説明

ピログルタミン酸誘導体の合成および用途

【課題】対象において免疫応答を増強するため、および/または腫瘍、細菌、真菌もしくはウイルス感染、または自己免疫疾患を処置するために有用な化合物の提供。
【解決手段】単離された光学的に活性な立体異性体の形態か、またはその混合物の形態かのいずれかである、新規なピログルタミン酸誘導体(I)[式中、Rは−OH、−ORaであり、ここで、Raはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキルまたはヘテロシクリルであり、R、RおよびRは独立にH、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、Xは医薬上許容される陰イオンであり、かつ、YはN含有基である]を用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ピログルタミン酸誘導体、それらの単離された光学的に活性な立体異性体およびその混合物の新規な合成、およびそれらの用途、ならびにそれらの合成への新規な中間体に関する。本発明はまた、該ピログルタミン酸誘導体、それらの光学的に活性な立体異性体およびその混合物の治療用途に関する。
【発明の背景】
【0002】
欧州特許EP0768308B1には、免疫生体応答を刺激する、下記一般式
【化1】

(式中、R、RおよびRは水素または−C(=O)Meであり、AはCl−、CHCOO−またはHO−である)
を有するピログルタミン酸誘導体の立体異性体混合物が開示されている。ここに開示されている当該化合物の合成方法は、加熱下でL−セリンを1モル過剰の無水酢酸とピリジンとを反応させることを含んでなる。従って、この公報に開示されているように、種々の立体異性体は単離されることなく、開示されているin vivoおよびin vitroアッセイは、存在し得る4種類の光学的に活性な立体異性体が全て一緒になった混合物を用いて行われている。純粋な個々の立体異性体または個々の異性体が富化された混合物に関する示唆は開示されていない。さらに、開示されている混合物からの種々の光学的に活性な立体異性体の単離に関しても示唆はない。
【0003】
化合物の、光学的に活性な異なる立体異性体は異なる作用を持つ可能性があり、反対の作用を持つ場合さえあることは、当業者に知られている。例えば、ある化合物が治療作用を持つとしても、その鏡像異性体は有毒である場合がある。このような状況の例は当業者には周知のものである。デキストロメトルファンは鬱血除去薬であるが、レボメトルファンは強力な麻薬である。
【化2】

【0004】
また、ペルヘキシリンの鏡像異性体のin vivo挙動が異なることも知られている。
【化3】

【0005】
これらは双方とも心律動の調整薬であるが、一方の鏡像異性体は代謝が遅く、体内に蓄積され、80年代に多数の死をもたらした。
おそらく最も悲劇的でよく知られている例がサリドマイドであり、これは死に至る病を処置するために妊婦にラセミ混合物として投与されたものである。
【化4】

【0006】
R−サリドマイドは効果的であるが、S−サリドマイドの催奇形性作用が後に発見された。
従って、有益な治療作用を有する新規な化合物を探索する上で、通常、最も活性の高いな鏡像異性体を選択し、かつ/または結果として有毒なものを排除する試みにおいて鏡像異性体的に純粋な立体異性体を用いたアッセイを行う必要がある。よって、ピログルタミン酸誘導体の単離された立体異性体を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ピログルタミン酸誘導体、それらの光学的に活性な立体異性体およびその混合物を得る方法を提供する。この方法では、容易に分離され、その後に変換可能なピログルタミン酸前駆体の光学的に活性な立体異性体を、所望の光学的に活性な立体異性体を得るために用いることを含んでなる。
【0008】
特に、本発明者らは、(所望であるならば望む立体化学を有する)種々の中間体を単離できる合成を考案した。これらの中間生成物は、さらに変換することができそれによって所望のピログルタミン酸誘導体を実質的に純粋な所望の立体異性体の形態か、または立体異性体混合物の形態かのいずれかで得る。本発明者らは鏡像異性体的に純粋な式IVの化合物から出発し、次にジアステレオマー中間体、そして容易に分離および精製可能な最終生成物を作製した。所望の立体化学を有する式IVの化合物を用いることにより、実質的に純粋な立体異性体の形態または立体異性体混合物の形態で中間体を得ることができる。このような式IVの化合物は、鏡像異性体的に純粋なグルタミン酸を用いて合成することができる。
【0009】
よって、一つの態様によれば、本発明は、式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得る方法であって、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得るために、式IVの化合物と式Vの化合物とを反応させ、該式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物に変換し、そして最後に該式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と式HXの化合物とを反応させて所望の式Iのピログルタミン酸誘導体を実質的に純粋な立体異性体またはその混合物として得ることを含んでなる方法である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体(すなわち、Ia、Ib、IcまたはId)に関する。式Ia、Ib、Icおよび/またはIdの化合物の実質的に純粋な立体異性体の混合物を含んでなるいくつかの組成物は、本発明のさらなる態様をなし、例えば、式Ia、Ib、Icおよび/またはIdの立体異性体を含んでなる組成物が挙げられるが、ただし、該組成物は次の化合物:
(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または
(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない。
【0011】
本発明のさらなる態様は、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物に関する。この化合物を得る方法は、本発明のさらなる態様をなす。
本発明の別の態様は、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体、または前記式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体を得る方法に関する。式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体(すなわち、IIa、IIb、IIcまたはIId)は、本発明のさらなる態様をなす。式IIa、IIb、IIcおよび/またはIIdの実質的に純粋な立体異性体の混合物を含んでなるいくつかの組成物もまた、本発明のさらなる態様をなす。
【0012】
本発明の別の態様は、式IIa、IIb、IIc、IIdの化合物およびその混合物からなる群から選択される化合物と、医薬上許容される賦形剤とを含んでなるいくつかの医薬組成物に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、腫瘍の予防または治療のための組成物の製造における、式Ia、Ib、Ic、Idの化合物およびそのいくつかの混合物からなる群から選択される化合物の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【0014】
定義
本発明の理解を助けるため、以下、本明細書で用いるいくつかの用語および表現の意味を示す。
「アルキル」とは、炭素原子と水素原子からなり、不飽和を含まず、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し、かつ、一重結合によってその分子の残りの部分に結合されている直鎖または分枝型の炭化水素鎖基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルなどがある。アルキル基はハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、O−プロピル、O−ベンジル、O−ベンゾエート、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、イミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオのような1以上の置換基により場合によって置換されていてもよい。
【0015】
「アルケニル」とは、炭素原子と水素原子からなり、少なくとも1つの不飽和を含み、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し、一重結合によってその分子の残りの部分に結合されている直鎖または分枝型の炭化水素鎖基を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルなどがある。アルキル基はハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、O−プロピル、O−ベンジル、O−ベンゾエート、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、イミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオのような1以上の置換基により場合によって置換されていてもよい。
【0016】
「アルコキシ」とは、式−O−アルキルの基を意味し、ここで、アルキルは前記で定義され、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどがある。
「アリール」とは、フェニル、ナフチルまたはアントラシルのような芳香族炭化水素基を意味する。アリール基は、本明細書で定義したように、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシルおよびアルコキシカルボニルのような1以上の置換基により場合によって換されていてもよい。
【0017】
「アリールオキシ」とは、式−O−アリールの基を意味し、ここで、アリールは前記で定義したものである。アラルオキシ化合物の例をいくつか挙げると、−O−フェニル、−O−p−トリル、−O−m−トリル、−O−o−トリルまたは−O−ナフチルである。
【0018】
「アミノ」とは、式−NH、−NHRa、−NRaRbの基を意味し、ここで、RaおよびRbは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから独立に選択されるか;またはRaおよびRbは一緒になって置換もしくは非置換複素環、置換もしくは非置換シクロアルキルまたは置換もしくは非置換シクロアルケニルを形成する。
【0019】
「アラルキル」とは、ベンジルおよびフェネチルのようなアルキル基と連結したアリール基を意味する。
「カルボキシエステル」とは、−CORaを意味し、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択される。
【0020】
「シクロアルキル」とは、3〜8個の炭素原子を有する飽和炭素環式を意味する。
「シクロアルケニル」とは、3〜8個の炭素原子と少なくとも1つの不飽和を有する炭素環式環を意味する。
【0021】
「ヘテロシクリル」とは、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる安定な3〜15員環、好ましくは1以上のヘテロ原子を有する4〜8員環、より好ましくは1以上のヘテロ原子を有する5または6員環を意味する。本発明の目的では、複素環は単環式環系であっても二環式環系であっても三環式環系であってもよく、縮合環系を含んでもよく;そして、このヘテロシクリル基の窒素、炭素または硫黄原子は場合によって酸化されていてもよく;窒素原子は場合によって第四級化されていてもよく;このヘテロシクリル基は部分的に飽和していてもよいし、完全に飽和していてもよく、あるいは芳香族であってもよい。このような複素環の例としては、限定されるものではないが、アゼピン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフランが挙げられる。
【0022】
「ヘテロアリール」とは、環の少なくとも1つが芳香環である複素環式基を意味する。
「保護基」とは、有機官能基を遮断し、制御された条件下で除去できる基を意味する。保護基、それらの相対的反応性およびそれらが不活性を維持する条件は当業者に公知である。Greene and Wuts “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999参照。
【0023】
本明細書において、本発明の化合物における置換された基という場合には、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードのようなハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;C−Cアルカノイル(アシルなど)などのようなアルカノイル;カルボキサミド;1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する基をはじめとするアルキル基;1以上の不飽和結合と2〜約12個の炭素、または2〜約6個の炭素原子とを有する基をはじめとするアルケニル基およびアルキニル基;1以上の酸素結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子とを有するアルコキシ基;フェノキシのようなアリールオキシ;1以上のチオエーテル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基;1以上のスルフィニル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子とを有する部分をはじめとするアルキルスルフィニル基;1以上のスルホニル結合と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子とを有する部分をはじめとするアルキルスルホニル基;1以上のN原子と1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子とを有する基のようなアミノアルキル基;6個以上の炭素を有する炭素環式アリール、特に、フェニルまたはナフチルおよびアラルキル(ベンジルなど)の1以上の好適な基により、利用可能な1以上の位置で置換されていてもよい特定の部分を意味する。特に断りのない限り、場合によって置換された基はその基の置換可能などの位置に置換基を有してもよく、各置換は他のものとは独立である。
【0024】
「医薬上許容される陰イオン」とは、適当な対陽イオンの存在下で医薬上許容される塩を形成し得る任意の陰イオンを意味する。医薬上許容される陰イオンの例としては、Cl、Br、I、F、SO2−、酢酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、リンゴ酸イオン、マンデル酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられる。医薬上許容される陰イオンの他の例は当業者には明らかである。
【0025】
「医薬上許容される塩」とは、受容者に投与した際に本明細書に記載のような化合物を(直接的にまたは間接的に)もたらし得る任意の医薬上許容される塩を意味する。しかしながら、医薬上許容されない塩も、医薬上許容される塩の作製に有用な場合があるので、本発明の範囲内にあると考えられる。塩の作製は当業者で公知の方法により行うことができる。
【0026】
例えば、本明細書で提供される化合物の医薬上許容される塩は酸付加塩、塩基付加塩または金属付加塩であってもよく、それらは従来の化学法により、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、例えば、水中、または有機溶媒中、またはその2種類の混合物中で、遊離酸または遊離塩基の形態のこれら化合物と化学量論的な量の適当な塩基または酸とを反応させることにより作製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩のような無機酸付加塩、ならびに例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩のような有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えばアンモニウムのような無機塩、および例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミンのような有機アルカリ塩、および基本アミノ酸塩が挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよびリチウム塩が挙げられる。
【0027】
鏡像異性体混合物に用いられる「鏡像異性体的に富化された」とは、そのうちの1つの鏡像異性体が他のものよりも多量に存在する鏡像異性体混合物を意味する。従って、鏡像異性体的に富化された混合物は、その鏡像異性体の1つに関して0%を超える、好ましくは20%を超える、好ましくは40%を超える、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える、より好ましくは90%を超える、より好ましくは95%を超える鏡像異性体過剰を有する。
【0028】
「鏡像異性体的に純粋な」化合物は、95%を超える、好ましくは98%を超える、より好ましくは99%を超える、より好ましくは99.5%を超える鏡像異性体過剰を有する2つの鏡像異性体の混合物と考えることができる。
【0029】
本特許出願において「実質的に純粋な」化合物とは、95%を超える、好ましくは98%を超える、より好ましくは99%を超える、より好ましくは99.5%を超える純度を有する化合物についていうものである。
【0030】
本特許出願において「立体異性体」とは、同じ一連の結合によって結合している同じ原子をからなるが、交換不能な異なる三次元構造を有する化合物をいう。
「窒素含有求核分子」とは、少なくとも1対の遊離電子を有する窒素を少なくとも1つ含む分子を意味し、この電子対は別の分子の求電子((電子不足)部分と、または同じ分子内で結合を形成し得る。窒素含有求核分子の例としては、第一級、第二級または第三級アミンがあり、ある条件下では、複素環の非置換窒素原子形成部分、アミド部分の窒素原子であっても求核分子として働く。
【0031】
EP0768308B1では、ピログルタミン酸誘導体の立体異性体混合物が得られる。
EP0768308B1に開示されている立体異性体の混合物をその実質的に純粋な化合物へと分離する試みは全て失敗している。上記で挙げた欧州特許では、この発明者らの実験によれば、BLAS−236(Cl)(1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド)
【化5】

