説明

ファブリペロー干渉計

【課題】変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなるようにメンブレンを変位できるファブリペロー干渉計を提供する。
【解決手段】固定ミラーを有する固定ミラー構造体、第1ギャップを介した固定ミラー構造体との対向部分がメンブレンとされ、該メンブレンに第1電極及び固定ミラーに対向した可動ミラーを有する可動ミラー構造体、可動ミラー構造体に対して固定ミラー構造体と反対に配置され、第2ギャップを介したメンブレンとの対向部分に第2電極を有する電極構造体を備える。初期状態で電極間の長さdeiがミラー間の長さdmiよりも長くされている。そして、メンブレンと固定ミラー構造体のメンブレン対向部分が互いに対向する部分で同電位とされ、電極間に電圧を印加してメンブレンを電極構造体に近づく方向に変位させると、電極間の長さdeが初期長さdeiより短くなり、ミラー間の長さdmが初期長さdmiより長くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファブリペロー干渉計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1,2に示されるファブリペロー干渉計が知られている。このファブリペロー干渉計は、シリコン、ゲルマニウム等の半導体薄膜からなる高屈折率層の間に、空気、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等からなる低屈折率層を配置してなる一対のミラー構造体(固定ミラー構造体及び可動ミラー構造体)を備える。これらミラー構造体は、エアギャップを介して対向配置されており、特許文献1では、低屈折率層としての二酸化シリコン層が透過領域に配置されてミラーが構成されている。一方、特許文献2では、低屈折率層としての空気層が透過領域に配置されてミラーが構成されており、低屈折率層に対する高屈折率層の屈折率比が大きいため、ミラーの高反射率な帯域(反射帯域)が広くなっている。すなわち、ファブリペロー干渉計において光を選択的に透過可能な分光帯域が広くなっている。
【0003】
また、各ミラー構造体の高屈折率層には、不純物がドーピングされて電極が形成されている。したがって、各ミラー構造体の電極に電圧を印加して生じる静電気力により、ギャップ上に位置する可動ミラー構造体のメンブレンを変位させ、これによりギャップ長さが変化して、ギャップにおけるミラーの対向距離に応じた波長の光を選択的に透過させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3457373号公報
【特許文献2】特開2008−134388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、部品点数の削減や赤外線式ガス検出器における多成分検知化などの観点から、1つのファブリペロー干渉計で、より広い波長域において光を選択的に透過できるものが望まれている。このためには、広帯域にわたるミラーの高反射率に加え、可動ミラー構造体における可動ミラーの変位量が大きいことが必要である。すなわち、透過スペクトルの変調帯域が広いファブリペロー干渉計が望まれている。
【0006】
ここで、各ミラー構造体の電極に電圧を印加して生じる静電気力は、電極の対向距離deの2乗に反比例し、メンブレンの変位に伴うばね復元力は、対向距離deの変化量Δdeに正比例する。したがって、変化量Δdeが初期長さdeiの1/3よりも大きくなると、静電気力がばね復元力を上回り、両ミラー構造体が静電気力で引き込まれ、スティッキングし、電圧を除去しても元の状態に戻らなくなる(プルイン現象が生じる)。このため、変化量Δdeが対向距離deの初期長さdeiの1/3となった状態がプルイン限界である。
【0007】
特許文献1に示されるファブリペロー干渉計では、ポリシリコンのミラー形成部分に不純物がドーピングされて電極が構成されており、電極の対向距離deとミラーの対向距離dmが等しくなっている。このため、対向距離dm(=de)の変化量Δdm(=Δde)が初期長さdmi(=dei)の1/3となった状態がプルイン限界である。一方、特許文献2に示されるファブリペロー干渉計では、ポリシリコンに部分的に不純物をドーピングして電極としており、ミラーを構成するポリシリコンの部分が電極と電気的に結合されている。すなわち、ミラー部分も、静電気力の生じる電極として実質的に作用するようになっている。このため、ミラーの対向距離dmの変化量Δdmが初期長さdmiの1/3となった状態がプルイン限界である。
【0008】
また、透過光の波長λは、λ=2×dm/nで示される。nは干渉光の次数を示す正の整数である。したがって、変調帯域が最も広い1次の干渉光(n=1)であっても、上記したプルイン限界から、その変調帯域は理想的に2dmi〜dmi×4/3であり、透過スペクトルの変調帯域の広さとして十分ではなかった。このように、従来構成のファブリペロー干渉計では、干渉計1つで多成分検知のガス検出器を構成することは困難であった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、従来よりも透過スペクトルの変調帯域が広いファブリペロー干渉計、換言すれば、変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなるようにメンブレンを変位させることのできるファブリペロー干渉計、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に請求項1に記載のファブリペロー干渉計は、
光を透過させる透過領域に固定ミラーを有する固定ミラー構造体と、
第1ギャップを介して固定ミラー構造体と対向する部分が変位可能なメンブレンとされ、該メンブレンに、第1電極と、固定ミラーに対向して設けられた可動ミラーとを有する可動ミラー構造体と、
可動ミラー構造体に対して固定ミラー構造体と反対側に配置され、第2ギャップを介してメンブレンと対向する部分に第2電極を有する電極構造体と、を備え、
第1電極と第2電極との間に電圧が印加されない初期状態で、第2ギャップにおける電極間の長さdeiが、第1ギャップにおけるミラー間の長さdmiよりも長くされており、
可動ミラー構造体のメンブレンと、固定ミラーを含む固定ミラー構造体のメンブレン対向部分とが、互いに対向する部分で同電位とされ、
第1電極と第2電極との間に電圧を印加し、メンブレンを電極構造体に近づく方向に変位させることで、第2ギャップにおける電極間の長さdeが初期状態の長さdeiより短くなるとともに、第1ギャップにおけるミラー間の長さdmが初期状態の長さdmiより長くなるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
このように本発明では、2つのギャップを介して3つの構造体を配置し、真ん中に位置する構造体を、変位可能なメンブレンに可動ミラー及び第1電極を有する可動ミラー構造体としている。また、両端の構造体の一方を、電極を有さず、固定ミラーを有する固定ミラー構造体とし、両端の構造体の他方を、ミラーを有さず、第2電極を有する電極構造体としている。したがって、可動ミラー構造体の第1電極と電極構造体の第2電極との間に電圧を印加して静電気力(静電引力)を生じさせると、可動ミラー構造体のメンブレンが電極構造体側に引っ張られて第2ギャップの長さが短くなる反面、固定ミラー構造体と可動ミラー構造体との間の第1ギャップの長さが長くなる。
【0012】
このように、電極間の長さが短くなるにつれてミラー間の長さが長くなるように構成されているため、ミラー間の長さdmの取り得る範囲は、従来のようにミラー間の初期長さdmiのみによって決定されるのではなく、その上限値が電極間の初期長さdeiに基づいて決定される。具体的には、dmi〜(dmi+dei×1/3)となる。また、電極間の初期長さdeiは、ミラー間の初期長さdmiよりも長くなっている。したがって、初期状態からメンブレン(第1電極)のプルイン限界までのミラー間の長さの変化量Δdm(dei×1/3)を、従来構成のミラー間の長さの変化量Δdm(dmi×1/3)よりも大きくすることができる。
【0013】
また、本発明では、可動ミラー構造体のメンブレンと、固定ミラーを含む固定ミラー構造体のメンブレン対向部分とが、互いに対向する部分で同電位とされる。したがって、可動ミラー構造体のメンブレンと固定ミラー構造体のメンブレン対向部分との間に電位差が生じて、該電位差に基づく静電気力により、メンブレンの変位に影響を及ぼすのを抑制することができる。換言すれば、固定ミラー構造体のメンブレン対向部分は変位せず、可動ミラー構造体のメンブレンのみが変位する。
【0014】
以上から、本発明によれば、変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなるようにメンブレンを変位させることができる。また、上記のごとく透過光の波長λは、λ=2×dm/nで示される。nは干渉光の次数を示す正の整数である。したがって、従来よりも透過スペクトルの変調帯域を広くすることができる。
【0015】
請求項2に記載のように、初期状態で、第2ギャップにおける電極間の長さdeiが、第1ギャップにおける最大長さの部分の長さd1maxよりも長い構成が好ましい。
【0016】
第1ギャップにおける最大長さをd1maxとすると、従来構造のように各ミラー構造体が電極を有する構成において、電極間の長さの最大の変位量はd1max×1/3である。例えば、第1ギャップにおいて、ミラー間の初期長さdmiと、ミラー形成領域を除く周辺領域間の長さとが異なり、周辺領域間の長さのほうが初期長さdmiより長いd1maxの場合、各ミラー構造体が周辺領域に電極を有すると、変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなる。これに対し、本発明によれば、第2ギャップにおける電極間の初期長さdeiが、第1ギャップにおける最大長さの部分d1maxよりも長いため、ミラーと一体的に構成された電極間の初期長さの1/3をプルイン限界とする従来構造のファブリペロー干渉計と較べて、確実に透過スペクトルの変調帯域を広くすることができる。
【0017】
請求項3に記載のように、初期状態で、第2ギャップにおける電極間の長さdeiと、第1ギャップにおけるミラー間の長さdmiとが、dei≧3×dmiを満たす構成とすることが好ましい。
【0018】
上記したように、透過光の波長λは、λ=2×dm/nで示される。nは干渉光の次数を示す正の整数である。したがって、1次の干渉光(n=1)の変調帯域は、理想的には2dmi〜2(dmi+dei×1/3)となる。また、2次の干渉光(n=2)の変調帯域は、理想的にはdmi〜(dmi+dei×1/3)となる。したがって、1次の干渉光の変調帯域と2次の干渉光の変調帯域の間に隙間(分光不可域)が存在せず、これらの変調帯域を、連続する1つの変調帯域とするには、2次の干渉光の変調帯域の上限値が1次の干渉光の変調帯域の下限値以上となれば良い。
【0019】
