説明

フィルターユニットおよびフィルター濾材の使用方法

【課題】 捕集効率の低下、特にプリーツ加工時における捕集効率の低下が抑制されたフィルターユニットと、上記低下を抑制できるフィルター濾材の使用方法とを提供する。
【解決手段】 被濾過気体に含まれる粒子を捕集するフィルター濾材(1)と、フィルター濾材(1)を支持する支持枠(12)とを備えるフィルターユニット(11)であって、フィルター濾材(1)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜(2)と、PTFE多孔質膜(2)を狭持するように配置された繊維質濾材(3)および通気性支持材(4)とを備え、繊維質濾材(3)を構成する繊維の平均繊維径が0.02μm以上15μm以下であり、通気性支持材(4)は平均繊維径が15μmを超える繊維により構成され、フィルター濾材(1)は、繊維質濾材(3)がPTFE多孔質膜(2)よりも被濾過気体の気流の下流側となるように、支持枠(12)に支持されているフィルターユニットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターユニットおよびフィルター濾材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業、製薬産業、バイオ産業などにおいて、HEPAまたはULPAなどの高い捕集性能を有する高性能フィルターユニットの需要が、年々拡大している。このような高性能フィルターユニットに用いるフィルター濾材としては、従来、ガラスの微細繊維(マイクロファイバー)を用いた濾材(ガラス繊維系濾材)や、微細化ポリマー繊維の不織布などの繊維質濾材が一般的であるが、近年、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜を備えるフィルター濾材(PTFE系濾材:例えば、特許文献1に記載)が注目されている。PTFE系濾材は、同等の捕集効率を有する繊維質濾材に比べて、薄くすることが可能で、かつ、圧力損失が小さいという特長を有する。
【特許文献1】特開2000−61280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらフィルター濾材は、フィルターユニットに組み込まれる際に、濾材としての表面積を増大させ、フィルターユニットとしての通気抵抗を低減させるために、通常、プリーツ加工される。ところが、PTFE系濾材は、繊維質濾材に比べて、プリーツ加工による捕集効率の低下が発生しやすい。これは、繊維質濾材の厚さが通常100μm以上であるのに対し、PTFE多孔質膜の厚さが通常10μm程度以下と極めて薄く、プリーツ加工時に加わるストレスにより、微細な孔やクラックなどの欠陥がPTFE多孔質膜に生じやすいことが原因であると考えられる。特に、プリーツ加工によって形成される折り目部分において、このような欠陥が生じやすい傾向にある。また、濾材がプリーツ加工されない場合やフィルターユニットとしての使用時においても、静電気による放電などにより、PTFE多孔質膜に欠陥が生じることがある。
【0004】
そこで、本発明は、PTFE系濾材を備えながら、製造時および/または使用時における捕集効率の低下、特に、プリーツ加工による補修効率の低下が抑制されたフィルターユニットを提供することを目的とする。本発明はまた、このような補修効率の低下を抑制できる、フィルター濾材の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルターユニットは、被濾過気体に含まれる粒子を捕集するフィルター濾材と、前記フィルター濾材を支持する支持枠とを備えるフィルターユニットであって、前記フィルター濾材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜と、前記多孔質膜を狭持するように配置された繊維質濾材および通気性支持材とを備え、前記繊維質濾材を構成する繊維の平均繊維径が、0.02μm以上15μm以下であり、前記通気性支持材は、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成され、前記フィルター濾材は、前記繊維質濾材が前記多孔質膜よりも、前記被濾過気体の気流の下流側となるように、前記支持枠に支持されていることを特徴としている。
【0006】
