説明

フィラメントワインディング装置

【課題】フィラメントワインディングにおいて、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することである。
【解決手段】フィラメントワインディング装置10は、カーボン繊維をセットし巻き出しを行うクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維に樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。クリールスタンド14には、巻付用カーボン繊維30とは別個に工程管理用のダミー繊維34が用意され、ダミー繊維34は巻付用カーボン繊維30と同じ工程を経てVf測定器28に供給される。Vf測定器28において測定された繊維と樹脂の割合のデータは制御部40に送られ製品成形中の工程制御に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置に係り、特に、繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂で製品を成形する方法として、十分な強度を有する繊維、例えばカーボン繊維を用い、これに液状の樹脂を含浸させて、製品の形状を形作るライナーに巻き付け、樹脂を加熱硬化させるフィラメントワインディング方法が知られている。カーボン繊維は、植物性の糸を例えば3000℃の高温で焼成し、極めて強度が強いものを用いることができるので、例えば高圧タンク等をフィラメントワインディング方法で製造することができる。
【0003】
フィラメントワインディング方法において、樹脂は、成形の際に複数の層に巻きつけたカーボン繊維同士を接合する機能等のために用いられるが、強度自体はカーボン繊維に比較すると弱い。そこで、フィラメントワインディング方法においては、製品の強度を確保するために、繊維と樹脂の割合、すなわち樹脂含浸繊維における樹脂含浸量を管理することが重要になる。例えば、繊維体積含有率Vf=(繊維の断面積/樹脂含浸繊維全体の断面積)×100%等が管理項目とされる。
【0004】
例えば特許文献1には、繊維束に付着した樹脂量を製品完成前に計測し、付着樹脂量の設定範囲からの逸脱を製品完成前に検知するフィラメントワインディング装置が開示されている。ここでは、樹脂含浸装置と巻付けヘッドとの間に付着樹脂重量計測部が配置される。付着樹脂の計測は、樹脂含浸装置から引き出された所定長さの繊維束をその両端で支承し、支承による影響を予め補正して、その重量を荷重計で測定することで行われている。
【0005】
また、フィラメントワインディング方法に関するものではないが、関連する技術として、特許文献2には、樹脂が半硬化状態にあるいわゆるプリプレグの品質管理について、乾燥装置から連続的に繰り出されてくるプリプレグのゲル化時間とワニス塗付量を非接触状態で連続的に自動検出するプリプレグの製造装置が開示されている。ここでは、熱硬化性樹脂の近赤外線領域における透過率や反射率のスペクトルが樹脂の硬化度や含浸重量に応じて特有のパターンを有することに注目し、プリプレグの外表面へ、近赤外領域の光を放射する発光装置と、プリプレグからの反射光を受光する受光装置とを用い、反射光のスペクトルパターンから熱硬化性樹脂のゲル化時間や樹脂塗付量を演算することが述べられている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−209923号公報
【特許文献2】特開平11−198139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、Vfの管理等は、完成された製品について分析を行うので、不適切なVfが検出されたとしてもすでに製品が出来上がっており、対策が遅れる。特許文献1に記載される技術は、樹脂含浸装置から引き出された繊維束をその両端で支承してその重量を荷重計で測定するものであるが、実際の製品成形の途中にこのような工程を入れることになり、製品成形の工程が複雑になり、製品成形に要する時間も長くなる。また、接触式検査方法であるため、製品に用いる繊維の樹脂含浸状態に影響を与える可能性がある。特許文献2に記載される技術は、光学的な非接触法により樹脂塗布量を求めるものであるが、強度に関係するVfを直接的に管理することができない。
【0008】
本発明の目的は、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することを可能にするフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフィラメントワインディング装置は、繊維の巻出部と、巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、製品の形状を形作るライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける巻取部と、を備える繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置であって、巻出部は、ライナーに巻き付ける巻付繊維の他に、工程管理用のダミー繊維を巻き出し、レジンバスは、巻付繊維とともにダミー繊維にも樹脂を含浸させ、さらに、樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行う測定部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、ダミー繊維は巻付繊維と同じ繊維であることが好ましい。
【0011】
また、測定部は、樹脂含浸ダミー繊維の繊維体積含有率を測定することが好ましい。
【0012】
また、測定部は、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定することが好ましい。
【0013】
