説明

ファンモータ

【課題】長期間連続して駆動されるモータの軸受部のみの交換を時間や労力をかけずに行なうことができしかも芯出しされて組み付けられる防塵性防水性が高いファンモータを提供する。
【解決手段】第1,第2軸受保持部11,12は第1、第2のケース3,9の一部を形成し少なくとも一方側が第1,第2軸受部13,14を保持したまま着脱可能に組み付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばショーケース内に組み込まれるファンを駆動するファンモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍機のショーケースに組み込まれるファンやビルの空調用ファンを回転駆動するモータとして、例えばブラシレスモータが用いられ、24時間,365日休むことなく回転駆動される。図6及び図7のアウターロータ型のファンモータを参照して説明する。図7において、ステータ51はステータコア52が第1のケース53にねじ止め(ねじは図示せず)固定されている。また、ステータコア52の周囲にはロータマグネット54がステータ磁極に対向して設けられている(モータコイルは図示せず)。
【0003】
ロータ55は、カップ状のロータヨーク56の内周面にリング状のロータマグネット54が接着固定されている。ロータヨーク56の中心部は軸方向に突出した円筒部56aが形成されている。この円筒部56aの中心孔にモータ軸57を挿入して一体に組み付けられている。ロータ55は第2のケース58によって覆われている。
【0004】
ステータ51及びロータ55は、第1のケース53の外周面と第2のケース58の内周面とを嵌め合わせて接着等により閉止されてなるモータケース61内に収容されている。
第1,第2のケース53,58の中心部には軸方向に突設された第1,第2軸受保持部53a,58aが各々形成されている。第1,第2軸受保持部53a,58aには第1,第2軸受部(ベアリング)59,60が各々保持されている。モータ軸57は、第1,第2軸受保持部53a,58aに保持された第1,第2軸受部(ボールベアリング)59,60によって回転可能に軸支されている。
【0005】
図6の第1のモータケース53より突設されたモータ軸57には、図示しないファンが取り付けられる。また、ロータ位置センサに給電したり出力信号を送信したりするケーブル62が、ケーブルブッシュ63の配線孔63aを介してモータケース61外に引き出される。
【0006】
このように、長時間連続使用されるファンモータにおいては、塵埃等の異物がケース内に吸い込まれて第1,第2軸受部59,60に侵入し易い。ショーケースの耐用年数は少なくとも10年であるのに対して、第1,第2軸受部59,60の耐用年数は、ボールベアリングの場合2万時間から3万時間と言われていることから約3年となる。ファンモータは第1,第2のモータケース53,58が一体に組み付けられるため、第1,第2軸受部59,60のみの交換は行ない難く、ファンモータそのものを交換する必要があり、部品寿命が短くメンテナンスコストが高くなるという不具合が生ずる。
【0007】
そこで、例えばポンプ装置に用いられるブラシレスモータにおいて、軸受部を規制する軸受けカバーとエンドブラケットを貫通してねじ止めするスタッドねじやナット、エンドブラケットと胴部を止めるボルトを取り外して、冶具を用いてエンドブラケットを胴部から取り外し、モータシャフトに圧入された軸受部を冶具によって抜き出すようにしたブラシレスモータも提案されている(特許文献1)。これによりモータケース内からロータを引き抜くことなしに軸受部を交換できるようになっている。
【特許文献1】特開2002−44926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1においては、軸受部がモータケースを構成するエンドブラケットを取り外して交換できるとしても、軸受けカバーとエンドブラケットを貫通してねじ止めするスタッドねじやナットやエンドブラケットと胴部を止めるボルトなど多数の締結部を取り外す必要があり、作業に手間取るうえに、大型であるため冶具を用いて取り外す必要があり交換作業に労力を要する。また、エンドブラケットを外しても軸受部はモータシャフトに圧入されたままであるため、更に冶具を用いて軸受部を外す必要があるため、作業工数を要する。
