説明

ファセットのないSiCバルク単結晶の製造方法、SiCバルク単結晶及び単結晶SiC基板

【課題】デバイス製造のために改善された特性が与えられているSiCバルク単結晶を製造する方法及び単結晶SiC基板を提供する。
【解決手段】SiCバルク単結晶を製造する方法において、成長坩堝3の結晶成長領域にSiC成長気相が生成され、中心縦軸を有するSiCバルク単結晶をSiC成長気相からの堆積によって成長させ、このとき堆積は成長しているSiCバルク単結晶2の成長境界面のところで行われ、SiC成長気相が、少なくとも部分的に、成長坩堝の備蓄領域にあるSiCソース材料から供給され、窒素、アルミニウム、バナジウム及びホウ素からなる群に属する少なくとも1つのドーピング物質を含んでおり、結晶成長領域はSiC表面区画と炭素表面区画とによって区切られ、SiC表面区画割合を炭素表面区画割合によって除算することで得られるSiC/Cの面積比率が常に0.01よりも小さい値を有するように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCバルク単結晶を製造する方法、この方法によって製造されたSiCバルク単結晶及びこのSiCバルク単結晶から製作された単結晶SiC基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料であるシリコンカーバイド(SiC)は、その卓越した物理的、化学的、電気的及び光学的な特性に基づき、特にパワーエレクトロニクス半導体デバイス、高周波デバイス及び光生成をする特殊な半導体デバイスの出発材料として利用されている。このようなデバイスのためには、できる限り広い基板直径と、できる限り高い品質と、できる限り均一な固有電気抵抗とを有するSiC基板(=SiCウェーハ)が必要である。
【0003】
SiC基板のベースとなるのは高価なSiCバルク単結晶であり、これは物理的気相堆積によって製作されるのが通常であり、特に、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている昇華法により製作される。このようなSiCバルク単結晶から円板状の単結晶SiC基板が切り出され、次いで、この基板にデバイス製造の一環として、特にSiCからなる少なくとも1つのエピタキシャル層が設けられる。デバイスの品質及び信頼度は、特に、昇華成長中にドーピング物質添加によって生じられる局所的な電気抵抗が、どれくらい均一に分布しているかにも左右される。SiC基板におけるドーピング物質濃度の横方向の変動は、不均一なデバイス特性につながり、当該デバイスがSiC基板のどの個所に配置されるかによって、デバイスの全面的な不具合につながることさえある。SiC基板は、例えば裏面接触によってデバイスの能動部品の一つに含まれるので、SiC基板に生じる欠陥及び/又は不均一性、例えばドーピング不均一性、即ち抵抗分布の変動、はデバイスの特性に影響を及ぼす。即ち、その品質は、成長したSiCバルク単結晶の品質及びそこから得られたSiC基板の品質に大きく左右される。
【0004】
従来式の昇華成長中には、成長しているSiCバルク単結晶の成長境界面に様々に異なる部分領域が形成される。中央の領域又は少なくとも中央に近い領域では、結晶成長ステップのステップ高さに対するステップ奥行(又はステップ幅)の比率の非常に高い、ほぼ平坦で平滑な表面構造(=表面モルフォロジー)が生じる。このファセット領域は、移行領域で取り囲まれており、移行領域に続いて、結晶成長ステップのステップ高さに対するステップ奥行の比率がほぼ均衡のとれた、湾曲していて粗い表面構造をもつ縁部領域がある。上述した各部分領域は、それぞれのドーピング物質濃度に関しても部分的に著しく相違しており、それに伴って、それぞれの局所的な電気抵抗に関しても相違している。縁部領域は成長境界面の最大の割合を占めているので、現在のところ、成長条件は縁部領域が所望のドーピング物質濃度を有するように選択されている。このことは、ファセット領域が強くドーピングされすぎ、そこから製作されるデバイスの品質が低くなり、最悪のケースでは使い物にならない可能性もあるという結果につながる。
【0005】
ファセット形成の現象及びデバイス製造にとってのファセット領域の利用不能性については、例えば特許文献3の要約に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第6,773,505B2号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第19931332C2号明細書
【特許文献3】特開平2008−290895A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、デバイス製造のために改善された適性が与えられている、SiCバルク単結晶を製造する方法及び単結晶SiC基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のSiCバルク単結晶を製造する方法は、
SiCバルク単結晶(2)を製造する方法において、
a)成長坩堝(3)の結晶成長領域(5)にSiC成長気相(7)が生成され、中央の中心縦軸(14)を有するSiCバルク単結晶(2)をSiC成長気相(9)からの堆積によって成長させ、このとき、堆積は成長しているSiCバルク単結晶(2)の成長境界面(16)のところで行われ、
b)SiC成長気相(9)が、少なくとも部分的に、前記成長坩堝(3)の備蓄領域(4)にあるSiCソース材料(6)から供給され、窒素、アルミニウム、バナジウム及びホウ素からなる群に属する少なくとも1つのドーピング物質を含んでいる、そのような方法において、
c)前記結晶成長領域(5)は、SiC表面区画と炭素表面区画とによって区切られ、これらの表面区画は、SiC表面区画割合を炭素表面区画割合によって除算することで得られるSiC/Cの面積比率が常に0.01よりも小さい値を有するように選択されることを特徴とする方法である。
