説明

フィラメントランプおよび光照射式加熱処理装置

【課題】 複数のフィラメントの発光状態が独立に制御されて所望の放射照度分布が得られ、しかも、大電力をフィラメントに投入した場合であっても、隣り合うフィラメント体における互いに接近する部分で不所望な放電の発生が確実に防止されるフィラメントランプおよび被処理体を均一に加熱することのできる光照射式加熱処理装置の提供。
【解決手段】 フィラメントランプは、発光管の内部に、各々フィラメントとリードとからなるフィラメント体の複数が管軸方向に順次に並設されてなり、隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同位相となるよう各フィラメントにそれぞれ独立に交流電力が供給される構成、あるいは隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同極性となるよう各フィラメントにそれぞれ独立に直流電力が供給される構成とされている。光照射式加熱処理装置は、当該フィラメントランプを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントランプおよび光照射式加熱処理装置に関し、特に、被処理体を加熱処理するために用いられるフィラメントランプおよび当該フィラメントランプを備えた光照射式加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における、例えば成膜、酸化、不純物拡散、窒化、膜安定化、シリサイド化、結晶化、イオン注入活性化などの様々なプロセスを行うに際しては、加熱処理が利用されており、特に、例えば半導体ウエハなどの被処理体の温度を急速に上昇させたり下降させたりする急速熱処理(以下、「RTP:Rapid Thermal Processing」ともいう。)は、歩留まりや品質を向上させることができることから、好ましく利用されている。
【0003】
RTPにおいて用いられる加熱処理装置としては、例えば光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設されてなる白熱ランプなどの光源からの光照射によって、被処理体に接触することなくこれを加熱することのできる光照射式の加熱処理装置が広く利用されている(特許文献1,特許文献2参照)。
このような光照射式の加熱処理装置によれば、例えば、被処理体を1000℃以上の温度にまで、数秒から数十秒で昇温させることが可能であると共に、光照射を停止することにより、被処理体を急速に冷却(降温)させることが可能である。
【0004】
このような光照射式の加熱処理装置を用いて例えば半導体ウエハのRTPを行う場合においては、半導体ウエハを1050℃以上に加熱する際に半導体ウエハに温度分布の不均一が生じると、半導体ウエハに「スリップ」と呼ばれる現象、すなわち結晶転移の欠陥が発生し不良品となるおそれがあるため、半導体ウエハの全面の温度分布が均一になるように加熱、高温保持、冷却を行うことが必要とされている。
【0005】
而して、例えば光照射面全面の物理特性が均一である半導体ウエハに対して放射照度が均一になるように光照射を行った場合であっても、半導体ウエハの周辺部においては、半導体ウエハの側面等から熱が放射されるため、半導体ウエハの周辺部の温度が低くなって半導体ウエハには温度分布の不均一が生じる。
このような問題を解決するために、半導体ウエハの周辺部の表面における放射照度を半導体ウエハの中央部の表面における放射照度よりも大きくなるように光照射することによって、半導体ウエハの側面等からの熱放射による温度低下を補償して半導体ウエハにおける温度分布を均一にすることが行われている。
【0006】
しかしながら、従来の加熱処理装置においては、被処理体における、白熱ランプの発光長に比して極めて小さい狭小な特定領域については、当該特定領域の特性に対応した光強度で光照射を行っても、特定領域以外の領域にも同じ条件で光照射されてしまうため、特定領域とその他の領域とが適切な温度状態となるように温度調整すること、すなわち、被処理物の温度状態が均一になるよう、狭小な特定領域に対する放射照度のみを制御することはできない。
【0007】
例えば半導体ウエハには、その表面にスパッタリング法などにより金属酸化物等からなる膜が形成されていたり、また、イオン注入により不純物添加物がドーピングされていたりすることが一般的であり、このような金属酸化物の膜厚や不純物イオンの密度には、半導体ウエハの表面上で場所的な分布を有する。このような場所的分布は、必ずしも半導体ウエハの中心に対して中心対称ではなく、例えば不純物イオン密度については、半導体ウエハの中心に対して中心対称ではない狭小な特定領域において不純物イオン密度が変化することがある。
このような特定領域においては、他の領域と同一の放射照度となるように光照射した場合であっても、温度上昇速度に差異が生じることがあり、特定領域の温度とその他の領域の温度とは必ずしも一致せず、被処理体の処理温度に不所望な温度分布が生じることになる結果、被処理体に所望の物理特性を付与することが困難になる、という問題が生じる。
【0008】
以上のような事情に鑑みて、本発明者らは、次のような構成を有する、光照射式加熱処理装置の光源として用いられるフィラメントランプを提案している(特願2005−191222号明細書参照)。
このフィラメントランプは、図1を参照して説明すると、両端が気密に封止された直管状の発光管(11)を備えてなり、この発光管(11)内には、各々フィラメントコイルとこのフィラメントコイルに給電するためのリードとからなるフィラメント体(14,15)の複数(図1においては2個)が、フィラメントコイル(14b, 15b)が発光管(11)の管軸方向に伸びるよう順次に並んで配置されている。
【0009】
第1のフィラメント体(14)におけるフィラメントコイル(14b)の一端に連結される一端側のリード(14c)は、発光管(11)の一端側の封止部(12a)に気密に埋設された金属箔(13a)を介して封止部(12a)から外部に突出する外部リード(18a)に電気的に接続されており、また、フィラメントコイル(14b)の他端に連結される他端側のリード(14a)は、発光管(11)の他端側の封止部(12b)に埋設された金属箔(13d)を介して外部リード(18d)に電気的に接続されている。一端側のリード(14c)における第2のフィラメント体(15)のフィラメントコイル(15b)と対向する部分には、絶縁管(25)が設けられている。
また、第2のフィラメント体(15)におけるフィラメントコイル(15b)の一端に連結される一端側のリード(15c)は、一端側の封止部(12a)に埋設された金属箔(13b)を介して外部リード(18b)に電気的に接続されており、また、フィラメントコイル(15b)の他端に連結される他端側のリード(15a)は、他端側の封止部(12b)に埋設された金属箔(13c)を介して外部リード(18c)に電気的に接続されている。他端側のリード(15a)における一方のフィラメント体(14)のフィラメントコイル(14b)と対向する部分には、絶縁管(25)が設けられている。
各フィラメント体(14,15)は、それぞれ、外部リードを介して別個の給電装置に接続されており、これにより、各フィラメント体(14,15)におけるフィラメント(14b,15b)に個別に給電可能とされている。
また、(17)は、発光管(11)の内壁と絶縁管(25)との間の位置において、発光管(11)の管軸方向に並設された環状のアンカーであって、各フィラメント(14b,15b)は、それぞれ、例えば3個のアンカー(17)によって発光管(11)と接触しないよう支持されている。
【0010】
このような構成のフィラメントランプは、発光管内に複数のフィラメントを有し、各フィラメントの発光等の制御を個別に行うことが可能な構造とされているので、光照射式加熱処理装置における加熱用光源として用いた場合には、複数本のフィラメントランプを並列に配列することにより、被処理体の被照射領域に対応してフィラメントを高密度に配置することが可能となる。従って、このような光照射式加熱処理装置によれば、複数のフィラメントに対して個別に給電できて各フィラメントの発光等の制御を個別に行うことができることから、例えば熱処理される被処理体上における場所的な温度変化の度合いの分布が被処理体の形状に対して非対称である場合であっても、当該被処理体の特性に応じた所望の放射照度分布で光照射することができる結果、被処理体を均一に加熱することができ、従って、被処理体における被照射面の全体にわたって、均一な温度分布を実現することができる。
【0011】
【特許文献1】特開平7−37833号公報
【特許文献2】特開2002−203804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、光照射式加熱処理装置においては、更なる歩留まりの向上(処理効率の向上)や品質の向上が求められている。
このような要請に対して、上記構成のフィラメントランプを光源として備えているものにおいては、半導体ウエハの昇温特性を更に急速にすることが必要とされており、例えばフィラメントへの単位長さ当たりの投入電力を従来以上に増加させることにより対応することができるものと考えられる。
【0013】
しかしながら、単にフィラメントに対する投入電力を増加した場合には、隣り合うフィラメント体におけるリード間で不所望な放電が発生しやすく、このような不所望な放電が長時間の間にわたって形成されると、フィラメントあるいはリードが溶断してしまう、という不具合が生じることが判明した。
