説明

フィラメントワインディング装置

【課題】フィラメントワインディングにおいて、繊維に樹脂が適切に含浸されたか否かの判断を迅速に行うことである。
【解決手段】フィラメントワインディング装置10は、カーボン繊維30をセットし巻き出しを行うクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維30に樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維32を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。レジンバス16とアイクチ案内部18との間に、レジンバス16から進んできた繊維の温度を測定する非接触型の樹脂含浸繊維温度計28が設けられ、レジンバス16において温度調整された樹脂の温度に基いて設定される管理限界の範囲と、測定された繊維の温度とが比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置に係り、特に、繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂で製品を成形する方法として、十分な強度を有する繊維、例えばカーボン繊維を用い、これに液状の樹脂を含浸させて、製品の形状を形作るライナーに巻き付け、樹脂を加熱硬化させるフィラメントワインディング方法が知られている。カーボン繊維は、植物性の糸を例えば3000℃の高温で焼成し、極めて強度が強いものを用いることができるので、例えば高圧タンク等をフィラメントワインディング方法で製造することができる。
【0003】
フィラメントワインディング方法において、樹脂は、成形の際に複数の層に巻きつけたカーボン繊維同士を接合する機能等のために用いられるので、カーボン繊維に樹脂が十分に含浸されていないと、製品成形が不十分のものとなる。そこで、フィラメントワインディング方法においては、カーボン繊維に樹脂が十分に含浸されていることが管理項目とされる。
【0004】
例えば、特許文献1には、繊維束に付着した樹脂量を製品完成前に計測し、付着樹脂量の設定範囲からの逸脱を製品完成前に検知するフィラメントワインディング装置が開示されている。ここでは、樹脂含浸装置と巻付けヘッドとの間に付着樹脂重量計測部が配置される。付着樹脂の計測は、樹脂含浸装置から引き出された所定長さの繊維束をその両端で支承し、支承による影響を予め補正して、その重量を荷重計で測定することで行われている。
【0005】
また、フィラメントワインディング方法についてではないが、関連する技術として、特許文献2には、樹脂が半硬化状態にあるいわゆるプリプレグの品質管理について、乾燥装置から連続的に繰り出されてくるプリプレグのゲル化時間とワニス塗付量を非接触状態で連続的に自動検出するプリプレグの製造装置が開示されている。ここでは、熱硬化性樹脂の近赤外線領域における透過率や反射率のスペクトルが樹脂の硬化度や含浸重量に応じて特有のパターンを有することに注目し、プリプレグの外表面へ、近赤外領域の光を放射する発光装置と、プリプレグからの反射光を受光する受光装置とを用い、反射光のスペクトルパターンから熱硬化性樹脂のゲル化時間や樹脂塗付量を演算することが述べられている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−209923号公報
【特許文献2】特開平11−198139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの従来技術においては、特許文献1のような接触式測定方法を採用した場合は、測定時に樹脂の含浸状態に影響を与える可能性がある。また特許文献2のような光センサによる膜厚検出装置を用いた場合には、膜厚を検出するために光の透過率や反射率のスペクトルパターンの解析が必要であり、演算に時間がかかる。さらに特許文献2に方法の場合は樹脂の乾燥装置の下流に設ける必要がある。したがって、測定に時間がかかり、迅速な工程管理に必ずしも適していない。
【0008】
