説明

ファルネシルベンゾジアゼピノンの製造方法及び薬剤としての使用

【化1】


【化2】


本発明は、ECO−04601と名付けられた新規のファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、その薬学的に許容される塩及び誘導体、並びにかかる化合物を得る方法に関する。ECO−04601化合物を得る方法には、新規のMicromonospora sp.株、すなわち046−ECO11の培養による方法や、形質転換した宿主生物における生合成経路遺伝子の発現を伴う方法がある。本発明は更にMicromonospora sp.046−ECO11株に関し、ECO−04601並びにその薬学的に許容される塩及び誘導体の医薬組成物としての使用、特に、癌細胞の増殖、細菌細胞の増殖、哺乳類リポキシゲナーゼの阻害剤としての使用、及びECO−04601若しくはその薬学的に許容される塩又は誘導体を含む医薬組成物に関する。最後に、本発明は、新規のポリヌクレオチド配列及びそれによってコードされるタンパク質に関し、これらのポリヌクレオチド配列やタンパク質はECO−04601の生合成に関与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECO−04601と名付けられた新規のファルネシル化ジベンゾジアゼピノン、その薬学的に許容される塩及び誘導体、並びに該化合物を得る方法に関する。該化合物を得る方法には、Micromonospora sp.の新規株、すなわち046−ECO11又は[S01]046の培養による方法や、形質転換した宿主細胞における生合成経路遺伝子の発現を伴う方法がある。本発明は更に、Micromonospora sp.046−ECO11株及び(S01)046株に関し、ECO−04601並びにその薬学的に許容される塩及び誘導体の薬剤としての使用、特に癌細胞の増殖、細菌細胞の増殖、哺乳類リポキシゲナーゼの阻害剤としてのその使用、急性炎症や慢性炎症の治療のためのその使用、並びにECO−04601又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を含む医薬組成物に関する。最後に、本発明は、新規のポリヌクレオチド配列及びそれによってコードされるタンパク質に関するが、それらはECO−04601の生合成に関連している。
【背景技術】
【0002】
Euactinomycetesは、Actinomycetesとして知られる大きく複雑なグラム陽性細菌群のサブセットである。治療に有用な二次代謝産物として生成される化合物、特に抗生物質が多いことから、人々は過去数十年にわたり、土壌に豊富に存在するこれらの生物に、商業的に、また科学的に重要な興味を抱いてきた。新規の抗生物質を生成することのできる株を徹底的に調査した結果、数百の新種が同定された。
【0003】
このEuactinomycetesの多く、特にストレプトミセス及び近縁種であるSaccharopolyspora属が鋭意研究されてきた。これら2つの属によって、生物活性代謝産物の多様性が顕著となる。これらの化合物が商業的に重要であることから、これらの生物の遺伝的特徴や生理機能については、多くが知られている。
【0004】
他の代表的なEuactinomycetes属として、人々はMicromonosporaにも商業的な興味を抱いてきた。例えば、米国特許第5,541,181号(Ohkuma et al.)はジベンゾジアゼピノン化合物を開示している。具体的には、既知のEuactinomycetes株であるMicromonospora sp.M990−6(アクセッション番号第55378)によって生成された5−ファルネシル−4,7,9−トリヒドロキシ−ジベンゾジアゼピン−11−オン(「BU−4664L」と命名)を開示している。Ohkuma et al.の特許は、BU−4664L及びその化学合成されたジ−又はトリ−アルコシキ及びアシロキシ誘導体が、抗炎症活性と抗腫瘍細胞活性とを有していることを報告している。
【0005】
多くの生物活性化合物が細菌から同定されたが、依然として、特性を強化された天然由来の新規化合物を得ることが必要とされる。これらの化合物を得る現在の方法には、天然の単離物や既存の化合物の化学的修飾のスクリーニングが含まれるが、これらは多くの費用や時間を要する。現在のスクリーニング方法は該化合物の一般的な生物学的特性に基づいており、分子構造の予備知識を必要とする。既知の活性化合物を化学的に修飾する方法は存在するが、得られる化合物の種類は、実際には今なお限られている。
したがって、薬理活性化合物を高収量且つ費用効率の高い方法で得ることが、非常に必要とされている。本発明は、試薬(例えば、ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、及び該ベクターを含む宿主細胞)だけでなく、強力な新規の治療用化合物を生成することができるMicromonosporaの新規株、及び化学合成ではなく新規の生合成によって新規の化合物を生成する方法を提供することによって、これらの問題が解決される。
【特許文献1】米国特許第5,541,181号(Ohkuma et al.)
【発明の開示】
【0006】
第一の実施の形態において、本発明は、下記式で表される化合物(式II)又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0007】
【化1】

【0008】
別の実施の形態において、本発明は、下記式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【0009】
【化2】

【0010】
また別の実施の形態において、本発明は、式Iで表される化合物のクラスに関する。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、W1、W2及びW3は、それぞれ独立して下記式
【0013】
【化4】

【0014】
から選択されるか、三環からの側鎖は、W3、W2又はW1がそれぞれ−CH=O又は−CH2OHであって、W3、W2又はW1で終わっていてもよく、
Aは、−NH−、−NCH2R1、−NC(O)R1から選択され、
R1は、C1〜6アルキル、C2〜6アルケン(alkene)、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、R5、−C(O)R6から選択され、
R5は、それぞれ独立してC1〜6アルキル、C2〜7アルカレン(alkalene)、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R6は、それぞれ独立してH、C1−6アルキル、C2−7アルカレン、アリール又はヘテロアリールから選択されるか、その薬学的に許容される塩である)。
【0015】
ある実施の形態においては、AがNHである。
【0016】
別の実施の形態においては、Aが−NCHである。
【0017】
別の実施の形態においては、Aが−NC(O)Rである。
【0018】
別の実施の形態においては、RがHである。
【0019】
別の実施の形態においては、RがHである。
【0020】
別の実施の形態においては、RがHである。
【0021】
別の実施の形態においては、R、R、及びRがそれぞれHである。
【0022】
別の実施の形態においては、R、R、及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−である。
【0023】
別の実施の形態においては、R、R、及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−である。
【0024】
別の実施の形態においては、R、R、及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−である。
【0025】
別の実施の形態においては、AがNHであり、R、R、及びRがそれぞれHである。
【0026】
別の実施の形態においては、AがNHであり、W、W、及びWがそれぞれ−CH=CH−である。
【0027】
本発明は更に、下記の群から選択される化合物を含む。
【0028】
【化5】

【0029】

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】

【0034】
ある実施の形態において、本発明は、式Iで表される化合物の組成物及びその薬学的に許容されるキャリアに関する。
【0035】
本発明は更に、
a)少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源を含む培養地において、好気条件下で培養が行われることを特徴とする、Micromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及びb)ステップ(a)で培養された細菌からファルネシルジベンゾジアゼピノンを単離するステップ含む方法で得られるファルネシルジベンゾジアゼピノンを含む。ある実施の形態において、ファルネシルジベンゾジアゼピノンは式IIで表される化合物である。
【0036】
基本的に図3、4、5、6、及び7に示すように、ある実施の形態においては、ファルネシルジベンゾジゼアピノンはNMRスペクトルを発生させる。別の実施の形態においては、ファルネシルジベンゾジゼアピノンは図3のHNMRスペクトルを発生させる。
本発明は更に、少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源を含む培地でMicromonospora sp.046−ECO11株を培養するステップ、及び化合物を単離し精製するステップを含む、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の製造方法を含む。
【0037】
本発明は更に、少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源を含む培地でMicromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及び化合物を単離し精製するステップを含む、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の作成方法を含む。
ある実施の形態においては、培養は好気条件下で行われる。
別の実施の形態においては、炭素原子源及び窒素原子源が表16に示される成分から選択される。
【0038】
別の実施の形態においては、培養は18〜40℃の温度で行われる。更なる実施の形態においては、温度範囲は18〜29℃である。
【0039】
別の実施の形態においては、培養はpH6〜9で行われる。
【0040】
本発明は更に、IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第231203−01のMicromonospora sp.株を含む。
【0041】
本発明は更に、癌細胞の増殖を阻害する方法、すなわち、癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を式Iで表される化合物に接触させるステップを有する方法を含む。
ある実施の形態において、該化合物はECO−04601である。
【0042】
本発明は更に、哺乳動物の癌細胞の増殖を阻害する方法、すなわち、哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を有する哺乳動物に式Iで表される化合物を投与するステップを有する方法を含む。
【0043】
ある実施の形態において、該化合物はECO−04601である。
【0044】
本発明は更に、前癌状態又は癌疾患を治療するために、治療に効果的な量の式Iで表される化合物を哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における前癌状態又は癌疾患を治療する方法を含む。
【0045】
ある実施の形態において、該化合物はECO−04601である。
【0046】
本発明は更に、細菌感染を治療するために、治療に効果的な量の式Iで表される化合物を細菌に感染した哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における細菌感染を治療する方法を含む。
【0047】
ある実施の形態において、該化合物はECO−04601である。
【0048】
本発明は更に、炎症を抑えるために、治療に効果的な量の式Iで表される化合物を、炎症を起こした哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における炎症を抑える方法を含む。
【0049】
ある実施の形態において、該化合物がECO−04601である。
【0050】
本発明は更に、ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与するポリペプチドをコードする、配列番号1、64及び73の1又は2以上を有する単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0051】
本発明は更に、ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与するポリペプチドをコードする、配列番号1、64及び73を有する単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0052】
本発明は更に、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89からなる群から選択されるポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0053】
ある実施の形態においては、配列番号1を有する単離されたポリヌクレオチドが、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61及び63からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
ある実施の形態においては、配列番号64を有する単離されたポリヌクレオチドが、配列番号66、68、70及び72からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
ある実施の形態においては、配列番号73を有する単離されたポリヌクレオチドが、配列番号75、77、79、81、83、85、87及び89からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
【0054】
本発明は更に、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、又は89で表される単離されたポリペプチドを含む。
【0055】
ある実施の形態において、ポリペプチドはファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与する。
【0056】
本発明は更に、本明細書に記載のポリペプチドを1又は2以上含む発現ベクターを含む。
【0057】
本発明は更に、該ベクターを1又は2以上含むリコンビナント原核生物を含む。
【0058】
ある実施の形態において、該生物はActinomyceteである。
【0059】
別の実施の形態においては、ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成するために、該生物が発現ベクターを必要とする。すなわち、本明細書に記載されるように、ポリヌクレオチドで形質転換される前には、該生物にはファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成する能力が欠損している。
【0060】
本発明は更に、(a)ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成することができない原核生物を提供するステップ、(b)本明細書に記載されるように、該原核生物を発現ベクターで形質転換するステップ、及び(c)該原核生物を培養するステップを含み、培養の結果、原核生物においてファルネシルジベンゾジアゼピノンが合成される方法を含む。
【0061】
ある実施の形態において、該原核生物がActinomyceteである。
【0062】
別の実施の形態においては、ベクターが、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、57、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、又は89で表されるポリペプチドを発現する。
【発明の詳細な説明】
【0063】
本発明は、本明細書で「ECO−04601」と称する新規のファルネシルジベンゾジアゼピノンに関する。かかるECO−04601は、Actinomycetesの新規の菌株であるMicroponospora sp.046−ECO11株及び[S01]046株から単離された。これらの微生物は、脂肪酸メチルエステル(FAME)(図17)、6SリボゾームRNA定量法(図18)のようなガスクロマトグラフィーを用いて分析され、Micromonospora属に属することが見出だされた。これらの生物は、それぞれ2003年3月7日、2003年12月23日にカナダ保健省微生物部、カナダ国際寄託当局(IDAC)、 (1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に、それぞれIDACアクセッション番号第070303−01、IDACアクセッション番号第231203−01として寄託された。
【0064】
本発明は更にECO−04601の薬学的に許容される塩及び誘導体、並びに該化合物を得る方法に関する。該化合物を得る1つの方法は、Micromonospora sp.046−ECO11株又はその突然変異株若しくは変異株を、適当なMicromonospora培養条件下で培養する方法であり、好ましくは以下に記載する発酵のプロトコルを使用する方法である。
【0065】
また、本発明は、生物の遺伝子情報を選択的に変更することによって、新規のポリケチド化合物、すなわちファルネシルジベンゾジアゼピノンを生成する方法に関する。更に本発明は、単離され、精製されたポリヌクレオチドを提供する。
該ポリヌクレオチドは、ファルネシルジベンゾジアゼピノンドメイン、すなわちファルネシルジベンゾジアゼピノンを生成する生物のポリペプチド及びそのフラグメント、それらのポリヌクレオチドを含むベクター、並びにこれらのベクターで形質転換された宿主細胞をコードする。これらのポリヌクレオチド及びそのフラグメント、並びに該ポリヌクレオチドを含むベクターを、上述の方法において試薬として使用することができる。本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列の部分は、DNAの増幅のプライマーとして又は他のファルネシルジベンゾジアゼピノンを生成する生物の関連ドメインを同定するためのプローブとしても有用である。
【0066】
本発明は、ECO−04601を含む医薬組成物並びにその薬学的に許容される塩及び誘導体に関する。ECO−04601は、特に癌細胞の増殖、細菌細胞の増殖及び哺乳動物のリポキシゲナーゼの阻害剤としての使用するための薬剤として有用である。本発明は、ECO−04601の生合成経路に関与する、新規のポリヌクレオチド配列及びそれらにコードされるタンパク質に関する。
【0067】
以下の詳細な説明によって、微生物の増殖及び/又は特定の疾患の経路を阻害するための、ECO−04601及び該化合物を含む組成物の作成方法及び使用方法が開示される。
【0068】
したがって、本発明のある実施の形態は、本発明のファルネシル化ジベンゾジアゼピノン化合物を含む医薬組成物と薬学的に許容されるキャリア、細菌の増殖を阻害するための該組成物の使用方法、及び癌、慢性炎症並びに急性炎症を含む疾患を治療するための医薬組成物の使用方法に関する。
【0069】
I.定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の請求の範囲で用いられる、特定の用語及びフレーズを、以下に示す。
【0070】
本明細書に用いるように、「ファルネシルジベンゾジアゼピノン」なる用語は、ファルネシル成分を含むジベンゾジアゼピノン化合物の種類に関する。かかる用語には、本発明の例示された化合物であり、本明細書で「ECO−04601」と称される10−ファルネシル−4、6、8、トリヒドロキシ−ジベンゾジアゼピン−11−オンが含まれるが、これに限定されない。本明細書に用いられるように、「ファルネシルジベンゾジアゼピノン」なる用語は、化学合成において中間生成物として使用可能であるこの種類の化合物を含む。本明細書に用いられるように、「アルキル」なる用語は、直鎖状又は分岐状の炭化水素基に関する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロへキシメチル等が含まれるが、これらに限定されない。アルキルは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、オキソ、グアニジノ、及びホルミルから選択される置換基で任意に置換されてもよい。
【0071】
「アルケニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖状、分岐状、又は環式の炭化水素基に関する。アルケニル基の例には、ビニル、1−プロペン−2−イル、1−ブテン−4−イル、2−ブテン−4−イル、1−ペンテン−5−イル等が含まれるが、これらに限定されない。アルケニルは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、ホルミル、オキソ、及びグアニジノから選択される置換基で任意に置換されてもよい。
【0072】
「シクロアルキル」及び「シクロアルキル環」なる用語は、3から15の環員を有する単式(一重)カルボキシル環系又は縮合カルボキシル環系における飽和炭素環又は部分的な不飽和炭素環に関する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロへキシル、及びシクロヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキルは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される置換基で任意に置換されてもよい。
【0073】
「複素環」及び「複素環系」なる語は、3から15の環員を有する単式(一重)複素環系又は縮合複素環系において、O、N、NH、NR、PO2、S、SO、又はSO2から選択される1から4個のヘテロ原子又はヘテロ基を含む、飽和環又は部分的な不飽和環に関する。複素環又は複素環系の環の例には、モルホリニル、ピペリジニル、及びピロリジニルが含まれるが、これらに限定されない。複素環、複素環系、又は複素環の環は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、オキソ、チオカルボニル、イミノ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される置換基で任意に置換されてもよい。
【0074】
「アミノ酸」なる語は、あらゆる天然アミノ酸に関する。あらゆる天然アミノ酸は、当業者に周知である。
【0075】
「ハロ」なる語は、臭素、塩素、フッ素、及びヨウ素等のハロゲン原子に関する。
【0076】
「アリール」及び「アリール環」なる語は、5から15の環員を有する単式(一重)環系又は縮合環系における芳香族基に関する。アリールの例には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルが含まれるが、これらに限定されない。アリールは、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アジド、アルキチオ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される置換基の1又は2以上で任意に置換されてもよい。
【0077】
「ヘテロアリール」及び「ヘテロアリール環」なる語は、単式(一重)環系又は縮合環系において、5から15の環員を有し、O、N、S、SO及びSO2等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む、芳香基に関する。ヘテロアリール基の例には、ピリジニル、チアゾリル、チアジアゾイル、イソキノリニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾイル、トリアゾリル、及びピロリル基が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、アシル、アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、カルボアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、チオ、チオカルボニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、及びホルミルから選択される1又は2以上の置換基で任意に置換されてもよい。
【0078】
「アラルキル」及び「ヘテロアラルキル」なる語は、ベンジル等のアルキル基を通してそれぞれ直接結合したアリール基又はヘテロアリール基に関する。アラルキル及びヘテロアラルキルは、アリール基又はヘテロアリール基として任意に置換されてもよい。
【0079】
同様に、「アラルケニル」及び「ヘテロアラルケニル」なる語は、ベンジル等のアルケン基を通してそれぞれ直接結合したアリール基又はヘテロアリール基に関する。アラルキル及びヘテロアラルキルは、アリール基及びヘテロアリール基として任意に置換されてもよい。
【0080】
本発明の化合物は、1又は2以上の不斉炭素原子を有することができ、ラセミ化合物又は非ラセミ化合物の混合物を形成する光学異性体として存在することができる。本発明の化合物は、単一の異性体又は立体化学異性体の形の混合物として有用である。ジアステレオ異性体、すなわちスーパーインポーズができない立体化学異性体を、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化、又は昇華等の従来の手段によって分離することができる。従来の方法でラセミ混合物を分解して、該光学異性体を得ることができる。
【0081】
本発明は、単離された又は精製された化合物を含む。「単離された」又は「精製された」化合物は、当業者に周知の従来の生物学的アッセイでテストされた場合に、本発明の化合物を含む混合物が、抗菌作用、細胞分裂停止作用、細胞毒性作用、抗炎症性作用又は酵素阻害作用等の実証可能な(統計的に優位な)生物活性を有するならば、本発明の化合物の少なくとも10%、20%、50%、80%、又は90%が混合物中に存在することを示す化合物に関する。
【0082】
本明細書に用いられる「ファルネシルジベンゾジアゼピノンを生成する微生物」及び「ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生成者」なる語は、ある生物が自然にファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を生成するか否かに関わらず、該化合物を生成するために必要とされる遺伝子情報を保有する微生物に関する。かかる語は、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を生成するための遺伝子情報が、自然環境に存在するように該生物中に見出される生物や、組換え技術によって遺伝子情報が導入されている生物に等しく用いられる。
【0083】
本明細書で予測される特定の生物には、好ましい属がMicromonospora Actinoplanes及びDactylosporangiumであるMicromonosporaceae科の生物、好ましい属がStreptomyces及びKitasatosporaであるStreptomycetaceae科の生物、好ましい属がAmycolatopsis及びSaccharopolysporaであるPseudonocardiaceae科の生物、及び好ましい属がSaccharothrix及びActinosynnemaであるActinosynnemataceaeが含まれるが、これらに限定されない。しかし、これらの語は、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を生成するために必要とされる遺伝子情報を含むあらゆる生物を含むことを意図する。ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物の好ましい生成者には、2003年3月7日、にカナダ保健省、微生物部、カナダ国際寄託当局(IDAC)、(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に、IDACアクセッション番号第070303−01として寄託された、微生物菌株046−ECO11が含まれる。
【0084】
「遺伝子」なる語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味する。遺伝子には、コード領域の前後の領域(リーダー及びトレーラー)、並びに適切であればそれぞれをコードするセグメント(エキソン)の間の介在領域(イントロン)が含まれる。
【0085】
「遺伝子座」、「遺伝子クラスター」、及び「生合成遺伝子座」なる語は、ファルネシルベンゾジアゼピノン化合物の生合成に関与する遺伝子又はその変異体の群に関する。ECO−04601の生成に関する046−ECO11株における生合成遺伝子座は、本明細書及び図に「046D」と称される場合が多い。遺伝子座、遺伝子クラスター、及び生合成遺伝子座の遺伝子改変は、ECO−04601の変異体を作製するために用いることができる、突然変異生成、不活性化又は核酸の置換等の、当技術分野に周知のあらゆる遺伝子組換え技術に関する。
【0086】
「配列をコードする」DNA又は核酸、又は特定のポリペプチド又はタンパク質を「コードする配列」は、適切な制御配列のコントロール下に置かれた場合に、転写され、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳されるDNA配列である。
【0087】
「オリゴヌクレオチド」は、一般的には少なくとも10ヌクレオチド長、好ましくは15ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長の核酸であって、好ましくは100ヌクレオチド長より短く、遺伝子、mRNA、cDNA又は他の所望の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子、若しくはmRNA分子とハイブリダイズすることが可能な核酸に関する。
【0088】
プロモーター配列は、プロモーターで転写を開始し、コード配列をmRNAに転写するRNAポリメラーゼによって認識された、コード配列に「操作可能な状態で結合している」。
【0089】
本明細書に用いる「レプリコン」なる語は、プラスミド、コスミド、染色体又はウイルス等の、細胞内でポリヌクレオチド複製の自立的な単位として機能する、あらゆる遺伝子的要素を意味する。「発現ベクター」又は「ベクター」は、結びついたフラグメントの複製及び/又は発現を引き起こす等のための、別のポリヌクレオチドフラグメントが結びついたレプリコンである。本明細書において、「プラスミド」は、大文字及び/又は番号の前若しくは後に、小文字の「p」で示される。本明細書に開示される開始プラスミドは、市販されていて制限なく公式に入手可能である。或いは、公開された手順に従って入手可能なプラスミドから該開始プラスミドを構築することができる。更に、本明細書に記載されるプラスミドと同等なプラスミドは、当技術分野に周知であり、当業者には明らかとなろう。
【0090】
「発現する」又は「発現」なる語は、遺伝子配列又はDNA配列に含まれる情報を明らかにする、又はその原因となることを意味する。例えば、対応する遺伝子配列やDNA配列の転写や翻訳に関与する細胞の機能を活性化させてタンパク質を生成することを意味する。DNA配列は、細胞に発現する又は細胞によって発現し、タンパク質等の「発現生成物」を形成する。発現生成物自体、例えば結果として生じるタンパク質を、細胞によって「発現された」と称してもよい。発現生成物を、細胞内生成物、細胞外生成物又は分泌生成物として特徴付けることができる。
【0091】
DNAの「分解」は、DNAの特定の配列でのみ作用する制限酵素によるDNAの酵素開裂に関する。本明細書に用いられる様々な制限酵素は、市販されており、使用した反応条件、補助因子、及び他の要件は、通常の当業者に周知でる。分析を目的とする場合は、標準的には、約20μlの緩衝液中、1μgのプラスミド又はDNAフラグメントを約2単位の酵素と共に用いる。プラスミドを構築するためにDNAフラグメントを単離する目的であれば、標準的に、より多くの量の緩衝液中、5から50μgのDNAを20から250単位の酵素で分解する。特定の酵素に適切な緩衝液や基質の量は、製造業者によって特定されている。通常は37℃で約1時間の培養時間を用いるが、製造業者の指示に合わせて変えてもよい。分解後に、ゲル電気泳動を行って、所望のフラグメントを単離してもよい。
【0092】
本明細書に使用される「単離される」なる語は、物質が元の環境(例えば、物質が自然に存在している自然環境)から取り除かれることを意味する。例えば、動物の生体に存在する自然に存在しているポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチド又はポリペプチドでも、自然体系に共存している物質の一部又は全部から分離された場合は単離されている。これらのポリヌクレオチドは、ベクターの一部にもなり得るし、且つ/又は組成物の一部にもなり得る。更に、かかるベクター又は組成物が自然環境の一部ではないところで単離されることもある。
【0093】
本明細書に使用される「制限フラグメント」なる語は、1又は2以上の制限酵素の作用によって作製されるあらゆる直鎖状のDNAに関する。
【0094】
「形質転換」なる用語は、宿主細胞が導入された遺伝子又は配列を発現し、所望の物質を生成するように、外来遺伝子、外来核酸、DNA配列又はRNA配列を宿主細胞に導入することを意味する。所望の物質とは、通常、導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質や酵素である。導入された遺伝子又は配列は、「クローン化された」若しくは「外来の」遺伝子又は配列とも称され、開始、停止、プロモーター、シグナル、分泌等の制限配列又は制御配列、又は細胞の遺伝子の機構によって用いられる他の配列が含まれる。これらの遺伝子又は配列は非機能的配列又は既知の機能を有さない配列を含んでいる。導入されたDNA又はRNAを受け入れて発現する宿主細胞は、「形質転換」され、「形質転換体」又は「クローン」又は「リコンビナント」となる。宿主細胞に導入されたDNA又はRNAは、該宿主細胞と同属又は同種の細胞、又は異属又は異種の細胞を含むあらゆる起源に由来することができる。
【0095】
本明細書に使用される「リコンビナントポリヌクレオチド」及び「リコンビナントポリペプチド」なる語は、自然に結合している以外に、自然にポリヌクレオチド又はポリペプチドに関連しているか結合している、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの全部又は一部と、起源又は操作によって、関連していないポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。
【0096】
本明細書に使用される「宿主細胞」なる語は、本発明に示されるリコンビナントと真核生物の細胞の両方に関する。ある実施の形態においては、かかる宿主細胞は原核生物である。
【0097】
本明細書に使用される「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」なる語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域に関する。該領域は、コードする配列の一部又はコード配列全体を示す場合もある。
【0098】
本明細書に使用されるように、また当技術分野に周知であるように、「同一性」なる語は、配列の比較によって決定される、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係をいう。同一性はまた、ポリヌクレオチド配列のストリング間の一致によって決定される、該ポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。同一性は容易に計算することができる(例えば、Computation Molecular Biology, Lesk, A. M., eds., Oxford University Press, New York (1988)及びBiocomputing:Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York (1993)参照。両文献は参照することによって本明細書に含まれる。)2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定するためには多くの方法があり、かかる用語は当業者には公知である(Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press (1987);及びSequence Analysis Primer, Gribskov., M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991))。配列間の同一性を測定するために一般的に用いられる方法には、例えば、Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math. (1998) 48:1073に開示される方法が含まれる。本明細書に使用されるように、「ほぼ同一な」は、対象となるポリヌクレオチド配列間に非常に高いホモロジー(好ましくは100%の配列同一性)があることを意味する。しかし、90%より高い又は95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを本発明に使用してもよく、したがって遺伝子の突然変異、菌株の多形現象、又は進化による分岐によって起こい得る配列の変異は、許容される。
【0099】
本明細書に使用されるように、「治療」なる語は、疾病、疾病の症状、又は疾病の要因を治療する、治す、軽減する、緩和する、変化させる、癒す、改良する、改善する、又はそれらに影響を及ぼすために、患者に対して治療薬を使用又は投与すること、或いは、疾病又は体の異常、疾病の症状、若しくは疾病の要因等の疾患を有する患者から単離した組織又は細胞株に対して治療薬を使用又は投与することに関する。
【0100】
本明細書に使用されるように、「医薬組成物」は、薬学的に効果的な量のファルネシルジベンゾジアゼピノンと薬学的に許容されるキャリアとを含む。本明細書に使用されるように、「薬学的に効果的な量」、「治療に効果的な量」、又は単に「効果的な量」は、目的とする薬理学的、治療的、又は予防的結果をもたらすために効果的なファルネシルジベンゾジアゼピノンの量に関する。例えば、疾病又は疾患に関連する、測定可能なパラメータが少なくとも25%減少した場合、ある臨床治療が効果的であると考えられるならば、その疾病又は疾患の治療に効果的な薬剤の量は、かかるパラメータを少なくとも25%減少させるために必要な量である。
【0101】
「薬学的に許容されるキャリア」なる語は、治療薬を投与するためのキャリアに関する。これらのキャリアには生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。かかる語には、具体的には細胞培地は含まれない。経口投与される薬剤については、薬学的に許容されるキャリアには、薬学的に許容される不活性の希釈剤、崩壊剤、結合剤、平滑剤、甘味料、着香料、着色料、及び保存料等の賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。適当な不活性の希釈剤には、ナトリウムと炭酸カルシウム、ナトリウムとリン酸カルシウム、及びラクトースが含まれ、適当な崩壊剤には、コーンスターチとアルギン酸とが含まれる。結合剤には、デンプンやゼラチンが含まれていてもよく、平滑剤は、存在するのであれば一般的にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクである。必要であれば、消化管での吸収を遅らせるために、錠剤を、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート等の物質でコーティングしてもよい。
【0102】
「薬学的に許容される塩」なる語は、酸付加塩と基付加塩(base addition salts)との両方に関する。薬学的に許容されるのであれば、塩の性質は重要ではない。代表的な酸付加塩には塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、琥珀酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルタミン酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β−ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸等が含まれるが、これらに限定されない。適切な薬学的に許容される基付加塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から作られた金属塩、又はN,N´−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンアミン、N−メチルグルカミン、リジン、プロカイン等から作られた有機塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の更なる例は、Journal of Pharmaceutical Sciences (1977) 66:2に記載されている。これらの塩はすべて、適当な酸又は基で該化合物を処理することによって、従来の手段でファルネシルジベンゾジアゼピノンから調製してもよい。
【0103】
II.ファルネシル化ジベンゾジアゼピノン化合物
ある実施の形態において、本発明は、本明細書で「ECO−04601」と称され、下記式で表される化学構造を有する、新規のファルネシルジベンゾジアゼピノンに関する。
【0104】
【化6】