これに対し、本発明では、dei≧3×dmiを満たすため、2次の干渉光の変調帯域の上限値が1次の干渉光の変調帯域の下限値以上となる。すなわち、1次の干渉光の変調帯域と2次の干渉光の変調帯域を、隙間なく連続する1つの変調帯域とすることができる。したがって、連続する1つの広い波長域において所定波長の光を選択的に検出することができる。干渉光は次数が小さいほど変調帯域が広いので、特に本発明によれば変調帯域を広くすることができる。
【0020】
請求項4に記載のように、第2電極は、透過領域とは異なる領域に設けられ、
電極構造体は、メンブレンと対向する部分に、第2電極の形成領域とは異なる領域であって少なくとも透過領域に対応して設けられた光透過部を有すると良い。
【0021】
上記した構成において、第2電極を透過領域に設けることも可能であるが、第2電極によって、一対のミラーを透過した光(赤外線)の一部が吸収されてしまう。これに対し、本発明では、電極構造体が透過領域に光透過部を有し、透過領域とは異なる領域に第2電極を有する。したがって、透過率を向上することができる。
【0022】
請求項5に記載のように、電極構造体が、基板に、第2電極が設けられるとともに光透過部としての貫通孔が設けられてなる構成を採用することが好ましい。これによれば、基板による光の吸収や、基板表面での光の反射を抑制することができるので、透過率が向上する。また、基板による光の吸収を抑制すべく高価な基板(例えば低酸素濃度基板)を用いなくとも良いので、コストを低減することもできる。また、従来、基板表面に反射防止膜(ARコート)を設けることで、基板表面での光の反射を抑制することも考えられるが、広い変調帯域(波長域)に対応する反射防止膜の形成は困難である。また、仮に形成できたとしても、本発明によればそもそも反射防止膜を不要とできるので、コストを低減することができる。
【0023】
請求項6に記載のように、貫通孔における開口面積の最も小さい最小開口部分の位置が、メンブレンの変位方向に垂直な方向において透過領域と一致する構成としても良い。これによれば、貫通孔を有する基板をアパーチャ(開口)が空いた遮蔽板として用いることができる。このため、透過領域以外の光の透過を抑制し、透過領域のみ選択的に光を透過させることができる。また、別途不純物のイオン注入や金属薄膜の形成を必要としないので、製造工程を簡素化することができる。
【0024】
例えば請求項7に記載のように、第2電極が、基板の一面におけるメンブレンと対向する部分に設けられ、
貫通孔は、基板の一面での開口部分が最小開口部分とされた構成を採用することができる。
【0025】
これによれば、少なくとも初期状態で、第1電極と第2電極を略平行とすることができる。したがって、メンブレン(可動ミラー)の変位の制御性を向上することができる。
【0026】
その際、請求項8に記載のように、電極構造体と可動ミラー構造体の間には、第2ギャップの形成領域を除いて、電気絶縁材料からなる所定厚さの支持部材が介在され、該支持部材により、可動ミラー構造体が基板上に支持された構成を採用しても良い。
【0027】
これによれば、支持部材の厚さによって第2ギャップの初期状態の長さ(電極間の初期長さdei)を決定することもできる。
【0028】
請求項9に記載のように、基板が単結晶シリコン基板であり、貫通孔の壁面として、面方位(111)面が露出し、メンブレンの変位方向において基板の一面に近いほど開口面積が小さい傾斜面を有する構成を採用しても良い。
【0029】
このような構成は、基板における一面と反対の裏面側からアルカリ性の溶液を用いてウェットエッチングすることで得ることができる。
【0030】
請求項10に記載のように、基板の一面におけるメンブレンと対向する部分の一部に、電気絶縁材料からなり、初期状態の第2ギャップにおける電極間の長さdeiの2/3倍未満の突出高さを有して突起部が設けられた構成としても良い。
【0031】
これによれば、プルイン限界(dei×1/3)を超えてメンブレン(第1電極)を変位させても、電気絶縁性の突起部にメンブレンが当て止まる。このように突起部がストッパとして機能する。したがって、スティッキングを抑制することができる。
【0032】
次に、請求項11に記載のように、基板は、貫通孔の壁面として、メンブレンの変位方向において、基板における可動ミラー構造体と対向する一面と反対の面に近いほど透過領域の中心に近づく傾斜面を有し、
基板の傾斜面に第2電極が設けられ、
電極構造体を構成する基板の一面上に、可動ミラー構造体が配置された構成を採用することもできる。
【0033】
これによれば、貫通孔の傾斜する壁面に第2電極を設けるため、基板の厚さにより、第2ギャップの長さを稼ぐことができる。したがって、請求項7に記載のように、基板の一面と可動ミラー構造体との間に第2ギャップが形成される構成に較べて、第2ギャップの形成が容易である。また、貫通孔の傾斜する壁面に第2電極を設けるため、第1電極と第2電極の間に生じる静電気力は、メンブレンの変位方向だけでなく、該変位方向に垂直な方向にも作用する。すなわち、第1電極が垂直方向においてメンブレンの外周端側に引っ張られる。これにより、可動ミラーの平坦性を向上し、ひいては、透過スペクトルの半値幅(FWHM)を小さくすることができる。
【0034】
請求項12に記載のように、第1電極が、可動ミラー構造体のメンブレンにおいて、可動ミラーの形成領域であって少なくとも電極構造体との対向面に形成された構成としても良い。これによれば、第1電極と第2電極との対向距離、すなわち電極間の初期長さdeiを稼ぐことができる。一方、請求項13に記載のように、第1電極は、可動ミラー構造体のメンブレンにおいて、可動ミラーの形成領域を除く周辺領域であって少なくとも電極構造体との対向面に形成された構成を採用することもできる。
【0035】
請求項14に記載のように、基板は単結晶シリコン基板であり、傾斜面は、面方位(111)面が露出した構成としても良い。このような構成は、基板の一面側からアルカリ性の溶液を用いてウェットエッチングすることで得ることができる。また、請求項15に記載のように、基板としてGaAs基板を採用することもできる。
【0036】
請求項16に記載のように、固定ミラー構造体及び可動ミラー構造体は、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる2層の高屈折率層を有するとともに、高屈折率層よりも低屈折率の材料からなる低屈折率層を、少なくとも固定ミラー及び可動ミラーの形成領域において高屈折率層間に介在させてなる構成が好ましい。
【0037】
このように光学多層膜構造を採用すると、ミラー(固定ミラー及び可動ミラー)の反射率を高めることができる。また、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜を採用すると、波長2〜10μm程度の赤外光に対して透明であるので、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターとして好適となる。
【0038】
特に、請求項17に記載のように、低屈折率層として空気層を採用すると、高屈折率層の屈折率nH(例えばSiでは3.45、Geでは4)と低屈折率層の屈折率nL(空気では1)との屈折率比(nH/nL)を大きく(例えば3.3以上と)して、上記した波長2〜10μm程度の分光帯域とすることができる。このため、上記したメンブレンを従来のプルイン限界を超えて変位させる効果と合わせて、より広い波長域において光を選択的に透過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)はファブリペロー干渉計を構成するミラーの反射帯域を示す図、(b)は、ファブリペロー干渉計の分光帯域を示す図である。
【図3】透過スペクトルの変調帯域を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、(a)が初期状態、(b)は電圧を印加した状態を示す。
【図5】電極間の初期長さdeiがミラー間の初期長さdmiの3倍のときの、透過スペクトルの変調帯域を示す図である。
【図6】(a)は、ミラー間の初期長さdmiが3μmのときの透過スペクトルを示す図であり、(b)は、ミラー間の初期長さdmiが6.2μmのときの透過スペクトルを示す図である。
【図7】変形例を示す断面図である。
【図8】所定波長λ1の透過スペクトルの透過率を示す図であり、(a)は貫通孔H1あり、(b)は貫通孔H1なしを示す。
【図9】具体例として、第2実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図10】変形例を示す断面図である。
【図11】具体例として、第3実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。
【図12】図11に示すファブリペロー干渉計において、可動ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【図13】変形例を示す断面図である。
【図14】図13に示すファブリペロー干渉計において、可動ミラー構造体の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。また、各構造体間のギャップ(第1ギャップ及び第2ギャップ)がエアギャップ(空隙)である例を示す。また、エアギャップの長さ方向、換言すればメンブレンMEMの変位方向を単に長さ方向と示し、該長さ方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。
【0041】
本発明の実施の形態を説明する前に、先ず従来の可変型ファブリペロー干渉計の基本構成について説明する。
【0042】
図1に示すファブリペロー干渉計10は、固定ミラーM1及び固定電極E1を有する固定ミラー構造体11と、可動ミラーM2及び可動電極E2を有し、これら可動ミラーM2及び可動電極E2が変位可能なメンブレンMEMに構成された可動ミラー構造体12と、を備えている。
【0043】
固定ミラーM1と可動ミラーM2は互いに対向しており、ファブリペロー干渉計10においてこれらミラーM1,M2の形成領域が、光を選択的に透過させる透過領域S1となっている。図1では、メンブレンMEM(又はメンブレンの対向部分)において、ミラーM1,M2の形成領域を除く領域を周辺領域T1としている。この周辺領域T1は、垂直方向に沿う少なくとも一方向において透過領域S1を挟むように設けられれば良く、例えば透過領域S1を取り囲むように周辺領域T1が設定される。換言すれば、メンブレンMEM(又はメンブレンの対向部分)の中心を含む領域(中央領域)にミラーM1,M2が設けられる。
【0044】
また、図1に示す例では、支持部材13を介して可動ミラー構造体12が固定ミラー構造体11上に支持されており、可動ミラー構造体12のエアギャップAGを架橋する部分がメンブレンMEMとなっている。
【0045】