であるとして確認された5%の化合物が、存在し得る4種類全ての立体異性体の混合物として得られた。
【0032】
また、その直接の前駆体BLAS−320(Ac)(1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート)
【化6】

は異なる手順を用いて合成されたものである。式BLAS−320(Ac)の化合物は、主として溶解度の問題のため(化合物BLAS−320(Ac)は水およびメタノールにしか溶けない)、精製不能な立体異性体の混合物として得られた。
【0033】
さらに、式BLAS−320(Ac)の化合物において酢酸対イオンを他の陰イオンで置き換えることも試みたが、失敗に終わった。さらに、式BLAS−320(Ac)の化合物からそのエステル誘導体への変換(または直接合成)とさらなる精製も試みられた。得られた黒い粗混合物はどうやっても精製できなかった。
【0034】
上記の点から、EP0768308B1の開示は、その中で言及されている目的の、ピログルタミン酸誘導体の実質的に純粋な立体異性体を得るには十分でないものと思われた。よって、全く異なるアプローチを開発した。
【0035】
式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体およびその混合物の合成
一つの態様において、本発明は、式I
【化7】

[式中、
は−OHまたは−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
、RおよびRは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドから独立に選択され、
Xは医薬上許容される陰イオンであり、かつ
Yは
(i)式VIa
【化8】

(式中、
点線は、窒素原子と一緒になって置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Xは前記で定義されたものである)
のN含有基、あるいは
(ii)式VIb
【化9】

(式中、
Xは前記で定義されたものであり、かつ
RaおよびRbは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクリルから独立に選択されるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換または非置換複素環を形成する)
のN含有基から選択される有機残基である]
で示される化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物の合成方法(以下、本発明の方法と呼ぶ)であって、
a)式IV
【化10】

(式中、RおよびRは前記で定義されたものである)
の鏡像異性体的に純粋な化合物またはその混合物と、式V
【化11】

(式中、Rは前記で定義されたものである)
の化合物とを反応させて、式III
【化12】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得て、
b)前記式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を、式II
【化13】

[式中、
、RおよびRは前記で定義されたものであり、
は負電荷またはRから選択され、ここで、Rは前記で定義されたものであり、かつ
Yは
(i)Rが負電荷であるとき、Yが式VIIa
【化14】

(式中、点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成する)
のN含有有機残基である場合、または
(ii)RがRであるとき、Yが
(ii.a)式VIIb
【化15】

(式中、RaおよびRbは前記で定義されたものである)
のN含有基である場合、または
(ii.b)式VIIc
【化16】

(式中、
点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Zは医薬上許容される陰イオンである)
のN含有有機残基である場合
から選択されるN含有有機残基である場合
から選択されるN含有有機残基である]
の化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物に変換し、そして
c)前記式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式HX(式中、Xは上記のように定義される)の酸を含んでなる酸性媒体とを接触させて、前記式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得ること
を含んでなる方法に関する。
【0036】
酸性条件下で加水分解する窒素保護基(R、Rおよび/またはR)の役割は、工程c)(式IIの化合物と式HXの化合物とを反応させることにより、式IIの化合物を式Iの化合物に変換する)まで窒素官能基を保護することである。工程c)まで窒素原子を保護できる窒素保護基が本発明にあっては好適である。酸性条件下で加水分解する好ましい窒素保護基は、工程c)中に加水分解し得ると同時に、塩または二塩が形成されて式Iの化合物が得られるものである。この場合、工程c)中に、1つの合成工程で、その分子の窒素原子が脱保護されて、塩または二塩が形成される。しかしながら、本発明によれば、窒素原子が脱保護されると同時に塩または二塩が形成される必要は必ずしもない。よって、本発明の実施形態によれば、塩または二塩の形成と窒素原子の脱保護は二工程以上を必要とする場合もある。
【0037】
好ましい実施形態によれば、酸性条件下で加水分解する窒素保護基は、式−(O=)C−O−Ra(ここで、Raは上記と同義であり、好ましくは、Raはベンジル、C(CHまたは−CHCH;のカルバミン酸基;または式−(O=)S(=O)−Ra(ここで、Raは上記と同義であり、好ましくは、Raは−CHまたはトシル酸基である)のスルホン酸基から選択される。
【0038】
酸性条件下で加水分解する他の保護基は当業者に公知である。Greene and Wuts “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999などの参考書籍を参照。
【0039】
、RおよびRの少なくとも1つがフタルアミドである場合には、塩または二塩の形成前(工程cの前)に、還元またはヒドラジンとの反応を含む追加工程を行う必要がある(フタルアミドの除去方法についてさらに詳しくは、Greene and Wuts “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1999参照)。
【0040】
本発明の方法の式IVの出発化合物は、鏡像異性体的に純粋な化合物(すなわち、RまたはS)の形態であっても、あるいは鏡像異性体(RとS)の混合物の形態で、所望によりそれらの一方を富化したものであってもよい。本明細書において、「鏡像異性体の混合物」とは、当モル比であってもなくても、2種類の鏡像異性体のいずれの混合物も含み、それ自体、その2種類の鏡像異性体のラセミ混合物だけでなく、その鏡像異性体のいずれかを富化した混合物も含む。
【0041】
式IVの化合物が鏡像異性体的に純粋な化合物の形態である場合、上述の反応で、β面からの反応に相当するものと、α面からの反応に相当するものとの2種類の生成物(立体異性体)が得られる。この場合、反応の立体選択性は低く、式IVの化合物の各鏡像異性体からは可能性のある2種類の化合物(立体異性体)の混合物が得られる。
【0042】
よって、特定の実施形態によれば、式IVの化合物は、鏡像異性体的に純粋な化合物の形態である。式IVの化合物のS異性体を出発材料として用いるならば、その反応からは一般に、式IIIa
【化17】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物と式IIIb
【化18】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物の混合物が得られる。
【0043】
従って、用いる式IVの化合物の異性体がS立体異性体である場合、結果として得られる式IIIの化合物は一般に、式IIIaと式IIIbの立体異性体の混合物の形態である。所望により、この立体異性体混合物の形態の式IIIの化合物は、当モル比であってもなくても、IIIaとIIIbの混合物を得るために、常法(例えば、シリカ、再結晶など)によって単離することができる。あるいは、所望により、式IIIaとIIIbの各立体異性体を分離するため、また、それらの立体異性体を鏡像異性体的に純粋な化合物として得るためには、式IIIaとIIIbの立体異性体の混合物を常法(例えば、再結晶、クロマトグラフィーなど)によって処理すればよい。
【0044】
また、式IVの化合物のR異性体を出発材料として用いるならば、その反応からは一般に式IIIc
【化19】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物と、式IIId
【化20】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物の混合物が得られる。
【0045】
従って、用いる式IVの化合物の異性体がR立体異性体である場合、結果として得られる式IIIの化合物は一般に、式IIIcと式IIIdの立体異性体の混合物の形態である。上述のように、所望により、この立体異性体混合物の形態の式IIIの化合物は、当モル比であってもなくても、IIIcとIIIdの混合物を得るために、常法によって単離することができ、あるいは、所望により、式IIIcとIIIdの各立体異性体を分離するため、また、それらの立体異性体を鏡像異性体的に純粋な化合物として得るためには、これら立体異性体の混合物を常法によって処理すればよい。
【0046】
これは不利なことのように見えるかもしれないが、発明者らは式IVの化合物と式Vの化合物との反応から最終的に得られた混合物が、式IIIの化合物の対応する実質的に純粋な立体異性体、すなわち、IIIa、IIIb、IIIcまたはIIIdへと容易に分離できることを見出した。これにより、本発明の一つの態様である式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体の合成が可能となる。
【0047】
別の特定の実施形態によれば、式IVの化合物は、存在し得る二種類の鏡像異性体(RまたはS)の混合物の形態で、所望により該鏡像異性体の一方に関して鏡像異性体的に富化されたものである。このような場合、得られる式IIIの化合物は、IIIa、IIIb、IIIcおよびIIIdの混合物(当モル比であってもなくてもよい);IIIaとIIIcの混合物(当モル比であってもなくてもよい);またはIIIbとIIIdの混合物(当モル比であってもなくてもよい)から選択される。
【0048】
式IVの化合物は当技術分野で公知の方法によって得ることができる。例えば、本発明者らが用いる合成アプローチの1つをスキーム1に記載する。グルタミン酸1(この場合、D−グルタミン酸)は、Silverman, R.B.; Levy, M.A., J. Org. Chem. 1980, 45, 815に記載のように、式2の化合物へと変換可能である。第二の工程は式3の化合物を得るための、公知の方法(Flyn, D.L., et al., J. Org. Chem., 1983, 48, 2424)を用いたアミド窒素の保護である。次に、2つの次工程として、第一に、2−ピロリドンの3位をジメチルアミノメチル基で置換して4[この方法では3位のキラル中心が制御されないので、実際には2つのジアステレオマーの混合物である]を得、MeIで第四級化し、除去すると、すでにPanday, S. K.; Griffart-Brunel, D.; Langlois, N.; Tetrahedron Lett., 1994, 35, 6673に記載されている式5の化合物(Rが−OEtであって、RがBOCである式IVの化合物)が得られる。この場合、得られる式IVの化合物はR配置である。S配置を望む場合には、出発材料としてL−グルタミン酸が用いられた(一般論として、5は出発グルタミン酸と同じ立体配置を有する)。
スキーム1
【化21】

【0049】
アジリジン環の形成を達成するためには、当業者に公知の多くの試薬がある。しかしながら、炭素−炭素二重結合からスピロ−アジリジンを合成するための試薬の選択は容易ではない。例えば、HBr/Hの存在下でクロラミン−Tを用いても(L.J. Suman; B.S. Sharma; S. Bir. Tetrahedron Letters 2004, 45, 8731)目的のアジリジンは得られず、下記一般式
【化22】