また、上述したように、被処理体の被照射面における温度分布を均一にするには、各々のフィラメント体がフィラメントが互いに近接した状態(フィラメントの配設間隔が小さい状態)で配設されていることが望ましいが、このような構成とした場合には、上記問題が顕著に生ずるようになる。
【0014】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、大電力をフィラメントに投入した場合であっても、隣り合うフィラメント体におけるフィラメント間あるいはリード間で不所望な放電が生ずることを確実に防止することができてフィラメントまたはリードが破損することを確実に防止することができるフィラメントランプを提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記フィラメントランプを備え、被処理体を均一に加熱することができる光照射式加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のフィラメントランプは、少なくとも一端に封止部が形成された直管状の発光管の内部に、各々コイル状のフィラメントと当該フィラメントに電力を供給するリードとが連結されてなるフィラメント体の複数が、各フィラメントが発光管の管軸方向に伸びるよう、管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメント体におけるリードの各々が封止部に配設された複数の導電性部材の各々に対して電気的に接続されてなり、各フィラメントに対してそれぞれ独立に電力を供給する給電機構を備えたフィラメントランプであって、 給電機構は交流電力供給源であって、隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同位相となるよう、前記導電性部材に結線されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のフィラメントランプにおいては、給電機構は、各フィラメント体に対して三相交流電力を供給するものを用いることができる。
【0017】
また、本発明のフィラメントランプは、少なくとも一端に封止部が形成された直管状の発光管の内部に、各々コイル状のフィラメントと当該フィラメントに電力を供給するリードとが連結されてなるフィラメント体の複数が、各フィラメントが発光管の管軸方向に伸びるよう、管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメント体におけるリードの各々が封止部に配設された複数の導電性部材の各々に対して電気的に接続されてなり、各フィラメントに対してそれぞれ独立に電力を供給する給電機構を備えたフィラメントランプであって、
給電機構は直流電力供給源であって、隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同極性となるよう、前記導電性部材に結線されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のフィラメントランプにおいては、放電抑制ガスが発光管内に封入された構成とされていることが好ましい。
【0019】
また、本発明のフィラメントランプにおいては、各フィラメント体におけるリードは、フィラメントのコイルピッチ間に挟まれた状態で当該フィラメントの径方向外方に突出して伸びるよう係合される、先端部がフィラメントのコイル軸方向に伸びる径方向部分を有する鉤状部を備えてなり、
隣接するフィラメントの互いに接近する端部に連結されたリードの各々が当該リードにおける鉤状部が係合される被係合部による位置決め機構が形成された共通の支持部材によって支持されることにより、フィラメントが発光管に対して位置決めされており、
前記支持部材を挟んで互いに対向して伸びる各々の鉤状部の先端には、球状部が形成された構成とすることができる。
【0020】
本発明の光照射式加熱処理装置は、上記フィラメントランプが複数本並列配置されてなるランプユニットを有し、当該ランプユニットから放出される光を被処理体に照射して被処理体を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係るフィラメントランプによれば、基本的には、各フィラメントの発光状態を独立して制御することができるので、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、隣り合うフィラメント体における互いに接近する端部同士が同位相となるよう交流電力が供給されることにより、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、隣り合うフィラメント間あるいは隣り合うリード間で不所望な放電が発生することに起因してフィラメントあるいはリードが溶断することを確実に防止することができる。
従って、例えば200W/cm以上の大電力をフィラメントに投入することができ、これにより、より高速な半導体ウエハの昇温特性を実現することができる。
【0022】
請求項2に係るフィラメントランプによれば、給電機構としてフィラメント体に三相交流電力を供給するものが用いられていることにより、各相に電気的に接続されるフィラメントの個数を分散させて接続することができるため、単相の場合と比較して同一相に流れる電流値が少なくなり、給電装置に要求される電流値を比較的小さくすることができることから、給電に係るコストを低減できる。
【0023】
請求項3に係るフィラメントランプによれば、基本的には、各フィラメントの発光状態を独立して制御することができるので、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、隣り合うフィラメント体における互いに接近する端部同士が同極性となるよう直流電力が供給されることにより、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、隣り合うフィラメント間あるいは隣り合うリード間で不所望な放電が発生することに起因してフィラメントあるいはリードが溶断することを確実に防止することができる。
【0024】
請求項4に係るフィラメントランプによれば、放電抑制ガスが発光管内に封入されていることにより、互いに異なる大きさの電流を各フィラメントに投入して被処理体上の狭小な領域における温度を調整することに伴って、隣り合うフィラメント体におけるリード間に電位差が生じた場合であっても、放電抑制ガスが絶縁破壊電圧の高いものであるので、不所望な放電の発生を一層確実に防止することができる。
【0025】
請求項5に係るフィラメントランプによれば、リードの鉤状部の先端に球状部が形成されていることにより、リードの端部に放電が集中しにくくなるため、隣り合うリード間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる。
また、リードの鉤状部が支持部材に係合されて支持されていることによって、フィラメントの径方向に対する変位およびフィラメントの周方向の変位が規制されると共に、球状部が支持部材に係止されることによってフィラメント体の管軸方向への移動が規制されるので、フィラメントの位置決めを一層確実に行うことができ、各フィラメントを発光管の所望の位置に高精度にかつ容易に配置することができると共に、フィラメント体の位置が経時的に変位することを防止することができて長期間の間にわたって初期の性能を確実に維持することができる。
【0026】
本発明の光照射式加熱処理装置によれば、上記フィラメントランプの複数からなるランプユニットを備えていることにより、ランプユニットから所定の距離だけ離間した被処理体上の照度分布を精密に、かつ、任意の分布に設定することが可能となるので、被処理体における場所的な温度変化の度合いの分布が被処理体の形状に対して非対称である場合においても、それに対応して、被処理体上の照度分布を設定することが可能となり、被処理体を均一に加熱することができる。
しかも、各フィラメントランプは、大電力をフィラメントに投入可能に構成されているものであるので、更なる歩留まりおよび品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明のフィラメントランプの一例における構成の概略を示す説明用斜視図である。
このフィラメントランプ10は、両端部が溶着されて封止部12a,12bが形成された、例えば石英ガラスなどの光透過性材料からなる直管状の発光管11を備えてなり、この発光管11の内部には、複数例えば2つのフィラメント体14,15が発光管11の管軸方向に順次に並んで配設されていると共に、ハロゲンガスおよび後述する特定の放電抑制ガスが封入されている。
【0028】
第1のフィラメント体14は、図2に示すように、フィラメントコイル14bとこのフィラメントコイル14bの他端部に連結された給電用のリード14aおよびフィラメントコイル14bの一端部に連結されたリード14cとにより構成されている。
【0029】
第1のフィラメント体14におけるリード14aは、1本の線条材により形成されており、連結されるフィラメント14bのコイル軸に並行に伸びるコイル状のフィラメント連結部141aと、このフィラメント連結部141aの一端部に連続してフィラメント連結部141aの径方向に伸びる径方向部143aと、この径方向部143aに連続してフィラメント連結部141aのコイル軸方向に伸びる線状のリード本体部142aとにより構成されている。
