説明

ピラー上部構造

【課題】ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を高めることを目的とする。
【解決手段】Bピラー10(ピラー)のピラーインナリインフォースメント22(内側部材)の上部が、該Bピラー10のピラーアウタリインフォースメント24(外側部材)の一般部24Aに結合されており、該ピラーインナリインフォースメントの上部がルーフサイドレールのフランジに結合されている従来構造と比較して、該ピラーインナリインフォースメント22の上部が、車両正面視において車両上方に略直線状に延びた状態となっている。従って、車両転覆時のように車両上方からの荷重がルーフサイドレール12に入力された際には、該荷重をBピラー10の軸方向、即ち車両上下方向で受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラー上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフサイドレールの縦リブ壁と交差配置したピラーアウタの複数の縦リブ壁とにより、ルーフサイドレールに作用する下向きの曲げ荷重を、センターピラーの軸方向で受けて、該センターピラー全体に分散させると共に、側面衝突時の荷重を、複数の縦リブ壁を介して、ルーフサイドレールに対して突上げ方向の荷重として分散させるようにした自動車の車体上部構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−2236号公報
【特許文献2】特開2006−192998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来例のように、センターピラー等のピラーの上端部は、一般にオープニングフランジ部となっており、該オープニングフランジ部がルーフサイドレールに結合されている。
【0004】
しかしながら、このオープニングフランジ部は、車両の意匠上の制約により、車両前方から見て曲率を持った形状となっていることが多く、車両のルーフサイドレールに対して車両上方からの荷重が入力された場合の荷重伝達については、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、インナパネルとアウタパネルとによる閉断面構造を有して構成され、車両上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレールと、車幅方向における内側部材と外側部材とによる閉断面構造を有して構成され、車両側部において車両上下方向に延び車両上方側端部において前記ルーフサイドレールに連結されたピラーと、を備え、前記内側部材の上部が、前記外側部材の一般部に結合されていること、を特徴としている。
【0007】
請求項1に記載のピラー上部構造では、ピラーの内側部材の上部が、該ピラーの外側部材の一般部に結合され、該内側部材の上部がルーフサイドレールのフランジに結合されている従来構造と比較して、該内側部材の上部が、車両正面視において車両上方に略直線状に延びた状態となっている。従って、車両転覆時のように車両上方からの荷重がルーフサイドレールに入力された際には、該荷重をピラーの軸方向、即ち車両上下方向で受けることができる。これにより、ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を高めることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のピラー上部構造において、前記内側部材は、前記ルーフサイドレールと近接対向して設けられ、前記ピラーに車両側方からの荷重が入力された際に該荷重を前記ルーフサイドレールへ伝達する第1荷重伝達面を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のピラー上部構造では、ピラーの内側部材が、ルーフサイドレールと近接対向した第1荷重伝達面を有しているので、車両の側面衝突時等にピラーに車両側方からの荷重が入力された際には、該荷重が、第1荷重伝達面からルーフサイドレールへ伝達される。このため、側面衝突時等におけるピラーからルーフサイドレールへの荷重伝達効率を更に高めることが可能である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のピラー上部構造において、前記内側部材は、前記ルーフサイドレールと近接対向して設けられ、前記ルーフサイドレールに車両上方からの荷重が入力された際に該荷重が伝達される第2荷重伝達面を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載のピラー上部構造では、ピラーの内側部材が、ルーフサイドレールと近接対向した第2荷重伝達面を有しているので、車両の転覆時等にルーフサイドレールに車両上方からの荷重が入力された際には、該荷重が第2荷重伝達面に伝達される。