説明

フィラメントワインディング装置

【課題】複数の繊維束をマンドレルに対して同時に巻き付けて、フープ巻層を短時間で形成する。同時に、マンドレルに対して巻き付けられる複数の繊維束の巻付方向を好適化してフープ巻層を高強度化する。
【解決手段】マンドレルに繊維束を供給するフープ巻き用のヘッドユニットを備えている。ヘッドユニットは、複数個の単位ヘッドをマンドレルの中心軸に沿って配置して構成する。単位ヘッドは、巻掛テーブルと、巻掛テーブルを回転自在に支持するフレームと、巻掛テーブルに配置される複数個のボビンと、巻掛テーブルを回転駆動するテーブル駆動構造とを含む。以て、個々の単位ヘッドから供給される複数の繊維束をマンドレルに巻き付けて、繊維束の巻方向が正方向と逆方向とに異なる複数のフープ巻層を交互に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のボビンをマンドレルの回りに回転駆動してフープ巻層を形成する形態のフィラメントワインディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントワインディング装置(以下、単にワインディング装置という。)においては、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維やカーボン繊維などの繊維束をマンドレルに巻き付けて、ワインディング成形品を形成する。本発明のワインディング装置におけるフープ巻ヘッドは、複数のボビンをマンドレルの軸心回りに回転駆動してフープ巻きを行なうが、この種のワインディング装置の基本形態は特許文献1に公知である。そこではマンドレルと直交するフレームに、回転駆動される巻掛テーブルを設け、巻掛テーブルに複数個のボビンを配置している。
【0003】
本発明に関して、フープ巻きの過程をより短時間で行なってワインディング成形品を効率よく生産することは、例えば特許文献2に開示してある。そこでは、フープ巻きされるマンドレルの全領域を中心軸に沿って4等分し、区分された各領域に対応して4個の給糸構造を設け、各給糸構造から供給される繊維束を各区分領域に対して同時に巻き付ける。このように、4本の繊維束をマンドレルに対して同時に巻き付ると、フープ巻きに要する時間を約4分の1に短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−195000号公報(段落番号0025、図9)
【特許文献2】特開2005−313549号公報(段落番号0107、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワインディング装置において、フープ巻きの過程をより短時間で行なうには以下の手法がある。マンドレルあるいは巻掛テーブルの駆動回転数を高めて、繊維束の巻付速度を向上する。より多くの繊維束をマンドレルに対して同時に巻き付けて、フープ巻層の形成時間を短縮する。特許文献2のワインディング装置は、その一例である。複数個のマンドレルに対して、個別的にしかも同時に繊維束を巻き付て、ワインディング成形品の単体当りの生産速度を向上する。
【0006】
上記のように、マンドレルあるいは巻掛テーブルの駆動回転数を高めて、繊維束の巻き速度を向上することは可能であるが、おのずと限界がある。限界状態では発熱や振動などを伴なうため、技術的にこの限界を越えることは容易ではない。また、マンドレルに巻き付けられる繊維束の本数を単に増やす場合には、繊維束のマンドレルに対する巻付角度が小さくなるのを避けられない。さらに、複数本の繊維束を、同じ角度で同じ向きにフープ巻きすることになるので、フープ巻層を厚く形成することはできるものの、充分な強度が得られにくい。
【0007】
特許文献2のワインディング装置の場合には、4本の繊維束を4等分された領域ごとに同時に巻き付けるので、上記のように繊維束の本数を単に増やす場合の不利を避けることができる。しかし、4等分された領域ごとに繊維束を巻き付けるので、フープ巻層が不連続になるのを避けられず、フープ巻層の全体強度に不安が残る。得られたワインディング成形品の全てのフープ巻層において、軸心方向の同じ位置(4等分位置)に明確な境界が形成されるからである。
【0008】
