説明

フィルタ装置

【課題】弾性表面波フィルタと誘電体フィルタとを備えつつ小型化することができるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】一方の主面に弾性表面波フィルタ用凹部空間が設けられ他方の主面に誘電積層フィルタ用凹部空間が設けられた素子搭載部材と、前記弾性表面波フィルタ用凹部空間内に設けられる弾性表面波フィルタと、前記誘電体フィルタ用凹部空間内に設けられる誘電体フィルタと、前記素子搭載部材の一方の主面と接合されて前記弾性表面波フィルタを気密封止させる蓋部材と、前記誘電体フィルタを被覆する絶縁性樹脂と、から主に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として無線の移動通信装置に用いられ、送信信号と受信信号とを分離するために送信信号を除去するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線の移動通信装置の一例である携帯電話は、近年、従来の携帯電話の様に音声やデータ等の信号を送信及び受信するだけでなく、FMラジオ放送用の受信用回路やテレビ放送用の受信用回路が搭載されておりFMラジオ放送やテレビ放送の信号を受信することができる様になってきている。
【0003】
テレビ放送用の受信用回路は、周波数が470〜770MHz帯のテレビ放送の信号を受信できる様になっている。
FMラジオ放送用の受信用回路は、周波数が76.0〜90.0MHz帯のFMラジオ放送の信号を受信できる様になっている。
【0004】
つまり、このような無線の移動通信装置である携帯電話は、FMラジオ放送用の受信用回路とテレビ放送用の受信用回路と音声やデータ等の信号を送受信する回路とが搭載されている。
また、携帯電話は、FMラジオ放送又はテレビ放送の信号が遠方の送信アンテナから送信されてくるため、携帯電話自身が発する送信用の信号がFMラジオ放送又はテレビ放送の信号と比較して非常に強い状態となっている。このため、携帯電話は、携帯電話自身が発した送信信号がFMラジオ放送用の受信用回路又はテレビ放送用の受信用回路に混入し、FMラジオ放送又はテレビ放送の信号を受信することができなくなる恐れがある。
従って、このような無線の移動通信装置である携帯電話は、音声やデータ等の信号を送受信する回路から送信された信号がFMラジオ放送用の受信回路又はテレビ放送用の受信回路に受信されることがない様に、フィルタ装置が設けられている。
【0005】
フィルタ装置は、所定の周波数帯の信号を減衰させて信号を除去する役割を果たす。
ここで、音声やデータ等の送信及び受信は、一般的に、800MHz帯及び1.7〜2.0GHz帯の周波数の信号が用いられている。
音声やデータ等の送信信号に800MHz帯の周波数帯が含まれている場合、フィルタ装置は、800MHz帯近傍のみを減衰させ、FMラジオ放送又はテレビ放送の信号を受信することができる。この様なフィルタ装置には、例えば、信号を急激に減衰させることのできる弾性表面波フィルタが用いられる。
音声やデータ等の送信信号に1.7〜2.0GHz帯の周波数帯が含まれている場合、フィルタ装置は、1.7〜2.0GHz帯を減衰させ、FMラジオ放送又はテレビ放送の信号を受信することができる。このようなフィルタ装置には、例えば、幅広い周波数帯を減衰させることができる誘電体フィルタが用いられる。
【0006】
また、フィルタ装置は、800MHz帯及び1.7〜2.0GHz帯に対応することができる様に、弾性表面並みフィルタ及び誘電体フィルタを無線の移動通信装置である携帯電話に搭載している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−226608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のフィルタ装置は、800MHz帯及び1.7〜2.0GHz帯に対応することができる様に、弾性表面波フィルタ及び誘電体フィルタをそれぞれ設けているので、弾性表面波フィルタ又は誘電体フィルタの分だけ搭載する面積が必要となる。
従って、従来のフィルタ装置は、弾性表面フィルタ又は誘電体フィルタの分だけ搭載面積が必要となるので小型化に対応することができない恐れがある。
【0009】
そこで、本発明では、弾性表面波フィルタと誘電体フィルタとを備えつつ小型化することができるフィルタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、一方の主面に弾性表面波フィルタ用凹部空間が設けられ他方の主面に誘電積層フィルタ用凹部空間が設けられた素子搭載部材と、前記弾性表面波フィルタ用凹部空間内に設けられる弾性表面波フィルタと、前記誘電体フィルタ用凹部空間内に設けられる誘電体フィルタと、前記素子搭載部材の一方の主面と接合されて前記弾性表面波フィルタを気密封止させる蓋部材と、前記誘電体フィルタを被覆する絶縁性樹脂と、から主に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このようなフィルタ装置は、弾性表面波フィルタが素子搭載部材の弾性表面波フィルタ用凹部空間内に搭載されており、誘電体フィルタが誘電体フィルタ用凹部空間内に搭載されている。
