及び頻繁な強い尿失禁を伴う過敏性膀胱の予防及び治療を含む、膀胱炎、膀胱排尿筋過反射、頻尿及び尿失禁等の膀胱機能の疾患;強皮症及び好酸球性肝蛭症等の線維化及び膠原病;狭心症、血管性頭痛、偏頭痛及びレイナルド病等の血管拡張及び血管攣縮性疾患によって引き起こされる血流障害;前述の健康状態のいずれかに起因するか、又は関連する痛み又は痛覚、特に偏頭痛における痛みの伝達を含む種々の健康状態の治療に有用であり得る。本発明の化合物は、また、上記健康状態の組み合わせ、特に、術後痛及び術後悪心及び嘔吐の治療に価値がある。
【0040】
本発明の化合物は、特に、化学療法、放射線、毒物、前庭障害、妊娠、運動、手術、偏頭痛、頭蓋内圧の変動によって誘発される急性、遅延型又は予測的嘔吐を含む嘔吐の予防又は治療に有用である。例えば、本発明の化合物は、高濃度のシスプラチンを含む、中程度又は高度の催吐性の癌化学療法の初期及び反復過程に関連して起こる、急性及び遅延型悪心及び嘔吐の予防のための他の鎮吐薬と任意に組み合わせることが有用である。特に、本発明の化合物は、癌化学療法に通常に用いられる、抗腫瘍(細胞傷害)薬によって誘発される嘔吐、及び例えばロリプラム等の他の医薬によって誘発される嘔吐の治療に有用である。このような化学療法薬の具体例には、例えば、エチレンイミン化合物、アルキルスルホネート、及びニトロソウレア、シスプラチン及びダカルバジン等のアルキル化作用を有する他の化合物等のアルキル化剤;例えば、葉酸、プリン又はピリミジンアンタゴニスト等の代謝拮抗剤;例えば、ビンカアルカロイド及びポドフィロトキシン誘導体等の有糸分裂阻害剤;及び細胞傷害抗体が含まれる。化学療法薬の特定の具体例は、例えば、D.J.Stewart in Nausea and Vomiting:Recent Research and Clinical Advances,J.Kucharczykら編集,CRC Press Inc.,Boca Raton,Florida,USA(1991年)177−203頁、特に188頁に開示されている。一般に用いられる化学療法薬には、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン及びクロラムブシルが含まれる[Cancer Treatment ReportsにおけるR.J.Grallaら、(1984年)68(1),163−172]。本発明の更なる側面は、ほ乳類における、時間生物学的(概日リズム位相シフト)効果の達成、及び概日リズム障害の軽減のための本発明の化合物の使用を含む。更に、本発明は、ほ乳類における、光の位相シフトを遮断するための本発明の化合物の使用に関する。
【0041】
更に、本発明は、ほ乳類における、睡眠の質の向上又は改善、並びに睡眠障害(sleep disorders)及び睡眠障害(sleep disturbances)の予防及び治療のための本発明の化合物、又はその医薬として許容される塩の使用に関する。特に、本発明は、睡眠の効率を向上し、睡眠の維持を増強することによる睡眠の質を向上又は改善する方法を提供する。更に、本発明は、本発明の化合物又はそれらの医薬として許容される塩を投与することを含む、ほ乳類における、睡眠障害(sleep disorders)及び睡眠障害(sleep disturbances)の予防又は治療方法を提供する。本発明は、精神障害(特に不安に関連)の結果として精神心理学的原因、薬物及びアルコールの使用及び乱用(特に退薬の段階)から発生する睡眠の開始及び維持の障害(不眠症)(DIMS)、幼児期発生DIMS、夜間性ミオクローヌス、線維筋痛、筋肉痛、睡眠時無呼吸症、及びレストレスレッグ、及び加齢において見られる非特異的REM障害等を含む睡眠障害(sleep disorders)の治療に有用である。
【0042】
本発明の特に好ましい実施態様は、本発明の化合物をこのような治療を必要とする患者(ヒト又はペット)に投与することによる、嘔吐、尿失禁、うつ病又は不安の治療である。
【0043】
本発明は、本発明の化合物を薬学的担体又は賦形剤と混合することを含む、ほ乳類において、その受容体部位におけるサブスタンスPの作用に拮抗するか、ニューロキニン−1受容体を遮断するための医薬の製造方法に関する。更に、本発明は、本発明の化合物を薬学的担体又は賦形剤と混合することを含む、ほ乳類において、過剰のタキキニンと関連する生理障害を治療するための医薬の製造方法に関する。
【0044】
本発明は、また、タキキニンを減少する量の、本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、過剰のタキキニン、特にサブスタンスPと関連する生理障害の治療又は予防方法を提供する。本明細書で用いられるように、「治療」又は「治療する」なる用語は、病状に苦しんでいるか、それらの臨床指標を示す患者(ヒト又は動物)において、記述された病状の症状、又は原因のいずれかを減少、改善又は除去するための本発明の化合物を投与することを意味する。「予防」又は「予防する」なる用語は、記述された病状を受けやすい患者(ヒト又は動物)において、上記病状の発生のリスク又は可能性を減少、改善又は除去するための本発明の化合物の投与を意味する。
【0045】
本発明の化合物は、治療を必要とするほ乳類において、胃腸病、中枢神経系障害、炎症性疾患、痛み又は偏頭痛及び喘息を治療することにおいて、タキキニン、特にサブスタンスPと拮抗するのに有用である。この活性は、以下のアッセイによって証明することができる。
【0046】
(COSにおける受容体発現):COS中で一過性にクローン化ヒトニューロキニン−1受容体(NK1R)を発現するため、ヒトNK1Rに対するcDNAを、アンピシリン耐性遺伝子(ブルースクリプトSK+からのヌクレオチド1973〜2964)をSac II部位に挿入することによりpCDM8(INVITROGEN)から由来する発現ベクターpCDM9にクローニングした。1000万個のCOS細胞への20μgのプラスミドDNAのトランスフェクションは、IBI GENEZAPPER(IBI,New Haven,CT)を用いて、260V及び950uFにおいて、800μlのトランスフェクションバッファー(135mM NaCl,1.2mM CaCl,1.2mM MgCl,2.4mM KHPO,0.6mM KHPO,10mM グルコース,10mM HEPES pH7.4)中でのエレクトロポレーションによって達成された。アッセイの前に、細胞を、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン−ストレプトマイシン及び90%DMEM培地(GIBCO,Grand Island,NY)中で、5%CO中、37℃にて3日間インキュベートした。