複数個のマンドレルに対して、個別にしかも同時に繊維束を巻き付けるワインディング装置の場合には、マンドレルの駆動構造や給糸構造などを同時に複数組用意する必要がある。そのため、ワインディング装置の全体構造が大掛かりでコスト高となり実用性に欠ける。また、複数個のマンドレルに対して同時に繊維束を巻き付けるので、ひとつのマンドレルで巻き付け不良が起こったような場合に、全体装置を停止して修復作業を行なう必要があり、必ずしも生産性を向上できない。
【0009】
本発明の目的は、複数の繊維束をマンドレルに対して同時に巻き付けて、フープ巻層を短時間で形成でき、しかも、マンドレルに対して巻き付けられる複数の繊維束の巻付方向を好適化して高強度のフープ巻層を形成できるワインディング装置を提供することにある。本発明の目的は、複数の繊維束をマンドレルに対して同時に巻き付けるワインディング装置でありながら、全体構造がいたずらに複雑化するのを防いで、装置全体の導入コストが少なくて済むワインディング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワインディング装置は、マンドレルを支持する支持台と、支持台を支持する基台と、マンドレルへ向かって繊維束を供給するフープ巻用のヘッドユニットを備えている。支持台とヘッドユニットとは、マンドレルの中心軸に沿って相対移動可能に構成する。ヘッドユニットは、複数個の単位ヘッドをマンドレルの中心軸に沿って配置して構成する。単位ヘッドは、マンドレルの往復移動を許す通口を備えた巻掛テーブルと、巻掛テーブルを回転自在に支持するフレームと、巻掛テーブルに配置される複数個のボビンと、巻掛テーブルを回転駆動するテーブル駆動構造とを含む。以て、個々の単位ヘッドから供給される繊維束を、マンドレルに対して巻き付けることを特徴とする。
【0011】
フープ巻用のヘッドユニットは、繊維束をマンドレルに対して正方向に巻き付ける単位ヘッドと、繊維束をマンドレルに対して逆方向に巻き付ける単位ヘッドとで構成する。以て、単位ヘッドの巻掛テーブルを回転駆動して、正方向のフープ巻層と逆方向のフープ巻層とを形成する。
【0012】
フープ巻用のヘッドユニットは、繊維束をマンドレルに対して正逆双方向へ巻き付け可能な複数個の単位ヘッドで構成する。以て、隣接する単位ヘッドの巻掛テーブルを、正方向および逆方向に回転駆動して、正方向のフープ巻層と逆方向のフープ巻層とを形成する。
【0013】
ヘッドユニットを、基台に設けたガイド構造で往復移動可能に支持する。以て、ヘッドユニットをヘッド駆動構造で一方向へ移動操作して、複数のフープ巻層を形成する。
【0014】
複数個のボビンを、それぞれのボビン中心軸がマンドレルの中心軸と平行になる状態で巻掛テーブルで支持する。
【0015】
フレームを巻掛テーブルの周囲を囲む状態で構成し、その内面側に複数個の旋回ローラーと、複数個のスラストローラーとをそれぞれ配置する。巻掛テーブルは、通口を備えたテーブル基体と、旋回ローラーで回転自在に支持される断面円形の筒壁と、スラストローラーで位置保持支持されるリング壁とで構成する。テーブル基体に複数個のボビンを配置する。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、複数個の単位ヘッドをマンドレルの中心軸に沿って隣接配置してフープ巻用のヘッドユニットを構成した。単位ヘッドは、フレームで回転自在に支持される巻掛テーブルと、テーブル駆動構造と、巻掛テーブルに配置される複数個のボビンなどで構成した。そのうえで、個々の単位ヘッドから供給される前記繊維束を、前記マンドレルに対して巻き付けて、複数のフープ巻層を同時に形成するようにした。したがって、本発明のワインディング装置によれば、複数層の全体厚みが大きなフープ巻層をより短時間で同時に形成できる。また、繊維束をマンドレルに対して正方向と逆方向とに巻き付ける場合には、正方向のフープ巻層と逆方向のフープ巻層とを混在させて、複数本の繊維束をマンドレルに同じ向きで巻き付ける従来装置に比べて、フープ巻層の強度を充分に増強できる。さらに、繊維束YをマンドレルMの全巻付け領域にわたって連続して巻き付けるので、フープ巻層に明確な境界が形成されるのを解消して、ワインディング成形品の構造強度を向上できる。
【0017】