本発明による方法は、成長坩堝の結晶成長領域にSiC成長気相が生成され、中央の中心縦軸を有するSiCバルク単結晶をSiC成長気相からの堆積によって成長させる方法である。このとき堆積は、成長しているSiCバルク単結晶の成長境界面のところで行われる。SiC成長気相は、少なくとも部分的に、成長坩堝の備蓄領域にあるSiCソース材料から供給され、窒素、アルミニウム、バナジウム及びホウ素からなる群に属する少なくとも1つのドーピング物質を含んでいる。結晶成長領域は、SiC表面区画と炭素表面区画とによって区切られる。これらの表面区画は、SiC表面区画割合を炭素表面区画割合によって除算することで得られるSiC/Cの面積比率が、常に0.01よりも小さい値を有するように選択される。
【0009】
本発明では、横方向の不均一な抵抗分布につながる、従来の不都合な成長境界面のファセット領域、移行領域及び縁部領域への三分割がほぼ回避される。これに代えて、本発明による昇華成長法により、ファセット領域のない又は少なくとも重要なファセット領域のない、SiCバルク単結晶が製作される。このことは、中心縦軸のまわりの中央部でも縁部領域と類似する成長条件が整えられ又は同一の成長条件さえも整えられることによって実現される。特に、成長しているSiCバルク単結晶の成長境界面は、中央部において、縁部領域のそれと少なくとも同等である結晶成長ステップのステップ形状を有している。このことは、特に、SiCバルク単結晶製造の全期間について当てはまる。中央部では、ステップ高さの大きさがステップ奥行と類似する結晶成長ステップを有する、粗い表面構造も生じているのが好ましい。特に、ステップ奥行は、ステップ高さの最大5倍の大きさである。即ち、ステップ高さに対するステップ奥行の比率は、中央部において、そのほかの成長境界面付近の全ての個所と同じく、1から5までの範囲内にあるのが好ましい。それにより、成長境界面付近の全ての個所でも、ドーピング物質の注入について同一の条件又は少なくとも類似する条件が成立するので、成長しているSiCバルク単結晶では、実質的にどの個所でも均一なドーピング物質濃度が生じることになり、その結果として、事実上、どの個所でも同一又は類似する大きさの局所的な固有電気抵抗が生じることになる。横方向(及び好ましくは軸方向)における抵抗分布は非常に均一であり、特に、従来のSiCバルク単結晶においてファセット領域から縁部領域への横方向の移行部で生じるような、跳躍的な変化を有していない。
【0010】
本発明の方法では、成長途中におけるSiC成長気相へのドーピング物質添加は、成長しているSiCバルク単結晶の実質的にどの個所でも所望のドーピング物質濃度が生じ、それに伴って所望の固有電気抵抗が生じるように調整される。上に説明したようにファセット領域が形成されないので、(従来はドーピングが強すぎる)ファセット領域を高価値なデバイス製造のために切り離し高価な基板面を使えなくするという、従来の非効率的な作業も不要である。
【0011】
更に、本発明では、ファセット領域の好ましい排除は、SiC成長気相中で調製される過剰炭素によって実現できることが見出されている。過剰炭素は、特に、SiCバルク単結晶生成の全期間に亘って生じ且つ成長境界面に直接存在するか又は成長境界面のすぐ手前に存在しているのが、好ましい。SiC成長気相におけるケイ素(Si)に比べて高い炭素(C)の割合は、本発明によると、SiC表面よりも高い割合の炭素表面で結晶成長領域が区切られることによって実現される。ここで、これらの表面は普遍的に理解されるべきものであり、幾何学的な外側寸法によって把握可能な表面を含んでいるだけでなく、SiC成長気相が同じく接触ないし相互作用することができ、特に粉末状又は著しい多孔性の材料の場合に特別に重要となる場合がある「内部の」表面も含んでいる。従って、SiC表面区画は、特に、好ましくは粉末状のSiCソース材料の、結晶成長領域との境界面を含んでおり、更に、成長しているSiCバルク単結晶の成長境界面をも含んでいる。それに対して炭素表面区画は、特に、結晶成長領域を側方で区切る、好ましくはグラファイト材料からなる、成長坩堝の壁部を含むことができる。
【0012】
全体として、本発明の成長方法により、実質的にファセットのないSiCバルク単結晶を生成することができ、それにより、局所的な電気抵抗のほぼ均一な横方向分布が生じる。従来製作されているSiCバルク単結晶における大きな抵抗変動は、本発明に基づいて製作されたSiCバルク単結晶には存在していない。即ち、本発明に基づいて製作されたSiCバルク単結晶は、高い品質を特徴としており、特に半導体デバイスを製造するために、効率的に二次利用することができる。
【0013】
1つの好ましい側面では、SiCバルク単結晶は、中心縦軸に対して垂直に、結晶直径Dを有する円形の横断面を有しており、結晶成長領域は中心縦軸の方向で成長領域長さLに亘って延びており、成長領域長さLは、結晶直径Dの半分よりも長く、特に最大で250mmであるように選択される。このとき、本発明によるSiC成長気相の過剰炭素は、結晶成長領域を区切る部分面の幾何学的観点から実質的に導き出すことができる、設計的な方策に基づいて出現させられる。このとき、SiC表面区画は、ほぼ円形の2つの境界面によって、即ち、SiCソース材料の表面と成長境界面とによって、形成される。成長しているSiCバルク単結晶の結晶直径Dは、成長の過程で変化する可能性、特に増える可能性、がある。軸方向では、各結晶直径Dは、例えば最大で約20%だけ、変動する可能性がある。結晶直径Dの上限は、結晶成長領域における坩堝内部空間の断面積によって与えられる。即ち、円筒形の坩堝内部空間を想定すると、その内部空間は、SiCバルク単結晶の最大の断面積についてもSiCソース材料の表面積についても、主要な幾何学パラメータとなる。それに応じて、両方の円形のSiC境界面の総面積は、π×(D/2)2+π×(D/2)2=2×π×(D/2)2によって与えられ、ここでDは、一方では最大の結晶直径を表すとともに、他方では坩堝内部空間直径も表している。炭素表面区画は、グラファイト材料から製作される成長坩堝の円筒形の内壁によって規定され、2×π×(D/2)×Lに従って算出され、ここでDは、やはり坩堝内部空間直径を表しており、Lは結晶成長領域の成長領域長さを表している。炭素表面区画がSiC表面区画よりも大きいという本発明の条件を考慮すると、これら両方の面積計算規則から条件L>(D/2)が得られる。即ち、成長領域長さLは、(最大の)結晶直径Dの半分よりも長く調整される。成長領域長さLが増えるにつれて、それにより実現される過剰炭素も多くなる。但し、成長領域長さLは250mmよりも長くないのが好ましい。そうしないと、SiCソース材料から成長境界面への材料輸送が十分な規模で確保できなくなり、又は、著しい追加コストをかけないと確保できなくなるからである。