の塩素が付加された誘導体が得られた。
【0050】
幾度の実験を行った後、この反応に最も好適な試薬は式Vのベンジルヨージナンであることが判明した。特定の実施形態によれば、Rは−(O=)C−O−C(CH、−(O=)C−O−CHCH、(O=)S(=O)−トシルまたはフタルアミドから選択される。好ましい実施形態では、式Vの化合物はN−トシルイミノベンジルヨージナン(Baron E.; O’Brien P.; Towers T.D. Tetrahedron Lett., 2002, 43, 723)であり、これはGillepia, K., Synthetic Comunn. 2001, 123に記載の方法に従って合成することができる。
【0051】
式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得るための、式IVの鏡像異性体的に純粋な化合物またはその混合物と式Vの化合物との反応は、所望により触媒、好ましくは銅系触媒、より好ましくはCu(ft)またはCu(acac)(ここで、「ft」はフタロシアニンであり、「acac」はアセトアセテートである)から選択される触媒の存在下で行うことができる。触媒および条件に関してさらに詳しくは、Baron, E.; O’Brien, P.; Towers, T. D. Tetrahedron Lett., 2002, 43, 723およびS. L. Jain, B. Sain, Journal of molecular catalysis A: Chemical 2003, 195, 283参照。この反応は一般に、適当な温度、好ましくは0〜100℃の間の温度にて、適当な有機溶媒中で行う。該反応では、実施上、いずれの好適な有機溶媒を用いてもよいが(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなど)、特定の実施形態では、式IVの化合物が4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステルであって、式Vの化合物がN−トシルイミノベンジルヨージナン(PhI=NTs)である場合[実施例3.1および4.1]には、有機溶媒はアセトニトリルであり、反応は0℃〜室温(約18℃〜24℃)の間の温度で行う。
【0052】
さらに、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を経て、式Iのピログルタミン酸誘導体の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得るためにも使用できる。
【0053】
よって、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、RとYの特性によって異なる方法論、すなわち、
(A)が負電荷であって、Yが式VIIaのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を調製するためには、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIa
【化23】

(式中、点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成する)
の窒素含有求核分子とを反応させる;または
(B)がRであって、Yが式VIIbのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を調製するためには、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIb
【化24】

(式中、RaおよびRbは前記で定義されたものである)
の窒素含有求核分子とを反応させ、所望により、得られた混合物を式X
Z (X)
(式中、RおよびZは前記で定義されたものである)
の化合物でクエンチする;または
(C)がRであって、Yが式VIIcのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を調製するためには、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIbの窒素含有求核分子とを反応させ、得られた混合物を前記の式Xの化合物でクエンチすることによって、さらに式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物へと変換される。
【0054】
要するに、上記のように、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物の合成は、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と
式VIIIaの化合物とを、またはその代わりに
式VIIIbの化合物、および所望により式Xの化合物とを、またはその代わりに
式VIIIaの化合物、および所望により式Xの化合物とを
反応させることを含む。
【0055】
式IIIの出発化合物は、実質的に純粋な立体異性体[すなわち、(3R,5R)、(3S,5S)、(3R,5S)、または(3S,5R)]の形態であっても、または同じもしくは異なる割合の該実質的に純粋な立体異性体の混合物の形態(例えばジアステレオマー混合物などとして)であってもよい。本明細書において、「立体異性体の混合物」とは、等モル比であってもなくても、化合物の2種類以上の立体異性体のいずれの混合物も含む。一般に、出発材料(式IIIの化合物)の立体化学は得られる生成物(式IIの化合物)においても維持される。
【0056】
よって、特定の実施形態によれば、式IIIの化合物はその実質的に純粋な立体異性体の形態であり[すなわち、(3R,5R)、(3S,5S)、(3R,5S)、または(3S,5R)]、この場合には、式IIIの出発化合物の立体化学を維持する式IIの実質的に純粋な化合物が得られる。
【0057】
別の特定の実施形態によれば、式IIIの化合物は、等モル比であってもなくても、該立体異性体の混合物(すなわち、式IIIa、IIIb、IIIcおよびIIIdの化合物から選択される2種類以上の立体異性体の混合物)の形態である。この場合、式IIIの出発立体異性体の立体化学を維持する式IIの化合物の立体異性体の混合物が得られる。式IIの立体異性体の混合物は、シリカゲルクロマトグラフィーまたは再結晶のような常法に従って、その対応する実質的に純粋な立体異性体へと分離することができる。
【0058】
一つの実施形態では、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIaの化合物とを反応させて、Rが負電荷であって、Yが式VIIaのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得る[選択肢(A)]。
【0059】
この場合、一つの実施形態では、窒素含有求核分子VIIIaは式IX
【化25】

(式中、
nは0、1、2、3、4または5であり、かつ
は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、ハロゲン、置換もしくは非置換カルボキシエステル、置換もしくは非置換アミノから選択される)
のピリジンであり、かつ/またはこのピリジンは1以上の置換もしくは非置換縮合環を形成する。
さらに、特定の実施形態によれば、該式IXのピリジンは、ピリジンおよび次の化合物
【化26】

の1つから選択される。
別の特定の実施形態によれば、窒素含有求核分子VIIIaは式
【化27】

の化合物である。
【0060】
一般に、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と式VIIIaの化合物との反応は加熱下で行う。実際に当業者ならば、式IIIの化合物から式IIの化合物への変換、すなわち、求核分子の存在下でのアジリジン環の開環のような反応には通常、熱が必要であることを知っている。所望により、マイクロ波を使用できる。特定の実施形態では、加熱は、目的温度に到達させ、その温度で所望の時間維持するのが容易なマイクロ波を反応混合物に照射することにより達成される。一実施形態によれば、この反応は多孔質酸性触媒であるモンモリロナイトのような触媒の存在下で行う(例えば、実施例3.2.1、3.2.2、4.2.1および4.2.2)。
【0061】
他の実施形態では、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIbの化合物、および所望により式Xの化合物とを反応させて、RがRであって、Yが式VIIbのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得る[選択肢(B)]。
【0062】
この場合、一つの実施形態では、窒素含有求核分子VIIIbは次の化合物
【化28】

から選択される化合物である。
【0063】
選択肢(B)では、アジリジン環に向かう反応性種によって実質的に可能性のある2種類の条件が存在する。一方においては、式VIIIbの化合物と強塩基(すなわち、ブチルリチウムなど)とを接触させることにより式VIIIbの化合物の陰イオンを作り出すことができる。式VIIIbの化合物の陰イオンが形成されてしまえば、式IIIの化合物を添加すればよく、そのアジリジン環は式VIIIbの化合物の陰イオンによって反応を受ける。この反応は、式Xの化合物、例えば、ヨウ化メチル(R=アルキル)などのようなアルキル化化合物の添加によってさらに続けてもよい。式VIIIbの化合物の陰イオンの形成に必要な条件は当業者に公知である。このような種のいくつかは市販もされている。あるいは、得られる式IIの化合物においてRが水素であれば、式Xの化合物の添加前に反応をクエンチすることができる。他方においては、直接VIIIbの化合物を用いることができる。これらの条件には通常、加熱またはマイクロ波が必要であり、Rが水素である式IIの化合物が得られる。
【0064】
さらに別の実施形態では、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIaの化合物および式Xの化合物とを反応させて、RがRであって、Yが式VIIcのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得る[選択肢(C)]。式VIIIaおよびXの化合物は前記で定義されている。
【0065】
当業者ならば、式IIIの化合物から式IIの化合物への変換、すなわち、求核分子の存在下でのアジリジン環の開環のような反応には通常、熱が必要であることは判るであろう。所望により、マイクロ波を使用できる。
【0066】
式IIの化合物は2つのキラル中心を持っているので、実質的に純粋な立体異性体またはその混合物のいずれの形態でもあり得る。特定の実施形態では、式IIの化合物は
a)式IIa
【化29】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物;
b)式IIb
【化30】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物;
c)式IIc
【化31】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物;
d)式IId
【化32】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物;および
e)前述の、式IIa、IIb、IIcおよび/またはIIdの化合物の混合物(等モル比であってもなくてもよい)からなる群から選択される。
好ましい式IIの化合物は、それらの実質的に純粋な立体異性体を含め、対応する見出しで後述する。
【0067】
得られる式IIの化合物は単離してもよいし、あるいはさらに精製せずにそのまま次の工程に用いてもよい。
式IIの化合物の立体異性体混合物が得られる場合、当業者に公知の常法により所望の立体異性体を単離することができる。
【0068】
よって、本発明によれば、所望の立体化学を有する、式Iのピログルタミン酸誘導体の実質的に純粋な立体異性体の直接の前駆体である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、得られた式IIIの化合物の立体異性体混合物を精製した後に、その単離された立体異性体と対応する試薬とを反応させるか、あるいは、式IIIの化合物と式VIIIaまたはVIIIbおよびXの求核分子との反応から得られた混合物を精製することによるかのいずれかによって得ることができる。
【0069】
よって、本発明の方法の工程c)によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物が、該式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と式 HX(ここで、Xは上記のように定義される)の酸を含んでなる酸性媒体とを接触させることにより、式Iのピログルタミン酸誘導体の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物へと変換される。
【0070】
当業者ならば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物との反応を行うのに好適な式HXの有機酸または無機酸は判るであろう。特定の実施形態では、この酸HXはHCl、HBrなどのような無機酸である。好ましい実施形態によれば、HXはHBrである。
【0071】
式IおよびIIの化合物の性質によって、反応は1当量または2当量のHXを必要とする。当業者ならば、塩を形成させるのに必要な条件は判るであろう。本発明の実施形態によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を過剰量の式HX(ここで、Xは上記のように定義される)の酸と接触するように置く。さらなる実施形態によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物はHBr水溶液に溶かし、加熱する。
【0072】
上記によれば、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物から段階的に式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得ることができる。しかしながら、ワンポット法によって式IIIの化合物から式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得ることもできる。よって、それは本発明のさらなる態様である、式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体または混合物の合成のためのワンポット法であり、その方法は、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と式VIIIaまたはVIIIbの窒素含有求核分子とを反応させた後、前工程から得られた化合物と式HXの酸とを反応させることを含む。
【0073】
式Iの化合物は2つのキラル中心を持っているので、それはその任意の実質的に純粋な立体異性体の形態またはその混合物の形態でもあり得る。式Iの好ましい化合物は、それらの実質的に純粋な立体異性体を含め、対応する見出しで後述する。
【0074】
式Iの化合物
式Iの化合物は2つのキラル中心を持っているので、それらはその任意の実質的に純粋な立体異性体の形態またはその混合物の形態でもあり得る。特定の実施形態では、式Iの化合物は、
a)式Ia
【化33】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な立体異性体化合物、
b)式Ib
【化34】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な立体異性体化合物、
c)式Ic
【化35】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な立体異性体化合物、
d)式Id
【化36】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な立体異性体化合物、および
e)前述の、式Ia、Ib、Icおよび/またはIdの実質的に純粋な化合物の混合物(ただし、該混合物は次の化合物:
(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または
(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)
からなる群から選択される。
【0075】
式Iのいくつかの化合物、すなわち、(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、および(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリドは、存在し得る4種類のその立体異性体全ての混合物として記載されているが、それらの実質的に純粋な立体異性体の合成はこれまでに達成されていない。
【0076】
特定の実施形態では、式Iの化合物において、Rは−OHまたは−ORa(ここで、Raは前記で定義されたものである)であり、好ましくは−OHである。
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、Rは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、好ましくは水素である。
【0077】
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、RまたはRは独立に水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、好ましくは、その両者が同時に水素である。
【0078】
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、Xは医薬上許容される陰イオン、好ましくは臭素イオンまたは塩素イオンである。
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、RはOHまたはORaであり、好ましくはOHであり;Rは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、好ましくは水素であり;RまたはRは独立に水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、好ましくは、RまたはRは同時に水素であり;かつ/またはXは医薬上許容される陰イオン、好ましくは臭素イオンまたは塩素イオンである。
【0079】
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、Yは
【化37】