【0047】
(CHO中での安定な発現):
クローン化ヒトNK1Rを発現する安定な細胞系を確立するため、cDNAを、ベクターpRcCMV(INVITROGEN)中にサブクローニングした。CHO細胞中への20μgのプラスミドDNAのトランスフェクションは、IBI GENEZAPPER(IBI)を用いて、300V及び950uFにおいて、0.625mg/mlのニシンの精液DNAを補充した、800μlのトランスフェクションバッファー中でのエレクトロポレーションによって達成された。トランスフェクトされた細胞を、CHO培地[10%ウシ胎児血清,100U/mlペニシリン−ストレプトマイシン,2mMグルタミン,1/500ヒポキサンチン−チミジン(ATCC),90%IMDM培地(JRH BIOSCIENCES,Lenexa,KS),0.7mg/ml G418(GIBCO)]中で、5%CO中、37℃にて、コロニーが見えるようになるまでインキュベートした。各コロニーを分離して増殖させた。薬物スクリーニング等の、後の応用のために、最大数のヒトNK1Rを有する細胞クローンを選択した。
【0048】
(COS又はCHOを用いたアッセイプロトコール):COS又はCHO細胞のいずれかで発現されるヒトNK1Rの結合アッセイは、非標識のサブスタンスPと競合する放射性標識リガンドとしての125I−サブスタンスP(125I−SP、DU PONT,Boston,MA)又はヒトNK1Rと結合するための他のリガンドの使用に基づく。COS又はCHOの単層の細胞培養を、非酵素的溶液(SPECIALTY MEDIA,Lavallette,NJ)によって引き離し、200μlの細胞懸濁液が約10,000cpm(約50,000〜200,000細胞)の特定の125I−SP結合となるように、適当な容量の結合バッファー(50mM Tris pH7.5,5mM MnCl,150mM NaCl,0.04mg/mlバシトラシン、0.004mg/mlロイペプチン、0.2mg/ml BSA,0.01mMホスホラミドン)中に再懸濁した。結合アッセイ中に、20μlの1.5〜2.5nMの125I−SP、及び20μlの非標識サブスタンスP又は他の試験化合物を含む試験管に、200μlの細胞を加えた。試験管を、ゆっくり振盪しながら4℃又は室温で1時間インキュベートした。0.1%ポリエチレンイミンで予め湿潤させたGF/Cフィルター(BRANDEL,Gaithersburg,MD)を用いて、結合した放射能を結合していない放射能から分離した。フィルターを、3mlの洗浄バッファー(50mM Tris pH7.5,5mM Mncl,150mM NaCl)で3回洗浄し、放射能をガンマカウンターによって測定した。また、NK1RによるホスホリパーゼCの活性を、IPの分解産物であるイノシトール1リン酸の蓄積を測定することによって、ヒトNK1Rを発現するCHO細胞中で測定し得る。CHO細胞を、ウェルあたり250,000細胞になるように12穴プレートに播種する。CHO培地で4日間インキュベーションした後、細胞を、0.025μCi/mlのH−ミオイノシトールで一晩のインキュベーションにより負荷させる。細胞外放射能を、リン酸緩衝食塩水で洗浄することによって除去する。LiClを、試験化合物と共に、又は試験化合物なしで、最終濃度が0.1mMとなるようにウェルに加え、37℃でインキュベーションを15分間続ける。サブスタンスPを最終濃度が0.3nMとなるようにウェルに加え、ヒトNK1Rを活性化させる。37℃における30分間のインキュベーションの後、培地を除去し、0.1N HClを加える。各ウェルを4℃で超音波処理し、CHCl/メタノール(1:1)で抽出する。水相を1mlのダウエックスAG1X8イオン交換カラムにかける。カラムを0.1Nギ酸、次いで0.025Mギ酸アンモニウム−0.1Nギ酸で洗浄する。イノシトール1リン酸を、0.2Mギ酸アンモニウム−0.1Nギ酸で溶出し、ベータカウンターで定量した。特に、上記アッセイにおける、本発明の化合物の内因性のタキキニン受容体アンタゴニスト活性は、これらのアッセイによって証明することができる。
以下の実施例の化合物は、上記アッセイにおいて、0.05nM〜10μMの範囲の活性を有する。本発明の化合物の活性はLeiら(British J.Pharmacol.,105,261−262(1992年))によって開示されたアッセイによっても証明することができる。
【0049】
更なる、又は他の実施態様によれば、本発明は、身体内のタキキニン又はサブスタンスPの量を減少することが必要な患者に投与することができる組成物としての利用のための本発明の化合物を提供する。
【0050】
本明細書において用いられるように、「組成物」なる用語は、特定の成分を所定の量又は所定の割合で含む製品、並びに直接的又は間接的に、特定の量における特定の成分を組み合わせて生じる任意の製品を包含することを意図する。医薬組成物に関連するこの用語は、1以上の活性成分及び任意の不活性成分を含む担体を含む製品、並びに直接的又は間接的に、任意の2以上の成分の組み合わせ、複合体生成又は凝集、又は1以上の成分の分離、又は他のタイプの反応又は1以上の成分の相互作用から生じる任意の製品を包含することを意図する。一般に、医薬組成物は、液体担体又は超微粒子担体又はその両方に、均一かつ密接に活性成分を導入し、次いで、必要であれば、製品を所望の剤形に成形することによって調製される。医薬組成物において、目的の活性化合物は、疾患の進行又は状態によって所望の効果を引き起こすのに十分な量で含まれる。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と医薬として許容される担体とを混合することによって製造される任意の組成物が含まれる。「医薬として許容される」に関しては、担体、希釈剤又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合し、受容者にとって有害でないものでなければならないことを意味する。
【0051】