【0014】
本発明においては、SiC/Cの面積比率について0.01よりも小さい値が選択される。その場合、炭素表面区画はSiC表面区画よりもはるかに大きくなり、それによって、特別に好ましい非常に多い過剰炭素がSiC成長気相で生じることになり、中心部の成長境界面が特別に大きく湾曲し、ないしは、特別な特徴をもつ成長ステップを含むことになる。成長中には、Siの非常に豊富な気相が高温のSiCソース材料から結晶成長領域へ輸送される。ケイ素が炭素と反応してSiCとして成長するためには、特に、できる限り広い炭素含有表面、例えばグラファイト表面、を、結晶成長領域の壁部で利用できるのが望ましい。このことは、特に、本来の(幾何学的な)外表面よりも広い「内部の」表面を有する、多孔性又は粉末状の材料の使用によって、具体化することができる。粒度の小さい粉末を使用する場合、「内部の」表面を特に外側表面よりも数次広くすることができ、それにより、0.01よりも小さいSiC/Cの面積比率を容易に実現することができる。
【0015】
別の好ましい側面では、結晶成長領域を区切っている成長坩堝の側壁は3層で構成されており、外側層については第1のグラファイト材料が、中間層については炭素粉末が、そして内側層については第1のグラファイト材料よりも多孔性である第2のグラファイト材料が、用いられる。それにより、特別に高い炭素表面区画割合が達成される。その理由は特に、内側の、特に中間層の広い「内部の」表面にある。内側層の第2のグラファイト材料は、外側層の第1のグラファイト材料よりも多孔性で密度が低いが、それにも拘らず、内側層は機械的に安定しており、中間層のばらばらの炭素粉末を壁部に固定する。更に、内側層は、その多孔性に基づき、Siの豊富な気相が中間層の炭素粉末へアクセスするのを可能にする。炭素粉末は、その広い「内部の」表面に基づき、Siの豊富な気相を炭素で飽和させる。
【0016】
別の好ましい側面では、内側層の第2のグラファイト材料について、グラファイトの理論上の最大密度2.3g/cm3の60%よりも低い密度が採用される。内側層について採用される第2のグラファイト材料は、一方では、中間層の炭素粉末を固定するための十分な機械的安定性を提供するとともに、他方では、中間層から、及び中間層への物質輸送のための十分な多孔性を提供する。
【0017】
別の好ましい側面では、中間層の炭素粉末について、少なくとも90%が、最大で250μm、好ましくは最大で50μm、の平均粒度を有する粒子が使用される。それにより、中間層の炭素粉末は、好ましい特別に小さい粒度を有している。粒度が小さいほど、Siの豊富な気相のガス種類にとって到達可能な、中間層の材料の「内部」の表面が広くなる。
【0018】
別の好ましい側面では、SiCソース材料は、炭素粉末からなる層で被覆され、更に、この炭素粉末は、SiCソース材料とは反対の側で、特にグラファイトの理論上の最大密度2.3g/cm3の60%よりも低い密度を有する多孔性のグラファイト材料で、被覆される。即ち、SiCソース材料は炭素含有材料からなる二重層で被覆され、ばらばらの炭素粉末からなる下側の層が、その上に配置された多孔性グラファイト材料からなる層によって固定される。このような方策により、炭素表面区画割合がいっそう高くなる。
【0019】
別の好ましい側面では、最初に注入されるSiCソース材料に20%から40%の間の過剰炭素が供給される。かくして、既にSiCソース材料において、炭素割合がケイ素割合を上回っており、特に20モル%から40モル%、典型的には約25モル%だけ上回っていることによって、SiC成長気相における過剰炭素の形成が支持される。
【0020】
別の好ましい側面では、成長しているSiCバルク単結晶の成長境界面は、複数の局所的な成長ステップと、中心縦軸の方向で最も遠くまで突出する一つの成長フロント点とを有しており、成長境界面については、成長フロント点の周囲の中心領域でも実質的に湾曲した形状が備えられ、それにより、この中心領域に存在する局所的な成長ステップのうち少なくとも1つに対して垂直に向き且つ成長境界面に位置する、任意の長さ1mmの部分区間の始点から終点の間で、中心縦軸の方向に測定した少なくとも10μm、好ましくは少なくとも100μm、の軸方向の高低差Δhが生じる。
【0021】
その場合、成長境界面は特にどの個所でも実質的に均一なステップ形状を有しており、それにより、ファセット領域の形成が格別に効果的に抑制され、成長しているSiCバルク単結晶への、ほぼ均一なドーピング物質の注入が行われる。
【0022】
本発明の単結晶SiC基板は、基板主表面(35)と基板厚み(t)とを備える単結晶SiC基板において、前記基板主表面(35)の広さ4mm2の正方形の任意の第1の部分面について前記基板厚み(t)を基準として求めた局所的な固有電気抵抗が、広さ4mm2の正方形の任意の第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して最大で4mΩcmだけ相違しているSiC基板である。
本発明による単結晶SiC基板は、基板主表面と基板厚みtとを備える基板であり、基板主表面の広さ4mm2の特に正方形の任意の第1の部分面について基板厚みtを基準として求めた局所的な固有電気抵抗は、広さ4mm2の特に正方形の任意の第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して、最大で4mΩcmだけ相違している。
