説明

ピロリドンアルキレンオキシドを含有する農薬製剤

本発明は、農薬およびポリアルキレンオキシドを含む組成物に関する。さらに、本発明は、ピロリドンアルキレンオキシドおよび農薬製剤中でのその使用に関する。さらに、本発明は、植物病原菌および/または望ましくない植物生長および/または望ましくない昆虫もしくはダニ感染を防除するための、かつ/または植物の生長を調節するための、本発明の組成物の使用に関する。さらに、本発明は、作物種子を組成物で処理する、植物への望ましくない昆虫もしくはダニ感染を防除するための、かつ/または植物病原菌を防除するための、かつ/または望ましくない植物生長を防除するための、本発明の組成物の使用に関する。最後に、本発明はさらに、本発明の組成物で処理した種子に関する。本発明は、好ましい特徴と他の好ましい特徴との組み合わせを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬およびポリアルキレンオキシドを含む組成物に関する。さらに、本発明は、ピロリドンアルキレンオキシドおよび農薬製剤中でのその使用に関する。さらに、本発明は、植物病原菌および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/あるいは植物の生長を調節するための、本発明の組成物の使用に関する。さらに、本発明は、有用植物の種子を組成物で処理する、植物への昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/または植物病原菌を防除するための、かつ/または望ましくない植生を防除するための、本発明の組成物の使用に関する。最後に、本発明はまた、本発明の組成物で処理した種子にも関する。本発明は、好ましい特徴と、他の好ましい特徴との組み合わせを含む。
【背景技術】
【0002】
ピロリドンアルキレンオキシドは、広く知られている:
WO 94/22984(特許文献1)には、炭化水素および添加剤を含む燃料組成物が開示されている。添加剤の例として、とりわけ、2-ピロリドンと20単位の1,2-エポキシブタンとの付加物が調製されている。
【0003】
WO 03/050211(特許文献2)には、燃料と、ピロリドンアルキレンオキシドの群から選択される添加剤とを含む無鉛燃料が開示されている。
【0004】
US 930,668(特許文献3)には、N-ヒドロキシアルキルラクタムのアクリル酸エステルが開示されている。ポリアルキレンオキシド基を有するラクタムを、調製に用いることができる。
【0005】
WO 88/06585(特許文献4)には、ピロリドニルアクリレートブロックポリマーが開示されている。ポリアルキレンオキシド基を有するラクタムを、調製に用いることができる。
【0006】
WO 88/06405(特許文献5)には、アルキレンオキシドラクタムとのヨウ素錯体および消毒のためのその使用が開示されている。
【0007】
GB 930,668(特許文献6)には、ヒドロキシエトキシエトキシエチルピロリジノンが開示され、これはエチレンオキシドとN-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジノンとを反応させることにより生成されている。
【0008】
EP 0 785 297(特許文献7)には、銅皮膜の電着のための水性酸浴が開示され、この酸浴は、銅塩、無機酸およびラクタムアルコキシレート(例えば、γ-ブチロラクタムヘキサエトキシレート)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 94/22984
【特許文献2】WO 03/050211
【特許文献3】US 930,668
【特許文献4】WO 88/06585
【特許文献5】WO 88/06405
【特許文献6】GB 930,668
【特許文献7】EP 0 785 297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高い農薬含有量を可能にしながら、安定である農薬含有組成物を提供することであった。この文脈において、安定とは、組成物が、特に水で希釈した場合に、結晶化する傾向をほとんど示さない(結晶化するとしても)ことを意味する。さらに、溶解および懸濁した農薬の場合の両方で、上記の組成物が結晶化する傾向がほとんどないことを示すことも課題であった。さらに、結晶化する傾向をほとんど示さないエマルジョン製剤の形態で農薬含有組成物を提供することも課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、農薬およびポリアルキレンオキシドを含む組成物により達成され、該ポリアルキレンオキシドは、式Iのピロリドンアルキレンオキシドに対応する:
【化1】

【0012】
[式中、
R1は、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの混合基であり、
R2は、HおよびC1〜C6-アルキルであり、
nは、2〜20の値を有する]。
【0013】
ここで、基:
【化2】