から選択される有機残基である。
【0080】
他の特定の実施形態では、式Iの化合物において、Yは
【化38】

から選択される有機残基である。
特定の実施形態によれば、式Iの化合物は、式I’a
【化39】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物である。
本発明の特定の実施形態によれば、該式Iの化合物は式I’b
【化40】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物である。
本発明の特定の実施形態によれば、該式Iの化合物は、式I’c
【化41】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物である。
本発明の特定の実施形態によれば、該式Iの化合物は、式I’d
【化42】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物である。
【0081】
本発明の特定の実施形態によれば、当モル比であってもなくても、式I’a、I’b、I’cおよび/またはI’dの2以上の化合物を含んでなる混合物が提供され、例えば、式I’aとI’bの化合物を含んでなる混合物、式I’aとI’cの化合物を含んでなる混合物、または式I’aとI’dの化合物を含んでなる混合物、または式I’bとI’cの化合物を含んでなる混合物、または式I’bとI’dの化合物を含んでなる混合物、または式I’cとI’dの化合物を含んでなる混合物、または式I’aとI’bとI’cの化合物を含んでなる混合物、または式I’aとI’bとI’dの化合物を含んでなる混合物、または式I’bとI’cとI’dの化合物を含んでなる混合物、または式I’aとI’bとI’cとI’dの化合物を含んでなる混合物がある。
【0082】
本発明の特定の実施形態によれば、式Iの化合物は
3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド;
3R,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド;
3R,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド;および
3S,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド
からなる群から選択される。
【0083】
本発明はさらに、当モル比であってもなくても、該式Ia、Ib、Icおよび/またはIdの化合物の混合物を含んでなる組成物を提供する{ただし、該混合物は次の化合物:
(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または
(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない}。
【0084】
式IIの化合物
式IIのいくつかの化合物、すなわち、1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテートまたは1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムヒドロクロリドは、存在し得る4種類のその立体異性体全ての混合物として記載されているが、それらの実質的に純粋な立体異性体の合成はこれまでに達成されていない。
【0085】
よって、別の態様においては、本発明は式IIの実質的に純粋な化合物またはその混合物に関する。
特定の実施形態では、本発明は、式IIa、IIb、IIcおよびIIdの実質的に純粋な化合物に関する。
【0086】
特定の実施形態では、本発明は、前述の式IIa、IIb、IIcおよび/またはIIdの化合物の、任意のモル比の混合物に関する{ただし、該混合物は次の化合物:
1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;
1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;または
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない}。
【0087】
別の特定の実施形態では、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−ORaであり、好ましくは、ここでRaがアルキル基である化合物である。
別の特定の実施形態では、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基である化合物である。
【0088】
別の特定の実施形態では、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−(O)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである化合物である。
別の特定の実施形態では、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−ORaであり、好ましくは、ここで、Raがアルキル基であり;Rが−(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基であり;かつ、Rが−(O=)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである化合物である。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、R、RおよびRが独立に水素である化合物である。
本発明の別の実施形態によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−OHである化合物である。
本発明の別の実施形態によれば、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが負電荷である化合物である。
【0090】
本発明はまた、前述の式IIa、IIb、IIcおよびIIdの化合物ならびにその混合物からなる群から選択される化合物を任意のモル比で含んでなる組成物に関する{ただし、該混合物は次の化合物:
1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;
1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート;または
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない}。
【0091】
式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、前述のように、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と
式VIIIaの化合物とを、またはその代わりに
式VIIIbの化合物、および所望により式Xの化合物とを、またはその代わりに
式VIIIaの化合物、および所望により式Xの化合物とを
反応させることを含む方法によって得ることができる。
【0092】
該方法は本発明のさらなる態様をなし、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物の合成を可能とする。
【0093】
式IIIの化合物
別の態様では、本発明は、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物に関する。該式IIIの化合物は2つのキラル中心を持っているので、いずれの実質的に純粋な立体異性体でもその混合物でもあり得る。
【0094】
特定の実施形態では、式IIIの化合物は式IIIa、IIIb、IIIcおよびIIIdの化合物およびその任意の混合物から選択される。
別の特定の実施形態では、本発明は、式IIIa、IIIb、IIIcおよびIIIdの2以上の化合物を含んでなる混合物に関する。該混合物の限定されない例としては、それら化合物のうち2つの混合物(例えば、IIIaとIIIb、IIIaとIIIc、IIIaとIIId、IIIbとIIIc、IIIbとIIId、またはIIIcとIIIdの混合物)、または該化合物のうち3つの混合物(例えば、IIIaとIIIbとIIIc、IIIaとIIIbとIIId、またはIIIbとIIIcとIIIdの混合物)、または該4つの化合物の混合物(例えば、IIIaとIIIbとIIIcとIIIdの混合物)が挙げられる。各特定の化合物(IIIa〜IIId)は該混合物中にいずれの割合または比率で存在してよく、例えば、当モルの割合または比率であっても、該化合物のうち1以上が他のものに対して過剰となる種々の割合または比率であってもよい。
【0095】
別の特定の実施形態では、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−ORaであり、好ましくは、ここで、Raがアルキル基である化合物である。
別の特定の実施形態によれば、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基である化合物である。
【0096】
別の特定の実施形態によれば、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが(O=)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである化合物である。
別の特定の実施形態によれば、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、Rが−ORa、好ましくは、ここで、Raがアルキル基であり;Rが−(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基であり;かつ、Rが−(O=)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである化合物である。
【0097】
別の特定の実施形態によれば、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、R、RおよびRが独立に水素である化合物である。
式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体または混合物は、前述のように、鏡像異性体的に純粋な形態であっても鏡像異性体混合物の形態であってもよい式IVの化合物と式Vの化合物とを反応させることによって得ることができる。該方法は本発明のさらなる態様をなす。該方法により、式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得ることもまた可能能である。
【0098】
式Iの化合物および医薬組成物の使用
式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物は、対象においていくつかの症状、例えば、腫瘍、免疫不全、感染などの処置および/または予防のための薬剤の有効成分として使用できる。
【0099】
式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物での処置に感受性のある症状の非限定的な例としては、
A)癌または腫瘍関連症状:実際には、急性リンパ芽球性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、成人急性骨髄性白血病、副腎皮質癌腫、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連癌、肛門癌、星状細胞腫、小児小脳性星状細胞腫、基底細胞癌腫、胆管癌、肝外胆嚢癌(Extrahepatic Bladder Cancer)、膀胱癌、骨癌、骨肉腫/悪性繊維性組織球腫、脳幹膠腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(Supratentorial Primitiva Neuroectodermal Tumors)、視覚経路・視床下部神経膠腫、乳癌、Mate気管支腺腫/カルチノイド、小児バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、未知の原発性中枢神経系リンパ腫の胃腸管癌腫、原発性小脳性星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、小児ユーイング系腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫眼癌、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸管カルチノイド腫瘍、胚細胞腫瘍、卵巣妊娠絨毛腫瘍神経膠腫、成人神経膠腫、脳幹膠腫、大脳星状細胞腫神経膠腫、ヘアリー細胞性白血病、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性)肝細胞(肝臓)癌、小児(原発性)ホジキンリンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌腫(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、腎臓癌、喉頭癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞、口唇および口腔癌、小児(原発性)肺癌、非小細胞肺癌、小細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞ホジキン成人リンパ腫、ホジキン小児リンパ腫、非ホジキン成人リンパ腫、非ホジキン小児リンパ腫、原発性中枢神経系、マクログロブリン血症、骨肉腫のワルデンストローム悪性繊維性組織球腫、髄芽細胞腫、黒色腫、眼内(眼)メルケル細胞癌腫、中皮腫、成人悪性中皮腫、潜伏原発性多発性内分泌腺腫症候群を伴う小児転移性扁平上皮頸部、小児多発性骨髄腫/血漿細胞新生物菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄腫,多発性骨髄増殖性疾患、慢性鼻腔・副鼻腔癌、鼻咽腔癌、鼻咽頭癌、小児神経芽腫、口腔癌、小児口腔癌、口唇・口咽頭癌、骨卵巣癌の骨肉腫/悪性繊維性組織球腫、小児卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性潜伏腫瘍、膵臓癌、小児膵臓癌、膵島細胞副鼻腔・鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、クロム親和性細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児下垂体腫瘍、血漿細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、腎細胞(腎臓)癌、小児腎盂および尿管、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、小児唾液腺癌、唾液腺癌、小児肉腫、ユーイング系腫瘍、肉腫、カポジ肉腫、軟組織、成人肉腫、軟組織、小児肉腫、子宮セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫)、小児皮膚癌(黒色腫)、皮膚癌腫、メルケル細胞小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、成人軟組織肉腫、小児扁平上皮細胞癌腫、潜伏原発転移性胃癌を伴う扁平上皮細胞頸部癌、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、小児胸腺腫および胸腺癌腫甲状腺癌、甲状腺癌、小児の腎盂移行上皮癌および尿管栄養芽細胞腫瘍、妊娠性の不明の原発部位、移行上皮細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮内膜子宮肉腫、膣癌、視覚経路・視床下部神経膠腫、小児陰門癌、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ビルムス腫瘍などをはじめとするあらゆる癌および腫瘍を含む;
【0100】
B)感染:実際には、細菌、真菌およびウイルス起源の感染など、あらゆる種類の感染を含む;または
C)自己免疫疾患:実際には、多発性硬化症(MS)、クローン病、関節リウマチ、1型真性糖尿病、乾癬、狼瘡、潰瘍性大腸炎、白斑、セリアック病、脈管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、甲状腺炎(橋本、グレーブス)、重症筋無力症、ギラン−バレー症候群、ブドウ膜炎、扁平苔癬、側頭動脈炎、サルコイドーシス、ドライ症候群(シェーグレン)、気管支喘息、天疱瘡、強直性脊椎炎、硬皮症、繊維筋痛症、リウマチ熱などをはじめとする、"American Autoimmune Related Diseases Association”のウェブサイト[http://www.aarda.org]に挙げられているあらゆる自己免疫疾患を含む;
が挙げられる。
【0101】
よって、さらなる態様によれば、本発明は、式Iの化合物、その実質的に純粋な立体異性体Ia、Ib、IcまたはId、または当モル比であってもなくてもその混合物{ただし、該混合物は次の化合物:(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリドの4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない}と医薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物と呼ぶ)に関する。