繊維束を正方向に巻き付ける単位ヘッドと、繊維束を逆方向に巻き付ける単位ヘッドとでフープ巻用のヘッドユニットを構成すると、個々の単位ヘッドの構造が複雑になるのを避けて、その製造コストを削減できる。とくに、前者の単位ヘッドと、後者の単位ヘッドとの構造を共通の構造とする場合には、単位ヘッドの製造コストをさらに削減してワインディング装置の導入コストを節約できる。因みに、繊維束をマンドレルに対して正逆双方向へ巻き付け可能とする単位ヘッドの場合には、ボビンから繰り出した繊維束のガイド方向を変更するための構造が必要になり、その分だけ単位ヘッドのコストが嵩む。
【0018】
繊維束をマンドレルに対して正逆双方向へ巻き付け可能な複数個の単位ヘッドでフープ巻用のヘッドユニットを構成すると、必要に応じて個々の単位ヘッドによる繊維束の巻付方向を自由に変更できる。したがって、フープ巻層の径方向の形成位置の違い応じて、単位ヘッドによる繊維束の巻付方向を変更して、ワインディング成形品の巻組織の最適化を図ることができる。また、ボビンから繰り出した繊維束のガイド方向を自動的に変更する場合には、複数本の繊維束の巻付方向の変更を一斉に行なって、ワインディング成形に要する時間を短縮できる。
【0019】
ヘッドユニットをヘッド駆動構造で一方向へ移動操作して、マンドレルの周囲に複数のフープ巻層を形成するワインディング装置によれば、マンドレルを一方向へ移動させながら複数のフープ巻層を形成する場合に比べて、ワインディング装置を小形化できる。とくに、ヘリカル巻ヘッドとフープ巻用のヘッドユニットとを併用してワインディング成形品を形成する場合には、ヘッドユニットが移動する分だけマンドレルの移動ストロークを短縮して、ワインディング装置を小形化できる。したがって、複数の単位ヘッドを備えたワインディング装置でありながら、全体構造がいたずらに複雑化するのを防いで、全体装置の導入コストを削減できる。
【0020】
ボビン中心軸がマンドレルの中心軸と平行になる状態で、各ボビンを巻掛テーブルで支持すると、複数個のボビンをマンドレルの周囲に周回する状態で配置できるので、巻掛テーブルにおいて複数のボビンが占める空間量を小さくできる。これにより、巻掛テーブルの旋回半径をより小さなものとして、単位ヘッドをさらに小形化できる。また、他のボビン配置を採用する場合に比べて、周回方向のボビンの配置個数を多くできる。
【0021】
テーブル基体と、断面円形の筒壁と、リング壁とで巻掛テーブルを構成し、その周囲を囲むフレームに設けた旋回ローラーとスラストローラーとで巻掛テーブルを回転自在に支持すると、単位ヘッドの左右幅を極力小さくすることができる。これにより単位ヘッドの隣接間隔をより小さくして、フープ巻用のヘッドユニット、およびワインディング装置を小形化できる。また、単位ヘッドの隣接間隔が小さい分だけ、最初の単位ヘッドが繊維束の巻き付けを終了してから、最後の単位ヘッドが繊維束の巻き付けを終了までの時間を短縮できるので、ワインディング成形品を能率よく成形することにも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】複数の繊維束の巻き付け形態を示す原理説明図である。
【図2】ワインディング装置の概略正面図である。
【図3】ワインディング装置の概略平面図である。
【図4】図3におけるA−A線矢示図である。
【図5】図4におけるB−B線断面図である。
【図6】単位ヘッドの別の実施例を示す要部のみの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例) 図1ないし図5は本発明に係るワインディング装置の実施例を示す。図2および図3においてワインディング装置は、巻付装置と図示していない繊維束供給構造とで構成してある。巻付装置は左右に長い基台1の上面に配置されてマンドレルMを支持する支持台2と、フープ巻用のヘッドユニット3と、ヘルカリ巻ヘッド4と、図示していないマンドレル交換装置などで構成する。支持台2およびフープ巻き用のヘッドユニット3は、それぞれ図示していない駆動機構で基台1の長手方向に沿って往復駆動できる。ヘルカリ巻ヘッド4は、基台1の中央付近に配置してあり先の繊維束供給構造で支持された一群のクリールから送給される繊維束YをマンドレルMへ向かって送給案内する。
【0024】
