説明

フィラメントワインディング装置、該装置を用いて成形された成形品、及び、成形品の成形方法

【課題】成形品に凹状部を一体成形することが可能なフィラメントワインディング装置を提供する。
【解決手段】フィラメントワインディング装置1は、回転するマンドレル10にクリール80から樹脂槽90を経て供給された複合材料100を巻き付けて成形品を成形する装置であり、成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、マンドレル10の径方向に沿って移動可能な第1の内側押圧部を有する内側押圧装置と、成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、マンドレル10の径方向に沿って移動可能な第1の外側押圧部を有する外側押圧装置40と、をさらに備え、内側押圧装置は、マンドレル10の外周面に形成された開口部13を介して、第1の内側押圧部を外部に露出させるように、マンドレル10の内部に設けられ、外側押圧装置40は、第1の外側押圧部を第1の内側押圧部に対向させるように、マンドレル10の外部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するマンドレルに複合材料を巻き付けて成形品を成形するフィラメントワインディング装置、当該装置を用いて成形された成形品、及び、成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空状の成形品を複合材料により成形する技術として、回転するマンドレルに複合材料を巻き付けて成形品を成形するフィラメントワインディング法が従来から知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このフィラメントワインディング法により成形される代表的な成形品として、例えば圧力タンク等を挙げることが出来る。
【0003】
通常、タンクにはバルブが付随している。そのため、タンクの一部に凹状部を形成し、当該凹状部内にバルブを設置することにより、スペースの低減を図ることが出来る。
【0004】
しかしながら、これまでのフィラメントワインディング法では、中空成形品に凸状部を一体成形する技術は知られているが(例えば、特許文献2参照)、凹状部を一体成形する技術は知られておらず、タンクの一部を凹状に形成することによりスペースの低減を図ることが出来ない。
【特許文献1】特開平10−128858号公報
【特許文献2】特開平04−364929号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明は、成形品に凹状部を一体成形することが可能なフィラメントワインディング装置、該装置を用いて成形された成形品、及び、成形品の成形方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、回転可能に支持されたマンドレルと、前記マンドレルに複合材料を供給可能な供給手段と、を備え、回転する前記マンドレルに前記供給手段から供給された前記複合材料を巻き付けて成形品を成形するフィラメントワインディング装置であって、成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、前記マンドレルの径方向に沿って移動可能な第1の内側押圧部を有する内側押圧手段と、前記成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、前記マンドレルの径方向に沿って移動可能な第1の外側押圧部を有する外側押圧手段と、をさらに備え、前記内側押圧手段は、前記マンドレルの外周面に形成された開口部を介して、前記第1の内側押圧部を外部に露出させるように、前記マンドレルの内部に設けられ、前記外側押圧手段は、前記第1の外側押圧部を前記第1の内側押圧部に対向させるように、前記マンドレルの外部に設けられているフィラメントワインディング装置、及び、当該装置を用いて成形された成形品が提供される。
【0006】
また、上記目的を達成するために、本発明によれば、回転するマンドレルに複合材料を巻き付けて成形品を成形する方法であって、前記マンドレルの外周面において凹状部を成形すべき位置を凸状に盛り上げた状態で、前記複合材料を巻き付ける巻付ステップと、前記マンドレルに巻き付けられた前記複合材料の凸状部を、前記マンドレルの径方向内側に向かって押圧して凹状に変形させる変形ステップと、を備えた成形品の成形方法が提供される。
【0007】