とりわけ、ファンモータにおいては、厳しい使用環境下においても塵埃や水滴などの侵入を防いで連続使用に耐え得るシール構造であることが求められる。また、軸受部を交換する際に芯出しが行なわれて組み付けられるのが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、長期間連続して駆動されるモータの軸受部のみの交換を時間や労力をかけずに行なうことができしかも芯出しされて組み付けられる防塵性防水性が高いファンモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
ステータコアを有するステータとステータ磁極に対向配置されたマグネットを有しモータ軸と一体に組み付けられたロータとが第1,第2のケースを組み合わせてなるモータケース内に収容され、当該第1,第2のケースの中心部に各々設けられた軸受保持部に保持された軸受部を介して前記モータ軸が回転可能に軸支されたファンモータであって、前記軸受保持部は第1、第2のケースの一部を形成し少なくとも一方側が軸受部を保持したまま着脱可能に組み付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、前記軸受保持部は、第1,第2のケースの軸方向中心部に設けられた中心孔の周縁部に重ね合わせるフランジ部、該フランジ部から中心孔内に軸線方向に第1,第2のケース内に嵌入した嵌入部、該嵌入部より軸線方向外側に向かって突設された軸受部を保持する保持部がモータ軸と同軸状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記フランジ部と保持部との間に形成される嵌入部の外側に形成される周溝の弾性によって軸受部の芯出しが行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述したファンモータを用いれば、第1,第2のケースの中心部に各々設けられた軸受保持部に保持された軸受部を介してモータ軸が回転可能に軸支されており、軸受保持部は第1、第2のケースの一部を形成し少なくとも一方側が軸受部を保持したまま着脱可能に組み付けられているので、軸受部の耐用年数が経過するとき該当する軸受保持部を取り外して新たな軸受部と交換するか、軸受保持部ごと交換するだけでモータを継続使用することができる。よって、長期間連続して駆動されるモータの軸受部を交換する際にモータケースを開放することなく、メンテナンス作業を手間や労力をかけずに行なうことができる。
【0014】
軸受保持部は、第1,第2のケースの軸方向中心部に設けられた中心孔の周縁部に重ね合わせるフランジ部、該フランジ部から中心孔内に軸線方向にケース体内に嵌入した嵌入部、該嵌入部より軸線方向外側に向かって突設された軸受部を保持する保持部がモータ軸と同軸状に形成されていると、フランジ部とケースが重なり合う重なり面、中心孔内壁と嵌入部外壁面とが嵌合する嵌合面が互いに交差して組み付けられるため、シール性が高く水滴や塵埃が軸受部まで侵入し難い。したがって、厳しい使用環境下においても連続使用に耐え得るファンモータを提供することができる。
【0015】
また、フランジ部と保持部との間に形成される嵌入部の外側に形成される周溝の弾性によって軸受部の芯出しが行われるので、軸受部を交換する際の組み付け性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るファンモータの最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、一例として冷凍機や空調機などの送風用に用いられるファンモータを例示して説明する。
【0017】
以下、図1乃至図5を参照してアウターロータ型のファンモータについて説明する。
図3において、ステータ1は、図4に示す4極のステータコア2を備えている。ステータコア2は第1のケース3に儲けられたボス3aの雌ねじ孔3bに図示しないねじをステータ磁極2aに設けられた貫通孔2bに嵌め込ませてねじ止めすることで一体に組み付けられる(図5参照)。
【0018】
図3において、ステータ磁極2aにはインシュレータ4を介して図示しないモータコイルが巻き付けられている。モータ軸5はステータコア2の中心孔2cを貫通して組み付けられる。
【0019】
ロータ6は、モータ軸5とカップ状のロータヨーク7が一体に組み付けられている。ロータヨーク7の内周面にはマグネット8が固定されており、ステータコア2のステータ磁極2aに対向配置されている。
【0020】