【0105】
ECO−04601は、ジベンゾジアゼピノン環の10番目の窒素原子(すなわちジアゼピノン環のアミド窒素)に位置する10のファルネシル置換基を有し、ジベンゾジアゼピノン環の4,6、及び8番目に3つのフェノール性水酸置換基を有する、新規のジベンゾジアゼピノンであると記載される。ECO−04601は、質量、UV、NMR分光分析データ等のいずれの1又は2以上の以下に示す物理化学的特性又は分光特性によって特徴付けられる。質量は、エレクトロスプレー質量分析計で462.6(図1)と測定され、UV=230nm(ショルダー290nm)(図2)と測定された。プロトン(図3)、多次元パルスシーケンスgDQCOSY(図4)、gHSQC(図5)、gHMBC(図6)及びNOESY(図7)を含むMeOH−d4を使用して、NMRデータを回収した。
【0106】
別の実施の形態において、本発明は、式1で表される新規の種類のファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物に関する
【0107】
【化7】

【0108】
(式中、W1、W2及びW3は、それぞれ独立して下記式
【0109】
【化8】



【0110】
から選択されるか、三環の側鎖は、W3、W2又はW1がそれぞれ−CH=O又は−CH2OHであってW3、W2又はW1で終わっていてもよく、
Aは、−NH−、−NCH2R1、−NC(O)R1から選択され、
R1は、C1−6アルキル、C2−6アルケン、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、R5、−C(O)R6から選択され、
R5は、それぞれ独立してC1−6アルキル、C2−7アルカレン、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R6は、それぞれ独立してH、C1−6アルキル、C2−7アルカレン、アリール又はヘテロアリールから選択されるか、それらの薬学的に許容される塩である)。
【0111】
他の実施の形態において、本発明は、AがNH、NCH2R1及びNC(O)R1からなる群から選択され、R2がH、R3がH及びR4がHであることを特徴とする、式1で表される化合物を提供する。別の実施の形態においては、R2、R3及びR4がそれぞれHであり、全ての他の群は前述の通りである。更なる実施の形態においては、R2、R3及びR4がそれぞれHであり、W1が−CH=CH−であり、他の全ての群は前述の通りである。更なる実施の形態においては、R2、R3及びR4がそれぞれHであり、W2が−CH=CH−であり、他の全ての群は前述の通りである。更なる実施の形態においては、R2、R3及びR4がそれぞれHであり、W3が−CH=CH−であり、他の全ての群は前述の通りである。更なる実施の形態においては、AがNHであり、R2、R3及びR4がそれぞれHであり、他の全ての群は前述の通りである。更なる実施の形態においては、AがNHであり、W1、W2、及びW3がそれぞれ−CH=CH−であり、他の全ての群は前述の通りである。本発明には、前述の化合物のあらゆる薬学的に許容される塩が含まれる。
以下は本発明の代表的な化合物である。
【0112】
【化9】