【0014】
は、アルコキシ基R1のn個のモノマー単位により構成されるアルコキシポリマーに対応する。R1は、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの混合基である。このことは、アルコキシポリマーが、エトキシ、プロポキシもしくはブトキシのホモポリマーであるか、または、そうでなければエトキシ、プロポキシもしくはブトキシのうち少なくとも2種類の異なるモノマー単位から構成されるコポリマーであり得ることを意味する。コポリマーは、ランダム混合コポリマーまたはブロックコポリマーであり得、好ましくは、コポリマーはブロックコポリマーである。「ブロックコポリマー」なる用語は、種々のモノマー単位が、ポリマー中で、いずれの場合にも、同じモノマー単位のブロックで存在すること(例えば、3個のエトキシ単位、続いて5個のプロポキシ単位、そして続いて2個のブトキシ単位)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「エトキシ」なる用語は、-CH2-CH2-Oであり、「プロポキシ」なる用語は、-CH2-CH(CH3)-O-であり、「ブトキシ」なる用語は、-CH2-CH(CH2CH3)-O-である。そのようなアルコキシ単位は当業者に一般に知られており、対応するアルコキシポリマーは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドなどの対応するアルキレンオキシドから、例えばアルコキシル化により、得ることができる。
【0016】
指数nは、例えば2〜20の値の一定範囲内であり得る。このことは、3、4または5などの整数のみならず、3.15などの整数の間の値も生じうることを意味する。同じことが、指数m、oおよびpにも言える。
【0017】
好ましくは、R1は、ブトキシ、ならびにブトキシとエトキシおよび/またはプロポキシとの混合基であり、特に好ましくはブトキシ、およびブトキシとプロポキシとの混合基である。R2は、HおよびC1〜C6-アルキル、好ましくはHおよびメチル、特にHである。指数nは、2〜20、好ましくは2〜16、特に好ましくは3〜14の値を有する。
【0018】
本発明の組成物は、通常、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に好ましくは30重量%のピロリドンアルキレンオキシドIを含む。ほとんどの場合、組成物は、95重量%以下、好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下のピロリドンアルキレンオキシドIを含む。
【0019】
本発明の組成物は、無水であり得るか、または水相を含み得るが、好ましくは無水である。一実施形態では、組成物は無水である。組成物は、通常、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下、とりわけ0.1重量%以下の水を含む。この実施形態では、組成物は、組成物に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%の溶媒系を含む。好ましくは、組成物は、組成物に基づいて、40〜95重量%、好ましくは少なくとも50〜90重量%、特に好ましくは少なくとも60〜90重量%の溶媒系を含む。
【0020】
さらなる実施形態では、組成物は水相を含む。この場合、組成物は、組成物に基づいて、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、特に好ましくは20重量%の水を含む。この実施形態では、組成物は、組成物に基づいて、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%の溶媒系を含む。
【0021】
農薬(pesticide)との表現は、殺菌剤、殺虫剤(insecticide)、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤(safener)および/または生長調節剤からなる群より選択される少なくとも1種の活性物質を指す。好ましい農薬は、殺菌剤、殺虫剤および除草剤、特に殺菌剤である。上記のクラスの2種以上の農薬の混合物も用いることができる。当業者は、そのような農薬に精通しており、例えば、Pesticide Manual, 14th Ed. (2006), The British Crop Protection Council, Londonに見出すことができる。好適な殺虫剤は、カルバメート、有機リン酸エステル、有機塩素系殺虫剤、フェニルピラゾール、ピレスロイド、ネオニコチノイド、スピノシン、アベルメクチン、ミルベマイシン、幼若ホルモン類似体、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネライストキシン類似体、ベンゾイル尿素、ジアシルヒドラジン、METIダニ駆除剤、および殺虫剤、例えば、クロロピクリン、ピメトロジン、フロニカミド、クロフェンテジン、ヘキシチアゾックス、エトキサゾール、ジアフェンチウロン、プロパルギット、テトラジホン、クロルフェナピル、DNOC、ブプロフェジン、シロマジン、アミトラズ、ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリム、ロテノン、またはそれらの誘導体などのクラスから選択される殺虫剤である。好適な殺菌剤は、ジニトロアニリン、アリルアミン、アニリノピリミジン、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド、ベンズイミダゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアジン、ベンジルカルバメート、カルバメート、カルボキサミド、カルボン酸アミド、クロロニトリル、シアノアセトアミドオキシム、シアノイミダゾール、シクロプロパンカルボキサミド、ジカルボキシミド、ジヒドロジオキサジン、クロトン酸ジニトロフェニル、ジチオカルバメート、ジチオラン、エチルホスホネート、エチルアミノチアゾールカルボキサミド、グアニジン、ヒドロキシ-(2-アミノ-)ピリミジン、ヒドロキシアニリド、イミダゾール、イミダゾリノン、無機物質、イソベンゾフラノン、メトキシアクリレート、メトキシカルバメート、モルホリン、N-フェニルカルバメート、オキサゾリジンジオン、オキシミノ酢酸、オキシミノアセトアミド、ペプチジルピリミジンヌクレオシド、フェニルアセトアミド、フェニルアミド、フェニルピロール、フェニル尿素、ホスホン酸塩、ホスホロチオレート(phosphorothiolates)、フタルアミド酸、フタルイミド、ピペラジン、ピペリジン、プロピオンアミド、ピリダジノン、ピリジン、ピリジニルメチルベンズアミド、ピリミジンアミン、ピリミジン、ピリミジノンヒドラゾン、ピロロキノリノン、キナゾリノン、キノリン、キノン、スルファミド、スルファモイルトリアゾール、チアゾールカルボキサミド、チオカルバメート、チオカルバメート、チオファネート、チオフェンカルボキサミド、トルアミド、トリフェニルスズ化合物、トリアジン、トリアゾールのクラスから選択される殺菌剤である。