また、測定部は、樹脂含浸ダミー繊維を自由ループ形状の状態として検出される質量に基づき、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定することが好ましい。
【0014】
また、測定部は、燃焼法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことが好ましい。
【0015】
また、測定部は、薬品分解法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことが好ましい。
【0016】
また、測定部は、画像解析法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことが好ましい。
【0017】
また、測定部は、電気抵抗測定法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、フィラメントワインディング操作を制御する制御部を備え、制御部は、巻付繊維によって製品成形を行わせると共に、測定部からダミー繊維による樹脂含浸繊維の成分測定結果を取得する成分値取得手段と、取得された樹脂含浸繊維の成分値が所定の閾値以内か否かを判断する判断手段と、成分値が閾値を越えるときに、レジンバスの樹脂量調整手段の設定を変更する変更手段と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記構成により、巻出部は、ライナーに巻き付ける巻付繊維の他に、工程管理用のダミー繊維を巻き出し、レジンバスは、巻付繊維とともにダミー繊維にも樹脂を含浸させ、さらに、樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行う測定部を備える。したがって、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することができる。
【0020】
また、ダミー繊維は巻付繊維と同じ繊維であるので、樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を製品成形と関連付けて管理することが容易となる。
【0021】
また、樹脂含浸ダミー繊維の繊維体積含有率を測定するので、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することができる。
【0022】
また、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定するので、予めわかっている繊維自体の密度、樹脂自体の密度を用いて、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することができる。
【0023】
また、樹脂含浸ダミー繊維を自由ループ形状の状態として検出される質量に基づき、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定するので、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理することができる。
【0024】
また、燃焼法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うので、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維の成分を管理することができる。
【0025】
また、薬品分解法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うので、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維の成分を管理することができる。
【0026】
また、画像解析法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うので、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維の成分を管理することができる。
【0027】
また、電気抵抗測定法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うので、製品成形の工程に支障を与えることなく、製品成形と平行して樹脂含浸繊維の成分を管理することができる。
【0028】
また、巻付繊維によって製品成形を行わせると共に、測定部からダミー繊維による樹脂含浸繊維の成分測定結果を取得し、取得された樹脂含浸繊維の成分値が所定の閾値以内か否かを判断し、成分値が閾値を越えるときに、レジンバスの樹脂量調整手段の設定を変更するので、製品が完成する前に、樹脂含浸繊維の成分値の閾値からの逸脱を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下において図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において述べる材料、成形条件等は、説明のための1例であり、製品の仕様等に合わせ、適当な他の材料、成形条件を採用することができる。例えば、繊維として、カーボン繊維を説明するが、これ以外の適当な強度を有する繊維で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。また、樹脂として、熱硬化型エポキシ樹脂を説明するが、これ以外の適当な接合強度を有する材料で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。
【0030】
図1は、フィラメントワインディング装置10の構成図である。フィラメントワインディング装置10は、大別して、成形部12と、成形部12における各種測定器からの工程データを収集するデータロガー38と、各要素の動作を全体として制御する制御部40を含んで構成される。なお、図1には、フィラメントワインディング装置10の構成要素ではないが、成形製品の形状を形作るライナー20も図示されている。