【0113】

【0114】

【0115】


【0116】

【0117】

【0118】

【0119】
ある実施の形態では、式1で表される化合物の1又は2以上を特に含まない。ある実施の形態では、式2で表される化合物を含まない。
以下の第V節に検討するように、本発明の化合物を処方して、式1で表される化合物と薬学的に許容されるキャリアとを備える医薬組成物としてもよい。
【0120】
III.発酵によるファルネシルジベンゾジアゼピノンの作成方法
ある実施の形態において、ECO−04601は、Micromonosporaの新規株、すなわちMicromonospora sp.046−ECO11株を培養することによって得られる。046−ECO11株は、2003年3月7日にカナダ保健省、微生物部、カナダ国際寄託当局(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に、アクセッション番号第070303−01として寄託された。菌株の寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて行われた。寄託株は、取り消すことはできず、制限や条件がない限り、特許が付与される際に公開される。寄託株は単に当業者に便利であるので提供され、米国特許法第112条で求められるように、寄託が実施可能要件に必要とされていることを承認するものではない。
本発明が046−ECO11という特定の株の使用に限定されないことは、理解されるであろう。むしろ、以下の第IV節に記載するように、X線照射、紫外線照射、ナイトロジェンマスタードによる治療、ファージ照射、抗生物質選択等の公知の手段によって、又はリコンビナント遺伝子工学技術の使用することによって046−ECO11から得られる、046−ECO11の突然変異体又は変異体等の他のECO−046011生成生物の使用を意図するものである。
【0121】
本発明のファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物は様々な微生物によって生合成されてもよい。本発明の化合物を生合成する可能性のある微生物には、Actinomycetesとも称されるActinomycetales目の微生物が含まれるが、これに限定されない。Actinomycetes属に属するものの例には、Nocardia、 Geodermatophilus、Actinoplanes、Micromonospora、Nocardioides、Saccharothrix、Amycolatopsis、Kutzneria、Saccharomonopora、Saccharopolyspora、Kitasatospora、Streptomyces、Microbispora、Streptosporangium、及びActinomaduraが含まれるが、これらに限定されない。Actinomycetesの分類法は複雑であり、Goodfellow, Suprageneric Classification of Actinomycetes (1989); Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol. 4 (Williams and Wilkins, Baltimore, pp. 2322-2339);及びEmbley and Stackebrandt, “The molecular phylogeny and systematics of the Actinomycetes,” Annu. Rev. Microbiol. (1994) 48: 257-289を参照する。これらは、本発明の化合物を合成する可能性のある属について、参照することにより本明細書に全体にそれぞれ組み込まれる。
【0122】
ファルネシルジベンゾジアゼピノン生成微生物を、Actinomycetes用の既知の栄養源を含む培地で培養する。これらの培地には、炭素同化源、窒素同化源、任意の無機塩、及び他のpHが約6から9の既知の成長因子が含まれる。適当な培地には、表16に示される成長培地が含まれるが、これらに限定されない。微生物は、約18〜40℃の培養温度で約3〜40日間培養される。
【0123】
ファルネシルジベンゾジアゼピノン生成微生物を播種した培地を、かかる播種した培地を攪拌しながら培養することによって、例えばロータリーシェーカー又はシェーキングウォーターバスで振盪することによって、通気してもよい。培養中、播種した培地に、空気、酸素又は適切な気体混合物を注入することによって、通気を行ってもよい。培養後に、例えば、遠心分離、クロマトグラフィー、吸着、ろ過等の、当業者に周知の及び/又は本明細書に開示される技術を用いて、ファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を抽出し、培養した培地から単離することができる。例えば、培養した培地を、n−ブタノール、酢酸n−ブチル、又は4−メチル−2−ペンタノン等の適当な有機溶剤と混合することができ、例えば溶剤を除去した後に遠心分離を行うことによって、乾燥するまで蒸発させることによって、又は乾燥するまで真空下で蒸発させることによって、有機層を分離することができる。例えば、水、エタノール、エチルアセテート、メタノール又はこれらの混合物で、その結果生じた残基(残留物)を任意に再構成することもでき、へキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、又はこれらの混合物等の適当な有機溶剤によって再抽出することもできる。溶剤を除去した後に、クロマトグラフィー等の標準的な技術を用いて該化合物を更に精製してもよい。
【0124】
微生物によって生合成されたファルネシルジベンゾジアペジノンに、ランダムな及び/又は指示した化学修飾を任意に行い、誘導体又は構造的アナログである化合物を形成してもよい。類似した機能活性を有するこれらの誘導体又は構造的アナログは、本発明の範囲内である。当技術分野で公知の方法及び本明細書に記載された方法を用いて、ファルネシルジベンゾジアペジノン化合物を、任意に修飾してもよい。
【0125】
IV.リコンビナント技術を用いたファルネシルジベンゾジアゼピノンの作成方法
別の実施の形態において、本発明は、ファルネシルベンゾジアゼピノン(farnesyl benzodiazepinone)の生成に有用なタンパク質をコードする、核酸分子に関する。特に、本発明はリコンビナントDNAベクター及び046−ECO11株の生合成遺伝子座の全部又は一部をコードする核酸分子を提供する。該生合成遺伝子座はECO−04601の生成に関し、本明細書では「046D」と称される。本発明は更に、ECO−04601の化学的変異体を生成するために、突然変異生成、不活性化、又は核酸の置換え等の従来の遺伝子組換え技術を用いる046Dの遺伝子改変を含む。
【0126】
このように、本発明は、1又は2以上の本発明のポリペプチドをコードするリコンビナントDNAベクターを含む形質転換宿主細胞を用いて、ファルネシルベンゾジアゼピノンが生成される条件下で宿主細胞を培養する、ファルネシルベンゾジアゼピノン化合物を作成する方法を提供する。宿主細胞は原核生物である。ある実施の形態においては、宿主細胞はActinomycetesである。別の実施の形態では、宿主細胞はStreptomyces宿主細胞である。
【0127】
本発明は、化学的な手順だけでは容易に合成することができない様々なファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を生成するリコンビナント核酸を提供する。本発明によって、本発明によってファルネシルベンゾジアゼピノンの生合成に関与する酵素の遺伝子工学を通して、生合成遺伝子座046Dの直接操作が可能となる。生合成遺伝子座046Aを実施例11に記載する。
【0128】
リコンビナントDNAベクター
本発明のベクターは一般的に、外来性DNAを挿入された感染性病原体のDNAを含む。DNAのセグメントをDNAの別のセグメントに挿入する一般的な方法には、制限部位と呼ばれる特定の部位(特定のヌクレオチド群)でDNAを切断する、制限酵素と呼ばれる特定の酵素の使用が含まれる。「カセット」とは、規定された制限部位でベクターに挿入され得る発現生成物をコードする、DNAをコードする配列又はDNAのセグメントをコードするDNAに関する。カセット制限部位は、適切なリーディングフレームにカセットが確実に挿入するようなっている。一般的に、ファルネシルベンゾジアゼピノンの生成に有用なタンパク質をコードする核酸分子を、ベクターDNAの1又は2以上の制限部位に挿入し、次に形質転換によって、ベクターがActinomycetes等の原核生物に核酸分子を運ぶ(下記参照)。発現ベクター等の、挿入された又は付加されたDNAを有するDNAのセグメント又は配列は、「DNAコンストラクト」とも称される。通常のタイプのベクターは、一般的に二重鎖DNAの内蔵分子である「プラスミド」であり、通常細菌に由来しており、付加された(外来)DNAを容易に受け入れることができ、適当な宿主細胞に容易に導入することができる。プラスミドベクターは、コーディングDNAとプロモーターDNAとを有することが多く、外来DNAの導入に適する制限部位を1又は2以上有する。コーディングDNAは、特定のタンパク質又は酵素について特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。本発明のある実施の形態において、コーディングDNAは、ファルネシルベンゾジアゼピノンの生合成に必要とされる、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87又は89で表されるポリペプチドをコードする。
【0129】
リコンビナントベクターのプロモーターDNAは、コーディングDNAの発現を開始し、制御し、若しくは仲介し、又はコントロールするDNA配列である。プロモーターDNA及びコーディングは、同一の又は異なる生物を形成する。リコンビナントクローニングベクターは、クローニング又は発現のための1又は2以上の複製系、耐抗生物質等の宿主で選択を行うための1又は2以上のマーカー、及び1又は2以上の発現カセットを含む場合が多い。当技術分野の技術の範囲で、従来の分子生物学及びDNA組換え技術を用いて、ベクターのコンストラクトを生成してもよい。これらの技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (本明細書では、「Sabrook et al., 1989」と称す); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985); F. M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1984)参照。Actinomycetes、例えばStreptomycesで機能するプロモーターの例は、米国特許第5,830,695号及び第5,466,590号に教示されている。Actinomycetes発現ベクターに有用な転写プロモーターの例は、tipAであり、これは抗生物質チオストレプトンによって誘導されるプロモーターである(Murakami, T., et al., (1989), J. Bacteriol, 171, 1459参照)。
【0130】
Actinomycetesの形質転換
Actinomycetesを用いた使用に適する形質転換方法には、リゾチームを用いてActinomycetes培養物をスフェロプラストに形成することが含まれる。次に、ベクターを宿主細胞に導入するために、例えば、Thompson 又はKeiser(Thompson, C. J., et al., (1982), J. Bacteriol., 151, 668-677 or Keiser, T. et al. (2000), “Practical Streptomyces Genetics”, The John Innes Foundation, Norwich参照)のいずれかの方法を用いて、リコンビナントDNAベクターとポリエチレングリコールとを含む緩衝液を加える。チオストレプトン耐性遺伝子は、形質転換プラスミドにおいて、選択マーカーとして使用されることが多い(Hopwood, D.A., et al., (1987), “Methods in Enzymology” 153, 116, Aacademic Press, New York参照)が、本発明はこれに限定されない。Actinomycetesの形質転換の他の方法は、米国特許第5,393,665号に教示されている。
【0131】
ファルネシルジベンゾジアゼピノンのアッセイ又は生合成の中間生成物
ファルネシルベンゾジアゼピノン生合成経路で1又は2以上のタンパク質をコードし、したがって、特定の欠陥の遺伝的相補作用によってファルネシルベンゾジアゼピノン生合成を回復する1又は2以上の発現ベクターで、ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成に欠陥のあるActinomycetesを形質転換する。
【0132】
リコンビナントActinomycetesの生合成経路におけるファルネシルジベンゾジアゼピノン又は中間生成物の有無(図13、14及び15参照)を、当業者に周知の手順を用いて決定することができる。例えば、リコンビナントActinomycetesの培養に用いられる発酵培地のエチルアセテート抽出物を、実施例2に記載されるように処理し、ファルネシルジベンゾジアゼピノン又は中間生成物を含みフラクションを、市販のKieselgel 60F254プレートでTLCによって検出する。紫外線下で乾燥プレートを検査することによって、又はエタノール中にバニリン(0.75%)と濃縮した硫酸(1.5%、v/v)とを含有するスプレーをプレートに噴霧し、続いてプレートを加熱することによって、ファルネシルジベンゾジアゼピノン及び中間生成物の化合物を視覚化する。次に、TLCによって分離された化合物の正確な性質をガスクロマトグラフィー−質量分析法を用いて測定する。質量分析法は公開された米国特許出願第2003/0052268号に教示されている。
【0133】
突然変異誘発
本発明によって、本発明のファルネシルベンゾジアゼピノンの生合成に関与する酵素の遺伝子工学により、生合成遺伝子座046Dを直接的に操作することが可能となる。
【0134】
当技術分野では、本発明のDNA配列のランダムな突然変異、又は標的突然変異を可能とする多くの方法が公知である(例えば、Ausubel et. al. Short Protocols in Molecular Biology (1995) 3rdEd. John Wiley & Sons, Inc.参照)。更に、従来の方法とPCRに基づく方法とを含む、部位特異的突然変異誘発の多くの市販のキットがある。いずれもStratagene社から入手可能なEXSITETMPCR-Based Site-directed Mutagenesis Kit (Catalog No. 200502)、QUIKCHANGETM Site-directed mutagenesis Kit (Catalog No. 200518)、及びCHAMELEON(R) double-stranded Site-directed mutagenesis kit (Catalog No. 200509)が、例として挙げられる。
【0135】
また、本発明のヌクレオチドを、当業者に公知の手順に従い、挿入突然変異、又は切断突然変異(N末端、内部、又はC末端)によって作製してもよい。
当技術分野に公知の従来の部位特異的突然変異誘発方法は、配列のサブクローニングを行って、M13バクテリオファージベクター等のベクターに変異させることによる。この結果、1本鎖DNAテンプレートの単離が可能となる。これらの方法においては、突然変異誘発プライマー(すなわち、突然変異を起こす部位をアニーリングできるが、突然変異を起こす部位に1又は2以上のマッチしないヌクレオチドを有することができるプライマー)を、一重鎖テンプレートにアニ−リングして、次に突然変異誘発プライマーの3´末端から始まるテンプレートの補体を重合する。この結果生じる二本鎖を宿主細菌に形質転換し、目的とする突然変異について、プラークをスクリーニングする。
【0136】
最近は、部位特異的突然変異誘発にPCR法が使用される。この方法は、一重鎖テンプレートを必要としないという利点を有している。更に、サブクローニングを必要としない方法が開発されている。PCR基づく部位特異的遺伝子突然変異誘発が行われる場合には、検討しなくてはならない問題がいくつかある。第一に、これらの方法においては、ポリメラ−ゼによって導入される好ましくない突然変異が増大するのを防ぐために、PCRサイクルの回数を減らすことが望ましい。第二に、反応中に残留する非突然変異親分子の数を減らすために、選択を行わなくてはならない。第三に、PCRプライマーセットを使用可能にするためには、伸長PCR法(an extended-length PCR method)が好ましい。第四に、末端伸長活性は熱安定性ポリメラ−ゼのテンプレートに依存しないので、PCR作製突然変異生成物の平滑末端ライゲーションの前に、エンドポリッシングステップを手続に組み込むことが必要とされる場合が多い。
【0137】
後述のプロトコルは、下記のステップを通してこれらの問題に対応する。第一に、使用されるテンプレートの濃度は、従来のPCR反応に使用される濃度の約1000倍であるので、生成量を劇的に減少させることなく、サイクル数を25〜30から5〜10に減らすことができる。第二に、最も一般的なE.coliDam株がそのDNAを配列5−GATC−3でメチル化するので、制限エンドヌクレア−ゼDpnI(認知ターゲット配列:A残基がメチル化された5−Gm6ATC−3)を使用して親DNAを選択する。第三に、長い(すなわち全プラスミドの長さ)PCR生成物の割合を増加するために、PCRmixでTaq Extenderを使用する。最後に、T4DNAリガーゼを用いた分子内でのリゲーションの前に、PfuDNAポリメラ−ゼを使用して、PCR生成物の末端をポリッシュする。
【0138】
突然変異ポリヌクレオチドの単離の例を、下記に詳細に記載するが、これに限定されない。
【0139】
1×突然変異誘発緩衝液(トリス塩酸20mM、pH7.5;MgCl2 8mM;BSA40g/ml)、各プライマー12〜20pM(当業者であれば、必要に応じて、オリゴヌクレオチドプライマーのアニ−リングの特徴に影響を与える、塩基組成、プライマーの長さ及び目的とする緩衝液の塩濃度等の因子を考慮に入れて、突然変異誘発プライマーをデザインすることができるであろう。プライマーは目的とする変異を含んでいなくてはならず、プライマー(同一又は他の)は後のリゲーションを容易にするために、5´リン酸塩を含んでいなくてはならない)、各dNTP250M、TagDNAポリメラ−ゼ2.5U、及びTaq Extender2.5U(Stratageneより入手可能:Nelson et al. (1994) Strategies 7: 27、及び米国特許第5,556,772号参照) を含むPCRカクテルに、プラスミドテンプレートDNA(約0.5pM)を加える。プライマーは、Matteucci et al., 1981, J. Am. Chem. Soc. 103:3185-3191のトリエステル法を使用して調整することができる。かかる方法は、参照することにより本明細書に組み込まれる。或いは、例えば、シアノエチルホスホロアミダイト(cyanoethyl phosphoramidite)化学を用いたBiosearch 8700 DNA Synthesizer での自動合成が好ましい場合もある。
【0140】
PCRサイクルは次のように実施する。94℃で4分、50℃で2分、及び72℃で2分の1サイクル、続いて、94℃で1分、54℃で2分、72℃で1分の5〜10サイクルを行う。親テンプレートDNA、及び突然変異誘発プライマーを含む、PCRで作製された直鎖状のDNAを、Dpnl(10U)及びPfuDNAポリメラ−ゼ(2.5U)で処理する。この結果、インビボでメチル化した親テンプレート及びハイブリッドDNAがDpnl分解され、PfuDNAポリメラ−ゼによって、直鎖状のPCR生成物上で、テンプレートに関しないTagDNAポリメラ−ゼ延長塩基が除去される。かかる反応は37℃で30分培養され、更に30分間で72℃に移行する。0.5mMのATPを含む突然変異誘発緩衝剤(115ul×1)を、Dpnl分解PfuDNAポリメラ−ゼ研磨PCR生成物に加える。溶液を混合し、10ulを取り除き新しい微量遠心管に移し、T4DNAリガーゼ(2〜4U)を加える。リゲーションを37℃で約60分より長く培養する。最後に、標準方法に従って、処理済の溶液をコンピテントE.coliに形質転換する。
【0141】
当該技術分野には、ランダムな突然変異誘発方法が存在するが、この結果、1又は2以上のランダムな状態にある突然変異のパネルが生じる。このような突然変異体のパネルは、次に、野生型ポリメラ−ゼと比較して、減少したウラシル検出能を示す突然変異体を(例えば、dUTP200M存在下、所定のDNAポリメラーゼに最適な温度で、10nMのdNTPのポリマー型への取込みを30分間測定することによって)スクリーニングしてもよい。ランダムな突然変異誘発方法の例は、いわゆる「変異性PCR法」である。その名が示すように、かかる方法は、DNAポリメラーゼが高フィデリティーの取込みを支持しない条件下で、所定の配列を増幅する。異なるDNAポリメラーゼの変異性取込みを促進する条件は変化するが、当業者であれば、所定の酵素のための条件を決定できるであろう。増幅のフィデリティーにおける多くのDNAポリメラーゼの基本変数は、例えば、緩衝液中の二価金属イオンの種類と濃度である。ポリメラーゼの誤差率に影響を与えるために、マンガンイオン及び/又はマグネシウムイオン若しくはマンガンイオン濃度の変動を使用してもよい。
【0142】
突然変異誘発によって作製される所望の突然変異ポリペプチドの遺伝子を、突然変異の部位と数を同定するためにシーケンスしてもよい。1又は2以上の突然変異を有するこれらの突然変異体について、特定の突然変異体が有する他の変異から単離する際に、同定された突然変異を野生型遺伝子に部位特異的突然変異誘発で導入することによって、所定の突然変異の影響を評価してもよい。このように生成された一重突然変異体のスクリーニングアッセイによって、突然変異体単独の影響を測定することができる。
【0143】
V.ECO−04601生成のための遺伝子及びタンパク質
下記により詳細に記載するように、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89の1つで表される単離し、精製し、又は濃縮した、核酸を使用して、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうち1つをそれぞれ調製してもよいし、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうち1つの、少なくとも50、75、100、200、300、500又はそれ以上の連続したアミノ酸を含むフラグメントを調製してもよい。
【0144】
したがって、本発明の別の実施の形態は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、46、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86及び88で表されるポリペプチドのうち1つをコードする、単離し、精製し、又は濃縮した核酸、若しくは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1つの、少なくとも50、75、100、150、200、300以上の連続したアミノ酸を含むフラグメントである。遺伝コードの重複性や縮重の結果、これらの核酸のコード配列は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される核酸の1つのコード配列の1つ又はそのフラグメントと一致してもよく、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1つをコードするコード配列、又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1つの、少なくとも50、75、100、150、200、300の連続したアミノ酸を含むフラグメントと異なっていてもよい。遺伝コードは、当業者に公知であり、例えば、Stryer, Biochemistry 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkから入手することができる。
【0145】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1つをコードする、単離し、精製し、又は濃縮した核酸には、(1)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表されるコード配列のうち1つのコード配列のみ、(2)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89のコード配列、並びにリーダー配列又はプロタンパク質等の他のコード配列、及び(3)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表されるコード配列、並びにコード配列の5´及び/又は3´等の非コード配列が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に使用されるように、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」なる語は、ポリペプチドのコード配列だけを含むポリヌクレオチドと、他のコード配列及び/又は非コード配列を含むポリヌクレオチドとを含む。
【0146】
本発明は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される配列に基づくポリヌクレオチドに関するが、ポリヌクレオチドが、例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表されるポリヌクレオチドによってコードされる、アミノ酸配列を変えない、「サイレントな」変化を起こしている。また、本発明は、ヌクレオチドが変化した結果、アミノ酸で、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの置換、付加、欠失、融合又は切断が生じている、ポリヌクレオチドに関する。このようなヌクレオチドの変化は、部位特異的突然変異、ランダムな化学的突然変異誘発法、エキソヌクレアーゼIII欠損、及び他のDNA組換え技術のような技術を用いて導入されてもよい。
【0147】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される、単離し、精製し、又は濃縮した核酸、その相補配列、又は配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される配列のうちの1つの、少なくとも100、150、200、300、400又はそれ以上の連続した塩基を含むフラグメント、又はその相補配列を、プローブとして使用し、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドをそれぞれコードするDNAを特に同定し、単離してもよい。このような手順において、サンプルの微生物又はファルネシルジベンゾジアゼピノンを生成することができる微生物を含むサンプルから、ゲノムDNAライブラリを構築する。次に、プローブがその相補的な配列に特異的にハイブリダイズできる条件下で、コード配列又はコード配列のフラグメントを有し、配列2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうちの1つ又はそのフラグメントをコードするプローブと、ゲノムDNAライブラリとを接触させる。好ましい実施例においては、プローブは約10から約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドで、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される核酸に基づいて設計される。次に、プローブにハイブリダイズするゲノムDNAクローンを、検出し、単離する。目的のDNAクローンを調製し、同定する手順は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997;及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 に開示されている。別の実施の形態においては、プローブは配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89に由来する、制限フラグメント又はPCR増幅核酸である。
【0148】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される単離し、精製し、又は濃縮した核酸、その相補配列、若しくは配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される1つの配列の、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500の連続した塩基を含むフラグメント又はその相補配列を、プローブとして使用して、関連する核酸を同定して、単離してもよい。ある実施の形態では、関連する核酸が、潜在的なファルネシルジベンゾジアゼピノン生産者のゲノムDNA(又はcDNA)であってもよい。このような手順において、プローブが関連する配列を特異的にハイブリダイズできる条件下で、潜在的なファルネシルジベンゾジアゼピノン生産者に由来する核酸を含む核酸のサンプルを、プローブに接触させる。核酸のサンプルは、潜在的なファルネシルジベンゾジアゼピノン生産者のゲノムDNA(又はcDNA)ライブラリでよい。プローブの核酸へのハイブリダイゼーションは、上述の方法のいずれかを用いて検出される。
【0149】
ハイブリダイゼーションは、低、中、又は高ストリンジェンシーの条件下で行われる。核酸ハイブリダイゼーションの例としては、固定され、変性した核酸を含むポリマー膜を、始めに、0.9MのNaCl、50mMのNaHPO、pH7.0、50mMのNaEDTA、0.5%SDS、10×デンハート、及び0.5mg/mlのポリリボアデニル酸からなる溶液で、30分間45℃でプレハイブリダイズする。次に、約2×10cpm(特異的活性4〜9×10cpm/ug)の32P末端標識オリゴヌクレオチドプローブを、該溶液に添加する。培養の12〜16時間後に、0.5%SDSを含む1×SET(150mMのNaCl、20mMのトリス塩酸、pH7.8、1mMのNaEDTA)で、30分間室温でかかる膜を洗浄し、続いて新しい1×SETで、Tm−10℃でオリゴヌクレオチドプローブを洗浄する。ここで、Tmは、融解温度である。次に、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するために、オートラジオグラフィックフィルムにかかる膜を曝露する。
【0150】
ゲノムDNA又はcDNA等の、検出可能なプローブにハイブリダイズする核酸を同定するために使用される、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変えることによって、プローブに対して異なるレベルのホモロジーを有する核酸を同定し、単離することができる。プローブの融解温度より低温の様々な温度でハイブリダイゼーションを行うことによって、ストリンジェンシーを変化させてもよい。プローブの融解温度は、次の式を用いて計算することができる。
【0151】
14から70ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドのプローブの融解温度(Tm)の摂氏温度は、次の式を用いて計算することができる。
Tm=81.5+16.6(log[Na+]+0.41(フラクションG+C)−(600/N)。ここで、Nはオリゴヌクレオチドの長さである。
【0152】
ホルムアミドを含む溶液中でハイブリダイゼーションが行われる場合は、融解温度は次の方程式を用いて計算することができる。
Tm=81.5+16.6(log[Na+]+0.41(フラクションG+C)−(0.63%ホルムアミド)−(600/N)。ここで、Nはプローブの長さである。
6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDS、変性した断片化サケ精子DNA0.1mg/ml又は6×SSC、5×デンハート試薬、0.5%SDS、変性した断片化サケ精子DNA0.1mg/ml、50%ホルムアミド中で、プレハイブリダイゼーションを行ってもよい。SSC及びデンハート溶液の組成は、Sambrook et al., supraに記載されている。
【0153】
上述のハイブリダイゼーション溶液に検出可能なプローブを添加して、ハイブリダイゼーションを行う。該プローブが二重鎖DNAを含む場合は、ハイブリダイゼーション溶液に添加する前に高温で培養し、急激に冷却することによって、変性が行われる。同様に一重鎖プローブを変性して、二次構造の形成又はオリゴマー形成を除く又は減少させることも望ましいであろう。フィルターをハイブリダイゼーション溶液と十分な時間接触させることによって、それらに相補的又は相同的な配列を含むcDNA又はゲノムDNAにプローブがハイブリダイズすることが可能となる。200ヌクレオチド長より長いプローブについては、融解温度より15〜25℃低温でハイブリダイゼーションを行う。オリゴヌクレオチドプローブ等の短いプローブについては、融解温度より5〜10℃低温でハイブリダイゼーションを行ってもよい。好ましくは、短いプローブについては、6×SSCでハイブリダイゼーションを行ってもよい。好ましくは、長いプローブについては、50%ホルムアミドを含む溶液でハイブリダイゼーションを行う。前述のハイブリダイゼーションは全て、高ストリンジェンシーの条件下で実施されるハイブリダイゼーションの例であるとみなす。
【0154】
ハイブリダイゼーションに続き、所望のストリンジェンシーに応じて、フィルターを少なくとも15分間2×SSC、0.1%SDS中、室温以上の温度で洗浄する。その後0.1×SSC、0.5%SDSを用いて、室温で(再度)30分から1時間フィルターを洗浄する。従来のオートラジオグラフィー及び非放射性検出方法によって、プローブにハイブリダイズした核酸を同定する。
【0155】
上述の手順を改良して、プローブの配列に対するホモロジーのレベルが低下した核酸を同定してもよい。例えば、検出可能なプローブに対するホモロジーが低下した核酸を得るために、ストリンジェントがより低い条件を用いてもよい。例えば、Na+濃度が約1Mであるハイブリダイゼーション緩衝液のハイブリダイゼーション温度を68℃から42℃へと5℃ずつ低下させてもよい。ハイブリダイゼーション後、2×SSC、0.5%SDSを用いて、ハイブリダイゼーション温度でフィルターを洗浄してもよい。これらの条件は50℃より高温の「中ストリンジェンシー」条件、50℃より低温の「低ストリンジェンシー」条件であると考えられる。「中ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上述のハイブリダイゼーションが55℃で行われる場合である。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上述のブリダイゼーションが45℃で行われる場合である。
【0156】
或いは、ホルムアミドを含む6×SSC等の緩衝液中、42℃でハイブリダイゼーションを行ってもよい。この場合、プローブに対するホモロジーのレベルが低下したクローンを同定するために、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミドの濃度を、50%から0%に5%ずつ低下させてもよい。ハイブリダイゼーション後に、6×SSC、0.5%SDSを使用し、50℃でフィルターを洗浄してもよい。これらの条件は、ホルムアミドが25%より高い場合は「中ストリンジェンシー」条件、25%より低い場合は「低ストリンジェンシー」条件である。「中ストリンジェンシー」のハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが30%ホルムアミドで実施される場合である。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが10%ホルムアミドで実施される場合である。プローブにハイブリダイズした核酸を、従来のオートラジオグラフィー及び非放射性検出方法によって同定する。
【0157】
前述の方法を用いて、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される配列からなる群から選択される核酸配列に、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、又は少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を単離してよい。単離された核酸配列は、本明細書に記載されたコード配列のうちの1つの配列の自然発生的な対立遺伝子変異体であるコード配列を有していてもよい。このような対立遺伝子変異体は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87、及び89で表される核酸又はこれらの相補配列と比較して、1又は2以上の核酸が置換、欠失、付加されていてもよい。
【0158】
また、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列の1つを有するポリペプチド、又は少なくともその50、75、100、150、200、300の連続したアミノ酸を有するフラグメントに対して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、又は少なくとも70%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸を単離するために、上述の手順を使用してもよい。
【0159】
本発明の別の実施の形態は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列の1つ、又は少なくともその50、75、100、150、200、300の連続したアミノ酸を有するフラグメントを含む、単離された、又は精製されたポリペプチドである。本明細書に記載するように、コードされたポリペプチドを適当な宿主細胞に発現させることができる配列に、コード配列が操作可能な状態で結合するように、ポリペプチドをコードする核酸をベクターに挿入することによって、これらのポリペプチドを得てもよい。例えば、これらの発現ベクターはプロモーター、翻訳開始用のリボソーム結合部位、及び転写終結区を含んでいてもよい。該ベクターはまた、発現レベルを調整するための適当な配列、複製開始点、及び選択可能なマーカーを含んでいてもよい。
【0160】
ポリペプチド又はそのフラグメントを細菌で発現するために適したプロモーターには、E.coli lac又はtrpプロモーター、laclプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPプロモーター、及びラムダPプロモーターや、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)及び酸性ホスファタ−ゼプロモーター等の糖分解酵素をコードするオペロンのプロモーターが含まれる。真菌のプロモーターには、αファクタープロモーターが含まれる。真核生物のプロモーターには、CMV immediate early プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、熱ショックプロモーター、early and late SV40プロモーター、レトロウイルスのLTR、及びマウスメタロチオネイン−Iプロモーターが含まれる。原核生物若しくは真核生物の細胞又はそれらのウイルスにおいて遺伝子の発現をコントロールすることが知られている他のプロモーターを用いてもよい。
【0161】
哺乳動物の発現ベクターは、複製開始点、全ての必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー、及びアクセプター部位、転写終止配列及び5´フランキング非転写配列も備えていてもよい。ある実施の形態では、SV40スプライス部位とポリアデニル化部位由来のDNA配列を使用して、必要とされている非転写遺伝要素を得てもよい。
【0162】
真核生物の細胞でポリペプチド又はそのフラグメントを発現するためのベクターは、発現レベルを向上させるためのエンハンサーを含んでいてもよい。エンハンサーはDNAのシス活性要素であり、通常約10bpから300bpの長さで、プロモーターに作用し、その転写を促進する。複製開始点100bpから270bpの後ろ側SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後ろ側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが、例に含まれる。
【0163】
更に、発現ベクターが、好ましくは1又は2以上の選択可能なマーカー遺伝子を含むため、該ベクターを含む宿主細胞の選択が可能となる。使用される選択可能なマーカーの例としては、ジヒドロ葉酸リダクターゼをコードする遺伝子、真核細胞培養物にネオマイシン耐性を与える遺伝子、E.coli 及びS.cerevisiae TRP1遺伝子にテトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。
【0164】
様々な手順により、適当なDNA配列をベクターに挿入してよい。一般には、DNA配列を挿入断片の分解後のベクターや適当な制限エンドヌクレアーゼを有するベクターの所望の位置に連結する。或いは、PCRによって、適当な制限酵素部位を操作してDNAに挿入する。様々なクローン技術が、Ausbel et al. Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997 and Sambrook et al., Molecualr Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbour Laboratory Press, 1989に開示されている。これらの手順や他の手順は、当業者の範囲内であるとみなされる。
【0165】
ベクターは、例えばプラスミド、ウイルス粒子、又はファージの形であってよい。他のベクターには、染色体や非染色体や合成DNA配列の誘導体、ウイルス、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクター、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、及び仮性狂犬病等のウイルスDNA等が含まれる。原核生物又は真核生物の宿主に用いる様々なクローニングや発現ベクターは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y, (1989) に開示されている。
【0166】
使用される特定の細菌ベクターには、pBR322(ATCC37017)、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)、pGEM1(Promega Biotec, Madison, WI, USA)、pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pD10、phiX174、pBluescriptTM IIKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A (Stratagene)、ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)、pKK232−8及びpCM7等の、周知のクローニングベクターの遺伝要因を含む市販のプラスミドが含まれる。特定の真核生物のベクターには、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL(Pharmacia)が含まれる。しかし、宿主細胞で再製可能且つ安定していれば、他のベクターを使用してもよい。
【0167】
宿主細胞は、原核生物の細胞又は真核生物の細胞を含む、当業者に公知であるいずれの宿主細胞であってよい。適当な宿主の代表例には、E.coli、Streptomyces lividans、Streptomyces griseofuscus、Streptomyces ambofaciens、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium及びPseudomonas属、Streptomyces属、Bacillus属、Staphylococcus属の様々な種等の細菌細胞、酵母等の真菌細胞、Drosophila S2及びSpodoptera Sf9等の昆虫細胞、並びにCHO、COS又はBowes melanoma及びアデノウイルス等の動物細胞が含まれる。適切な宿主を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0168】
エレクトロポレーション形質転換、トランスフェクション、形質導入、ウイルス感染、遺伝子銃、又はTi−媒介遺伝子導入を含む、様々な技術のいずれかを用いて、ベクターを宿主細胞に導入してもよい。適当であれば、プロモーターの活性化、形質転換株の選択、又は本発明の遺伝子の増幅に適するように改良された従来の栄養培地で、組み換えられた宿主細胞を培養することができる。適当な宿主株を形質転換し、宿主株が適切な細胞密度まで成長した後、選択されたプロモーターが適当な手段(例えば、温度の変換又は化学作用による誘発)によって誘発され、細胞を更に1周期培養して、細胞が所望のポリペプチド又はそのフラグメントを生成できるようにしてもよい。
【0169】
通常、細胞は遠心分離によって回収され、物理的又は化学的手段によって破壊される。その結果生じた粗抽出物は、その後の精製のために保持される。凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊又は細胞溶解剤の使用を含むあらゆる従来の方法によって、タンパク質を発現させるために用いられる微生物細胞を破壊することができる。これらの方法は、当業者に周知である。発現したポリペプチド又はそのフラグメントを、硫酸アンモニウム沈澱法又はエタノール沈澱法、酸抽出法、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーを含む方法で、リコンビナント細胞培養物から回復し、精製することができる。必要であれば、ポリペプチドの構成を完成させる際に、タンパク質リフォールディングステップを用いることができる。必要に応じて、最終精製ステップに高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。
【0170】
様々な哺乳動物の細胞培養系を使用して、リコンビナントタンパク質を発現させることもできる。哺乳動物の発現系の例には、サル腎臓繊維芽細胞COS−7株(Gluzman, Cell, 23:175(1981)に記載)、及びC127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞株等のコンパチブルベクター(compatible vector)からタンパク質を発現することができる他の細胞株が含まれる。従来の方法で宿主細胞におけるコンストラクトを使用して、リコンビナント配列によってコードされる遺伝子生成物を生成してもよい。本発明のポリペプチドは、開始メチオニンアミノ酸残基を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0171】
或いは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチド又は少なくともその50、75、100、150、200、又は300の連続したアミノ酸を含むフラグメントを、従来のペプチドシンセサイザーによって合成で生成することができる。別の実施の形態においては、対応する全長ポリペプチドをペプチド合成で生成するために、フラグメント又はポリヌクレオチドの部分を使用してもよい。したがって、全長ポリペプチドを生成するための中間生成物として、フラグメントを用いる。
【0172】
無細胞翻訳系を使用し、ポリペプチド又はそのフラグメントをコードする核酸に操作可能な状態で結合するプロモーターを含むDNAコンストラクトから転写されたmRNAを用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうち1つ、又は少なくともその50、75、100、150、200、若しくは300の連続したアミノ酸を含むフラグメントを生成することができる。ある実施の形態においては、インビトロで転写反応が行われる前に、該DNAコンストラクトが線状化される。次に、転写されたmRNAは、ウサギ網状赤血球抽出物等の適当な無細胞の翻訳抽出物と共に培養され、所望のポリペプチド又はそのフラグメントを生成する。
【0173】
また、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの変異体、又は少なくともその50、75、100、150、200、若しくは300の連続したそのアミノ酸を含むフラグメントに関する。「変異体(variant)」なる語は、これらのポリペプチドの誘導体又はアナログを含む。特に、変異体は、置換、付加、欠失、融合、及び切断の1又2以上によって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドとは、アミノ酸配列が異なっている。かかる置換、付加、欠失、融合、及び切断には、あらゆる組合せがあってよい。
【0174】
変異体は自然発生するか、インビトロで作製される。特に、これらの変異体は、部位特異的突然変異誘発、ランダムな化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIII欠失法、及び標準的なクローニング技術等の遺伝子工学技術を用いて作製される。或いは、化学合成または一時変異(modification)の方法を用いて、これらの変異体、フラグメント、アナログ又は誘導体が作製される。
【0175】
変異体を作製する他の方法も、当業者には公知である。これらには、天然の単離物(natural isolates)から得られた核酸配列を一時変異させ、産業上又は研究用の利用においてこれらの価値を高める特徴を有するポリペプチドをコードする核酸を作製する手順が含まれる。天然の単離物から得られた配列に対して1又は2以上のヌクレオチドの違いを有する多くの変異体の配列を、これらの手順で作製し、特徴付ける。好ましくは、これらのヌクレオチドの違いによって、天然の単離物から核酸によってコードされるポリペプチドに対して、アミノ酸の変化が生じる。
【0176】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの変異体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1又は2以上のアミノ酸残基が、保存された又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換されている変異体である。その置換されたアミノ酸残基は遺伝子コードにコードされてもよく、コードされなくてもよい。
【0177】
保存された置換とは、ポリペプチドの特定のアミノ酸を、同様の特徴を有する別のアミノ酸によって置換したものである。保存された置換として典型的に見られるものは、別の脂肪族アミノ酸によるAla、Val、Leu、及びlle等の脂肪族アミノ酸の置換、ThrによるSerの置換若しくはSerによるThrの置換、他の酸性残基によるAsp又はGlu等の酸性残基の置換、アミド基を有する他の残基によるAsn又はGln等のアミド基を有する残基の置換、他の塩基の残基によるLys又はArg等の塩基の残基の交換、及び他の芳香族残基によるPhe又はTyr等の芳香族残基の置換である。
【0178】
他の変異体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88のポリペプチドで表される1又2以上のアミノ酸残基が、置換基を含む変異体である。更に他の変異体は、ポリペプチドの半減期を増大する化合物(例えば、ポリエチレングリコール)等の他の化合物とポリペプチドとが関連している変異体である。更なる変異体は、付加されたアミノ酸が、リーダー配列、分泌配列、プロタンパク質配列、又はポリペプチドの精製、濃縮、又は安定化を促進する配列等の、ポリペプチドに融合している変異体である。
【0179】
ある実施の形態においては、フラグメント、誘導体、及びアナログが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドとしての、同一の生物学的機能又は活性を保持している。他の実施の形態において、該フラグメント、誘導体、又はアナログには、融合した異種配列が含まれる。この異種配列は、該フラグメント、誘導体、又はアナログから、一部又は全部を酵素で切断可能なポリペプチドの精製、濃縮、検出、安定化、又は分泌を促進する。
【0180】
本発明の別の実施の形態は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうちの1つ、又は少なくともその50、75、100、150、200、若しくは300の連続したアミノ酸を含むフラグメントに対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は95%より高い同一性を有するポリペプチド又はそのフラグメントである。「ほぼ同一な」アミノ酸には、上述のような保存された置換が含まれることは、理解されるであろう。
【0181】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドのうちの1つ、又は少なくともその50、75、100、150、200、若しくは300の連続したアミノ酸を含むフラグメントに対して、ホモロジーを有するポリペプチド又はそのフラグメントを、上述の技術を用いて、これらをコードする核酸を単離することによって得てもよい。
或いは、相同的なポリペプチド又はフラグメントを、生化学的に縮合する又は精製する手順によって得てもよい。相同的なポリペプチド又はフラグメントの候補の配列は、タンパク質分解、ゲル電気泳動、及び/又はマイクロシーケンシングによって決定してもよい。相同的なポリペプチド又はフラグメントの候補の配列を、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドの1つ、又は少なくともその5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、若しくは150の連続したアミノ酸を含むフラグメントと比較することができる。
【0182】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチド、又は少なくともその40、50、75、100、200、若しくは300の連続したアミノ酸を含む本発明のそのフラグメント、誘導体若しくはアナログを、様々な用途に使用してもよい。本明細書の他の箇所に記載したように、例えば、ポリペプチド又はそのフラグメント、誘導体、若しくはアナログを使用して、生化学反応を触媒してもよい。
【0183】
VI.ファルネシルジベンゾジアゼピノンを含む医薬組成物
別の実施の形態において、本発明は、前述の項に記載のファルネシルジベンゾジアゼピノンと、以下に記載の薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物に関する。ファルネシルジベンゾジアゼピノンを含む医薬組成物は、癌、炎症及び細菌感染を含む様々な疾病や疾患の治療に有用である。
【0184】
本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、疾病、特に細菌感染、急性炎症、慢性炎症及び癌の治療又は予防的治療のための、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所的、又は非経口投与用に処方することができる。経口又は非経口投与には、本発明の化合物を従来の医薬的キャリア及び賦形剤と混合して、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエファー等の形で使用することができる。本発明の化合物を含む組成物は、重量の約0.1〜約99.9%、約1〜約98%、約5〜95%、約10〜約80%、又は約15〜60%の活性化合物を含む。
【0185】
本明細書に開示される医薬製剤は、標準的な手順に従って調製され、細菌感染、癌、又は炎症を減少、予防又は除去するために選択される投与量で投与される(Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA; 及び Goodman and Gilman, Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Pergamon Press, New York, NY参照。ヒトの治療に様々な抗菌剤を投与する方法の概要に関して、これらの内容は参照することによって本明細書に組み込まれる。)。放出制御送達システム(カプセル剤等)又は持続放出送達システム(生体侵食性マトリックス(bioerodable matrices)等)を使用して、本発明の組成物を送達することができる。本発明の組成物(好ましくは式I)の投与に適した薬剤送達の遅延放出システムの例は、米国特許第4,452,775号(Kent)、 第5,239,660号(Leonard)、第3,854,480号(Zaffaroni)に記載されている。
【0186】
本出願の薬学的に許容される組成物は、本明細書で集合的に「キャリア」物質と称される、1又は2の非毒性の薬学的に許容されるキャリア及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント及び/又は賦形剤に関連し、必要であれば他の有効成分に関連する、1又は2以上の本発明の化合物を含む。かかる組成物は、コーンスターチ又はゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸等の一般的なキャリア及び賦形剤を含んでもよい。かかる組成物は、クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース、グリコール酸スターチナトリウム(sodium starch glycolate)、及びアルギン酸を含んでもよい。
【0187】
包含可能な錠剤結合剤は、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(プロビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、デンプン及びエチルセルロースである。
【0188】
使用可能な潤滑剤には、マグネシウムステアリン酸又は他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸、シリコン液(silicon fluid)、タルク、ワックス、オイル及びコロイダルシリカが含まれる。
【0189】
ペパーミント、ウインターグリーン油、チェリー着香料等の着香料を使用することもできる。着色料を添加して、外観がより美しい剤形を作成したり、本発明の化合物を含む製品を識別しやすくすることが望ましい。
【0190】
経口用には、錠剤やカプセル剤等の固形剤が特に有用である。持続放出製剤又は腸溶性剤を工夫してもよい。小児又は老人への投与に関しては、懸濁液、シロップ剤及びチュアブル錠が特に適切である。経口投与用としては、医薬組成物は例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁液又は液剤の形を取る。医薬組成物は、好ましくは医薬的に効果的な量の有効成分を含む投与単位の形に作成される。そのような投与単位の例は、錠剤及びカプセル剤である。治療用には、錠剤及びカプセル材は、有効成分に加えて、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、又はトラガカント等の結合剤、リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、コーンスターチ、ソルビトール、又はスクロース等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、又はタルク等の潤滑剤、ポテトスターチ等の錠剤分解物質、着香料、着色料、又は許容される湿潤剤等の、従来のキャリアを含むことができる。経口の液体製剤は、一般的に、水溶液又は油性溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ剤、又はエリキシル剤であり、懸濁剤、乳化剤、非水溶性剤、保存料、着色料、及び着香料等の従来の添加剤を含んでいてもよい。液体製剤の添加剤の例には、アラビアゴム、アーモンド油、エチルアルコール、ヤシ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、硬化食用油、レシチン、メチルセルロース、メチル又はプロピルパラ−ヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトール又はソルビン酸が含まれる。
【0191】
静脈(iv)への使用には、本発明の化合物を一般的に使用されている静脈内輸液のいずれかに溶解又は懸濁し、注射によって投与することができる。静脈内輸液には生理的食塩水又はリンガー溶液が含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
非経口用の剤形は、水性又は非水性の等張滅菌注射用溶液又は懸濁液の形をとることができる。これらの溶液又は懸濁液は、経口投与用の剤形における使用に関して述べた1又は2以上のキャリアを有する滅菌粉体又は微粒子から調製することができる。該化合物を、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーンオイル、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又は様々な緩衝液に溶解することができる。
筋内投与用の調製に関しては、本発明の化合物の滅菌製薬、又は該化合物を形成する適切な可溶性塩を、注射用水(Water-for-Injection (WFI))、生理食塩水又は5%グルコース等の医薬用希釈剤に溶解し、投与することができる。該化合物の適当な不溶性の形態を、オレイン酸エステル等の長鎖脂肪酸のエステル等の水性の基剤又は薬学的に許容される油性の基剤に懸濁した懸濁液として、調製し、投与してもよい。
【0193】
局所的な使用に関しては、本発明の化合物を、皮膚、鼻又はのどの粘膜への塗布に適する形で調製することもできる。また、クリーム、軟膏、液体スプレー若しくは吸入剤、薬用ドロップ、又はのど用塗布剤(throat paints)の形をとることができる。有効成分の表面への浸透を促進するために、これらの局所的な剤形には、更にジメチルスルホキシド(DMSO)等の化合物が含まれる。
【0194】
眼又は耳への使用に関しては、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、ローション、塗付剤、又は粉剤等のような疎水性又は親水性の基剤に処方された、液体又は半流動状の形を呈することができる。
【0195】
直腸の投与に関しては、本発明の化合物を、ココアバター、ワックス、又は他のグリセリド等の従来のキャリアと混合した座薬の形で投与することができる。
【0196】
或いは、本発明の化合物を、送達時に適当な薬学的に許容されるキャリアに溶かすために粉末の形とすることもできる。別の実施の形態においては、該化合物の投与単位の形態を、該化合物又はその塩の溶液が、適切な滅菌された希釈剤に添加され、密封アンプルに入れられた状態とすることができる。
【0197】
1投与単位中の本発明の化合物の量には、少なくとも本発明の1つの活性化合物の治療に効果的な量が含まれるが、これは、投与対象、投与経路、及び投与頻度によって変化する。投与対象とは、プラント(plant)、細胞培養物、又は羊若しくはヒトを含む哺乳動物等の動物をいう。
【0198】
本発明のかかる実施の形態に関して、本明細書に開示された新規組成物を、薬学的に許容されるキャリアに配置し、公知の薬物伝達方法に従って、投与対象(ヒトの対象を含む)に伝達する。一般に、本発明の組成物をインビボで伝達する本発明の方法では、当該分野で認められた薬剤の伝達プロトコルを使用する。その際行われる唯一の実質的なプロトコルの修正は、当該分野で認められたプロトコルに従い本発明の化合物を薬剤で置換することである。
【0199】
同様に、培地で細胞を処理するために、特許を請求している組成物を使用する方法は、例えば細胞培地の細菌汚染を除去する又は細菌汚染のレベルを低下するために、抗菌剤で細胞培地を処理するための当該分野で認められたプロトコルを使用する。その際行われる唯一の実質的な手続きの修正は、当該分野で認められたプロトコルで、使用した薬剤で本発明の化合物を置換することである。
【0200】
本発明の化合物は、細菌感染、前癌状態又は癌疾患、及び急性炎症疾患または慢性炎症疾患を治療する方法を提供する。本明細書に使用されるように、「投与単位」なる語は、望ましい治療反応を誘発する、本発明の化合物の治療に効果的な量に関する。本明細書に使用されるように、「治療に効果的な量」なるフレーズは、細菌感染、炎症疾患、又は前癌状態若しくは癌疾患の発症を予防する、症状を軽減させる、又は進行を停止する、本発明の化合物の量を意味する。「治療する」なる語は、細菌感染、炎症又は前癌状態若しくは癌疾患の発生の予防と、細菌感染、炎症又は前癌状態又は癌疾患のコントロール又は除去とを目的として、治療に効果的な量の本発明の化合物の少なくとも1つを対象に投与することであると定義される。「望ましい治療反応」なる語は、患者の細菌疾患若しくは炎症疾患、又は前癌状態若しくは癌疾患が逆転する、阻害される、又は予防されるように、本発明の化合物で患者を治療することに関する。
【0201】
本発明の化合物を1日に1回又は数回投与することができる。治療計画において数日又は2〜4週間等の長期間にわたる投与が必要となる場合もある。1回の投与量又は全投与量は、病状の種類又は程度、投与対象の年齢及び一般的な健康状態、投与対象の該化合物に対する耐性及び細菌感染若しくは炎症疾患の種類、又は癌の種類によって変わる。
本発明による化合物を、患者又は動物の食事又は飼料に投与してもよい。動物の食餌は、該化合物を添加することができる通常の食餌とすることもできるし、プリミックスに該化合物を添加することもできる。
【0202】
本発明の化合物を、治療を必要とする患者を治療するために、公知の臨床的に承認された抗生物質、炎症剤又は抗癌剤を組み合わせて摂取してもよいし、又はこれらと別々に摂取してもよい。
【0203】
VII. 腫瘍の増殖の阻害方法
別の実施の形態において、本発明は腫瘍の増殖を阻害する方法に関する。本明細書に記載する化合物は、抗腫瘍活性を有することができる。該化合物は、白血病細胞、メラノーマ細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、すい臓癌細胞、卵巣癌細胞、腎臓癌細胞、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、及びグリオーマ細胞等の、哺乳動物の腫瘍細胞に対して有効である。本発明の抗腫瘍方法によって、腫瘍細胞が阻害される。「阻害」なる語は、抗腫瘍方法と共に用いられる場合は、腫瘍細胞の抑制、死滅、静止、又は破壊に関する。抗腫瘍方法によって、腫瘍細胞の侵入活性や関連する転移が好ましく予防される、減少する又は除去される。「効果的な量」なる語は、抗腫瘍方法と共に用いられる場合は、哺乳動物の腫瘍細胞を阻害するために十分な化合物の量に関する。
【0204】
本方法による哺乳動物の腫瘍増殖の阻害を、いくつかの方法で観察することができる。第一に、該化合物を用いてインビトロで増殖した腫瘍細胞を治療し、該化合物を使用せずに培養した同じ細胞と比較して、増殖又は死滅を観察することができる。増殖が休止すること又は例えば10%以上増殖速度が減速(すなわち倍速)することは、腫瘍細胞が阻害されたことを示している。或いは、目的の腫瘍の動物モデルに該化合物を投与することによって、腫瘍細胞の阻害を観察することができる。実験動物腫瘍モデルは当分野に公知であり、本明細書の実施例に記載される。該化合物で治療されていないコントロール動物と比較して、本明細書に記載された化合物を用いて治療した動物において、腫瘍の増殖が休止すること(すなわちそれ以上サイズが大きくならない)又は腫瘍の大きさ(すなわち腫瘍の容積)又は細胞数(例えば、少なくとも10%減少)のいずれかが減少することは、腫瘍増殖が阻害されたことを示している。
【0205】
ヒトでの腫瘍治療の有効性を観察するために、治療の開始前後に腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞価を測定し、腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞価のいずれかがそれ以上成長をしていない場合、又は腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞価が、例えば少なくとも10%以上(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%、すなわち腫瘍が消滅)減少する場合は、治療が効果的であるとみなされる。インビボの腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞価を測定する方法は、腫瘍の種類によって変わり、該方法には、組織学的技術及びフローサイトメトリーだけでなく、例えば、医学画像又は内科的腫瘍学の分野の当業者には公知である様々なイメージング技術(MRI、CAT、PET等)が含まれる。
本発明の抗腫瘍方法に関しては、経口で又は非経口で投与される該化合物の効果的な投与量は一般的に、対象の体重の約5〜約100mg/kgであり、1日の投与量は対象の体重の約15〜約300mg/kgである。
【0206】
VIII. リポキシゲナーゼの阻害方法
別の実施の形態において、本発明は、哺乳動物、特にヒトの患者の罹患状態、特に5−リポキシゲナーゼ系及び/又はロイコトリエンB並びにロイコトリエンC、D、E及びFの合成に起因する炎症を治療する方法も提供する。かかる方法には、効果的な量のECO−04601を患者に投与することが含まれる。肺の異常、炎症、心臓血管の異常、中枢神経系の異常又は皮膚の異常を含む炎症に関する罹患状態を治療又は予防するために、化合物ECO−04601を単独で使用してもよく、他の抗炎症化合物と組み合わせて使用してもよい。更に具体的な疾患には、胃炎、びらん性食道炎、炎症性腸疾患、エタノールによる出血性びらん、肝虚血、虚血性神経細胞障害(ischemic neuronal injury)、有害物質による肝臓、膵臓、腎臓、神経細胞若しくは心筋組織の障害或いは壊死、CCl及びD−ガラクトサミン等の肝臓に有害な物質による(hapatoxic agent)肝実質障害、虚血性腎不全、疾患による肝障害、トラウマ又はストレスによる細胞障害、ぜんそく、多発性硬化症、虚血再潅流、水腫、関節リウマチ、ウイルス性脳炎、細菌性肺炎、神経変性、アルツハイマー病及びグリセロールによる腎不全が含まれる。
【0207】
5−リポキシゲナーゼ系及び/又はロイコトリエンの生合成に関する本発明の方法については、経口で又は非経口で投与されるECO−04601の効果的な投与量は一般的に、対象の体重の約5〜約100mg/kgであり、1日の投与量は対象の体重の約15〜300mg/kgである。
【0208】
リポキシゲナーゼ酵素の阻害は、本明細書の実施例に記載されるように、当分野で公知の方法によって観察される。本明細書に記載される化合物を含まない場合の活性と比較して、酵素活性が少なくとも10%低下することは、リポキシゲナーゼ活性が効果的に阻害されることを示している。
【0209】
本発明による有用なファルネシルジベンゾジアゼピノン化合物を使用して、炎症を軽減又は予防することができる。局所的な急性炎症の顕著な特徴には、熱、発赤、腫れ、痛み及び機能の喪失が含まれる。これらの変化の多くは、血流や血管内径の変化、血管透過性や白血球の浸出(leukocyte exudation)の変化によって誘発される(Robbins et al., “Pathologic Basis of Disease”, 6th Ed., W.B. Saunders Co., Philadelphia, PA)。本発明の有用な化合物を用いて行われる抗炎症療法は、これらの変化のいずれかを追跡することによって、その治療の成功を観察することができる。例えば、腫れの減少(例えば、治療後少なくとも10%減少)、又は報告された痛み(例えば、本疾病に関連して治療前に感じた最もひどい痛みを10、痛みがない場合を0をとする1〜10段階で、患者から報告された痛みが1ポイント以上持続して減少)を使用して、治療の成功を示すことができる。
【0210】
他の測定可能な炎症の特徴には、白血球湿潤と炎症性サイトカインレベルとが含まれる。これらの特徴は、罹患組織の生検によって観察することができる。固定され、着色された組織における白血球湿潤が、治療前の同様の組織における湿潤と比較して10%以上の減少している場合は、治療が効果的であることを示す。同様に、所定の炎症性サイトカインのレベルが、治療前のレベルと比較して10%以上減少している場合も、治療が有効であることを示す。当業者であれば、組織、血液、又は他の液体サンプルの炎症性サイトカインのレベルについて容易に分析することができる。或いは、C反応タンパク質レベル及び赤血球沈澱率等の全身の炎症のインジケーターのレベルを観察することができる。これらによっては薬剤の正常の範囲がそれぞれ確立され、治療開始後に、これらのインジケーターの1又は2以上が異常範囲から正常範囲となる場合、治療は成功したとみなされる。
【0211】
IX. 細菌増殖を阻害する方法
別の実施の形態において、本発明は、治療を必要とする哺乳動物の対象において細菌感染を治療する方法に関する。かかる方法は、本明細書に記載される化合物である、化合物ECO−04601又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグを、治療に効果的な量哺乳動物に投与するステップを含む。
【0212】
別の実施の形態において、本発明は、生体サンプルにおける細菌量を減少させる方法を提供する。かかる方法は、本明細書に記載された化合物であるECO−04601、又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグに、生体サンプルを接触させるステップを含む。本明細書に記載された化合物であるを化合物ECO−04601、又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグに、生体サンプルを接触させた後、少なくとも10%、好ましくは10%より多く、例えば25%、50%、又は100%までも、細菌数が減少する場合、かかる方法は効果的である。
【0213】
細菌量の減少を測定できる程十分な量の、本明細書に記載される化合物であるECO−04601、又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグ、及び薬学的に許容されるキャリアを含む、細菌感染の治療又は予防に有効なこれらの医薬組成物は、本発明の別の実施の形態である。本明細書に用いられる「細菌量の減少を測定できる程十分な」なる語は、阻害剤を含むサンプルと阻害剤を含まないサンプルとの間の細菌数の測定可能な変化を意味する。
【0214】
細菌性生物の抗生物質に対する感受性を増加させる薬剤は公知である。例えば、米国特許第5,523,288号、米国特許第5,783,561号及び米国特許第6,140,306号は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の抗生物質感受性を増加させるために殺菌性/透過性亢進タンパク質(BPI)を用いる方法を記載している。細菌性生物の外膜の透過性を亢進させる薬剤は、Vaara, M. in Microbiological Reviews (1992) pp. 395-411に記載され、グラム陰性菌の感化は、Tsubery, H., et al, in J. Med. Chem. (2000) pp. 3085-3092に記載されている。
【0215】
細菌に感染した対象の治療に関する本発明の方法に関して、経口で又は非経口で投与される本明細書に記載された化合物ECO−04601、又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグの有効な投与量は一般的に、対象の体重の約5〜約100mg/kgであり、1日の投与量は対象の体重の約15〜300mg/kgである。
【0216】
本発明の別の好ましい実施の形態は、上述のように、治療を必要とする哺乳動物において細菌感染を治療する方法に関する。しかし、かかる実施の形態は、抗生物質に対する細菌性生物の感受性を亢進する薬剤を、哺乳動物に投与するステップを更に含む。
【0217】
別の好ましい実施の形態によれば、本発明は、上述のように、生体サンプルにおいて細菌量を減少させる方法を提供する。しかし、かかる実施の形態は、抗生物質に対する細菌性生物の感受性を亢進する薬剤に、生体サンプルを接触させるステップを更に含む。
【0218】
本明細書に記載する化合物である化合物ECO−04601、又は薬学的に許容されるその誘導体若しくはそのプロドラッグに生検サンプルを接触させた後、少なくとも10%、好ましくは10%より多く、例えば25%、50%、75%、又は100%等、細菌数が減少する場合は、細菌量を減少させる方法は効果的である。
【0219】
本発明の医薬組成物及び方法は、一般的に、インビボでの細菌感染のコントロールに有用である。本発明の組成物及び方法でコントロールされる可能性のある細菌性生物の例には、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyrogenes、Enterocuccus facalis、Enterococcus faecium、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter spp., Proteus spp., Pseudomonas aeruginosa、E.coli、Serratia marcesens、Staphylococcus aureus、Coagulase negative Staphylococcus、Haemophilus infuenzae、Bacillus anthracis、Mycroplasma pneumoniae及びStaphylococcus epidermidisが含まれるが、これらに限定されない。したがって、該組成物及び方法は、院内又は院外感染の進行、程度、又は影響をコントロール、治療又は低下させる際に有効である。院内での使用には、尿道管感染、肺炎、手術創感染、菌血症、及び発熱性好中球減少症の患者が含まれるが、これらに限定されない。院外での使用には、尿道管感染、肺炎、前立腺炎、皮膚感染症、軟部組織感染症、及び腹腔内感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
本発明の化合物に加え、本発明の薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグが、上述の疾患を治療又は予防するための組成物に使用されることもある。
【0221】
「薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグ」は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩又は他の誘導体を意味し、これらは受容体に投与される場合に、本発明の化合物又は阻害的な活性代謝生成物若しくはその残基を直接的又は間接的に提供することができる。これらの化合物を哺乳動物に使用する場合に(例えば、経口投与される化合物を、より血液中に吸収されやすくすることによって)、又は親種と比較して、化合物が、生物コンパートメント(例えば、脳又はリンパ系)への親化合物の伝達を亢進する場合に、特に好ましい誘導体又はプロドラッグは、本発明の化合物の生物学的利用率を増加させる誘導体又はプロドラッグである。
【0222】
本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグには、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩及び硫酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。
特別な記載がない限り、明細書及び請求の範囲に使用される分子量、反応条件、IC50等の材料の量又は属性を示す数字はすべて、全ての例において「約」なる語によって修正されることが理解されるであろう。したがって、矛盾する記載がない限り、本明細書及び添付の請求の範囲に示される数値変数は、近似値である。少なくとも、均等論の適用を請求の範囲に限定しようとするのではなく、それぞれの数値変数を、少なくとも通常の四捨五入の技術を適用して、また有効数字の数に照らして解釈しなくてはならない。本発明の広い範囲を示す数値の範囲と数値変数は近似値であるが、実施例、表及び図に示された数値はできるだけ正確に記載されている。あらゆる数値には、実験、試験の測定、統計分析等の変動性から生じる特定のエラーが本質的に含まれている。
【0223】
特別な規定がない限り、本明細書に使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明の属する分野の通常の当業者によって共通して理解されるものと同一の意味を有する。本発明に記載される方法及び材料と同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又はテストに使用することができるが、適当な方法及び材料を下記に記載する。刊行物、特許出願、特許及び本明細書に示される他の引用文献はすべて、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書による。更に、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、これらに限定するためのものではない。
【0224】
実施例
実施例1:生成培養物の調製
特別な記載がない限り、すべての試薬をSigma Chemical社(St. Louis, MO), (Aldrich)から購入した。Micromonospora spp.(IDAC寄託アクセッション番号第070303−01)をISP2アガー(Difco Laboratories, Detroit, MI)のアガープレートに維持した。ポテトデキストリン24g、ビーフ抽出物3g、バクトカジトン5g、グルコース5g、酵母エキス5g、及びCaCO4gからなり、蒸留水を加えて1リットルにした無菌培地25mL(pH7.0)を含む125mLのフラスコに、アガープレートから、表面に増殖したMicromonospora spp.を転移することによって、生成期(production phase)の接種源を調製した。約28℃で約60時間、250rpmに設定した回転式振とう培養機で培養物を培養した。培養後、ポテトデキストリン20g/L、グリセロール20g/L、魚粉10g/L、バクトペプトン5g/L、CaCO2g/L、及び(NHSO2g/Lを含有するpH7.0の無菌産生培地500mLを含む2Lのバッフルフラスコに、培養物10mLを移した。250rpmに設定した回転式振とう培養機で生成培養物を28℃で1週間培養して、発酵ブロスを調製した。
【0225】
実施例2:単離
上述の実施例1に記載したように調製した発酵ブロス500mLに、エチルアセテート500mLを添加した。200rpmのオービタルシェーカーでかかる混合物を30分攪拌し、乳濁液を作成した。遠心分離とデカントによって層を分離した。4〜5gの無水MgSOを有機層に添加し、次にろ過して溶媒を真空で除去した。
【0226】
2Lの発酵物由来のエチルアセテート抽出物とHP−20樹脂(100mL;三菱化成株式会社、日本、東京)とを水(300mL)に混合した。エチルアセテートを真空で除去し、樹脂をブフナー漏斗でろ過し、ろ液を廃棄した。次に吸収されたHP−20樹脂を、125mLの50%アセトニトリルを用いて2回、125mLの75%アセトニトリルで2回、それぞれ水中で洗浄し、次に125mLのアセトニトリルで2回洗浄した。
【0227】
式IIで表される化合物を含むフラクションを乾燥するまで蒸発させ、クロロホルム、シクロヘキサン、メタノール及び水から5:2:10:5の体積比で調製された混合液の上層液5mLに100mgを温浸した。200mLのカートリッジを取り付け、高速向流(HSCC)システム(Kromaton Technologies社製, Angers, France)である二層システムの上層に予め充填したサンプルに、かかるシステムを用いて遠心分配クロマトグラフィーを行った。HSCCは低い移動相で行われ、式IIで表される化合物はカラムの容積の約半分で溶出された。フラクションを回収し、市販のKieselgel60F254プレート上のフラクションのアリコートのTLCによって、式IIで表される化合物を検出した。乾燥したプレートを紫外線下で検査することによって、又はバニリン(0.75%)と濃硫酸(1.5%、v/v)とをエタノール中に含有するスプレー剤をプレートに噴霧し、続いて該プレートを加熱することによって、化合物を視覚化することができた。フラクションは、かなり着色されているものの、非常に純粋な式IIで表される化合物を含有していた。以下の通り、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で淡黄褐色のサンプルを得ることができた。
【0228】
サンプル6mgをアセトニトリルに溶解し、調整用のHPLCカラム(XTerra ODS(10μm)、19×150mm、Waters社製、Milford, MA)に流量9mL/分、UVピーク検出300nmで注入した。表1に示す以下のグラジエントで、アセトニトリル/緩衝液(20mMのNHHCO)でカラムを溶出した。
【0229】
【表1】