本発明のフィルター濾材の使用方法は、被濾過気体に含まれる粒子を捕集し、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、前記多孔質膜を狭持するように配置された繊維質濾材および通気性支持材とを備え、前記繊維質濾材を構成する繊維の平均繊維径が、0.02μm以上15μm以下であり、前記通気性支持材が、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成されるフィルター濾材の使用方法であって、前記繊維質濾材を、前記多孔質膜よりも、前記被濾過気体の気流の下流側に配置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均繊維径が0.02μm以上15μm以下の繊維により構成される繊維質濾材と、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成される通気性支持材とによりPTFE多孔質膜を狭持し、かつ、上記繊維質濾材を、PTFE多孔質膜よりも被濾過気体の気流の下流側に配置したフィルターユニットとすることにより、製造時および/または使用時における補修効率の低下、特に、プリーツ加工による補修効率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1に示すフィルターユニット11は、被濾過気体に含まれる粒子を捕集する、プリーツ加工されたフィルター濾材1と、フィルター濾材1を支持する支持枠12とを備えている。フィルター濾材1は、図2に示すように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜2と、PTFE多孔質膜2を狭持するように配置された繊維質濾材3および通気性支持材4とを備えている。またフィルター濾材1は、繊維質濾材3が、被濾過気体の気流13についてPTFE多孔質膜2よりも下流側となるように、支持枠12に支持されている。
【0010】
PTFE多孔質膜2よりも気流13の下流側に配置される繊維質濾材3は、平均繊維径が0.02μm以上15μm以下の繊維により構成され、メイン濾材であるPTFE多孔質膜2に、製造時のプリーツ加工などにより微細な孔やクラックなどの欠陥が生じた場合にも、当該欠陥を通過した粒子を捕集できる。また、繊維質濾材3は、PTFE多孔質膜2に比べて、プリーツ加工時などに上記欠陥が生じにくい。即ち、繊維質濾材3は、被濾過気体に含まれる粒子を主に捕集するメイン濾材であるPTFE多孔質膜2のバックアップ濾材であるともいえる。
【0011】
通気性支持材4は、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成され、通気性支持材4の配置により、プリーツ加工時を含め、フィルター濾材1としての強度、剛性などを向上できる。このように、繊維質濾材3および通気性支持材4を、PTFE多孔質膜2および気流13に対して所定の位置関係を満たすように配置したフィルターユニット11とすることにより、製造時および使用時における捕集効率の低下、特に、プリーツ加工時における捕集効率の低下を抑制できる。
【0012】
繊維質濾材3がPTFE多孔質膜2よりも気流13の下流側に配置されているかどうかは、フィルターユニット11が被濾過気体の流路に配置されている状態では、実際に当該流路を流れる気体の方向に基づいて判別すればよい。フィルターユニット11が被濾過気体の流路に配置されていない状態では、例えば、支持枠12の形状(具体的な例としては、支持枠12の形状が繊維質濾材3側の面とPTFE多孔質膜2側の面とで異なっているなど)、支持枠12が備える部材、機構(例えば、誤装着防止部材、機構など)、フィルターユニット11の配置方向を指定する表示(例えば、気流13の下流側に配置する面を表示する刻印、ステッカーなど)などに基づいて判別すればよい。
【0013】
図1に示す例では、フィルター濾材1がプリーツ加工されているが、プリーツ加工されていないフィルター濾材1であってもよい。
【0014】
繊維質濾材3の材質、構成などは、濾材3を構成する繊維の平均繊維径が上述の範囲である限り、特に限定されないが、PTFE多孔質膜2を通過した粒子をより確実に捕集できることから、ガラス繊維質濾材、または、ポリマー繊維質濾材であることが好ましい。
【0015】
ガラス繊維質濾材としては、フィルター濾材として一般的に使用される濾材を用いればよく、ガラス繊維にバインダーを加えて抄紙した濾材が代表的である。このような濾材は、一般に、バインダーを介してガラス繊維が互いに結着した構造を有している。
【0016】
ポリマー繊維質濾材としては、フィルター濾材として一般的に使用される濾材を用いればよいが、メルトブローン法またはエレクトロスピニング法(電荷誘導紡糸法、あるいは、静電紡糸法とも呼ばれる)により形成された、ポリマー繊維の不織布(メルトブローン不織布またはエレクトロスピニング不織布)を用いることが好ましい。メルトブローン法およびエレクトロスピニング法によれば、微細な繊維径を有するポリマー繊維からなる不織布を形成できるため、圧力損失が低く、上記通過した粒子をより確実に捕集できる繊維質濾材3とすることができる。
【0017】