本発明の目的は、繊維に樹脂が適切に含浸されたか否かの判断を迅速に行うことを可能とするフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフィラメントワインディング装置は、繊維の巻出部と、温度調整されたバスの中の液体状樹脂を用いて、巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、レジンバスと巻取部との間に設けられ、レジンバスから進んできた繊維の温度を測定する非接触型温度計と、製品の形状を形作るライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける巻取部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、非接触型温度計は、レジンバスによって繊維に樹脂が含浸されるタイミングから2秒以上5秒以内にその繊維の温度を検出できる位置に配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、レジンバスの温度調整の設定範囲に基いて定められる管理限界温度と、非接触型温度計の検出値とを比較し、レジンバスから進んできた繊維の樹脂含浸不良を判断する判断手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るフィラメントワインディング装置において、繊維の樹脂含浸不良と判断されるときに、警報を出力する出力手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、温度調整された液体状樹脂を用いて巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、巻取部との間に、レジンバスから進んできた繊維の温度を測定する非接触型温度計が設けられる。繊維に樹脂が十分に含浸されているときは、レジンバスで温度調整された樹脂の温度に近い温度を繊維が有している。その温度をレジンバスと巻取部との間で測定するので、繊維に樹脂が適切に含浸されたか否かの判断を迅速に行うことができる。
【0014】
また、非接触型温度計は、レジンバスによって繊維に樹脂が含浸されるタイミングから2秒以上5秒以内にその繊維の温度を検出できる位置に配置されるので、きわめて迅速に、繊維に樹脂が適切に含浸されたか否かの判断を行うことができる。
【0015】
また、レジンバスの温度調整の設定範囲に基いて定められる管理限界温度と、非接触型温度計の検出値とを比較し、レジンバスから進んできた繊維の樹脂含浸不良を判断するので、工程管理に適した判断を客観的自動的に行うことができる。
【0016】
また、繊維の樹脂含浸不良と判断されるときに、警報を出力するので、対策を迅速に取ることを促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下において図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において述べる材料、成形条件等は、説明のための1例であり、製品の仕様等に合わせ、適当な他の材料、成形条件を採用することができる。例えば、繊維として、カーボン繊維を説明するが、これ以外の適当な強度を有する繊維で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。また、樹脂として、熱硬化型エポキシ樹脂を説明するが、これ以外の適当な接合強度を有する材料で、フィラメントワインディングに適したものであってもよい。
【0018】
図1は、フィラメントワインディング装置10の構成図である。フィラメントワインディング装置10は、大別して、成形部12と、成形部12における各種測定器からの工程データを収集するデータロガー38と、各要素の動作を全体として制御する制御部40を含んで構成される。なお、図1には、フィラメントワインディング装置10の構成要素ではないが、成形製品の形状を形作るライナー20も図示されている。
【0019】
成形部12は、原材料であるカーボン繊維30をセットし巻き出しを行う巻出部であるクリールスタンド14と、巻き出されたカーボン繊維30に液体状の樹脂を含浸させ、樹脂含浸繊維32として供給するレジンバス16と、樹脂含浸繊維32を揃えてライナー20に沿って巻き付けるアイクチ案内部18とを含んで構成される。
【0020】
このようにカーボン繊維30は、クリールスタンド14からいくつものローラ等を経由し、アイクチ案内部18を通り、ライナー20に巻きつけられ、ライナー20は、その長手軸周りに回転駆動される。ここで、アイクチ案内部18とライナー20の回転機構とが繊維巻取部の機能を有することになる。したがって、カーボン繊維は、ライナー20の回転駆動によって張力が与えられ、その張力の下で、樹脂含浸繊維32がライナー20に緊密に巻きつけられることになる。
【0021】
また、工程管理のために、カーボン繊維30の張力を測定する張力測定器22、レジンバス16の樹脂温度を管理する樹脂温度計24、レジンバス16において外周にカーボン繊維を張るローラ上の樹脂膜厚を測定する膜厚計26、レジンバス16の直後における樹脂含浸繊維32の温度を測定する樹脂含浸繊維温度計28等が配置される。
【0022】
原材料であるカーボン繊維30は、植物性の糸を約3,000℃で焼成したものからなる。これを約24,000本程度撚って集め、バインダ樹脂で軽く接着し、厚さ約200μm、幅4mmから5mm程度の扁平なシート状としたものを用いることができる。