このため、車両転覆時等におけるルーフサイドレールがピラーへの荷重伝達効率を高めることが可能である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のピラー上部構造において、前記第1荷重伝達面及び前記第2荷重伝達面が、前記内側部材の一般部から車幅方向内側へ突出形成されると共に、前記第2荷重伝達面が、前記第1荷重伝達面よりも車両下方に設けられ、前記ルーフサイドレールのうち車幅方向外側に張出した張出し部が、前記第1荷重伝達面と前記第2荷重伝達面との間の谷間に配置されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載のピラー上部構造では、第1荷重伝達面及び第2荷重伝達面が、夫々内側部材の一般部から車幅方向内側へ突出形成され、第2荷重伝達面が第1荷重伝達面よりも車両下方に設けられ、ルーフサイドレールのうち車幅方向外側に張出した張出し部が、第1荷重伝達面と第2荷重伝達面との間の谷間に配置されているので、車両の側面衝突や転覆により車体が変形しても、ルーフサイドレールの張出し部とピラーの内側部材との位置関係が安定している。このため、ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を、より一層高めることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のピラー上部構造によれば、ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0015】
請求項2に記載のピラー上部構造によれば、側面衝突時等におけるピラーからルーフサイドレールへの荷重伝達効率を更に高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項3に記載のピラー上部構造によれば、車両転覆時等におけるルーフサイドレールがピラーへの荷重伝達効率を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0017】
請求項4に記載のピラー上部構造によれば、ルーフサイドレールとピラーとの間での荷重伝達効率を、より一層高めることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係るピラー上部構造S1は、例えば片側3本のピラーを有する車両におけるBピラー10の上部の構造に係り、ルーフサイドレール12と、該Bピラー10とを有している。
【0020】
ルーフサイドレール12は、インナパネル14とアウタパネル16とによる閉断面構造を有して構成された骨格部材であり、車両上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びている。インナパネル14は車両内側に凸となる断面ハット形に形成され、またアウタパネル16は車両外側に凸となる断面ハット形に形成されている。インナパネル14及びアウタパネル16は、例えば車幅方向内側のフランジ18と、車幅方向外側のフランジ20とにおいて接合されており、これによってルーフサイドレール12が閉断面構造に構成されている。フランジ20は、ルーフサイドレール12のうち車幅方向外側に張出した張出し部の一例である。車幅方向内側のフランジ18は、図示しない例えばルーフパネルやルーフクロスメンバと接合されている。
【0021】
Bピラー10は、車幅方向における内側部材の一例たるピラーインナリインフォースメント22と外側部材の一例たるピラーアウタリインフォースメント24とによる閉断面構造を有して構成され、車両側部において車両上下方向に延び、車両上方側端部においてルーフサイドレール12に連結されている。
【0022】
図1,図2に示されるように、ピラーアウタリインフォースメント24は、車幅方向外側に凸となる断面ハット形に構成されており、車両前後方向の両縁にフランジ24Fが形成され、該フランジ24F間の部位が、車両内側から見て車幅方向外側に凹んだ一般部24Aとなっている。また図1において、ピラーアウタリインフォースメント24は、例えば車両上方に向かうに従って、次第に車幅方向内側に湾曲している。
【0023】
ピラーアウタリインフォースメント24の上部には、ルーフサイドレール12におけるアウタパネル16に対して車幅方向外側から重ねて接合される接合面24Bが設けられている。上記したピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aは、例えばこの接合面24Bの下縁まで車両上方に延設されている。一般部24Aは、例えば平坦な面として構成されている。ピラーアウタリインフォースメント24は、例えば鋼板をプレス成形して構成されており、各部位が一体成形されている。
【0024】
図1,図2に示されるように、ピラーインナリインフォースメント22は、例えば車幅方向内側に凸となる断面ハット形に構成されており、車両前後方向の両縁にフランジ22Fが形成され、該フランジ22F間の部位が、車幅方向内側に突出した一般部22Aとなっている。この一般部22Aと車両前側のフランジ22Fとの間は、前壁部22Bとなっており、一般部22Aと車両後側のフランジ22Fとの間は、後壁部22Cとなっている。
【0025】
図2に示されるように、一般部22A、前壁部22B及び後壁部22Cは、フランジ22Fよりも車両上方まで延設されている。一般部22Aの上縁には、例えばピラーアウタリインフォースメント24の接合面24Bと接合されるフランジ22Dが設けられている。前壁部22B及び後壁部22Cの上縁には、ピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aと例えば接合されるフランジ22Eが夫々形成されている。ピラーインナリインフォースメント22の上部は、このフランジ22Eにおいてピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aに結合され、またフランジ22Dにおいてピラーアウタリインフォースメント24の接合面24Bに結合されている(図3も参照)。なお、ピラーインナリインフォースメント22の上部とピラーアウタリインフォースメント24との結合状態は、上記の構成や図示の構成には限られない。
