説明

ピラー補強構造

【課題】重量の増加を抑制しつつ車両側突時にピラーの破断を防止する。
【解決手段】Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに形成した隙間形成用凸部22Fによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、2Bの下端エッジ24Dと、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bとの間に隙間42が形成されており、車両側突時に、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たらないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピラー補強構造に関し、特に、自動車等の車両に使用されるピラー補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に使用されるピラー補強構造が知られている(特許文献1)。このピラー補強構造では、車両の側面に対して他の車両が衝突(側突)し、その衝撃によってBピラーの下部が変形する際に、補強部材に設けた破断防止手段によって、Bピラーを構成するアウタパネルとインナパネルとを接合するフランジが破断することを防止するようになっている。
【特許文献1】特開平10−329752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来技術では、破断防止手段が空洞と座屈構造とで構成されているため、空洞によって補強部材の剛性が低下する。この結果、補強部材の剛性を確保するために補強部材の板厚を厚くする必要があり重量が増加する。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、重量の増加を抑制しつつ車両側突時にピラーの破断を防止できるピラー補強構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明のピラー補強構造は、ピラーの車幅方向外側部を構成するピラーアウタと、前記ピラーの内部に配設され、車体前後方向両端縁部に接合部が形成された補強部材と、前記ピラーの車幅方向内側部を構成すると共に、車体前後方向両端縁部に形成され前記補強部材の接合部と重合する接合部が、前記補強部材の接合部における上下方向端部との間に隙間を有するピラーインナと、を有することを特徴とする。
【0006】
従って、ピラーアウタがピラーの車幅方向外側部を構成しており、ピラーインナがピラーの車幅方向内側部を構成している。また、ピラーの内部には補強部材が配設されている。さらに、ピラーインナの車体前後方向両端縁部に形成された接合部と補強部材の車体前後方向両端縁部に形成された接合部とが重合しており、ピラーインナの接合部は補強部材の接合部における上下方向端部との間に隙間を有している。このため、ピラーが変形した際に、補強部材の接合部における上下方向端部がピラーインナの接合部に当たるのをピラーインナの接合部と補強部材の接合部との隙間によって防止できる。この結果、ピラーインナの接合部の破断を防止できる。また、ピラーインナの接合部が補強部材の接合部における上下方向端部との間に隙間を有する構成であるため、板厚を厚くする構成に比べて重量の増加を抑制できる。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のピラー補強構造において、前記ピラーインナは前記補強部材の接合部における上下方向端部に対して車体前後方向全域に隙間を有することを特徴とする。
【0008】
従って、ピラーインナが補強部材の接合部における上下方向端部に対して車体前後方向全域に隙間を有するため、ピラーインナの接合部における車体前後方向全域で破断を防止できる。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載のピラー補強構造において、前記ピラーインナは前記補強部材の接合部における上下方向端部に対して前記ピラーの車体前後方向中央部寄りに隙間を有することを特徴とする。
【0010】
従って、ピラーインナが補強部材の接合部における上下方向端部に対してピラーの車体前後方向中央部寄りに隙間を有するため、特に、破断が発生し易いピラーインナの接合部における前後方向中央部寄りで破断を防止できる。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造において、前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成していることを特徴とする。
【0012】
従って、ピラーインナの接合部が補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され隙間を形成しているため、構成が簡単になる。
【0013】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造において、前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成しており、前記隙間内にスペーサが配置されていることを特徴とする。
【0014】
従って、ピラーインナの接合部が補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され隙間を形成しており、隙間内にスペーサが配置されているため、スペーサによって、ピラー変形時に補強部材の接合部とピラーインナの接合部との間の隙間が潰れるのを防止できる。
【0015】
請求項6に記載の本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造において、前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成しており、前記隙間内に前記補強部材の接合部から前記ピラーインナの接合部へ向かって突出した凸部を有することを特徴とする。
【0016】
従って、ピラーインナの接合部が補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され隙間を形成しており、隙間内に補強部材の接合部からピラーインナの接合部へ向かって突出した凸部を有するめ、凸部によって、ピラー変形時に補強部材の接合部とピラーインナの接合部との間の隙間が潰れるのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明は、重量の増加を抑制しつつ車両側突時にはピラーの破断を防止できる。
【0018】
請求項2に記載の本発明は、ピラーインナの接合部における車体前後方向全域で破断を防止できる。
【0019】