【0023】
クリールスタンド14は、シート状のカーボン繊維を紙の筒に巻きつけたボビンをセットし、固定滑車等を用いて位置を揃えて巻き出す機能を有する巻出スタンドである。ライナー20には、3ないし4のカーボン繊維を幅方向に並べるパラレル巻きで巻き付けるので、クリールスタンド14も複数個のボビン取り付け部を有する。図1では、3つのボビンが示されている。
【0024】
張力測定器22は、クリールスタンド14から巻き出されたカーボン繊維30が張られる張力を測定する機能を有する。張力測定は、3本のカーボン繊維30を幅方向に並べ揃えて1つの張力測定用ローラに張り、張力測定用ローラが3本のカーボン繊維30の張力のために受ける反力をロードセル等の荷重測定器で測定することで行うことができる。張力は、ライナー20に巻き付けるときの状態が製品仕様からいえば重要であるが、ライナー20に巻き付けるときは、樹脂含浸繊維32となっていて、べたつきがあり、そのままでは張力測定に問題がある。そのために、樹脂含浸前の状態で張力測定が行われる。
【0025】
レジンバス16は、3本のカーボン繊維30にそれぞれ液体状の樹脂を含浸させる機能を有する装置である。張力測定器22のところで幅方向に3本並べ揃えられた各カーボン繊維30は、レジンバス16に導入される際に、開繊器によってほぐされ、レジンバス16を通過することで、樹脂が含浸され、レジンバス16から引き出される。図2は、レジンバス16周辺の構成を示す図である。レジンバス16は、液体状の熱硬化性エポキシ樹脂50を満たしたレジン槽56と、レジン槽56に一部漬かっている樹脂掻い出しローラ52と、その前後に配置される前後ローラ51,53とを含んで構成される。
【0026】
また、レジンバス16には、樹脂掻い出しローラ52によって掻い出されてローラ外周に付着する樹脂量を調整するための樹脂量調整板54が設けられる。樹脂量調整板54は、樹脂掻い出しローラ52の外周との間に所定の間隔の隙間ができるように配置されるブレード状の部材で、スクレーパーとも呼ばれる。その配置位置は、樹脂50の液面の上方で、カーボン繊維30が樹脂掻い出しローラ52の上側外周に張られる位置より下方である。樹脂量調整板54は、ブレード部分を樹脂掻い出しローラ52の外周に向けて、隙間が樹脂掻い出しローラ52の幅方向に一様となるように設定され、その隙間は、図示されていない移動機構によって調整することができ、それによって樹脂掻い出しローラ52の外周上の樹脂量を調整できる。
【0027】
また、レジンバス16には、液体状の樹脂50の温度を調整するための樹脂温度調整装置58が設けられる。樹脂温度調整装置58は、ヒータを内蔵する循環型熱交換器であり、この中を循環する液体状の樹脂50に、ヒータからの熱量を与える装置である。循環する樹脂50の温度は樹脂温度計24によって検出される。液体状の樹脂50は、その温度を制御することで粘度管理が行われる。樹脂温度計24は、この樹脂温度を測定するためのものである。樹脂温度計24は、循環する液体状の樹脂50に漬けられてその温度を直接検出することが好ましい。樹脂温度計24によって検出された樹脂50の温度は、データロガー38を介して制御部40に送られ、制御部40はその温度に応じてヒータに供給する電力を調整して、樹脂50の温度を予め定めた閾値以内になるように制御する。樹脂温度の閾値は、樹脂50の粘度特性に合わせて設定される。熱硬化性エポキシ樹脂の場合、例えば40℃から50℃の範囲、好ましくは、45℃±2℃に設定される。
【0028】
また、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが不十分であると、樹脂掻い出しローラに張られた繊維に樹脂が十分に含浸されないので、樹脂掻い出しローラの外周に付着する樹脂層の厚さが管理される。膜厚計26は、この膜厚を測定するためのものである。付着樹脂層の厚さに影響を与えないように、膜厚計26は、非接触方式のものが好ましい。例えば光学式の膜厚計を用いることができる。
【0029】
そして、樹脂掻い出しローラ52と後ローラ53との間で、樹脂掻い出しローラ52の外周から樹脂含浸繊維32が離れて引き出された適当な位置に、樹脂含浸繊維温度計28が配置される。樹脂含浸繊維温度計28は、非接触式の温度計で、例えば赤外温度計等を用いることができる。非接触式とするのは、樹脂含浸繊維32の樹脂含浸状態に影響を与えないためである。
【0030】