【0026】
なお、ピラーアウタリインフォースメント24の接合面24Bにおけるフランジ22Dの接合領域に、該フランジ22Dの板厚に対応した凹部を設けるようにしてもよい。フランジ22Dを接合面24Bと面一状態にすることができ、ピラーアウタリインフォースメント24をルーフサイドレール12に対して段差なく接合することが可能となるからである。
【0027】
ピラーインナリインフォースメント22は、ルーフサイドレール12と近接対向して設けられ、Bピラー10に車両側方からの荷重が入力された際に該荷重をルーフサイドレール12へ伝達する第1荷重伝達面22Gを有している。具体的には、第1荷重伝達面22Gは、ピラーインナリインフォースメント22の一般部22Aの例えば上端に設けられており、該一般部22Aから車幅方向内側へ突出形成されている。この第1荷重伝達面22Gは、例えば車両正面視で三角形に形成された第1突出部22Jの車両上方側の面である。図1に示されるように、第1荷重伝達面22Gは、ルーフサイドレール12におけるアウタパネル16に近接対向している。図1に示されるように、車両正面視における突出部22Jの輪郭は、該アウタパネル16の側面からフランジ20にかけての形状に対応している。なお、本願明細書における近接対向には、対向する部位同士が互いに当接している場合も含まれる。
【0028】
またピラーインナリインフォースメント22は、ルーフサイドレール12と近接対向して設けられ、ルーフサイドレール12に車両上方からの荷重が入力された際に該荷重が伝達される第2荷重伝達面22Hを有している。具体的には、第2荷重伝達面22Hは、第1荷重伝達面22Gよりも車両下方において、一般部22Aから車幅方向内側へ突出形成されている。この第2荷重伝達面22Hは、例えば車両正面視で三角形に形成された第2突出部22Kの車両上方側の面である。
【0029】
第1突出部22J及び第2突出部22Kは、車両上下方向に並んで設けられ、かつ夫々車幅方向内側に突出していることから、該第1荷重伝達面22Gと第2荷重伝達面22Hとの間には、谷間26が形成されている。図1に示されるように、この谷間26には、ルーフサイドレール12の車幅方向外側のフランジ20が配置されている。
【0030】
そしてBピラー10及びルーフサイドレール12の車幅方向外側には、サイドメンバアウタパネル28が設けられている。このサイドメンバアウタパネル28の上部は、ルーフサイドレール12を覆っており、該上部の車幅方向内側の端部は、ルーフサイドレール12の車幅方向内側のフランジ18に接合されている。
【0031】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図4(A)において、ピラー上部構造S1では、Bピラー10のピラーインナリインフォースメント22が、ルーフサイドレール12と近接対向した第1荷重伝達面22Gを有しているので、ピラー上部構造S1を有する車両に側面衝突等が生じ、Bピラー10に対して車両側方からの荷重FSが入力された際には、例えば第1荷重伝達面22Gがルーフサイドレール12に当接することで、該荷重FSのうちの例えば荷重F1が第1荷重伝達面22Gからルーフサイドレール12へ伝達される。該ルーフサイドレール12へ伝達された荷重F1は、フランジ18に接合された図示しないルーフパネルやルーフクロスメンバ等を介して、更に車幅方向反対側へと伝達される。
【0032】
ここで、ピラー上部構造S1では、ピラーインナリインフォースメント22とルーフサイドレール12とが剛体結合されていないので、Bピラー10が車幅方向内側へ変形しても、ルーフサイドレール12にモーメントが生じ難く、荷重F1を該ルーフサイドレール12やルーフクロスメンバ等へ、より直接的に伝達することができる。
【0033】
またピラー上部構造S1では、ピラーインナリインフォースメント22が、ルーフサイドレール12と近接対向した第2荷重伝達面22Hを有している。従って、図4(B)に示されるように、車両の転覆時等にルーフサイドレール12に車両上方からの荷重FUが入力された際には、例えば該ルーフサイドレール12の車幅方向外側のフランジ20が第2荷重伝達面22Hに当接することで、該荷重のうちの例えば荷重F2が第2荷重伝達面22Hに伝達される。
【0034】
ここで、ピラー上部構造S1では、Bピラー10のピラーインナリインフォースメント22の上部が、該Bピラー10のピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aに結合され、該ピラーインナリインフォースメント22の上部がルーフサイドレール12のフランジ20に結合されている従来構造と比較して、該ピラーインナリインフォースメント22の上部が、車両正面視において車両上方に略直線状に延びた状態となっている。これにより、Bピラー10の図心が、従来構造よりも車幅方向外側に移動しているので、ルーフサイドレール12から第2荷重伝達面22Hに伝達された荷重F2は、Bピラー10を介して矢印U方向、即ち車両下方へ伝達されて行く。これにより、ピラー上部構造S1では、車両上方からの荷重FUを、Bピラー10の軸方向、即ち車両上下方向で受けることができる。
【0035】
またピラーインナリインフォースメント22の第1荷重伝達面22G及び第2荷重伝達面22Hが、夫々斜め上方に向けられて形成されているので、荷重F2は、第2荷重伝達面22Hだけでなく、該第1荷重伝達面22Gにも伝達される。