経口用途を意図する医薬組成物は、医薬組成物の製造についての分野で公知の任意の方法に従って製造することができ、このような組成物は、薬学的な優雅さ及び味の良さを与えるために、甘味剤、着香料、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤を含んでいてもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した、無毒の医薬として許容される賦形剤を含む混合物中に活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性賦形剤;コーンスターチ又はアルギン酸等の造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアラビアゴム等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等の滑沢剤であり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は、崩壊、胃腸管における吸収を遅らせ、その結果、長期間にわたった持続性作用を供給するための公知の技術によってコーティングされていてもよい。経口用途のための組成物は、活性成分が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン等の不活性固体賦形剤と混合されている硬ゼラチンカプセル、又は活性成分が、水又はピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油等の油性媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルとして存在することができる。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤を含む混合物中に活性成分を含む。油性懸濁液は、適当な油中に活性成分を懸濁することによって製造される。水中油系エマルジョンも使用することができる。水の添加による水性懸濁液の製造に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1以上の保存剤を含む混合物における活性成分を提供する。
【0052】
本発明の化合物の医薬組成物は、無菌水性注射剤、又は油脂性懸濁液の形態であってもよい。本発明の化合物は、また、直腸投与のための座剤の形態で投与されてもよい。局所用途のために、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁剤等を用いてもよい。本発明の化合物は、また、吸入による投与のために製剤化されてもよい。本発明の化合物は、また、当業界で公知の方法による経皮性パッチにより投与されてもよい。
【0053】
本発明の化合物を含有する組成物は、単位投与形態で存在してもよく、薬学の分野において周知の方法のいずれかによって製造することができる。「単一投与形態」なる用語は、患者、又は患者に薬物を投与する人が、そこに含まれる完全な服用量を含む単一の容器又はパッケージを開けることができ、2以上の容器又はパッケージからの成分を一緒に混合する必要がないような、全ての活性及び不活性な成分が適当なシステム中で混合されている単回投与を意味する。単一投与形態の典型的な具体例は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤、注射のための単一投与バイアル、又は直腸投与のための座剤である。この単一投与形態のリストは、決して限定されることを意図せず、単に、薬学の分野における単一投与形態の典型的な具体例を示すのみである。本発明の化合物を含む組成物は、また、活性又は不活性成分、担体、賦形剤等である2以上の成分が、患者、又は患者に薬物を投与する人による現実の投与形態の準備のための使用説明書と共に提供されるキットとして存在してもよい。このようなキットは、それらの中に含まれる全ての必要な材料及び成分と共に提供されるか、又は、患者、又は患者に薬物を投与する人が独立して得なければならない、材料又は成分を使用又は製造するための使用説明書を含んでいてもよい。
【0054】
「医薬として許容される」に関しては、担体、希釈剤又は賦形剤は、製剤の他の成分と適合し、受容者にとって有害でないものでなければならないことを意味する。
【0055】
化合物の「投与」又は「投与する」なる用語は、錠剤、カプセル剤、シロップ、懸濁液等の経口投与形態;IV、IM又はIP等の注射剤形態;クリーム、ゼリー、散剤又はパッチ等の経皮形態;舌下投与形態;吸入用の散剤、スプレー、懸濁液等;及び肛門座剤を含むがこれらに限定されない、治療的に有用な形態で治療的に有効な量で個々の身体に導入することができる形態で治療を必要とする個人に、本発明化合物を供給することを意味すると理解されるべきである。「治療的に有効な量」なる用語は、適当な組成物中の、及び言及された病状を治療又は予防するための適当な投与形態中の、本発明の化合物の十分な量を意味する。
【0056】
本発明の化合物は、本発明のタキキニン及びサブスタンスP阻害剤に対する補完性効果を有する他の物質と組み合わせて投与してもよい。したがって、嘔吐の予防又は治療において、本発明の化合物は、他の鎮吐薬、特にオンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パレノセトロン及びザチセトロン等の5HT3受容体アンタゴニスト、デキサメタゾン等のコルチコステロイド、バクロフェン等のGABA受容体アンタゴニストと共に用いられる。同様に、偏頭痛の予防又は治療のために、本発明の化合物は、エルゴタミン又は5HTアゴニスト等の他の抗偏頭痛薬、特にスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルマトリプタン又はリザトリプタンと共に用いられる。
【0057】
うつ病又は不安の治療のために、本発明の化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOIs)、モノアミンオキシダーゼの可逆的阻害剤(RIMAs)、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRIs)、α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、異型抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、5−HT1Aアゴニスト又はアンタゴニスト、特に5−HT1A部分アゴニスト、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、及びそれらの医薬として許容される塩等の、他の抗うつ薬又は抗不安薬と共に用いられると認められる。肥満、神経性過食症及び強迫性摂食障害等の摂食障害の治療又は予防のために、本発明の化合物は、他の食欲低下薬と共に用いられる。痛み又は痛覚又は炎症性疾患の治療又は予防のために、本発明の化合物は、麻薬アゴニスト、5−リポキシゲナーゼの阻害剤等のリポキシゲナーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤等のシクロオキシゲナーゼ阻害剤、インターロイキン−1阻害剤等のインターロイキン阻害剤、NMDAアンタゴニスト、酸化窒素の阻害剤又は酸化窒素の合成阻害剤、非ステロイド抗炎症剤、又はサイトカイン抑制性抗炎症剤等の抗炎症剤又は鎮痛剤と共に用いられると認められる。