好適な除草剤は、アセトアミド、アミド、アリールオキシフェノキシプロピオネート、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルバメート、クロロアセトアミド、クロロカルボン酸、シクロヘキサンジオン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、グリシン、イミダゾリノン、イソキサゾール、イソキサゾリジノン、ニトリル、N-フェニルフタルイミド、オキサジアゾール、オキサゾリジンジオン、オキシアセトアミド、フェノキシカルボン酸、フェニルカルバメート、フェニルピラゾール、フェニルピラゾリン、フェニルピリダジン、ホスフィン酸、ホスホロアミデート、ホスホロジチオエート、フタラメート、ピラゾール、ピリダジノン、ピリジン、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキサミド、ピリミジンジオン、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート、キノリンカルボン酸、セミカルバゾン、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニル尿素、テトラゾリノン、チオジアゾール、チオカルバメート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾール、トリアゾリノン、トリアゾリノン、トリアゾロカルボキサミド、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシル、尿素のクラスから選択される除草剤である。
【0022】
一実施形態では、農薬は殺虫剤を含み、好ましくは、農薬は少なくとも1種の殺虫剤からなる。さらなる実施形態では、農薬は殺菌剤を含み、好ましくは、農薬は少なくとも1種の殺菌剤からなる。好ましい殺菌剤は、ピラクロストロビン、メトコナゾールおよびエポキシコナゾールである。さらなる実施形態では、農薬は除草剤を含み、好ましくは、農薬は少なくとも1種の除草剤からなる。さらなる実施形態では、農薬は生長調節剤を含み、好ましくは、農薬は少なくとも1種の生長調節剤からなる。
【0023】
一実施形態では、農薬は、20℃で、少なくとも10g/lまで、好ましくは少なくとも30g/lまで、特に好ましくは少なくとも50g/lまで、ピロリドンアルキレンオキシドに溶解する。ここで用いる溶媒系は、いずれの場合にも用いられるピロリドンアルキレンオキシドである。
【0024】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の農薬を、農薬に基づいて、少なくとも90重量%まで、固形粒子の形態で溶媒系に懸濁する。組成物が少なくとも2種の農薬を含む場合、少なくとも1種の農薬を、少なくとも90重量%まで、溶媒系に溶解する。好ましくは、農薬を、少なくとも95重量%まで、特に好ましくは少なくとも98重量%まで、溶媒系に懸濁する。
【0025】
本発明の組成物は、通常、組成物に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、特に3〜30重量%の農薬を含む。
【0026】
本発明の組成物は、任意に界面活性剤を含み、これは少なくとも1種の界面活性剤を意味する。界面活性剤は、水の表面張力を低下させる化合物である。界面活性剤の例は、イオン性(アニオン性またはカチオン性)界面活性剤および非イオン性界面活性剤である。好ましくは、組成物は、少なくとも2種の界面活性剤を含み、特に好ましくは、1種の非イオン性界面活性剤および1種のアニオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との重量比は、ほとんどの場合、1:5〜5:1、好ましくは1:3〜3:1である。
【0027】
好適なイオン性界面活性剤は、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩(例えば、リグノスルホン酸(Borresperse(登録商標)タイプ、Borregaard、Norway)、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(Morwet(登録商標)タイプ、Akzo Nobel、USA)およびジブチルナフタレンスルホン酸(Nekal(登録商標)タイプ、BASF、Germany)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩)、ならびに脂肪酸、アルキルスルホネートおよびアルキルアリールスルホネート、アルキル硫酸、ラウリルエーテル硫酸および脂肪アルコール硫酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩、ならびに硫酸化ヘキサ-、ヘプタ-およびオクタデカノールの塩および脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレンの縮合物およびホルムアルデヒドとのその誘導体、ナフタレンの縮合物またはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合物、ポリカルボキシレート(Sokalan(登録商標)タイプ、BASF、Germany)またはアルコキシル化アルコールのリン酸エステルである。
【0028】
好ましいイオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。好適なアニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート(アルキル基:C8〜C12)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、エトキシル化アルカノール(エトキシル化度4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸モノエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩ならびにアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、またはアルコキシル化アルコールのリン酸エステル、特にエトキシル化C10〜16-脂肪アルコール(エトキシル化度3〜15)のリン酸エステルである。好適であると認められているさらなるアニオン性界面活性剤は、一般式(I)の化合物である:
【化3】