【0023】
特にSiC基板は、最大で20mΩcm、例えば15mΩcm又は16mΩcm、の基板主表面の全体を基準として求めた全般的(=平均の)固有抵抗値を有することが可能である。そのためにSiC基板は少なくとも1つのドーピング物質でドーピングされているのが好ましく、この少なくとも1つのドーピング物質は、窒素、アルミニウム、バナジウム及びホウ素からなる群に属する元素である。
【0024】
全体として本発明によるSiC基板は、基板面主領域における局所的な固有電気抵抗の特別に均一な分布を特徴としており、従って、低い不良率で特に高価値なデバイスを効率的に製造するのに卓越して適している。それに対して、従来のSiC基板を用いたデバイス製造では、従来式のSiC基板における不均一に分布した電気抵抗の故に、低い歩留り及び/又は高い不良率が引き起こされる。即ち、本発明によるSiC基板は、例えば半導体デバイスを製造するための基板として、特別に有利に適用することができる。
【0025】
このように均等に分布する特に低い電気抵抗をもつ単結晶SiC基板は、従来存在しておらず、ここで説明している本発明の方法ないしその側面に基づいて製作されたSiCバルク単結晶から初めて製作することができ、例えば、そのようなSiCバルク単結晶からの連続式の円板状の切断又はソーイングによって製作することができる。このようなSiC基板の基板主表面は、特に、SiCバルク単結晶の成長方向に対して実質的に垂直に向いている。
【0026】
本発明によるSiC基板は、半導体デバイスを製造する用途に関わる産業上の要請を満たすものである。基板主表面に対して垂直に測定したこのようなSiC基板の基板厚みは、特に約100μmから約1,000μmの範囲内、好ましくは約200μmから約500μmの範囲内、であり、基板厚みは、好ましくは最大で20μmの、基板主表面全体に亘って観察した全般的な厚み変動を有している。更に、互いに向かい合う両方の基板主表面のうち少なくとも一方は、好ましくは最大で3nmの、表面粗さを有している。このSiC基板は、ある程度の機械的な安定性を有しており、特に自立的である。実質的に丸い円板形状を有しているのが好ましく、即ち、基板主表面は事実上円形である。場合によっては、円周の縁部に設けられる少なくとも1つの識別マーキングに基づき、厳密に円形形状とは僅かな相違が生じる可能性がある。
【0027】
1つの好ましい側面では、任意の第1の部分面の局所的な固有電気抵抗は、任意の第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して最大で2mΩcmだけ相違している。その場合、極めて均一な横方向の抵抗分布が成立するので、このSiC基板は、特別に不良率の低いデバイス製造のための要求事項又は特別に高価値なデバイスの製造のための要求事項も、満たしている。
【0028】
別の好ましい側面では、基板主表面は、特に少なくとも76.2mm、100mm、150mm、200mm又は250mmの値をとることができる、特別に大きい直径Dを有している。基板直径が大きくなるほど、単結晶のSiC基板を、例えば半導体デバイスの製造のために、いっそう効率的に二次加工することができる。それによって半導体デバイスの製造コストが削減される。このように大きい直径をもつSiC基板は、例えば約1cm2の底面を有する比較的大型の半導体デバイスの製造にも使用できるという利点がある。但し、結晶直径ないし基板直径が増すにつれて、本発明の製造方法で意図される過剰炭素を具体化するのは難しくなる。SiC/Cの面積比率は、結晶直径ないし基板直径の増加にともなって減少する。その原因は、SiCソース材料と成長境界面との間の距離、即ち結晶成長領域の成長領域長さL、を任意に広くすべきではないということにもある。特にこの長さは、その都度の結晶直径ないし基板直径に関わりなく、例えばSiCソース材料から成長境界面への適正な輸送を確保するために、可能な限り常にほぼ同じ大きさであるのがよい。その意味で、大きい結晶直径をもつSiCバルク単結晶を製作するときの過剰炭素は、成長領域長さLの増加によってではなく、それ以外の方法での炭素面積割合の増加によって、例えば炭素材料の「内部の」表面積の増加又は追加の配置によって、行うのがよい。即ち、その意味において、できる限り均一な抵抗分布をも更に有する、ほかならぬ大型のSiC基板の場合に、上で説明したファセット領域抑圧のための方策が結晶成長プロセス中に実行されると、特別に好都合である。
【0029】
本発明の上記以外の構成要件、利点及び具体的事項は、図面を用いた以下の実施例の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】昇華成長によってSiCバルク単結晶を製作するための成長装置の一実施例である。
【図2】従来のSiCバルク単結晶を示す断面図である。
【図3】従来のSiCバルク単結晶を示す平面図である。
【図4】追加の炭素外装を成長坩堝に備える、SiCバルク単結晶を昇華成長させるための成長装置の実施例である。
【図5】追加の炭素外装を成長坩堝に備える、SiCバルク単結晶を昇華成長させるための成長装置の別の実施例である。
【図6】図1、図4及び図5のいずれか1つの成長装置によって製作されたSiCバルク単結晶の実施例を示す断面図の部分拡大図である。
【図7】図1、図4及び図5のいずれか1つの成長装置によって製作されたSiCバルク単結晶の実施例を示す平面図の部分拡大図である。
【図8】図1、図4及び図5のいずれか1つの成長装置によって製作されたSiCバルク単結晶の実施例を示す中心部の部分拡大図である。
【図9】図1、図4及び図5のいずれか1つの成長装置によって製作されたSiCバルク体積単結晶から製造された単結晶SiC基板の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1から図9において互いに一致する部分は、同じ符号とする。以下において詳述する実施例のそれぞれの部分は、また、それ自体が一つの発明であり、また、発明対象の部分であり得る。