【0031】
成形部12は、原材料であるカーボン繊維をセットし巻き出しを行う巻出部であるクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維に液体状の樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。
【0032】
このようにカーボン繊維は、クリールスタンド14からいくつものローラ等を経由し、アイクチ案内部18を通り、ライナー20に巻きつけられ、ライナー20は、その長手軸周りに回転駆動される。ここで、アイクチ案内部18とライナー20の回転機構とが繊維巻取部の機能を有することになる。したがって、カーボン繊維は、ライナー20の回転駆動によって張力が与えられ、その張力の下で、樹脂含浸繊維がライナー20に緊密に巻きつけられることになる。
【0033】
また、工程管理のために、カーボン繊維の張力を測定する張力測定器22、レジンバス16の樹脂温度を管理する樹脂温度計24、レジンバス16において外周にカーボン繊維を張るローラ上の樹脂膜厚を測定する膜厚計26等が配置される。
【0034】
原材料であるカーボン繊維は、植物性の糸を約3,000℃で焼成したものからなる。これを約24,000本程度撚って集め、バインダ樹脂で軽く接着し、厚さ約200μm、幅4mmから5mm程度の扁平なシート状としたものを用いることができる。
【0035】
クリールスタンド14は、シート状のカーボン繊維を紙の筒に巻きつけたボビンをセットし、固定滑車等を用いて位置を揃えて巻き出す機能を有する巻出スタンドである。ライナー20には、3ないし4のカーボン繊維を幅方向に並べるパラレル巻きで巻き付けるので、クリールスタンド14も複数個のボビン取り付け部を有する。図1では、3つのボビンがライナー20の巻き付けに用いる巻付用カーボン繊維30用のもので、1つのボビンは、工程管理用に用いられるダミー繊維34のためのものである。ダミー繊維34と、巻付用カーボン繊維30とは、全く同じものが用いられる。
【0036】
張力測定器22は、クリールスタンド14から巻き出された3本の巻付用カーボン繊維30と1本のダミー繊維34が張られる張力を測定する機能を有する。張力測定は、3本の巻付用カーボン繊維30と1本のダミー繊維34を幅方向に並べ揃えて1つの張力測定用ローラに張り、張力測定用ローラが4本のカーボン繊維の張力のために受ける反力をロードセル等の荷重測定器で測定することで行うことができる。張力は、ライナー20に巻き付けるときの状態が製品仕様からいえば重要であるが、ライナー20に巻き付けるときは、樹脂含浸繊維となっていて、べたつきがあり、そのままでは張力測定に問題がある。そのために、樹脂含浸前の状態で張力測定が行われる。
【0037】
レジンバス16は、巻付用カーボン繊維30とダミー繊維34とにそれぞれ液体状の樹脂を含浸させる機能を有し、液体状のエポキシ樹脂を満たしたレジン槽と、レジン槽に一部漬かっている樹脂掻い出しローラと、その前後に配置される前後ローラ等を含んで構成される。張力測定器22のところで幅方向に4本並べ揃えられた各カーボン繊維は、レジンバス16に導入される際に、開繊器によってほぐされ、前ローラの下側外周と、樹脂掻い出しローラの上側外周と、後ローラの下側外周とに沿って張られ、レジンバス16から引き出される。樹脂掻い出しローラは、回転することで、レジン槽から液体状の樹脂硬化型エポキシ樹脂を外周に付着させ、その上側外周に沿って3本の巻付用カーボン繊維30と1本のダミー繊維34とが並べ揃えられて張られることで、それぞれの繊維に樹脂が付着し、含浸する。
【0038】
レジン槽には、ヒータが備えられ、熱硬化型エポキシ樹脂は、例えば40℃から50℃の範囲で加熱されて液体状となる。液体状の樹脂は、その温度を制御することで粘度管理が行われる。樹脂温度計24は、この樹脂温度を測定するためのものである。樹脂温度計24は、液体状の樹脂に漬けられてその温度を直接検出することが好ましい。
【0039】
また、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが不十分であると、樹脂掻い出しローラに張られた繊維に樹脂が十分に含浸されないので、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが管理される。膜厚計26は、この膜厚を測定するためのものである。付着樹脂層の厚さに影響を与えないように、膜厚計26は、非接触方式のものが好ましい。例えば光学式の膜厚計を用いることができる。
【0040】
レジンバス16から引き出された4本の樹脂含浸繊維は、3本が巻付用樹脂含浸繊維32としてアイクチ案内部18に引き出される。そして1本は工程管理用のダミー樹脂含浸繊維36としてVf測定器28に供給される。
【0041】
アイクチ案内部18は、複数本の巻付用樹脂含浸繊維32をライナー20に巻き付け易いように案内する機能を有し、複数本の巻付用樹脂含浸繊維32をライナー20に向けて幅方向に並べて揃える揃え口と、揃え口自体をライナー20の外形に沿って移動させる移動機構とを有する。揃え口の移動は、ライナー20の長手軸方向の移動と、ライナー20の幅方向への移動と、幅方向の移動軸周りの回転とによって行われる。
【0042】
