説明

ファクシミリ装置

【課題】着信履歴の中から必要な情報を容易に認識することができるFAX装置を提供すること。
【解決手段】FAX装置は,FAXデータを受信し,印刷処理および保存処理を行わない読捨受信(偽装受信)を行う機能を備えている。また,FAX装置は,着信情報を記憶するデータベース140を備えている。データベース140は,電話ないしFAXの着信情報を,通信結果とともに記憶する。読捨受信を行った場合には,通信結果にその情報が記憶される。そして,FAX装置の表示部には,データベース140の記録内容が表示される。すなわち,着信情報が通信結果とともに表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ファクシミリ(FAX)装置に関する。さらに詳細には,FAXデータを受信するがそのFAXデータの印刷処理および保存処理を行わない機能を備えたFAX装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FAX装置には,FAXデータの印刷処理および保存処理を拒否する拒否機能を備えているものがある。拒否機能の動作としては,例えば次の3つの方法がある。すなわち,着信を拒否し,電話,FAXともに不通とする方法(方法1),着信はするが,FAXデータを受信しない方法(方法2),着信し,FAXデータを受信するが,受信したFAXデータの印刷処理および保存処理を行わない方法(方法3)である。いずれの方法においても,FAXデータの印刷処理および保存処理は拒否される。なお,方法3では,受信の際にFAXデータが一時的に記憶されるが保存はされない。
【0003】
上記の方法3では,一旦,FAXデータを受信する点が,方法1,2と異なる。方法1,2では,FAXデータの受信が行われず,送信側FAX装置に対して正常に受信が行われなかった旨の通知がなされる。そのため,受信を拒否されたことを送信側のユーザが認知することができ,送信側のユーザからの能動的な再送が期待できる。あるいは,受信を拒否されたことを契機に,送信側FAX装置が自動的に再送することも考えられる。
【0004】
しかし,方法1,2のように受信拒否を通知してしまうと,ダイレクトメール等の不要なFAXデータであっても自動再送の対象となってしまい,不要な通信が繰り返される。一方,方法3では,FAXデータを受信するため,そのような不要な通信を回避することができる。つまり,受信側のユーザにとっては,送信側に応じて拒否方法を選択することで,より快適な通信環境を構築できる。このようにFAXデータを受信するがそのFAXデータの印刷処理および保存処理を行わない処理(以下,「読捨受信」とする)については,例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−112763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来のFAX装置には,次のような問題があった。すなわち,受信者の不在が解消された後に,印刷処理を拒否したFAXデータを取得したい場合には,当該FAXデータの送信者に再送を依頼することになる。その際,受信者(再送を依頼する依頼者)は,FAX装置が有する着信履歴を基に,再送の依頼先を探すことになる。この着信履歴には,再送の依頼先のFAX番号の他,ダイレクトメール等の不要なFAX番号が混在することがある。そのため,必要な情報と不必要な情報との区別が難しく,必要な情報を探索し難い。
【0006】
本発明は,前記した従来のFAX装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,着信履歴の中から必要な情報を容易に認識することができるFAX装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされたFAX装置は,FAXデータを受信し,印刷処理および保存処理を行わない読捨受信を行う読捨受信手段と,FAXデータの着信情報を,読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かの情報と対応付けて記憶する記憶手段と,記憶手段の記憶内容を基に,読捨受信手段による読捨受信を行ったFAXデータの着信情報であるか否かを区別して着信情報を出力する出力手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明のFAX装置は,FAXデータを受信し,印刷処理および保存処理を行わない読捨受信(偽装受信ともいう)を行う機能を備えている。そして,FAXデータの着信情報を,読捨受信を行ったか否かの情報と対応付けて記憶する。そして,出力手段では,読捨受信を行ったか否かを区別して着信情報を出力する。出力方法としては,例えば,操作パネルへの表示や,用紙への印刷が適用可能である。
【0009】