ここで、カーボン繊維に樹脂が十分に含浸されているときは、レジン槽56で温度調整された樹脂50の温度に近い温度をカーボン繊維が有している。したがって、樹脂掻い出しローラ52の外周から樹脂含浸繊維32が離れて引き出されてあまり時間が経過していない範囲で、カーボン繊維の温度を測定することで、カーボン繊維に十分な樹脂が含浸しているかどうかを判断できる。例えば、レジンバスによって繊維に樹脂が含浸されるタイミング、すなわち、樹脂掻い出しローラ52の外周から樹脂含浸繊維32が離れてから2秒以上5秒以内にその繊維の温度を検出することが好ましい。
【0031】
再び図1に戻り、レジンバス16から引き出された3本の樹脂含浸繊維32は、アイクチ案内部18に引き出される。アイクチ案内部18は、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー20に巻き付け易いように案内する機能を有し、複数本の樹脂含浸繊維32をライナー20に向けて幅方向に並べて揃える揃え口と、揃え口自体をライナー20の外形に沿って移動させる移動機構とを有する。揃え口の移動は、ライナー20の長手軸方向の移動と、ライナー20の幅方向への移動と、幅方向の移動軸周りの回転とによって行われる。
【0032】
ライナー20は、成形製品の形状を形作る芯材となるもので、例えば高圧タンクを成形する場合は、タンクの内径に対応する筒である。筒の材質は例えば硬質プラスチックを用いることができる。筒の直径は、例えば30cm程度で、その肉厚は数mm程度のものを用いることができる。ライナー20は、長手軸が回転可能に支持され、回転駆動機構によって長手軸周りに回転される。アイクチ案内部18によって幅方向に並べて揃えられた3本の樹脂含浸繊維32は、その端部がライナー20の巻き始め部に固定され、ライナー20が回転駆動されることで、3本の樹脂含浸繊維32がライナー20の長手軸方向に並んでその外周に巻き取られる。ライナー20に巻き取られる量は、ライナー20の外周上の厚さにして数mmから10数mm程度である。所定の巻き数で樹脂含浸繊維32がライナー20に巻き付けられ、製品の形状が形作られると、その後硬化処理が行われ、エポキシ樹脂が硬化して、繊維強化樹脂複合製品が成形される。樹脂含浸繊維32のライナー20への巻き付け工程等において、必要に応じ、ライナー20の内部に加圧気体21を供給してもよい。
【0033】
樹脂含浸繊維温度計28によって検出されたカーボン繊維の温度は、張力測定器22、樹脂温度計24、膜厚計26の測定結果と共にデータロガー38によって集められ、制御部40に工程管理データとして入力される。制御部40は、これらの工程管理データに基き、ライナー20の回転速度、アイクチ案内部18の移動速度、レジンバス16の樹脂温度等を制御し、成形製品が仕様の範囲に入るようにすることができる。
【0034】
図3は、樹脂含浸工程の後で測定されたカーボン繊維の温度、すなわち樹脂含浸繊維温度を、フィラメントワインディングの工程管理に反映する様子を説明するフローチャートである。図3のフローチャートは、樹脂含浸繊維温度が予め定めた管理限界の範囲内に入っているか否かの判断等を、制御部40が実行する各手順を示すものである。フィラメントワインディング装置10が起動する(S10)と、レジンバス16において樹脂温度が設定される(S12)。上記の例では、樹脂温度の閾値の範囲として45℃±2℃が設定される。そして、樹脂温度計24の測定結果から、レジンバス16の樹脂温度が設定された閾値の範囲内か否かが判断される(S14)。この機能は、制御部40が樹脂温度計24の検出する値を、データロガー38を介して取得し、閾値の範囲と比較することで実行される。
【0035】
レジンバス16において樹脂温度が閾値の範囲内に制御されていることが確認されないときは、レジンバス16の樹脂温度設定を変更し、樹脂温度調整装置58のヒータに供給する温度を調節するため、S12に戻る。樹脂温度が閾値の範囲内に制御されていることが確認されると、カーボン繊維30が巻き出され(S16)、フィラメントワインディング(FW)の諸工程が行われる。
【0036】
そして、樹脂含浸繊維温度計28によって、樹脂含浸後繊維温度が検出され(S18)、その検出温度が管理限界の範囲内か否かが判断される(S20)。管理限界の範囲内のときはFWの諸工程が続行され、管理限界の範囲内でないと判断されると、警報が出力される(S22)。警報は、ランプ点滅等の表示で行うことができる。図4を用いて、樹脂含浸繊維の温度と管理限界の範囲との関係を説明する。
【0037】
図4は、横軸に時間を取り、縦軸に温度を取って、樹脂含浸工程後におけるカーボン繊維について樹脂含浸繊維温度計28によって検出される温度60の時間変化の1例を示す図である。図4において、レジンバス16における樹脂温度の閾値範囲62と、この閾値範囲62に基いて設定される樹脂含浸繊維温度の管理限界の範囲64が示されている。上記の例で、樹脂温度の閾値範囲62は、45℃±2℃に設定されるので、管理限界の範囲は、例えば、45℃±5℃等と設定することができる。