繊維質濾材3がポリマー繊維質濾材である場合、濾材を構成するポリマー繊維の材質は特に限定されないが、製造が容易であり、低コストであることから、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、メルトブローン法およびエレクトロスピニング法の各方法により、不織布とすることができる。
【0018】
PTFE多孔質膜2を通過した粒子をより確実に捕集するためには、繊維質濾材3を構成する繊維の平均繊維径が5μm以下であることが好ましい。ガラス繊維質濾材におけるガラス繊維の平均繊維径は、通常、5μm以下であり、その最小繊維径は1μm程度である。メルトブローン法により形成されたポリマー繊維の平均繊維径は、通常、1μm〜3μm程度の範囲である。エレクトロスピニング法により形成されたポリマー繊維の平均繊維径は、通常、0.02μm〜1μm程度の範囲である。
【0019】
繊維質濾材3の厚さは、バックアップ濾材としてある程度の捕集効率を確保し、プリーツ加工時に生じる欠陥を抑制するために、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
【0020】
繊維質濾材3の捕集効率は、PTFE多孔質膜2の捕集効率よりも小さいことが好ましい。具体的には、被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、繊維質濾材3の捕集効率が、PTFE多孔質膜2の捕集効率よりも小さいことが好ましい。この場合、繊維質濾材3が配置されることによる、フィルター濾材1としての圧力損失の上昇を抑制でき、従来の繊維質濾材からなるフィルター濾材に比べて、同程度の捕集効率であれば圧力損失が小さい、というPTFE系濾材の特長を維持できる。また、繊維質濾材3は、バックアップ濾材としてPTFE多孔質膜2を通過した後に拡散した粒子を捕集できればよいため、PTFE多孔質膜2と同程度以上の捕集効率は必ずしも必要とされない。
【0021】
繊維質濾材3の捕集効率は、被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、25%以上であればよく、70%以上であることが好ましい。
【0022】
PTFE多孔質膜2は、濾材として適切な性能を有する限り、その構造などは特に限定されない。PTFE多孔質膜2の平均孔径は、例えば、0.01μm〜1μmの範囲であり、その空孔率は、例えば、95%程度以上であり、その厚さは、例えば、2μm〜10μmの範囲である。
【0023】
PTFE多孔質膜2の圧力損失は、5.3cm/secの流速で気体を透過させたときの圧力損失にして、100Pa〜300Pa程度の範囲が好ましい。PTFE多孔質膜2の捕集効率は、被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、99.97%以上であることが好ましく、99.99%以上、あるいは、99.999%以上であることがより好ましい。
【0024】
通気性支持材4の材質、構造は、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成され、PTFE多孔質膜2および繊維質濾材3よりも通気性に優れる限り、特に限定されない。通気性支持材4の構造としては、例えば、フェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)であればよい。強度、柔軟性、および、製造工程における作業性に優れることから、不織布からなる通気性支持材4が好ましく、この場合、不織布を構成する少なくとも一部の繊維が、いわゆる芯鞘構造を有する複合繊維であってもよい。芯成分の融点が鞘成分の融点よりも高い場合、フィルター濾材1を製造する際における、通気性支持材4と他の部材との加熱圧着がより容易となる。
【0025】
通気性支持材4の材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、および、これらの複合材を用いればよい。
【0026】
より強度および通気性に優れる通気性支持材4とするためには、通気性支持材4を構成する繊維の繊維径が20μm以上であることがより好ましい。このような不織布は、例えば、スパンボンド法により形成できる(スパンボンド不織布)。
【0027】
本発明のフィルター濾材1は、通気性支持材4を2以上備えていてもよく、図3に示すように、図2に示すフィルター濾材1におけるPTFE多孔質膜2と繊維質濾材3との間に、通気性支持材4がさらに配置されていてもよい。特に、繊維質濾材3がガラス繊維質濾材である場合に、繊維質濾材3から剥離した微細なガラス繊維によるPTFE多孔質膜2の損傷を抑制できる。
【0028】