【0230】
式IIで表される化合物を含有するフラクションを約11:0分で溶出し、混合し、濃縮し、凍結乾燥し、3.8mgの化合物の収量を得た。
【0231】
代替のプロトコル1
以下の代替のプロトコルにしたがって、式IIで表される化合物を単離した。培養期間の終わりに、実施例1のバッフルフラスコの発酵ブロスを遠心分離し、細菌の菌糸体を含むペレットから上清をデカントした。100mLの100%MeOHを菌糸体のペレットに添加し、サンプルを10分間攪拌し、15分間遠心分離を行った。メタノール上清をデカントし、取っておいた。次に100mLのアセトンを菌糸体のペレットに添加し、10分間攪拌した後、15分間遠心分離を行った。アセトンの上清をデカントし、メタノール上清と混合した。最後に、100mLの20%MeOH/HOを菌糸体のペレットに添加し、10分間攪拌し、15分間遠心分離を行った。アセトンの上清とメタノールの上清にその上清を混合した。
【0232】
混合した上清を水1000mL中のHP−20樹脂400mLに添加し、有機物を真空で除去した。得られたスラリーをブフナー漏斗でろ過し、ろ液を廃棄した。吸収されたHP−20樹脂を、500mLの50%MeOH/HOで2回、500mLの75%MeOH/HOで2回、MeOH500mLで2回、連続して洗浄した。
【0233】
それぞれの洗浄物を別々に回収し、上述のようにTLCによって分析した。式IIで表される化合物を含むこれらのフラクションを、ほぼ乾燥するまで蒸発させ、凍結乾燥した。かかる凍結乾燥物をメタノールに溶解し、調整用のHPLCカラム(XTerra ODS(10μm)、19×150mm、Waters社製、 Milford, MA)に流量9mL/分、紫外線ピーク検出300nmで注入した。
【0234】
表2に示すグラジエントで、アセトニトリル/緩衝液(5mMのNHHCO)でカラムを溶出した。
【0235】
【表2】