すなわち,本発明のFAX装置では,FAXデータの着信情報として,読捨受信したものか否かを区別して出力する。このことから,ユーザは着信情報ごとに読捨受信によって拒否したものか否かを認識できる。例えば,ダイレクトメール等の不要なFAX番号には,読捨受信が設定されていることが多い。そのため,読捨受信による着信を区別して表示することで,ダイレクトメール等の不要なFAX番号が混在する着信情報データベースの中から,必要なFAX番号を探索することが容易になる。従って,ユーザの利便性が向上する。
【0010】
また,本発明のFAX装置の出力手段は,読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かを基に,出力の順序を規定するとよりよい。例えば,読捨受信を行った着信情報の優先順位を低く設定することで,読捨受信を行った着信情報とそれ以外の着信情報とがそれぞれ纏まった状態で出力される。そのため,着信情報が整然とし,より識別し易くなる。
【0011】
さらに,上記の出力手段は,各着信情報に対して所定条件に基づく重み付けを行い,その重み付けを反映させた順序で出力するとよりよい。所定条件としては,例えば同じ相手先からの着信をカウントし,その着信回数が多い順とすることや,最終着信日時の遅い順とすることが適用可能である。このようにユーザの所望する条件に基づいた優先順位を設定することで,必要なFAX情報をより容易に識別することができる。
【0012】
また,本発明のFAX装置の出力手段は,読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かを基に,出力の有無を規定するとよりよい。例えば,読捨受信を行った着信情報を出力しないと規定することで,出力内容が読捨受信を行った着信情報を除く着信情報となる。そのため,着信履歴が整然とし,より識別し易くなる。
【0013】
また,本発明のFAX装置は,記憶手段に記憶された着信情報から,1つあるいは複数の着信情報を選択させる選択手段と,選択手段にて選択された着信情報に対応付けられた相手先に発呼動作を行う発呼手段とを備えるとよりよい。すなわち,選択手段にて発呼先を選択させ,発呼手段にてその相手先に発呼動作を行うことで,ユーザは相手先番号の入力作業を行うことなく通信が可能になる。そのため,例えばFAXデータの再送依頼を行う際の,ユーザの作業の手間が軽減される。
【0014】
また,上記のFAX装置の発呼手段は,着信情報に対応付けて記録された電話番号を基に発呼動作を行うとよりよい。すなわち,電話による再送依頼は,相手に電話で直接再送を依頼できることから,高レスポンス性が期待できる。また,上記のFAX装置の発呼手段は,再送依頼の旨を示した内容のFAXデータを送信するとしてもよい。すなわち,FAXによる再送依頼は,通話がなく,手間が少ない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,着信履歴の中から必要な情報を容易に認識することができるFAX装置が実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明にかかるFAX装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,FAXデータの印刷処理および保存処理を拒否する拒否機能を備えたFAX装置に本発明を適用したものである。
【0017】
[FAX装置の全体構成]
本形態のFAX装置100は,図1に示すように,CPU11(読捨受信手段,選択手段,発呼手段の一例)と,ROM12と,RAM13と,不揮発性メモリ(以下,「NVRAM」とする)14(記憶手段の一例)と,表示部16(出力手段の一例)と,操作部17と,画像形成部110と,スキャナ部120と,ネットワークインターフェース18と,FAXインターフェース19とを備えている。
【0018】
CPU11は,FAX装置100におけるスキャン機能,プリント機能,FAX通信機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM12は,FAX装置100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等を記憶するものである。RAM13は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データ等を一時的に記憶する記憶領域として利用されるものである。NVRAM14は,不揮発性を有する記憶手段(Non Volatile RAM)であって,各種設定ないし画像データ等を記憶するものである。
【0019】
ネットワークインターフェース18には,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報機器(不図示)が接続され,このネットワークインターフェース18を介して情報機器との相互のデータ通信が可能になっている。FAXインターフェース19は,FAX通信を行うためのものであり,電話回線に接続される。具体的にFAXインターフェース19は,NCUやモデム等によって構成される。
【0020】