フィルター濾材1の捕集効率は、被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、通常、99.97%以上であり、PTFE多孔質膜2および繊維質濾材3の材質や構造を選択することにより、99.99%以上、あるいは、99.999%以上とすることができる。
【0029】
本発明のフィルター濾材1では、フィルター濾材1を構成する各部材は、単に重ね合わされているだけでもよいし、例えば、接着ラミネート、あるいは、熱ラミネートなどの手法により、一体化されていてもよい。
【0030】
本発明のフィルター濾材1を構成する各部材の層数は特に限定されず、フィルター濾材1として必要な特性に応じて、任意に設定すればよい。例えば、2層以上のPTFE多孔質膜2および/または繊維質濾材3を備えるフィルター濾材1であってもよい。
【0031】
本発明のフィルター濾材1を構成する各部材は、各部材として一般的な製造方法により形成できる。フィルター濾材1をプリーツ加工する方法についても、ロータリー方式、レシプロ方式など、フィルター濾材に対するプリーツ加工として一般的な方法を用いればよい。フィルター濾材1のプリーツ形状についても、特に限定されない。
【0032】
支持枠12には、フィルターユニットとして一般的な材料を用いればよく、支持枠12の形状も任意に設定できる。支持枠12におけるフィルター濾材1の支持方法は、一般的なフィルターユニットと同様であればよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0034】
本実施例では、図1に示すようなフィルターユニット11を作製し、その特性(圧力損失および捕集効率)を評価した。ただし、フィルター濾材1として、図3に示すようなフィルター濾材1を用いた。
【0035】
最初に、以下に示す方法により、PTFE多孔質膜2を作製した。
【0036】
PTFEファインパウダー(旭・ICIフロロポリマーズ社製、フルオンCD−123)100重量部と、液状潤滑剤としてナフサ17重量部とを均一に混合し、PTFEペーストを形成した。次に、形成したPTFEペーストを、2MPa(20kg/cm2)の圧力で予備成形した後に丸棒状に押出成形し、さらに、1対の金属ロールにより圧延して、厚さ250μmのPTFEシートを形成した。次に、形成したPTFEシートを、290℃において縦(長さ)方向に10倍、および、80℃において横(幅)方向に30倍延伸し、未焼成のPTFE多孔質膜を形成した。次に、形成した未焼成多孔質膜を400℃で3秒間焼成し、PTFE多孔質膜2(厚さ10μm)を得た。
【0037】
得られたPTFE多孔質膜2の空孔率および平均孔径をポロシティメーターにより測定したところ、空孔率は99%以上、平均孔径は1μmであった。
【0038】
次に、得られたPTFE多孔質膜2を、有効通気面積が100cm2である円形状のホルダーにセットし、セットした多孔質膜の両面に圧力差を発生させて気体(空気)を透過させ、透過する気体の流速を5.3cm/secとしたときの圧力損失を圧力計により測定した。測定の結果、PTFE多孔質膜2の圧力損失は150Paであった。
【0039】
次に、得られたPTFE多孔質膜2を狭持するように、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレン(PE)の芯鞘構造を有する一対の不織布(ユニチカ社製、エルベスTO303WDO、厚さ150μm、目付量30g/m2、平均繊維径25μm、鞘部であるPEの融点129℃)を積層し、全体を、135℃に加熱した一対の熱ロールで熱ラミネートして、一対の通気性支持材4によりPTFE多孔質膜2が狭持されたPTFE系濾材(厚さ130μm、PTFE多孔質膜の厚さ10μm)を得た。なお、上記不織布における平均繊維径は、不織布の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影し、得られた写真から10ヶ所以上の繊維径を測定して、その測定値の平均を算出することにより求めた。以降に示す各部材における平均繊維径の測定についても、同様に行った。
【0040】
次に、得られたPTFE系濾材を、有効通気面積が100cm2である円形状のホルダーにセットし、セットしたPTFE系濾材の両面に圧力差を発生させて気体を透過させ(透過量:31.8L/min)、透過する気体の流速を5.3cm/secとしたときの圧力損失を圧力計により測定した。測定の結果、PTFE系濾材の圧力損失は170Paであった。
【0041】