【0029】
[式中、R1およびR2は、H原子またはC4〜C24-アルキルであり、同時にH原子ではなく、M1およびM2は、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであり得る]。一般式(I)において、R1およびR2は、好ましくは6〜18個のC原子、特に6、12および16個のC原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基または水素であり、R1およびR2が同時に両方ともH原子であることはない。M1およびM2は、好ましくは、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであり、ナトリウムが特に好ましい。特に有利なものは、M1およびM2がナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分岐鎖アルキル基であり、R2がH原子またはR1である化合物(I)である。多くの場合、50〜90重量%のモノアルキル化製品(例えば、Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Companyのブランド))を含む工業用混合物が用いられる。好ましいアニオン性界面活性剤は、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、好ましくは直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸、およびエトキシル化C10〜16-脂肪アルコール(エトキシル化度3〜15)のリン酸エステルである。
【0030】
好適な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、アルコキシル化アルコール(エトキシル化イソオクチル-、オクチル-またはノニルフェノールポリグリコールエーテルなど)、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテル酢酸、ソルビトールエステル、リグニン亜硫酸廃液、およびタンパク質、変性タンパク質、多糖(例えば、メチルセルロース)、疎水性に改質されたデンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ、Clariant)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)タイプ、BASF SE)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)タイプ、BASF SE)、ポリビニルピロリドン、およびそれらのコポリマーまたはブロックコポリマーである。好適なアルコキシル化アルコールは、好ましくは、エチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)でアルコキシル化された脂肪アルコール(特に、脂肪アルコール残基中に8〜32個、具体的には9〜18個の炭素原子を有するもの)である。アルコキシル化脂肪アルコールは、通常、1〜30、好ましくは2〜10、具体的には4〜8エチレンオキシド基のエトキシル化度および/または1〜30、好ましくは2〜15、具体的には3〜10プロピレンオキシド基のプロポキシル化度を有する。ブロックポリマーは、通常、ジブロックポリマーもしくはトリブロックポリマーまたはその誘導体であり、ポリマー部分はエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから構成される。平均モル質量は、通常、少なくとも1000g/mol、好ましくは少なくとも2000g/molである。特に好適な物質は、少なくとも2000g/molのモル質量およびC1〜10-アルキルエーテル単位を有するポリ(エチレンオキシドブロックプロピレンオキシド)アルキルエーテルである。好ましい非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリスチリルフェノールエトキシレート、エトキシル化ヒマシ油(好ましくは、いずれの場合においても、10〜40エチレンオキシド単位/分子を有する)である。
【0031】
本発明の組成物は、農薬製剤に慣用的に用いられるさらなる補助剤を含むことができ、補助剤の選択は、具体的な使用形態または活性物質に依存する。好適な補助剤の例は、追加の溶媒、界面活性物質(溶解剤、保護コロイド、湿潤化剤および粘着剤など)、アジュバント、有機および無機増粘剤、殺細菌剤、不凍剤、消泡剤、着色剤および粘着剤(sticker)(例えば、食餌処理のため)である。
【0032】
補助剤として溶媒系に存在し得る好適な追加の溶媒は、中〜高沸点の鉱油留分(ケロセンおよびディーゼル油など)、さらなるコールタール油および植物油または動物油などの有機溶媒、脂肪族環状または芳香族炭化水素(例えば、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンおよびそれらの誘導体、アルキル化ベンゼンおよびその誘導体)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびシクロヘキサノール)、グリコール、ケトン(例えば、シクロヘキサノン)、γ-ブチロラクトン、ジメチル脂肪酸アミド、脂肪酸および脂肪酸エステル、および強極性溶媒(例えば、N-メチルピロリドンなどのアミン)である。原則として、溶媒混合物を用いることも可能である。本発明の組成物に、いずれの場合においても溶媒系に基づいて、30重量%以下、好ましくは10重量%以下を添加することが好ましく、特に好ましくは追加の溶媒を添加しない。
【0033】
上記の界面活性剤に加えて、好適な界面活性物質(アジュバント、湿潤化剤、粘着剤、分散化剤または乳濁化剤)は、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩、例えば、リグノスルホン酸(Borresperse(登録商標)タイプ、Borregaard、Norway)、フェノール-、ナフタレン-(Morwet(登録商標)タイプ、Akzo Nobel)およびジブチルナフタレンスルホン酸(Nekal(登録商標)タイプ、BASF)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩)、ならびに脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩、アルキルスルホネートおよびアルキルアリールスルホネート、アルキル硫酸、ラウリルエーテル硫酸および脂肪アルコール硫酸、および硫酸化ヘキサ-、ヘプタ-およびオクタデカノールの塩、脂肪アルコールグリコールエーテルの塩、スルホン化ナフタレンおよびその誘導体とホルムアミドとの縮合物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアミドとの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチル-、オクチル-またはノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセテート、ソルビトールエステル、リグニン-亜硫酸廃液、およびタンパク質、変性タンパク質、多糖(例えば、メチルセルロース)、疎水性に改質されたデンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ、Clariant)、ポリカルボキシレート(Sokalan(登録商標)タイプ、BASF)、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupamin(登録商標)タイプ、BASF)、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)タイプ、BASF SE)、ポリビニルピロリドン、およびそれらのコポリマーである。