請求項3に記載の本発明は、破断が発生し易いピラーインナの接合部における前後方向中央部寄りで破断を防止できる。
【0020】
請求項4に記載の本発明は、簡単な構成で重量の増加を抑制しつつ車両側突時にはピラーの破断を防止できる。
【0021】
請求項5に記載の本発明は、補強部材の接合部とピラーインナの接合部との間の隙間が潰れるのを防止できる。
【0022】
請求項6に記載の本発明は、補強部材の接合部とピラーインナの接合部との間の隙間が潰れるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係るピラー補強構造の第1実施形態について説明する。なお、各図において示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0024】
図8には本実施形態における自動車のピラー補強構造が適用された車体を示す概略側面図が示されている。
【0025】
図8に示すように、本実施形態の車体10の側面部は、サイメンアウタ12で構成されており、このサイメンアウタ12の上部は、車体前後方向に沿って延びるルーフサイドレールアウタ14とされている。また、このサイメンアウタ12の下部は、車体前後方向に沿って延びるロッカアウタ16とされており、サイメンアウタ12の車体前後方向中央部には、ルーフサイドレールアウタ14からロッカアウタ16に延びるBピラーアウタ18が形成されている。
【0026】
図5には自動車のピラー補強構造を示す車幅方向内側から見た概略側面図が示されており、図7には図5の7−7断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0027】
図7に示すように、Bピラー20は、Bピラー20の車幅方向外側部を構成するサイメンアウタ12のBピラーアウタ18と、Bピラー20の車幅方向内側部を構成するBピラーインナ22とで閉断面構造とされている。また、Bピラーアウタ18の車体上下方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向内側に向けたハット断面形状とされている。
【0028】
なお、Bピラー20とは車室側部に車体前後方向に所定の間隔で形成される複数のピラーのうち、車体前方側から2番目のピラーであり、図8に示すセダンタイプの車体10では、フロントピラー(Aピラー)10Aとクォータピラー(Cピラー)10Bとの間に位置するセンタピラーである。
【0029】
図6及び図7に示すように、Bピラーインナ22の車体上下方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向外側に向けたハット断面形状とされており、開口部の前後両端縁部には、接合部としての接合フランジ22A、22Bが形成されている。
【0030】
図5に示すように、Bピラー20の閉断面構造内の上部には、上側の補強部材としてのBピラーアッパリインフォースメント24が設けられており、Bピラー20の閉断面構造内の下部には、下側の補強部材としてのBピラーロアリインフォースメント26とが設けられている。
【0031】
図7に示すように、Bピラーアッパリインフォースメント24は、Bピラーアウタ18の車幅方向内側にBピラーアウタ18に沿って配設されている。また、Bピラーアッパリインフォースメント24の車体上下方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向内側に向けたハット断面形状とされており、開口部の前後両端縁部には、接合部としての接合フランジ24A、24Bが形成されている。
【0032】
Bピラーロアリインフォースメント26は、Bピラーアウタ18の車幅方向内側にBピラーアウタ18に沿って配設されている。また、Bピラーロアリインフォースメント26の車体上下方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向内側に向けたハット断面形状とされており、開口部の前後両端縁部には、接合部としての接合フランジ26A、26Bが形成されている。
【0033】
図5に示すように、Bピラーロアリインフォースメント26の上部26Cと、Bピラーアッパリインフォースメント24の下部24Cとは、車幅方向に重なっており、図7に示すように、Bピラーロアリインフォースメント26の上部26Cは、Bピラーアッパリインフォースメント24の下部24Cの車幅方向外側に配置されている。
【0034】
なお、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aと、Bピラーロアリインフォースメント26の接合フランジ26Aは、それぞれBピラーアウタ18の接合フランジ18AとBピラーインナ22の接合フランジ22Aとの間に結合されており、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Bと、Bピラーロアリインフォースメント26の接合フランジ26Bは、それぞれBピラーアウタ18の接合フランジ18BとBピラーインナ22の接合フランジ22Bとの間に結合されている。
【0035】
図3に示すように、サイメンアウタ12のロッカアウタ16の車幅方向内側には、ロッカアウタリインフォースメント30が車体前後方向に沿って配置されている。ロッカアウタリインフォースメント30の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向内側に向けたハット断面形状とされており、開口部の上下両端縁部には、接合部としての接合フランジ30A、30Bが形成されている。また、ロッカアウタリインフォースメント30の車幅方向内側には、ロッカインナ32が車体前後方向に沿って配置されている。ロッカインナ32の車体前後方向から見た断面形状は、開口部を車幅方向外側に向けたハット断面形状とされており、開口部の上下両端縁部には、接合部としての接合フランジ32A、32Bが形成されている。
【0036】
ロッカアウタリインフォースメント30の接合フランジ30A、30Bはロッカインナ32の接合フランジ30A、30Bにそれぞれ結合されており、ロッカアウタリインフォースメント30とロッカインナ32とで、車体前後方向に延びる閉断面構造34が形成されている。また、Bピラーインナ22の下部22Cは閉断面構造34を車体上方から車体下方に向かって貫通しており、下端縁部22Dがロッカアウタ30の接合フランジ30Bとロッカインナ32の接合フランジ32Bとの間に結合されている。
【0037】
なお、Bピラーインナ22の上下方向中間部22Eは、ロッカアウタ30の接合フランジ30Aとロッカインナ32の接合フランジ32Aとの間に結合されている。また、Bピラーロアリインフォースメント26の下端縁部26Dは、ロッカアウタリインフォースメント30の縦壁部30Cの車幅方向外側面に結合されており、ロッカアウタ16の下端に形成された接合フランジ16Aは、ロッカインナ32の接合フランジ30Bの車幅方向外側面に結合されている。さらに、ロッカインナ32の縦壁部32Cにおける車幅方向内側面の下部には、フロアパネル36の車幅方向端部に車体上方へ向かって形成された接合フランジ36Aが結合されている。