【0032】
図1には、昇華成長によってSiCバルク単結晶2を製作するための成長装置1の実施例が示されている。この成長装置1は、SiC備蓄領域4と結晶成長領域5とを含む成長坩堝3を含んでいる。SiC備蓄領域4の中には、例えば予備製作された出発材料として成長プロセスの開始前に成長坩堝3のSiC備蓄領域4に充填される、粉末状のSiCソース材料6がある。
【0033】
SiC備蓄領域4と向かい合う成長坩堝3の内壁、即ち、その坩堝蓋7、には、種結晶8が結晶成長領域5に取り付けられている。この種結晶8の上で、結晶成長領域5に形成されるSiC成長気相9からの堆積によって、成長するべきSiCバルク単結晶2が成長する。成長しているSiCバルク単結晶2と種結晶8は、ほぼ等しい直径を有している。相違がある場合には、最大で10%の相違があり、その分だけ種結晶8の種直径がSiCバルク単結晶2の単結晶直径よりも小さい。
【0034】
坩堝蓋7を含めた成長坩堝3は、図1の実施例では、例えば少なくとも1.75g/cm3の密度をもつ、電気及び熱を伝導するグラファイト坩堝材料でできている。その周囲には熱絶縁層10が配置されている。後者は、例えば発泡グラファイト断熱材料でできており、その多孔度は、特に、グラファイト坩堝材料の多孔度よりも明らかに高い。
【0035】
断熱された成長坩堝3は、管状容器11の内部に配置されており、この管状容器は、本実施例では石英ガラス管として施工され、オートクレーブ又は反応炉を構成する。成長坩堝3を加熱するために、容器11のまわりには誘導式の加熱装置が加熱コイル12の形態で配置されている。成長坩堝3は、加熱コイル12によって2,000℃を超える成長温度まで加熱され、特に約2,200℃まで加熱される。加熱コイル12は、成長坩堝3の導電性の坩堝壁13へ電流を誘導式に導く。この電流は実質的に循環電流として、円筒状又は中空円筒状の坩堝壁13の内部で円周方向に流れ、その際に成長坩堝3を加熱する。必要に応じて、加熱コイル12と成長坩堝3との間の相対的な位置を軸方向へ、即ち、成長しているSiCバルク単結晶2の中心縦軸14の方向へ、変更することができ、それは特に、成長坩堝3の内部の温度ないし温度変化を調整、場合により変更、するためである。成長プロセス中に軸方向へ変更可能な加熱コイル12の位置は、図1では、二重矢印15で図示されている。特に加熱コイル12は、成長しているSiCバルク単結晶2の成長の進行に合わせて調節しながら変位する。この変位は下方に向かって、即ち、SiCソース材料6の方向へ、且つ好ましくはSiCバルク単結晶2が成長したのと同じ長さだけ、例えば合計で約20mmだけ、行われるのが好ましい。そのために成長装置は、相応に構成された管理手段、制御手段及び調節手段(詳細は図示せず)を含んでいる。
【0036】
結晶成長領域5のSiC成長気相9は、SiCソース材料6による供給をうける。SiC成長気相9は、少なくとも、Si、Si2C及びSiC2(=SiC気体種)の形態のガス成分を含んでいる。SiCソース材料6から、成長しているSiCバルク単結晶2の成長境界面16への輸送は、軸方向の温度勾配に沿って行われる。成長境界面16のところでは、特に、少なくとも5K/cm、好ましくは少なくとも10K/cm、の中心縦軸14の方向で測定された軸方向の温度勾配が形成される。
【0037】
成長坩堝3の内部の温度は、成長しているSiCバルク単結晶2に向かって低下していく。このことは、様々な方策によって実現することができる。例えば2つ又はそれ以上の軸方向の部分区域への加熱コイル12の分割(詳細は図示せず)を通じて、軸方向で変化する加熱を実施することができる。更に成長坩堝3の下側区域では、例えば加熱コイル12の相応の軸方向の位置決めによって、成長坩堝3の上側区域よりも強い加熱作用を発生させることができる。更に、両方の軸方向の坩堝端壁では、断熱部がそれぞれ異なる形式に構成されていてよい。そのために、図1に模式的に図示しているように、熱絶縁層10は下側の坩堝端壁のところで上側の坩堝端壁よりも大きい厚みを有することができる。
【0038】
SiCバルク単結晶2は、図1に示す実施例では、上から下に向く、即ち、坩堝蓋7からSiC備蓄領域4の方を向く、成長方向18に成長する。成長方向18は中央の中心縦軸14と平行に延びている。成長しているSiCバルク単結晶2は、図示した実施例では、成長装置1の内部で同心的に配置されているので、中央の中心縦軸14を成長装置1の全体に割り当てることもできる。
【0039】
更にSiC成長気相9は、図1の図面ではドーピング物質(詳細は図示せず)も含んでおり、これは、本実施例では、窒素(N2)である。特にアルミニウム(Al)、バナジウム(V)及び/又はホウ素(B)のような、代替的又は追加的なドーピング物質も同じく可能である。ドーピング物質の供給は、気体として行われるか、又は、相応に前処理されたSiCソース材料6を通じて行われる。このときSiC成長気相9における窒素割合は、成長しているSiCバルク単結晶2が最大で約20mΩcmの比較的低い平均の(=全般的)固有電気抵抗を有する程度に、成長しているSiCバルク単結晶2の窒素ドーピングが強くなるように、調整される。
【0040】
図2及び図3には、従来のSiCバルク単結晶19が、それぞれ、断面図及び平面図として示されている。このSiCバルク単結晶19は、4Hモディフィケーションに基づく結晶構造を有しており、その結晶学上の[0001]主軸は、図示した実施例では成長方向18と平行に延びており、従って、中心縦軸14とも平行に延びている。SiCバルク単結晶19は、3つの部分領域20から22を有している。中心縦軸14のまわりには、中央のファセット領域20が配置されており、これが縁部領域21で取り囲まれており、両方の部分領域20及び21の間には移行領域22が形成されている。
【0041】