【0034】
本発明のエマルジョンは、大量の界面活性物質および界面活性剤を含むことができる。エマルジョンは、組成物の総量に基づいて、0.1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、特に2〜20重量%の合計量の表面活性物質および界面活性剤を含むことができる。
【0035】
アジュバントの例は、有機的に改質されたポリシロキサン(BreakThruS 240(登録商標)など);アルコールアルコキシレート(Atplus(登録商標)245、Atplus(登録商標)MBA 1303、Plurafac(登録商標)LFおよびLutensol(登録商標)ONなど);EO/POブロックポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)RPE 2035およびGenapol(登録商標)B);アルコールエトキシレート(例えば、Lutensol(登録商標)XP 80);およびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(例えば、Leophen(登録商標)RA)である。
【0036】
増粘剤(すなわち、組成物に改変された流動挙動(すなわち、静置時の高粘度および流動時の低粘度)をもたらす化合物)の例は、多糖ならびに有機および無機層鉱物(organic and inorganic layer mineral)、例えば、キサンタンガム(Kelzan(登録商標)、CP Kelco)、Rhodopol(登録商標)23(Rhodia)またはVeegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt)またはAttaclay(登録商標)(Engelhard Corp.)である。
【0037】
組成物を安定化させるために、殺細菌剤を添加することができる。殺細菌剤の例は、ジクロロフェンおよびベンジルアルコールヘミホルマル(hemiformal)に基づくもの(Proxel(登録商標)(ICIから)またはActicide(登録商標)RS(Thor Chemieから)およびKathon(登録商標)MK(Rohm & Haasから))およびアルキルイソチアゾリノンおよびベンゾイソチアゾリノンなどのイソチアゾリノン誘導体(Acticide(登録商標)MBS(Thor Chemieから)である。
【0038】
好適な不凍剤の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素およびグリセロールである。
【0039】
消泡剤の例は、シリコンエマルジョン(例えば、Silikon(登録商標)SRE、Wacker、GermanyまたはRhodorsil(登録商標)、Rhodia、France)、長鎖アルコール、脂肪酸、脂肪酸の塩、有機フッ素化合物およびそれらの混合物である。
【0040】
着色剤の例は、顔料(水に難溶)および色素(水溶性)の両方である。言及し得る例は、ローダミンB、C. I.ピグメントレッド112およびC. I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108の名称で知られている色素および顔料である。
【0041】
粘着剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールおよびセルロースエーテル(Tylose(登録商標)、Shin-Etsu、Japan)である。
【0042】
本発明の組成物は、通常、農薬製剤の形態で存在する。好適な農薬製剤は、水溶液剤(SL、LS)、分散剤(DC)、乳剤(EC)、エマルジョン製剤(EW、EO、ES、ME)、懸濁液剤(SC、OD、FS)または懸濁エマルジョン製剤(SE)である。好ましくは、組成物は、乳剤(EC)の形態で存在する。
【0043】
ほとんどの場合、本発明の組成物は、タンクミックスとして知られるものを調製するために、使用前に希釈する。希釈のために好適な物質は、中〜高沸点の鉱油留分(ケロセンまたはディーゼル油)、さらなるコールタール油および植物油または動物油、脂肪族環状および芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンまたはそれらの誘導体)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンまたは水)である。好ましくは、水を用いる。希釈組成物は、通常、噴射(spraying)または噴霧(atomizing)により施用する。使用直前に(タンクミックス)、種々のタイプの油、湿潤化剤、アジュバント、除草剤、殺細菌剤、殺菌剤をタンクミックスに添加することができる。これらの薬剤は、重量比1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1で、本発明の組成物と混合することができる。タンクミックス中の農薬濃度は、大幅に変化させることができる。一般的に、濃度は、0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。植物保護に用いる場合、施用率は、所望の作用の性質に応じて、1ha当たり0.01〜2.0kgの活性物質である。
【0044】
本発明はまた、組成物を、それぞれの有害生物、その環境またはそれぞれの有害生物から保護する対象の植物に、土壌におよび/または望ましくない植物および/または有用植物および/またはその環境に作用させる、植物病原菌および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/あるいは植物の生長を調節するための、本発明の組成物の使用にも関する。さらに、本発明は、有用植物の種子を組成物で処理する、植物への昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/または植物病原菌を防除するための、かつ/または望ましくない植生を防除するための、本発明の組成物の使用に関する。
【0045】
さらに、本発明は、本発明の組成物で処理された種子に関する。処理(種子粉衣とも称される)によって、組成物は種子表面に残存する。好ましくは、種子は、本発明の組成物を含む。本組成物は、未希釈形態または好ましくは希釈形態で、種子に施用することができる。ここで、対象となる組成物は、2〜10倍に希釈することができ、それにより、0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜40重量%の殺菌剤が、種子の粉衣に用いる組成物中に存在することになる。施用は、播種前に行うことができる。植物繁殖材料の処理、特に種子の処理は、当業者に公知であり、植物繁殖材料を、散粉、コーティング、ペレット化、浸漬(dipping or soaking)することにより行なわれ、好ましくは、ペレット化、コーティングおよび散粉により行なわれ、それにより、例えば、種子の時期尚早な発芽を防ぐ。種子の処理では、一般的に、繁殖材料または種子100kg当たり1〜1000g、好ましくは5〜100gの農薬量が用いられうる。
【0046】
本発明はまた、農薬およびピロリドンアルキレンオキシドIを混合する、本発明の組成物の調製方法にも関する。好ましいピロリドンアルキレンオキシドIおよび溶媒は、上記の通りである。混合は、慣用の混合方法、例えば、撹拌、振盪または他の形態でのエネルギーの付与により行なわれる。農薬製剤の調製のために用いられるさらなる補助剤を、慣用の量で添加することができる。好適な補助剤の例は、上記の通りである。
【0047】
さらに、本発明は、式IIのピロリドンアルキレンオキシドに関する:
【化4】