【0058】
本明細書に開示されたいずれかの組み合わせを用いる場合、本発明の化合物及び他の活性成分が、合理的な期間内に患者に投与されることが認められる。化合物は、同一の医薬として許容される担体内にあってもよく、したがって同時に投与される。それらは、同時に摂取される、従来の経口投与形態等の別個の薬学的担体中にあってもよい。「組み合わせ」なる用語は、また、化合物が別個の投与形態で供給され、連続して投与されるケースも意味する。したがって、具体例として、1つの活性成分が錠剤として投与され、次いで、合理的な時間内に、第二の活性成分が、錠剤又は即溶性経口投与形態等のいずれかの経口投与形態として投与される。「即溶性経口製剤」に関しては、患者の舌の上に置かれた時に、約10秒以内に溶解する経口送達形態を意味する。「合理的な時間」に関しては、約1時間を超えない時間を意味する。すなわち、例えば、第一の活性成分が錠剤として供給された場合、1時間以内に、薬物の効果的な送達を与える、同じタイプの投与形態又は他の投与形態のいずれかで第二の活性成分が投与されるべきである。
【0059】
本発明の化合物は、最適な薬学的効果を与える投与量で、治療を必要とする患者(人、及び犬、猫及び馬等のペットを含む動物)に投与される。任意の特定の応用に用いられるのに必要な投与量は、選択された特定の化合物又は組成物のみならず、投与経路、治療される病状の性質、患者の年齢及び病状、同時に投与する薬物又は特定の食事と当業者に公知の他の要因によって、患者によって異なり、適切な投与量は、最終的には付き添いの医師の自由裁量による。
【0060】
過剰のタキキニンに関連する病状の治療においては、本発明の化合物又はその医薬として許容される塩の適切な投与量は、1日あたり約0.001〜50mg/kgであり、特には約0.01〜約25mg/kgであり、例えば1日あたり約0.05〜約10mg/kgである。投与量の範囲は、一般に、1日あたり患者につき、単一又は複数で投与される約0.5〜1000mgである。好ましくは、投与量の範囲は、1日あたり患者につき約0.5mg〜500mgであり、更に好ましくは、1日あたり患者につき約0.5mg〜200mgであり、更に好ましくは、1日あたり患者につき約5mg〜50mgである。投与のための、本発明の化合物、又はその医薬として許容される塩の特定の投与量は、1mg、5mg、10mg、30mg、100mg及び500mgを含む。本発明の医薬組成物は、約0.5mg〜1000mgの活性成分を含有する、更に好ましくは約0.5mg〜500mgの活性成分を含有する、又は0.5mg〜250mgの活性成分、又は1mg〜100mgの活性成分を含有する製剤中に供給される。過剰のタキキニンの治療又は予防のための特定の医薬組成物は、約1mg、5mg、10mg、30mg、100mg、及び500mgの活性成分を含有する。
【0061】
本発明の化合物を製造するためのいくつかの方法は、以下の実施例において明らかにされる。いくつかのケースにおいて出発原料及び必要な中間体は市販されているか、又は文献の製法又は本明細書に示されるようにして製造することができる。全てのNMRスペクトルは、δとして報告された化学シフトを用いて、CDCl又はCDODのいずれかの中での400又は500MHzの磁界の強さにおける計測によって得られた。HPLC/MS解析は、Waters Micromass ZQ質量分析計を組み合わせ、Agilent 1100シリーズHPLCを用いて得られた。HPLC RPカラムは5.50分の実効時間で3.75分を超える10〜100%勾配アセトニトリル/水(いずれも0.05%TFAを含む)で溶出する、Waters Exterra MS−C18(5μm)3.0x50mmカラムであった。UV監視は210nMで実施された。保持時間(Rt)は、MSデータに基づき、分で報告される。報告されたm/e値は、同様に示されたように、100%のイオンが親イオンでない時を除き、通常は親分子イオンである。指摘した25×250mmのChiracelカラムを用い、指摘した割合のイソプロパノール/ヘプタン混合溶媒を用い、9mL/分の溶出で分取用キラルHPLCが行われた。保持時間(Rt)は、210又は254nmで記録したUVクロマトグラムに基づき、分で報告される。
【0062】
実施例1
tert−ブチル (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
工程A: tert−ブチル 3−(4−フルオロフェニル)−4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート
アルゴン充填バルーンを備えた丸底フラスコに、5.0g(25.1ミリモル)のN−BOC 4−ピペリドン、2.89gのナトリウムtert−ブトキシド(30.1ミリモル)、0.056gの酢酸パラジウム(0.30ミリモル)及び0.183gの2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル(0.5ミリモル)を装填した。150mLのTHFを加え、次いで4−フルオロ−1−ブロモベンゼンを加えた。5回の排気/アルゴンサイクルの後、反応物を80℃まで24時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム(水)溶液を用いてクエンチし、セライトのパッドでろ過し、該パッドを大量の酢酸エチルで洗浄した。相を分離した後、有機相を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮し、シリカゲル(1〜15%EtOAc/ヘキサン直線勾配(linear gradient);次いで15%EtOAc/ヘキサン)で精製した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDCl):δ1.53(s,9H),2.54−2.64(m,2H),3.40−3.60(m,2H),3.64−3.76(m,1H),4.18−4.40(m,2H),7.07(dd,2H,J=9,9Hz),7.17(dd,2H,J=6,9Hz)ppm