最終製品が圧力容器である場合のマンドレルMは、例えば高強度アルミニウム材や、ステンレス材を素材とする金属容器からなり、左右横長の円筒部6の両端に半球殻状のドーム部7と口部8とが一体に設けてある。ヘルカリ巻ヘッド4から送給される繊維束Yを円筒部6およびドーム部7に巻き付けてヘリカル巻層が形成され、フープ巻き用のヘッドユニット3から供給される繊維束YをマンドレルMの円筒部6に巻き付けてフープ巻層が形成される。多くの場合は、ヘリカル巻層とフープ巻層とを交互に積層する。繊維束Yは、ガラス繊維やカーボン繊維の帯状の束からなり、繊維束Yには予め熱硬化性樹脂が含浸させてある。
【0025】
図2に示すように、マンドレルMの支持台2は、基台1の上面に設けた前後一対のレール10で案内されるベース11と、ベース11の両側端に立設される支持腕12と、両支持腕12の上端の対向面に設けられるチャック13などで構成する。マンドレルMの左右の口部8には、それぞれ取付治具14が固定してあり、これらの取付治具14をチャック13で掴み固定することにより、マンドレルMが左右の支持腕12の間に支持される。片方のチャック13は図示していない駆動構造で回転駆動でき、これによりマンドレルMを回転駆動できる。マンドレルMの交換を容易化するために、両支持腕12はベース11に対して起立姿勢と横臥姿勢とに姿勢変更できる。
【0026】
ヘリカル巻ヘッド4は、基台1を跨ぐ状態で立設される固定フレーム17と、固定フレーム17の前後縁に配置される張力調整構造18(図3参照)と、繊維束YをマンドレルMへ向かって変向案内する一群のガイドローラー(図示していない)などで構成してある。固定フレーム17の板面の中央には円形の通口19が形成してあり、マンドレルMは通口19の空間を往復移動しながら緩やかに回転駆動されて、その間にヘリカル巻層が形成される。
【0027】
フープ巻用のヘッドユニット3は、図2に示すように、4個の単位ヘッド20をマンドレルMの中心軸に沿って一定間隔おきに配置して構成する。図4に示すように、単位ヘッド20は、多角形枠状のフレーム21と、フレーム21で回転自在に支持される巻掛テーブル22と、巻掛テーブル22に配置される6個のボビン23、およびガイドローラー24と、テーブル駆動構造および張力調整構造(いずれも図示していない)などで構成する。フレーム21の下部には前後一対のスライドブロック25が固定してあり、両スライドブロック25を基台1に設けたレール(ガイド構造)26で往復移動可能に案内している。各単位ヘッド20は移動用の駆動モーターを備えいて、独立して移動操作することができる。
【0028】
図4および図5において、巻掛テーブル22は、マンドレルMの中心軸と直交する円盤状のテーブル基体30と、テーブル基体30の周縁に固定される断面円形の筒壁31と、筒壁31の外周面に固定されるリング壁32などで構成する。巻掛テーブル22の周囲を囲むフレーム21の内面には、旋回ローラー33とスラストローラー34とが、それぞれ3個ずつ等間隔おきに交互に配置してある。旋回ローラー33は筒壁31の外周面を支持し、スラストローラー34はリング壁32を左右に挟み保持する。このように、旋回ローラー33およびスラストローラー34で支持した巻掛テーブル22は、フレーム21に対して回転自在に支持されて、図示していないテーブル駆動構造でマンドレルMと同心状に回転駆動される。テーブル駆動構造はフレーム21の下部に設けられて、その出力ギヤで筒壁31を回転駆動する。
【0029】
テーブル基体30の中央には、マンドレルMの往復移動を許す円形の通口36が形成してある。筒壁31で覆われる側の通口36の周囲壁に、ボビン23とガイドローラー24とが等間隔おきに配置してある。単位ヘッド20をよりコンパクトにするために、ボビン23は、それぞれのボビン中心軸がマンドレルMの中心軸と平行になるようにテーブル基体30で支持してある。ガイドローラー24は、隣接するボビン23の間に配置されて、ボビン23から供給される繊維束YをマンドレルMの周面へ向かって変向案内する。ボビン23とガイドローラー24との間に、繊維束Y用の図示していない張力調整構造を配置する。
【0030】