【0048】
[式中、
R3は、プロポキシであり、
R4は、HおよびC1〜C6アルキルであり、
mは、2〜6の値を有する]。
【0049】
指数mは、好ましくは、3〜5の値を有する。R4は、好ましくは、Hおよびメチル、具体的にはHである。
【0050】
さらに、本発明は、式IIIのピロリドンアルキレンオキシドに関する:
【化5】

【0051】
[式中、
R5は、エトキシおよびプロポキシの混合基であり、
R6は、HおよびC1〜C6アルキルであり、
oは、2〜12の値を有する]。
【0052】
指数oは、好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜8、具体的には3〜6の値を有する。R4は、好ましくはHおよびメチル、具体的にはHである。
【0053】
ここで、基:
【化6】

【0054】
は、アルコキシ基R5のn個のモノマー単位から構成されるアルコキシポリマーに対応する。R5は、エトキシおよびプロポキシの混合基である。このことは、アルコキシポリマーが、エトキシおよびプロポキシから構成されるコポリマーであることを意味する。コポリマーは、ランダム混合コポリマーまたはブロックコポリマーであり得、コポリマーは好ましくはブロックコポリマーである。
【0055】
さらに、本発明は、式IVのピロリドンアルキレンオキシドに関する:
【化7】

【0056】
[式中、
R7はブトキシ、ならびにブトキシとエトキシおよび/またはプロポキシとの混合基であり、
R8は、HおよびC1〜C6アルキルであり、
Pは、2〜18の値を有する]。
【0057】
指数pは、好ましくは2〜18、特に好ましくは2〜14、具体的には3〜12の値を有する。R4は、好ましくはHおよびメチル、具体的にはHである。
【0058】
ここで、基:
【化8】

【0059】
は、アルコキシ基R7のn個のモノマー単位から構成されるアルコキシポリマーに対応する。R7は、ブトキシ、ならびにブトキシとエトキシおよび/またはプロポキシとの混合基である。このことは、アルコキシポリマーが、ブトキシのホモポリマー、またはそうでなければブトキシとエトキシ、ブトキシとプロポキシ、もしくはブトキシとエトキシおよびプロポキシとから構成されるコポリマーであり得ることを意味する。コポリマーは、ランダム混合コポリマーまたはブロックコポリマーであり得、コポリマーは好ましくはブロックコポリマーであり、例えば、ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーである。
【0060】
式II、IIIおよびIVのピロリドンアルキレンオキシドは、ピロリドンのアルコキシル化により調製することができる。アルコキシル化に用いることができる物質は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドである。アルコキシル化は、強塩基(アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物など)、ブレンステッド酸またはルイス酸(AlCl3、BF3など)により触媒されうる。ハイドロタルサイトまたは二重金属シアニド(DMC)などの触媒は、有するアルコールオキシレート(alcohol oxylate)に対して狭い配分量で用いることができる。好ましくは、アルコキシル化は、約90〜240℃、特に好ましくは110〜190℃の温度で行なう。アルキレンオキシドまたは種々のアルキレンオキシドの混合物は、選択された反応温度またはより高圧で優勢なアルキレンオキシド混合物の蒸気圧下でチャージされたピロリドンおよび触媒である。所望であれば、アルキレンオキシドは、99.9%まで不活性ガス(例えば、希ガス、窒素、CO2)で希釈することができる。特にエチレンオキシドの場合には、このことは、アルキレンオキシドの気相分解に対して、追加的な安全策となり、また、この実施形態において、本発明の意味の範囲内での不活性ガスとして、別のアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)を用いることも可能である。この好適なアルコキシル化の条件は、Nikolaus Schonfeldt、Grenzflachenaktive Athylenoxid-Addukte、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH、Stuttgart 1984にも記載されている。通例、アルコキシル化は、溶媒を添加せずに、触媒の存在下で行なう。しかしながら、アルコキシル化の条件下で不活性な溶媒を併用して、アルコキシル化を行なうこともできる。
【0061】
好適な実施形態では、少なくとも1種の強塩基により、アルコキシル化を触媒する。好適な強塩基の例は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物である。通常、塩基は、アルコキシル化する対象のピロリドンの量に基づいて、0.01〜1重量%の量で用いる(G. Gee et al., J. Chem. Soc.(1961), p. 1345; B. Wojtech, Makromol. Chem. 66, (1966), p. 180を参照されたい)。アルコキシル化反応の酸触媒も可能である。ブレンステッド酸の他に、AlCl3、BF3、BF3-ジエテレート(BF3-dietherate)、BF3×H3PO4、SbCl4×2H2O、ハイドロタルサイトなどのルイス酸も好適である(P. H. Plesch, The Chemistry of Cationic PoIymerization, Pergamon Press, New York (1963)を参照されたい)。
【0062】
本発明はまた、農薬製剤での上記式II、IIIおよびIVのピロリドンアルキレンオキシドの使用にも関する。農薬製剤は、当業者には公知である。農薬製剤は、通常、農薬と、任意により、農薬製剤用の補助剤、例えば、農薬製剤用の上記の補助剤とを含む。
【0063】
式II、IIIおよびIV、特に式IIIおよびIV、とりわけ式IVのピロリドンアルキレンオキシドは、本発明の組成物中のポリアルキレンオキシドとして特に好適である。
【0064】
本発明の利点は、とりわけ、高い含有量の農薬を有しながら、安定である組成物を可能にすることである。組成物および水で希釈された組成物は、結晶化する傾向をほとんど示さない(結晶化するとしても)。組成物は、溶解および懸濁した農薬の両方にとって好適であり、どちらの場合にも、結晶化する傾向をほとんど示さない。エマルジョン製剤の形態での組成物は、特に、安定であり、結晶化する傾向を示さない。
【0065】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、これを例示する。
【実施例】
【0066】
界面活性剤1:トリスチリルフェノールエトキシレート(1mol当たりエチレンオキシド16molを有する)(Rhodia S.A.から、Soprophor(登録商標)BSUとして市販されている)
界面活性剤2:ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(ClariantからCalsogen(登録商標)AR 100 NDとして市販されている)
界面活性剤3:ドデシルベンゼンスルホン酸、カルシウム塩(BASFからWettol(登録商標)EM 1として市販されている)
界面活性剤4:エトキシル化ヒマシ油ベースの非イオン性界面活性剤(BASFからWettol(登録商標)EM 31として市販されている)
エポキシコナゾール:純度95.5重量%
メトコナゾール:純度98.8重量%
ピラクロストロビン:純度99.4重量%。
【0067】
実施例1A:ピロリドン+3ブチレンオキシド(BuO)
【化9】