【0063】
工程B: トランス−tert−ブチル 3−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシレート
工程A由来の、4.61g(15.7ミリモル)のケトンの、冷却した(−78℃)200mLのジエチルエーテルの溶液に、1.0MのLAH溶液(THF中)を加えた。反応物を、この温度で7時間撹拌し、反応を、HO(0.72mL),5N NaOH(0.72mL)及びHO(2.16mL)の連続的な添加によって停止した。混合物を、室温まで一晩加温した。次いで、反応混合物をセライトのパッドでろ過し、大量のEtOAcで洗浄し、減圧下に濃縮し、粗製の残留物をシリカゲル(10〜40%EtOAc/ヘキサンの直線勾配(linear gradient)で溶出)で精製し、より高極性のトランス−ジアステレオマー3.71gを得た。また、粗製の残留物を20%EtOAc/ヘキサンから再結晶し、純粋なトランス−ジアステレオマーを得ることができる。H−NMR(CDCl):δ1.50(s,9H),2.05−2.12(m,1H),2.58−2.66(m,1H),2.70−3.00(m,3H),3.85(ddd,1H,J=5,11,11Hz),4.00−4.30(m,2H),7.05−7.12(m,2H),7.24−7.30(m,2H)ppm
【0064】
工程C: (1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル 2,2,2−トリクロロエタンイミドエート
窒素雰囲気下で、25.82g(100ミリモル)の(1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノールの、200mLの乾燥ジエチルエーテル溶液を、氷/水浴中で冷却した。該反応フラスコに、きれいな3mL(20ミリモル、0.2当量)のDBUを加え、次いで、混合物を0℃で10分間撹拌した。ゆっくりと、15mL(150ミリモル、1.5当量)のトリクロロアセトニトリルを15分以上かけて滴下して加えた。反応物を、0℃で2時間撹拌し、この時間で反応物が深い黄色になった。冷浴(<35℃)を用いて減圧下に、揮発性成分を除去し、ヘキサン/EtOAc(9/1)、次いでヘキサン/EtOAc(4/1)で溶出する2個のバッチ中のシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3インチ×10インチのパッド)によって精製される、薄茶色の流動性液体を得た。生成物画分を一緒にし、溶媒を減圧下に除去し、薄い黄色のオイルとして標題の化合物を得た。H−NMR(CDCl):δ:1.74(d,3H,6.5Hz),6.07(q,1H,6.5Hz),7.82(s,1H),7.86(s,2H),8.40(br.s,1H)ppm
【0065】
工程D: tert−ブチル (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−カルボキシレート
9.0gの工程Bからのトランス−ラセミ化合物のアルコール(30.05ミリモル)の、シクロヘキサン−1,2,−ジクロロエタンの2:1混合物(360mL)の冷却した溶液(−5℃)に、24.53gの(1S)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル−2,2,2−トリクロロエタンイミドエート(61.0ミリモル)、次いで、54%のHBF(0.5mL、ジエチルエーテル中)を加えた。18時間後、追加の0.5mLのHBFを加え、次いで、反応物を−5℃に更に6時間維持し、この時間に反応混合物をEtOAcで希釈した。有機物を、NaHCOの飽和溶液、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮した。粗製の残留物をシリカゲル(1〜15%EtOAc/ヘキサンの直線勾配(linear gradient)を用いた溶出)で精製した。これにより、所望のジアステレオマー、及びいくつかの出発原料のアルコールが提供された。H−NMR(CDCl):δ1.35(d,3H,J=7Hz),1.50(s,9H),1.56−1.64(m,1H),2.16−2.24(m,1H),2.66−2.90(m,3H),3.39(ddd,1H,J=5,11,11Hz),3.90−4.40(m,2H),4.54(q,1H,J=7Hz),6.92(dd,2H.J=9,9Hz),7.01(dd,2H,J=6,9Hz),7.30(s,2H),7.73(s,1H)ppm
【0066】
工程D: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジニウムクロライド
2.5gの、工程Cから得られたN−BOC保護ピペリジン(4.66ミリモル)の10mL−EtOAc溶液に、HCl(EtOAc中)の飽和溶液を加えた。溶液を、3時間静置し、この時間で揮発性成分を減圧下で除去した。粗製の塩をジエチルエーテルによって高い純度に粉砕した。遊離塩基形態を得るため、HCl塩をDCMに懸濁し、NaHCOの飽和溶液で処理した。水層をDCMで抽出した。一緒にした有機層を、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮し、粗製の残留物をシリカゲルで精製し(10%メタノール/DCMを用いて溶出)、標題の化合物((3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン)の遊離塩基形態を得た。H−NMR(CDOD):δ1.29(d,3H,J=7Hz),1.53(dddd,1H,J=5,13,13,13Hz),2.30−2.37(m,1H),2.55−2.70(m,3H),2.90−2.95(m,1H),3.47(ddd,1H,J=5,11,11Hz),4.69(q,1H,J=7Hz),6.84(dd,2H,J=9,9Hz),7.03(dd,2H,J=6,9Hz),7.41(s,2H),7.73(s,1H)ppm
【0067】
実施例2