ファセット領域22は、ほぼ平坦で平滑な表面構造(=表面モルフォロジー)を有している。図2に模式的に描き込まれている結晶成長ステップは、成長方向18、即ち[0001]方向で測定されたステップ高さBを有しており、このステップ高さは、ファセット領域20では、成長方向18に対して垂直に測定されたステップ奥行Aと比べて遥かに小さくなっている。即ち、ここでは商N=A/Bは、非常に大きい値を有している。ステップ高さBは、典型的には1μmよりも小さく、それに対してステップ奥行Aは、通常、約100μmである。
【0042】
それに対して縁部領域21は、成長境界面16の手前における、典型的には凸面状の、温度領域にほぼ相当する湾曲した表面構造を有している。湾曲した表面構造は、ステップ高さBに対するステップ奥行Aのほぼ均衡のとれた比率につながる。ここでは、商N=A/Bは、約1の値を有している。その結果として、縁部領域21の表面は、ファセット領域20よりも明らかに粗くなっている。ステップ高さB及びステップ奥行Aは、ここでは、典型的には、それぞれ約1mmである。
【0043】
ドーピング物質の注入は、向きの異なる結晶表面について大きく変動し、ファセット領域20では、成長方向18に対して垂直に向く面(即ち、ステップ奥行Aの方向の面)の占める割合が非常に優勢であるため、ファセット領域20では、縁部領域21よりも明らかに高い結晶組織へのドーピング物質注入が行われる。全体としてSiCバルク単結晶19では、ドーピング物質濃度及びこれに伴う局所的な固有電気抵抗は、成長方向18に対して垂直方向で不均一に分布している。このことが不都合である理由は、ファセット領域20又は縁部領域21のいずれかの固有抵抗が所望の設定に一致せず、そのために、該当部分領域を、例えばデバイス製造のために、二次利用することができず又は限定的にしか利用できないからである。
【0044】
ファセット領域20は、必ずしも中心縦軸14に対して同心的に配置されていなくてよい。特に、SiCバルク単結晶が結晶学上の[0001]主軸に対して、例えば1°から10°の、低い傾きで成長すると、その場合に生じるファセット領域は、中心縦軸14に関して非対称ないし非同心的に配置される可能性がある。しかし、このことは、ドーピング濃度及び固有電気抵抗の不均一な分布に関しては、何ら変化をもたらさない。
【0045】
改善された利用性を実現するために、ファセット領域20を事実上有さないように、SiC体積結晶2を成長させる。これを実現するために、成長境界面16が中心縦軸14のまわりの中央領域でも湾曲しており、そこで、特に縁部領域と少なくとも類似するステップ形状を有するように、結晶成長領域5における成長条件が調整される。そのために、成長境界面16の手前の領域でSiC成長気相9における過剰炭素が出現させられ、このことは、結晶成長領域5を区切っている面の相応の構成によって惹起される。これらの面は、SiC表面区画と炭素表面区画とを有している。これらの表面区画は、SiC表面区画割合を炭素表面区画割合で割ることによって得られるSiC/Cの面積比率が、常に、即ち製造時間全体に亘って、0.01よりも小さい値を有するように寸法決めされる。
【0046】
図1に示す成長装置1では、1未満のSiC/C面積比率は、中心縦軸14の方向に延びる結晶成長領域5の成長領域長さLが、成長坩堝3の円筒状の内部空間の、中心縦軸14に対して垂直に向く半径(=内部空間直径の半分)よりも長いことによって実現される。このとき内部空間直径は、特に、中心縦軸14に対して垂直に実質的に丸い断面を有する、成長しているSiCバルク単結晶2の最大の結晶直径に等しい。成長の進捗度が増すにつれて、成長しているSiCバルク単結晶2の長さが増していくので、成長領域長さLは減っていく。SiC/Cの面積割合についての上述した条件は成長プロセスの終了まで満たされており、即ち、その場合に生じる最少の成長領域長さLについても、満たされている。SiC表面区画は、SiCソース材料6の表面と成長境界面16とによって形成される。炭素表面区画は、グラファイト坩堝材料からなる坩堝壁13の、結晶成長領域5に接している部分によって形成される。
【0047】
それぞれ、図4及び図5に示す成長装置23及び24の別の実施例は、SiC/Cの面積比率について、特に0.01よりも小さい、特別に低い値を生じさせるために、改変された構造をそれぞれ含んでいる。成長装置23及び24は、成長装置1と類似した構成となっている。以下においては相違点だけを詳しく説明する。
【0048】
図4の成長装置23では、結晶成長領域5は、3層の壁構造により側方で区切られている。この3層の壁構造は、外側層としての、グラファイト坩堝材料(=第1のグラファイト材料)からなる坩堝壁13と、中間層25としての炭素粉末と、内側層26としての、グラファイト坩堝材料よりも多孔性であり、特にグラファイトの理論上の最大密度の60%よりも低い密度を有する、グラファイト固定材料(=第2のグラファイト材料)とを含んでいる。この最大密度は、2.3g/cm3である。中間層25の炭素粉末は、比較的小さい粉末粒子からなっている。粉末粒子の少なくとも90%は、最大で250μm、好ましくは最大で50μm、の平均粒度を有している。中空円筒として施工された内側層26は、機械的に安定しており、中間層25のばらばらの粉末を、3層の壁構造で所定の位置に保つ。
【0049】
内側層26の多孔性に基づいて、そして、特に中間層25の炭素粉末の小さい粒度に基づいて、結晶成長領域5を区切っている炭素表面区画が劇的に増大する。即ち、炭素表面区画には、同じくSiC成長気相9と相互作用し、従って、意図される過剰炭素にも貢献する「内部の」表面も含まれる。多孔性の内側層26及び中間層25の炭素粉末は、このような種類の非常に広い「内部の」表面を有しているので、特別に低いSiC/C面積比率が生じることになる。
【0050】
図5の成長装置24では、成長装置23のような3層の壁構造に加えて、SiCソース材料6の2層の被覆も設けられている。ここでは、SiCソース材料6は、特に3層の壁構造の中間層25と同じ炭素粉末からなる、第1のソース被覆層27で直接的に覆われている。更に、この炭素粉末含有のソース被覆層27は、SiCソース材料と反対の側で、多孔性の第2のソース被覆層28で覆われており、これは特に、3層の壁構造の内側層26と同様の多孔性のグラファイト固定材料からなるグラファイト材料である。