このような構成のファブリペロー干渉計10では、電極E1,E2間に電圧を印加し、電極間に静電気力が生じると、固定ミラー構造体11に近づく方向にメンブレンMEMが変位し、エアギャップAGの長さが初期状態の長さよりも短くなる。このメンブレンMEMの変位により、エアギャップAGを介して対向配置されたミラー間の長さdmが変化する。このようにしてファブリペロー干渉計10は、ミラー間の長さdmに応じた所望波長の光を選択的に透過させることができる。
【0046】
ここで、ミラーM1,M2を構成する薄膜の光学膜厚は、中心波長λcの1/4とされる。ミラーM1,M2が、高屈折率層間に、該高屈折率層よりも低屈折率の材料からなる低屈折率層を介在させた光学多層膜構造を有する場合、各層の光学膜厚が中心波長λcの1/4とされる。また、固定ミラーM1と可動ミラーM2とで、中心波長λcが互いに等しくなっている。この中心波長λcは、図2(a)に示すようにミラーの反射帯域の中心位置をなす。また、反射帯域は、中心波長λcを中心とし、その幅が屈折率によって決定される。上記した光学多層膜構造の場合、低屈折率層に対する高屈折率層の屈折率比で決定される。なお、同じ屈折率比でも、中心波長λcが長波長であるほど幅は広くなる。
【0047】
固定ミラーM1及び可動ミラーM2は、図2(a)に示すように反射帯域の波長の光に対して反射作用(高い反射率)を示し、反射帯域外の波長の光に対しては反射率が低く、反射作用を示さない。このミラーM1,M2を対向配置してなるファブリペロー干渉計10では、図2(b)に示すように光を選択的に透過できる分光帯域がミラーの反射帯域に対応している。
【0048】
また、ファブリペロー干渉計10を選択的に透過する透過スペクトル(干渉光)の波長λは次式で示される。dmはミラー間の長さ(対向距離)であり、nは干渉光の次数を示す正の整数である。
(数1)λ=2×dm/n
実際は、様々な次数の干渉光のうち、上記した分光帯域にピークを有するものが、ファブリペロー干渉計10を選択的に透過する。また、ミラー間の長さdmは、上記したようにメンブレンMEMの変位にともなって変化し、メンブレンMEMの変位にともなって長さdmが取り得る範囲の波長が、任意の次数の干渉光における変調帯域となる。そして、図2(b)に例示するように、各干渉光の変調帯域のうち、分光帯域に内に位置する波長の光がファブリペロー干渉計10を通じて選択的に透過される。
【0049】
図1に示す従来構成のファブリペロー干渉計10では、上記したように、各ミラー構造体11,12の電極E1,E2に電圧を印加して生じる静電気力が、電極間の長さの2乗に反比例し、メンブレンMEMの変位に伴うばね復元力が、電極間の長さの変化量に正比例する。したがって、電極間の長さの変化量が、電極間の初期長さの1/3よりも大きくなると静電気力がばね復元力を上回り、プルイン現象が生じる。このため、電圧が印加されない状態において、ミラー間の長さをdmiとし、電極間の長さも同じくdmiとすると、電極間の長さの変化量Δdm=dmi×1/3がプルイン限界であることから、ミラー間の長さの変化量Δdmはdmi〜dmi×2/3の範囲となる。
【0050】
したがって、図3に示すように、最も広い1次の干渉光(n=1)の変調帯域でも、理想的に2dmi〜dmi×4/3となる。例えばdmi=3μmとすると、1次の干渉光の変調帯域は、4μm〜6μm程度である。したがって、図2(b)に示す分光帯域を広くしても、透過スペクトルの変調帯域の広さが十分でなく、分光帯域の一部を占めるのみである。このため、分光帯域をフルで活用することができず、例えば1つのファブリペロー干渉計10にて多成分検知のガス検出器を構成することは困難である。
【0051】
また、2次の干渉光(n=2)の変調帯域は、理想的にはdi〜di×2/3となり、3次の干渉光(n=3)の変調帯域は、理想的にはdi×2/3〜di×4/9となる。したがって、図3に示すように、1次の干渉光の変調帯域と2次の干渉光の変調帯域との間に、分光不可能な波長帯域(分光不可域)が存在する。このため、次数が小さく、変調帯域の広い1次の干渉光及び2次の干渉光を利用することで、透過スペクトルの変調帯域を広くしようとしても、分光不可域が、広帯域化の障害となっていた。
【0052】
そこで、本発明者は、従来よりも透過スペクトルの変調帯域が広い、換言すれば、変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなるようにメンブレンMEMを変位させることのできる構成について検討を行った。以下に示す実施形態は、本検討により得られたものである。
【0053】
(第1実施形態)
図4(a),(b)に示すように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計10は、固定ミラーM1を有する固定ミラー構造体11と、第1エアギャップAG1を介して固定ミラー構造体11と対向する部分が長さ方向に変位可能なメンブレンMEMとされ、該メンブレンMEMに、可動ミラーM2と可動電極E2を有する可動ミラー構造体12と、長さ方向において、可動ミラー構造体12に対し固定ミラー構造体11と反対側に配置され、第2エアギャップAG2を介してメンブレンMEMと対向する部分に固定電極E3を有する電極構造体14と、を備える。
【0054】
このように、本実施形態では、長さ方向において、可動ミラー構造体12が、固定ミラー構造体11と電極構造体14の間に配置されている。また、固定ミラー構造体11が固定電極E1を有しておらず、代わりに電極構造体14に固定電極E3が設けられている。なお、本実施形態においても、固定ミラーM1と可動ミラーM2は互いに対向しており、ファブリペロー干渉計10においてこれらミラーM1,M2の形成領域が、光を選択的に透過させる透過領域S1となっている。また、特許請求の範囲の記載との対応関係は、第1エアギャップAG1が第1ギャップに、第2エアギャップAG2が第2ギャップに、可動電極E2が第1電極に、固定電極E3が第2電極に相当する。
【0055】
また、図4(a),(b)に示す例では、支持部材15を介して電極構造体14上に可動ミラー構造体12が配置され、支持部材13を介して可動ミラー構造体12上に固定ミラー構造体11が配置されている。
【0056】
また、可動電極E2と固定電極E3との間に電圧が印加されない初期状態で、図4(a)に示すように、第2エアギャップAG2における電極間の長さdei(以下、電極間の初期長さdeiと示す)が、第1エアギャップAG1におけるミラー間の長さdmi(以下、ミラー間の初期長さdmiと示す)よりも長くなっている(dei>dmi)。本実施形態では、初期状態で、固定ミラー構造体11のメンブレン対向部分と可動ミラー構造体12のメンブレンMEMとの対向距離が、第1エアギャップAG1全域でほぼ等しくなっている。すなわち、ミラー間の初期長さdmiが、第1エアギャップAG1における最大長さの部分の長さd1maxと等しくなっている。このため、電極間の初期長さdeiは、第1エアギャップAG1における最大長さd1maxよりも長くなっている(dei>d1max)。
【0057】
また、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMと、固定ミラー構造体11のメンブレン対向部分とが、互いに対向する部分で同電位とされている。このような構成としては、例えばメンブレンMEM全体とメンブレン対向部分全体が同一の電位とされても良い。また、ミラーM1,M2の形成領域(透過領域S1)と周辺領域T1とが、各ミラー構造体11,12において異なる電位とされ、且つ、ミラーM1,M2の形成領域同士、周辺領域T1同士が互いに同一の電位とされても良い。
【0058】
そして、ファブリペロー干渉計10は、可動電極E2と固定電極E3との間に電圧を印加すると、図4(b)に示すように、メンブレンMEMが電極構造体14に近づく方向(図4(b)中の白抜き矢印方向)に変位する。この変位により、電極間の長さdeが初期長さdeiより短くなるとともに、ミラー間の長さdmが初期長さdmiより長くなるように構成されている。
【0059】
次に、本実施形態に係るファブリペロー干渉計10の主たる特徴部分の効果について説明する。
【0060】
本実施形態では、長さ方向において、可動ミラー構造体12が、固定ミラー構造体11と電極構造体14の間に配置されている。また、固定ミラー構造体11が固定電極E1を有しておらず、代わりに電極構造体14に固定電極E3が設けられている。したがって、可動電極E2と固定電極E3との間に電圧を印加して静電気力(静電引力)を生じさせると、メンブレンMEMが電極構造体14側に引っ張られ、電極間の長さdeが初期長さdeiより短くなる。その反面、ミラー間の長さdmが初期長さdmiより長くなる。
【0061】
このように、メンブレンMEMを変位させるための静電気力を生じる電極E2,E3間の長さdeが短くなるにつれてミラー間の長さdmが長くなるように構成されている。したがって、ミラー間の長さdmの取り得る範囲は、従来のようにミラー間の初期長さdmiのみによって決定されるのではなく、その上限値が電極間の初期長さdeiに基づいて決定される。ミラー間の長さdmの取り得る範囲は、具体的にはdmi〜(dmi+dei×1/3)となる。また、電極間の初期長さdeiは、ミラー間の初期長さdmiよりも長くなっている(dei>dmi)。したがって、電極E2,E3のプルイン限界までのミラー間の長さdmの変化量Δdm(=dei×1/3)を、従来構成のミラー間の長さの変化量Δdm(=dmi×1/3)よりも大きくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMと、固定ミラー構造体11のメンブレン対向部分とが、互いに対向する部分で同電位とされる。したがって、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMと固定ミラー構造体11のメンブレン対向部分との間に電位差が生じて、該電位差に基づく静電気力により、メンブレンMEMの変位に影響を及ぼすのを抑制することができる。このため、固定ミラー構造体11のメンブレン対向部分は変位せず、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMのみが変位する。
【0063】
以上より、本実施形態に係るファブリペロー干渉計10によれば、変化量Δdmが初期長さdmiの1/3よりも大きくなるように、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMを変位させることができる。すなわち、従来よりも透過スペクトルの変調帯域を広くすることができる。
【0064】
また、従来のファブリペロー干渉計10(図1参照)では、エアギャップAGを介して対向するメンブレンMEM及びメンブレン対向部分のいずれの箇所に電極E1,E2を設けたとしても、電極間の長さdeは最大でd1maxである。すなわち、電極間の長さの変化量Δdeは、最大でd1max×1/3となる。これに対し、本実施形態では、電極間の初期長さdeiを、第1エアギャップAG1における最大長さd1maxよりも長くしている(dei>d1max)。このため、変化量Δdeがd1max×1/3よりも大きくなるように、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMを変位させることができる。これにより、従来構造のファブリペロー干渉計10よりも確実に透過スペクトルの変調帯域を広くすることができる。