本発明では、内側押圧手段の第1の内側押圧部によりマンドレルにおける凹状部の成形すべき位置を凸状に盛り上げた状態で複合材料を巻き付け、当該凸状部に外側押圧手段の第1の外側押圧部を当接させて第1の内側押圧部と第1の外側押圧部との間に複合材料を挟み込んだ状態で、第1の内側押圧部と第1の外側押圧部とをマンドレルの径方向内側に向かって同時に移動させて凸状部を凹状に変形させ、その後、第1の内側押圧部及び第1の外側押圧部を離反方向に移動させて複合材料を離型する。
【0008】
このように、マンドレルの外周面において凹状部を形成すべき位置を予め凸状に盛り上げておき、このマンドレルに複合材料を巻き付けた後に、当該複合材料において凸状に形成された凸状部を凹状に反転させるように変形させる。これにより、複合材料により成形される成形品に凹状部を一体成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置の全体を示す概略斜視図、図2は本発明の実施形態におけるマンドレル及び各押圧装置の断面図、図3は図2のIII部の拡大図、図4は本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置のエア配管図、図5は本発明の実施形態におけるロック機構を示す断面図である。
【0011】
本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置1は、マトリクス(母材)としての合成樹脂材料と強化繊維とから成る繊維強化複合材料(FRP:Fiber Reinforced Plastic)を用いて、例えば圧力タンクやプロペラシャフト等の円筒状或いは管状の成形品を成形するための装置である。
【0012】
このフィラメントワインディング装置1は、図1に示すように、クリール80から送り出された強化繊維を、樹脂槽90に溜められた合成樹脂材料に含浸させた後に、回転するマンドレル10にフィードアイ(不図示)を介して当該複合材料100を巻き付けることにより、成形品を成形する。樹脂槽90は図中A矢印方向に移動可能になっており、また、マンドレル10は架台70に回転軸11を中心として回転自在に支持され、ベルト31を介して連結されたモータ30により図中B方向に回転可能となっている。そして、樹脂槽90の移動制御とマンドレル10の回転制御とが、特に図示しない制御装置により同調されることにより、繊維強化複合材料100から成る所定形状の成形品がマンドレル10の外周面に形作られる。このようにマンドレル10の外周面に巻き付けられた複合材料100は、当該マンドレル10と共に加熱炉等に投入されて合成樹脂材料が加熱・硬化され、その後、マンドレル10が脱芯されることにより成形品として成形される。
【0013】
繊維強化複合材料100を構成するマトリクスとしては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂材料や、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、及び、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂材料等を挙げることが出来る。
【0014】
また、繊維強化複合材料100を構成する強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、及び、ポリエステル繊維等を挙げることが出来る。これらの中でも高剛性であるという観点から炭素繊維を強化材として用いたCFRPが特に好ましい。
【0015】
なお、マンドレル10に巻き付けられる複合材料100としては、上記のような強化繊維を合成樹脂に含浸したロービング材の他に、強化繊維に合成樹脂材料を含浸させて成膜したシートを裁断して繊維状にしたプリプレグであっても良い。
【0016】
本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1は、マンドレル10の内部に設けられた内側押圧装置20と、当該マンドレル10の外部に設けられた外側押圧装置40と、を備えており、成形品に凹状部101を一体成形することが可能となっている。
【0017】
内側押圧装置20は、図2に示すように、成形すべき凹状部101を凸状に反転した形状を持つ第1の内側押圧部材21と、この第1の内側押圧部材21をロッドの先端にマンドレル10の径方向に沿って移動可能に支持している第1の内側エアシリンダ22と、を備えている。マンドレル10の外周面には、凹状部101を成形すべき位置に開口部13が形成されている。この開口部13は、第1の内側押圧部材21が通過可能な大きさを有しており、内側押圧装置20は、第1の内側押圧部材21がこの開口部13から露出するように、マンドレル10内に設けられている。なお、第1の内側押圧部材21の形状は、成形すべき凹状部101の形状に加えて、複合材料100のスプリングバック量等を考慮に入れて設定されても良い。また、複合材料や合成樹脂材料等の性質に応じて、第1の内側押圧部材41の接触面にローレット加工等の滑り止め加工を施しても良い。