つまり、このようなフィルタ装置は、立体的に弾性表面波フィルタと誘電体フィルタとを搭載することができるので、従来のフィルタ装置と比較して弾性表面波フィルタ、又は、誘電体フィルタのどちらか一方の搭載面積を縮小することができる。よって、このようなフィルタ装置は、従来のフィルタ装置と比較して小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るフィルタ装置の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において、各構成要素の状態をわかりやすくするために誇張して図示している。
【0014】
本発明の実施形態に係るフィルタ装置について説明する。
図1に示すように、フィルタ装置100は、弾性表面波フィルタ110と整合素子150,151と誘電体フィルタ120と素子搭載部材130と蓋部材160と絶縁性樹脂140とから主に構成されている。
【0015】
弾性表面波フィルタ110は、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムなどの圧電材料からなる圧電基板の主面に、アルミニウムや銅などの薄膜となっている櫛形電極が設けられている。
また、弾性表面波フィルタ110は、弾性表面波フィルタ110の入力端子110a及び弾性表面波フィルタ110の出力端子110bを備えている。
また、弾性表面波フィルタ110は、周波数帯が800MHz帯近傍の信号を減衰させる役割を果たす。また、弾性表面波フィルタ110は、周波数帯が800MHz帯近傍のみの信号を急峻に減衰させることができる。
【0016】
整合素子150,151は、例えば、チップインダクタやコンデンサなどの部品素子が用いられる。
また、整合素子150,151は、弾性表面波フィルタ110と電気的に接続されることで弾性表面波フィルタ110が特に周波数帯800MHz帯近傍に於いて急峻に減衰させる役割を果たす。
【0017】
誘電体フィルタ120は、例えば、チタン酸バリウム等の誘電体であるセラミックが積層させて設けられた、積層誘電体フィルタが用いられる。
また、誘電体フィルタ120は、誘電体フィルタ120の入力端子120a及び誘電体フィルタ120の出力端子120bを備えている。
また、誘電体フィルタ120は、周波数帯が1.7〜2.0GHz帯の信号を減衰させる役割を果たす。また、誘電体フィルタ120は、耐電力性に優れている。
【0018】
素子搭載部材130は、一方の主面に弾性表面波フィルタ用凹部空間131が設けられ、他方の主面に誘電体フィルタ用凹部空間132が設けられている。
素子搭載部材130は、他方の主面に素子搭載部材130の入力端子G1と素子搭載部材130の出力端子G2とが設けられている。
素子搭載部材130は、弾性表面フィルタ用凹部空間131内に弾性表面フィルタ用搭載端子P1a,P1bと整合素子用搭載端子(図示せず)が設けられており、誘電体フィルタ用凹部空間132の底面に誘電体フィルタ用搭載端子P2a,P2bが設けられている。
【0019】
弾性表面波フィルタ用搭載端子P1a,P1bは、例えば、弾性表面波フィルタ用凹部空間131の底面に、2つ設けられている。
一方の弾性表面波フィルタ用搭載端子P1aは、弾性表面波フィルタ110の入力端子110aと外部配線Hで電気的に接続されている。
他方の弾性表面波フィルタ用搭載端子P1bは、弾性表面波フィルタ110の出力端子110bと外部配線Hで電気的に接続されている。
ここで、外部配線Hは、例えば、金ワイヤが用いられワイヤボンディング法により設けられている。なお、ここでは、外部配線がワイヤボンディング法により設けられている場合について説明しているが、電気的に接続することができれば、フリップチップボンディング法を用いて設けてもよい。
【0020】
整合素子用搭載端子は、例えば、半田や導電性樹脂などが用いられて、整合素子150,151と電気的に接続されている。
【0021】
誘電体フィルタ用搭載端子P2a,P2bは、例えば、誘電体フィルタ用凹部空間132の底面に2つ設けられている。
一方の誘電体フィルタ用搭載端子P2aは、誘電体フィルタ120の入力端子120aと、例えば、半田や導電性樹脂により電気的に接続されている。
他方の誘電体フィルタ用搭載端子P2bは、誘電体フィルタ120の出力端子120bと、例えば、半田や導電性樹脂により電気的に接続されている。また、他方の誘電体フィルタ用搭載端子P2bは、素子搭載部材130の内部配線Nを介して、一方の弾性表面波フィルタ用搭載端子P1aと電気的に接続されている。