【0065】
次に、より好ましい形態について変形例を示す。
【0066】
(変形例1)
好ましくは、電極間の初期長さdeiとミラー間の初期長さdmiとが、下記式の関係を満たすように構成すると良い。
(数2)dei≧3×dmi
上記した数式1から、1次の干渉光(n=1)の変調帯域は、理想的には2dmi〜2(dmi+dei×1/3)となる。また、2次の干渉光(n=2)の変調帯域は、理想的にはdmi〜(dmi+dei×1/3)となる。したがって、1次の干渉光の変調帯域と2次の干渉光の変調帯域の間に隙間(分光不可域)が存在せず、これらの変調帯域を、連続する1つの変調帯域とするには、2次の干渉光の変調帯域の上限値が1次の干渉光の変調帯域の下限値以上となれば良い。
【0067】
上記した数式2の関係を満たすと、2次の干渉光の変調帯域の上限値が1次の干渉光の変調帯域の下限値以上となる。例えばdei=3×dmiの場合、可動ミラーM2がdmi変位した状態が電極E2,E3のプルイン限界となる。したがって、図5に示すように、1次の干渉光の変調帯域は、理想的には4dmi〜2dmiとなる。また、2次の干渉光の変調帯域は、理想的には2dmi〜dmiとなる。なお、3次の干渉光の変調帯域は、理想的にはdmi×4/3〜dmi×2/3となる。このように、1次の干渉光の変調帯域の下限値と2次の干渉光の変調帯域の上限値が一致する。また、dei>3×dmiの場合、Δdmをdmiより大きくすることができる。したがって、2次の干渉光の変調帯域の上限値が1次の干渉光の変調帯域の下限値を上回る。
【0068】
なお、図6(a)は、ミラー間の長さが初期長さdmi=3μmのときの透過スペクトルを示し、図6(b)は、ミラー間の長さdmが6.2μmのときの透過スペクトルを示している。図6(a),(b)から、2次の干渉光の変調帯域の上限値が、1次の干渉光の変調帯域の下限値を上回っていることが明らかである。
【0069】
このように、数式2の関係を満たすと、1次の干渉光の変調帯域と2次の干渉光の変調帯域を、隙間なく連続する1つの変調帯域とすることができる。したがって、連続する1つの広い波長域において所定波長の光を選択的に検出することができる。干渉光は次数が小さいほど変調帯域が広いので、1次の干渉光と2次の干渉光を含む複数の次数の干渉光(例えば1次〜3次の干渉光)を用いると、変調帯域を効果的に広くすることができる。
【0070】
(変形例2)
好ましくは、電極構造体14が、第2電極としての固定電極E3を透過領域S1とは異なる領域(周辺領域T1)に有しつつ、固定電極E3の形成領域とは異なる領域であって少なくとも透過領域S1に対応する領域に光透過部を有すると良い。不純物のイオン注入や金属蒸着によって形成される固定電極E3を透過領域S1に設けることも可能であるが、固定電極E3によって、一対のミラーM1,M2を透過した光(赤外線)の一部が吸収されてしまう。これに対し、周辺領域T1に固定電極E3を設け、透過領域S1を含む、固定電極E3が設けられていない領域を光透過部とすると、透過率を向上することができる。
【0071】
より好ましくは、図7に示すように、電極構造体14を構成する基板20に貫通孔H1を設け、基板20における貫通孔H1の形成領域を光透過部とすると良い。これによれば、基板20による光の吸収や基板表面(例えば基板20における可動ミラー構造体12と反対の面)での光の反射を抑制し、これにより透過率を向上することができる。例えば図8(a)に、単結晶シリコンからなる基板20に貫通孔H1を設けた場合の波長λ1のスペクトルの透過率を示し、図8(b)に基板20に貫通孔H1を設けない場合の波長λ1のスペクトルを示す。図8(a),(b)から、貫通孔H1を設けたほうが、透過率を向上できることが明らかである。また、基板20による光の吸収を抑制すべく高価な基板(例えば低酸素濃度基板)を用いなくとも良いので、コストを低減することもできる。また、基板表面に反射防止膜(ARコート)を設けることで、基板表面での光の反射を抑制することも考えられるが、広い変調帯域(波長域)に対応する反射防止膜の形成は困難である。これに対し、貫通孔H1を設けると、そもそも反射防止膜を不要とできるので、広い波長域において基板表面での光の反射を抑制しつつコストを低減することができる。
【0072】
さらに好ましくは、基板20に設けられた貫通孔H1において、開口面積(垂直方向に沿う面積)の最も小さい最小開口部分の位置が、垂直方向において透過領域S1と一致すると良い。これによれば、貫通孔H1を有する基板20を、アパーチャ(開口)が空いた遮蔽板として用いることができる。このため、周辺領域T1での光の透過を抑制し、透過領域S1のみ選択的に光を透過させることができる。また、アパーチャを形成すべく別途不純物のイオン注入や金属薄膜の形成を必要としないので、製造工程を簡素化することができる。なお、図7に示す例では、貫通孔H1の開口面積が、長さ方向においてほぼ均一となっており、貫通孔H1の長さ方向全域で、貫通孔H1の開口部分が透過領域S1と一致している。
【0073】
以下、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計10の具体的な構成例について説明する。また、以下に示すファブリペロー干渉計10は、所謂エアミラー構造のファブリペロー干渉計であり、上記した本出願人による特許文献1(特開2008−134388号公報)に示されるものと基本構造が同じである。したがって、ミラーM1,M2などの詳細構造については説明を割愛し、異なる部分を重点的に説明する。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るファブリペロー干渉計10について、図9を用いて説明する。なお、本実施形態では、固定ミラー構造体11において、可動ミラー構造体12のメンブレンとの対向部分もメンブレンとされる例を示す。したがって、区別のため、固定ミラー構造体11のメンブレンMEMをメンブレンMEM1とし、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMをメンブレンMEM2とする。
【0075】
図9に示すファブリペロー干渉計10では、電極構造体14を構成する基板20の一面20a上に、支持部材15を介して可動ミラー構造体12が配置され、該可動ミラー構造体12上に、支持部材13を介して固定ミラー構造体11が配置されている。
【0076】
本実施形態では、基板20として、単結晶シリコンからなる平面矩形状の半導体基板(例えばn導電型のCZ基板)を採用しており、基板20全体が、後述するパッド22に印加される電位と同電位となる。基板20には、長さ方向に沿いつつ一面20aから裏面20bにわたって貫通する貫通孔H1が設けられている。基板20における貫通孔H1の壁面21は、面方位(111)面が露出しており、長さ方向において基板20の一面20aに近いほど貫通孔H1の開口面積が小さい傾斜面となっている。
【0077】
このため、貫通孔H1における一面20a側の開口部分が、垂直方向において透過領域S1とほぼ一致する最小開口部分21aとなっている。また、基板20の一面20aにおけるメンブレンMEM2との対向部分が、可動ミラー構造体12の可動電極E2との対向距離がもっとも短い部分となっており、該対向部分が実質的に固定電極E3として機能するようになっている。
【0078】
基板20の一面20a上のメンブレンMEM2との対向部分を除く周辺領域には、二酸化シリコンや窒化シリコンなどの電気絶縁材料からなる支持部材15が、所定厚さを有して配置されている。本実施形態では、製造工程において、支持部材15におけるメンブレンMEM2に対応する部分がエッチングにより除去されて、第2エアギャップAG2が形成されている。すなわち、支持部材15により、第2エアギャップAG2の長さ(電極間の初期長さdei)が決定されている。また、支持部材15により、電極構造体14と可動ミラー構造体12とが電気的に分離されている。
【0079】
なお、本実施形態では、二酸化シリコンからなり、厚さが10.5μm程度の支持部材15を採用している。また、支持部材15は、基板20の一面20a上のメンブレンMEM2との対向部分を除く周辺領域の一部に配置されており、該周辺領域のうち、支持部材15が配置されない部分には、Au/Cr等からなり、電極E3(基板20)を所定電位とするためのパッド22が設けられている。
【0080】
支持部材15における電極構造体14と反対の面上には、可動ミラー構造体12が配置されている。可動ミラー構造体12は、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなり、第2エアギャップAG2を架橋して支持部材15の表面上に配置された高屈折率下層30と、該高屈折率下層30に同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層30上に積層された高屈折率上層31とを有する。本実施形態においては、高屈折率層30,31が、ともにポリシリコンからなる。
【0081】
そして、高屈折率下層30と高屈折率上層31との間には、透過領域S1に低屈折率層としての空気層32が介在され、この部分が実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の可動ミラーM2となっている。このように、可動ミラーM2は、空気層32が介在されたエアミラーとなっている。この可動ミラーM2を構成する高屈折率下層30の第2エアギャップAG2側表面(可動電極E2)と、電極構造体14を構成する基板20の一面20a(固定電極E3)とは、少なくとも電極E2,E3に電圧が印加されない状態で略平行となっている。また、可動ミラー構造体12において、可動ミラーM2を含み、支持部材15により支持されて第2エアギャップAG2を架橋する部分が、メンブレンMEM2となっている。
【0082】
また、高屈折率層30、31のうち、可動ミラーM2の形成領域(透過領域S1)を除く領域にp導電型(又はn導電型)の不純物が導入されている。可動ミラーM2の形成領域は、不純物が導入されないものの、p導電型の不純物が導入された領域と電気的に結合されている。すなわち、可動ミラー構造体12全体が同電位となる。そして、第2エアギャップAG2を介して電極構造体14の一面20aと対向する、高屈折率下層30のメンブレンMEM2の部分が、実質的に可動電極E2として機能するようになっている。
【0083】
なお、本実施形態では、透過領域S1(可動ミラーM2の形成領域)に不純物が導入されないことで、可動ミラーM2での光の透過阻害を抑制するようにしているが、可動ミラーM2の形成領域におけるドーズ量を、その他の領域よりも少なくすることで、可動ミラー構造体12全体で同電位としつつ、不純物による可動ミラーM2での光の透過阻害を抑制するようにしても良い。なお、図9では、可動ミラー構造体12全体が同電位となる(電気的に結合される)ことを示すため、便宜上、可動ミラー構造体12全体(高屈折率層30,31全体)にハッチングを施している。