フィラメント連結部141aは、フィラメントコイル14bのコイル内径に適合する外径を有する。
また、第1のフィラメント体14におけるリード14cは、リード14aと同一の構成を有し、便宜上、リード14aと同一の構成部分には「a」を「c」に替えて同一の符号が付してある。
【0030】
第1のフィラメント体14においては、図3に示すように、フィラメントコイル14bの他端部をリード14aの径方向部143aに対して捩じ込むことにより、フィラメント連結部141aがフィラメントコイル14bの他端部における内部空間内に挿入されてその外周面がフィラメントコイル14bの内面に当接状態で配置されると共に、径方向部143aがフィラメントコイル14bのコイルピッチ間においてフィラメントコイル14bの径方向外方に突出するよう挟まれた状態とされ、これにより、リード14aとフィラメントコイル14bとの連結が達成されている。
また、一端側のリード14cについても同様に、フィラメント連結部141cがフィラメントコイル14bの内部に当接状態で配置されると共に、径方向部143cがフィラメントコイル14bのコイルピッチ間においてフィラメントコイル14bの径方向外方に突出するよう挟まれた状態とされ、これにより、リード14cとフィラメントコイル14bとの連結が達成されている。
【0031】
また、第2のフィラメント体15は、第1のフィラメント体14と同一の構成を有するものであり、フィラメントコイル15bとこのフィラメントコイル15bの他端部に連結された給電用のリード15aおよびフィラメントコイル15bの一端部に連結されたリード15cとにより構成されている。
【0032】
第1のフィラメント体14における他端側のリード14aは、発光管11の他端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13dを介して外部リード18dに電気的に接続されている。また、一端側のリード14cは、第2のフィラメント体15に接触しないように発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の一端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13aを介して外部リード18aに電気的に接続されている。
【0033】
第2のフィラメント体15における他端側のリード15aは、第1のフィラメント体14に接触しないように発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の他端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13cを介して外部リード18cに電気的に接続されている。また、一端側のリード15cは、発光管11の一端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13bを介して外部リード18bに電気的に接続されている。
【0034】
このフィラメントランプ10においては、フィラメント体のリードの、他のフィラメント体におけるフィラメントおよびリードと対向する箇所に、例えば石英などの絶縁材料からなる絶縁管が設けられている。絶縁管が設けられていることにより、後述するフィラメントに取り付けられたアンカー17と、リードとが接触して電気的に短絡することを確実に防止することができる。
具体的には、第1のフィラメント体14における一端側のリード14cには、第2のフィラメント体15のフィラメントコイル15bと対向する箇所に、絶縁管25が設けられており、また、第2のフィラメント体15における他端側のリード15aには、第1のフィラメント体14のフィラメントコイル14bと対向する箇所に、絶縁管25が設けられている。
【0035】
このフィラメントランプ10においては、発光管11の内壁と絶縁管25との間の位置において、発光管11の管軸方向に並設された複数の環状のアンカー17が設けられており、各フィラメントコイル14b,15bは、それぞれ、例えば3個のアンカーによって発光管11と接触しないよう支持されている。
アンカー17は、フィラメントランプ10を作製するに際して、複数のフィラメント体を発光管11内に容易に挿入して配設することができる程度の弾性を有する。
【0036】
上記構成のフィラメントランプ10においては、各フィラメント体14,15に係る外部リードの各々は、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに隣接する端部同士が同位相となるよう、例えば単相交流電力を供給する給電装置73に給電線によって電気的に接続されている。
各フィラメント体14,15と給電装置73との結線状態について具体的に説明すると、図4に示すように、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端が給電装置73の高圧側(H)に、電力制御手段74aを介して電気的に接続されると共に他端が電力制御手段74aを介して給電装置73の低圧側(L)であるグランド側(G)に電気的に接続されている。また、第1のフィラメントコイル14bの一端側に隣接する第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端が電力制御手段74bを介して給電装置73の高圧側(H)に電気的に接続されると共に一端側のリード15cが電力制御手段74bを介してグランド側(G)に電気的に接続されており、従って、各フィラメントコイル14b,15bに電力制御手段74a,74bを介して個別に電力を給電することにより、各フィラメントコイル14b,15bの発光状態の制御を個別に行うことができる。
このフィラメントランプ10においては、電力制御手段74a, 74bとして、例えばサイリスタ(SCR)が用いられており、各フィラメント体14,15に対して供給される電流量を、各フィラメントコイル14b,15bの最大定格電流値の0〜100%の範囲内で調整することができる。
【0037】
また、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端が給電装置73のグランド側(G)に電気的に接続されると共に他端が給電装置73の高圧側(H)に電気的に接続され、第1のフィラメントコイル14bの一端側に隣接する第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端が給電装置73のグランド側(G)に電気的に接続されると共に一端が給電装置73の高圧側(H)に電気的に接続された構成とされていてもよい。
【0038】
上述したように、上記フィラメントランプ10においては、発光管11内にハロゲンサイクルを行うためのハロゲンガスに加えて、絶縁破壊電圧値の高い放電抑制ガスが封入されている。これにより、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに接近する端部同士で電位差が生ずる場合であっても、不所望な放電が発生することを確実に防止することができる。
放電抑制ガスとしては、例えば窒素ガスや、アルゴン、クリプトンなどの希ガスや、窒素と希ガスとの混合ガスを用いることができ、これらのうちでも、他のガスに比べて絶縁破壊電圧値が高いことから、窒素ガスを用いることが特に好ましい。
希ガスの封入量は、常温において約0.8×105 〜1×106 Paの範囲内であることが好ましい。
【0039】
上記のフィラメントランプ10においては、電力制御手段74a,74bによって適正な大きさに制御された電力が各フィラメント体14,15に対して供給されると、各フィラメントコイル14b,15bにおいては、その一端部と他端部との間で電位差が生じて各フィラメントコイル14b,15bに電流が流れて発光状態とされる。この状態においては、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端部と第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端部とが互いに電位差が小さい状態または同電位となる状態とされる。例えば各フィラメントコイル14b,15bにおける最大定格電流値と同等の電流が供給される場合には、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端部と第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端部とが互いに同電位となる状態となる。
【0040】
而して、上記構成のフィラメントランプ10によれば、各フィラメント14b, 15bの発光状態を独立して制御することができるので、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに接近する端部同士が同位相となるよう交流電力が供給されることにより、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、フィラメント14b, 15b間あるいは隣り合うリード14c, 15a間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる結果、フィラメントコイルあるいはリードが溶断するという不具合が発生することを確実に防止することができる。
【0041】