続いて、圧力損失の測定と同様の装置を用い、上記PTFE系濾材に、多分散ジオクチルフタレート(DOP)粒子を含む気体を透過させ、濾材の下流側における上記DOP粒子の濃度をパーティクルカウンター(リオン社製、KC−18)により測定して、PTFE系濾材の捕集効率を測定した。ただし、濾材を透過させた気体には、粒子径0.1μm〜0.2μmの範囲の粒子が4×108個/L、粒子径0.2μm〜0.3μmの範囲の粒子が6×107個/LとなるようにDOP粒子を含ませ、パーティクルカウンターによる測定対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲とし、捕集効率は、捕集効率=(1−(下流側DOP粒子濃度/上流側DOP粒子濃度))×100(%)の式より算出した。測定の結果、PTFE系濾材の捕集効率は99.995%であった。
【0042】
次に、上記のようにして得たPTFE系濾材を用い、フィルター濾材サンプルを作製した。以下に、各フィルター濾材サンプルの作製方法を示す。
【0043】
−サンプル1−
PTFE系濾材の一方の面に、ポリプロピレン(PP)からなるメルトブローン不織布(タピルス社製、P020SW、厚さ230μm、目付量20g/m2、平均繊維径3.5μm)を積層し、全体を、135℃に加熱した一対の熱ロールで熱ラミネートして、図3に示すフィルター濾材1を作製した。熱ラミネート後におけるPTFE多孔質膜の厚さは10μm、メルトブローン不織布の厚さは200μmであった。
【0044】
−サンプル2−
PTFE系濾材の一方の面に、ガラス繊維質濾材(北越製紙社製、H760、厚さ400μm、目付量62g/m2、平均繊維径1μm)を積層し、全体を、135℃に加熱した一対の熱ロールで熱ラミネートして、図3に示すフィルター濾材1を作製した。熱ラミネート後におけるPTFE多孔質膜の厚さは10μm、ガラス繊維質濾材の厚さは360μmであった。
【0045】
−サンプルA(比較例)−
上記のようにして得たPTFE系濾材を、そのままサンプルAとした。
【0046】
このように作製した各サンプルについて、PTFE系濾材に対して行った方法と同様にして、各サンプルの圧力損失および捕集効率を測定した。サンプル1および2の測定に際しては、PTFE多孔質膜2が、繊維質濾材3であるメルトブローン不織布またはガラス繊維質濾材よりも気流の上流側になるように、フィルター濾材をホルダーにセットした。
【0047】
また、さらなる比較例であるサンプルBおよびCとして、それぞれ、サンプル1または2を、そのPTFE多孔質膜2が繊維質濾材3であるメルトブローン不織布またはガラス繊維質濾材よりも気流の下流側になるようにホルダーにセットし、上記方法と同様にして、その圧力損失および捕集効率を測定した。
【0048】
測定結果を以下の表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
次に、各フィルター濾材に対してプリーツ加工を行い、図1に示すようなフィルターユニット11(100mm角:各フィルターユニットサンプルは、作製に用いたフィルター濾材サンプルの呼称に対応して、サンプル1、2、A、BおよびCとする)を作製した。プリーツ加工には、レシプロプリーツマシン(東洋工機社製、Model TK−11)を用い、折り高さを15mm、プリーツ数を28山/ユニット、加工速度を120山/分とした。フィルターユニット11の支持枠12はポリプロピレン(PP)製とし、支持枠12内に各フィルター濾材サンプルを配置した後、支持枠12とフィルター濾材1とを、PPホットメルト接着剤により接着し、シールした。
【0051】
このようにして作製した各フィルターユニットサンプルについて、PTFE系濾材に対して行った方法と同様に、各サンプルの圧力損失および捕集効率を測定した。ただし、各フィルターユニットを透過させる気体の透過量は、267L/minとした。サンプル1および2の測定に際しては、PTFE多孔質膜2が、繊維質濾材3であるメルトブローン不織布またはガラス繊維質濾材よりも気流の上流側になるように、フィルターユニットをセットし、サンプルBおよびCの測定に際しては、PTFE多孔質膜2が、繊維質濾材3よりも気流の下流側になるように、フィルターユニットをセットした。
【0052】
測定結果を以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表1および2に示すように、比較例であるサンプルAでは、プリーツ加工により、その捕集効率が低下したのに対して、サンプル1および2では、プリーツ加工により、その捕集効率は低下せず、99.999%以上を保持できた。サンプルAでは、プリーツ加工によりPTFE多孔質膜に微小な欠陥が生じ、その補修効率が低下したと考えられる。サンプル1、2とサンプルB、Cとを比較すると、PTFE多孔質膜2よりも繊維質濾材3が気流の上流側に配置されたサンプルB、Cにおいて、サンプルAほどではないものの、その捕集効率が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、PTFE系濾材を備えながら、製造時および/または使用時における捕集効率の低下、特に、プリーツ加工による補修効率の低下が抑制されたフィルターユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のフィルターユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すフィルターユニットにおける断面II−IIと、当該断面におけるフィルタ濾材部分を拡大した断面とを示す模式図である。