【0084】
また、図9に示す符号33は、可動ミラー構造体12において、可動ミラーM2における空気層32の上面を覆う高屈折率上層31の部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔33を介してエッチングすることで、空気層32が形成される。また、符号34は、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2のうち、高屈折率下層30と高屈折率上層31の接する部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔34を介して支持部材15をエッチングし、第2エアギャップAG2を形成することができる。
【0085】
可動ミラー構造体12における第2エアギャップAG2と反対側の面上であって、メンブレンMEM2を除く領域には、二酸化シリコンや窒化シリコンなどの電気絶縁材料からなる支持部材13が、所定厚さを有して配置されている。本実施形態では、製造工程において、支持部材13におけるメンブレンMEM2(メンブレンMEM1)に対応する部分がエッチングにより除去されて、第1エアギャップAG1が形成されている。すなわち、支持部材13により、第1エアギャップAG1の長さ(ミラー間の初期長さdmi)が決定されている。本実施形態では、上記したように可動ミラーM2がエアミラー構造を有しており、高屈折率層30,31のうち、透過領域S1のみに空気層32が介在されている。この空気層32の分、ミラー間の初期長さdmiが、第1エアギャップAG1の他の部分よりも短くなっている。換言すれば、第1エアギャップAG1の最大長さd1maxよりも、ミラー間の初期長さdmiが短くなっている。
【0086】
なお、本実施形態では、二酸化シリコンからなる支持部材13を採用しており、所定厚さの支持部材13により、ミラー間の初期長さdmiが3.5μm程度となっている。また、支持部材13は、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2を除く周辺領域の一部に配置されており、該周辺領域の支持部材13が配置されない部分には、固定ミラー構造体11の高屈折率層40,41が積層配置されている。そして、高屈折率層30,31,40,41が順に積層された部分において、高屈折率上層41上に、Au/Cr等からなり、可動ミラー構造体12(電極E2)及び固定ミラー構造体11を所定電位とするための共通のパッド35が設けられている。
【0087】
支持部材13における可動ミラー構造体12と反対の面上には、固定ミラー構造体11が配置されている。固定ミラー構造体11は、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなり、第1エアギャップAG1を架橋して支持部材13の表面上に配置された高屈折率下層40と、該高屈折率下層40に同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層40上に積層された高屈折率上層41とを有する。本実施形態においては、高屈折率層40,41が、ともにポリシリコンからなる。
【0088】
そして、高屈折率下層40と高屈折率上層41との間には、透過領域S1に低屈折率層としての空気層42が介在され、この部分が実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の固定ミラーM1となっている。このように、固定ミラーM1は、空気層42が介在されたエアミラーとなっている。この固定ミラーM1を構成する高屈折率下層40の第1エアギャップAG1側表面と、可動ミラー構造体12を構成する高屈折率層31の可動ミラーM2の部分とは、少なくとも電極E2,E3に電圧が印加されない状態で略平行となっている。また、固定ミラー構造体11において、固定ミラーM1を含み、支持部材13により支持されて第1エアギャップAG1を架橋する部分が、メンブレンMEM1となっている。
【0089】
また、高屈折率層40、41のうち、固定ミラーM1の形成領域(透過領域S1)を除く領域にp導電型(又はn導電型)の不純物が導入されている。固定ミラーM1の形成領域は、不純物が導入されないものの、p導電型の不純物が導入された領域と電気的に結合されている。これにより、固定ミラー構造体11全体が同電位となる。また、上記したように、メンブレンMEM1よりも外側の領域で、高屈折率層40,41が高屈折率層30,31に接しており、固定ミラー構造体11全体と可動ミラー構造体12全体が同電位となる。このため、固定ミラー構造体11と可動ミラー構造体12の間には静電気力が生じず、固定ミラー構造体11のメンブレンMEM1は、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2の変位によらず、初期状態の位置に保持される。
【0090】
なお、本実施形態では、透過領域S1(固定ミラーM1の形成領域)に不純物が導入されないことで、固定ミラーM1での光の透過阻害を抑制するようにしているが、固定ミラーM1の形成領域におけるドーズ量を、その他の領域よりも少なくすることで、固定ミラー構造体11全体で同電位としつつ、不純物による固定ミラーM1での光の透過阻害を抑制するようにしても良い。なお、図9では、固定ミラー構造体11全体が同電位となる(電気的に結合される)ことを示すため、便宜上、固定ミラー構造体11全体(高屈折率層40,41全体)にハッチングを施している。
【0091】
また、図9に示す符号43は、固定ミラー構造体11において、固定ミラーM1における空気層42の上面を覆う高屈折率上層41の部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔43を介してエッチングすることで、空気層42が形成される。また、符号44は、固定ミラー構造体11のメンブレンMEM1のうち、高屈折率下層40と高屈折率上層41の接する部分に形成された貫通孔であり、この貫通孔44を介して支持部材13をエッチングし、第1エアギャップAG1を形成することができる。
【0092】
このように構成されるファブリペロー干渉計10では、ミラー構造体11,12を構成する高屈折率層30,31,40,41として、ポリシリコンを採用している。ポリシリコンは、波長3〜9μm程度の赤外光に対して透明であるため、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターとして好適となる。なお、ポリシリコン以外にも、ポリゲルマニウムやポリシリコンゲルマニウムなど、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜を採用すると、同様の効果を期待することができる。
【0093】
加えて、ミラーM1,M2の低屈折率層として空気層32,42を採用している。このため、高屈折率層の屈折率nH(例えばSiでは3.45、Geでは4)と低屈折率層の屈折率nL(空気では1)との屈折率比(nH/nL)が大きく、分光帯域を波長3〜9μm程度とすることができる。したがって、第1実施形態に示した変調帯域を広くできる効果と合わせて、より広い波長域において光を選択的に透過させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、第1エアギャップAG1におけるミラー間の初期長さdmiを3.5μm、第2エアギャップAG2における電極間の初期長さを10.5μmとしている。電極E2,E3のプルイン限界までメンブレンMEM2を変位させると、その変位量は10.5μm×1/3(=3.5μm)となる。したがって、電極E2,E3間に印加する電圧により、プルイン現象を抑制しつつ、ミラー間の長さdmを3.5μm〜7μmの範囲で変化させることができる。このため、1次の干渉光、2次の干渉光、3次の干渉光を用いることで、3μm〜9μmの分光帯域全域を、隙間無く連続する1つの変調帯域として利用することができる。
【0095】
また、本実施形態では、貫通孔H1が、基板20の一面20aで最小開口部分21aとなっており、基板20の一面20aにおけるメンブレンMEM2との対向部分が固定電極E3として機能する。また、基板20の一面20a上に可動ミラー構造体12が配置されており、可動ミラー構造体12における高屈折率下層30のメンブレンMEM2の部分が可動電極E2として機能する。少なくとも初期状態で、第1電極としての可動電極E2と第2電極としての固定電極E3を略平行であるから、メンブレンMEM2(可動ミラーM2)の変位の制御性を向上することができる。
【0096】
また、本実施形態では、電極構造体14と可動ミラー構造体12の間に支持部材15が介在され、該支持部材15により、可動ミラー構造体12が基板20上に支持されている。したがって、支持部材15の厚さにより、第2エアギャップAG2における電極間の初期長さdeiを決定することもできる。
【0097】
また、本実施形態では、基板20が単結晶シリコン基板であり、貫通孔H1の壁面21として、面方位(111)面が露出し、基板20の一面20aに近いほど貫通孔H1の開口面積が小さい傾斜面を有している。このような構成は、基板20における一面20aと反対の裏面20b側からアルカリ性の溶液(例えばTMAH溶液)を用いてウェットエッチングすることで得ることができる。このようにウェットエッチングを採用すると、ドライエッチングに較べて、製造工程を簡素化することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、上記以外にも、第1実施形態に示した種々の構成を採用することができる。そして、各構成特有の効果を奏することができる。
【0099】
次に、図9に示すファブリペロー干渉計10の製造方法の一例について説明する。
【0100】
先ず、基板20として、単結晶シリコンからなる半導体基板を準備する。次いで、基板20の平坦な一面20a全面に、二酸化シリコンなどからなる支持部材15を均一に堆積形成する。支持部材15の構成材料としては、電気絶縁材料であれば特に限定されるものではないが、好ましくは空気層32を形成するための犠牲層(二酸化シリコン層)と同一材料とすると良い。支持部材15の膜厚は、電極E2,E3間の初期長さdeiに対応する厚さとする。
【0101】
そして、支持部材15上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層30、二酸化シリコン層(図示略)の順に、堆積形成する。次いで、二酸化シリコン層の表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して二酸化シリコン層をエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)してパターニングする。このパターニングにより、後にエッチングされて、可動ミラーM2の空気層32となる犠牲層(図示略)が形成される。