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,4’−ビピペリジン
工程A: tert−ブチル (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,4’−ビピペリジン−1’−カルボキシレート
実施例1の工程Eにおける中間体の遊離塩基形態(100mg、0.2294ミリモル)を、4mLのTHF中の55mgのtert−ブチル 4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(0.2752ミリモル)と一緒にし、次いで91mgのチタン(IV)イソプロポキシド(0.963ミリモル)を滴下して加えた。反応物を24時間撹拌し、この時間で反応物を2mLのメタノールで希釈し、11mgの水素化ホウ素ナトリウムを加えた。30分後、NaHCOの飽和溶液を用いて反応を停止させた。20分後、水層をDCMで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して減圧下に濃縮した。粗製の残留物をシリカゲルプレートで精製し、5%メタノール/DCMで溶出した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDOD):δ1.31(d,3H,J=7hz),1.36−1.42(m,2H),1.44(s,9H),1.60−1,70(m,1H),1.80−1.90(m,2H),2.30−2.40(m,3H),2.46−2.54(m,1H),2.60−2.90(m,4H),3.08−3.14(m,1H),3.38(dt,1H,J=4,10Hz),4.10(d,1H,J=13Hz),4.70(q,1H,J=7Hz),6.86(dd,2H,J=9Hz),7.06(dd,2H,J=6,9Hz),7.41(s,2H),7.74(s,1H)ppm
【0068】
工程B: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,4’−ビピペリジニウムジクロライド
実施例2の工程Aの中間体(29mg)を、2mLのEtOAcに溶解し、過剰のHClのEtOAc飽和溶液を加えた。反応混合物を室温に3時間静置し、この時間で減圧下に揮発性成分を除去した。粗製の塩をNaHCOの飽和溶液で処理し、得られた水層をDCMで数回抽出した。一緒にした有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下に濃縮し、粗製の残留物をシリカゲルプレートで精製し、9:1のDCM−メタノールで溶出した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDOD):δ1.33(d,3H,J=7Hz),1.90−2.5(m,3H),2.36−2.46(m,2H),2.64−2.72(m,1H),3.04−3.14(m,2H),3.20−3.28(m,1H),3.46−3.52(m,2H),3.54−3.80(m,6H),4.73(q,1H,J=7Hz),6.93(dd,2H,J=9Hz),7.17(dd,2H,J=6,(Hz),7.42(s,2H),7.77(s,1H)ppm.MS:(MH)519
【0069】
工程C: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,4’−ビピペリジン
実施例2の工程Bの中間体(18mg、0.0305ミリモル)を5mLのメタノールに溶解し、31mgのトリエチルアミン(0.3046ミリモル)で処理した。数分後、11mgの2−クロロピラジンを加え、反応物をシールド管中で80℃にて24時間加熱した。減圧下に揮発性成分を除去し、粗製の残留物をシリカゲルプレートに直接のせ、10%メタノール/DCMで溶出した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDOD):δ1.34(d,3H,J=7Hz),1.76−1.88(m,2H),1.90−2.20(m,2H),2.20−2.32(m,2H),2.64−2.74(m,1H),3.06−3.20(m,3H),3.24−3.32(m,2H),3.44−3.52(m,1H),3.58−3.78(m,3H),4.62−4.68(m,2H),4.73(q,1H,J=7Hz),6.94(dd,2H,J=9Hz),7.16(dd,2H,6,9Hz),7.42(s,2H),7.78(s,1H),7.87(d,1H,J=3Hz),8.41(s,1H),8.50(d,1H,J=3Hz)ppm.MS:(MH)597
【0070】
実施例3
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−ピロリジニウム−3−イルピペリジニウムジクロライド
工程A: tert−ブチル 3−[(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル]ピロリジン−1−カルボキシレート
実施例1の工程Eにおける中間体の遊離塩基形態(126mg、0.2897ミリモル)を、5mLのTHF中の67mgのtert−ブチル 3−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(0.3622ミリモル)と一緒にし、実施例2の工程Aに記載した一般のプロトコールに従い、165mgのチタン(IV)イソプロポキシド(0.5795ミリモル)を滴下して加えた。H−NMR(CDOD):δ1.31(d,3H,J=6Hz),1.40−1.50(m,9H),1.70−1.82(m,2H),2.04−2.10(m,1H),2.12−2.28(m,2H),2.32−2.40(m,1H),2.70−2.86(m,3H),2.96−3.30(m,3H),3.40(ddd,1H,J=5,6,6Hz),3.44−3.70(m,3H),4.70(q,1H,J=6Hz),6.87(dd,2H,J=9,9Hz),7.07(dd,2H,J=6,9Hz),7.42(s,2H),7.75(s,1H)ppm.MS:(MH)605
【0071】
工程B: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,4’−ビピペリジニウムジクロライド