【0038】
なお、フロアパネル36の上面側には、フロアクロスメンバ38が車幅方向に沿って配置されている。図示を省略したが、フロアクロスメンバ38の車幅方向から見た断面形状は、開口部を車体下側に向けたハット断面形状とされており、開口部の前後両端縁部には、接合フランジ38Aが形成されている。また、これらの接合フランジ38Aはフロアパネル36の上面36Bに結合されている。
【0039】
また、フロアクロスメンバ38の車幅方向端部には、車幅方向から見た形状がコ字状の接合フランジ38Bが形成されており、この接合フランジ38Bはロッカインナ32の縦壁部32Cにおける車幅方向内側面に結合されている。
【0040】
なお、図3の符号50はBピラー20に設けられたリヤドアのヒンジを示しており、このヒンジ50は、Bピラーロアリインフォースメント26の上部26CとBピラーアッパリインフォースメント24の下部24Cとの重合部の車幅方向外側に取付けられている。
【0041】
図1に示すように、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの下部24Cに対して車幅方向内側に位置するBピラーインナ22の接合フランジ22Aの部位には、車幅方向内側に凸となった隙間形成手段としての隙間形成用凸部22Fが形成されている。また、隙間形成用凸部22Fの内部には、スペーサ40が設けられている。
【0042】
即ち、隙間形成用凸部22Fによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの上下方向端部としての下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22Aとの間に隙間42が、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの下端エッジ24Dに対して車体前後方向全域に形成されており、隙間形成用凸部22F内にスペーサ40が設けられている。
【0043】
より具体的に説明すると、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの下部24Cに対して車幅方向内側に位置するBピラーインナ22の接合フランジ22Aの部位には、車幅方向内側に凸となった隙間形成用凸部22Fが車体上下方向に所定長さL1で形成されている。隙間形成用凸部22FとBピラーアッパリインフォースメント24の下部24Cとの間隔W1は上下両端部に形成した傾斜部22Gにおいて徐々に狭くなっている。
【0044】
スペーサ40は板厚W1の樹脂材からなる板材で構成されており、車体上下方向に沿って配置されている。また、スペーサ40の車体上下方向の長さL2は、隙間形成用凸部22Fにおける上下の傾斜部22Gの間となる平面部22Hの車体上下方向の長さL3に比べて短く設定されており、スペーサ40はBピラーアッパリインフォースメント24に接着等によって固定されている。
【0045】
さらに、スペーサ40の下端40Aは、Bピラーアッパリインフォースメント24の下端エッジ24Dより車体上方に位置していると共に、Bピラーアッパリインフォースメント24の下端エッジ24Dは、Bピラーインナ22の平面部22Hの下端22Jより車体上方に位置している。
【0046】
同様に、Bピラーインナ22の接合フランジ22Bにも隙間形成用凸部22Fが形成されており、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22Bとの間に隙間42が形成されている。また、隙間42にスペーサ40とが設けられている。
【0047】
従って、図4に示すように、車両側突時に他車のバンパKがサイメンアウタ12のBピラーアウタ18に車幅方向外側から車幅方向内側に向かって衝突し、Bピラーの下部が車幅方向内側へ変形した場合には、図2に示すように、隙間形成用凸部22Fによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22Aとの間及び、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22Bとの間に隙間42が形成されているため、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22Aに当たらないと共に、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22Bに当たらないようになっている。さらに、スペーサ40によって、隙間42が潰れないようになっている。
【0048】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0049】
本実施形態の自動車のピラー補強構造によれば、図4に示すように、車両側突時に他車のバンパKがサイメンアウタ12のBピラーアウタ18の下部に車幅方向外側から車幅方向内側に向かって衝突し、Bピラー20の下部が車幅方向内側へ変形した場合には、図2に示すように、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bも車幅方向内側へ変形し屈曲する。
【0050】
この際、本実施形態では、図1に示すように、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに形成した隙間形成用凸部22Fによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、22Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bとの間に隙間42が形成されている。このため、図2に示すように、Bピラー20の下部が車幅方向内側へ変形した場合にも、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たらない。
【0051】
また、本実施形態では、隙間形成用凸部22F内に設けたスペーサ40によって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bとの間の隙間42が車両側突時に潰れない。
【0052】
この結果、車両側突時に、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24Dが、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たるのを防止でき、Bピラーインナ22が破断するのを防止できる。
【0053】