【0018】
第1の内側押圧部材21は、第1の内側エアシリンダ22の一方の端部(ロッド先端部)にボルト締結等の手法により着脱可能に取り付けられている。従って、凹状部101内に配置されるバルブや配管等の仕様に合わせて、第1の内側押圧部材21を別形状の第1の内側押圧部材に適宜交換することにより、1台のフィラメントワインディング装置1により多様な形状の凹状部に容易に対応することが可能となっている。
【0019】
また、この内側押圧装置20は、成形すべき凹状部101の外周を包囲するような形状を持つ第2の内側押圧部材23と、この第2の内側押圧部材23をロッドの先端にマンドレル10の径方向に沿って移動可能に支持している第2の内側エアシリンダ24と、を備えている。マンドレル10の開口部13は、第2の内側押圧部材23が通過不可能な大きさを有しており、第2の内側エアシリンダ24が伸長すると、第2の内側押圧部材23の先端部が、開口部13の周縁に当接可能となっている。
【0020】
この第2の内側押圧部材23は、凹状部101の外周を包囲するような断面を持つ筒状体であり、一方の端部が開放されているのに対し、他方の端部は底面により閉じられている。この第2の内側押圧部材23の内孔には、その一方の端部側に第1の内側押圧部材21が位置するように、第1の内側押圧部材21及び第1の内側エアシリンダ22が挿入されており、他方の端部に第1の内側エアシリンダ22の他方の端部が固定されている。
【0021】
さらに、第2の内側エアシリンダ24の一方の端部(ロッド先端部)は、第2の内側押圧部材23の他方の端部を閉じている底面に、ボルト締結等の手法により着脱可能に取り付けられており、その他方の端部は、マンドレル10の内周面に固定されている。このように、第2の内側押圧部材23を第2の内側エアシリンダ24に着脱可能とすることにより、凹状部101内に配置するバルブや配管等の仕様に合わせて、第2の内側押圧部材23を別形状の第2の内側押圧部材に適宜交換することが出来、1台のフィラメントワインディング装置1により多様な形状の凹状部に容易に対応することが可能となっている。
【0022】
さらに、内側押圧装置20は、図2及び図3に示すように、第2の内側押圧部材23の一方の端部の内面にエアバッグ25が設けられている。このエアバッグ25は、配管26を介してエア供給装置50(図4参照)から供給されるエアにより膨張可能となっている。そして、このエアバッグ25は、膨張時には、後述する第1の外側押圧部41の周縁に位置する傾斜面41aを押圧可能な形状を有し、また収縮時には、第1の内側押圧部材21が第2の内側押圧部材23の一方の端部を通過可能な程度の大きさとなることが可能となっている(図3の符号25’参照)。このようなエアバッグ25により、成形すべき凹状部101の周縁に位置する傾斜部や段差部を押圧することにより、当該凹状部101の形状を良好な精度で成形することが可能となっている。なお、複合材料や合成樹脂材料等の性質に応じて、このエアバッグ25の表面にローレット加工等の滑り止め加工を施しても良い。
【0023】
外側押圧装置40は、図2に示すように、成形すべき凹状部101を凸状に反転した形状を持つ第1の外側押圧部材41と、この第1の外側押圧部材41をロッドの先端部にマンドレル10の径方向に沿って移動可能に支持している第1の外側エアシリンダ42と、を備えている。この外側押圧装置40は、マンドレル10の開口部13から露出する第1の内側押圧部材21に第1の外側押圧部材41が対向するように、マンドレル10の外部に設けられている。なお、第1の外側押圧部材41の形状は、上述した第1の内側押圧部材21と実質的に同一の形状であり、成形すべき凹状部101の形状に加えて、複合材料のスプリングバック量等を考慮に入れて設定されても良い。また、複合材料や合成樹脂材料等の性質に応じて、第1の外側押圧部材41の接触面にローレット加工等の滑り止め加工を施しても良い。
【0024】
第1の外側押圧部材41は、第1の外側エアシリンダ42の一方の端部(ロッド先端部)にボルト締結等の手法により着脱可能に取り付けられている。従って、凹状部101内に配置するバルブや配管等の仕様に合わせて、第1の外側押圧部材41を別形状の第1の外側押圧部材に適宜交換することにより、1台のフィラメントワインディング装置1により多様な形状の凹状部に容易に対応することが可能となっている。
【0025】