【0102】
次に、マスクを除去し、犠牲層を覆うように、高屈折率下層30上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層31を堆積形成する。次いで、高屈折率上層31の表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、マスクを介してドライエッチング(異方性エッチング)を行うことにより、透過領域S1に位置する高屈折率上層31の一部に、犠牲層に達する貫通孔33を形成する。また、高屈折率層30,31の接する部分において、高屈折率層30,31をエッチングにより選択的に除去し、支持部材15をエッチングするための貫通孔34を形成する。
【0103】
このマスクを除去した後、高屈折率上層31の表面に新たなマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して、高屈折率層30,31に不純物をイオン注入する。これにより、可動電極E2が形成される。本実施形態では、高屈折率層30,31の透過領域S1を除く領域にp型導電型の不純物であるボロンをイオン注入する。可動ミラーM2となる領域に不純物が存在すると、光が不純物によって吸収されることとなるため、本実施形態では、可動ミラーM2を構成する高屈折率層30,31の部分に不純物を注入しない。それ以外にも、可動ミラーM2を構成する高屈折率層30,31の部分のドーズ量を、他の部分よりも少なくしても良い。なお、可動電極E2は、高屈折率下層30のメンブレンMEM2部分に少なくとも形成されれば良いため、高屈折率下層30の堆積後、イオン注入により高屈折率下層30に可動電極E2を形成しても良い。
【0104】
次に、マスクを除去し、高屈折率膜上層31の表面全面に、二酸化シリコンなどからなる支持部材13を均一に堆積形成する。そして、メンブレンMEM2の周辺領域において、可動ミラー構造体12の高屈折率上層31と、固定ミラー構造帯11の高屈折率下層40が後工程で接するように、エッチングにより支持部材13をパターニングする。このとき、必要に応じて支持部材13の表面を平坦化処理する。
【0105】
そして、支持部材13を覆うように可動ミラー構造体12の高屈折率上層31上全域に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層40、二酸化シリコン層(図示略)の順に、堆積形成する。次いで、二酸化シリコン層の表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して二酸化シリコン層をエッチング(例えばRIEなどの異方性のドライエッチング)してパターニングする。このパターニングにより、後にエッチングされて固定ミラーM1の空気層42となる犠牲層(図示略)が形成される。
【0106】
次に、マスクを除去し、犠牲層を覆うように、高屈折率下層40上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層41を堆積形成する。次いで、高屈折率上層41の表面にレジストなどからなるマスク(図示略)を形成し、マスクを介してドライエッチング(異方性エッチング)を行うことにより、透過領域S1に位置する高屈折率上層41の一部に、犠牲層に達する貫通孔43を形成する。また、高屈折率層40,41の接する部分において、高屈折率層40,41をエッチングにより選択的に除去し、支持部材13をエッチングするための貫通孔44を形成する。
【0107】
このマスクを除去した後、高屈折率上層41の表面に新たなマスク(図示略)を形成し、該マスクを介して、高屈折率層40,41に不純物をイオン注入する。本実施形態では、可動ミラー構造体12のイオン注入領域に対応して、高屈折率層40,41の透過領域S1を除く領域にp型導電型の不純物であるボロンをイオン注入する。固定ミラーM1となる領域に不純物が存在すると、光が不純物によって吸収されることとなるため、本実施形態では、固定ミラーM1を構成する高屈折率層40,41の部分に不純物を注入しない。それ以外にも、固定ミラーM1を構成する高屈折率層40,41の部分のドーズ量を、他の部分よりも少なくしても良い。
【0108】
なお、固定ミラー構造体11は電極を有さないので、固定ミラー構造体11に不純物の注入を行わないことも可能である。しかしながら、可動ミラー構造体12と同じパターンで不純物を注入したほうが、固定ミラー構造体11と可動ミラー構造体12との間で静電気力が生じるのを抑制することができる。
【0109】
次に、基板20の裏面20b上にマスク(図示略)を形成し、裏面20b側から基板20をエッチングして貫通孔H1を形成する。本実施形態では、アルカリ系のTMAH溶液を用い、支持部材15をエッチングストッパとして基板20を異方性エッチングする。基板20の裏面20bは面方位(100)面であるため、エッチングレートの差から、貫通孔H1の壁面21に面方位(111)面が露出する。また、貫通孔H1は、裏面20bから一面20aに近づくにつれて開口面積が小さくなる。このエッチングは、貫通孔H1の最小開口部分21aが、垂直方向において透過領域S1と一致した時点で終了とする。
【0110】
次に、貫通孔44,34,H1を通じて、エッチングにより支持部材13,15におけるメンブレンMEM1,MEM2に対応する部分を除去し、エアギャップAG1,AG2を形成する。また、貫通孔33,43を介して、透過領域S1における犠牲層も除去し、空気層32,42を形成する。本実施形態では、これらエッチングが、フッ酸(HF)の気相エッチング乃至液相エッチングにより同一工程で実施される。また、支持部材15におけるパッド22形成部分についてもこの工程で除去される。
【0111】
そして、パッド22,35の形成を経て、図9に示すファブリペロー干渉計10を得ることができる。
【0112】
なお、貫通孔H1を介して支持部材15をエッチングすることができるため、可動ミラー構造体12の貫通孔34については設けなくとも良い。しかしながら、エッチング用の貫通孔34を設けると、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2において貫通孔34を設けた部分の剛性が低くなり、メンブレンMEM2が変位しやすくなる。また、貫通孔H1,34を介して支持部材13をエッチングすることもできるので、可動ミラー構造体12に貫通孔34を設ける場合には、固定ミラー構造体11の貫通孔44については設けなくとも良い。
【0113】
また、本実施形態では、共通のパッド35で可動ミラー構造体12と固定ミラー構造体11の電位を同電位とする例を示したが、可動ミラー構造体12と固定ミラー構造体11のパッドをそれぞれ設け、各パッドに印加する電位を同一としても良い。例えば、支持部材13に開口部を設け、該開口部内における高屈折率上層31上に、可動ミラー構造体12用のパッドを設けても良い。この場合、可動ミラー構造体12と固定ミラー構造体11が接しない構造となる。
【0114】
また、図10に例示するように、基板20の一面20aにおけるメンブレンMEM2との対向部分の一部に、電気絶縁材料からなり、電極間の初期長さdeiの2/3倍未満の突出高さを有する突起部23を設けた構成としても良い。図10では、突起部23が、支持部23が窒化シリコンからなり、基板20の一面20aからの突出高さがdei×1/2となっている。このような突起部23を設けると、電極E2,E3のプルイン限界(dei×1/3)を超えてメンブレンMEM2を変位させても、電気絶縁性の突起部23にメンブレンMEM2が当て止まる。すなわち、突起部23がストッパとして機能し、スティッキングを抑制することができる。このような突起部23は、例えば基板20の一面20a上に窒化シリコン層を堆積し、パターニングして突起部23とした後、突起部23を覆うように支持部材15を形成すれば良い。
【0115】
また、メンブレンMEM2を有する可動ミラー構造体12が設けられ基板20(電極構造体14)と、固定ミラー構造体11が設けられた基板(図示略)とを、支持部材13を介して貼り合わせ、1つのファブリペロー干渉計10とすることも可能である。この場合、従来のファブリペロー干渉計10のように、固定ミラー構造体11がメンブレンを有さない構造とすることができる。ただし、この構造では、固定ミラー構造体11側の基板での吸収、反射によるロスや、貼り合わせの位置ズレ等が考えられる。従って、本実施形態に示す構造を採用することが好ましい。
【0116】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るファブリペロー干渉計10について、図11及び図12を用いて説明する。なお、本実施形態においても、固定ミラー構造体11のメンブレンMEMをメンブレンMEM1とし、可動ミラー構造体12のメンブレンMEMをメンブレンMEM2とする。
【0117】
第2実施形態と異なる点は、基板20に形成した貫通孔H1の壁面21を、実質的に固定電極E3として機能させる点にある。また、壁面21を固定電極E3として機能させるために、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2において、可動ミラーM2の形成領域(透過領域S1)と周辺領域T1を電気的に分離し、可動ミラーM2が可動電極E2を兼ねるようにしている。その他の部分は、第2実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0118】
図11に示すように、基板20は、貫通孔H1の壁面21として、裏面20bに近いほど垂直方向において透過領域S1の中心に近づく傾斜面を有している。本実施形態では、基板20として単結晶シリコン基板を採用しており、一面20aが(100)面となっている。そして、貫通孔H1の壁面21は、面方位(111)面が露出し、裏面20bに近づくほど開口面積の小さい傾斜を有している。そして、壁面21における裏面20bでの開口部分が最小開口部分21aとなっており、この最小開口部分21aが、垂直方向において透過領域S1とほぼ一致している。
【0119】
また、基板20における貫通孔H1の壁面21が、基板20において可動ミラー構造体12の可動電極E2との対向距離がもっとも短い部分となっており、これにより壁面21が実質的に固定電極E3として機能するようになっている。なお、可動電極E2と固定電極E3との対向距離とは、互いに対向する領域の中心間の距離とする。
【0120】
また、図12に示すように、可動ミラー構造体12を構成する高屈折率層30,31のうち、メンブレンMEM2の可動ミラーM2形成領域に、例えばn導電型の不純物が注入されている。そして、n導電型の不純物が注入された可動ミラーM2は、同じくn導電型の不純物が注入された配線37により、メンブレンMEM2よりも外側の領域(メンブレンMEM2の周辺の領域)に引き出され、対応するパッド38と電気的に接続されている。また、高屈折率層30,31のうち、可動ミラーM2及び配線37の形成領域を除く領域には、可動ミラーM2とは異なる導電型(例えばp導電型)の不純物が注入されており、該領域も、メンブレンMEM2よりも外側の領域(メンブレンMEM2の周辺の領域)で対応するパッド35と電気的に接続されている。そして、n導電型の領域とp導電型の領域の間には、絶縁分離領域36(空乏層領域)が形成されている。この絶縁分離領域36により、可動ミラーM2及び配線37が取り囲まれている。