【0051】
第2のソース被覆層28は、同じく第1のソース被覆層27の炭素粉末を固定している。それ以外に、SiCソース材料6の被覆は、SiC/C面積比率を二重の観点から引き下げている。第1に、追加して設けられる炭素材料からなる被覆によって、炭素表面区画面積が引き上げられる。他方では、それと同時にSiCソース材料6の被覆によってSiC表面区画面積が引き下げられ、このとき2層の炭素被覆は、成長しているSiCバルク単結晶2への物質輸送を引き続き確保するために、SiCソース材料6から昇華するガス種にとって通過可能である。いずれにしてもSiCソース材料6の炭素被覆は、SiC成長気相9における過剰炭素の形成に追加的に貢献する。
【0052】
SiC成長気相9における過剰炭素の形成に役立つ更に別の随意的な方策は、注入されたSiCソース材料6に予め過剰炭素を供給することであり、この過剰炭素は、特に20モル%から40モル%の間であってよく、典型的には約25モル%である。
【0053】
図6から図8には、本発明に基づいて製造されたSiCバルク単結晶2が、それぞれ、断面図、平面図及び部分拡大図として示されている。このバルク単結晶は、図2及び図3に示す従来のSiCバルク単結晶19とは異なり、ファセット領域20を有していない。図6及び図7に示す図面では、この相違を明示するために、従来のSiCバルク単結晶19では常に存在しているファセット領域20が破線で描き込まれている。成長境界面16は、本発明に基づいて製造されたSiCバルク単結晶2では、中心縦軸14のまわりの中央領域29でも、従来のSiCバルク単結晶19の場合のように平坦ではなく、湾曲している。
【0054】
このような湾曲により、中央領域29で縁部領域21と似た特徴をもつ結晶成長ステップのステップ形状が生じている。特に、図6から明らかなとおり、成長境界面16の結晶成長ステップのステップ高さB及びステップ高さBに対するステップ奥行Aの比率、即ち、商N=A/Bも、中央領域29において縁部領域21とほぼ同じ大きさとなっている。成長境界面16は、中心縦軸14の方向及び成長方向18で最も大きく突出する成長フロント点30を有しており、その周囲に、成長境界面16の、好ましくはファセットのない、中央領域29が配置されている。成長フロント点30の周囲の中央領域29でも実質的に、即ち、特にステップの形状は別として、湾曲している成長境界面16の形状は、図8に示す図6のVIIIの部分拡大図から明らかである。中央領域29のステップ形状は、中央領域29にある局所的な成長ステップのうちの少なくとも1つに対して実質的に垂直に向く、即ち、特にステップ高さBを規定するステップ側面に対して実質的に垂直に向く、どの任意の長さ1mmの部分区間31においても、成長境界面16上に位置する部分区間31の始点32と終点33との間に、中心縦軸14の方向で測定された少なくとも10μm、典型的には少なくとも100μm、の軸方向の高低差Δhが生じるように調整される。
【0055】
中央領域29と縁部領域21との間で生じる場合がある、僅かな湾曲の差異又はステップ形状の差異には、副次的な意義しかない。特に、ドーピング物質を注入するときには、この差異は何の役割も果たさず、このことにより、ドーピング物質濃度及びこれに伴う電気抵抗の非常に均一な分布が得られる。このようにSiCバルク単結晶2は、特に、横方向でほぼ均一な、局所的な固有電気抵抗の分布の推移を特徴としている。本実施例では、SiCバルク単結晶2は、窒素のnドーピングを有している。更に、これは4H−SiCである。しかしながら、これ以外のドーピングや、これ以外のSiCポリタイプも原則として可能である。
【0056】
本発明に基づいて製造されたファセットのないSiCバルク単結晶2から、同じくファセット領域を有さず、更には非常に好都合な機械的特性及び電気的特性を有する単結晶SiC基板34を製作することができる。図9にその1つの実施例が断面図で示されている、このような種類の単結晶SiC基板34は、全て、成長方向18ないし中心縦軸14に対して垂直に円板として連続して軸方向に切断ないしソーイングされることによって、SiCバルク単結晶2から得られる。SiC基板34は大きくて薄い。本実施例では、その基板主表面35は、150mmの大きい基板直径Dを有しており、それに対して、基板厚みtは、僅か約500μmの低い値となっている。
【0057】
更に、SiC基板34は、SiCバルク単結晶2と同じく、非常に均一に分布する固有電気抵抗を有しており、基板主表面35の全体と基板厚みtとに関して求めたその(全般的)平均値は約16mΩcmである。基板主表面35の広さ4mm2の任意の第1の部分面について、基板厚みtに関して求めた局所的な固有電気抵抗は、広さ4mm2の任意の第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して、最大で4mΩcm、好ましい場合には最大で2mΩcmだけ、相違している。このように、抵抗分布は極めて均一である。SiC基板も、本実施例では、SiCバルク単結晶2と同じくnドーピングされており、4Hポリタイプである。
【0058】
非常に均一な固有電気抵抗の故に、SiC基板34は、半導体デバイスの製造の一環としての二次プロセシングのために、どの個所でも同程度に良好に適している。それに応じて歩留まりが高く、不良率が低い。
【符号の説明】
【0059】
1,23,24 成長装置
2 SiCバルク単結晶
3 成長坩堝
4 SiC備蓄領域
5 結晶成長領域
6 SiCソース材料
7 坩堝蓋
8 種結晶
9 SiC成長気相
10 熱絶縁層
11 管状容器
12 加熱コイル
13 坩堝壁、坩堝壁の外側層
14 中心縦軸
16 成長境界面
18 成長方向
19 SiCバルク単結晶
20 ファセット領域
21 縁部領域