FAX装置100は,FAXインターフェース19によって受信したFAXデータに基づく画像を,画像形成部110によって用紙上に形成する処理を行う。また,スキャナ部120によって読み取った画像データや,ネットワークインターフェース18によって入力される画像データを基にFAXデータを作成し,当該FAXデータをFAXインターフェース19を介して相手先に送信する処理を行う。
【0021】
また,FAX装置100は,通常の電話通信処理やFAX受信処理を行う「通常モード」と,FAX受信の制限や留守番電話処理を行う「不在モード」を備えている。各モードは,ユーザの操作によって切り替えられる。
【0022】
また,FAX装置100は,アドレス情報を記録するデータベース(以下,「アドレス帳」とする)を備えている。図2は,本形態のアドレス帳130の構成を示している。アドレス帳130には,個々のアドレス情報を識別するためのIDと,名前と,電話番号と,FAX番号と,不在モードでの受信方法とが,1つのレコードとして記録される。電話番号とFAX番号とは,少なくともいずれか一方の番号が記録されていればよい。
【0023】
アドレス帳130の「不在モードでの受信方法」には,「拒否」,「読捨受信」,「拒否しない」のうちのいずれかが記録される。すなわち,不在モードでの受信方法には3つのパターンが設定可能であり,次のような処理を行う。「拒否」では,FAXデータを受信を拒否する処理を行う。「読捨受信」では,FAXデータを受信し,印刷処理および保存処理を行わない処理を行う。「拒否しない」では,FAXデータの拒否を行わず,FAXデータを受信し,印刷処理を行う。なお,ユーザから受信方法についての指定がなければ,「拒否」が設定される。
【0024】
不在モードでの受信方法を「拒否」あるいは「読捨受信」とすることで,受信側のユーザが不在時にはFAXデータが印刷されない。そのため,FAXデータの秘匿性を維持できる。また,不在モードでの受信方法のうち,「読捨受信」では,一旦FAXデータを受信することから,送信側に対して正常に受信が行われた旨の通知がなされる。そのため,送信側には不在モードであることが伝わらず,自動再送の対象とならない。そのため,ダイレクトメール等の不要なFAX番号に設定されることが多い。
【0025】
また,FAX装置100は,着信情報を記録するデータベース(以下,「着信履歴」とする)を備えている。図3は,本形態の着信履歴140の構成を示している。着信履歴140には,個々の着信情報を識別するためのIDと,相手先の番号と,着信日時と,着信データの種別と,通信結果とが,1つのレコードとして記録される。具体的に,着信データの種別には,電話であるかFAXであるかの情報が記録される。通信結果には,正常であれば「正常」と記録される。正常でなかった場合には,その原因がエラー処理によるものであれば「エラー」と記録され,不在モードによるものであればその設定によって「拒否」ないし「読捨受信」が記録される。
【0026】
[FAX装置の動作]
[着信処理]
続いて,FAX装置100の動作について説明する。始めに,FAX装置100の着信処理について,図4のフローチャートを参照しつつ説明する。本着信処理では,電話通信ないしFAX通信を行った後,着信情報を着信履歴140に記録する。なお,本着信処理は,回線閉結前に送出される呼出信号を検知する度に実行される。
【0027】
まず,FAX装置100が不在モードで動作しているか否かを判断する(S101)。不在モードであった場合には(S101:YES),S102の処理に移行して,不在モードでの着信処理を行う。一方,不在モードでなかった場合には(S101:NO),S121の処理に移行して,通常モードでの着信処理を行う。
【0028】
ここで,S121の通常モード処理について,図5のフローチャートを参照しつつ詳説する。通常モード処理としては,まず,回線を閉結する(S131)。具体的にS131の処理では,ハンドセットのオフフックあるいは呼び出しが所定時間経過した際に,回線が閉結される。次に,呼出がFAXによるものであるか否かを判断する(S132)。呼出がFAXによるものであるか否かは,回線閉結後に回線を介して発呼側から送出されるCNG信号(calling signal)が検出されるか否かによって判断する。CNG信号とは,送信側のFAX装置が送信する信号で,受信側に対し自分がFAXであることを通知するのに用いられる信号である。
【0029】
CNG信号が検出されず,着信がFAXによるものではない,すなわち電話であれば(S132:NO),通常の電話通信処理を行う(S151)。通常の電話通信処理には留守番電話処理も含まれる。通話後は,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S152)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「TEL」,通信結果が「正常」となる情報が記録される。その後,回線を切断し(S136),通常モード処理を終了する。
【0030】
一方,CNG信号が検出され,着信がFAXによるものであれば(S132:YES),FAX受信処理を行う(S133)。すなわち,FAXデータを受信し,画像形成部110によって当該FAXデータに基づく画像の印刷を行う。