また、リード14a,14cにおけるフィラメント連結部141a、141cがフィラメントコイル14bの内部空間内に挿入されて当接状態で配置されると共に径方向部143a,143cがコイルピッチ間に挟まれた状態とされてフィラメントコイル14bとリード14a,14cとが連結されていることにより、フィラメントコイル14bの軸方向に対する変位およびフィラメントコイル14bの径方向に対する変位が規制された状態とされるので、素線径およびコイル巻き径が大きいフィラメントコイル14bとリード14a,14cとを連結させる場合であっても、リード14a,14cの線径をフィラメントコイル14bの内径に適合するよう大きくすることなしに両者を確実に連結することができる。例えば素線径が0.5mm、コイル巻き径が4.3mmであるフィラメントコイルと、線径が0.8mmであるリードとであっても、両者を確実に連結することができる。また、第2のフィラメント体15についても同様である。
従って、例えば200W/cm以上もの大電力をフィラメントコイル14b,15bに投入することができて各フィラメントコイル14b,15bを所期の発光状態となるよう急速に立ち上げることができる構成のものでありながら、隣接するフィラメント間で短絡が生じることを確実に防止することができる。
【0042】
また、互いに異なる大きさの電流を各フィラメントコイル14b,15bに供給することに伴って電位差が生じた場合であっても、さらに特定の放電抑制ガスが発光管11内に封入された構成とされていることにより、放電抑制ガスが絶縁破壊電圧の高いものであるので、当該電位差に起因して不所望な放電が生ずることを一層確実に防止することができ、従って、所望の放射照度分布を確実に得ることができる。
【0043】
以上のフィラメントランプ10においては、図5に示すように、給電装置75として三相交流電力を供給するものを用いることができる。
給電装置75は、互いに電位が異なるR、S、Tの3つの端子を備えており、これらのうちの2つの端子に対して各フィラメント14b,15bが、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに隣接する端部同士が同位相となるよう、電気的に接続されている。
この実施例における各フィラメント体14,15と給電装置75との結線状態について具体的に説明すると、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端が給電装置75のS端子に電力制御手段74aを介して電気的に接続されていると共に、他端が給電装置75のR端子に電力制御手段74aを介して電気的に接続されている。また、第1のフィラメントコイル14bの一端側に隣接する第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端が給電装置75のS端子に電力制御手段74bを介して電気的に接続されていると共に、一端が給電装置75のT端子に電力制御手段74bを介して電気的に接続されている。すなわち、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bがR−S相に接続され、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bがS−T相に接続されており、これにより、各フィラメントコイル14b,15bに対して、電力制御手段74a,74bを介して個別に電力を給電することにより、各フィラメントコイル14b,15bの発光状態の制御を個別に行うことができる。
【0044】
このような構成のフィラメントランプによれば、上記のものと同様の効果を得ることができると共に、三相交流電力を供給する給電装置75が用いられていることにより、各相に電気的に接続されるフィラメントの個数を分散させて接続することができるため、単相の場合と比較して同一相に流れる電流値が少なくなり、給電装置に要求される電流値を比較的小さくすることができるので、給電に係るコストを低減することができる。
【0045】
また、本発明のフィラメントランプにおいては、フィラメント体の数は目的に応じて適宜に変更することができ、例えば図6に示すように、3つのフィラメント体14,15,16が配設された構成とすることができる。
このフィラメントランプ10は、両端部が溶着されて封止部12a,12bが形成された、例えば石英ガラスなどの光透過性材料からなる直管状の発光管11を備えてなり、この発光管11の内部には、各々図2に示すものと同一の構成を有する3つのフィラメント体14,15,16が、フィラメントコイルが管軸方向に伸びるよう、発光管11の管軸方向に順次に並設されている。
【0046】
第1のフィラメント体14,第2のフィラメント体15および第3のフィラメント体16の各々における一端側のリード14c,15c,16cは、それぞれ、一端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13d,13e,13fを介して外部リード18d,18e,18fに電気的に接続されており、他端側のリード14a,15a,16aは、それぞれ、他端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13a,13b,13cを介して外部リード18a,18b,18cに電気的に接続されている。
【0047】
このフィラメントランプ10においては、各フィラメント体14,15,16に係る外部リードの各々は、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに隣接する端部同士が同位相となり、かつ、第2のフィラメント体15および第3のフィラメント体16における互いに隣接する端部同士が同位相となるよう、三相交流電力を供給する給電装置75に給電線によって電気的に接続されている。
各フィラメント体14,15,16と給電装置75との結線状態について具体的に説明すると、図7に示すように、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端が給電装置75のS端子に電力制御手段74aを介して電気的に接続されると共に、他端が給電装置75のR端子に電力制御手段74aを介して電気的に接続されている。また、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの一端が給電装置75のT端子に電力制御手段74bを介して電気的に接続されると共に、他端が給電装置75のS端子に電力制御手段74bを介して電気的に接続されている。さらに、第3のフィラメント体16に係るフィラメントコイル16bの一端が給電装置75のR端子に電力制御手段74cを介して電気的に接続されると共に、他端が給電装置75のT端子に電力制御手段74cを介して電気的に接続されている。すなわち、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bがR−S相に接続され、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bがS−T相に接続され、第3のフィラメント体16に係るフィラメントコイル16bがT−R相に接続されており、これにより、各フィラメントコイル14b,15b,16bに対して、電力制御手段74a,74b,74cを介して個別に電力を給電することにより、各フィラメントコイル14b,15b,16bの発光状態の制御を個別に行うことができる。
【0048】
このフィラメントランプ10においても、発光管11内にハロゲンサイクルを行うためのハロゲンガスに加えて、絶縁破壊電圧値の高い放電抑制ガスが封入されていることが好ましい。これにより、隣り合うフィラメント体における互いに接近する端部同士で電位差が生ずる場合であっても、不所望な放電が発生することを一層確実に防止することができる。放電抑制ガスとしては、上記実施例において例示したものを用いることができる。
【0049】
上記フィラメントランプ10においては、電力制御手段74a,74b,74cによって適正な大きさに制御された電力が各フィラメント体14,15,16に対して供給されると、各フィラメントコイル14b,15b,16bにおいては、その一端部と他端部との間で電位差が生じて各フィラメントコイル14b,15b,16bに電流が流れて発光状態とされる。この状態においては、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bの一端部またはリードと、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの他端部またはリードとが互いに電位差が小さい状態または同電位となる状態とされると共に、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bの一端部またはリードと、第3のフィラメント体16に係るフィラメントコイル16bの他端部またはリードとが互いに電位差が小さい状態または同電位となる状態とされる。
【0050】
而して、上記構成のフィラメントランプ10によれば、上記フィラメントランプと同様の効果、すなわち、各フィラメント14b, 15b, 16bの発光状態を独立して制御することができるので、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、隣り合うフィラメント体における互いに接近する端部同士が同位相となるよう三相交流電力が供給されることにより、大電力をフィラメントに投入した場合であっても、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、隣り合うフィラメント間あるいは隣り合うリード間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる結果、フィラメントコイルあるいはリードが溶断するという不具合が発生することを確実に防止することができる。 また、互いに異なる大きさの電流を各フィラメントコイル14b,15b,15cに供給することにより、互いに接近するフィラメント体14,15,16の端部同士に電位差が生じた場合であっても、さらに特定の放電抑制ガスが発光管11内に封入されていることにより、放電抑制ガスが絶縁破壊電圧の高いものであるので、当該電位差に起因して不所望な放電が生ずることを一層確実に防止することができる。