図5において、旋回ローラー33は、リング壁32の左右両側で筒壁31に外接する一対のローラー39と、両ローラー39をローラー軸40を介して遊転自在に軸支するブラケット41とで構成する。同様に、スラストローラー34は、リング壁32の左右両側に外接する一対のローラー42と、各ローラー42を遊転自在に軸支するローラー軸43とで構成する。3組のスラストローラー34でリング壁32を挟み保持することにより、テーブル駆動構造で回転駆動される巻掛テーブル22が、マンドレルMの中心軸に沿って遊動するのを規制して、繊維束YをマンドレルMに対して常に適正に巻き付けることができる。
【0031】
4個の単位ヘッド20は、テーブル駆動構造でマンドレルMの一端から他端へ向かって同時に移動操作しながら、各巻掛テーブル22を回転駆動して、マンドレルMの周囲にフープ巻層を形成する。このとき、各巻掛テーブル22の回転駆動方向が同じであると、各フープ巻層における繊維束Yの巻付角度と巻付方向が同じになって、充分な強度が得られなくなる。そこで、繊維束YをマンドレルMに対して正方向に巻き付ける単位ヘッド20と、繊維束YをマンドレルMに対して逆方向に巻き付ける単位ヘッド20とを、2個ずつ交互に配置している。
【0032】
図4において、繊維束Yを正方向に巻き付ける単位ヘッド20が、矢印Nで示すように時計回転方向へ駆動されるとき、繊維束Yを逆方向に巻き付ける単位ヘッド20は反時計回転方向へ駆動される。そのため、前者の単位ヘッド20と後者の単位ヘッド20とでは、ボビン23に対するガイドローラー24の位置が異なる。前者の単位ヘッド20では、各ボビン23の位置を基準にして、実線で示すように回転下手側のガイドローラー24を経由して繊維束Yが送給され、後者の単位ヘッド20では、破線で示すように、先の繊維束Yとは逆位置に配置したガイドローラー24で逆向きに送給案内される。つまり、前者と後者の単位ヘッド20は同じ構造であるが、巻掛テーブル22における繊維束Yの通糸パターンと、巻掛テーブル22を回転駆動する方向とが異なる。
【0033】
以上のように、各単位ヘッド20における繊維束Yの巻付方向を交互にしかも正逆に設定して、マンドレルMの円筒部6の一端から他端へわたって巻き付けることにより、繊維束Yの巻付方向が正逆に異なる4層のフープ巻層を同時に形成できる。したがって、単一の繊維束を巻き付ける場合に比べて、厚みが4倍のフープ巻層を約4分の1の時間で形成できる。また、図1に示すように、個々のフープ巻層における繊維束Yの巻付方向が、正方向と逆方向とに交互に異なるので、得られたフープ層の強度を向上して、ワインディング成形品の品質を向上できる。フープ巻き処理が完了したヘッドユニット3は、図3に想像線で示すように、基台1の一側へと移動操作されてヘリカル巻き処理が終わるまで待機する。
【0034】
4個の単位ヘッド20で巻き付けられる繊維束Yは同じ素材であってもよいが、必要があれば異なる素材の繊維束Yを使用することができる。例えば、1層目と2層目のフープ層をカーボン繊維からなる繊維束Yで形成し、3層目と4層目のフープ層をガラス繊維からなる繊維束Yで形成することができる。あるいは、カーボン繊維からなる繊維束Yとガラス繊維からなる繊維束Yを交互に巻き付けてもよく、その組み合わせや、使用する繊維の種類は自由に選定できる。また、4個の単位ヘッド20を常に同時に稼動する必要はなく、1個または2個の単位ヘッド20を休止した状態で、フープ巻層を形成することができる。さらに、フープ巻層における繊維束Yの巻付方向は、正逆、交互である必要はなく、例えば、繊維束Yの巻付方向が正方向のフープ層を2層形成し、その外面に逆方向のフープ層を2層形成するなど、自由に変更することができる。
【0035】
上記の実施例では、繊維束Yを正方向に巻き付ける単位ヘッド20と、逆方向に巻き付ける単位ヘッド20とを、2個ずつ交互に配置してヘッドユニット3を構成したが、その必要はない。例えば、繊維束YをマンドレルMに対して正逆双方向へ巻き付け可能な複数個の単位ヘッド20でフープ巻き用のヘッドユニット3を構成することができる。その場合には、図6に示すように、巻掛テーブル22に設けられるガイドローラー24を、2個の変向ローラー45と、両変向ローラー45を支持するローラーアーム46とで構成する。そのうえで、巻掛テーブル22を正方向へ回転駆動するときと、逆方向へ回転駆動するときとで、ローラーアーム46を図示していない操作シリンダーやモーターなどの駆動体で変位操作して、変向ローラー45の位置を一斉に変更する。この場合のテーブル駆動構造は、巻掛テーブル22を正転方向と逆転方向のいずれにも回転駆動できるように構成する。