【0102】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は有効成分として、式Iの化合物少なくとも1つの実質的に純粋な立体異性体、すなわち、Ia、Ib、IcもしくはId、または当モル比であってもなくてもその混合物(ただし、該混合物は前述の化合物(i)または(ii)の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)を、治療上有効な量で含む。本明細書で用いる意味において、「治療上有効な量」という表現は、所望の作用を生じるように算出された有効成分の量を意味し、一般に、とりわけ、用いる有効成分および得られる治療作用の固有の特徴によって決定される。特定の実施形態では、前述の症状の処置および/または予防を必要とする対象に投与する有効成分の用量は10−10〜1010mg/体重kg、一般には10−3〜10mg/体重kgの間の範囲である。
【0103】
「担体」とは、有効成分が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを意味する。このような医薬担体は水のような無菌の液体、および石油、動物、植物もしくは合成起源のものを含む油(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油など)であり得る。特に注射溶液としては、水または生理食塩水、ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液が担体として好ましく用いられる。好適な医薬担体としては、E.W. Martinにより”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。さらに、「医薬上許容される」とは、生理学的に許容され、かつ、ヒトに投与しても胃の不快感、めまいなどのアレルギー反応または類似の不都合な反応を通常生じない分子存在および組成物を意味する。本明細書において好ましくは、「医薬上許容される」とは、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可されているか、または米国薬局方もしくは動物、さらに特にヒトにおける使用のための他の一般に認知されている薬局方に挙げられていることを意味する。
【0104】
処置を必要とする動物、例えばヒトなどの対象に投与する場合、本発明の医薬組成物は経口(例えば、経口、舌下など)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、筋肉内、など)、膣、直腸、鼻腔、局所的、眼などの適当ないずれの経路によって投与してもよい。
【0105】
有効成分と好適な医薬上許容される担体とを混合することによって得られる本発明の医薬組成物は、複数の医薬投与形、例えば、固体、液体などで投与することができる。本発明の医薬組成物の該医薬投与形の限定されない例としては、口腔用滴剤(溶液、懸濁液エマルションなど)、経口製剤(液体、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ペースト、粉末など)、経口凍結乾燥物、口腔ガム、経口溶液または懸濁液用の粉末、顆粒、胃耐性顆粒、徐放性顆粒、放出改良顆粒、経口懸濁液用の顆粒、経口溶液または懸濁液用の粉末および溶剤、シロップ、シロップ用粉末、シロップ用顆粒、錠剤(例えば、可溶性錠剤、分散性錠剤、被覆錠剤、フィルムコート錠剤、発砲性錠剤、口腔分散錠剤、胃耐性錠剤、徐放性錠剤、放出改良錠剤、バッカル錠、チュワブル錠など)、ハーブティー、インスタント・ハーブティー、発泡性粉末または顆粒、サシェ剤、カプセル剤(例えば、硬カプセル、軟カプセル、胃耐性硬カプセルまたは軟カプセル、徐放性硬カプセルまたは軟カプセル剤、放出改良硬カプセルまたは軟カプセルなど)、丸剤、持続放出性管腔内ディバイス、パルス放出性管腔内ディバイス、舐剤(lick blok)、薬用飼料用のプレミックス、ペレット、含嗽薬、含嗽薬用濃縮物、含嗽薬(溶液用の粉末または錠剤)、口腔粘膜用溶液、懸濁液、滴剤、スプレー、ゲル、ペースト、カプセル剤など、舌下用スプレー、錠剤など、口中洗浄剤、歯肉用溶液、ゲル、ペーストなど、トローチ、打錠トローチ、香錠、歯科用ゲル、スティック、インサート、粉末、溶液、懸濁液、エマルションなど、練り歯磨き、クリーム、ゲル、軟膏、皮膚用ペースト、フォーム、スプレー、溶液、懸濁液、粉末、液体、溶液、皮膚用溶液、懸濁液、エマルション用の濃縮物、スティック、スポンジなど、硬膏、シャンプー、イオン泳動用溶液、経皮パッチ(transdermal match)、湿布、浸漬溶液、懸濁液、エマルション、浸漬溶液、懸濁液またはエマルション用濃縮物、注入溶液、懸濁液またはエマルション、滴剤溶液、滴剤懸濁液、滴剤エマルション、乳首浸漬溶液、乳首浸漬懸濁液、乳首浸漬エマルション、乳首スプレー溶液、眼用クリーム、眼用ゲル、眼用軟膏、点眼剤(溶液、懸濁液、溶液用粉末および溶剤、懸濁液用粉末および溶剤、再構成用溶剤、ローション、ローション再構成用溶剤など)、眼用インサート、耳用クリーム、耳用ゲル、耳用軟膏、点耳剤(溶液、懸濁液、エマルション、粉末など)、耳用スプレー(溶液、懸濁液など)、耳用洗浄剤(溶液、エマルションなど)、耳用タンポン、耳用スティック、鼻用クリーム、鼻用ゲル、鼻用軟膏、点鼻剤(溶液、懸濁液、エマルションなど)、鼻用粉末、鼻用スプレー(溶液、懸濁液、エマルションなど)、鼻腔洗浄剤、鼻用スティック、膣用クリーム、膣用ゲル、膣用軟膏、膣用フォーム、膣用溶液、膣用懸濁液、膣用エマルション、膣溶液用錠剤、膣用硬カプセルまたは軟カプセル、膣用錠剤、発泡性膣用錠剤、膣用送達系、直腸用クリーム、直腸用ゲル、直腸用軟膏、直腸用フォーム、直腸用溶液、直腸用懸濁液、直腸用エマルション、直腸溶液用濃縮物、直腸溶液用粉末、直腸懸濁液用粉末、直腸懸濁液用錠剤、坐剤、直腸用カプセル、直腸用タンポンネブライザー溶液、ネブライザー懸濁液、ネブライザー懸濁液用粉末、ネブライザー溶液用粉末、ネブライザーエマルション、加圧吸入剤(溶液、懸濁液、エマルションなど)、吸入粉末、吸入粉末(硬カプセル)、分散済み吸入粉末、吸入蒸気(粉末、カプセル、溶液、錠剤、軟膏、液体など)、吸入ガス、注射用ゲル、注射用溶液、注射用懸濁液、注射用エマルション、注射溶液用粉末、注射懸濁液用粉末、注射溶液用粉末および溶剤、注射懸濁液用粉末および溶媒、注射溶液用濃縮物、点滴用溶液、点滴用エマルション、点滴溶液用粉末、点滴溶液用濃縮物、点滴溶液用粉末および溶剤、移植錠剤、腹膜透析用溶液、血液濾過用溶液、血液ダイアフィルトレーション用溶液、血液透析用溶液、血液透析溶液用濃縮物、膀胱腔内用溶液、膀胱洗浄液、膀胱洗浄液用粉末、尿道用ゲル、尿道用スティック、気管肺内点滴注入剤(溶液)、気管肺内点滴注入剤(懸濁液(uspension))、気管肺内点滴注入剤(溶液用粉末および溶剤)、子宮頸管内膜用ゲル、子宮頸管内膜ゲル用粉末および溶剤、乳房内溶液、乳房内懸濁液、乳房内エマルション、乳房内軟膏、乳首用スティック、子宮内送達系、など
が挙げられる。
【0106】
本発明の医薬組成物の所望の医薬投与形を作製するのに必要な担体および補助物質は、とりわけ、選択された医薬投与形によって異なる。このような医薬組成物の医薬投与形は当業者に公知の常法に従って作製される。種々の有効成分に関しての投与法、用いる賦形剤およびそれらの作製方法は、"Tratado de Farmacia Galenica”, C. Fauli i Trillo, Luzan 5, S.A. de Ediciones, 1993に見出せる。
【0107】
別の態様において、本発明は、対象における免疫応答を増強とした医薬組成物の製造のため、または抗腫瘍医薬組成物の製造のため、または細菌、真菌またはウイルス起源の感染の処置を目的とした医薬組成物の製造のため、または自己免疫疾患の処置を目的とした医薬組成物の製造のための、式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体、すなわち、Ia、Ib、IcまたはId、または等モル比であってもなくてもその混合物{ただし、該混合物は次の化合物:(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリドの4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない}の使用に関する。
【0108】
本発明によって提供される医薬組成物での処理に感受性のある症状の非限定的な例としては、前記されたものが挙げられる。
以下、本発明を説明するために実施例を用い得るが、これらはその範囲の限定と考えるべきではない。
【実施例】
【0109】
一般法
融点は総て毛細管で測定し、補正は行わなかった。IRスペクトルはNicolet Impact分光光度計を用い、KBrディスクで測定した。1H NMRスペクトルは、VARIAN UNITYおよびUNITYPLUS装置にて300〜500MHzで得られたものである。化学シフト(δ)は、内部標準としてTMSを用いて測定し、各シグナルの多重度(s,一重線;d,二重線;dd,二重の二重線;t,三重線;q,四重線;m,多重線)を示す。HPLC−MS分析はAgilent 1100装置で行った。クロマトグラフィーカラムLuna C18(150×4.6mm)5μm Phenomenexを、4%ギ酸水溶液(A)、水(B)およびアセトニトリル(C)の三成分勾配からなる移動相とともに用いた。勾配はA(2.5%)、B(93%)およびC(4.5%)で始め、30分でA(2.5%)、B(4.5%)および(93%)とした。質量検出器では、フラグメンターを70eVで作動させた。元素分析はLECO CHNS−932装置で行った。収量は総て、単離された純粋な化合物に相当するものである。
【0110】
実施例1は、本発明の方法の出発材料(式IVの化合物)である(2R−4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステル)の合成に関するものである。
【0111】
実施例2は、本発明の方法の出発材料である式Vの化合物の合成に関するものである。
実施例3および4は、ワンポット法を用い、式Iの化合物である(3R,5R)、(3S,5S)、(3R,5S)および(3S,5R)−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミドの合成に関するものである。
【0112】
実施例5は、段階的合成に従って、3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミドのワンポット合成に関するものである。
実施例6は、腫瘍増殖に対する式Iの化合物の種々の異性体の作用を分析するものである(アッセイ腫瘍:RENCA)。
【0113】
実施例1
式IVの化合物:(R)−5(2R−4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステル)の合成
標題化合物の合成はスキーム1に示した通りである。
【0114】
1.1 化合物2:2S−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸エチルエステルの合成
10Lの反応器に、−10℃に冷却した無水エタノール(5.0L)中のD−グルタミン酸1(1kg,6.80mol)を仕込み、滴下漏斗を通して塩化チオニル(2.0kg,14.9mol)を2時間かけてゆっくり加えた。添加が完了した後、混合物を室温で1時間攪拌した後、さらに1時間80℃に加熱した。得られた溶液を濃縮乾固した(CARE:HClおよびSO蒸気の放出)。残渣をエタノール(2.5L)で希釈し、エタノール中水酸化カリウム溶液(10重量%,約2.0L)を添加してpH=7に中和した。生じた固体を濾去し、溶液を濃縮し、1のジエチルエステルを蝋状の固体として得た。
【0115】
次に、残渣を2時間真空蒸留し(90℃,3.1ミリバール)、残留物をさらに150℃、5.2ミリバールで2時間加熱した。この残渣は室温で固化した。MTBE/ヘキサン(2:1)から再結晶させ、目的生成物2を褐色がかった固体として得た(960g,90%)。融点49〜51℃。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): 6.82 (bs, 1H); 4.29-4.23 (m, 1H); 4.21 (q, 2H, J=7.3Hz); 2.48-2.17 (m, 4H); 1.28 (t, 3H, J=7.3Hz) ppm.
【0116】
1.2 3:2R−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステルの合成
反応器内で、ジクロロメタン(8.0L)中、ピログルタミン酸エチル2(900g,5.73mol)の攪拌溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(2.5kg,11.5mol)、トリエチルアミン(800mL,5.73mol)およびDMAP(700g,5.73mol)を加え、反応物を2時間攪拌した。この赤褐色の溶液を濃縮乾固し、酢酸エチル(10.0L)に希釈し、HCl 3N水溶液(4×2.5L)で洗浄した。合わせた有機層を水(6×2.5L)およびブライン(1.0L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この反応混合物濃縮乾固し、氷中で冷却し、MTBEおよびヘキサン(1:1)でトリチュレートし、褐色固体(390g)を得た。母液を濃縮して油状物(600g)を得、クロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/酢酸エチル3:1)の後、無色の固体(386g)3を得た。全収量(776g,54%)。融点48〜49℃。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): 4.57 (dd, 1H, J=9.5Hz, J=3.3Hz); 4.20 (q, 2H, J=7.3Hz); 2.72-1.77 (m, 4H); 1.46 (s, 9H); 1.26 (t, 3H, J=7.3Hz) ppm.
【0117】
1.3 4:シス−およびトランス−2R−4−ジメチルアミノ−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステルの混合物の合成
−78℃にて、THF(1M,0.24L,0.24mol)中、LiHMDSの攪拌溶液に、乾燥THF(1.0L)中、3(30g,0.12mol)の溶液をゆっくり加えた。40分間−78℃で攪拌した後、エッシェンモーザー(Eschenmoser)の塩(45.5g,0.24mol)を加え、さらに20分間攪拌を続けた。この反応混合物を室温まで温め、さらに16時間攪拌した。この混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチル(300mL)と水(300mL)とで分液した。水層を再び酢酸エチル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機抽出液をHCl 1M水溶液(3×150mL)で洗浄した。酸性層をすぐに重炭酸ナトリウムで中和し、酢酸エチル(3×300mL)で抽出した。有機相を水(300mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固し、目的生成物4を淡褐色の油状物として得(26.9g,72%)、これをそのまま次の工程で用いた。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): 4.62 (dd, 1H, J=9.4Hz, J=3.3Hz);4.21 (q, 2H,
J=7.3Hz); 4.18-4.07 (m, 1H); 2.57-2.20 (m, 3H); 2.22 (s, 3H); 2.17 (s, 3H); 1.47 (s, 9H); 1.24 (t, 3H, J=7.3Hz) ppm.
【0118】
1.4 (R)−5:2R−4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステルの合成
オートクレーブ(4L)に、MeOH(2.5L)中、4(244.9g,0.74mol)の溶液およびヨードメタン(138.2mL,2.22mol)を仕込んだ。この反応混合物を室温で48時間攪拌した。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(2L)と10%NaHCO(1L)とで分液した。水相を再び酢酸エチル(3×500mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1→酢酸エチル)により精製し、(R)−5を無色の油状物として得た(55.1g,27%)。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): 6.23 (t, 1H, J=2.7Hz); 5.51 (t, 1H, J=2.2Hz); 4.61 (dd, 1H, J=10.3Hz, J=3.3Hz); 4.22 (q, 2H, J=7.1Hz); 3.17-3.05 (m, 1H); 2.75-2.64 (m, 1H); 1.47 (s, 9H); 1.23 (t, 3H, J=7.1Hz) ppm.
【0119】
実施例2
式Vの化合物:N−トシルイミノベンジルヨージナンの合成
標題化合物の合成をスキーム2に示す。
スキーム2
【化43】