【図3】本発明のフィルターユニットに用いるフィルター濾材の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 フィルター濾材
2 PTFE多孔質膜
3 繊維質濾材
4 通気性支持材
11 フィルターユニット
12 支持枠
13 気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被濾過気体に含まれる粒子を捕集するフィルター濾材と、前記フィルター濾材を支持する支持枠とを備えるフィルターユニットであって、
前記フィルター濾材は、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、前記多孔質膜を狭持するように配置された繊維質濾材および通気性支持材とを備え、
前記繊維質濾材を構成する繊維の平均繊維径が、0.02μm以上15μm以下であり、
前記通気性支持材は、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成され、
前記フィルター濾材は、前記繊維質濾材が前記多孔質膜よりも、前記被濾過気体の気流の下流側となるように、前記支持枠に支持されていることを特徴とするフィルターユニット。
【請求項2】
前記繊維質濾材が、ガラス繊維質濾材またはポリマー繊維質濾材である請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項3】
前記繊維質濾材が、メルトブローン法またはエレクトロスピニング法により形成された、ポリマー繊維の不織布である請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項4】
前記繊維質濾材が、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種からなる請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項5】
前記繊維質濾材を構成する繊維の平均繊維径が、5μm以下である請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項6】
前記繊維質濾材の厚さが、100μm以上である請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項7】
被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、
前記繊維質濾材の捕集効率が、前記多孔質膜の捕集効率よりも小さい請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項8】
被濾過気体の流速を5.3cm/secとし、捕集対象粒子の粒径を0.3μm〜0.5μmの範囲としたときに、
前記フィルター濾材の捕集効率が、99.97%以上である請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項9】
前記フィルター濾材が、プリーツ加工されている請求項1に記載のフィルターユニット。
【請求項10】
被濾過気体に含まれる粒子を捕集し、
ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、前記多孔質膜を狭持するように配置された繊維質濾材および通気性支持材とを備え、
前記繊維質濾材を構成する繊維の平均繊維径が、0.02μm以上15μm以下であり、
前記通気性支持材が、平均繊維径が15μmを超える繊維により構成されるフィルター濾材の使用方法であって、
前記繊維質濾材を、前記多孔質膜よりも、前記被濾過気体の気流の下流側に配置することを特徴とするフィルター濾材の使用方法。
【請求項11】
前記フィルター濾材が、プリーツ加工されている請求項10に記載のフィルター濾材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−75739(P2007−75739A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267213(P2005−267213)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】