また、この外側押圧装置40は、成形すべき凹状部101の外周を包囲するような形状を持つ第2の外側押圧部材43と、この第2の外側押圧部材43をロッドの先端部にマンドレル10の径方向に沿って移動可能に支持している第2の外側エアシリンダ44と、を備えている。第2の外側押圧部材43は、上述の第2の内側押圧部材23と同様に、マンドレル10の開口部13を通過不可能な大きさを有しており、第2の外側エアシリンダ44が伸長すると、第2の外側押圧部材43の先端部が、開口部13の周縁に当接することが可能となっている。
【0026】
この第2の外側押圧部材43は、凹状部101の外周を包囲するような断面を持つ筒状体であり、一方の端部が開放されているのに対し、他方の端部は閉じられている。この第2の外側押圧部材43の内孔には、その一方の端部側に第1の外側押圧部材41が位置するように、第1の外側押圧部材41及び第1の外側エアシリンダ42が挿入されており、他方の端部には、第1の外側エアシリンダ42の他方の端部が固定されている。さらに、第2の外側エアシリンダ44の一方の端部(ロッド先端部)は、第2の外側押圧部材43の他方の端部を閉じている底面に、ボルト締結等の手法により着脱可能に取り付けられており、その他方の端部は、フレーム60に固定されている。このように、第2の外側押圧部材43を第2の外側エアシリンダ44から着脱可能とすることにより、凹状部101内に配置するバルブや配管等の仕様に合わせて、第2の外側押圧部材43を別形状の第2の外側押圧部材に適宜交換することが出来るので、1台のフィラメントワインディング装置1により多様な形状の凹状部に容易に対応することが可能となっている。
【0027】
以上のような構成の外側押圧装置40の各エアシリンダ42、44には、図4に示すように、配管を介してエア供給装置50よりエアが供給される。これに対し、内側押圧装置20は、マンドレル10と共に回転可能なように、配管に加えてロータリジョイント12を介してエア供給装置50に接続されている。
【0028】
さらに、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1は、図1に示すように、外側押圧装置40を支持するフレーム60(支持手段)をさらに備えている。
【0029】
このフレーム60は、マンドレル10の回転軸11と同軸上に架台70に回転可能に支持されている。また、モータ30とマンドレル10との間にはクラッチ32が介在しており、クラッチ32がオンの時には、モータ30の駆動によりマンドレル10と共にフレーム60が同調回転し、クラッチ32がオフの時には、モータ30の駆動によりマンドレル10のみが回転し、フレーム60は回転しないようになっている。
【0030】
また、架台70とフレーム60との間にはロック機構65が介在している。このロック機構65は、図5に示すように、フレーム60に形成された開口61に対して進退移動可能に架台70側に設けられたロック部材66を有している。そして、フレーム60をマンドレル10と同調回転させる場合には、ロック部材66を開口61に挿入せずにロック機構65をオフとして、フレーム60を架台70に対して非拘束な状態とする。これに対し、同調回転させない場合には、ロック部材66を開口61に挿入してロック機構65をオンとして、フレーム60を架台70に対して固定する。
【0031】
なお、マンドレル10とフレーム60とが同調回転する際、マンドレル10内に設けられた第1の内側押圧部材21に対して、フレーム60に支持された第1の外側押圧部材41が常に対向している。
【0032】
次に、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を用いた成形品の成形方法について説明する。
【0033】
図6A〜図6Eは本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程を示す図、図7は本発明の実施形態における成形工程の乾燥ステップの他の例を示す図である。
【0034】
先ず、図6Aに示すように、内側押圧装置10の第1の内側エアシリンダ22を伸長させ、開口部12を介して第1の内側押圧部材21をマンドレル10の外周面に凸状に突出させた状態で、樹脂槽90の移動制御とマンドレル10の回転制御とを同調させながら、複合材料100をマンドレル10の外周面に巻き付けて成形品の形状を形作る。
【0035】
複合材料100がマンドレル10の外周面に巻き付けられたら、同図に示すように、先ず、外側押圧装置40の第2の外側エアシリンダ44が伸長し、図6Bに示すように、マンドレル10に巻き付けられた複合材料100に第2の外側押圧部材43が当接して、第1の内側押圧部材21により形成された凸状部102の周囲を第2の外側押圧部材43が押圧する。
【0036】
次いで、同図に示すように、外側押圧装置40の第1の外側エアシリンダ42が伸長して、第1の内側押圧部材21により盛り上げられた凸状部102を、第1の外側押圧部材41が外側から押圧して、第1の内側押圧部材21と第1の外側部材41との間に凸状部102を挟み込む。