【0236】
式IIで表される化合物を含有するフラクションを混合し、濃縮し、凍結乾燥し、約33.7mgの化合物を生じた。
【0237】
代替プロトコル2
実施例1の全ブロス10リットルを等量のエチルアセテートで2度抽出し、2つの抽出物を混合し、乾燥するまで縮合する。乾燥した抽出物を測量し、乾燥抽出物1グラムにつき、100mLのMeOH−HO(2:1、v/v)及び100mLのヘキサンを添加する。かかる混合物を静かによくかき混ぜ、溶解させる。2層を分離し、100mLのヘキサンで水層を洗浄する。2つのへキサン層を混合し、混合したヘキサン溶液を100mLのメタノール:水(2:1、v/v)で洗浄する。メタノール:水の2層を混合し、200mLのEtOAcと400mLの水とで処理する。それらの層を分離し、水層を200mLポーションのEtOAcで更に2回抽出する。EtOAc層を混合し、縮合する。得られた残留物は、上述のHSCC又はHPLCのいずれかを用いた最終的な精製に適している。この抽出プロセスによると、上記に使用され抽出プロトコルと比較して、10倍の精度が得られる。
【0238】
実施例3:式IIで表される化合物の構造の解明
質量分析、UV(紫外吸収)及びNMR(核磁気共鳴)スペクトロスコピーを含む分光分析データから、式IIで表される化合物の構造を導出した。エレクトロスプレー質量分析法によって質量が462.6(図1)、最大紫外線量が230nmでショルダーが290nm(図2)であると測定した。プロトンを含むMeOH−d4に溶解したNMRデータを回収し(図3)、多次元パルスは、gDQCOSY(図4)、gHSQC、(図5)、gHMBC(図6)及びNOESY(図7)をシーケンスしている。
【0239】
ECO−04601の二次元スペクトルにおけるクロスピークの数は、構造を決定する上での手がかりとなる。例えば、gHMBC実験においてファルネシル鎖末端のメチレンのプロトンシグナル4.52ppmとアミドカルボニル炭素170ppmとの間の強いクロスピークによって、ファルネシル鎖をアミド窒素上に配置する。この結論は、4.52ppmの同じメチレンシグナルと、テトラの2つのプロトンのうち1つがベンゼノイド環で置換された6.25ppmの芳香族のプロトンシグナルとの間の、NOESYスペクトラのクロスピークによって立証される。
【0240】
質量分析、UV及びNMRデータに基づき、該化合物の構造が式IIの構造であると決定した。
【0241】
実施例4:抗細菌活性(最小発育阻止濃度の決定)
最小発育阻止濃度(MIC)は、細菌数の99%より多くを阻害する薬剤の最低濃度であると定義される。ブロス微量希釈アッセイ(Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Test for Bacteria That Grow Aerobically; Approved Standard-Fifth Edition. NCCLS document M7-A5 (ISBN 1-56238-394-9). NCCLS, 940 West Valley Road, Suite 1400 Wayne, Pennsylvania 19087-1898 USA)を用いて、 細菌株(Bacillus subtilis−ATCC第23857、Micrococcus luteus−ATCC第9341)に対するECO−04601のMICが決定された。
【0242】
テスト化合物の調製:濃度範囲が3.2mg/mlから0.0625mg/ml(10ポイントより多い2倍連続希釈)であるDMSO中、被験物質ECO−04601を100倍原液として調製する。各被験物質の0.5mgを156.25μlのDMSOに再懸濁して、1回目の希釈液(3.2mg/ml)を調製した。次にかかる原液を2倍減衰によって連続して希釈し、所望の濃度範囲を得る。
【0243】
接種源の調整:ミュラーヒルトン(MH)ブロスで1晩培養した培養物から、各指示株(Bacillus subtilis; Micrococcus luteus)の細胞密度を0.5McFarland単位に0.85%食塩水中で調整し、続いて、適当なアッセイ培地で1/100に更に希釈した(〜1×10細胞/ml)。
【0244】
MICの決定:100倍のECO−04601溶液をMHブロスで50倍に希釈し、96ウェルプレートに分配した。ウェルのカラム1つにつき1被験濃度とし、全体で10カラムである。ウェルの11番目のカラムは1%DMSOを含むMHブロスを含有し、ウェルの12番目のカラムはブロスのみ100μlを含有していた。各指示株の最終的な細胞希釈物50μlを、希釈した薬剤50μl又は培地のみを含有するマイクロプレートのそれぞれの対応するウェルに添加した。アッセイプレートを35℃で24時間培養した。
【0245】
表3に示すように、化合物ECO−04601のMICの結果は、抗細菌効果の範囲を表している。
【0246】
【表3】

【0247】
実施例5:ヒト及び動物の、様々な組織の腫瘍細胞株に対するインビトロ抗癌活性
培養条件:表4に列挙した細胞株を使用して、ヒト及び動物の腫瘍細胞株に対するECO−04601の細胞毒性を特徴付けた。これらの細胞株はマイコプラズマに感染していないことがわかり、10%の熱不活化ウシ胎児血清と1%のペニシリンストレプトマイシンを補充した適当な培地(表4)に、5%のCO下、37℃で維持した。細胞を1週間に2回から3回継代培養した。0.25%トリパンブルーで着色することによって、生存度を調べ、細胞の生存度が95%>であるフラスコだけを今回の研究に使用した。
【0248】
細胞株の増幅とプレーティング:96ウェルのフラットボトムマイクロタイタープレートに腫瘍細胞を播種し(100μLにつき1〜3×10細胞)、10%血清を補充された薬剤を含まない培地で、5%CO下、37℃で16時間、処理の前に培養した。
【0249】
細胞増殖に対する阻害活性の評価:10μg/ml(20μM)から始めて被験物質の6log10倍の濃度で、細胞を96時間培養した。血清を補充した培地で、被験物質の原液(5mg/mL)を予め1/70倍に希釈した。同様に補充した培地で1/10倍に連続して希釈し、他の濃度を得た。pH7.4の4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液10mMを含む新しい培地150μlと培地とを取り替えることによって、96時間後に細胞の生存を評価した。次に、リン酸緩衝液中のpH7.4の3−(4,5−ジメチルチアゾ−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の2.5mg/mLの50μLを添加した。37℃で培養を行ってから3〜4時間後に、培地と可溶性MTTとを除去し、ジメチルスルホキシド200μLを添加し、還元したMTTの沈殿物を溶解し、次にグリシン緩衝液(グリシン0.1M+NaCl0.1M、pH10.5)25μLを添加した。吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて570nmで測定した。細胞増殖の50%を阻害する薬剤の濃度(IC50)として、結果が示された。表4に示したIC50の値は、白血病、メラノーマ、膵臓癌及び乳癌等の様々な腫瘍のタイプに対する、ECO−04601の薬学的に意義ある細胞毒性活性を示している。
【0250】
【表4】

【0251】
実施例6:米国国立癌研究所パネルの様々なヒト腫瘍細胞株に対するインビトロでの抗癌活性
細胞増殖の50%阻害(CI50)を得るために必要なECO−04601濃度を決定するために、ヒト癌細胞株のパネルに対するECO−04601のインビトロでの抗癌活性を測定する研究が、国立癌研究所(国立衛生研究所、Bethesda, Maryland, USA)によって行われた。この独特のスクリーニングの操作には、白血病、メラノーマ、並びに肺癌、結腸癌、脳癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌、及び腎臓癌に代表される50の異なるヒト腫瘍細胞株が用いられる。
【0252】
培養条件及びプレーティング:
5%ウシ胎児血清とLグルタミン2mMとを含むPRMI1640培地で、癌スクリーニングパネルのヒト腫瘍細胞株を培養した。典型的なスクリーニングの実験については、各細胞株の倍加時間に応じて5000から40000細胞/ウェルの濃度で、細胞を100μLの96ウェルマイクロタイタープレートに播種した(表5)。播種後、実験薬を添加する前に、マイクロタイタープレートを5%、空気95%、及び相対湿度100%で24時間、37℃で培養した。24時間後、薬剤添加時(Tz)の各細胞株の細胞数の測定値を示すために、TCAを用いて各細胞株の2つのプレートをインサイチュで固定した。
【0253】
細胞増殖における阻害活性の評価:
ECO−04601は推定純度90+%の凍結乾燥粉末として提供された。該化合物を使用する日まで−20℃で保管した。ECO−04601を所望の最終的な最大テスト濃度の400倍のジメチルスルホキシド中で可溶化した。薬剤添加時に、凍結した濃縮物質のアリコートを解凍し、ゲンタマイシン50μg/mLを含む完全培地で所望の最終的な最大テスト濃度の2倍に希釈した。更に4倍、10倍又は1/2logの連続希釈を行い、全部で5種の薬剤濃度及びコントロールを得た。これらの異なる薬剤希釈液の100μlのアリコートを、既に100μlの培地を含む適当なマイクロタイターウェルに添加した結果、必要な最終的な薬剤濃度を得た(8.0×10−5Mから8.0×10−9M)。
【0254】
薬剤添加に続き、プレートを更に48時間、37℃、CO5%、空気95%、及び相対湿度100%で培養した。接着細胞については、低温のTCA(トリクロロ酢酸)を添加してアッセイを終了した。低温の50%(w/v)TCA50μl(最終濃度、10%TCA)を静かに添加することによって細胞をインサイチュで固定し、60分間4℃で培養した。上清を廃棄し、プレートを水道水で5回洗浄し、空気乾燥した。1%酢酸中の0.4%(w/v)のスルホローダミン(Sulforhodamine) B(SRB)液(100μl)を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間培養した。着色後、1%酢酸で5回洗浄して、結合していない染料を除去し、プレートを空気乾燥した。続いて、結合したステインをtrizma base10mMで可溶化し、自動プレートリーダーを用いて波長515nmで吸光度を読み取った。懸濁細胞に関しては、80%TCA50μl(最終濃度、TCA16%)を静かに添加してウェルの底に定着細胞を固定してアッセイを終了させることを除いて、手順は同じであった。
【0255】
ECO−04601の増殖阻害活性を、従来のIC50値ではなくNCLを使用したGI50値によって測定した。GI50値は、ゼロ時の細胞数の訂正を強調しており、7種の吸光度測定値((ゼロ時(Tz)、コントロールの増殖(C)、及び5つの濃度レベルの薬剤の存在下でのテスト増殖(Ti))を用いて、[(Ti−Tz)/(C−Tz)]×100=−50としてGI50を計算する。これは、薬剤培養中のコントロール細胞における正味タンパク質増加に50%減少をもたらす(SRB染色によって測定)薬剤濃度である。
【0256】
結果:
NCLスクリーニングによって明らかになったように、ECO−04601は、いくつかのタイプの腫瘍に対しては顕著な抗腫瘍活性を示す。スクリーニングの結果を表5に示し、グリオーマに対する活性に関する更に詳細な結果を実施例7(表6)に示す。
【0257】
【表5】