22 移行領域
25 坩堝壁の中間層
26 坩堝壁の内側層
27 第1のソース被覆層
28 第2のソース被覆層
29 中央領域
30 成長フロント点
31 部分区間
32 部分区間の始点
33 部分区間の終点
34 SiC基板
35 基板主表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCバルク単結晶(2)を製造する方法において、
a)成長坩堝(3)の結晶成長領域(5)にSiC成長気相(7)が生成され、中央の中心縦軸(14)を有するSiCバルク単結晶(2)をSiC成長気相(9)からの堆積によって成長させ、このとき、堆積は成長しているSiCバルク単結晶(2)の成長境界面(16)のところで行われ、
b)SiC成長気相(9)が、少なくとも部分的に、前記成長坩堝(3)の備蓄領域(4)にあるSiCソース材料(6)から供給され、窒素、アルミニウム、バナジウム及びホウ素からなる群に属する少なくとも1つのドーピング物質を含んでいる、そのような方法において、
c)前記結晶成長領域(5)は、SiC表面区画と炭素表面区画とによって区切られ、これらの表面区画は、SiC表面区画割合を炭素表面区画割合によって除算することで得られるSiC/Cの面積比率が常に0.01よりも小さい値を有するように選択される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記SiCソース材料(6)が、炭素粉末からなる層(27)で被覆され、更に、この炭素粉末が、前記SiCソース材料(6)とは反対の側で、グラファイトの理論上の最大密度2.3g/cm3の60%よりも低い密度を有する多孔性のグラファイト材料で被覆されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶成長領域(5)を区切っている前記成長坩堝(3)の側壁が3層で構成されており、外側層(13)については第1のグラファイト材料が、中間層(25)については炭素粉末が、内側層(26)については前記第1のグラファイト材料よりも多孔性である第2のグラファイト材料が、用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記内側層(26)の前記第2のグラファイト材料について、グラファイトの理論上の最大密度2.3g/cm3の60%よりも低い密度が採用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中間層(25)の炭素粉末について、少なくとも90%が、最大で250μmの平均粒度を有する粒子が使用されることを特徴とする、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
最初に注入される前記SiCソース材料(6)で20%から40%の間の過剰炭素が供給されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
成長しているSiCバルク単結晶(2)の前記成長境界面(16)が、複数の局所的な成長ステップと、前記中心縦軸(14)の方向で最も遠くまで突出する一つの成長フロント点(30)とを有しており、前記成長境界面(16)については前記成長フロント点(30)の周囲の中心領域(29)でも実質的に湾曲した形状が備えられ、それにより、前記中心領域(29)にある局所的な前記成長ステップのうち少なくとも1つに対して垂直に向き且つ前記成長境界面(16)に位置する、任意の長さ1mmの部分区間の始点から終点の間で、前記中心縦軸(14)の方向に測定した少なくとも10μmの軸方向の高低差(Δh)が生じることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
SiCバルク単結晶(2)は、前記中心縦軸(14)に対して垂直に、結晶直径(D)を有する円形の横断面を有しており、前記結晶成長領域(5)は前記中心縦軸(14)の方向で成長領域長さ(L)に亘って延びており、前記成長領域長さ(L)は、前記結晶直径(D)の半分よりも長くなるように選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって製造されたSiCバルク単結晶。
【請求項10】
請求項9に記載のSiCバルク単結晶から製作された、基板主表面(35)と基板厚み(t)とを備える、単結晶SiC基板において、前記基板主表面(35)の広さ4mm2の正方形の任意の第1の部分面について前記基板厚み(t)を基準として求めた局所的な固有電気抵抗が、広さ4mm2の正方形の任意の第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して最大で4mΩcmだけ相違していることを特徴とする、SiC基板。
【請求項11】
任意の前記第1の部分面の局所的な固有電気抵抗が、任意の前記第2の部分面の局所的な固有電気抵抗に対して最大で2mΩcmだけ相違していることを特徴とする、請求項10に記載のSiC基板。
【請求項12】
前記基板主表面(35)が少なくとも100mmの直径(D)を有していることを特徴とする、請求項10又は11に記載のSiC基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82629(P2013−82629A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−26721(P2013−26721)
【出願日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【分割の表示】特願2010−194131(P2010−194131)の分割
【原出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(504398340)エスアイクリスタル アクチエンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】