ステータ1とロータ6とは第1のケース3と第2のケース9を組み合わせてなるモータケース10内に収容されている。モータ軸5は第1,第2のケース3,9の中心部に各々設けられた第1,第2軸受保持部11,12に保持された第1,第2軸受部(ボールベアリング)13,14を介して回転可能に軸支されている。
【0021】
第1,第2軸受保持部11,12は第1、第2のケース3,9の一部を形成し第1,第2軸受部13,14を保持したまま着脱可能に組み付けられている。図2において、第1,第2軸受保持部11,12は、複数箇所に設けられた貫通孔11a,12aにねじ15,16を嵌め込んで第1,第2のケース3,9の雌ねじ孔3d(図5参照),9dとねじ嵌合することにより一体に組み付けられる。第1のケース3の外壁面3cと第2のケース9の内壁面9cが当接するように嵌め合わされて当接面が接着等により固定されている(図1参照)。
尚、第1,第2軸受保持部11,12のうち少なくとも一方側が着脱可能に組み付けられていてもよい。
【0022】
ここで、第1,第2軸受保持部11,12の構成について図3を参照して詳しく説明する。尚、第1,第2軸受保持部11,12の構成は同様であるので、第2軸受保持部12の構成を中心に説明する。
第2軸受保持部12は、第2ケース9の軸方向中心部に設けられた中心孔9aの周縁部9bに重ね合わせるフランジ部12Aと該フランジ部12Aから中心孔9aを通じて第2ケース9内に嵌入した嵌入部12B、該嵌入部12Bより軸線方向外側に向かって突設された第2軸受部14を保持する保持部12Cがモータ軸5と同軸状に形成されている。保持部12Cには軸孔12bが形成されている。
【0023】
また、フランジ部12Aと保持部12Cの間に形成される嵌入部12Bの外側に形成される周溝12Dの弾性によって第2軸受部14の芯出しが行われる。よって、第2軸受部14を交換する際の組立性がよい。
また、フランジ部12Aと第2ケース9が重なり合う重なり面P、中心孔内壁と嵌入部外壁面とが嵌合する嵌合面Qが互いに交差して組み付けられるため、シール性が高く水滴や塵埃が第2軸受部14まで侵入し難い。したがって、厳しい使用環境下においても連続使用に耐え得るモータを提供することができる。
【0024】
図3において、ロータヨーク7の中心部には、段付部7aとその段付部7aより円筒部7bが軸方向に延設されている。第2軸受部14は、円筒部7bの外周面に嵌め込まれ、保持部12Cに設けられた予圧ばね17によって軸方向に付勢されて段付部7aに押し当てられている。円筒部7bの先端は保持部12Cの軸孔12bに入り込んでいるため、軸方向に塵埃等の異物が第2のケース9内に侵入し難い構造になっている。
尚、第2軸受部14の内周側と円筒部7b、第2軸受部14の外周側と保持部12Cとの間はいずれも接着されておらず滑合した状態にある。
【0025】
図5において、第1のケース3にはステータコア3のほかにセンサ基板18がケーブルブッシュ19と重ね合わせて組み付けられる。センサ基板18にはロータ位置を検出するロータ位置センサ(ホールIC;図示せず)が基板実装されている。センサ基板18に接続するケーブル20はケーブルブッシュ19の配線孔19aよりモータケース外へ引き出されるようになっている(図1,図2参照)。
【0026】
ここで、モータの組立工程の一例について説明する。
図5において、ステータ1の組立について説明する。第1のケース3の所定位置にケーブルブッシュ19、センサ基板18を重ね合わせて載置し、4箇所に設けられたボス3aに図示しないねじを立ててステータコア2の貫通孔2bに挿入してねじ止めされて一体に組み付けられる。ステータ磁極2aはインシュレータ4で覆われており、図示しないモータコイルが巻き付けられている。
【0027】
ロータ6の組立について説明する。ロータヨーク7の内周面にマグネット8を接着により固定し、円筒部7bにモータ軸5を挿入して一体に組み付ける。次いで、図2において、モータ軸5をステータコア2の中心孔2cに挿入して、第2のケース9と第1のケース3を嵌め合わせて、嵌合する外壁面3cと内壁面9cとを接着により固定する。尚、センサ基板18に接続するケーブル20はケーブルブッシュ19の配線孔19aより予め引き出しておく。
【0028】
次に、第1軸受保持部11,第2軸受保持部12の保持部11C,12Cに予圧ばね17を嵌め込んだまま第1軸受部13,第2軸受部14が嵌め込まれて保持される。そして、モータケース10より突出しているモータ軸5の軸端より第1軸受部13,第2軸受部14を挿通して第1軸受保持部11,第2軸受保持部12が第1のケース3,第2のケース9に重ね合わせる。具体的には、フランジ部11A,12Aをケース側の中心孔の周縁部に各々重ね合わせてねじ15,16をねじ止めすることにより、図1に示すモータが組み立てられる。最後に出力側のモータ軸5には、図示しないファンが一体に組み付けられる。