実施例3の工程Aの中間体を2mLのEtOAcに溶解し、過剰のHClのEtOAc飽和溶液を加えた。反応混合物を室温に3時間静置し、この時間で減圧下に揮発性成分を除去した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDOD):δ1.34(d,3H,J=7Hz),2.02−2.14(m,1H),2.32−2.70(m,3H),3.20−3.40(m,5H),3.42−3.78(m,5H),3.79−3.86(m,1H),4.00−4.12(m,1H),4.72(q,1H,J=7Hz),6.94(dd,2H,J=9,9Hz),7.16(dd,2H,J=6,9Hz),7.42(s,2H),7.78(s,1H)ppm.MS:(MH)505
【0072】
実施例4
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,3’−ビピペリジン
工程A: tert−ブチル (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,3’−ビピペリジン−1’−カルボキシレート
実施例1の工程Eの中間体の遊離塩基形態(67mg、0.1537ミリモル)を、2mLの1,2−ジクロロエタン中の31mgのtert−ブチル 3−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(0.1556ミリモル)と一緒にし、60mgのジイソプロピルエチルアミン(0.4610ミリモル)及び65mgのトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.3073ミリモル)を連続的に加えた。NaHCOの飽和溶液を用いて反応を停止させた。20分後、水層をEtOAcで数回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下に濃縮した。粗製の残留物をシリカゲルプレートで精製し、40%EtOAc/ヘキサンで溶出した。これにより、標題の化合物が提供された。MS:(MH)619
【0073】
工程B: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1,3’−ビピペリジニウムジクロライド
実施例4の工程Aの中間体を、実施例2の工程Bに記載した一般的な条件下でHClと反応させた。これは、標題の化合物を与えた。MS:(MH)519
【0074】
工程C: (3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,3’−ビピペリジン
実施例4の工程Bの中間体(18mg、0.0305ミリモル)を2.5mLのメタノールに溶解し、46mgのトリエチルアミン(0.4569ミリモル)で処理した。数分後、18mgの2−クロロピラジン(0.1523ミリモル)を加え、反応物をシールド管中で80℃まで24時間加熱した。減圧下に揮発性成分を除去し、粗製の残留物をシリカゲルプレートに直接のせ、75%EtOAc/ヘキサンで溶出した。これにより、標題の化合物が提供された。H−NMR(CDOD):δ1.30(d,3H,J=7Hz),1.48−1.70(m,2H),1.78−1.88(m,1H),1.00−2.10(m,1H),2.30−2.56(m3H),2.76−3.10(m,3H),3.10−3.25(m,2H),3.36−3.42(m,1H),4.16−4.24(m,1H),4.50−4.60(m,1H),4.70(q,1H,J=7Hz),6.82−6.90(m,2H),7.20−7.30(m,2H),7.42(s,2H),7.70(dd,1H,J=3,3Hz),7.74(s,1H),8.02−8.06(m,1H),8.14−8.18(m,1H)ppm
【0075】
表1
上述した実施例に記載したような適当な置換試薬を置換した以外は、上述した方法を用いて、表1の化合物を合成した。必須の出発原料は商業的に入手するか、文献に記載されているか、又は過度の実験なしで有機合成の分野における当業者によって容易に合成される。
【0076】
【表1】

【0077】
本発明がその特定の実施態様に関して記述・説明されるが、当業者は、方法及び手順のさまざまな適合、変化、修飾、置換、除去又は追加が本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、実施され得ると認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、Qは、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、及び
(3)C1−6アルキル−OH
からなる群から選択され;

Xは、
(1)単結合、
(2)−CO−、及び
(3)−C1−6アルケニル
からなる群から選択され;

は、
(1)ピロリジニル、
(2)ピペリジニル、
(3)ピペラジニル、及び
(4)モルホリニル
からなる群から選択され、それらはR1a、R1b及びR1c(ここにおいてR1a、R1b及びR1cは、独立して、
(a)水素、
(b)C1−6アルキル、
(c)(C1−6アルキル)−フェニル、
(d)(C1−6アルキル)−ヒドロキシ、
(e)(C1−6アルキル)−(C1−4アルコキシ)、
(f)ヒドロキシ、
(g)オキソ、
(h)C1−6アルコキシ、
(i)フェニル−C1−3アルコキシ、
(j)フェニル、
(k)−CN、
(l)ハロ、
(m)−NR10{ここでR及びR10は、独立して、
(I)水素、
(II)C1−6アルキル、
(III)フェニル
(IV)(C1−6アルキル)−フェニル、
(V)(C1−6アルキル)−ヒドロキシ、及び
(VI)(C1−6アルキル)−(C1−4アルコキシ)から選択される}、
(n)−NR−COR10
(o)−NR−CO10
(p)置換されていないか、又はC1−6アルキル若しくはハロで置換されている複素環であって、
(A)イミダゾリル、
(B)イソオキサゾリル、
(C)オキサジアゾリル、
(D)オキサゾリル、
(E)ピラジニル、
(F)ピラゾリル、
(G)ピリダジニル、
(H)ピリジル、
(I)ピリミジル、
(J)ピロリル、
(K)キノリル、
(L)テトラゾリル、及び
(M)トリアゾリルからなる群から選択される複素環、
(q)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている−シクロペンテノン、
(r)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている−NR−シクロペンテノン、