【0258】

【0259】
結果は、NCIのスクリーニングのパネルで分析されたヒトの腫瘍細胞株のほとんどに対して、ECO−04601が効果的であったことを示しており、いくつかのタイプのヒトの癌に対する広い抗癌活性が示唆される。
【0260】
実施例7:グリオーマ細胞株のパネルに対するインビトロでの抗増殖性の研究
表6に示すように、グリオーマ癌細胞株のパネルを用いてECO−04601の抗癌活性を評価し、細胞増殖の50%阻害(IC50)を測定した。
【0261】
培養条件:
表6に列挙した細胞株はマイコプラズマに感染していないと見られ、5%CO下、37℃で、10%熱不活化ウシ胎児血清と1%ペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEM培地(表4)に維持された。細胞を1週間に1度継代培養した。使用の前に、5〜10分間トリプシンで処理することによって、かかる細胞を培養フラスコからカウントし、0.25%トリパンブルー排除法によって、生存度を調べた。細胞の生存度が95%>であるフラスコのみを今回の研究に使用した。
【0262】
細胞株の増幅及びプレーティング:
薬剤を含まず、10%血清を補充した培地100μL中、1ウェルあたり5×10細胞の細胞を、96ウェルのフラットボトムマイクロタイタープレートに播種し、処理の前に37℃で48時間培養した。
【0263】
細胞増殖に対する阻害活性の評価
これらの細胞(トリプリケートウェル(triplicate well)中)を、5.0μg/ml(10μM)から始まる異なる濃度のECO−04601を含有する培地で、96時間培養した。該化合物を、D−MEN又はRPMI培地(又は他の同等な培地)で1%DMSO溶液に使用した。ECO−04601の濃度は、10μM(5.0μg/ml)、1μM(0.50μg/ml)、0.5μM(0.25μg/ml)、0.1μM(0.050μg/ml)、0.5μM(0.025μg/ml)、0.01μM(0.0050μg/ml)、0.001μM(0.00050μg/ml)であった。媒体のみ(培地中、1%DMSO)で処理した細胞をネガティブコントロールとした。増加濃度が4から6のシスプラチン(CDDP)で処理した細胞をポジティブコントロールとした(データ示さず)。各細胞株の増殖率を測定するために、培養前(0時間)及びそれに続く被験化合物による96時間の培養中、培養の光学濃度を測定した。
【0264】
処理の終わりに、pH7.4の4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液10mMを含有する新しい培地150μlと、細胞培地とを取り替えた。次に、PBS中pH7.4の臭化3−(4,5−ジメチルチアゾ−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム2.5mg/mlの50μlを各ウェルに添加し、培養プレートを4時間37℃で培養した。この結果生じた上清を除去し、DMSO200μl、続いてグリシン緩衝液25μl(グリシン0.1M+NaCl0.1M、pH10.5)にホルマザン結晶を溶解した。単一波長分光光度計プレートリーダーを使用して、570nmで各ウェルの光学濃度を読み取った。結果は、細胞増殖を50%阻害する(IC50)薬剤の濃度として示された。各細胞株を少なくとも3回の独立した実験においてテストした。
【0265】
表6に示した結果によって、IV型多形成グリア芽腫の最も悪性型神膠経肉腫を含む異なる脳癌の細胞株に対するECO−04601の活性が確認された。神経膠肉腫はグリア細胞と内皮細胞とが合わさったもので、あらゆる化学療法に耐性を有する。
【0266】
【表6】

【0267】
実施例8:ヒトリポキシゲナーゼ(5−LO)の酵素活性に対する影響
5−リポキシゲナーゼは、アラキドン酸の5−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5−HETE)への酸化的代謝に触媒作用を及す。この初期反応ではロイコトリエンが形成される。リポキシゲナーゼ又はシクロキシゲナーゼの作用によってアラキドン酸から生じたエイコサノイドが、神経変性(アルツハイマー病)、老化及び腫瘍の促進、進行、転移を含む様々な発癌のステップのみならず、急性炎症疾患及び慢性炎症疾患(すなわち、ぜんそく、多発性硬化症、関節リュウマチ、虚血、水腫)に関与することが見い出された。
【0268】
本研究の課題は、ヒト5−LOの酵素活性を阻害することによって、ECO−04601がロイコトリエンの形成を阻止できるかを確認することである。使用した方法は、Carter et al (1991) J.Pharmacol. Exp. Ther. 256(3):929-937及びSafayhi (2000), Planta Medica 66:110-113に基づいており、これらの文献は、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
【0269】
実験計画
フィコール−パーク密度勾配(Ficoll-Paque density gradient)で、ヒト末梢血単核細胞(PMN)を単離した。A23187(最終濃度30μM)を添加してPMNを刺激した。刺激したPMNをHBBS培地で5×10細胞/mLの密度に調節し、媒体コントロール(DMSO)、(最終濃度が0.1、0.5、1、2.5、5、及び10μMの)ECO−04601、及びポジティブコントロールとしての(最終濃度が3、1、0.3、0.1、及び0.03μMの)NDGAで、15分間37℃で培養した。培養後、サンプルをNaOHで中和し、遠心分離を行った。上清のロイコトリエンB4含有量を酵素免疫測定法(EIA)を用いて測定した。
【0270】
結果:
明らかにIC50=0.93μM(ポジティブコントロールNDGAでは0.1μMであるのに対して)であり、図8に示す結果は、ECO−04601がヒト5−LOの活性を阻害したことを示している。したがって抗炎症性が示される。
【0271】
実施例9:グリオーマモデルにおけるインビボでの有効性
本研究の目的は、i.p.ルートで投与されたECO−04601が、C6グリア芽腫細胞を有するマウスにおいて腫瘍の増殖を予防する又は遅らせるかをテストすること、及び効果的な投与計画を決定することである。
【0272】
動物:
体重18〜25gの全部で60匹の6週齢の雌マウス(Mus musculus ヌードマウス)を、処理前7日間にわたって観察した。Ethical guidelines of animal experimentation (Charte du comite d’ethique du CNRS, Juillet 2003)、及びthe English guidelines for the welfare of animals in experimental neoplasia (WORKMAN, P., TWENTYMAN, P., BALKWILL, F., et al. (1998). United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research (UKCCCR) Guidelines for the welfare of animals in experimental neoplasia (Second Edition, July 1997; British Journal of Cancer 77: 1-10) に従って、動物実験を行った。死亡したマウス又は明らかに罹患したマウスは全て速やかに除去し、健康なマウスと取り替えた。罹患したマウスはケージから除去した直後に安楽死させた。温度(23±2℃)、湿度(45±5%)、光周期(明期12時間/暗期12時間)、及び換気での条件のコントロール下、部屋に動物を維持した。水と食餌を供給する設備を備えたポリカーボネートのケージ(5匹/1ケージ)に、動物を収容した。動物の寝床は滅菌したおが屑製とし、一日おきに取り替えた。食餌はケージ上部の金属の蓋の中に置かれ、任意に供給された。加熱殺菌した水道水は任意に供給された。水用のビンにはゴム製のストッパーとストロー管を備えつけた。水用のビンをきれいに洗浄し、滅菌し、週に1度取り替えた。2つの異なる数字を彫ったリングを2つ動物の耳につけて識別した。各ケージに特定のコードのラベルを付けた。
【0273】
腫瘍細胞株:
一連の別の培養及び動物の継代培養を行った後、Premont et al.(Premont J, Benda P, Jard S., [3H] 培養におけるラットグリア細胞によるノルエピネフリン結合。結合とアデニル化シクラーゼ活性化との相互関係の欠如。Biochim Biophys Acta. 1975 Feb 13; 381(2):386-76)によるN-nitrosomethyurea(NMU)によって誘発されたラットグリア腫瘍からC6細胞株のクローンを作成した。
【0274】
細胞を接着性単層(adherent monolayers)として加湿雰囲気下(CO5%、空気95%)37℃で培養した。培地は、L−グルタミン2mM及び10%ウシ胎児血清を補充したDMEMであった。実験に使用するために、10分間トリプシン−ヴェルシンで処理を行って、腫瘍細胞を培養フラスコから分離した。血球計算器で細胞をカウントし、0.25%トリパンブルー排除法でそれらの生存率を調べた。
【0275】
被験物質の調製:
被験物質に関して、次に再構成のために以下の手続きを行った(注射の直前に実施)。媒体は、ベンジルアルコール(1.5%)、エタノール(8.5%)、プロピレングリコール(27%)、PEG400(27%)、ジメチルアセトアミド(6%)、及び水(30%)からなる混合物で構成されていた。始めに、同種の液体を得るために、媒体溶液(vehicle solution)をボルテックスした。ボルテックスした媒体溶液0.6mLを、被験物質(ECO−04601)を含む各バイアルに添加した。1分間ボルテックスしてバイアルを十分に混合し、反転させ、勢いよく振盪した。各動物に注射する前にバイアルを再び混合した。
【0276】
腫瘍細胞の動物への接種
実験は0日(D)に開始した。Dに、0.1mLのDMEM完全培地で、マウスの右後肢上部にC6腫瘍細胞(5×10細胞)の表皮筋肉注射を行った。
【0277】
治療方法及び結果:
始めの一連の実験では、C6細胞の接種から24時間後に処理が開始された。処理日には、100μLの被験物質またはコントール物質をi.p.ルートで各マウスにゆっくり注射した。全ての群について、生理的食塩水で処理したマウス(群1)の腫瘍の大きさが約3cmになるまで(16日頃)、処理を行った。群1のマウスには、生理的等浸透圧溶液で16日間毎日処理を行った。群2のマウスには、媒体溶液で16日間毎日処理を行った。群3のマウスには、10mg/kgのECO−04601で16日間毎日処理を行った。群3のマウスに、30mg/kgのECO−04601で16日間2日に1回、計8回処理を行った。群5のマウスには、30mg/kgのECO−04601で16日間3日に1回、計6回処理を行った。腫瘍が触診可能となった直後に、腫瘍の大きさの測定を開始し(>100mm;接種後11日頃)、カリパスを使用した処理が終了するまで、1日おきに測定した。図7及び図9に示すように、ECO−04601で処理を行った全ての群の腫瘍の大きさの平均値(6匹/群)は、一元配置分散分析(Anova)テストや、それに続く処理群と生理的食塩水群とを比較するノンパラメトリックダネット多重比較テストによって示されるように、顕著に減少した。表7のP値カラムのアスタリスクは、統計的に重要な値を示し、「ns」は、重要ではないことを意味する。
【0278】
【表7】

【0279】
次の一連の実験において、腫瘍が触診可能になった(約100〜200mm)C6細胞の接種後10日目に、処理を開始した。処理は5日間連続して毎日繰り返された。処理日に、100μLのECO−04601を、i.p.ルートで各マウスにゆっくり注射した。群1のマウスには、生理的等浸透圧溶液で毎日処理を行った。群2のマウスには、媒体溶液で毎日処理を行った。群3のマウスには、20mg/kgのECO−04601で毎日処理を行った。群4のマウスに、30mg/kgのECO−04601で毎日処理を行った。生理的食塩水で処理したコントロールマウス(群1)の腫瘍の大きさが約4cmになるまでマウスを処理した。カリパスを使用した処理が終了するまで、腫瘍の大きさを1日おきに測定した。一元配置分散分析(Anova)テストや、それに続く処理群と生理的食塩水群とを比較するノンパラメトリックダネット多重比較テストによって示されるように、図8及び図10に示すように、ECO−04601で処理を行った全ての群の腫瘍の大きさの平均値(6匹/群)は顕著に減少した。表8のP値カラムのアスタリスクは、統計的に重要な値を示し、「ns」は、重要ではないことを意味する。
【0280】
腫瘍切片の組織分析を行ったところ、ECO−04601処理腫瘍とコントロール群との間に明白な形態的変化が示された。ECO−04601(20〜30mg/kg)で処理した腫瘍においては、細胞密度は低下し、残存する腫瘍細胞の核は大きくなり、核濃縮されたように見えたが、媒体で処理したマウスでは、これらの変化は見られなかった(図11)。
【0281】
【表8】

【0282】
実施例10:本発明のECO−04601の変異体の産生
有機化学の標準的なアプローチによって、ECO−04601分子の変異体、例えば、式III〜LIXとして本明細書に同定される変異体を産生することができる。本明細書に記載される化合物を作製し操作するために必要な、官能基、反応性及び一般的なプロトコルを含む有機化学の原則は、例えば”Advanced Organic Chemistry,” 3rd Edition by Jerry March (1985) に記載されており、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる。更に、当業者であれば、特別な記載がなくても、本明細書に記載された合成方法で様々な保護基を使用してもよいことを理解するであろう。本明細書に使用される「保護基」は、多官能化合物の別の反応部位で選択的に反応が行われるように、酸素、硫黄、又は窒素を含む反応基等の1又は2以上の官能基を阻止するために使用される基を意味する。保護基の使用の原則として、特定の官能基の利用可能性及びその使用は、例えばT. H. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, New York (1999)に記載されている。
【0283】
スキーム1;エポキシド変異体。
式IIで表される化合物(ECO−04601)から、過安息香酸、モノペルフタル酸等の多くのエポキシド化試薬(epoxidizing reagent)のいずれか、若しくはより好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタン等の不活性溶媒中のm−クロロ過安息香酸で処理を行って、本発明のエポキシド化合物(例えば、例として式VII〜XIVで表される化合物)を作製する。1分子等量より少し大きいエポキシド化試薬の場合は、モノエポキシドの収量が最大となり、試薬、溶媒、濃度及び反応温度によって、特定のモノエポキシドの形成率が決定されることは、当業者には理解されるであろう。モノエポキシドが鏡像体混合物であり、ジエポキシド及びトリエポキシドをジアステロマーとして作成することができ、反応条件によって生成率が決定されることも理解されるであろう。当業者であれば、ほとんどの反応条件下で、作製物があらゆる可能なエポキシドの混合物となり、これらはクロマトグラフィーの標準的な方法によって分離することを理解するであろう。モノエポキシド、ジエポキシド及びトリエポキシドの産生に関するアプローチの例を下記に示す。
【0284】
A)式IIで表される化合物のエポキシド化による式VII、VIII及びIXで表されるモノエポキシド。
【0285】
【化10】

【0286】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式IIで表される化合物の溶液に、メタ−クロロ過安息酸の1.1等量を添加する。反応物を氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、メタノールに再溶解し、Sephadex LH−20のカラムで液体クロマトグラフィーを行い、非反応性の開始物質、ジエポキシド及びトリエポキシドで汚染されている式VII、VIII及びIXの化合物を主に含有する混合物を単離する。式VII、VIII及びXIXで表される化合物を分離し、実施例2に記載のシステムを使用して式IIで表される化合物をHPLCで精製する。式VII、VIII及びIXで表される各化合物に関して、標準的な実験では、15〜25%の収量が得られる。
B)式IIで表される化合物のジ−エポキシド化による、式X、XI、及びXIIで表される化合物の合成。
【0287】
【化11】

【0288】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式IIで表される化合物の溶液に、メタ−クロロ過安息酸の2.3等量を添加する。反応物を氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、メタノールに再溶解し、Sephadex LH−20のカラムで液体クロマトグラフィーを行い、微量の非反応性の開始物質及びモノエポキシド並びにトリエポキシドをで汚染されている式X、XI及びXIIの化合物を主に含有する混合物を単離する。式X、XI及びXIIで表される化合物を分離し、実施例2に記載のシステムを使用して式IIで表される化合物をHPLCで精製する。標準的な実験では、式X、XI及びXIIの各化合物に関して15〜25%の収量が得られる。
C)式IIで表される化合物のトリ−エポキシド化による、式XIIで表される化合物の合成。
【0289】
【化12】

【0290】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式IIで表される化合物の溶液に、メタ−クロロ過安息酸の3.5等量を添加する。反応物を氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、メタノールに再溶解し、Sephadex LH−20のカラムで液体クロマトグラフィーを行い、式XIIIで表される化合物をジアステロマーの混合物として、80+%の収量で単離する。
【0291】
スキーム2:式IIで表される化合物のN−アセチル化による式IIIで表される化合物の合成。
【0292】
【化13】

【0293】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式IIで表される化合物の溶液に、1.2等量の無水酢酸と2〜3滴のトリエチルアミンとを添加する。反応混合物を室温で1〜2時間静置し、次に反応混合物を減圧下で乾燥するまで蒸発させ、式IIIで表される化合物を極めて純粋な形でほぼ定量的収量で得る。
【0294】
スキーム3:式IIで表される化合物のN−アルキル化による式IV及びVで表される化合物の合成。
【0295】
【化14】

【0296】
テトラクロロエチレンに溶解した式IIで表される化合物の溶液に、1.2等量の適当な臭化アルキル(式IVで表される化合物には臭化ベンジル又は式Vで表される化合物には臭化エチル)を添加する。反応混合物を還流下で1〜2時間加熱し、次に反応混合物を減圧下で乾燥するまで蒸発させ、式VI又はVで表される化合物をそれぞれ極めて純粋な形でほぼ定量的収量で得る。
【0297】
スキーム4:式IIで表される化合物の、触媒を用いた還元による式XL、XLI、及びXLIIで表される化合物の合成。
【0298】
【化15】

【0299】
パラジウム炭素(5%の25mg)を含むエタノール(200ml)中の式IIで表される化合物(462mg)の溶液を、水素雰囲気下水素化装置中で振盪する。反応による水素の取込みを慎重に測定し、水素1mMが消費される時に振盪を停止し、容器を素早く空にし、雰囲気を窒素と交換する。触媒をろ過して除去し、ろ液を濃縮し、非反応性の開始物質や少量の過還元生成物(over reduced product)が混入した式XL、XLI、及びXLIIで表される化合物の未精製混合物を得る。式XL、XLI、及びXLIIで表される化合物を各約100mgを得るために、上記の実施例2に記載したシステムを用いて、HPLC又はHSCCクロマトグラフィーによって目的の生成物を分離し精製してもよい。
【0300】
スキーム5:式IIで表される化合物の、触媒を用いた還元による式XLIII、XLIV、及びXLVで表される化合物の合成。
【0301】
【化16】

【0302】
パラジウム炭素(5%の25mg)を含むエタノール(200ml)中の式IIで表される化合物(462mg)の溶液を、水素雰囲気下水素化装置中で振盪する。反応による水素の取込みを慎重に測定し、水素2mMが消費される時に振盪を停止し、容器を素早く空にし、雰囲気を窒素と交換する。触媒をろ過して除去し、ろ液を濃縮し、少量の非反応性の開始物質や少量の還元中の又は過還元生成物(under and over reduced product)が混入した式XLIII、XLIV、及びXLVで表される化合物の未精製混合物を得る。式XLIII、XLIV、及びXLVで表される化合物を各約100mg得るために、上記の実施例2のシステムを用いて、HPLC又はHSCCクロマトグラフィーによって目的の生成物を分離及び精製してもよい。
【0303】
スキーム6:式IIで表される化合物の、触媒を用いた還元による式XLVIで表される化合物の合成。
【0304】
【化17】

【0305】
パラジウム炭素(5%の25mg)を含むエタノール(200ml)中の式II化合物II(462mg)の溶液を、水素雰囲気下水素化装置中で振盪する。反応による水素の取込みを慎重に測定し、水素3mMが消費される時に振盪を停止し、容器を素早く空にし、雰囲気を窒素と交換する。触媒をろ過して除去し、ろ液を濃縮し、式XLVIで表される化合物の極めて純粋なサンプルを得る。
【0306】
スキーム7:式IIで表される化合物の過アセチル化による式VIで表される化合物の合成。
【0307】
【化18】

【0308】
無水酢酸(5ml)中の式IIで表される化合物(100mg)の溶液をピリジン(250μl)で処理する。反応混合物を一晩室温で静置し、次にトルエン(100mL)で希釈する。かかるトルエン溶液を5%重炭酸ナトリウム水溶液でよく洗浄し、続いて水でよく洗浄し、最後に減圧下で濃縮し、式VIで表される化合物の極めて純粋なサンプルをほぼ定量的収量で得る。
スキーム8:式VIIで表される化合物のエポキシドを開放すること(opening the epoxide)による式LIで表される化合物の合成。
【0309】
【化19】

【0310】
テトラヒドロフラン(50ml)中の式VIIで表される化合物(100mg)の溶液を、1Nの塩酸溶液(5ml)で処理する。反応混合物を室温で一晩攪拌し、トルエン(100ml)で希釈し、続いて水(200ml)で希釈する。トルエン層を分離し、水層を更に100mlのトルエンで抽出する。混合したトルエン層を水(50ml)でもう一度洗浄し、分離し、真空で乾燥し、式LIで表されるビシナルグリコール化合物を得る。
スキーム9:式IIで表される化合物のオゾン分解による式XLVII、XLIX及びLIで表される化合物の合成。
【0311】
【化20】

【0312】
ドライエチルアセテート(200ml)中の式IIで表される化合物(462g)の溶液を、オゾン分解装置で−20℃より低温まで冷却する。酸素を含むオゾンが、オゾン発生率がわかるように予めキャリブレーションされたオゾン発生装置からかかる溶液に流れ込む。主に式XLVIIで表される化合物を得るために、オゾン0.9mMが発生した後オゾン経路を停止する。主に式XLIXで表される化合物を得るために、オゾン2mMが発生した後オゾン経路を停止し、主な生成物として式LIで表される化合物を得るために、オゾン3.3mMを発生させる。
【0313】
オゾン分解が完了する時に、反応混合物を水素化装置に移し、5%パラジウム炭酸カルシウム触媒(0.2g)を、−20℃より低温に維持され、水素化された反応混合物に添加する。水素の取込みが完了する時に、水素雰囲気を窒素と交換し、反応混合物を室温にし、ろ過して触媒を除去し、ろ液を濃縮する。式XLVII、XLIX及びLIで表される化合物を得るために、実施例2に記載されるシステムとHPLC又はHSCCのいずれかとを使用して、オゾンの使用量に応じてクロマトグラフィーで未精製の生成物を精製する。
【0314】
スキーム10:式XLVIIで表される化合物のアルデヒドの還元による式XLVIIIで表される化合物の合成。
【0315】
【化21】

【0316】
イソプロパノール(5ml)中の式XLVIIIで表される化合物(50mg)の溶液を、氷−塩浴で冷却し、ホウ酸ナトリウム(10mg)を添加し、混合物を20分間攪拌する。次に水(20ml)で希釈し、トルエン(10mlポーション)を用いて外界温度で2回抽出する。混合したトルエン抽出物をろ過し、ろ液を濃縮し、式XLVIIで表される化合物を得る。
【0317】
スキーム11:式XLIIで表される化合物のエポキシ化による式XIV及びXVで表される化合物の合成。
【0318】
【化22】