【0051】
さらに、本発明のフィラメントランプにおいては、図8に示すような構成とすることができる。
このフィラメントランプ10は、図6に示す構成のフィラメントランプにおいて、各フィラメント体の構成が異なると共に、発光管11の内部における隣接するフィラメント間の位置に、各々例えば石英ガラス等の絶縁材料からなる複数の板状の支持部材19a,19b, 19c, 19dが管軸に対して垂直に設けられていることの他は、図6に示すフィラメントランプと同一の構成を有するものである。
【0052】
第1のフィラメント体14は、図9に示すように、フィラメントコイル14bとこのフィラメントコイル14bの他端部に連結された給電用のリード14aおよびフィラメントコイル14bの一端部に連結されたリード14cとにより構成されている。
【0053】
第1のフィラメント体14における他端側のリード14aは、1本の線条材により形成されており、線状のリード本体部142aと、このリード本体部142aに直交する方向(連結されるフィラメントコイルの径方向)に伸びる径方向部分を有する鉤状部140aとを有する。
鉤状部140aは、リード本体部142aに連続してリード本体部142aに直交する方向に伸びるよう折り曲げられた径方向部143aと、この径方向部143aに連続する、コイル軸がリード本体部142aと並行して伸びるコイル状のフィラメント連結部141aと、このフィラメント連結部141aに連続してそのコイル軸方向に直交する方向に伸び、先端部がコイル軸方向に伸びるよう折り曲げられたL字状部144aとにより構成されている。
フィラメント連結部141aは、フィラメントコイル14bのコイル内径に適合する外径を有する。
リード14aにおけるL字状部144aには、その先端部が例えばレーザー等で加熱溶融されることによりエッジ部分を有さない球状部145aが形成されている。
【0054】
第1のフィラメント体14における一端側のリード14cは、リード14aと同一の構成を有し、便宜上、リード14aと同一の構成部分には「a」を「c」に替えて同一の符号が付してある。
【0055】
第1のフィラメント体14においては、フィラメントコイル14bの他端部をリード14aのL字状部144aに対して捩じ込むことにより、フィラメント連結部141aがフィラメントコイル14bの他端部における内部空間内に挿入されてその外周面がフィラメントコイル14bの内面に当接状態で配置されると共に、L字状部144aがフィラメントコイル14bのコイルピッチ間においてフィラメントコイル14bの径方向外方に突出するよう挟まれた状態とされ、これにより、リード14aとフィラメントコイル14bとの連結が達成されている。
また、リード14cについても同様に、フィラメント連結部141cがフィラメントコイル14bの内部に当接状態で配置されると共に、L字状部144cがフィラメントコイル14bのコイルピッチ間においてフィラメントコイル14bの径方向外方に突出するよう挟まれた状態とされ、これにより、リード14cとフィラメントコイル14bとの連結が達成されている。
【0056】
また、第2のフィラメント体15および第3のフィラメント体16についても、第1のフィラメント体14と同一の構成とされており、フィラメントコイル15b(16b)とこのフィラメントコイル15b(16b)の他端部に連結された給電用のリード15a (16a)およびフィラメントコイル15b(16b)の一端部に連結されたリード15c(16c)とにより構成されている。
【0057】
支持部材19aには、図10に示すように、略中央部に開口197が形成されていると共に、その周縁部に、フィラメント体を位置決めするための位置決め機構を構成する複数例えば6つの切欠き部191,192,193,194,195,196が互いに周方向に等間隔毎に離間した位置に形成されている。
開口197を形成することは必須ではないが、支持部材に開口197を設けることにより、支持部材とフィラメントコイルとの間隔を大きくすることが可能となり、支持部材の熱的負荷を軽減することができる。
また、他の支持部材19b,19c,19dについても同様の構成とされている。
【0058】
第1のフィラメント体14は、他端側のリード14aにおけるL字状部144aが支持部材19aの切り欠き部196に係合されると共にリード本体部142aが当該切欠き部196と対角の位置の切欠き部193内に挿通され、フィラメントコイル14bが支持部材19aの一面側において支持部材19aに対して垂直な方向に伸びる姿勢で、取り付けられており、また、一端側のリード14cについても同様に、一端側のリード14cにおけるL字状部144cが支持部材19bの切欠き部の一に係合されると共にリード本体部142cが当該切欠き部と対角の位置の切欠き部内に挿通され、フィラメントコイル14bが支持部材19bの他面側において支持部材19bに対して垂直な方向に伸びる姿勢で、取り付けられており、これにより、第1のフィラメント体14が発光管11に対して位置決めされた状態で支持されている。
第1のフィラメント体14における他端側のリード14aは、発光管11の他端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13aを介して外部リード18aに電気的に接続されている。
また、一端側のリード14cは、支持部材19c,19dにおける、第2のフィラメント体15および第3のフィラメント体16に係るリードの鉤状部の位置決めに寄与しない切り欠き部内を挿通されて発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の一端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13dを介して外部リード18dに電気的に接続されている。
【0059】
第2のフィラメント体15は、他端側のリード15aにおける鉤状部が、フィラメント体14の一端部を支持する支持部材19bの一面側において、第1のフィラメント体14に係るリード14cの位置決めに寄与しない他の切欠き部に係合されると共に、リード本体部152aが当該切欠き部と対角の位置の切欠き部内に挿通され、フィラメントコイル15bが支持部材19bに対して垂直な方向に伸びる姿勢で、取り付けられており、一端側のリード15cにおける鉤状部が支持部材19cに対して同様に取り付けられており、これにより、第2のフィラメント体15が発光管11に対して位置決めされた状態で支持されている。
第2のフィラメント体15における他端側のリード15aは、支持部材19aにおける、第1のフィラメント体14に係るリード14aの位置決めに寄与しない切欠き部191(図10参照)内を挿通されて発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の他端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13bを介して外部リード18bに電気的に接続されている。
また、一端側のリード15cは、支持部材19dにおける、第3のフィラメント体16に係るリード16cの位置決めに寄与しない切欠き部内を挿通されて発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の一端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13eを介して外部リード18eに電気的に接続されている。
【0060】
第3のフィラメント体16は、他端側のリード16aにおける鉤状部が、第2のフィラメント体15を支持する支持部材19cの一面側において、支持部材19cの残りの切欠き部に係合されると共に、リード本体部が当該切欠き部に対角の位置の切欠き部内に挿通されて、フィラメントコイル16bが支持部材19cに対して垂直な方向に伸びる姿勢で、取り付けられており、一端側のリード16cにおける鉤状部が支持部材19dに対して同様に取り付けられており、これにより、第3のフィラメント体16が発光管11に対して位置決めされた状態で支持される。
第3のフィラメント体16における他端側のリード16aは、支持部材19bおよび支持部材19aにおける、他のフィラメント体14, 15に係るリード14a,14c, 15aの位置決めに寄与しない切欠き部(例えば支持部材19aにおける切欠き部195、図10参照)内を挿通されて発光管11の管軸に沿って伸び、発光管11の他端側の封止部12aに気密に埋設された金属箔13cを介して外部リード18cに電気的に接続されている。
フィラメント体16の一端側のリード16cは、発光管11の一端側の封止部12bに気密に埋設された金属箔13fを介して外部リード18fに電気的に接続されている。
【0061】