ライナー20は、成形製品の形状を形作る芯材となるもので、例えば高圧タンクを成形する場合は、タンクの内径に対応する筒である。筒の材質は例えば硬質プラスチックを用いることができる。筒の直径は、例えば30cm程度で、その肉厚は数mm程度のものを用いることができる。ライナー20は、長手軸が回転可能に支持され、回転駆動機構によって長手軸周りに回転される。アイクチ案内部18によって幅方向に並べて揃えられた3本の巻付用樹脂含浸繊維32は、その端部がライナー20の巻き始め部に固定され、ライナー20が回転駆動されることで、3本の巻付用樹脂含浸繊維32がライナー20の長手軸方向に並んでその外周に巻き取られる。ライナー20に巻き取られる量は、ライナー20の外周上の厚さにして数mmから10数mm程度である。所定の巻き数で巻付用樹脂含浸繊維32がライナー20に巻き付けられ、製品の形状が形作られると、その後硬化処理が行われ、エポキシ樹脂が硬化して、繊維強化樹脂複合製品が成形される。巻付用樹脂含浸繊維32のライナー20への巻き付け工程等において、必要に応じ、ライナー20の内部に加圧気体21を供給してもよい。
【0043】
f測定器28に供給されたダミー樹脂含浸繊維36は、その成分が測定される。ここでは、ダミー樹脂含浸繊維36における繊維体積含有率Vfの測定が行われる。繊維体積含有率Vfは上記のように、樹脂含浸繊維の全体積に対する繊維の体積比率であるので、例えば、画像解析によってダミー樹脂含浸繊維36の断面を観察して、全体の断面積に対する繊維分の断面積の比率で算出することができる。また、カーボン繊維の密度、エポキシ樹脂の密度が予め分かっているので、ダミー樹脂含浸繊維36の密度を測定することで、繊維体積含有率Vfを求めることができる。また、燃焼法、あるいは薬品分解法により、ダミー樹脂含浸繊維36におけるエポキシ樹脂またはカーボン繊維の含有量を求めることでも繊維体積含有率Vfを求めることができる。
【0044】
図2は、ダミー樹脂含浸繊維36の質量を測定し、その結果からダミー樹脂含浸繊維36の密度を求めるのに適する1つの方法を説明する図である。ここでは、ダミー樹脂含浸繊維36を適当な2つのローラで支持し、その2つのローラの間で自由ループ形状42となるように十分たるませ、その自由ループ形状42の部分の質量を繊維荷重計44で測定する。測定対象は、巻付用樹脂含浸繊維32とは別個のダミー樹脂含浸繊維36であるので、成形製品のためのライナー20への巻き付けになんら支障がない。またダミー樹脂含浸繊維36は、巻付用樹脂含浸繊維32と原材料であるカーボン繊維が同じものであり、樹脂含浸等の工程も同様に経由しており、その組成が同じであるので、製品の成形と共に、繊維体積含有率Vfの測定を平行して行うことができる。Vf測定の際に、その他の成分測定を行ってもよい。
【0045】
再び図1に戻り、測定された繊維体積含有率Vfの結果は、張力測定器22、樹脂温度計24、膜厚計26の測定結果と共にデータロガー38によって集められ、制御部40に工程管理データとして入力される。制御部40は、これらの工程管理データに基づき、ライナー20の回転速度、アイクチ案内部18の移動速度、レジンバス16の樹脂温度等を制御し、成形製品が仕様の範囲に入るようにすることができる。
【0046】
図3は、繊維体積含有率Vfの測定がフィラメントワインディングの工程管理に反映される様子を説明するフローチャートである。図3のフローチャートは、繊維体積含有率Vfが予め定めた閾値の範囲内に入るように、制御部40が実行する各手順を示すものである。フィラメントワインディング(FW)による成形が開始する(S10)と、製品成形と共にVf測定が行われる(S12)。具体的には、上記のように、巻付用カーボン繊維30とダミー繊維34がクリールスタンド14からレジンバス16に巻き出され、レジンバス16でそれぞれに樹脂が含浸され、巻付用樹脂含浸繊維32によって製品成形が行われ、これと平行してダミー樹脂含浸繊維36によってVf測定が行われる。Vf測定の頻度は、製品の製造時間にもよるが、例えば10分間隔ごとに行うものとすることができる。この測定間隔の間であれば、ダミー樹脂含浸繊維36を適当なサンプル数でVfを測定し、あるいは種々の方法でVfを測定し、また、別の成分測定や物性測定を合わせて行ってもよい。
【0047】
f測定が行われると、その値が予め定められた閾値の範囲内か否かが判断される(S14)。閾値の範囲は、成形製品の仕様によって定めることができるが、例えば、60%以上80%以下とすることができる。Vfの値が閾値の範囲であればS12へ戻り、FW成形を継続する。この工程は、Vf測定器28の測定結果を、データロガー38を経由して制御部40が取得し、予め設定された閾値と比較することで実行される。あるいは、Vf測定器28自身が閾値判断機能を有し、その判断結果を、データロガー38を経由して制御部40が取得するものとしてもよい。
【0048】
fの値が閾値範囲を外れている場合は、レジンバス16における樹脂量調整板を移動し、樹脂掻い出しローラに付着する樹脂量を調整する(S16)。その様子を図4に示す。図4は、レジンバス16において、樹脂掻い出しローラ52の周囲の詳細図で、図4(a)が側面図、(b)が平面図である。ここでは、樹脂掻い出しローラ52の下側外周の一部が液体状の樹脂50に漬かっており、上側外周に4本の繊維が張られて、樹脂掻い出しローラ52が回転し、液体状の樹脂50が掻い出されてゆく様子が示されている。各図において紙面の左側の繊維は、3本が巻付用カーボン繊維30で、1本がダミー繊維34である。これらの繊維は、樹脂掻い出しローラ52の上側外周に並べて揃えられて張られ、樹脂掻い出しローラ52がその下側外周において液体状の樹脂50に漬かり、その部分が回転によって上側に回ってくることで、液体状の樹脂50が各繊維に含浸する。これにより、各図において紙面の右側の繊維は、3本が巻付用樹脂含浸繊維32となり、1本がダミー樹脂含浸繊維36となる。樹脂掻い出しローラ52の外周に付着し、各繊維に含浸した樹脂は、図4(b)において斜線で示されている。
【0049】
樹脂量調整板54は、樹脂掻い出しローラ52の外周との間に所定の間隔の隙間ができるように配置されるブレード状の部材で、スクレーパーとも呼ばれる。その配置位置は、樹脂50の液面の上方で、各繊維が樹脂掻い出しローラ52の上側外周に張られる位置より下方である。樹脂量調整板54は、ブレード部分を樹脂掻い出しローラ52の外周に向けて、隙間が樹脂掻い出しローラ52の幅方向に一様となるように設定され、その隙間は、移動機構55によって調整できる。したがって、S16においては、制御部40がS14の判断結果に従い、移動機構55に指示を与え、樹脂量調整板54と樹脂掻い出しローラ52との間の隙間間隔を適切なものとするように樹脂量調整板54を移動させる。移動量は、Vfの閾値からのずれの大きさに応じて行われることが好ましい。