【0037】
このように、第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41との間に凸状部102を挟み込む前に、第2の外側押圧部材43により押圧することにより、第2の外側押圧部材43とマンドレル10の開口部13の周縁との間で変形させる複合材料100を固定することが出来、凸状部102を凹状に変形させる際に縒れや皺等の発生が防止することが可能となっている。
【0038】
次に、図6Cに示すように、第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41との間に凸状部102を挟み込んだ状態で、第1の内側エアシリンダ22をマンドレル10の径方向内側に向かって移動させると同時に、第1の外側エアシリンダ42をマンドレル10の径方向内側に向かって移動させる。このように、凸状部102を挟み込んだ状態で第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41とを同調して移動させることにより、マンドレル10に巻き付けられた複合材料100の凸状部102が、マンドレル10の径方向内側に向かって押圧されて凹状に変形される。
【0039】
第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41とが凹状部101を形成するのに最深部まで移動したら、同図に示すように、第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41との間に複合材料の凹状部101を挟み込んだ状態でエアバッグ25を膨張させる。これにより、第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41との間に挟み込まれた凹状部100の周縁に位置する傾斜面が、エアバッグ25により第1の外側押圧部材41に対して押圧されるので、成形すべき凹状部101を良好な精度で成形することが出来る。
【0040】
次いで、複合材料を構成する合成樹脂材料が低粘度タイプや遅硬化タイプである場合には、図6に示すように、ロック機構65をオフにすると共にクラッチ32をオンとして、マンドレル10とフレーム60とを同調回転させ、この状態で複合材料をフィラメントワインディング装置1ごと加熱炉Hに投入する。
【0041】
ここで、低粘度タイプや遅硬化タイプの合成樹脂材料で構成される複合材料の場合、マンドレル10に巻き付けた後にも当該合成樹脂材料が流動し、成形品内に合成樹脂材料の偏り(樹脂リッチ層)が発生する場合がある。これに対し、本実施形態では、加熱炉Hで複合材料を硬化させている間も、マンドレル10とフレーム60とを同調回転させることにより、合成樹脂材料の硬化中にも複合材料100が回転しているので、成形品に樹脂リッチ層が形成され難くなる。
【0042】
なお、複合材料100を構成する合成樹脂材料が高粘度タイプや速硬化タイプである場合には、合成樹脂材料の硬化中に複合材料100を回転させる必要はないので、図7に示すように、フィラメントワインディング装置1からマンドレル10のみを取り外し、当該マンドレル10をマンドレル台車Dに載置した状態で加熱炉Hに投入しても良い。
【0043】
マンドレル10の外周面に巻き付けられた複合材料100が硬化したら、加熱炉Hからフィラメントワインディング装置1を取り出し、図6Eに示すように、内側押圧装置20のエアバッグ25を収縮させ、第1の内側エアシリンダ22を縮ませて第1の内側押圧部材21を凹状部101から離遠させると共に、第2の内側エアシリンダ24を縮ませて第2の内側押圧部材23をマンドレル10の開口部13の周縁から離遠させる。
【0044】
同様に、外側押圧装置40の第1の外側エアシリンダ42を縮ませて第1の外側押圧部材41を凹状部101から離遠させると共に、第2の外側エアシリンダ44を縮ませて第2の外側押圧部材43をマンドレル10の開口部13の周縁から離遠させる。
【0045】
第1の内側押圧部材21と第1の外側押圧部材41とを離反方向に移動させて複合材料100の凹状部101を離型したら、複合材料100からマンドレル10を脱芯して成形品の成形が完了する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置及びそれを用いた成形品の成形方法では、マンドレル10の外周面において凹状部101を成形すべき位置を内側押圧装置20により予め凸状に盛り上げておき、このマンドレル10に複合材料100を巻き付けた後に、当該複合材料100に形成された凸状部102を凹状に反転させるように変形させることにより、複合材料100から構成される成形品に凹状部101を一体成形することが出来る。