このフィラメントランプ10においては、各フィラメント体14,15,16に係る外部リードの各々は、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに隣接する端部同士が同位相となり、かつ、第2のフィラメント体15および第3のフィラメント体16における互いに隣接する端部同士が同位相となるよう、三相交流電力を供給する給電装置75に給電線によって電気的に接続されており、具体的には、図11に示すように、第1のフィラメント体14に係るフィラメントコイル14bがR−S相に接続され、第2のフィラメント体15に係るフィラメントコイル15bがS−T相に接続され、第3のフィラメント体16に係るフィラメントコイル16bがT−R相に接続されており、これにより、各フィラメントコイル14b,15b,16bに対して、図示しない電力制御手段を介して個別に電力を給電することにより、各フィラメントコイル14b,15b,16bの発光状態の制御を個別に行うことができる。
【0062】
而して、上記構成のフィラメントランプ10によれば、上記フィラメントランプ10と同様の効果、すなわち、各フィラメント14b, 15b, 16bの発光状態を独立して制御することができるので、所望の放射照度分布を確実に得ることができ、しかも、隣り合うフィラメント体における互いに接近する端部同士が同位相となるよう三相交流電力が供給されることにより、大電力をフィラメントに投入した場合であっても、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、隣り合うフィラメント間あるいは隣り合うリード間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる結果、フィラメントコイルあるいはリードが溶断するという不具合が発生することを確実に防止することができる。
また、互いに異なる大きさの電流を各フィラメントコイル14b,15b,16bに供給することにより、互いに接近するフィラメント体14,15,16の互いに隣接する端部同士に電位差が生じた場合であっても、さらに特定の放電抑制ガスが発光管11内に封入されていることにより、放電抑制ガスが絶縁破壊電圧の高いものであるので、当該電位差に起因して不所望な放電が生ずることを一層確実に防止することができる。
【0063】
さらに、フィラメント体におけるリードが、その鉤状部が係合される切欠き部からなる被係合部による位置決め機構が形成された支持部材によって、支持されていることにより、更にフィラメントコイルの周方向の変位(移動)が規制されるので、フィラメント体の位置決めを一層確実に行うことができる。
従って、各フィラメントコイル14b,15b,16bを発光管11内の所望の位置に高精度にかつ容易に配置することができると共に、各フィラメントコイル14b,15b,16bの位置が重力等の影響によって経時的に変位することを防止することができて長期間にわたって初期の性能を確実に維持することができる。
また、フィラメントコイル14b,15b,16bが断線するなどの不測の事態によってフィランメントランプの構成部材の一部を交換する必要が生じた場合においても、発光管11内に各フィラメントコイル14b,15b,16bを高い再現性で高精度に配置することができるので、フィラメント体の交換前後における放射照度分布の再現性を確保することができる。
【0064】
このように、2つの隣り合うフィラメント体が共通の支持部材によって支持されているという構成上、当該支持部材に係合されるリードの鉤状部が他のフィラメント体に接近した状態とされるが、リードの鉤状部の先端に球状部が形成されていることにより、リードの端部に放電が集中しにくくなるため、隣り合うリード間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる。
【0065】
以上においては、複数のフィラメント体の各々に対して交流電力を供給する構成のものについて説明したが、本発明のフィラメントランプにおいては、各フィラメント体に対して直流電力が供給される構成とすることができる。以下、図1に示す構成のフィラメントランプ(フィラメント体の数が2つである構成のもの)において、各フィラメント体に対して直流電力が供給される構成のものを例に挙げて説明する。
図12は、本発明のフィラメントランプの他の構成例における、フィラメント体と給電装置との結線状態を概略的に示す説明図である。
このフィラメントランプにおいては、第1のフィラメント体14に係る一端側のリード14cが第1の直流給電装置78aの高圧側(正極側)に接続され、他端側のリード14aが第1の直流給電装置78aの低圧側(負極側)に接続されている。
また、第2のフィラメント体15に係る一端側のリード15cが第2の直流給電装置78bの低圧側(負極側)に接続され、他端側のリード15aが第2の直流給電装置78bの高圧側(正極側)に接続されている。
従って、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに接近する端部同士が同極性となる状態で、各フィラメントコイル14b, 15bに対して別個の直流給電装置78a,78bによって直流電力が投入される。
【0066】
上記構成のフィラメントランプによれば、各フィラメント体に交流電力が供給される構成のものと同様の効果、すなわち、第1のフィラメント体14および第2のフィラメント体15における互いに接近する端部同士が同極性となるよう直流電力が供給されることにより、大電力をフィラメントに投入した場合であっても、これらの間に生じる電位差が小さくまたは零となるので、フィラメントコイル14b, 15b間あるいはリード14c, 15a間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる結果、フィラメントコイルあるいはリードが溶断するという不具合が発生することを確実に防止することができる。
また、互いに異なる大きさの電流を各フィラメントに供給することによって隣り合うフィラメント体におけるリード間に電位差が生じた場合であっても、さらに放電抑制ガスが発光管内に封入されていることにより、放電抑制ガスが絶縁破壊電圧の高いものであるので、不所望な放電の発生を一層確実に防止することができる。
【0067】
以上、本発明のフィラメントランプの実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、フィラメント体の数は限定されるものではなく、目的に応じて適宜に変更することができる。フィラメント体の数を多くすれば、被処理体に対する放射照度分布を一層精密に制御することができ、例えば、高精度の温度制御を要求される拡散工程を行う場合には、5個以上であることが好ましく、特にφ300mm以上の大口径の半導体ウエハについての処理を行う場合には、7ないし9個であることが好ましい。
さらに、封止部に気密に埋設される導電性部材は、金属箔に限らず、板状体のものであってもよい。
【0068】
以上のように、本発明のフィラメントランプは、発光管内に配設された複数のフィラメントの発光状態を独立に制御可能に構成されており、また、フィラメント体間で不所望な放電を発生させることなしに、フィラメント体に対して大電力を投入することが可能に構成されたものであることから、当該フィラメントランプの複数からなるランプユニットを構成することにより、光照射式加熱処理の加熱用光源として極めて有用なものとなる。以下、本発明の光照射式加熱処理装置について説明する。
【0069】
<光照射式加熱処理装置>
図13は、本発明の光照射式加熱処理装置の一例における構成の概略を示す正面断面図、図14は、図13に示す光照射式加熱処理装置の光源部を構成する第1のランプユニットおよび第2のランプユニットにおける、フィラメントランプの配列例を示す平面図である。
この光照射式加熱処理装置100は、内部空間が例えば石英からなる窓板4によって上下に区画されてランプユニット収容空間S1および加熱処理空間S2が形成されたチャンバ300を備えている。
【0070】
ランプユニット収容空間S1には、例えば10本の上記フィラメントランプ10が、ランプ中心軸が互いに同一平面レベルに位置された状態で、所定の間隔で離間して並設されてなる第1のランプユニット200Aと、例えば10本の上記フィラメントランプ10が、ランプ中心軸が互いに同一平面レベルに位置された状態で、所定の間隔で離間して並設されてなる第2のランプユニット200Bとが、上下方向に並んだ位置において互いに対向するように配置されている。
第1のランプユニット200Aを構成する各フィラメントランプ10と、第2のランプユニット200Bを構成する各フィラメントランプ10とは、ランプ中心軸が互いに交差する状態とされている。
【0071】
第1のランプユニット200Aの上方には、第1のランプユニット200Aおよび第2のランプユニット200Bから上方に向けて照射された光を被処理体W側へ反射する反射鏡201が配置されている。
反射鏡201は、例えば無酸素銅からなる母材に金がコートされてなるものであり、反射断面が、例えば円の一部、楕円の一部、放物線の一部または平板状などから選ばれる形状を有する。
【0072】
第1のランプユニット200Aの各フィラメントランプ10は、一対の第1の固定台650、651により支持されている。
第1の固定台650,651は導電性部材からなる導電台66と、セラミックス等の絶縁部材からなる保持台67とにより構成されており、保持台67は、チャンバ300の内壁に設けられており、導電台66を保持している。
第1のランプユニット200Aを構成するフィラメントランプ10の本数をn1、フィラメントランプ10が有するフィラメント体の個数をm1とするとき、各フィラメント体全てに独立に電力が供給される構成とされている場合には、n1×m1組の一対の第1の固定台650、651が必要とされる。