【0068】
170.2g(2.0mol)のピロリドン(1)および2.4gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、90℃、20mbarで2時間脱水した。その後、混合物を加圧反応器に移し、窒素を用いて1.5barまで圧をかけ、432.0g(6.0mol)のブチレンオキシド(2)を、130℃で4時間にわたって、3.3bar以下の圧力で量り入れた。10時間撹拌を続けた後、混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら窒素でフラッシュした。褐色の排出物を、約3.3gの酢酸(水中1重量%)を用いてpH5.7にしたところ、608.9gの淡褐色の透明生成物(3)(収率100%)が形成した。
【0069】
実施例1B:ピロリドン+4ブチレンオキシド
【化10】

【0070】
170.2g(2.0mol)のピロリドン(1)および2.98gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、90℃、20mbarで2時間脱水した。その後、混合物を加圧反応器に移し、窒素を用いて1.5barまで圧をかけ、576.0g(8.0mol)のブチレンオキシド(2)を、130℃で5時間にわたって、3.5bar以下の圧力で量り入れた。10時間撹拌を続けた後、混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら窒素でフラッシュした。褐色の排出物を、約3.7gの酢酸(水中1重量%)を用いてpH5.6にしたところ、748gの淡褐色の透明生成物(4)(収率100%)が形成した。
【0071】
実施例1C:ピロリドン+5ブチレンオキシド
【化11】

【0072】
136.2g(1.6mol)のピロリドン(1)および2.84gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、90℃、20mbarで2時間脱水した。その後、混合物を加圧反応器に移し、窒素を用いて1.5barまで圧をかけ、576.0g(8.0mol)のブチレンオキシド(2)を、130℃で4時間にわたって、3.7bar以下の圧力で量り入れた。10時間撹拌を続けた後、混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら窒素でフラッシュした。褐色の排出物を、約3.3gの酢酸(水中1重量%)を用いてpH5.5にしたところ、698gの淡褐色の透明生成物(5)(収率98%)が形成した。
【0073】
実施例1D:ピロリドン+5プロピレンオキシド+1ブチレンオキシド
【化12】

【0074】
170.2g(2.0mol)のピロリドンおよび3.58gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、90℃、20mbarで2時間脱水した。その後、混合物を加圧反応器に移し、窒素を用いて1.5barまで圧をかけ、581.0g(10.0mol)のプロピレンオキシド(6)を、130℃で5時間にわたって、3.7bar以下の圧力で量り入れた。その後、144.0g(2.0mol)のブチレンオキシドを、130℃で1時間、3.9bar以下の圧力で量り入れた。6時間撹拌を続けた後、混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら窒素でフラッシュした。褐色の排出物を、約1.9gの酢酸(水中1重量%)を用いてpH5.5にしたところ、904gの淡褐色の透明生成物(7)(収率100%)が形成した。
【0075】
実施例1E:ピロリドン+10プロピレンオキシド+1ブチレンオキシド
【化13】