【0031】
その後,FAXデータの受信処理が正常に完了したか否かを判断する(S134)。正常に完了しない場合としては,例えばメモリフルであったり用紙なしが該当する。正常に完了した場合には(S134:YES),着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S135)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「FAX」,通信結果が「正常」となる情報が記録される。一方,正常に完了しなかった場合には(S134:NO),エラー処理を行う(S141)。エラー処理としては,例えば表示部16へのメッセージ表示や警告音による報知が該当する。エラー処理後は,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S142)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「FAX」,通信結果が「エラー」となる情報が記録される。S135ないしS142の処理の後,回線を切断し(S136),通常モード処理を終了する。
【0032】
図4の着信処理の説明に戻り,不在モードでの着信処理としては,まず,回線を閉結する(S102)。次に,呼出がFAXによるものであるか否かを判断する(S103)。判断の方法は,先述したS132の処理と同様である。
【0033】
CNG信号が検出されず,着信がFAXによるものではない,すなわち電話であれば(S103:NO),相手のメッセージの録音を行う留守番電話処理を行う(S111)。留守番電話処理後は,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S112)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「TEL」,通信結果が「正常」となる情報が記録される。その後,回線を切断し(S105),着信処理を終了する。
【0034】
一方,CNG信号が検出され,着信がFAXによるものであれば(S103:YES),FAXデータの印刷および保存を拒否するFAX拒否処理を行う(S104)。拒否動作については,アドレス帳130に記録された不在モードでの受信方法に従う。
【0035】
ここで,S104のFAX拒否処理について,図6のフローチャートを参照しつつ詳説する。まず,着信番号とアドレス帳130に記録されているFAX番号とを照合し,該当するレコードの不在モードでの受信方法の情報を取得する(S161)。なお,アドレス帳130からFAX番号が検出されなかった場合には,不在モードでの受信方法として「拒否」が設定される。
【0036】
次に,不在モードの受信方法として,「拒否しない」が設定されているか否かを判断する(S162)。「拒否しない」が設定されている場合には(S162:YES),通常のFAX受信処理を行う(S181)。すなわち,FAXデータを受信し,画像形成部110によって当該FAXデータに基づく画像の印刷を行う。印刷後は,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S182)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「FAX」,通信結果が「正常」となる情報が記録される。なお,図6のフローチャートでは省略してあるが,受信が正常完了しなかった場合には,S142の処理と同様に,着信データの種別が「FAX」,通信結果が「エラー」とするレコードが追加される。S182の処理後,回線を切断し(S165),通常モード処理を終了する。
【0037】
「拒否しない」が設定されていない場合には(S162:NO),不在モードの受信方法として,「読捨受信」が設定されているか否かを判断する(S163)。「読捨受信」が設定されている場合には(S163:YES),読捨受信処理を行う(S171)。すなわち,一旦,FAXデータを受信してRAM13に記憶し,記憶したFAXデータの印刷処理および保存処理を行わずに当該FAXデータをRAM13から削除する。FAXデータの削除後は,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S172)。具体的に当該レコードには,着信データの種別が「FAX」,通信結果が「読捨受信」となる情報が記録される。その後,回線を切断し(S165),通常モード処理を終了する。
【0038】
「読捨受信」が設定されていない場合には(S163:NO),FAXデータを受信せず,着信履歴140に本着信についてのレコードを追加する(S164)。具体的に当該レコードには,種別が「FAX」,通信結果が「拒否」となる情報が記録される。その後,回線を切断し(S165),通常モード処理を終了する。すなわち,「拒否」の場合には,FAXデータを受信することなく,回線を切断する。
【0039】
[再送信依頼処理]