【0036】
更に、ピラー上部構造S1では、上記したように、ピラーインナリインフォースメント22とルーフサイドレール12とが剛体結合されていないので、ルーフサイドレール12に車両上方からの荷重FUが入力されても、Bピラー10にモーメントが生じ難く、これによって該Bピラー10の倒れ込み変形が抑制される。従って、荷重F2をルーフサイドレール12からBピラー10へ、より直接的に伝達することが可能である。
【0037】
また、ピラー上部構造S1では、第1荷重伝達面22G及び第2荷重伝達面22Hが、夫々ピラーインナリインフォースメント22の一般部22Aから車幅方向内側へ突出形成され、第2荷重伝達面22Hが第1荷重伝達面22Gよりも車両下方に設けられ、ルーフサイドレール12の車幅方向外側のフランジ20が、第1荷重伝達面22Gと第2荷重伝達面22Hとの間の谷間26に配置されているので、車両の側面衝突や転覆等により車体が変形しても、ルーフサイドレール12のフランジ20とBピラー10のピラーインナリインフォースメント22との位置関係が安定している。
【0038】
このようにして、ピラー上部構造S1では、車両の側面衝突等及び転覆等が生じた際における、ルーフサイドレール12とBピラー10との間での荷重伝達効率を高めることができる。
【0039】
なお、図4(B)に示されるように、荷重FUが車両斜め下方に入力された場合には、該荷重FUのうちの荷重F1が、水平方向成分となってルーフサイドレール12から図示しないルーフパネルやルーフクロスメンバへ伝達される。
【0040】
[第2実施形態]
図5,図6において、本実施の形態に係るピラー上部構造S2では、ピラーインナリインフォースメント22が車幅方向外側に凸となる断面ハット形に構成されており、ピラーアウタリインフォースメント24と重ねられて接合され、一般部22Aがピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aに近接した状態となっている。一般部22A,一般部24A間には、例えば2mm程度の隙間が設けられている。ピラーインナリインフォースメント22の車幅方向内側への突出量を少なくすることで、車室スペースをより広く確保できるようになっている。
【0041】
ピラーインナリインフォースメント22の上部には、車幅方向内側に突出した第1突出部22Jが設けられており、該第1荷重伝達面22Gの車両上方側の面が第1荷重伝達面22Gとされている。第1実施形態と異なり、第2突出部22K、第2荷重伝達面22H及び谷間26(図2参照)は設けられていない。
【0042】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。また車両の側面衝突時や転覆時における作用及び効果についても説明を省略する。
【0043】
[第3実施形態]
図7,図8において、本実施の形態に係るピラー上部構造S3は、ピラーインナリインフォースメント22が、ピラーアウタリインフォースメント24のフランジ24Fに接合される下部体30と、該ピラーアウタリインフォースメント24の一般部24Aに接合される上部体32とに分割されており、これらは別々に成形された後に、例えばスポット溶接により接合されて一体化されている。
【0044】
ピラーインナリインフォースメント22の上部は、ルーフサイドレール12とBピラー10との間での荷重伝達を効率的に行うために、高剛性を有していることが必要とされる。上部体32を下部体30と別体とすることで、該上部体32の板厚をより大きく設定したり、上部体32に下部体30とは異なる材料を用いる等して、該上部体32の剛性を高めることが可能である。上部体32の材質には、高張力鋼板等の高剛性材料を用いることが望ましく、所望の剛性を有するものであれば、例えば合成樹脂ブロックであってもよい。
【0045】
また、第1突出部22Jや第2突出部22K等を有し比較的複雑な成形が必要な上部体32を、比較的単純な形状の下部体30と別々にプレス成形することで、下部体30の成形を低コストで行うことができる。
【0046】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。また車両の側面衝突時や転覆時における作用及び効果についても説明を省略する。
【0047】
[第4実施形態]
図9において、本実施の形態に係るピラー上部構造S4では、第3実施形態と同様に、ピラーインナリインフォースメント22が、下部体30と上部体32とに分割されている。この下部体30と上部体32とは、例えば2本の直線状の鋼管34により結合されている。
【0048】
上部体32には、車幅方向内側に突出する第1突出部22Jのみが設けられ、該第1突出部22Jの車両上方側の面が第1荷重伝達面22Gとされている。2本の鋼管34の下端は、下部体30における例えば前壁部22Bと後壁部22Cとに、例えばアーク溶接により夫々接合されている。また2本の鋼管34の上端は、上部体32における一般部22Aのうち、第1突出部22Jを挟む位置に、例えばアーク溶接により夫々接合されている。
【0049】
本実施形態では、下部体30と上部体32とを、直線状の鋼管34により結合しているので、ピラーインナリインフォースメント22の上部を車両上下方向に略直線状とすることが容易である。車両の側面衝突時や転覆時等におけるルーフサイドレール12(図1参照)とBピラー10との間での荷重伝達は、この鋼管34を介して行われるようになっている。