【0047】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0048】
例えば、マンドレル10に複数の開口部13を形成し、その内部に複数の内側押圧装置20を配置すると共に、各内側押圧装置20にそれぞれ対向するようにマンドレル10の外部に外側押圧装置40を複数個設けても良く、これにより、筒状或いは管状の成形品に2以上の凹状部101を一体成形することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置の全体を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態におけるマンドレル及び各押圧装置の概略断面図である。
【図3】図3は、図2のIII部の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置のエア配管図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるロック機構を示す断面図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程の巻付ステップを示す概略断面図である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程の挟込ステップを示す概略断面図である。
【図6C】図6Cは、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程の変形ステップを示す概略断面図である。
【図6D】図6Dは、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程の乾燥ステップを示す図である。
【図6E】図6Eは、本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置による成形工程の開放ステップを示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における成形工程の乾燥ステップの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1…フィラメントワインディング装置
10…マンドレル
11…回転軸
12…ロータリジョイント
13…開口部
20…内側押圧装置
21…第1の内側押圧部材
22…第1の内側エアシリンダ
23…第2の内側押圧部材
24…第2の内側エアシリンダ
25…エアバッグ
26…配管
30…モータ
31…ベルト
32…クラッチ
33…支持部材
40…外側押圧装置
41…第1の外側押圧部材
41a…傾斜面
42…第1の外側エアシリンダ
43…第2の外側押圧部材
44…第2の外側エアシリンダ
50…エア供給装置
60…フレーム
61…開口
65…ロック機構
66…ロック部材
70…架台
80…クリール
90…樹脂槽
100…複合材料
101…凹状部
102…凸状部
H…加熱炉
D…マンドレル台車


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されたマンドレルと、
前記マンドレルに複合材料を供給可能な供給手段と、を備え、
回転する前記マンドレルに前記供給手段から供給された前記複合材料を巻き付けて成形品を成形するフィラメントワインディング装置であって、
成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、前記マンドレルの径方向に沿って移動可能な第1の内側押圧部を有する内側押圧手段と、
前記成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持ち、前記マンドレルの径方向に沿って移動可能な第1の外側押圧部を有する外側押圧手段と、をさらに備え、
前記内側押圧手段は、前記マンドレルの外周面に形成された開口部を介して、前記第1の内側押圧部を外部に露出させるように、前記マンドレルの内部に設けられ、
前記外側押圧手段は、前記第1の外側押圧部を前記第1の内側押圧部に対向させるように、前記マンドレルの外部に設けられているフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記第1の内側押圧部及び前記第1の外側押圧部は、前記成形すべき凹状部を凸状に反転させた形状をそれぞれ持つ請求項1記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記外側押圧手段は、前記成形すべき凹状部の外周を包囲するような形状を持ち、前記マンドレルの径方向に沿って移動可能な第2の外側押圧部をさらに有する請求項1又は2記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記内側押圧手段は、前記第1の外側押圧部の周縁を押圧可能な周縁押圧部をさらに有する請求項1〜3の何れかに記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