続いて,FAX装置100の再送信依頼処理について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。本再送信依頼処理では,依頼先を選択させる画面を表示し,選択された依頼先に再送信依頼を行う。なお,本再送信依頼処理は,ユーザが操作部17を操作することによって実行される。
【0040】
まず,着信履歴140を基に,FAX通信の着信一覧(以下,「FAX着信リスト141」とする)を作成する(S201)。具体的に,FAX着信リスト141は,着信履歴140の中から種別が「FAX」となっているレコードを抽出したものによって構成される。また,FAX着信リスト141は,着信データの種別が「FAX」となっているレコードの中からさらに所定の条件を満たすものによって構成されていてもよい。例えば,着信データの種別が「FAX」となっているレコードの中からさらに通信状態が「正常」となっている以外のレコードを抽出する(条件1)としてもよい。その場合,図8に示すように,通信状態が「エラー」,「拒否」,「読捨受信」となっている各レコードが抽出されたFAX着信リスト141が作成される。以下,上記の条件1によって抽出されたFAX着信リストを本形態のFAX着信リスト141とする。
【0041】
なお,レコードの抽出条件は条件1に限るものではない。例えば,着信データの種別が「FAX」となっているレコードの中からさらに通信結果が「正常」または「読捨受信」となっている以外のレコードを抽出する(条件2)としてもよい。「読捨受信」となっているレコードは,ダイレクトメール等の不要なFAXデータであるケースが多い。条件2では,そのような情報を表示しないようにすることで,再送依頼先の選択画面が簡素化し,選択作業がより容易になる。
【0042】
次に,FAX着信リスト141を基に,FAXデータの再送を依頼する相手先一覧(以下,「再送依頼リスト150」とする)を作成する(S202)。図9は,本形態の再送依頼リスト150の構成を示している。再送依頼リスト150には,アドレス帳130に記録されている名前と,相手先のFAX番号と,最終着信日時と,着信回数と,電話番号登録の有無と,通信結果とが,1つのレコードとして記録される。具体的に,同じ相手先からの着信が複数回ある場合には,その回数が着信回数に記録され,最新の着信日時と通信結果とがレコードに記録される。電話番号登録の有無は,FAX番号を基にアドレス帳130を参照することで判断される。アドレス帳130に登録されていない相手先からの着信では,名前が空欄になり,電話番号の登録が「無」になる。
【0043】
次に,ユーザから再送依頼リスト150のソート指示を受けたか否かを判断する(S203)。ソート指示は,ユーザが操作部17を操作することによって行われる。ソート指示を受けた場合には(S203:YES),再送依頼リスト150のソートを行う(S204)。ソート対象となる項目はユーザによって設定される。例えば,第1優先項目を「通信結果」として,その優先順位を「拒否」,「エラー」,「読捨受信」の順とする。第2優先項目を「着信回数」とする。第3優先項目を「電話番号登録の有無」として,その優先順位を「有」,「無」の順とする。この場合,図9に示した再送依頼リスト150は,図10に示すような順に並べ替えられる。S204の処理後あるいはソート指示を受けていない場合には(S203:NO),S205の処理に移行する。
【0044】
次に,表示部16に再送依頼リスト150の内容を表示する(S205)。再送依頼リスト150には通信結果が記録されており,表示部16にはFAX番号や最終着信日時の他,当該相手先からの通信結果が「拒否」,「エラー」,「読捨受信」のいずれかであるかが表示される。そのため,ユーザは,通信結果を知った上で再送依頼の相手先を選択することができる。
【0045】
その後,ユーザによってFAXデータの再送依頼の相手先が1つ選択され,選択された再送依頼相手を取得する(S206)。そして,選択された再送依頼相手に対して再送依頼を発行する(S207)。
【0046】
ここで,S207の再送依頼発行処理について,図11のフローチャートを参照しつつ詳説する。なお,FAX装置100には,再送依頼を自動的に行う「自動依頼モード」を備えており,あらかじめ,電話での再送依頼を行うための音声メッセージと,FAXでの再送依頼を行うための依頼レターとがROM12に記憶されている。再送依頼発行処理では,まず,自動依頼モードが設定されているか否かを判断する(S221)。
【0047】
自動依頼モードが設定されている場合には(S221:YES),選択された再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されているか否かを判断する(S222)。再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されている場合には(S222:YES),その電話番号を取得する(S223)。そして,再送依頼として,取得した電話番号に発呼し(S224),自動音声による再送依頼メッセージを送出する(S225)。一方,再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されていない場合には(S222:NO),再送依頼として,再送依頼リスト150にあるFAX番号に発呼し(S231),再送依頼レターを送信する(S232)。S225ないしS232の処理後は,本再送依頼発行処理を終了する。