【0121】
なお、図示しないが、固定ミラー構造体11も可動ミラー構造体12に対応して、n導電型の領域(固定ミラーM1の形成領域)、p導電型の領域、及び絶縁分離領域(空乏層領域)を有している。そして、n導電型の領域がパッド38と電気的に接続され、p導電型の領域がパッド35と電気的に接続されている。このように、一対のミラー構造体11,12において、ミラーM1,M2同士が同電位とされ、ミラーM1,M2とは異なる導電型の領域同士が同電位とされている。
【0122】
また、ミラーM1,M2に対応するパッド38を正の電位、パッド35をグランド電位、基板20に対応するパッド22を同じくグランド電位とする。このようにpn接合に対して逆方向電圧(逆バイアス)を印加するため、各ミラー構造体11,12において垂直方向に流れるリーク電流を抑制することができる。また、可動ミラーM2と基板20との間に電位差が生じるため、可動ミラーM2を含むメンブレンMEM2を、電極構造体14側に変位させることができる。なお、可動ミラー構造体12のうち、高屈折率下層30の可動ミラーM2の部分の電極構造体14との対向面が、可動電極E2として実質的に機能する。
【0123】
このように本実施形態では、貫通孔H1の傾斜する壁面21を固定電極E3とするため、基板20の厚さにより、電極間の初期長さdeiを稼ぐことができる。したがって、第2実施形態に示した構成に較べて、支持部材15の厚さを薄くすることができる。支持部材15は例えばCVD法にて成膜するため、本実施形態によれば、成膜時間の短縮及び基板反りの抑制等を図ることができる。
【0124】
また、貫通孔H1の傾斜する壁面21を固定電極E3とするため、可動電極E2との間に生じる静電気力は、長さ方向だけでなく垂直方向にも作用する。また、固定電極E3(傾斜を有する壁面21)は、メンブレンMEM2(透過領域S1)の中心に対して対称構造となっている。具体的には、図11に示す紙面左右方向において、メンブレンMEM2(透過領域S1)の中心に対し、左右いずれの側にも固定電極E3が存在する。したがって、可動電極E2が、固定電極E3の位置する左右両側に引っ張られるため、可動ミラーM2の平坦性を向上し、ひいては、透過スペクトルの半値幅(FWHM)を小さくすることができる。
【0125】
また、本実施形態では、基板20が単結晶シリコン基板であり、貫通孔H1の壁面21として、面方位(111)面が露出し、基板20の裏面20bに近いほど貫通孔H1の開口面積が小さい傾斜面を有している。このような構成は、基板20における一面20a側からアルカリ性の溶液(例えばTMAH溶液)を用いてウェットエッチングすることで得ることができる。このようにウェットエッチングを採用すると、ドライエッチングに較べて、製造工程を簡素化することができる。
【0126】
なお、本実施形態では、上記以外にも、第1実施形態に示した種々の構成を採用することができる。そして、各構成特有の効果を奏することができる。
【0127】
次に、図11及び図12に示すファブリペロー干渉計10の製造方法の一例について説明する。なお、第2実施形態と大部分が同じであるので、同じ部分の記載は簡素化する。
【0128】
先ず、基板20として、単結晶シリコンからなる半導体基板を準備し、基板20の平坦な一面20a全面に、二酸化シリコンからなる支持部材15を均一に堆積形成する。このとき、支持部材15を、第2実施形態の支持部材15よりも薄い厚さで形成する。
【0129】
そして、支持部材15上に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層30を形成し、図12に示したパターンで高屈折率下層30に不純物をイオン注入する。次いで、高屈折率下層30上に、二酸化シリコン層からなる犠牲層(図示略)、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層31の順に形成する。そして、高屈折率上層31に対し、図12に示したパターンで不純物をイオン注入する。
【0130】
次いで、メンブレンMEM2における高屈折率層30,31の接する部分に、支持部材15をエッチングするための貫通孔34を形成する。そして、貫通孔34の壁面及び開口周囲に、後工程で基板20の異方性エッチングする際のエッチャント耐性を有する膜(例えば窒化シリコン膜)を形成する。また、透過領域S1に位置する高屈折率上層31の一部に、犠牲層に達する貫通孔33を形成する。
【0131】
次に、高屈折率膜上層31の表面全面に、二酸化シリコンからなる支持部材13を均一に堆積形成する。そして、メンブレンMEM2の周辺領域において、可動ミラー構造体12の高屈折率上層31と、固定ミラー構造帯11の高屈折率下層40が接するように、エッチングにより支持部材13をパターニングする。このとき、必要に応じて支持部材13の表面を平坦化処理する。
【0132】
そして、支持部材13を覆うように可動ミラー構造体12の高屈折率上層31上全域に、ポリシリコンなどからなる高屈折率下層40を形成し、図12に示したパターン同様で高屈折率下層40に不純物をイオン注入する。次いで、高屈折率下層40上に、二酸化シリコン層からなる犠牲層(図示略)、ポリシリコンなどからなる高屈折率上層41の順に形成する。そして、高屈折率上層41に対し、図12に示したパターン同様で不純物をイオン注入する。
【0133】
次いで、メンブレンMEM1における高屈折率層40,41の接する部分に、支持部材13をエッチングするための貫通孔44を形成する。そして、貫通孔44の壁面及び開口周囲に、後工程で基板20の異方性エッチングする際のエッチャント耐性を有する膜(例えば窒化シリコン膜)を形成する。また、透過領域S1に位置する高屈折率上層41の一部に、犠牲層に達する貫通孔43を形成する。
【0134】
そして、貫通孔44を介して支持部材13に対し、貫通孔44とほぼ同一形状及び同一開口面積を有する貫通孔(図示略)を形成し、該貫通孔を介して貫通孔44,34を連通させる。次いで、貫通孔34,44及び支持部材13に形成した貫通孔を介して基板20を一面20a側からエッチングし、貫通孔H1を形成する。本実施形態では、アルカリ系のTMAH溶液を用いて基板20を異方性エッチングする。基板20の一面20aは面方位(100)面であるため、このエッチングにより、貫通孔H1の壁面21に面方位(111)面が露出する。また、貫通孔H1は、一面20aから裏面20bに近づくにつれて開口面積が小さくなる。このエッチングは、貫通孔H1の最小開口部分21aが、垂直方向において透過領域S1と一致した時点で終了とする。
【0135】
次に、貫通孔43,44を通じて、エッチングにより支持部材13,15におけるメンブレンMEM1,MEM2に対応する部分を除去し、エアギャップAG1,AG2を形成する。また、貫通孔33,43を介して、透過領域S1における犠牲層も除去し、空気層32,42を形成する。本実施形態では、これらエッチングが、フッ酸(HF)の気相エッチング乃至液相エッチングにより同一工程で実施される。また、支持部材15におけるパッド22形成部分についてもこの工程で除去される。
【0136】
そして、貫通孔34,44の壁面及び開口周囲に設けた基板エッチング用のエッチャント耐性膜を除去し、パッド22,35,38の形成を経て、図11に示すファブリペロー干渉計10を得ることができる。
【0137】
なお、本実施形態では、可動ミラーM2(高屈折率下層30における可動ミラーM2の部分の電極構造体14との対向面)が可動電極E2を兼ねる例を示した。しかしながら、例えば図13及び図14に示すように、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2において、可動ミラーM2の形成領域を除く周辺領域T1であって少なくとも電極構造体14との対向面に可動電極E2が形成された構成を採用することもできる。
【0138】
図13及び図14に示すファブリペロー干渉計10では、図14に示すように、可動ミラー構造体12を構成する高屈折率層30,31のうち、メンブレンMEM2の可動ミラーM2近傍の領域39に、例えばn導電型の不純物が注入されている。そして、n導電型の領域39は、同じくn導電型の不純物が注入された配線50により、メンブレンMEM2よりも外側の領域(メンブレンMEM2の周辺の領域)に引き出され、対応するパッド51と電気的に接続されている。また、高屈折率層30,31のうち、n導電型の領域39及び配線50を除く領域(可動ミラーM2を含む)には、これら領域39,50とは異なる導電型(例えばp導電型)の不純物が注入されており、該p導電型の領域も、メンブレンMEM2よりも外側の領域(メンブレンMEM2の周辺の領域)で対応するパッド35と電気的に接続されている。そして、n導電型の領域とp導電型の領域の間には、絶縁分離領域36(空乏層領域)が形成されている。
【0139】
なお、図示しないが、固定ミラー構造体11も可動ミラー構造体12に対応して、n導電型の領域、p導電型の領域(固定ミラーM1を含む)、及び絶縁分離領域36(空乏層領域)を有している。そして、n導電型の領域がパッド51と電気的に接続され、p導電型の領域がパッド35と電気的に接続されている。このように、一対のミラー構造体11,12において、ミラーM1,M2同士が同電位とされ、配線を除く周辺領域T1の対向部分が同電位とされている。
【0140】
また、ミラーM1,M2を含むp導電型の領域に対応するパッド35をグランド電位、n導電型の領域39に対応するパッド51を正の電位、基板20に対応するパッド22を同じくグランド電位とする。このようにpn接合に対して逆方向電圧(逆バイアス)を印加するため、各ミラー構造体11,12において垂直方向に流れるリーク電流を抑制することができる。また、n導電型の領域39と基板20との間に電位差が生じるため、可動ミラーM2を含むメンブレンMEM2を、電極構造体14側に変位させることができる。なお、可動ミラー構造体12のうち、高屈折率下層30のn導電型の領域39における電極構造体14との対向面が、可動電極E2として実質的に機能する。
【0141】
なお、図10〜図14に示す構成において、固定ミラー構造体11及び可動ミラー構造体12におけるp導電型とn導電型を逆とした構成を採用することもできる。
【0142】
また、本実施形態では、基板として単結晶シリコン基板を採用する例を示した。しかしながら、貫通孔H1の傾斜する壁面21に固定電極E3を設ける構成としては、単結晶シリコン基板に限定されるものではなく、化合物半導体基板を採用することもできる。例えばGaAs基板を採用すると、基板20における貫通孔H1の壁面21が、垂直方向に平行な一方向において、図9に示すように一面20aに近いほど垂直方向において透過領域S1の中心に近づく傾斜面を有する。一方、垂直方向に平行で且つ上記一方向に直交する方向において、図11(又は図13)に示すように裏面20bに近いほど垂直方向において透過領域S1の中心に近づく傾斜面を有する。したがって、基板20における貫通孔H1の壁面21のうち、裏面20bに近いほど透過領域S1の中心に近づく傾斜面を固定電極E3とすれば、本実施形態に示したファブリペロー干渉計10と同様の効果を奏することができる。