【0319】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式XLIIで表される化合物の溶液に、メタ−クロロ過安息酸の1.1等量を添加する。反応物を氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、メタノールに再溶解し、Sephadex LH−20のカラムで液体クロマトグラフィーを行い、非反応性の開始物質及びジエポキシドが混入している式XIV及びXVの化合物の混合物を主に単離する。式IIで表される化合物の精製について実施例2に記載した方法の1つを使用して、HPLC又はHSCCを用いて、式XIV及びXVで表される化合物を分離し、精製する。典型的な実験では、式XIV及びXVで表される各化合物それぞれについて35〜40%の収量が得られる。
【0320】
スキーム12:式XLで表される化合物のエポキシ化による式XIXで表される化合物の合成。
【0321】
【化23】

【0322】
テトラヒドロフラン(THF)に溶解した式XLで表される化合物の溶液に、メタ−クロロ過安息酸の2.2等量を添加する。反応物を氷浴で冷却し、0℃で1〜2時間攪拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、メタノールに再溶解し、Sephadex LH−20のカラムで液体クロマトグラフィーを行い、極めて純粋な高収量の式XIXで表される化合物を単離する。
【0323】
スキーム13:式IIで表される化合物のエステル化による式XXVI、XXVII及びXXVIIIで表される化合物の合成。
【0324】
【化24】

【0325】
トルエン(9部)テトラヒドロフラン(1部)に溶解し、氷浴で冷却した式IIで表される化合物の溶液に、無水酢酸の1.1等量と三フッ化ホウ素エーテル2滴とを添加する。反応物を氷浴中で低温に維持し、0℃で1〜2時間攪拌する。反応混合物を5%重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ入れて振盪し、トルエン層を除去する。水層をトルエンで再抽出し、混合したトルエン層を濃縮し、非反応性の開始物質及びジアセテートが混入した、式XXVI、XXVII、及びXXVIIIで表される化合物を主に含む混合物を作製する。式IIで表される化合物の精製について実施例2に記載した方法の1つを使用して、HPLC又はHSCCを用いて、式XXVI、XXVII、及びXXVIIIで表される化合物を分離し、精製する。典型的な実験では、式XXVI、XXVII、及びXXVIIIで表される各化合物それぞれについて25〜30%の収量が得られる。
【0326】
スキーム14:式IIで表される化合物のメチル化による式XXXIII、XXXIV及びXXXVで表される化合物の合成
【0327】
【化25】

【0328】
テトラヒドロフラン50(ml)中の式IIで表される化合物(1g)の溶液を、正確に1等量のナトリウムメトキシドで滴定し、30分間室温で静置し、1.2等量の硫酸ジメチルで処理する。該混合物を1時間還流下で過熱し、室温まで冷却し、トルエン(200ml)と水(200ml)との混合物に注ぎ入れる。層を分離し、水層を等量のトルエンで再度抽出する。混合したトルエン層を酢酸溶液1Nで1回洗浄し、未精製の生成物にまで濃縮する。この未精製の生成物は、非反応性の開始物質や少量の過メチル化誘導体(over-methylated derivatives)と共に、式XXXIII、XXXIV、及びXXXVの化合物を主に含む混合物である。実施例2に記載した方法を使用し、HPLC又はHSCCクロマトグラフィーによって、望ましい生成物を分離し、精製し、式XXXIII、XXXIV及びXXXVで表される化合物がそれぞれ約200g得られる。
【0329】
実施例11:式で表される化合物を生成するための遺伝子及びタンパク質
Micromonospora sp.046−ECO11株は、本発明の化合物を生成するために有用な微生物の代表である。2003年3月7日に、カナダ保健省、微生物部、カナダ国際寄託当局(IDAC)、1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に046−ECO11株を寄託した。IDACアクセッション番号は第070303−01である。米国特許第10/232,370号、カナダ国特許第2,352,451号、及びZazopoulos et. al., Nature Biotechnol., 21, 187-190 (2003) に記載されたゲノムのスキャン方法を用いて、式IIで表される化合物を生成するための生合成遺伝子座をMicromonospora sp.046−ECO11株のゲノム中に同定した。
【0330】
生合成遺伝子座は、DNAの約52,400の塩基対に及んでおり、43のタンパク質をコードする。10キロ塩基より長いDNA配列を、遺伝子座の各側で分析し、これらの領域について、一次遺伝子又は式IIで表される化合物の合成に関連していない遺伝子を含んでいるとみなした。図12に示すように、遺伝子座は、連続した塩基対の3つの配列に含まれる。すなわち、配列番号1で表される36,602の連続した塩基対を有し、ORF1〜31(配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、及び63)を含むコンティグ1、配列番号64で表される5,960の連続した塩基対を有し、ORF32〜35(配列番号66、68、70、及び72)を含むコンティグ2、及び配列番号73で表される9,762の塩基対を有し、ORF36〜43(配列番号75、77、79、81、83、85、87、及び89)を含むコンティグ3である。生合成遺伝子座のタンパク質を表す、43のオープンリーディングフレームの順番、相対位置、及び配向を、図12に模式的に示す。図12の上の線は、塩基対のメモリを示す。灰色の横線は、遺伝子座にまたがる3つのDNAコンティグ(配列番号1、64、及び73)を表す。中白の矢印は本生合成遺伝子座の43のオープンリーディングフレームを示す。黒矢印は遺伝子座にまたがる寄託した2つのコスミドクローンを示す。
【0331】
コンティグのヌクレオチド配列及び、Micromonospora sp.046−ECO11株の遺伝子座の推測されるアミノ酸配列を示す配列表を参照することにより、生合成遺伝子座を更に理解することができるであろう。コンティグのヌクレオチド配列は、生合成遺伝子座に見られるように、コンティグ1(配列番号1)がコンティグ2(配列番号64)の5‘末端に近接し、同様にコンティグ3(配列番号73)に近接するように配置されている。ORFは図12に示され、コンティグ1、2、及び3のヌクレオチド配列(配列番号1、64、及び73)から推測されるオープンリーディングフレームを表す配列表を示している。配列表に関して、ORF1(配列番号3)は、配列番号1の2139〜424残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号2は、配列番号3から推測されるポリペプチドを表している。ORF2(配列番号5)は配列番号1の2890〜4959残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号4は、配列番号5から推測されるポリペプチドを表している。ORF3(配列番号7)は、配列番号1の7701〜5014残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号6は、配列番号7から推測されるポリペプチドを表している。ORF4(配列番号9)は、配列番号1の8104〜9192残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号8は、配列番号9から推測されるポリペプチドを表している。ORF5(配列番号11)は、配列番号1の9192〜10256残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号10は、配列番号11から推測されるポリペプチドを表している。ORF6(配列番号13)は、配列番号1の10246〜11286残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号12は、配列番号13から推測されるポリペプチドを表している。ORF7(配列番号15)は、配列番号1の11283〜12392残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号14は、配列番号15から推測されるポリペプチドを表している。ORF8(配列番号17)は、配列番号1の12389〜13471残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号16は、配列番号17から推測されるポリペプチドを表している。ORF9(配列番号19)は、配列番号1の13468〜14523残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号18は、配列番号19から推測されるポリペプチドを表している。ORF10(配列番号21)は、配列番号1の14526〜15701残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号20は、配列番号21から推測されるポリペプチドを表している。ORF11(配列番号23)は、配列番号1の15770〜16642残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号22は、配列番号23から推測されるポリペプチドを表している。ORF12(配列番号25)は、配列番号1の16756〜17868残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号24は、配列番号25から推測されるポリペプチドを表している。ORF13(配列番号27)は、配列番号1の17865〜18527残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号26は、配列番号27から推測されるポリペプチドを表している。ORF14(配列番号29)は、配列番号1の18724〜19119残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号28は、配列番号29から推測されるポリペプチドを表している。ORF15(配列番号31)は、配列番号1の19175〜19639残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号30は、配列番号31から推測されるポリペプチドを表している。ORF16(配列番号33)は、配列番号1の19636〜21621残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号32は、配列番号33から推測されるポリペプチドを表している。ORF17(配列番号35)は、配列番号1の21632〜22021残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号34は、配列番号35から推測されるポリペプチドを表している。ORF18(配列番号37)は、配列番号1の残基22658〜22122に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号36は、配列番号37から推測されるポリペプチドを表している。ORF19(配列番号39)は、配列番号1の24665〜22680残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号38は、配列番号39から推測されるポリペプチドを表している。ORF20(配列番号41)は、配列番号1の24880〜26163残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号40は、配列番号41から推測されるポリペプチドである。ORF21(配列番号43)は、配列番号1の26179〜27003残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号42は、配列番号43から推測されるポリペプチドを表している。ORF22(配列番号45)は、配列番号1の27035〜28138残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号44は、配列番号45から推測されるポリペプチドを表している。ORF23(配列番号47)は、配列番号1の28164〜28925残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号46は、配列番号47から推測されるポリペプチドを表している。ORF24(配列番号49)は、配列番号1の28922〜30238残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号48は、配列番号49から推測されるポリペプチドを表している。ORF25(配列番号51)は、配列番号1の30249〜31439残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号50は、配列番号51から推測されるポリペプチドを表している。ORF26(配列番号53)は、配列番号1の31439〜32224残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号52は、配列番号53から推測されるポリペプチドを表している。ORF27(配列番号55)は、配列番号1の32257〜32931残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号54は、配列番号55から推測されるポリペプチドを表している。ORF28(配列番号57)は、配列番号1の32943〜33644残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号56は、配列番号57から推測されるポリペプチドを表している。ORF29(配列番号59)は、配列番号1の34377〜33637残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号58は、配列番号59から推測されるポリペプチドを表している。ORF30(配列番号61)は、配列番号1の34572〜32907残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号60は、配列番号61から推測されるポリペプチドを表している。ORF31(配列番号63)は、配列番号1の34904〜36583残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号62は、配列番号63から推測されるポリペプチドを表している。ORF32(配列番号66)は、配列番号64の残基23〜1621に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号65は、配列番号66から推測されるポリペプチドを表している。ORF33(配列番号68)は、配列番号64の1702〜2973残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号67は、配列番号68から推測されるポリペプチドを表している。ORF34(配列番号70)は、配列番号64の3248〜4270残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号69は、配列番号70から推測されるポリペプチドを表している。ORF35(配列番号72)は、配列番号64の4452〜5933残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号71は、配列番号72から推測されるポリペプチドを表している。ORF36(配列番号75)は、配列番号73の30〜398残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号74は、配列番号75から推測されるポリペプチドを表している。ORF37(配列番号77)は、配列番号73の395〜1372残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号76は、配列番号77から推測されるポリペプチドを表している。ORF38(配列番号79)は、配列番号73の3388〜1397残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号78は、配列番号79から推測されるポリペプチドを表している。ORF39(配列番号81)は、配列番号73の3565〜5286残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号80は、配列番号81から推測されるポリペプチドを表している。ORF40(配列番号83)は、配列番号73の5283〜7073残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号82は、配列番号83から推測されるポリペプチドを表している。ORF41(配列番号85)は、配列番号73の7108〜8631残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号84は、配列番号85から推測されるポリペプチドを表している。ORF42(配列番号87)は、配列番号73の9371〜8673残基に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号86は、配列番号87から推測されるポリペプチドを表している。ORF43(配列番号89)は、配列番号73の残基9762〜9364に由来するポリヌクレオチドであり、配列番号88は、配列番号89から推測されるポリペプチドを表している。
【0332】
配列表に示されるいくつかのオープンリーディングフレーム、すなわちORF2(配列番号5)、ORF5(配列番号11)、ORF12(配列番号25)、ORF13(配列番号27)、ORF15(配列番号31)、ORF17(配列番号35)、ORF19(配列番号39)、ORF20(配列番号41)、ORF22(配列番号45)、ORF24(配列番号49)、ORF26(配列番号53)、及びORF27(配列番号55)は、標準的な開始コドンATGメチオニンではなく、標準的でない開始コドン(例えば、GTG−バリン又はCTG−ロイシン)で始まる。該ORFの第一コドンの特異性を表すために、アミノ末端位置に適当なM、V又はLアミノ酸を有する、全てのORFを例挙する。しかし、コードする遺伝子が標準的でない開始コドンをコードする場合であっても、細菌でのタンパク質合成はメチオニン(ホルミルメチオニン)で始まる(例えば、Stryer BioChemistry 3rd edition, 1998, W.H. Freeman and Co., New York, pp. 752-754)という、広く容認されている原理を踏まえると、いかなる場合にも、生合成されたタンパク質はそのアミノ末端位置にメチオニン残基、より具体的にはホルミルメチオニン残基を含むことが予想される。
【0333】
ORF32(配列番号65)は不完全であり、アミノ酸10〜20がカルボキシ末端から切断されている。これは、コンティグ2と3との間の配列情報が不完全であるためである(それぞれ配列番号64及び73)。
【0334】
Micromonospora sp.046−ECO11株の式IIで表される化合物の部分的な生合成遺伝子座のコスミドクローン(図12中、それぞれ046KM及び046KQとして示す)をそれぞれ含み、共に式IIで表される化合物を製造するための生合成遺伝子座の全長にまたがるE.coliDH10Bベクターを、2003年2月25日、カナダ保健省微生物部カナダ国際寄託当局(IDAC)(1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada R3E 3R2)に寄託した。046KMと命名されたコスミドクローンを、IDACアクセッション番号第250203−06として寄託し、046KQと命名されたコスミドクローンを、IDACアクセッション番号第250203−07として寄託した。コスミド046KMは、コンティグ1(配列番号1)の1残基〜32,250残基をカバーする。コスミド046KQは、コンティグ1(配列番号1)の21,700残基〜コンティグ3(配列番号73)の9,762残基をカバーする。本明細書の配列の記載のいずれかに抵触する場合には、寄託した菌株に含まれるポリヌクレオチド配列と、それによってコードされるポリペプチドのいずれかのアミノ酸配列とがコントロールする。
【0335】
菌株の寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って行われた。寄託株は、取り消すことはできず、制限や条件がない限り、特許が付与された際に公開される。寄託株は単に当業者に便利であるので提供されるものであって、米国特許法第112条に求められるように寄託が実施可能要件に必要とされていることを認めるものではない。寄託株及び寄託株に由来する化合物を製造、使用、又は販売する場合は、許可が必要であり、本明細書によって付与されるそのような許可はない。
【0336】
式IIで表される化合物を製造するための生合成遺伝子座を形成する遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を同定するために、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.10アルゴリズムを使用して、ORF1〜43の遺伝子生成物、すなわち配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、71、74、76、78、80、82、84、86及び88と、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のノンリダンダントタンパク質データベース(nonredundant protein database)並びに微生物遺伝子、経路及び天然生成物のDECIPHERデータベース(エコピアバイオサイエンスインク、サンローラン、ケベック、カナダ)とを比較した。
【0337】
このBLAST解析でヒットしたGenBankTMのアクセッション番号の上位を、対応するE値と共に表14に示す。E値は、アラインメントスコアが観察されたアラインメントスコアと少なくとも等しい、チャンスアラインメントの予測数値に関する。E値が0.00であれば、完全なホモログであることを示す。E値は、Altschul et al. J. Mol. Biol., 215, 403-410 (1990) に記載されるように計算される。E値は、ホモロジーの推論を証明するために、2つの配列が十分な類似性を示すかどうかを決定する際の裏付けとなる。
【0338】
【表14】

【0339】

【0340】

【0341】
式IIで表される化合物の生合成に関与するタンパク質をコードするORFに、推定した機能を割り当て、既知のタンパク質に類似する配列に基づき、ファミリーの中で共に分類する。構造と機能とを相関させるために、表15に示すように、本明細書及び図面を通して使用する4文字の呼称をタンパク質ファミリーに付ける。4文字の呼称の意味は、次の通りである。AAKDはアミノ酸キナーゼ、ABCA及びABCCはABCトランスポーター、ADSAはアミドシンターゼ、ALDBはアルドラーゼ機能、CSMBはコリスミ酸トランスアミナーゼ、DAHPは3,4−ジデオキシ−4−アミノ−D−アラビノ−ヘプツロソン酸7−リン酸シンターゼ活性、DHBSは2,3−ジヒドロ−2,3−ジヒドロキシ安息香酸シンターゼ活性、DMDAはジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、EFFTは流出タンパク質、HMGAは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAリダクターゼ、HOXVはモノオキシゲナーゼ活性、HOYHはヒドロキシラーゼ/デカルボキシラーゼ活性、HYDKはヒドロラーゼ活性、IDSAはイソペンテニル二リン酸シンターゼ、IPPIはイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ、IPTNはイソプレニルトランスフェラーゼ、KASHは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAシンターゼ、MVKAはメバロン酸キナーゼ、MVPKはホスホメバロン酸キナーゼ、OXAHはアシルCoAオキシダーゼ、OXDSはオキシドリダクターゼ、RECH、RECI、REGD、REGG及びRREBはレギュレーター、SDRAはデヒドロゲナーゼ/ケトリダクターゼ、SPKGは感受性プロテインキナーゼ、UNES、UNEZ、UNFA、UNFC、UNFD、UNFE、UNFJ及びUNIQは未知の機能を持つタンパク質を意味する。
【0342】
【表15】

【0343】

【0344】
式IIで表される化合物の生合成は、その後縮合して最終的な化合物(図15)を形成する、該化合物の3つの構成単位、すなわちファルネシル二リン酸成分(図13)、3−ヒドロキシ−アントラニル酸−アデニレート成分(図14a)、及び2−アミノ−6−ヒドロキシ−ベンゾキノン成分(図14b)を合成する様々な酵素の作用を伴う。
【0345】
ファルネシル−二リン酸生合成は、7つの酵素(図13)の協奏的な作用を伴う。ORF10(KASH)(配列番号20)は、アセトアシル−CoAへのアセチル−CoAのアルドール付加を触媒し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を産生するヒドロキシメチルグルタリル−CoAシンターゼをコードする。この生成物は、その後ORF9(HMGA)(配列番号18)の作用によって還元し、メバロン酸(MVA)を形成する。ORF5(MVKA)(配列番号10)は、リン酸供与体としてATPを使用して、メバロン酸を5´−ホスホメバロン酸にリン酸化する。ファルネシル二リン酸化生合成の次のステップは、5´−ホスホメバロン酸の、5´−ピロホスホメバロン酸(DPMVA)へのリン酸化反応であり、これはORF7(MVKP)(配列番号14)によって触媒される。これに続き、ORF6(DMDA)(配列番号12)によって触媒された5´−ピロホスホメバロン酸の脱カルボキシル化反応の結果、イソペンテニル二リン酸(IPP)が生じる。これは、この後イソメラーゼ酵素活性を有するORF8(IPPI)(配列番号16)の作用によってジメチルアリル二リン酸(DMADP)に変化する。ファルネシル二リン酸生合成の最終ステップは、イソプレニル二リン酸シンターゼORF4(IDSA)(配列番号8)によって触媒されたイソペンテニル二リン酸の2分子でジメチルアリル二リン酸の1分子の縮合を行うことである。記載したファルネシル二リン酸の生合成に関与する経路は、他のActinomycete種において記載された関連するメバロン酸経路(Takagi et al., J Bacteriol. 182, 4153-4157, (2000))と完全に一致している。
【0346】
3−ヒドロキシ−アントラニル酸成分の生合成は、シキミ酸経路に由来する前駆物質の使用を伴う(図14a)。コリスミ酸は、ORF19(CSMB)(配列番号38)の作用によってアミノ基転移し、アミノデオキシイソコリスミ酸を形成する。この酵素はアントラニル酸シンターゼに類似しており、アミノ供与体としてグルタミンを使用して、アミノ基の転移を特異的に触媒するようである。次のステップは、isochorismatase活性を伴い、ORF27(DHBS)(配列番号54)によって媒介される。この反応の意義は、アミノデオキシイソコリスミ酸からピルビン酸側鎖を除去して、6−アミノ−5−ヒドロキシ−シクロヘキサ−1,3−ジエンカルボン酸を形成することにある。次に、該化合物をORF26(SDRA)(配列番号52)の作用によって酸化し、3−ヒドロキシ−アントラニル酸を産生する。ORF24(ADSA)(配列番号48)は、3−ヒドロキシ−アントラニル酸−アデニレート成分を産生するアデニル化によって、3−ヒドロキシ−アントラニル酸の活性化を触媒する(図14a)。
【0347】
式IIで表される化合物の2−アミノ−6−ヒドロキシ−ベンゾキノン成分の生合成は、アミノシキミ酸経路に由来する成分を必要とする。図14bは、この構成成分の生合成に関与する一連の酵素反応について説明している。ORF21(ALDB)(配列番号42)は、2−アミノ−6−ヒドロキシ[1,4]−ベンゾキノンの産生に使用されるアミノシキミ酸の経路の一部であるD−エリトロース−4−リン酸の前駆物質の産生に関与するアルドラーゼに類似している。ORF33(DAHP)(配列番号67)は、ホスホエノールピルビン酸(PEP)及びエリトース4−リン酸(E−4Ph)の3,4−ジデオキシ−4−アミノ−D−アラビノ−ヘプツロソン酸7−リン酸(アミノDAHP)の形成に対応する、アミノシキミ酸経路における最初のステップを触媒する。3−アミノ−5−ヒドロキシ−安息香酸につながる次の反応を、Micromonospora sp.046−ECO11株に存在する一次代謝生合成経路でもたらされる酵素で触媒する。ORF25(HOXV)(配列番号50)は、3−アミノ−5−ヒドロキシ−安息香酸を部位2で水酸化し、3−アミノ−2,5−ジヒドロキシ−安息香酸を産生する。6−アミノ−ベンゼン−1,2,4−トリオールを産生する脱カルボキシル化酸化反応を触媒するORF32(HOYH)(配列番号65)によって、更にこの中間生成物を修飾する。2−アミノ−6−ヒドロキシ−[1,4]−ベンゾキノン(図14b)を産生する最後の酸化反応が、ORF16(OXDS)(配列番号32)によって行われる。
【0348】
結果として式IIで表される化合物となる3つの成分の集合を、ORF24及び11(図15)によって触媒する。ORF24(ADSA)(配列番号48)は、アデニル化3−ヒドロキシ−アントラニル酸と2−アミノ−6−ヒドロキシ[1,4]−ベンゾキノン成分との縮合を触媒する。3−ヒドロキシ−アントラニル酸の遊離アミノ基と2−アミノ−6−ヒドロキシ−[1,4]−ベンゾキノン成分に存在するカルボニル基の1つとの間に自然縮合が発生し、ジベンゾジアゼピノン中間生成物が生じる。この化合物を、ORF11(IPTN)(配列番号22)で触媒されたジベンゾジアゼピノンのアミドの窒素に、ファルネシル二リン酸中間生成物のファルネシル基を転移させて更に修飾し、式IIで表される化合物を生成する(図15)。
【0349】
更なるORF、すなわちORF2(RECH)(配列番号4)、ORF3(REGD)(配列番号6)、ORF12(SPKG)(配列番号24)、ORF13(RREB)(配列番号26)、ORF34(REGG)(配列番号69)、及びORF36(RECI)(配列番号74)は、式IIで表される化合物をコードする生合成遺伝子座の制御に関与する。他のORF、すなわちORF1(ABCC)(配列番号2)、ORF31(EFFT)(配列番号62)、ORF39及び40(ABCA)(それぞれ配列番号80及び82)、及びORF42(配列番号86)は、輸送に関与する。式IIで表される化合物の生合成に関与する他のORFには、機能が不明であるORF14、15、17、18、22、29、30、35、37、41及び43(それぞれ配列番号28、30、34、34、44、58、60、71、76、84、及び88)の他、ORF20(AAKD)(配列番号40)、ORF23(HYDK)(配列番号46)、ORF38(OXAH)(配列番号78)が含まれる。
【0350】
【表16】