(s)−CO−NR10
(t)−SO−NR10
(u)−SO−NR10
(v)−COR、及び
(w)−COから選択される)で置換され;

、R及びRは、独立して、
(1)水素、
(2)C1−6アルコキシ、
(3)ハロ、
(4)置換されていないか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1−6アルコキシ、
(d)フェニル−C1−3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択される1又はそれ以上の置換基で置換されているC1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−CN、
(7)−CF
(8)−NO
(9)−SR14{ここにおいてR14は水素又はC1−6アルキルである}、
(10)−SOR14
(11)−SO14
(12)−NR−COR10
(13)−CO−NR−COR10
(14)−NR10
(15)−NR−CO10
(16)−COR、及び
(17)−COからなる群から選択され;

11、R12及びR13は、独立して、
(1)水素、
(2)置換されていないか、又は
(a)ヒドロキシ、
(b)オキソ、
(c)C1−6アルコキシ、
(d)フェニル−C1−3アルコキシ、
(e)フェニル、
(f)−CN、
(g)ハロ、
(h)−NR10
(i)−NR−COR10
(j)−NR−CO10
(k)−CO−NR10
(l)−COR
(m)−COから選択される、1又はそれ以上の置換基で置換されているC1−6アルキル;
(3)ハロ、
(4)−CN、
(5)−CF
(6)−NO
(7)ヒドロキシ、
(8)C1−6アルコキシ、
(9)−COR、及び
(10)−COからなる群から選択される]で表される化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項2】
式Ia:
【化2】

で表される、請求項1記載の化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項3】
式Ib:
【化3】

で表される、請求項2記載の化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項4】
式Ic:
【化4】

で表される、請求項3記載の化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項5】
式Id:
【化5】

で表される、請求項3記載の化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項6】
式Ie:
【化6】

で表される、請求項3記載の化合物、その医薬として許容される塩、又はその個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー。
【請求項7】
が、
(1)ピロリジニル、及び
(2)ピペリジニルからなる群から選択され、それらがR1a、R1b及びR1cで置換されている、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
1a、R1b及びR1cが、独立して、
(a)水素、
(b)置換されていないか、又はC1−6アルキル若しくはハロで置換されている複素環であって、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択される複素環;
(c)置換されていないか、又はC1−6アルキルで置換されている−シクロペンテノンから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
1a、R1b及びR1cの2つが水素であり、R1a、R1b及びR1cの1つが、独立して、
(a)置換されていないか、又はメチル若しくはブロモで置換されている複素環であって、
(A)オキサジアゾリル、
(B)ピラジニル、
(C)ピリジル、
(D)ピリミジル、及び
(E)トリアゾリルからなる群から選択される複素環;
(b)置換されていないか、又はメチルで置換されている−シクロペンテノン
から選択される、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
、R及びRが、独立して、
(1)水素、及び
(2)−CF
からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
11、R12及びR13が、独立して、
(1)水素、及び
(2)−フルオロ
からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,4’−ビピペリジン;
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1−ピロリジニウム−3−イルピペリジニウム;
(3S,4S)−4−{(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}−3−(4−フルオロフェニル)−1’−ピラジン−2−イル−1,3’−ビピペリジンからなる群から選択される化合物、又はその医薬として許容される塩。
【請求項13】
不活性担体、及び請求項1記載の化合物又はその医薬として許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項14】
本発明の化合物又はその医薬として許容される塩を、薬学的担体又は賦形剤と混合することを含む、ほ乳類においてサブスタンスPの効果を、その受容体部位において拮抗するか、又はニューロキニン−1受容体を遮断するための医薬を製造する方法。
【請求項15】
本発明の化合物又はその医薬として許容される塩を、薬学的担体又は賦形剤と混合することを含む、ほ乳類における過剰のタキキニンと関連する生理障害の治療のための医薬を製造する方法。

【公表番号】特表2008−520714(P2008−520714A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543308(P2007−543308)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041961
【国際公開番号】WO2006/057921
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】