【0048】
自動依頼モードが設定されていない場合には(S221:NO),すなわち手動で再送依頼を行う場合には,自動依頼モードと同じように,選択された再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されているか否かを判断する(S241)。再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されている場合には(S241:YES),その電話番号を取得する(S242)。
【0049】
次に,図12に示すように,再送依頼先の電話番号とFAX番号とを表示部16に表示する(S243)。そして,ユーザに対し,再送依頼を,電話で行うのか,FAXで行うのかを選択させる(S244)。
【0050】
電話番号が選択された場合には(S244:YES),再送依頼として,取得した電話番号に発呼し(S245),ユーザ自身が電話通信によって再送を依頼する(S246)。一方,FAX番号が選択された場合や(S244:NO),再送依頼先の電話番号がアドレス帳130に記録されていない場合には(S241:NO),再送依頼として,ユーザ自身が原稿をセットし,再送依頼リスト150にあるFAX番号に発呼し(S251),セットした原稿に基づくFAXデータを送信する(S252)。S246ないしS252の処理後は,本再送依頼発行処理を終了する。
【0051】
図7の再送信依頼処理の説明に戻り,S207の処理後は,再送依頼作業を終了するか否かを問い合わせる(S208)。再送依頼を続行する場合には(S208:NO),S205の処理に戻って再送依頼相手の選択および再送依頼発行を繰り返す。再送依頼作業を終了する場合には(S208:YES),本再送信依頼処理を終了する。
【0052】
以上詳細に説明したように本形態のFAX装置100は,着信情報を記憶するデータベース(着信履歴)140を備え,着信履歴140は,電話ないしFAXの着信情報を通信結果とともに記憶している。さらに,読捨受信を行った際には,通信結果にその情報が記録される。そして,FAX装置100では,表示部16に,着信履歴140の記録内容を基に作成した再送依頼リスト150の内容を表示している。再送依頼リスト150には,通信結果の内容も記録される。このことから,ユーザは,FAXデータごとに読捨受信によって拒否したものか否かを認識できる。そのため,ダイレクトメール等の不要なFAX番号が混在する着信情報の中から,必要なFAX番号を探索することが容易になり,ユーザの利便性が向上する。
【0053】
また,FAX装置100は,再送依頼リスト150のレコードを並べ替えて表示することができる。また,再送依頼リスト150のレコードの中から通信結果が読捨受信となっているレコードを削除して表示することもできる。そのため,着信履歴が整然となり,より識別し易くなる。
【0054】
また,FAX装置100は,再送依頼リスト150の表示内容からユーザに再送依頼先を選択させ,その相手先に発呼動作を行っている。すなわち,ユーザは,番号の入力作業を行うことなく再送依頼が可能になる。また,自動依頼モードにおいて,ユーザは再送依頼先を選択し,再送依頼を指示することで,再送依頼を完了することができる。そのため,ユーザの作業の手間が軽減される。
【0055】
また,FAX装置100は,再送依頼を,電話とFAXとで選択可能にしている。すなわち,電話による再送依頼は,相手に電話で直接再送を依頼できることから,高いレスポンス性が期待できる。また,FAXによる再送依頼は,通話がなく,手間が少ない。
【0056】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,実施の形態では,FAX専用装置に本発明を適用しているが,これに限るものではない。すなわち,FAX機能を備えたものであればよく,FAX機能を備えた複合機(MFP)であってもよいし,FAX機能を備えたパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。
【0057】
また,実施の形態では,再送依頼リスト150の内容を表示部16に出力しているが,出力先は表示部16に限るものではない。例えば,画像形成部110によって印刷出力してもよいし,電子メールによるデータ送信出力であってもよい。
【0058】
また,実施の形態では,再送依頼先を1つずつ選択しているが,複数の相手先を纏めて選択してもよい。複数選択することで,1つずつ選択する作業の手間が軽減する。一方,1つずつ選択することで,相手先ごとに送信方法を選択することができる。
【0059】