【0351】
他に特別な記載がない限り、全ての成分の単位はgm/Lである。
*3微量元素溶液には、1リットル当たり、ZnCl(40mg)、FeCl6HO(200mg)、CuCl2HO(10mg)、MnCl.4HO、Na.10HO(10mg)、(NHMO24.4HO(10mg)が含まれる。
*5pHは、記載されているように、CaCoの添加前に調整される。
【0352】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、及び参考文献は、参照することによって全体として本明細書に組み込まれる。好ましい実施例を参照することによって、本発明を特に示し、説明してきたが、添付の請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態や詳細を様々に変化させることは、当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0353】
【図1】図1は、エレクトロスプレー質量分析法で、462.6と定量された、ECO−04601の質量を示す。
【図2】図2は、UVmaxが230nm、ショルダーが290nmである、精製されたECO−04601の吸収スペクトルを示す。
【図3】図3は、MeOH−dに溶解した化合物のプロトンNMRデータを示す。
【図4】図4は、gDQCOSY多次元パルスシーケンスを示す。
【図5】図5は、gHSQC多次元パルスシーケンスを示す。
【図6】図6は、gHMBC多次元パルスシーケンスを示す。
【図7】図7は、NOESY多次元パルスシーケンスを示す。
【図8】図8は、ECO−04601のインビトロ抗炎症活性を示す。グラフは、ECO−04601及びNDGAのLogμM濃度に対する5−リポキシゲナーゼ活性阻害パーセントを示す。グラフは、ECO−04601のEC50が0.93μMであることを示している。
【図9】図9は、グリア芽種を有するマウスに、10〜30mg/kgのECO−04601を、腫瘍細胞接種1日後から投与した結果、腫瘍の増殖が阻害されたことを示す。
【図10】図10は、グリア芽種を有するマウスに、20〜30mg/kgのECO−04601を、腫瘍細胞接種10日後から投与した結果、腫瘍の増殖が阻害されたことを示す。
【図11】図11は、グリア芽種の腫瘍を有し、生理食塩水又はECO−04601で処理されたマウスの腫瘍断片の顕微鏡写真を示す。ECO−04601で処理した腫瘍の細胞密度は低下しているように見え、ECO−04601処理腫瘍細胞の核はより大きく、核濃縮している。これは細胞毒性を示す。
【図12】図12は、Micromonospora sp.046−ECO11株から単離され、コスミド046KM及び046KQの位置を含む、ECO−04601の生合成遺伝子座を示す。
【図13】図13は、ORF番号及びファミリーの名称を示した生合成酵素による、ファルネシル−二リン酸基の生成の生合成経路の概略図を示す。
【図14】図14は、ECO−04601をコードする遺伝子座に存在するORFによって特定される、(a)3−ヒドロキシ−アントラニル酸−アデニレート成分及び(b)2−アミノ−6−ヒドロキシ−[1,4]ベンゾキノン成分の生成の生合成経路の概略図を示す。生合成酵素を、ORF番号及びファミリーの名称で示す。
【図15】図15は、ECO−04601前駆物質、ファルネシル−二リン酸、3−ヒドロキシ−アントラニル酸−アデニレート、及び2−アミノ−6−ヒドロキシ−[1,4]ベンゾキノンのアセンブリの生合成経路の概略図を示す。生合成酵素を、ORF番号及びファミリーの名称で示す。
【図16】図16は、046D生合成遺伝子座の各オープンリーディングフレーム(ORF)の配列番号及び機能、並びにそれらに対応する遺伝子生成物を示す配列表を示す。
【図17】図17は、Micromonospora sp.046ECO11.株(IDACアクセッション番号第070303−01)の脂肪酸分析の結果を示す。脂肪酸メチルエステル(FAME)にガスクロマトグラフィーを使用し、分析を行った。
【図18】図18は、Micromonospora sp.046ECO11株(IDACアクセッション番号第070303−01)の16SリボゾームRNA分析を示す。16SリボゾームRNA配列の配置は、Micromonospora sp.046ECO11株(MID352 ECOPIA♯1conとして示される)の、Micromonospora chalceaに対する系統発生的な関連性を示す。
【図19】図19は、MeOH−d4で測定した場合の、ECO−04601の完全なH及び13CNMRの配置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

【請求項2】
下記式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【化2】

【請求項3】
式Iで表される化合物
【化3】

(式中、W、W及びWは、それぞれ独立して下記式
【化4】

から選択されるか、三環からの側鎖は、W3、W2又はW1がそれぞれ−CH=O又は−CH2OHであって、W3、W2又はW1で終わっていてもよく、
Aは、−NH−、−NCH、−NC(O)Rから選択され、
は、C1−6アルキル、C2−6アルケン()、アリール又はヘテロアリールから選択され、
、R及びRは、それぞれ独立してH、R、−C(O)Rから選択され、
は、それぞれ独立してC1−6アルキル、C2−7アルカレン(alkalene)、アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、それぞれ独立してH、C1−6アルキル、C2−7アルカレン、アリール又はヘテロアリールから選択されるか、その薬学的に許容される塩である)。
【請求項4】
AがNHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Aが−NCHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Aが−NC(O)Rであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
、R及びRがそれぞれHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
AがNHであり、R、R及びRがそれぞれHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
AがNHであり、W、W及びWがそれぞれ−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
下記の群から選択される化合物。
【化5】






【請求項17】
請求項3〜16のいずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項18】
a)少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地において、好気条件下で培養が行われることを特徴とする、Micromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及び
b)ステップ(a)で培養された細菌からファルネシルジベンゾジアゼピノンを単離するステップ
を備える方法から得られる、請求項1及び3〜16のいずれか記載の化合物。
【請求項19】
基本的に図3に示すように、NMRスペクトルを発生させる請求項18に記載のファルネシルジベンゾジアゼピノン。
【請求項20】
少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地でMicromonospora sp.046−ECO11株を培養するステップ、及び請求項1に記載の化合物を単離し精製するステップを含む、該化合物の製造方法。
【請求項21】
少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地でMicromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及び請求項1に記載の化合物を単離し精製するステップを含む、該化合物の製造方法。
【請求項22】
前記培養が好気条件下で行われることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記炭素原子源及び前記窒素原子源が、表16に示される成分から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記培養が18〜40℃の温度で行われることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記培養がpH6〜9で行われることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第231203−01又はIDACアクセッション番号第070303−01を有するMicromonospora sp.。
【請求項27】
癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を請求項3に記載の化合物に接触させるステップを有する、癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項28】
癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を請求項1に記載の化合物に接触させるステップを有する、癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項29】
哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害するための請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項30】
哺乳動物における腫瘍細胞の増殖の治療での請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項31】
哺乳動物における前癌状態又は癌疾患を治療するための請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項32】
哺乳動物における前癌状態又は癌疾患を治療するための薬剤の調製における請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項33】
哺乳動物における細菌感染を治療するための請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項34】
哺乳動物における細菌感染を治療するための方法の製剤での請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項35】
哺乳動物における炎症を抑えるための請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項36】
哺乳動物における炎症を抑えるための薬剤の調製における請求項3に記載の化合物の使用。
【請求項37】
ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与するポリペプチドをコードすることを特徴とする、配列番号1、64、及び73を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される核酸、
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドをコードする核酸、
c)a)又はb)の核酸と少なくとも75%の同一性を有する核酸であって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチドをコードする核酸、及び
d)a)、b)、又はc)の核酸に相補的な核酸
からなる群から選択される、ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための、単離、精製、濃縮された核酸。
【請求項39】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチド、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、又は88で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される、ポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項40】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、及び82で表されるポリペプチド、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、及び82で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、又は82のポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドをコードする請求項38又は29に記載の核酸配列。
【請求項41】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、35、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87又は89で表される配列に少なくとも85%の同一性を示す配列であって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86及び88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチドをコードする配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38、39又は40に記載の核酸配列。
【請求項42】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、35、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列に少なくとも90%の同一性を示す配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38〜41のいずれか記載の核酸配列。
【請求項43】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87又は89で表される配列に少なくとも98%の同一性を示す配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38〜42のいずれか記載の核酸配列。
【請求項44】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも2つをコードする核酸配列。
【請求項45】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも3つをコードする核酸配列。
【請求項46】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも5つをコードする核酸配列。
【請求項47】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための、請求項38〜46のいずれか記載の核酸の使用。
【請求項48】
請求項38〜46のいずれか記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項49】
請求項48に記載の発現ベクターで形質転換した単離された宿主細胞。
【請求項50】
請求項48に記載の発現ベクターで形質転換した細菌性の宿主細胞。
【請求項51】
宿主細胞がPseudomonas属及びStreptomyces属の種から選択されることを特徴とする請求項49又は50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
宿主細胞がE.coliであることを特徴とする請求項49又は50に記載の宿主細胞。
【請求項53】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、又は86で表されるポリペプチドに少なくとも75%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、又は86で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項54】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、24、26、38、40、42、44、46、48、又は50で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項55】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドと少なくとも85%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、又は88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項56】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドに少なくとも90%の同一性を示すポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項57】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドと少なくとも95%の同一性を示すポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項58】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へインビドロで導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに結合しているポリペプチドの作製方法。
【請求項59】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を単離された宿主細胞へ導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに関連しているポリペプチドの作製方法。
【請求項60】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を細菌性の宿主細胞へ導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに関連しているポリペプチドの作製方法。
【請求項61】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも1つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項62】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも2つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項63】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも3つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項64】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも5つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項65】
ファルネシルジベンゾジアゼピンが化合物ECO−04601であることを特徴とする請求項53〜57のいずれか記載の使用。
【請求項66】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第250203−06として寄託されたコスミド046KM。
【請求項67】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第250203−07として寄託されたコスミド046KQ。
【請求項68】
生成物を発現させるために前記コスミドを宿主の原核生物に導入することを特徴とする請求項66又は67記載のコスミド。
【請求項69】
前記宿主がE.coli、Streptomyces lividans、Streptomyces griseofuscus、Streptomyces ambofuchsus、Actinomycetes、Bacillus、Corynebacteria又はThermoactinomycesであることを特徴とする、請求項68記載のコスミド。
【請求項70】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で請求項66又は67記載のコスミドのDNAとハイブリダイズし、ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための生合成経路をコードするDNA。
【請求項71】
請求項66又は67記載のコスミドを使用してファルネシルベンゾジアゼピンの収量を増加させる方法であって、宿主の原核生物を請求項66又は67記載のコスミドで形質転換するステップと、ファルネシルジベンゾジアゼピンが発現する条件下で形質転換した宿主の原核生物を培養するステップとを含む方法。
【請求項72】
ポリペプチドがファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与することを特徴とする、請求項53又は57のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項73】
請求項38〜46記載のポリヌクレオチドを1又は2つ以上含む発現ベクター。
【請求項74】
請求項73記載の発現ベクターを1又は2つ以上含むリコンビナント原核生物。
【請求項75】
生物がActinomyceteであることを特徴とする請求項74記載の生物。
【請求項76】
ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成するために、前記生物が前記発現ベクターを必要とすることを特徴とする、請求項74又は75記載の生物。
【請求項77】
(a)ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成することができない原核生物を提供するステップ、
(b)前記原核生物を請求項75記載の発現ベクターで形質転換するステップ、及び
(c)前記原核生物を培養するステップ、
を含み、前記培養によって前記原核生物においてファルネシルジベンゾジアゼピノンが合成されることを特徴とする、原核生物において新規のファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成する方法。
【請求項78】
前記原核生物がActinomyceteであることを特徴とする、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記ベクターが請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドを発現することを特徴とする、請求項77記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】

【請求項2】
下記式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【化2】

【請求項3】
式Iで表される化合物
【化3】

(式中、W、W及びWは、それぞれ独立して下記式
【化4】

から選択されるか、三環からの側鎖は、W3、W2又はW1がそれぞれ−CH=O又は−CH2OHであって、W3、W2又はW1で終わっていてもよく、
Aは、−NH−、−NCH、−NC(O)Rから選択され、
は、C1−6アルキル、C2−6アルケン(alkene)、アリール又はヘテロアリールから選択され、
、R及びRは、それぞれ独立してH、R、−C(O)Rから選択され、
は、それぞれ独立してC1−6アルキル、C2−7アルカレン(alkalene)、アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、それぞれ独立してH、C1−6アルキル、C2−7アルカレン、アリール又はヘテロアリールから選択されるか、その薬学的に許容される塩である)。
【請求項4】
AがNHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Aが−NCHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Aが−NC(O)Rであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
がHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
、R及びRがそれぞれHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
、R及びRがそれぞれHであり、Wが−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
AがNHであり、R、R及びRがそれぞれHであることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
AがNHであり、W、W及びWがそれぞれ−CH=CH−であることを特徴とする請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
下記の群から選択される化合物。
【化5】







【請求項17】
請求項3〜16のいずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項18】
a)少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地において、好気条件下で培養が行われることを特徴とする、Micromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及び
b)ステップ(a)で培養された細菌からファルネシルジベンゾジアゼピノンを単離するステップ
を備える方法から得られるファルネシルジベンゾジアゼピノン
【請求項19】
基本的に図3に示すように、NMRスペクトルを発生させる請求項18に記載のファルネシルジベンゾジアゼピノン。
【請求項20】
少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地でMicromonospora sp.046−ECO11株を培養するステップ、及び請求項1に記載の化合物を単離し精製するステップを含む、該化合物の製造方法。
【請求項21】
少なくとも1つの炭素原子源と少なくとも1つの窒素原子源とを含む培地でMicromonospora sp.[S01]046株を培養するステップ、及び請求項1に記載の化合物を単離し精製するステップを含む、該化合物の製造方法。
【請求項22】
前記培養が好気条件下で行われることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記炭素原子源及び前記窒素原子源が、表16に示される成分から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記培養が18〜40℃の温度で行われることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記培養がpH6〜9で行われることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第231203−01又はIDACアクセッション番号第070303−01を有するMicromonospora sp.。
【請求項27】
癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を請求項3に記載の化合物に接触させるステップを有する、前記癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項28】
癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を請求項1に記載の化合物に接触させるステップを有する、癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項29】
哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を有する哺乳動物に請求項3に記載の化合物を投与するステップを有する、癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項30】
哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害するために、癌細胞を有する哺乳動物に請求項1に記載の化合物を投与するステップを有する、癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項31】
前癌状態又は癌疾患を治療するために、治療に効果的な量の請求項3に記載の化合物を哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における前癌状態又は癌疾患を治療する方法。
【請求項32】
前癌状態又は癌疾患を治療するために、治療に効果的な量の請求項1に記載の化合物を哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における前癌状態又は癌疾患を治療する方法。
【請求項33】
細菌感染を治療するために、治療に効果的な量の請求項3に記載の化合物を細菌に感染した哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における細菌感染を治療する方法。
【請求項34】
細菌感染を治療するために、治療に効果的な量の請求項1に記載の化合物を細菌に感染した哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における細菌感染を治療する方法。
【請求項35】
炎症を抑えるために、治療に効果的な量の請求項3に記載の化合物を炎症を起こした哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における炎症を抑える方法。
【請求項36】
炎症を抑えるために、治療に効果的な量の請求項1に記載の化合物を炎症を起こした哺乳動物に投与するステップを有する、哺乳動物における炎症を抑える方法。
【請求項37】
ファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与するポリペプチドをコードすることを特徴とする、配列番号1、64、及び73を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される核酸、
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドをコードする核酸、
c)a)又はb)の核酸と少なくとも75%の同一性を有する核酸であって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチドをコードする核酸、及び
d)a)、b)、又はc)の核酸に相補的な核酸
からなる群から選択される、ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための、単離、精製、濃縮された核酸。
【請求項39】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチド、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、又は88で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される、ポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項40】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、及び82で表されるポリペプチド、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80及び82で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドであって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、又は82のポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドをコードする請求項38又は29に記載の核酸配列。
【請求項41】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、35、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87又は89で表される配列に少なくとも85%の同一性を示す配列であって、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86及び88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチドをコードする配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38、39又は40に記載の核酸配列。
【請求項42】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列に少なくとも90%の同一性を示す配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38〜41のいずれか記載の核酸配列。
【請求項43】
a)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87及び89で表される配列、及び
b)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、35、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、66、68、70、72、75、77、79、81、83、85、87又は89で表される配列に少なくとも98%の同一性を示す配列
からなる群から選択される配列を含む請求項38〜42のいずれか記載の核酸配列。
【請求項44】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも2つをコードする核酸配列。
【請求項45】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも3つをコードする核酸配列。
【請求項46】
請求項38〜43のいずれか記載の核酸配列のうち少なくとも5つをコードする核酸配列。
【請求項47】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための、請求項38〜46のいずれか記載の核酸の使用。
【請求項48】
請求項38〜46のいずれか記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項49】
請求項48に記載の発現ベクターで形質転換した単離された宿主細胞。
【請求項50】
請求項48に記載の発現ベクターで形質転換した細菌性の宿主細胞。
【請求項51】
宿主細胞がPseudomonas属及びStreptomyces属の種から選択されることを特徴とする請求項49又は50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
宿主細胞がE.coliであることを特徴とする請求項49又は50に記載の宿主細胞。
【請求項53】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、又は86で表されるポリペプチドに少なくとも75%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84又は86で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項54】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドに少なくとも85%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、24、26、38、40、42、44、46、48、又は50で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項55】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドと少なくとも85%の同一性を示すポリペプチドであって、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、又は88で表されるポリペプチドと同一の生物的機能を有するポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項56】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドに少なくとも90%の同一性を示すポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項57】
a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86、及び88で表される配列、及び
b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、41、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、65、67、69、70、71、74、76、78、80、82、84、86又は88で表されるポリペプチドに少なくとも95%の同一性を示すポリペプチド
からなる群から選択される単離されたポリペプチド配列。
【請求項58】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へインビトロで導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに結合しているポリペプチドの作製方法。
【請求項59】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を単離された宿主細胞へ導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに結合しているポリペプチドの作製方法。
【請求項60】
請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドから選択される配列を有するポリペプチドの作製方法であって、前記ポリペプチドをコードする核酸を細菌性の宿主細胞へ導入するステップを含み、前記核酸が操作可能な状態でプロモーターに結合しているポリペプチドの作製方法。
【請求項61】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも1つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項62】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも2つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項63】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも3つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項64】
ファルネシルジベンゾジアゼピンの製造のための、少なくとも5つの請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドの使用。
【請求項65】
ファルネシルジベンゾジアゼピンが化合物ECO−04601であることを特徴とする請求項53〜57のいずれか記載の使用。
【請求項66】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第250203−06として寄託されたコスミド046KM。
【請求項67】
IDAC(カナダ国際寄託当局)アクセッション番号第250203−07として寄託されたコスミド046KQ。
【請求項68】
生成物を発現させる前記コスミドを宿主の原核生物に導入することを特徴とする請求項66又は67記載のコスミド。
【請求項69】
前記宿主がE.coli、Streptomyces lividans、Streptomyces griseofuscus、Streptomyces ambofuchsus、Actinomycetes、Bacillus、Corynebacteria又はThermoactinomycesであることを特徴とする、請求項68記載のコスミド。
【請求項70】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、請求項66又は67記載のコスミドのDNAとハイブリダイズし、ファルネシルジベンゾジアゼピンの生成のための生合成経路をコードするDNA。
【請求項71】
請求項66又は67記載のコスミドを使用してファルネシルベンゾジアゼピンの収量を増加させる方法であって、宿主の原核生物を請求項66又は67記載のコスミドで形質転換するステップと、ファルネシルジベンゾジアゼピンが発現する条件下で形質転換した宿主の原核生物を培養するステップとを含む方法。
【請求項72】
ポリペプチドがファルネシルジベンゾジアゼピノンの生合成経路に関与することを特徴とする、請求項53又は57のいずれか記載のポリペプチド。
【請求項73】
請求項38〜46記載のポリヌクレオチドを1又は2つ以上含む発現ベクター。
【請求項74】
請求項73記載の発現ベクターを1又は2つ以上含むリコンビナント原核生物。
【請求項75】
生物がActinomyceteであることを特徴とする請求項74記載の生物。
【請求項76】
ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成するために、前記生物が前記発現ベクターを必要とすることを特徴とする、請求項74又は75記載の生物。
【請求項77】
(a)ファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成することができない原核生物を提供するステップ、
(b)前記原核生物を請求項75記載の発現ベクターで形質転換するステップ、及び
(c)前記原核生物を培養するステップ、
を含み、前記培養によって前記原核生物においてファルネシルジベンゾジアゼピノンが合成されることを特徴とする、原核生物において新規のファルネシルジベンゾジアゼピノンを合成する方法。
【請求項78】
前記原核生物がActinomyceteであることを特徴とする、請求項77記載の方法。
【請求項79】
前記ベクターが請求項53〜57のいずれか記載のポリペプチドを発現することを特徴とする、請求項77記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−515874(P2006−515874A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500437(P2006−500437)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000069
【国際公開番号】WO2004/065591
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503355580)エコピア バイオサイエンシーズ インク (5)
【Fターム(参考)】