【0120】
p−トルエンスルホンアミド(5.13g)、水酸化カリウム(4.20g)およびメタノール(120mL)を、その反応混合物を10℃以下に保ちながら、氷浴中、三角フラスコ内で攪拌した。この攪拌混合物に二酢酸ヨードベンゼン(9.60g)を加え、得られた黄色の溶液を室温で3.5時間攪拌した。この反応混合物を大過剰の氷水に注ぎ、1時間攪拌した。一晩放置すると、黄色の固体が沈殿した。この淡黄色固体を濾過により単離し、ブフナー漏斗で気流を用いて乾燥させた。この生成物が不溶のエーテルを用い、存在しているヨードベンゼンを数回洗い流した。この黄色固体をできる限り最少量の沸騰メタノールに溶解した。この溶液を一晩冷凍庫に入れ、灰白色の固体を濾過により回収した(5.1g,46%)。
【0121】
実施例3
(3R,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド)9cおよび(3S,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド)9dの合成
標題化合物(9cおよび9d)の合成をスキーム3に示す。
スキーム3
【化44】

【0122】
3.1 3R,6R−4−オキソ−1−(4−トルエンスルホニル)−1,5−ジアザスピロ[2,4]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸5−tertブチルエステル6−エチルエステル7cおよび3S,6R−4−オキソ−1−(4−トルエンスルホニル)−1,5−ジアザスピロ[2,4]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸5−tertブチルエステル6−エチルエステル7dの合成
乾燥アセトニトリル(12mL)中、(R)−5(3.02g,11.21mmol)の冷溶液(0℃,氷水浴)に、PhI=NTs(実施例2参照)(6.27g,16.8mmol)を一度に加えた後、Cu(acac)(293mg,1.12mmol)を加えた。得られた不均質な混合物を0℃で15分間攪拌し、室温まで温め、一晩攪拌した。得られた混合物に1M NaOH(50mL)を加え、混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出した。次に、有機層をブライン(25mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、蒸発乾固した。この粗油状物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/EtOAc:2/1)により精製し、アジリジン7c(730mg)および7d(287mg)を白色固体として得た(合わせた収率:23%)。
7c:
融点: 94-95℃
[α]D25℃= +42°(0.032, CHCl3)
IR(KBr,cm-1): 2977, 2928, 1808, 1746, 1352, 1298, 1251, 1192, 1161, 988, 690.
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) (7c): 7.82 (d, 2H, J=7.3Hz); 7.31 (d, 2H, J=7.7Hz); 4.74 (dd, 1H, J=9.7Hz, J=2.02Hz); 4.25-4.22 (m, 2H); 3.28 (dd, 1H, J=14.4Hz, J=9.7Hz); 2.78 (s, 1H); 2.57 (s, 1H); 2.53 (dd, 1H, J=14.4Hz, J=2.02Hz);
2.42 (s, 3H); 1.49 (s, 9H); 1.29 (t, 3H, J=7.0Hz) ppm.
13C (CDCl3, 125 MHz) (7c): 170.5, 166.9, 148.7, 145.1, 135.2, 129.6, 127.9, 84.5, 62.0, 55.5, 47.1, 38.3, 27.7, 25.3, 21.5, 14.0ppm
MS (ESI+): m/z: 339 (M+1-Boc)
7d:
融点: 55-56℃
[α]D25℃= +11°(0.036, CHCl3)
IR (KBr, cm-1): 2981, 2936, 1799, 1749, 1371, 1330, 1253, 1203, 1156, 1094, 989, 687.
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) (7d): 7.79 (d, 2H, J=8.0Hz); 7.30 (d, 2H, J=7.7Hz); 4.70 (dd, 1H, J=9.4Hz, J=4.3Hz); 4.30-4.22 (m, 2H); 3.06 (dd, 1H, J=15.1Hz, J=4.3Hz)., 2.92 (dd, 1H, J=15.4Hz, J=9.4Hz); 2.82 (s, 1H)., 2.63 (s, 1H); 2.41 (s, 3H); 1.49 (s, 9H); 1.28 (t, 3H, J=7.0Hz) ppm.
13C (CDCl3, 125 MHz) (7d): 169.5, 167.1, 148.9, 145.0, 135.7, 129.6, 127.9, 84.5, 62.1, 56.1, 47.0, 37.1, 27.8, 24.5, 21.6, 14.0 ppm.
MS (ESI+): m/z: 339 (M+1-Boc)
【0123】
3.2.1 3R,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド9cのワンポット合成
アジリジン7c(200mg,0.46mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,40mg)およびピリジン(37μL,0.46mmol)の混合物に100℃で10分間マイクロ波(300W)を照射した。この粗混合物を酢酸エチル[EtOAc](10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなるまで真空蒸発させた。このベタイン8cをさらに精製することなく次の工程に用いた(HPLCにより純度93%)。この粗褐色油状物を48%HBr水溶液(20mL)に溶解し、18時間還流下で加熱した。この混合物を水で希釈し、EtOAc(3×10mL)で洗浄し、水相を蒸発乾固した。この粗油状物を、固定相としてセルロース粉末:SiO:セルロース粉末:活性炭(1cm:0.5cm:0.5cm:2cm)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、9cを固体として得た(51mg,28%)。融点:>200℃。
[α]D25℃= +40°(0.041, CH3OH)
IR (KBr, cm-1): 3434, 3051, 1725, 1633, 1488) 1420, 1384, 1280, 1188, 1145, 1083, 683.
1H-NMR (D2O, 500 MHz) 8.82 (d, 2H, J=5.3Hz); 8.59 (t, 1H, J=7.8Hz); 8.09 (t, 2H, J=6.8Hz); 5.21 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.93 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.24 (t, 1H, J=9.2Hz); 3.01 (dd, 1H, J=13.9Hz, J=9.3Hz); 2.11 (t, 1H, J=7.8Hz) ppm.
13C (D2O, 125 MHz): 173.2, 173.1, 147.1, 145.6, 128.6, 64.4, 64.2, 49.3, 33.0
ppm.
MS (ESI+): m/z: 236 (M+1-2Br).
【0124】
3.2.2 3S,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド9dのワンポット合成
アジリジン7d(200mg,0.46mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,40mg)およびピリジン(37μL,0.46mmol)の混合物に100℃で10分間マイクロ波(300W)を照射した。この粗混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなるまで真空蒸発させた。このベタイン8dさらに精製することなく次の工程に用いた(HPLCにより純度93%)。この粗褐色油状物を48%HBr水溶液(20mL)に溶解し、18時間還流下で加熱した。この混合物を水で希釈し、EtOAc(3×10mL)で洗浄し、水相を蒸発乾固した。この粗油状物を、固定相としてセルロース粉末:SiO:セルロース粉末:活性炭(1cm:0.5cm:0.5cm:2cm)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、9d固体として得た(52g,28%)。融点:>200℃。
[α]D25℃= +40°(0.038, CH3OH)
IR (KBr, cm-1): 3435, 3051, 1721, 1631, 1509, 1475, 1422, 1384, 1280, 1190, 1144, 683.
1H-NMR (D2O, 500 MHz) 8.76 (d, 2H, J=5.3Hz); 8.59 (t, 1H, J=7.8Hz); 8.07 (t, 2H, J=6.8Hz); 5.19 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.78 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.33 (t, 1H, J=9.2Hz); 2.90 (dd, 1H, J=13.9Hz, J=9.3Hz); 2.46 (t, 1H, J=7.8Hz) ppm.
13C (D2O, 125 MHz): 173.3, 172.4, 147.0, 145.1, 128.5, 65.6, 64.7, 49.3, 33.9 ppm.
MS (ESI+): m/z: 236 (M+1-2Br).
【0125】
実施例4
(3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド)9aおよび(3R,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド)9bの合成
標題化合物(9aおよび9b)の合成をスキーム4に示す。
スキーム4
【化45】