【0073】
第2のランプユニット200Bの各フィラメントランプ10は、図示しない第2の固定台により支持されており、第2の固定台は、第1の固定台と同様に、導電台と保持台とにより構成されている。
第2のランプユニット200Bを構成するフィラメントランプ10の本数をn2、フィラメントランプ10が有するフィラメント体の個数をm2とするとき、各フィラメント全てに独立に電力が供給される構成とされている場合には、n2×m2組の一対の第2の固定台が必要とされる。
【0074】
チャンバ300には、電源部7を構成する複数の給電装置の各々からの給電線が接続される一対の電源供給ポート71、72が設けられており、この一対の電源供給ポート71、72の組数は、フィラメントランプ10の個数、各フィラメントランプ10内のフィラメント体の個数等に応じて設定される。
この実施例においては、電源供給ポート71は、第1のランプ固定台650の導電台66と電気的に接続されており、この第1のランプ固定台650の導電台66は、例えばフィラメントコイル14bの他端部に連結されたリード14aに接続された外部リードと電気的に接続されている。
また、電源供給ポート72は、第1のランプ固定台651の導電台66と電気的に接続されており、この第1のランプ固定台651の導電台66は、例えば、フィラメントコイル14bの一端側に連結されたリード14cに接続された外部リードと電気的に接続されている。
これにより、電源部7における給電装置7aに対して、第1のランプユニット200Aにおける1つのフィラメントランプ10に係るフィラメントコイル14bが電気的に接続される。
また、このフィラメントランプ10における他のフィラメントコイル15b,16bについても、他の一対の電源供給ポート71、72より、各々、給電装置に対して同様の電気的接続がなされる。
そして、第1のランプユニット200Aを構成する他のフィラメントランプの各フィラメントコイルおよび第2のランプユニット200Bを構成するフィラメントランプの各フィラメントコイルについても、各々、給電装置に対して同様の電気的接続がなされる。
このような構成とされていることにより、各フィラメントコイルを選択的に発光させることにより、あるいは各フィラメントコイルへの供給電力の大きさを個別に調整することにより、被処理体W上の放射照度分布を任意に、かつ、高精度に設定することができる。
【0075】
この光照射式加熱処理装置100においては、被処理体Wの加熱処理を行うに際して各フィラメントランプを冷却する冷却機構が設けられている。
具体的には、チャンバ300の外部に設けられた冷却風ユニット8からの冷却風がチャンバ300に設けられた冷却風供給ノズル81の吹出し口82を介してランプユニット収容空間S1に導入され、当該冷却風が第1のランプユニット200Aおよび第2のランプユニット200Bにおける各フィラメントランプ10に吹き付けられることにより、各フィラメントランプ10を構成する発光管11が冷却され、その後、熱交換により高温になった冷却風がチャンバ300に形成された冷却風排出口83から外部に排出される。
【0076】
このような冷却機構は、各フィラメントランプ10の封止部12a、12bは他の箇所に比して耐熱性が低いため、冷却風供給ノズル81の吹出し口82が、各フィラメントランプの封止部12a、12bに対向するよう形成され、各フィラメントランプの封止部12a、12bが優先的に冷却されるように構成されていることが望ましい。
なお、ランプユニット収容空間S1に導入される冷却風の流れは、熱交換されて高温になった冷却風が逆に各フィラメントランプを加熱しないよう、また、反射鏡201も同時に冷却するよう、設定されている。また、反射鏡201が図示を省略した水冷機構により水冷される構成のものである場合には、必ずしも反射鏡201も同時に冷却されるように冷却風の流れが設定されていなくともよい。
【0077】
また、この光照射式加熱装置100においては、冷却風供給ノズル81の吹出し口82が窓板4の近傍の位置にも形成されており、冷却風ユニット8からの冷却風によって窓板4が冷却される構成とされている。これにより、加熱される被処理体Wからの輻射熱によって蓄熱される窓板4から2次的に放射される熱線によって、被処理体Wが不所望な加熱作用を受けて被処理体Wの温度制御性の冗長化(例えば、設定温度より被処理物の温度が高温になるようなオーバーシュート)や、蓄熱される窓板4自体の温度ばらつきに起因した被処理体Wにおける温度均一性の低下、あるいは被処理体Wの降温速度の低下、などの不具合が発生することを確実に防止することができる。
【0078】
チャンバ300における加熱処理空間S2には、被処理体Wが固定される処理台5が設けられている。
処理台5は、例えば被処理体Wが半導体ウエハである場合には、モリブデンやタングステン、タンタルのような高融点金属材料やシリコンカーバイド(SiC)などのセラミック材料、または石英、シリコン(Si)からなる薄板の環状体であって、その円形開口部の内周部に半導体ウエハを支持する段差部が形成されてなるガードリング構造のものにより構成されていることが好ましい。
処理台5は、処理台5それ自体も光照射によって高温とされるので、対面する半導体ウエハの外周縁が補助的に放射加熱され、これにより、半導体ウエハの外周縁からの熱放射などに起因する半導体ウエハの周縁部の温度低下が補償される。
【0079】
処理台5に設置される被処理体Wの裏面側には、被処理体Wの温度分布をモニタするための、例えば熱電対や放射温度計よりなる温度測定部91の複数が被処理体Wに当接或いは近接して設けられており、各温度測定部91は温度計9に接続されている。ここに、温度測定部91の個数および配置位置は、特に限定されるものではなく、被処理体Wの寸法に応じて設定することができる。
【0080】
温度計9は、各温度測定部91によりモニタされた温度情報に基づいて、各温度測定部91の測定地点における温度を算出するとともに、算出された温度情報を温度制御部92を介して主制御部3に送出する機能を有する。
主制御部3は、被処理体W上の各測定地点における温度情報に基づいて、被処理体W上の温度が所定の温度で均一な分布状態となるように指令を温度制御部92に送出する機能を有する。
温度制御部92は、主制御部3からの指令に基づいて、電源部7からの各フィラメントランプのフィラメントコイルに供給される電力の大きさを制御する機能を有する。
【0081】
主制御部3は、例えばある測定地点の温度が所定の温度に比して低いという温度情報を温度制御部92から得た場合には、当該測定地点およびその近傍位置に対して光照射を行うフィラメントコイルから放射される光が増加するように、当該フィラメントコイルに対する給電量を増加させるよう温度制御部92に対し指令を送出し、温度制御部92は、主制御部3から送出された指令に基づいて、電源部7から当該フィラメントコイルに接続された電源供給ポート71、72に供給される電力を増加させる。
【0082】
また、主制御部3は、ランプユニット200A、200Bにおけるフィラメントランプ10の点灯時において、冷却風ユニット8に指令を送出し、冷却風ユニット8は、この指令に基づいて、発光管11および反射鏡201、窓板4が高温状態とならないよう冷却風を供給する。
【0083】
この光照射式加熱処理装置100においては、加熱処理の種類に応じたプロセスガスを加熱処理空間S2内に導入・排気するプロセスガスユニット800が接続されている。
例えば、熱酸化プロセスを行う場合は、加熱処理空間S2に酸素ガス、および、加熱処理空間S2をパージするためのパージガス(例えば、窒素ガス)を導入・排気するプロセスガスユニット800が接続される。
プロセスガスユニット800からのプロセスガス、パージガスはチャンバ300に設けられたガス供給ノズル84の吹出し口85を介して加熱処理空間S2内に導入されると共に排出口86を介して外部に排出される。
【0084】
上記光照射式加熱処理装置100においては、第1のランプユニット200Aおよび第2のランプユニット200Bを構成する各フィラメントランプのフィラメントコイルの各々に対して適正な大きさに制御された電力が電源部7から供給されて点灯状態とされることにより、フィラメントランプから放射される光が、直接的にあるいは反射鏡201によって反射されて窓板4を介して加熱処理空間S2に設けられた被処理体Wに照射されて、被処理体Wの加熱処理が行われる。
【0085】
而して、上記構成の光照射式加熱処理装置100によれば、第1のランプユニット200Aおよび第2のランプユニット200Bを構成するフィラメントランプが、隣り合うフィラメント体における互いに接近する部分同士で不所望な放電が発生することが防止された構成のものであるので、第1のランプユニット200Aおよび第2のランプユニット200Bの各々は、発光管内において、複数のフィラメント体が発光管の長手方向に順次に並んで配置され、各フィラメントに対して独立に給電されるフィラメントランプ10が複数並列に配置されて構成されていることにより、発光管の軸方向およびこれと垂直な方向の両方向について光強度分布の調整をすることができ、従って、被照射体Wの表面における放射照度分布を高精度に設定することができる。
【0086】