【0029】
第1軸受部13,第2軸受部14のいずれか若しくは双方の耐用年数が経過したとき、図2に示すように、モータケース10を分解することなく、ねじ15,16を外すことで第1軸受保持部11,第2軸受保持部12が第1軸受部13,第2軸受部14を保持したまま取り外せる。第1軸受部13,第2軸受部14は保持部11C,12Cに対して接着されていないので交換作業が容易に行なえる。仮に第1軸受部13,第2軸受部14が接着されていても、新たな第1軸受保持部11,第2軸受保持部12を準備するだけで交換作業が容易に行なえる。
【0030】
また、フランジ部11A,12Aと保持部11C,12Cとの間に形成される嵌入部11B,12Bの外側に形成される周溝11B(省略),12Bの弾性によって第1軸受部13,第2軸受部14の芯出しが各々行われるので、軸受部を交換する際の組み付け性が良い。
よって、モータの耐用年数まで連続使用することができ、メンテナンスコストを削減することができる。
【0031】
尚、上述した実施の形態は、アウターロータ型のファンモータについて説明したが、インナーロータ型のファンモータであっても良く、更には単相若しくは多相のブラシレスモータであってもよく、交流モータの中でも同期モータ、誘導モータなどに広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ファンモータの斜視図である。
【図2】図1のモータより第1,第2軸受保持部を外した状態の斜視図である。
【図3】図1のモータの断面図である。
【図4】ステータコアの斜視図である。
【図5】ファンモータの分解斜視図である。
【図6】従来のファンモータの斜視図である。
【図7】図6のモータの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ステータ
2 ステータコア
2a ステータ磁極
2b,11a,12a 貫通孔
2c 中心孔
3 第1のケース
3a ボス
3b,3d,9d 雌ねじ孔
3c 外壁面
4 インシュレータ
5 モータ軸
6 ロータ
7 ロータヨーク
7a 段付部
7b 円筒部
8 マグネット
9 第2のケース
9a 中心孔
9b 周縁部
9c 内壁面
10 モータケース
11 第1軸受保持部
12 第2軸受保持部
12A フランジ部
12B 嵌入部
12C 保持部
12D 周溝
13 第1軸受部
14 第2軸受部
15,16 ねじ
P 重なり面
Q 嵌合面
17 予圧ばね
18 センサ基板
19 ケーブルブッシュ
19a 配線孔
20 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアを有するステータとステータ磁極に対向配置されたマグネットを有しモータ軸と一体に組み付けられたロータとが第1,第2のケースを組み合わせてなるモータケース内に収容され、当該第1,第2のケースの中心部に各々設けられた軸受保持部に保持された軸受部を介して前記モータ軸が回転可能に軸支されたファンモータであって、
前記軸受保持部は第1,第2のケースの一部を形成し少なくとも一方側が軸受部を保持したまま着脱可能に組み付けられているファンモータ。
【請求項2】
前記軸受保持部は、第1,第2のケースの軸方向中心部に設けられた中心孔の周縁部に重ね合わせるフランジ部、該フランジ部から中心孔内に軸線方向に第1,第2のケース内に嵌入した嵌入部、該嵌入部より軸線方向外側に向かって突設された軸受部を保持する保持部がモータ軸と同軸状に形成されている請求項1記載のファンモータ。
【請求項3】
前記フランジ部と保持部との間に形成される嵌入部の外側に形成される周溝の弾性によって軸受部の芯出しが行われる請求項2記載のファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22168(P2010−22168A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182290(P2008−182290)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(390041380)
【出願人】(393015520)
【Fターム(参考)】