【0126】
4.1 3S,6S−4−オキソ−1−(4−トルエンスルホニル)−1,5−ジアザスピロ[2,4]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸5−tertブチルエステル6−エチルエステル7aおよび3R,6S−4−オキソ−1−(4−トルエンスルホニル)−1,5−ジアザスピロ[2,4]ヘプタン−5,6−ジカルボン酸5−tertブチルエステル6−エチルエステル7bの合成
乾燥アセトニトリル(7mL)中、(S)−5(1.84g,6.82mmol)の冷溶液(0℃,氷水浴)に、PhI−NTs(実施例2参照)(3.82g,10.2mmol)を一度に加えた後、Cu(acac)(178mg,0.682mmol)を加えた。得られた不均質な混合物を0℃で15分間攪拌し、室温まで温め、一晩攪拌した。得られた混合物に、1M NaOH(20mL)を加え、この混合物をEtOAc(3×25mL)で抽出した。次に、有機層をブライン(25mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、蒸発乾固した。この粗油状物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン/EtOAc:2/1)により精製し、アジリジン7a(641mg)および7b(478mg)を白色固体として得た(合わせた収率:37%)。
7a:
融点: 95-96℃
[α]D25℃= -57°(0.029, CHCl3)
IR(KBr, cm-1): 2977, 2928, 1808, 1746, 1352, 1298, 1251, 1192, 1161, 988, 690.
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) (7a): 7.77 (d, 2H, J=7.3Hz); 7.27 (d, 2H, J=7.7Hz); 4.70 (dd, 1H, J=9.7Hz, J=2.02Hz); 4.21-4.17 (m, 2H); 3.22 (dd, 1H, J=14.4Hz, J=9.7Hz); 2.75 (s, 1H); 2.51 (s, 1H); 2.49 (dd, 1H, J=14.4Hz, J=2.02Hz); 2.37 (s, 3H); 1.45 (s, 9H); 1.27 (t, 3H, J=7.0Hz) ppm.
13C (CDCl3, 125 MHz) (7a): 170.5, 166.9, 1487, 145.1, 135.2, 129.6, 127.9, 84.5, 62.0, 55.5, 47.1, 38.3, 27.7, 25.3, 21.5, 14.0 ppm
MS (ESI+): m/z: 339 (M+1-Boc)
7b:
融点: 57-58℃
[α]D25℃= -13°(0.068, CHCl3)
IR (KBr, cm-1): 2982, 2936, 1799, 1749, 1371, 1330, 1252, 1203, 1154) 1093, 989, 687.
1H-NMR (CDCl3, 500 MHz) (7b): 7.78 (d, 2H, J=8.0Hz); 7.29 (d, 2H, J=7.7Hz); 4.70 (dd, 1H, J=9.4Hz, J=4.3Hz); 4.29-4.20 (m, 2H); 3.04 (dd, 1H, J=15.1Hz, J=4.3Hz); 2.91 (dd, 1H, J=15.4Hz, J=9.4Hz); 2.82 (s, 1H); 2.63 (s, 1H); 2.40 (s, 3H); 1.48 (s, 9H); 1.29 (t, 3H, J=7.0Hz) ppm.
13C (CDCl3, 125 MHz) (7b): 169.5, 167.1, 148.9, 145.0, 135.7, 129.6, 127.9, 84.5, 62.1, 56.1, 47.0, 37.1, 27.8, 24.5, 21.6, 14.0 ppm.
MS (ESI+): m/z: 339 (M+1-Boc)
【0127】
4.2.1 3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド9aのワンポット合成
アジリジン7a(311mg,0.71mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,60mg)およびピリジン(58μL,0.71mmol)の混合物に100℃で10分間マイクロ波(300W)を照射した。この粗混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなくなるまで真空蒸発させた。このベタイン8aをさらに精製することなく次の工程に用いた(HPLCにより純度93%)。
【0128】
この粗褐色油状物を48%HBr水溶液(30mL)に溶解し、18時間還流下で加熱した。この混合物を水で希釈し、EtOAc(3×10mL)で洗浄し、水相を蒸発乾固した。この粗油状物を、固定相としてセルロース粉末:SiO:セルロース粉末:活性炭(1cm:0.5cm:0.5cm:2cm)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、9aを固体として得た(110mg,40%)。
融点:>2℃。
[α]D25℃= -49°(0.069, CH3OH)
IR (KBr, cm-1); 3433, 3051, 1724, 1633, 1488, 1420, 1384, 1281, 1188, 1144, 1083, 683.
1H-NMR (D2O, 500 MHz) 8.82 (d, 2H, J=5.3Hz); 8.59 (t, 1H, J=7.8Hz); 8.08 (t, 2H, J=6.8Hz); 5.23 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.97 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.28 (t, 1H, J=9.2Hz); 3.06 (dd, 1H, J=13.9Hz, J=9.3Hz); 2.13 (t, 1H, J=7.8Hz) ppm.
13C (D2O, 125 MHz): 173.1, 172.6, 147.2, 145.6, 128.6, 63.9, 63.7, 49.2, 32.7 ppm.
MS (ESI+): m/z: 236 (M+1-2Br)
【0129】
4.2.2 3R,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド9bのワンポット合成
アジリジン7b(200mg,0.46mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,40mg)およびピリジン(37μL,0.46mmol)の混合物に100℃で10分間マイクロ波(300W)を照射した。この粗混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなくなるまで真空蒸発させた。このベタイン8bをさらに精製することなく次の工程に用いた(HPLCにより純度93%)。この粗褐色油状物を48%HBr水溶液(20mL)に溶解し、18時間還流下で加熱した。この混合物を水で希釈し、EtOAc(2×10mL)で洗浄し、水相を蒸発乾固した。この粗油状物を、固定相としてセルロース粉末:SiO:セルロース粉末:活性炭(1cm:0.5cm:0.5cm:2cm)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、9bを固体として得た(44mg,24%)。融点:>200℃。
[α]D25℃= -09°(0.12, CH3OH)
IR (KBr, cm-1): 3435, 3049, 1724, 1631, 1513, 1475, 1420, 1384, 1280, 1190, 1144, 683.
1H-NMR (D2O, 500 MHz) 8.82 (d, 2H, J=5.3Hz); 8.59 (t, 1H, J=7.8Hz); 8.08 (t, 2H, J=6.8Hz.); 5.23 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.97 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.28 (t, 1H, J=9.2Hz); 3.06 (dd, 1H, J=13.9Hz, J=9.3Hz); 2.13 (t, 1H, J=7.8Hz) ppm.
13C (D2O, 125 MHz): 173.4, 172.4, 147.0, 145.0, 128.5, 65.7, 64.8, 49.3, 33.9 ppm.
MS (ESI+): m/z: 236 (M+1-2Br)
【0130】
実施例5
3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミドの段階的合成
5.1 ベタイン8aの合成
実施例4と同様の方法に従い、アジリジン7a(311mg,0.71mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,60mg)およびピリジン(58μL,0.71mmol)に100℃で10分間マイクロ波(300W)を照射した。この粗混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなくなるまで真空蒸発させた。このベタイン8aをジエチルエーテルで処理することにより精製し、生成物を白色固体として単離した。
融点:127〜128℃。
IR (KBr, cm-1): 3434, 2980, 1786, 1746, 1489, 1370, 1311, 1287, 1199, 1153, 1121, 555.
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz)= 9.2 (d, 2H, J=5.6Hz); 8.3 (t, 1H, J=7.7Hz); 7.89 (t, 2H, J=6.9Hz); 7.69 (d, 2H, J=8.0Hz); 7.10 (d, 2H, J=8.0Hz); 5.07 (d, 1H, J=13.0Hz); 4.89 (d, 1H, J=12.6Hz); 4.27 (t, 2H, J=7.1Hz); 4.20-4.13 (m, 2H); 2.81 (dd, 1H, J=12.8Hz, J=7.1Hz); 2.31 (s, 3H); 2.04-1.98 (m, 1H); 1.38 (s, 9H); 1.25 (t, 3H, J=7.1Hz) ppm.
MS (ESI+): m/z: 518 (M+1).
【0131】
あるいは、このベタイン8aは、同じ反応混合物(アジリジン7a(311mg,0.71mmol)、モンモリロナイトMK10(20重量%,60mg)およびピリジン(58μL,0.71mmol))を90℃で7時間加熱することによって得られた。この粗混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、濾過し、HPLC分析によりピリジンの残留が見られなくなくなるまで真空蒸発させた。得られた収率はマイクロ波を用いて得られた収率と同じであった。
【0132】
5.2 3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド9aの合成
前工程で得られた純粋なベタイン8aを48%HBr水溶液(30mL)に溶解し、18時間還流下で加熱した。この混合物を水で希釈し、EtOAc(3×10mL)で洗浄し、水相を蒸発乾固した。この粗油状物を固定相としてセルロース粉末:SiO:セルロース粉末:活性炭(1cm:0.5cm:0.5cm:2cm)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、9aを固体として得た(110mg,40%)。融点:>200℃。
[α]D25℃= -49°(0.069, CH3OH)
IR (KBr, cm-1): 3433, 3051, 1724, 1633, 1488, 1420, 1384, 1281, 1188, 1144, 1083, 683.
1H-NMR (D2O, 500 MHz) 8.82 (d, 2H, J=5.3Hz); 8.59 (t, 1H, J=7.8Hz); 8.08 (t, 2H, J=6.8Hz); 5.23 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.97 (d, 1H, J=14.3Hz); 4.28 (t, 1H, J=9.2Hz); 3.06 (dd, 1H, J=13.9Hz, J=9.3Hz); 2.13 (t, 1H, J=7.8Hz) ppm.
13C (D2O, 125 MHz): 173.1, 172.6, 147.2, 145.6, 128.6, 63.9, 63.7, 49.2, 32.7 ppm.
MS (ESI+): m/z: 236 (M+1-2Br).
【0133】
実施例6
腫瘍増殖に対する種々の異性体(9a、9b、9cおよび9d)の作用
アッセイ腫瘍:Renca
このアッセイは、Renca細胞を接種したマウスにおけるin vivo腫瘍増殖に対する各立体異性体の作用を確認するために行った。それらの作用をプラセボと比較した。アッセイした立体異性体は
異性体1: 3R,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド(9b)
異性体2: 3R,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド(9c)
異性体3: 3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド(9a)
異性体4: 3S,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド(9d)
であった。
これらの異性体は実施例3および4に開示されている方法に従って得ることができる。
【0134】
材料および方法
腫瘍
RencaはBalb/cマウス系統に起源する腎細胞癌腫であり、従って、Balb/cの遺伝的背景を有するマウスにおいては共通遺伝子系である[Melder RJ et al., Cancer Immunol. Immunother., 2005, 54:535-547; Felluga B et al., 1969, J. Natl. Cancer Inst. 43:319 333]。Rencaは免疫源性の適度な腫瘍と考えられ、免疫介入アプローチを試験するのに好適なモデルとして用いられる[Salup RR, et al., 1992, The Journal of Urology, 147:1120-1123]。
【0135】
Renca細胞(CLS,Eppelheim,Germany)は、3〜4日ごとの継代培養によりin vitroで維持した。培養は、RPMI培地(RPMI、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、非必須アミノ酸、1mM ピルビン酸ナトリウム、20mM HEPES、80μg/mL ゲンタマイシン;これらは総てSigma,St.Louis,MO,USAから購入した)を用い、75cmの培養フラスコに5×10細胞を播種することにより行った。48時間培養物からトリプシン処理して回収した腫瘍細胞(Sigma,St.Louis,MO,USA)を下記の試験のためのRenca細胞の供給源として用いた。
【0136】
供試薬物
有効成分
異性体1(9b) 無菌生理食塩水中2.815mg/mL
異性体2(9c) 無菌生理食塩水中2.520mg/mL
異性体3(9a) 無菌生理食塩水中2.080mg/mL
異性体4(9d) 無菌生理食塩水中3.040mg/mL
【0137】
プラセボ
生理食塩水(Grifols,Barcelona,Spain)
【0138】
【表1】

【0139】
サンプルサイズ
これまでのデータによれば、有意性を満たすのに必要なサンプルサイズは各群動物26個体であった。このサンプルサイズはEpi−info v6.0ソフトウエア[Fleiss. Statistical Methods for rates and Proportions. 2nd Ed, Wiley, 1981: 38-45]を用いて計算し、統計検出率0.8で、腫瘍表面積の1/2の減少および対照症例比1:1に関して信頼水準0.95として見積もったものである。
【0140】
装置
層流式フード、水浴、倒立顕微鏡、カウントチャンバー、COインキュベーター、遠心機、カリパス、天秤、調節型ピペット、窒素コンテナ、冷蔵庫/冷凍庫および免疫不全マウスラック
【0141】
試薬
トリパンブルー(Sigma,St.Louis,MO,USA)
無菌PBS(Sigma,St.Louis,MO,USA)
生理食塩水(Grifols,Barcelona,Spain)
【0142】
用量、ビヒクル、投与経路および投与容量
用量
各異性体を、腫瘍接種後6日、7日および14日目に投与量260ngで試験した。
【0143】
ビヒクル
異性体を希釈したビヒクルは生理食塩水であった。
【0144】
投与経路および投与容量
処置は腹腔内経路によって行った。接種容量は0.2mL/個体とした。この経路は原法[Perez S, et al., 2003, Clinical Cancer Research. 9:5776-5785]に記載されていたことから選択した。
【0145】
試験デザイン
腫瘍は右後方腹側部に皮下接種することにより確立した。10の活性のあるRenca細胞を含む0.2mLをマウス(Balb/c)に接種した。皮下接種の日を試験の第0日とする。
Renca細胞を接種したBalb/cマウスを5つの試験群に分配した。
【0146】
【表2】

【0147】
毎日マウスを観察し、1週間に2回腫瘍サイズを記録した。これは、カリパスで2つの垂直直径(L/W)を測定することによって行った。これらの測定値を用いて腫瘍表面積と体積の双方を得た。
腫瘍表面積=L×W(mm
腫瘍体積=L×W×1/2(mm
結果は各試験群からの単一値として、および/または平均値±SDまたは中央値として表した。
【0148】
統計学
異性体とプラセボの投与の間に差があるかどうかを調べるため、処置マウスと対照マウスで症例対照試験を行った。得られたデータ(腫瘍表面積および体積)を群内の正規分布に関して検定した(コルモゴロフ−スミノフ(Kolmogorov-Smirnov)検定(p<0.05))。異性体が腫瘍増殖に悪影響を持っていたかどうかを対比させるため、不対サンプルのノンパラメトリック仮説検定を行った。公知のノンパラメトリック検定のよりよりものとしてマン・ホイットニー(Mann Withney)のU検定が選択されたが、いずれにせよ、この検定の結果は、ウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和検定とクルスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)2群検定の両者と等価である。
【0149】
データの分散度が高いため、アウトライアー(outlayers)(25日目に腫瘍表面積が25パーセンタイルを超えるか、または75パーセンタイルより大きい動物)は試験からはずした。
用いた統計ソフトウエアはSPSSv12.0であった。
【0150】
結果
Renca腫瘍細胞増殖に対する異性体の阻害作用
各群30個体のマウス(プラセボ群は31個体)を試験することを計画した。異性体2群のマウス2個体は、原因は不明であるが、腫瘍接種後2週間目に死に至ったので除外した。
【0151】
表1および2は、中央値として表した各試験群の結果を示す。これらの表は、スコアをとった各日における異性体マウス群とプラセボマウス群の表面積の中央値(表1)または体積の中央値(表2)をまとめたものである。
【0152】
【表3】

【0153】
【表4】

【0154】
表3および4は平均値として表した各試験群の結果を示す。これらの表は、スコアをとった各日における異性体マウス群とプラセボマウス群の表面積の平均値(表3)または体積の平均値(表4)をまとめたものである。
【0155】
【表5】