【0076】
85.1g(1.0mol)のピロリドンおよび2.96gの水酸化カリウム(水中50重量%)を、90℃、20mbarで2時間脱水した。その後、混合物を加圧反応器に移し、窒素を用いて1.5barまで圧をかけ、581.0g(10.0mol)のプロピレンオキシドを、130℃で5時間にわたって、5.4bar以下の圧力で量り入れた。その後、72.0g(1.0mol)のブチレンオキシドを、130℃で1時間、3.9bar以下の圧力で量り入れた。6時間撹拌を続けた後、混合物を80℃まで冷却し、撹拌しながら窒素でフラッシュした。褐色の排出物を、約1.6gの酢酸(水中1重量%)を用いてpH5.5にしたところ、745gの淡褐色の若干濁った生成物(8)(収率100%)が形成した。
【0077】
実施例2:エポキシコナゾール製剤
5.2gまたは10.4gのエポキシコナゾール、7.5gの界面活性剤1、7.5gの界面活性剤2および12.5gの実施例1のピロリドンアルキレンオキシドを計量し、乳酸エチルヘキシルで総量100mlにした。透明で均一なエポキシコナゾール溶液が得られるまで、混合物を室温で撹拌により混合した。
【表1】

【0078】
いずれの場合にも、実験A〜Fの1種類のサンプルをCIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%のエマルジョンとし、20℃で6時間静置した。この間に、エポシキコナゾールの結晶は形成されなかった。
【0079】
実施例3:ピラクロストロビン製剤
25.2gのピラクロストロビン、5.0gの界面活性剤3および5.0gの界面活性剤4を計量し、実施例1のピロリドンアルキレンオキシドで総量100mlにした。透明で均一なピラクロストロビン溶液が得られるまで、混合物を室温で撹拌により混合した。
【表2】

【0080】
いずれの場合にも、実験A〜Cの1種類のサンプルを、CIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%のエマルジョンとし、20℃で6時間静置した。この間に、ピラクロストロビンの結晶は形成されなかった。
【0081】
実施例4:メトコナゾール製剤
15.2gのメトコナゾール、5.0gの界面活性剤3および5.0gの界面活性剤4を計量し、実施例1のピロリドンアルキレンオキシドで総量100mlにした。透明で均一なメトコナゾール溶液が得られるまで、混合物を室温で撹拌により混合した。
【表3】

【0082】
いずれの場合にも、実験A〜Cの1種類のサンプルを、CIPAC水D(342ppmのCa/Mgイオンを含む)で希釈して1重量%のエマルジョンとし、20℃で6時間静置した。この間に、メトコナゾールの結晶は形成されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬およびポリアルキレンオキシドを含む組成物であって、該ポリアルキレンオキシドが、式I:
【化1】

[式中、
R1は、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびそれらの混合基であり、
R2は、HおよびC1〜C6-アルキルであり、
nは、2〜20の値を有する]
のピロリドンアルキレンオキシドに対応する、上記組成物。
【請求項2】
少なくとも10重量%のピロリドンアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
nが、2〜16の値を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R1が、ブトキシならびにブトキシとエトキシおよび/またはプロポキシとの混合基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
R2がHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
農薬と式Iのピロリドンアルキレンオキシドとを混合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
【請求項7】
式II:
【化2】

[式中、
R3は、プロポキシであり、
R4は、HおよびC1〜C6-アルキルであり、
mは、2〜6の値を有する]
のピロリドンアルキレンオキシド。
【請求項8】
式III:
【化3】

[式中、
R5は、エトキシおよびプロポキシの混合基であり、
R6は、HおよびC1〜C6-アルキルであり、
oは2〜12の値を有する]
のピロリドンアルキレンオキシド。
【請求項9】
式IV:
【化4】

[式中、
R7は、ブトキシならびにブトキシと-CH2-CH2-O-および/またはプロポキシとの混合基であり、
R8はHおよびC1〜C6-アルキルであり、
pは、2〜18の値を有する]
のピロリドンアルキレンオキシド。
【請求項10】
農薬製剤中での、請求項7〜9のいずれか1項に記載のピロリドンアルキレンオキシドII、IIIおよびIVの使用。
【請求項11】
植物病原菌および/または望ましくない植生および/または昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/または植物の生長を調節するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、該組成物をそれぞれの有害生物、その環境またはそれぞれの有害生物から保護する対象の植物に、土壌に、および/または望ましくない植物および/もしくは有用植物および/もしくはその環境に作用させる、上記使用。
【請求項12】
植物への昆虫もしくはダニによる望ましくない攻撃を防除するための、かつ/または植物病原菌を防除するための、かつ/または望ましくない植生を防除するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、有用植物の種子を該組成物で処理する、上記使用。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物で処理した種子。

【公表番号】特表2012−512823(P2012−512823A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541340(P2011−541340)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066778
【国際公開番号】WO2010/069848
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】