【0050】
樹脂量調整板54の移動の後、再度Vfの測定が行われ、閾値の範囲以内か否かが判断される(S18)。この工程の内容はS14で説明したところと同じである。この再判断の結果、Vfの測定値が閾値の範囲以内のときはFW成形が続行され、閾値の範囲以内でないと判断されると、FW成形が停止される(S20)。この工程は、制御部40の機能によって実行される。
【0051】
このように、巻付用樹脂含浸繊維32と同じ材料、同じ工程履歴を経てきていながら、巻付用樹脂含浸繊維32とは別個であるダミー樹脂含浸繊維36を用いることで、ライナー20におけるFW成形と平行して、Vfを測定でき、その値に基づいて制御部40がFW成形条件を最適なものに変更できる。したがって、FW成形中に樹脂含浸繊維における繊維と樹脂の割合を管理し、成形条件を最適なものに制御して、繊維強化樹脂複合製品の成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る実施の形態のフィラメントワインディング装置の構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、ダミー樹脂含浸繊維の質量を測定し、その結果からダミー樹脂含浸繊維の密度を求めるのに適する1つの方法を説明する図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、繊維体積含有率Vfの測定がフィラメントワインディングの工程管理に反映される様子を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る実施の形態において、樹脂量調整の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
10 フィラメントワインディング装置、12 成形部、14 クリールスタンド、16 レジンバス、18 アイクチ案内部、20 ライナー、21 加圧気体、22 張力測定器、24 樹脂温度計、26 膜厚計、28 測定器、30 巻付用カーボン繊維、32 巻付用樹脂含浸繊維、34 ダミー繊維、36 ダミー樹脂含浸繊維、38 データロガー、40 制御部、42 自由ループ形状、44 繊維荷重計、50 樹脂、52 樹脂掻い出しローラ、54 樹脂量調整板、55 移動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の巻出部と、
巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、
製品の形状を形作るライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける巻取部と、
を備える繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置であって、
巻出部は、
ライナーに巻き付ける巻付繊維の他に、工程管理用のダミー繊維を巻き出し、
レジンバスは、
巻付繊維とともにダミー繊維にも樹脂を含浸させ、
さらに、
樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行う測定部を備えることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置において、
ダミー繊維は巻付繊維と同じ繊維であることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、樹脂含浸ダミー繊維の繊維体積含有率を測定することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
請求項4に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、樹脂含浸ダミー繊維を自由ループ形状の状態として検出される質量に基づき、樹脂含浸ダミー繊維の密度を測定することを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、燃焼法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、薬品分解法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、画像解析法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
測定部は、電気抵抗測定法により樹脂含浸ダミー繊維の成分測定を行うことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング装置において、
フィラメントワインディング操作を制御する制御部を備え、
制御部は、
巻付繊維によって製品成形を行わせると共に、測定部からダミー繊維による樹脂含浸繊維の成分測定結果を取得する成分値取得手段と、
取得された樹脂含浸繊維の成分値が所定の閾値以内か否かを判断する判断手段と、
成分値が閾値を越えるときに、レジンバスの樹脂量調整手段の設定を変更する変更手段と、
を有することを特徴とするフィラメントワインディング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−185827(P2007−185827A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4665(P2006−4665)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】