また、本実施形態では、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに隙間形成用凸部22Fを形成し、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bと、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bとの間にスペーサ40を追加する構成であるため、Bピラーインナ22等の板厚を厚くする構成に比べて重量の増加を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、隙間42が、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24Dに対して車体前後方向全域に形成されているため、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bにおける車体前後方向全域で破断を防止できる。
【0055】
なお、上記実施形態では、隙間42をBピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24Dに対して車体前後方向全域に形成したが、これに代えて、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24Dに対して、車体前後方向の一部、例えば、破断が発生し易いと考えられるBピラー20の車体前後方向中央部寄りの部位(車体前方側の接合フランジでは後方寄りの部位、車体後方側の接合フランジでは前方寄りの部位)に隙間42を形成してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、スペーサ40をBピラーアッパリインフォースメント24に固定したが、スペーサ40は隙間形成用凸部22Fの平面部22Hに固定してもよい。また、スペーサ40をゴム、金属等の樹脂材以外の材料で構成してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、スペーサ40の下端40AをBピラーアッパリインフォースメント24の下端エッジ24Dより車体上方としたが、スペーサ40の下端40AをBピラーアッパリインフォースメント24の下端エッジ24Dと同じ位置としてもよいし、スペーサ40の下端40AをBピラーアッパリインフォースメント24の下端エッジ24Dより車体下方にしてもよい。
【0058】
次に、本発明のピラー補強構造の第2実施形態を図9に従って説明する。
【0059】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図9には図1に対応する断面図が示されている。
【0061】
図9に示すように、本実施形態では、第1実施形態におけるスペーサ40を除いた構成になっている。
【0062】
より具体的に説明すると、Bピラーインナ22の接合フランジ22Aの下端エッジ24Dの車幅方向内側となるBピラーインナ22の接合フランジ22Aの部位には、車幅方向内側に凸となった隙間形成用凸部22Fが車体上下方向に所定長さL1で形成されている。
【0063】
なお、Bピラーインナ22の接合フランジ22Bにも同様に隙間形成用凸部22Fが形成されている。
【0064】
従って、本実施形態では、第1実施形態の図4に示すように、車両側突時に他車のバンパKがサイメンアウタ12のBピラーアウタ18の下部に車幅方向外側から車幅方向内側に向かって衝突し、Bピラーの下部が車幅方向内側へ変形し、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bも車幅方向内側へ変形し屈曲した場合には、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bとの間に隙間形成用凸部22Fによって形成された隙間42によって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たらない。
【0065】
このため、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たるのを防止でき、Bピラーインナ22が破断するのを防止できる。
【0066】
また、本実施形態では、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに隙間形成用凸部22Fを形成する構成であるため、簡単な構成で重量の増加を抑制しつつ車両側突時にはBピラー20の破断を防止できる。
【0067】
次に、本発明のピラー補強構造の第3実施形態を図10及び図11に従って説明する。
【0068】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0069】
図10には図1に対応する断面図が示されており、図11にはBピラーアッパリインフォースメント24の車体斜め内側前方から見た斜視図が示されている。
【0070】
図10に示すように、本実施形態では、第1実施形態におけるスペーサ40に代えて、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aにおける下部24Cに凸部24Eが形成されている。
【0071】
より具体的に説明すると、凸部24Eは、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aにおける下部24Cの下端エッジ24Dの上方近傍(隙間42内)に、車幅方向内側に向かって円弧状に湾曲形成されている。
【0072】
図11に示すように、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Bにも同様に凸部24Eが形成されている。
【0073】
従って、本実施形態の自動車のピラー補強構造によれば、第1実施形態の図4に示すように、車両側突時に他車のバンパKがサイメンアウタ12のBピラーアウタ18の下部に車幅方向外側から車幅方向内側に向かって衝突し、Bピラー20の下部が車幅方向内側へ変形した場合には、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24Aも車幅方向内側へ変形し屈曲する。
【0074】
この際、本実施形態では、Bピラーインナ22の隙間形成用凸部22Fによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22A、24Bとの間に隙間42が形成されているため、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DがBピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たらない。
【0075】