【0038】
図4において、カーボン繊維の温度60は、ある時間範囲において45℃±2℃の範囲で推移していることが観察される。すなわち、この時間範囲では、樹脂掻い出しローラ52からカーボン繊維が離れた直後の温度が、レジンバス16の樹脂温度とほとんど同じ温度で推移していることが分かる。そして、この温度範囲の後、何かの原因で、カーボン繊維の温度が室温まで低下することが観察される。このことから、カーボン繊維の温度60が、レジンバス16における樹脂温度の閾値の範囲から乖離するときは、何らかの原因で、レジンバス16において、カーボン繊維にその温度の樹脂が十分に含浸されなかったものと判断できる。樹脂含浸繊維温度計28は、樹脂温度を測定するのではなく、樹脂掻い出しローラ52からカーボン繊維が離れた後の温度を測定するので、樹脂含浸が十分か否かの判断に用いる繊維温度の管理限界の範囲64は、樹脂温度管理の閾値の範囲62よりも適当に広げることがよい。
【0039】
このようにして、温度調整された液体状樹脂を用いて巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、巻取部との間に、レジンバスから進んできた繊維の温度を測定する非接触型温度計を設けることで、繊維に樹脂が十分に含浸されたか否かを迅速に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る実施の形態のフィラメントワインディング装置の構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、レジンバス周辺の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、樹脂含浸工程の後で測定されたカーボン繊維の温度が、フィラメントワインディングの工程管理に反映される様子を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に係る実施の形態において、樹脂含浸工程後におけるカーボン繊維について樹脂含浸繊維温度計によって検出される温度60の時間変化の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 フィラメントワインディング装置、12 成形部、14 クリールスタンド、16 レジンバス、18 アイクチ案内部、20 ライナー、21 加圧気体、22 張力測定器、24 樹脂温度計、26 膜厚計、28 樹脂含浸繊維温度計、30 カーボン繊維、32 樹脂含浸繊維、38 データロガー、40 制御部、50 樹脂、51,53 前後ローラ、52 樹脂掻い出しローラ、54 樹脂量調整板、56 レジン槽、58 樹脂温度調整装置、60 繊維の温度、62 樹脂温度の閾値の範囲、64 繊維温度の管理限界の範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の巻出部と、
温度調整されたバスの中の液体状樹脂を用いて、巻き出された繊維に樹脂を含浸させるレジンバスと、
レジンバスと巻取部との間に設けられ、レジンバスから進んできた繊維の温度を測定する非接触型温度計と、
製品の形状を形作るライナーに樹脂含浸繊維を巻き付ける巻取部と、
を備えることを特徴とする繊維強化樹脂複合製品の成形用フィラメントワインディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置において、
非接触型温度計は、レジンバスによって繊維に樹脂が含浸されるタイミングから2秒以上5秒以内にその繊維の温度を検出できる位置に配置されることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィラメントワインディング装置において、
レジンバスの温度調整の設定範囲に基いて定められる管理限界温度と、非接触型温度計の検出値とを比較し、レジンバスから進んできた繊維の樹脂含浸不良を判断する判断手段を備えることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のフィラメントワインディング装置において、
繊維の樹脂含浸不良と判断されるときに、警報を出力する出力手段を備えることを特徴とするフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−185837(P2007−185837A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4924(P2006−4924)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】