【0036】
上記の実施例では、旋回ローラー33の少なくともひとつを利用して巻掛テーブル22を回転駆動することができる。巻掛テーブル22は単純筒状に形成する必要はなく、テーブル基体30の一側にボビン23を配置し、他側に旋回ローラー33で支持される筒壁31を設けることができる。その場合には、筒壁31の直径をより小さく設定することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 基台
2 支持台
3 フープ巻き用のヘッドユニット
20 単位ヘッド
21 フレーム
22 巻掛テーブル
23 ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルを支持する支持台と、前記支持台を支持する基台と、前記マンドレルへ向かって繊維束を供給するフープ巻き用のヘッドユニットを備えており、
前記支持台と前記ヘッドユニットとは、前記マンドレルの中心軸に沿って相対移動可能に構成されており、
前記ヘッドユニットは、複数個の単位ヘッドを前記マンドレルの中心軸に沿って配置して構成されており、
前記単位ヘッドは、前記マンドレルの往復移動を許す通口を備えた巻掛テーブルと、前記巻掛テーブルを回転自在に支持するフレームと、前記巻掛テーブルに配置される複数個のボビンと、前記巻掛テーブルを回転駆動するテーブル駆動構造とを含み、
個々の前記単位ヘッドから供給される前記繊維束を、前記マンドレルに対して巻き付けることを特徴とするフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記フープ巻き用のヘッドユニットが、前期繊維束を前記マンドレルに対して正方向に巻き付ける前記単位ヘッドと、前記繊維束を前記マンドレルに対して逆方向に巻き付ける前記単位ヘッドとで構成されており、
前記単位ヘッドの前記巻掛テーブルを回転駆動して、正方向のフープ巻層と逆方向のフープ巻層とを形成する請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記フープ巻き用のヘッドユニットが、繊維束をマンドレルに対して正逆双方向へ巻き付け可能な複数個の前記単位ヘッドで構成されており、
隣接する前記単位ヘッドの前記巻掛テーブルを、正方向および逆方向に回転駆動して、正方向のフープ巻層と逆方向のフープ巻層とを形成する請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記ヘッドユニットが、前記基台に設けたガイド構造で往復移動可能に支持されており、
前記ヘッドユニットをヘッド駆動構造で一方向へ移動操作して、前記複数のフープ巻層を形成する請求項2または3に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
複数個の前記ボビンが、それぞれのボビン中心軸が前記マンドレルの中心軸と平行になる状態で前記巻掛テーブルで支持してある請求項2〜4のいずれかに記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項6】
前記フレームが、前記巻掛テーブルの周囲を囲む状態で構成されて、その内面側に複数個の旋回ローラーと、複数個のスラストローラーとがそれぞれ配置されており、
前記巻掛テーブルが、前記通口を備えたテーブル基体と、前記旋回ローラーで回転自在に支持される断面円形の筒壁と、前記スラストローラーで位置保持支持されるリング壁とで構成されており、
前記テーブル基体に複数個の前記ボビンが配置してある請求項2〜5のいずれかに記載のフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−234529(P2010−234529A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81871(P2009−81871)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】