例えばフィラメントランプの発光長よりも全長が短い狭小な特定領域のみに限定して、この特定領域上の放射照度を設定することができるので、この特定領域とその他の領域において、それぞれの特性に対応した放射照度分布を設定することができる。例えば、図14に示す被処理体Wにおける、フィラメントランプ10Aとフィラメントランプ10Bないし10Cとが交差する箇所の直下の領域(「領域1」ともいう)の温度が、被処理体Wにおける他の領域(「領域2」ともいう)の温度に比して低いような場合、或いは、領域1における温度上昇の度合いが領域2における温度上昇の度合いより小さいことがあらかじめ判明しているような場合には、フィラメントランプ10Aに係る各フィラメントコイルのうち、領域1に対応するフィラメントコイルへの給電量を増加させることにより、領域1と領域2との温度が均一となるように温度調整することができる。なお、図14において、各フィラメントランプの内部に図示されている線分は、各フィラメントコイルの配置位置を示すものである。従って、被処理体Wの全体にわたって均一な温度分布で加熱処理を行うことができる。なお、図14では、各フィラメントランプ10内のフィラメントコイルの配置位置を1本の直線で示しているが、これは複数の並んだフィラメントコイルの総全長を示しており、複数のフィラメントコイルの1本1本の表示は省略してある。
【0087】
また、ランプユニット200A,200Bから所定の距離だけ離間した被処理体W上の放射照度分布を精密に、かつ、任意の分布に設定することができる結果、被処理体W上の放射照度分布を被処理体Wの形状に対して非対称に設定することも可能となる。従って、被処理体Wにおける場所的な温度変化の度合いの分布が被処理体Wの形状に対して非対称である場合においても、それに対応して、被処理体W上の放射照度分布を設定することができ、被処理体Wを均一な温度分布状態で加熱することができる。
【0088】
さらに、フィラメントランプ10が、フィラメント間に不所望な放電が発生することが確実に防止されて発光管内に配置される各フィラメント同士の離間距離を極めて小さくできる構成のものであることから、発光しない各フィラメント間の離間部の影響を小さくすることができ、被処理体上での照度分布の不所望なバラツキを極めて小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のフィラメントランプの一例における構成の概略を示す説明用斜視図である。
【図2】フィラメント体の一構成例を示す正面図である。
【図3】フィラメント体のリードとフィラメントとの連結部を示す拡大断面図である。
【図4】各フィラメント体と給電装置との結線状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図5】複数のフィラメント体の各々に三相交流電力を供給する給電装置を用いた場合における、各フィラメント体と給電装置との結線状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図6】本発明のフィラメントランプの他の例における構成の概略を示す説明用斜視図である。
【図7】図6に示すフィラメントランプにおける、各フィラメント体と給電装置との結線状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図8】本発明のフィラメントランプのさらに他の例における構成の概略を示す説明用斜視図である。
【図9】図8に示すフィラメントランプにおけるフィラメント体の構成例を示す正面図である。
【図10】フィラメント体と支持部材との連結部を拡大して示す斜視図である。
【図11】図8に示すフィラメントランプにおける、各フィラメント体と給電装置との結線状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図12】複数のフィラメント体の各々に直流電力を供給する給電装置を用いた場合における、各フィラメント体と給電装置との結線状態の一例を概略的に示す説明図である。
【図13】本発明の光照射式加熱処理装置の一例における構成の概略を示す正面断面図である。
【図14】図13に示す光照射式加熱処理装置の光源部を構成する第1のランプユニットおよび第2のランプユニットにおける、各フィラメントランプの配列例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 フィラメントランプ
11 発光管
12a,12b 封止部
13a,13b,13c,13d,13e,13f 金属箔
14 第1のフィラメント体
15 第2のフィラメント体
16 第3のフィラメント体
14a,15a,16a リード
14b,15b,16b フィラメントコイル
14c,15c,16c リード
140a,140c 鉤状部
141a,141c フィラメント連結部
142a,142c リード本体部
143a,143c 径方向部
144a,144c L字状部
145a,145c 球状部
17 アンカー
18a,18b,18c,18d,18e,18f 外部リード
19a,19b,19c,19d 支持部材
191,192,193,194,195,196 切欠き部
197 開口
25 絶縁管
73 給電装置
74a,74b, 74c 電力制御手段
75 給電装置
78a 第1の直流給電装置
78b 第2の直流給電装置
3 主制御部
4 窓板
5 処理台
7 電源部
7a 第1の給電装置
71,72 一対の電源供給ポート
650、651 一対の第1の固定台
66 導電台
67 保持台
8 冷却風ユニット
800 プロセスガスユニット
81 冷却風供給ノズル
82 吹出し口
83 冷却風排出口
84 ガス供給ノズル
85 吹出し口
86 排出口
9 温度計
91 温度測定部
92 温度制御部
100 光照射式加熱処理装置
200A 第1のランプユニット
200B 第2のランプユニット
201 反射鏡
300 チャンバ
S1 ランプユニット収容空間
S2 加熱処理空間
W 被処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に封止部が形成された直管状の発光管の内部に、各々コイル状のフィラメントと当該フィラメントに電力を供給するリードとが連結されてなるフィラメント体の複数が、各フィラメントが発光管の管軸方向に伸びるよう、管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメント体におけるリードの各々が封止部に配設された複数の導電性部材の各々に対して電気的に接続されてなり、各フィラメントに対してそれぞれ独立に電力を供給する給電機構を備えたフィラメントランプであって、
給電機構は交流電力供給源であって、隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同位相となるよう、前記導電性部材に結線されていることを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
給電機構は、各フィラメント体に対して三相交流電力を供給するものであることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項3】
少なくとも一端に封止部が形成された直管状の発光管の内部に、各々コイル状のフィラメントと当該フィラメントに電力を供給するリードとが連結されてなるフィラメント体の複数が、各フィラメントが発光管の管軸方向に伸びるよう、管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメント体におけるリードの各々が封止部に配設された複数の導電性部材の各々に対して電気的に接続されてなり、各フィラメントに対してそれぞれ独立に電力を供給する給電機構を備えたフィラメントランプであって、
給電機構は直流電力供給源であって、隣り合うフィラメント体の互いに接近する端部同士が同極性となるよう、前記導電性部材に結線されていることを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項4】
放電抑制ガスが発光管内に封入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフィラメントランプ。
【請求項5】
各フィラメント体におけるリードは、フィラメントのコイルピッチ間に挟まれた状態で当該フィラメントの径方向外方に突出して伸びるよう係合される、先端部がフィラメントのコイル軸方向に伸びる径方向部分を有する鉤状部を備えてなり、
隣接するフィラメントの互いに接近する端部に連結されたリードの各々が当該リードにおける鉤状部が係合される被係合部による位置決め機構が形成された共通の支持部材によって支持されることにより、フィラメントが発光管に対して位置決めされており、
前記支持部材を挟んで互いに対向して伸びる各々の鉤状部の先端には、球状部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフィラメントランプ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフィラメントランプが複数本並列配置されてなるランプユニットを有し、当該ランプユニットから放出される光を被処理体に照射して被処理体を加熱することを特徴とする光照射式加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−53035(P2008−53035A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227833(P2006−227833)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】