【0143】
なお、このような貫通孔H1は、第2実施形態同様、支持部材15をエッチングストッパとし、エッチャントとして、強酸+過酸化水素水、又は、強アルカリ+過酸化水素水を用い、基板20の裏面20b側から異方性エッチングすることで形成することができる。
【0144】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0145】
本実施形態では、電極構造体14を構成する基板20として、半導体基板の例を示した。しかしながら、基板20としては上記例に限定されるものではなく、ガラスなどの絶縁基板を採用することも可能である。
【0146】
本実施形態では、固定ミラーM1及び可動ミラーM2として、高屈折率層間に低屈折率層としての空気層を介在させてなる光学多層膜構造の例を示した。しかしながら、ミラーの構成は上記例に限定されるものではない。低屈折率層としては、空気層32,42に代えて、二酸化シリコンなどの固体、液体、空気以外の気体、ゾル、ゲル、真空などを採用しても良い。
【0147】
本実施形態では、可動ミラー構造体12が、支持部材15を介して電極構造体14上に支持され、固定ミラー構造体11が、支持部材13を介して可動ミラー構造体12上に支持される例を示した。しかしながら、メンブレンMEM2よりも外側に位置する可動ミラー構造体12の部分が、電極構造体14に接して、メンブレンMEM2を支持する支持部材としての機能を果たす構成を採用することもできる。また、メンブレンMEM1よりも外側に位置する固定ミラー構造体11の部分が、可動ミラー構造体12に接して、メンブレンMEM1を支持する支持部材としての機能を果たす構成を採用することもできる。すなわち、支持部材13,15を有さない構成とすることもできる。この場合、製造工程において、犠牲層としての支持部材15を、メンブレンMEM2に対応する部分のみに形成する。そして、この支持部材15を覆うように可動ミラー構造体12を形成し、エッチングにより、支持部材15を全て除去して第2エアギャップAG2とすれば良い。また、犠牲層としての支持部材13を、メンブレンMEM1に対応する部分のみに形成する。そして、この支持部材13を覆うように固定ミラー構造体11を形成し、エッチングにより、支持部材13を全て除去して第1エアギャップAG1とすれば良い。また、必要に応じて、pn接合分離やトレンチ絶縁分離などの絶縁分離領域を設け、電気的に分離すれば良い。
【0148】
本実施形態では、可動ミラー構造体12のメンブレンMEM2において、可動ミラーM2(透過領域S1)を取り囲む周辺領域T1について、高屈折率層30,31が積層されてなり、局所的に貫通孔34が形成された構成例を示した。しかしながら、周辺領域T1の構成は上記例に限定されるものではない。周辺領域T1がばね変形しやすいと、電極E2,E3間への電圧の印加により、可動ミラーM2を平坦に保持しつつ、メンブレンMEM2における周辺領域T1の部分を変形させることができる。例えば、メンブレンMEM2の周辺領域T1において、高屈折率層30,31の一部を除去することで薄肉とすることで変形しやすくしても良い。それ以外にも、メンブレンMEM2の周辺領域T1を梁構造とすることで、変形しやすくしても良い。
【符号の説明】
【0149】
10・・・ファブリペロー干渉計
11・・・固定ミラー構造体
12・・・可動ミラー構造体
13,15・・・支持部材
14・・・電極構造体
20・・・基板
21・・・壁面
AG1・・・第1エアギャップ(第1ギャップ)
AG2・・・第2エアギャップ(第2ギャップ)
E2・・・可動電極(第1電極)
E3・・・固定電極(第2電極)
H1・・・貫通孔
M1・・・固定ミラー
M2・・・可動ミラー
MEM,MEM1,MEM2・・・メンブレン
S1・・・透過領域
T1・・・周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる透過領域に固定ミラーを有する固定ミラー構造体と、
第1ギャップを介して固定ミラー構造体と対向する部分が変位可能なメンブレンとされ、該メンブレンに、第1電極と前記固定ミラーに対向して設けられた可動ミラーとを有する可動ミラー構造体と、
前記可動ミラー構造体に対して前記固定ミラー構造体と反対側に配置され、第2ギャップを介して前記メンブレンと対向する部分に第2電極を有する電極構造体と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加されない初期状態で、前記第2ギャップにおける電極間の長さdeiが、前記第1ギャップにおけるミラー間の長さdmiよりも長くされており、
前記可動ミラー構造体のメンブレンと、前記固定ミラーを含む固定ミラー構造体のメンブレン対向部分とは、互いに対向する部分が同電位とされ、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記メンブレンを前記電極構造体に近づく方向に変位させることで、前記第2ギャップにおける電極間の長さdeが初期状態の長さdeiより短くなるとともに、前記第1ギャップにおけるミラー間の長さdmが初期状態の長さdmiより長くなることを特徴とするファブリペロー干渉計。
【請求項2】
前記初期状態で、前記第2ギャップにおける電極間の長さdeiが、前記第1ギャップにおける最大長さd1maxよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項3】
前記初期状態で、前記第2ギャップにおける電極間の長さdeiと、前記第1ギャップにおけるミラー間の長さdmiとが、
dei≧3×dmi
を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項4】
前記第2電極は、前記透過領域とは異なる領域に設けられ、
前記電極構造体は、前記メンブレンと対向する部分に、前記第2電極の形成領域とは異なる領域であって少なくとも前記透過領域に対応して設けられた光透過部を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項5】
前記電極構造体は、基板に、前記第2電極が設けられるとともに前記光透過部としての貫通孔が設けられてなることを特徴とする請求項4に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項6】
前記貫通孔における開口面積の最も小さい最小開口部分の位置が、前記メンブレンの変位方向に垂直な方向において前記透過領域と一致していることを特徴とする請求項5に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項7】
前記第2電極は、前記基板の一面における前記メンブレンと対向する部分に設けられ、
前記貫通孔は、前記基板の一面での開口部分が前記最小開口部分とされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項8】
前記電極構造体と前記可動ミラー構造体の間には、前記第2ギャップの形成領域を除いて、電気絶縁材料からなる所定厚さの支持部材が介在され、該支持部材により、前記可動ミラー構造体が前記基板上に支持されていることを特徴とする請求項7に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項9】
前記基板は単結晶シリコン基板であり、前記貫通孔の壁面として、面方位(111)面が露出し、前記メンブレンの変位方向において前記基板の一面に近いほど開口面積が小さい傾斜面を有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項10】
前記基板の一面における前記メンブレンと対向する部分の一部に、電気絶縁材料からなり、前記初期状態の第2ギャップにおける電極間の長さdeiの2/3倍未満の突出高さを有して突起部が設けられていることを特徴とする請求項7〜9いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項11】
前記基板は、前記貫通孔の壁面として、前記メンブレンの変位方向において、前記基板における可動ミラー構造体と対向する一面と反対の面に近いほど前記透過領域の中心に近づく傾斜面を有し、
前記基板の傾斜面に前記第2電極が設けられ、
前記電極構造体を構成する基板の一面上に、前記可動ミラー構造体が配置されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項12】
前記第1電極は、前記可動ミラー構造体のメンブレンにおいて、前記可動ミラーの形成領域であって少なくとも前記電極構造体との対向面に形成されていることを特徴とする請求項11に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項13】
前記第1電極は、前記可動ミラー構造体のメンブレンにおいて、前記可動ミラーの形成領域を除く周辺領域であって少なくとも前記電極構造体との対向面に形成されていることを特徴とする請求項11に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項14】
前記基板は単結晶シリコン基板であり、前記傾斜面は、面方位(111)面が露出していることを特徴とする請求項11〜13いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項15】
前記基板はGaAs基板であることを特徴とする請求項11〜13いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項16】
前記固定ミラー構造体及び前記可動ミラー構造体は、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる2層の高屈折率層を有するとともに、前記高屈折率層よりも低屈折率の材料からなる低屈折率層を、少なくとも前記固定ミラー及び前記可動ミラーの形成領域において前記高屈折率層間に介在させてなることを特徴とする請求項1〜15いずれか1項に記載のファブリペロー干渉計。
【請求項17】
前記低屈折率層は、空気層であることを特徴とする請求項16に記載のファブリペロー干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−127862(P2012−127862A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280814(P2010−280814)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】