また,実施の形態では,ユーザの選択によって読捨受信を行った着信情報を削除して表示するようにしているが,反対に,読捨受信を行った着信情報のみを表示するようにしてもよい。すなわち,読捨受信を設定した相手先についても後にFAXデータが必要になることも考えられる。特に,読捨受信の場合には,相手先にとってはFAXデータを受け取ったことになっており,能動的な再送は期待し難い。そこで,読捨受信を行った着信のみを表示することで,必要なFAX番号の探索が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係るFAX装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】アドレス情報を記録するデータベース(アドレス帳)の一例を示す図である。
【図3】着信履歴情報を記録するデータベース(着信履歴)の一例を示す図である。
【図4】実施の形態に係るFAX装置の着信処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態に係るFAX装置の通常モード処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るFAX装置のFAX拒否処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態に係るFAX装置の再送依頼処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】FAX通信の着信一覧(FAX着信リスト)の一例を示す図である。
【図9】FAXデータの再送信を依頼する相手先の一覧(再送信依頼リスト)の一例を示す図である。
【図10】図9に示した再送信依頼リストの情報をソートした例を示す図である。
【図11】実施の形態に係るFAX装置の再送依頼発行処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】再送依頼選択画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
19 FAXインターフェース
100 FAX装置
110 画像形成部
120 スキャナ部
130 アドレス帳
140 着信履歴
141 FAX着信リスト
150 再送依頼リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファクシミリ(FAX)データを受信し,印刷処理および保存処理を行わない読捨受信を行う読捨受信手段と,
FAXデータの着信情報を,前記読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かの情報と対応付けて記憶する記憶手段と,
前記記憶手段の記憶内容を基に,前記読捨受信手段による読捨受信を行ったFAXデータの着信情報であるか否かを区別して着信情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載するファクシミリ装置において,
前記出力手段は,前記読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かを基に,出力の順序を規定することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項3】
請求項2に記載するファクシミリ装置において,
前記出力手段は,各着信情報に対して所定条件に基づく重み付けを行い,その重み付けを反映させた順序で出力することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載するファクシミリ装置において,
前記出力手段は,前記読捨受信手段による読捨受信を行ったか否かを基に,出力の有無を規定することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するファクシミリ装置において,
前記記憶手段に記憶された着信情報から,1つあるいは複数の着信情報を選択させる選択手段と,
前記選択手段にて選択された着信情報に対応付けられた相手先に発呼動作を行う発呼手段とを備えることを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項6】
請求項5に記載するファクシミリ装置において,
前記発呼手段は,着信情報に対応付けて記録された電話番号を基に発呼動作を行うことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項7】
請求項5に記載するファクシミリ装置において,
前記発呼手段は,再送依頼の旨を示した内容のFAXデータを送信することを特徴とするファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−267667(P2009−267667A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113427(P2008−113427)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】