【0156】
【表6】

【0157】
プラセボに対して異性体3を受容したマウス間でRenca腫瘍増殖率に差あった。これらの差は、表面積または容積のいずれかにおいて、マン・ホイットニーのU検定によって算出したところ、腫瘍発達18日目および25日目で統計学的に有意であった(p<0.05)。
【0158】
プラセボに対して異性体4を受容したマウス間でRenca腫瘍増殖率に差あった。これらの差は、表面積または容積のいずれかにおいて、マン・ホイットニーのU検定によって算出したところ、腫瘍発達14日目以降の、スコアをとった総ての日で統計学的に有意であった(p<0.01)。
【0159】
図1は腫瘍表面積の中央値のグラフを示し(群A1、C1、C2、C3、C4)、図2は腫瘍容積の中央値のグラフを示す(群A1、C1、C2、C3、C4)。これらの図で分かるように、プラセボに対して異性体3および異性体4を受容したマウス間でRenca腫瘍増殖率に差あった。
【0160】
図3は平均腫瘍表面積のグラフを示し(群A1、C1、C2、C3、C4)、図4は平均腫瘍容積のグラフを示す(群A1、C1、C2、C3、C4)。これらの図で分かるように、プラセボに対して異性体3および異性体4を受容したマウス間でRenca腫瘍増殖率に差あった。
【0161】
これらの結果は、異性体3および異性体4が腎細胞癌腫(Renca)のin vivo増殖を阻害することを示し、異性体4はRenca腫瘍増殖に対して最高の阻害作用を示した。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】プラセボ(P.S.)と比較した場合の、Renca腫瘍細胞増殖でアッセイした異性体(1〜4)の阻害作用[実施例6]を腫瘍表面積の平均値として表したものを示すグラフである。
【図2】プラセボ(P.S.)と比較した場合の、Renca腫瘍細胞増殖でアッセイした異性体(1〜4)の阻害作用[実施例6]を腫瘍体積の中央値として表したものを示すグラフである。
【図3】プラセボ(P.S.)と比較した場合の、Renca腫瘍細胞増殖でアッセイした異性体(1〜4)の阻害作用[実施例6]を腫瘍表面積の平均値として表したものを示すグラフである。
【図4】プラセボ(P.S.)と比較した場合の、Renca腫瘍細胞増殖でアッセイした異性体(1〜4)の阻害作用[実施例6]を腫瘍体積の平均値として表したものを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式Iで示される化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物の合成方法であって:
【化1】

[式中、
は−OHまたは−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
、RおよびRは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドから独立に選択され、
Xは医薬上許容される陰イオンであり、かつ
Yは
(i)式VIa
【化2】

(式中、
点線は、窒素原子と一緒になって置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Xは前記で定義されたものである)
のN含有基、あるいは
(ii)式VIb
【化3】

(式中、
Xは前記で定義されたものであり、かつ
RaおよびRbは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクリルから独立に選択されるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換または非置換複素環を形成する)
のN含有基から選択される有機残基である]
該方法は、a)式IV
【化4】

(式中、RおよびRは前記で定義されたものである)
の鏡像異性体的に純粋な化合物またはその混合物と、式V
【化5】

(式中、Rは前記で定義されたものである)
の化合物とを反応させて、式III
【化6】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得て、
b)前記式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を、式II
【化7】

[式中、
、RおよびRは前記で定義されたものであり、
は負電荷またはRから選択され、ここで、Rは前記で定義されたものであり、かつ
Yは
(i)Rが負電荷であるとき、Yが式VIIa
【化8】

(式中、点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成する)
のN含有有機残基である場合、または
(ii)RがRであるとき、Yが
(ii.a)式VIIb
【化9】

(式中、RaおよびRbは前記で定義されたものである)
のN含有基であるか、または
(ii.b)式VIIc
【化10】

(式中、
点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Zは医薬上許容される陰イオンである)
のN含有有機残基である場合
から選択されるN含有有機残基である場合
から選択されるN含有有機残基である]
の化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物に変換し、そして
c)前記式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式HX(式中、Xは上記のように定義される)の酸を含んでなる酸性媒体とを接触させて、前記式Iの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
式IVの化合物が、S異性体およびR異性体から選択される、鏡像異性体として純粋な化合物の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IVの化合物が、5R−4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステル、または5S−4−メチレン−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸1−tertブチルエステル2−エチルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式Vの化合物がN−トシルイミノベンジルヨージナンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
鏡像異性体的に純粋な式IVの化合物またはその混合物と式Vの化合物との反応が、触媒、好ましくは銅系触媒、好ましくはCu(ft)(ここで、「ft」はフタロシアニンである)およびCu(acac)(ここで、「acac」はアセトアセテートである)より形成される基から選択される触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物が、該式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIa
【化11】

(式中、点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成する)
の窒素含有求核分子とを反応させることにより、Rが負電荷であって、Yが式VIIaのN含有有機残基である式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物が、該式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIb
【化12】

(式中、RaおよびRbは前記で定義されたものである)
の窒素含有求核分子とを反応させること、および所望により、得られた混合物を式X
Z (X)
(式中、RおよびZは前記で定義されたものである)
の化合物でクエンチすることにより、RがRであって、Yが式IIIbのN含有有機残基である、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物が、該式IIIの化合物の実質的に純粋な立体異性体またはその混合物と、式VIIIa
【化13】

(式中、点線は窒素原子と一緒になって、置換または非置換ヘテロアリールを形成する)
の窒素含有求核分子と、さらに式X
Z (X)
(式中、RおよびZは前記で定義されたものである)
の化合物とを反応させることにより、RがRであって、Yが式IIcのN含有有機残基である、式IIの化合物の実質的に純粋な立体異性体に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIIの化合物が実質的に純粋な立体異性体(3R,5R)、(3S,5S)、(3R,5S)、または(3S,5R)の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記式VIIIaの窒素含有求核分子が式IX
【化14】

(式中、
nは0、1、2、3、4または5であり、かつ
は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アルコキシ、置換もしくは非置換アリールオキシ、ハロゲン、置換もしくは非置換カルボキシエステル、置換もしくは非置換アミノから選択される)
のピリジンであるか、および/またはこのピリジンが1以上の置換もしくは非置換縮合環を形成する、請求項6または8に記載の方法。
【請求項11】
式IIIの化合物の式IIの化合物への変換が加熱下、好ましくはマイクロ波を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式HXの酸が無機酸、好ましくはHClまたはHBrである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式Iの化合物であって、a)式Ia
【化15】

[式中、
は−OH、−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
、RおよびRは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドから独立に選択され、
Xは医薬上許容される陰イオンであり、かつ
Yは
(i)式VIa
【化16】

(式中、
点線は、窒素原子と一緒になって置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Xは前記で定義されたものである)
のN含有基、あるいは
(ii)式VIb
【化17】

(式中、
Xは前記で定義されたものであり、かつ
RaおよびRbは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクリルから独立に選択されるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換または非置換複素環を形成する)
のN含有基から選択される有機残基である]
の実質的に純粋な化合物、
b)式Ib
【化18】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、
c)式Ic
【化19】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、
d)式Id
【化20】

(式中、R、R、R、R、XおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、および
e)前述の、式Ia、Ib、Icおよび/またはIdの実質的に純粋な化合物の、任意のモル比の混合物(ただし、該混合物は次の化合物:
(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または
(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)
からなる群から選択される、式Iの化合物。
【請求項14】
がOHまたはORa、好ましくはOHであり、Rが水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミド、好ましくは水素であり、RまたはRが独立に水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドであり、好ましくは、RまたはRが同時に水素であり、および/またはXが医薬上許容される陰イオン、好ましくは臭素イオンまたは塩素イオンである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Yが
【化21】

から選択される有機残基または
【化22】

から選択される有機残基
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
式I’a
【化23】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の化合物、
式I’b
【化24】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の化合物、
式I’c
【化25】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の化合物、
式I’d
【化26】

(式中、R、R、Rおよびnは前記で定義されたものである)
の化合物、および
その混合物
からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
3S,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド、
3R,5S−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド、
3R,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド、および
3S,5R−1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムブロミドヒドロブロミド
からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
請求項13に記載の、式Ia、Ib、Ic、Idの化合物およびその混合物(ただし、該混合物は次の化合物:
(i)1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド、または
(ii)1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)からなる群から選択される化合物を任意のモル比で含んでなる組成物。
【請求項19】
請求項13〜17のいずれかで定義したような化合物、または請求項18に記載の組成物と、医薬上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
a)式IIa
【化27】

[式中、
は−OH、−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
、RおよびRは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドから独立に選択され、かつ
Yは
(i)式VIa
【化28】

(式中、
点線は、窒素原子と一緒になって置換または非置換ヘテロアリールを形成し、かつ
Xは医薬上許容される陰イオンである)
のN含有基、あるいは
(ii)式VIb
【化29】

(式中、
Xは前記で定義されたものであり、かつ
RaおよびRbは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキル、または置換もしくは非置換ヘテロシクリルから独立に選択されるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、置換または非置換複素環を形成する)
のN含有基から選択される有機残基である]
の実質的に純粋な化合物、
b)式IIb
【化30】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、
c)式IIc
【化31】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、
d)式IId
【化32】

(式中、R、R、R、RおよびYは前記で定義されたものである)
の実質的に純粋な化合物、および
e)前述の、式IIa、IIb、IIcおよび/またはIIdの実質的に純粋な化合物の、任意のモル比の混合物(ただし、該混合物は次の化合物:
1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、
1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、または
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)
からなる群から選択される、式IIの化合物。
【請求項21】
が−ORa(ここで、好ましくは、Raはアルキル基である)であり、Rが−(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基であり、および/またはRが−(O=)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
、RおよびRが独立に水素である、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
が負電荷である、請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
請求項20に記載の、式IIa、IIb、IIc、IIdの化合物およびその混合物(ただし、該混合物は次の化合物:
1−(3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、
1−(1−アセチル−3−アミノ−5−カルボキシ−2−オキソピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムアセテート、または
1−(1−アセチル−3−アセチルアミノ−5−カルボキシ−2−オキソ−ピロリジン−3−イルメチル)ピリジニウムヒドロクロリド
の4種類の立体異性体を全て同時に含むことはない)からなる群から選択される化合物を任意のモル比で含んでなる組成物。
【請求項25】
a)式IIIa
【化33】

(式中、
は−OH、−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
およびRは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドから独立に選択される)
の実質的に純粋な化合物、
b)式IIIb
【化34】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物、
c)式IIIc
【化35】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物、
d)式IIId
【化36】

(式中、R、RおよびRは前記で定義されたものである)
の化合物、および
e)その混合物
からなる群から選択される、式IIIの化合物。
【請求項26】
が−ORa(ここで、好ましくは、Raはアルキル基である)であり、Rが−(O=)C−O−Ra、好ましくはBOC基であり、および/またはRが−(O=)S(=O)−Ra、好ましくはトシルである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
、RおよびRが独立に水素である、請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
請求項20で定義した式IIの化合物を、式HX(ここで、Xは医薬上許容される陰イオンである)の酸を含んでなる酸性媒体と接触させることを含む、請求項13で定義した式Iの化合物の合成方法。
【請求項29】
式IV
【化37】

(式中、
は−OH、−ORaから選択され、ここで、Raは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アラルキルまたは置換もしくは非置換ヘテロシクリルから選択され、
は水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドである)から独立に選択される)
の鏡像異性体的に純粋な化合物実質的に純粋な化合物またはその混合物と、式V
【化38】

(式中、Rは水素、酸性条件下で加水分解する窒素保護基またはフタルアミドである)
の化合物とを反応させて、請求項25で定義した式IIIの化合物を得ることを含んでなる方法。
【請求項30】
対象における免疫応答の増強を目的とした医薬組成物の製造のため、または抗腫瘍医薬組成物の製造のため、または細菌、真菌またはウイルス起源の処置を目的とした医薬組成物の製造のため、または自己免疫疾患の処置を目的とした医薬組成物の製造のための、請求項13〜17のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291050(P2007−291050A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−126478(P2006−126478)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(594019068)プロデイメド、ソシエダッド、アノニマ (2)
【氏名又は名称原語表記】PRODIMED, S.A.
【Fターム(参考)】