前記周縁押圧部は、膨張することにより前記第1の外側押圧部の周縁を押圧する請求項4記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項6】
前記内側押圧手段は、前記第1の内側押圧部を前記マンドレルの径方向に沿って移動可能に支持する第1の内側支持部をさらに有し、
前記外側押圧手段は、前記第1の外側押圧部を前記マンドレルの径方向に沿って移動可能に支持する第1の外側支持部をさらに有しており、
前記第1の内側押圧部は、前記第1の内側支持部から着脱可能であり、
前記第1の外側押圧部は、前記第1の外側支持部から着脱可能である請求項1〜5の何れかに記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項7】
前記外側押圧手段は、前記第2の外側押圧部を前記マンドレルの径方向に沿って移動可能に支持する第2の外側支持部をさらに有し、
前記第2の外側押圧部は、前記第2の外側支持部から着脱可能である請求項3〜6の何れかに記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項8】
前記外側押圧手段を支持する支持手段をさらに備え、
前記支持手段は、前記マンドレルと同調して回転可能である請求項1〜7の何れかに記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載のフィラメントワインディング装置を用いて成形された成形品。
【請求項10】
回転するマンドレルに複合材料を巻き付けて成形品を成形する方法であって、
前記マンドレルの外周面において凹状部を成形すべき位置を凸状に盛り上げた状態で、前記複合材料を巻き付ける巻付ステップと、
前記マンドレルに巻き付けられた前記複合材料の凸状部を、前記マンドレルの径方向内側に向かって押圧して凹状に変形させる変形ステップと、を備えた成形品の成形方法。
【請求項11】
回転するマンドレルに複合材料を巻き付けて成形品を成形する方法であって、
成形すべき凹状部の形状に対応した形状を持つ第1の内側押圧部を、前記マンドレルの外周面に形成された開口部から突出させた状態で、前記マンドレルに前記複合材料を巻き付ける巻付ステップと、
前記マンドレルに巻き付けられた前記複合材料に、前記成形すべき凹状部に対応した形状を持つ第1の外側押圧部を当接させて、前記第1の内側押圧部と前記第1の外側押圧部との間に前記複合材料を挟み込む挟込ステップと、
前記複合材料を挟み込んだ状態で、前記第1の内側押圧部と前記第1の外側押圧部とを前記マンドレルの径方向内側に向かって同調して移動させて、前記マンドレルに巻き付けられた前記複合材料の凸状部を前記マンドレルの径方向内側に向かって押圧して凹状に変形させる変形ステップと、
前記第1の内側押圧部と前記第1の外側押圧部とを離反方向に移動させて前記複合材料を離型する離型ステップと、を備えた成形品の成形方法。
【請求項12】
前記第1の内側押圧部及び前記第1の外側押圧部は、前記成形すべき凹状部を凸状に反転させた形状をそれぞれ持つ請求項11記載の成形品の成形方法。
【請求項13】
前記挟込ステップにおいて、前記成形すべき凹状部の外周を包囲するような形状を持つ第2の外側押圧部を、前記マンドレルに巻き付けられた前記複合材料に当接させた後に、当該複合材料に前記第1の外側押圧部を当接させる請求項11又は12記載の成形品の成形方法。
【請求項14】
前記変形ステップにおいて、前記複合材料を挟み込んだ状態で、前記第1の内側押圧部と前記第1の外側押圧部とを前記マンドレルの径方向内側に向かって移動させた後に、前記第1の外側押圧部の周縁を押圧する請求項11〜13の何れかに記載の成形品の成形方法。
【請求項15】
前記第1の内側押圧部と前記第1の外側押圧部との間に前記複合材料を挟み込んだ状態で、前記マンドレルを回転させながら前記複合材料の乾燥を行う乾燥ステップをさらに備えた請求項11〜14の何れかに記載の成形品の成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−264280(P2006−264280A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89814(P2005−89814)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】