【0050】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。また車両の側面衝突時や転覆時における作用及び効果についても説明を省略する。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、片側3本のピラーを有する車両を想定し、ピラーとして、該車両のセンターピラーであるBピラー10を例に挙げて説明したが、ピラーはこれに限られるものではなく、例えば片側4本のピラーを有する車両における車両前方から3本目のピラー、所謂Cピラーであってもよい。
【0052】
内側部材の一例として、ピラーインナリインフォースメント22を挙げ、外側部材の一例として、ピラーアウタリインフォースメント24を挙げて説明したが、内側部材及び外側部材はこれに限られるものではない。
【0053】
ルーフサイドレール12のうち車幅方向外側に張出した張出し部の一例として、フランジ20を挙げたが、張出し部はこれに限られるものではなく、ピラーインナリインフォースメント22における第1荷重伝達面22Gと第2荷重伝達面22Hとの間の谷間26に配置できるように、例えばルーフサイドレール12の一部を車両方向外側に突出させてもよい。
【0054】
ピラーインナリインフォースメント22に第1荷重伝達面22G及び第2荷重伝達面22Hを設けることとしたが、請求項1に記載の発明については、これらの荷重伝達面が設けられていなくてもよい。
【0055】
また請求項3に記載の発明では、第2荷重伝達面22Hを設けて第1荷重伝達面22Gを設けない構成としてもよい。
【0056】
更に請求項3に記載の発明では、第1荷重伝達面22G及び第2荷重伝達面22Hが何れも車幅方向内側へ突出形成されていない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1から図4は、第1実施形態に係り、図1はピラー上部構造を示す断面図である。
【図2】車両内側から見たピラーの構成を示す斜視図である。
【図3】ピラーの構成を示す、図1における3−3矢視拡大断面図である。
【図4】(A)車両の側面衝突時等に、ピラーからルーフサイドレールへ荷重が伝達されている状態を模式的に示す断面図である。(B)車両の転覆時等に、ルーフサイドレールからピラーへ車両下方に荷重が伝達されている状態と、ルーフサイドレールから車幅方向内側へ荷重が伝達されている状態とを模式的に示す断面図である。
【図5】図5及び図6は、第2実施形態に係り、図5は、ピラー上部構造を示す断面図である。
【図6】車両内側から見たピラーの構成を示す斜視図である。
【図7】図7及び図8は、第3実施形態に係り、図7は、ピラー上部構造を示す断面図である。
【図8】車両内側から見たピラーの構成を示す斜視図である。
【図9】第4実施形態に係るピラー上部構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 Bピラー(ピラー)
12 ルーフサイドレール
14 インナパネル
16 アウタパネル
20 フランジ(張出し部)
22 ピラーインナリインフォースメント(内側部材)
22G 第1荷重伝達面
22H 第2荷重伝達面
24 ピラーアウタリインフォースメント(外側部材)
24A 一般部
26 谷間
FS 車両側方からの荷重
FU 車両上方からの荷重
S1 ピラー上部構造
S2 ピラー上部構造
S3 ピラー上部構造
S4 ピラー上部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとによる閉断面構造を有して構成され、車両上部の車幅方向両側において車両前後方向に延びるルーフサイドレールと、
車幅方向における内側部材と外側部材とによる閉断面構造を有して構成され、車両側部において車両上下方向に延び車両上方側端部において前記ルーフサイドレールに連結されたピラーと、を備え、
前記内側部材の上部が、前記外側部材の一般部に結合されていること、
を特徴とするピラー上部構造。
【請求項2】
前記内側部材は、前記ルーフサイドレールと近接対向して設けられ、前記ピラーに車両側方からの荷重が入力された際に該荷重を前記ルーフサイドレールへ伝達する第1荷重伝達面を有することを特徴とする請求項1に記載のピラー上部構造。
【請求項3】
前記内側部材は、前記ルーフサイドレールと近接対向して設けられ、前記ルーフサイドレールに車両上方からの荷重が入力された際に該荷重が伝達される第2荷重伝達面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピラー上部構造。
【請求項4】
前記第1荷重伝達面及び前記第2荷重伝達面が、前記内側部材の一般部から車幅方向内側へ突出形成されると共に、前記第2荷重伝達面が、前記第1荷重伝達面よりも車両下方に設けられ、
前記ルーフサイドレールのうち車幅方向外側に張出した張出し部が、前記第1荷重伝達面と前記第2荷重伝達面との間の谷間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のピラー上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−35095(P2009−35095A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200367(P2007−200367)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】