さらに、本実施形態では、隙間形成用凸部22F内に設けた凸部24Eによって、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24DとBピラーインナ22の接合フランジ22A、24Bとの間の隙間42が潰れない。
【0076】
このため、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bの下端エッジ24Dが、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに当たるのを防止でき、Bピラーインナ22が破断するのを防止できる。
【0077】
また、本実施形態では、Bピラーインナ22の接合フランジ22A、22Bに隙間形成用凸部22Fを形成し、Bピラーアッパリインフォースメント24の接合フランジ24A、24Bに凸部24Eを形成する構成であるため、Bピラーインナ22等の板厚を厚くする構成に比べて重量の増加を抑制できる。
【0078】
なお、上記実施形態では、凸部24Eを車幅方向内側に向かって円弧状に湾曲形成したが、凸部24Eの形状は円弧状に限定されず、隙間形成用凸部22Fの上部内側面に沿った台形状等の他の形状としてもよい。
【0079】
以上に於いては、本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態では、Bピラーアッパリインフォースメント24の下部24CがBピラーロアリインフォースメント26の上部26Cの車幅方向内側に配置されているが、これに代えて、Bピラーロアリインフォースメント26の上部26Cが、Bピラーアッパリインフォースメント24の下部24Cの車幅方向内側に配置されていてもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、Bピラーアッパリインフォースメント24とBピラーロアリインフォースメント26とを備えているが、補強部材は上下2枚に限定されず、1枚や3枚以上であってもよい。
【0081】
また、本発明のピラー補強構造は、Bピラー以外にもCピラー等の他のピラーにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図7の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における自動車のピラー補強構造の変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図3】図7の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における自動車のピラー補強構造の変形状態を示す図3に対応する断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における自動車のピラー補強構造を示す車幅方向内側から見た概略側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における自動車のピラー補強構造のBピラーインナを示す車体斜め内側前方から見た概略斜視図である。
【図7】図5の7−7断面線に沿った拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態における自動車のピラー補強構造が適用された車体を示す概略側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態における自動車のピラー補強構造の図1に対応する断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態における自動車のピラー補強構造の図1に対応する断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態における自動車のピラー補強構造のBピラーアッパリインフォースメントを示す車体斜め内側前方から見た概略斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
12 サイメンアウタ
18 Bピラーアウタ
20 Bピラー
22 Bピラーインナ
22A 接合フランジ(接合部)
22B 接合フランジ(接合部)
22F 隙間形成用凸部
24 Bピラーアッパリインフォースメント(補強部材)
24A 接合フランジ(接合部)
24B 接合フランジ(接合部)
24C Bピラーアッパリインフォースメントの下部
24D Bピラーアッパリインフォースメントのエッジ(上下方向端部)
24E 凸部
26 Bピラーロアリインフォースメント
26A 接合フランジ(接合部)
26B 接合フランジ(接合部)
26C Bピラーロアリインフォースメントの上部
40 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラーの車幅方向外側部を構成するピラーアウタと、
前記ピラーの内部に配設され、車体前後方向両端縁部に接合部が形成された補強部材と、
前記ピラーの車幅方向内側部を構成すると共に、車体前後方向両端縁部に形成され前記補強部材の接合部と重合する接合部が、前記補強部材の接合部における上下方向端部との間に隙間を有するピラーインナと、
を有することを特徴とするピラー補強構造。
【請求項2】
前記ピラーインナは前記補強部材の接合部における上下方向端部に対して車体前後方向全域に隙間を有することを特徴とする請求項1に記載のピラー補強構造。
【請求項3】
前記ピラーインナは前記補強部材の接合部における上下方向端部に対して前記ピラーの車体前後方向中央部寄りに隙間を有することを特徴とする請求項1に記載のピラー補強構造。
【請求項4】
前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造。
【請求項5】
前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成しており、前記隙間内にスペーサが配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造。
【請求項6】
前記ピラーインナの接合部は、前記補強部材の接合部から離間する方向へ向かって湾曲形成され前記隙間を形成しており、前記隙間内に前記補強部材の接合部から前記ピラーインナの接合部へ向かって突出した凸部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のピラー補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−184527(P2009−184527A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26986(P2008−26986)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】