【0022】
素子搭載部材130の入力端子G1は、素子搭載部材130の内部に設けられている内部配線Nを介して、一方の誘電体フィルタ用搭載端子P2aと電気的に接続されている。
【0023】
素子搭載部材130の出力端子G2は、素子搭載部材130の内部に設けられている内部配線Nを介して、他方の弾性表面波フィルタ用搭載端子P1bと電気的に接続されている。
【0024】
素子搭載部材130は、弾性表面波フィルタ用凹部空間131内に弾性表面波フィルタ110及び整合素子150,151が設けられ、誘電体フィルタ用凹部空間132内に誘電体フィルタ120が設けられている。
素子搭載部材130は、素子搭載部材130の入力端子G1と一方の誘電体フィルタ用搭載端子P2aとが電気的に接続されており、他方の誘電体フィルタ用搭載端子P2bと一方の弾性表面波フィルタ用搭載端子P1aとが電気的に接続されており、他方の弾性表面波フィルタ用端子P1bと素子搭載部材130の出力端子G2とが電気的に接続されている。
【0025】
蓋部材160は、例えば、矩形形状の平板状に設けられている。
また、蓋部材160は、素子搭載部材130の一方の主面と接合されて、素子搭載部材130の一方の主面に設けられた弾性表面波フィルタ用凹部空間131内に搭載されている弾性表面波フィルタ110及び整合素子150,151を気密封止する役割を果たす。
ここで、蓋部材160は、例えば、素子搭載部材130の一方の主面と銀ロウ材等のロウ材Rを用いてシームウェルド法により接合される。
【0026】
絶縁性樹脂140は、素子搭載部材130の他方の主面に設けられている誘電体フィルタ用凹部空間132内に搭載されている誘電体フィルタ120を被覆する様に設けられる。絶縁性樹脂140は、誘電体フィルタ120を被覆する様に設けられることで、誘電体フィルタ120を封止する役割を果たしている。
【0027】
フィルタ装置100は、素子搭載部材130の一方の主面に設けられた弾性表面波フィルタ用凹部空間131内に弾性表面波フィルタ110と整合素子150,151が搭載された状態で素子搭載部材130の一方の主面と蓋部材160の一方の主面とがロウ材Rにより接合されて、弾性表面波フィルタ110が気密封止されている。
また、フィルタ装置100は、素子搭載部材130の他方の主面に設けられた誘電体フィルタ用凹部空間132内に誘電体フィルタ120が搭載された状態で絶縁性樹脂140が誘電体フィルタ用凹部空間132内に充填され誘電体フィルタが被覆される。
また、フィルタ装置100は、素子搭載部材130の入力端子G1と誘電体フィルタ120の入力端子120aとが電気的に接続されており、誘電体フィルタ120の出力端子120bと弾性表面波フィルタ110の入力端子110aとが電気的に接続されており、弾性表面波フィルタ110の出力端子110bと素子搭載部材130の出力端子G2と電気的に接続されている。
つまり、フィルタ装置100は、素子搭載部材130の入力端子G1から入力された信号が誘電体フィルタ120及び弾性表面波フィルタ110を通過し変換されて素子搭載部材130の出力端子G2から出力される
【0028】
このような本発明の実施形態に係るフィルタ装置100は、弾性表面波フィルタ110が素子搭載部材130の弾性表面波フィルタ用凹部空間131内に搭載されており、誘電体フィルタ120が誘電体フィルタ用凹部空間132内に搭載されている。
つまり、このようなフィルタ装置100は、立体的に弾性表面波フィルタ110と誘電体フィルタ120とを搭載することができるので、従来のフィルタ装置と比較して弾性表面波フィルタ110、又は、誘電体フィルタ120のどちらか一方の搭載面積を縮小することができる。よって、本発明の実施形態に係るフィルタ装置100は、従来のフィルタ装置と比較して小型化することができる。
【0029】
また、素子搭載部材130の入力端子G1及び出力端子G2が設けられている主面には、グラウンドと接続されるグラウンド端子を設けても良いし、弾性表面波フィルタ110や誘電体フィルタ120や整合素子150,151と接続されている外部端子を設けても良い。
【符号の説明】
【0030】
100 フィルタ装置
110 弾性表面波フィルタ
120 誘電体フィルタ
130 素子搭載部材
131 弾性表面波フィルタ用凹部空間
132 誘電体フィルタ用凹部空間
140 封止用樹脂
150,151 整合素子
160 蓋部材
110a,120a,G1 入力端子
110b,120b,G2 出力端子
P1a,P1b,P2a,P2b 搭載端子
N 内部配線
H 外部配線
R ロウ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に弾性表面波フィルタ用凹部空間が設けられ他方の主面に誘電積層フィルタ用凹部空間が設けられた素子搭載部材と、
前記弾性表面波フィルタ用凹部空間内に設けられる弾性表面波フィルタと、
前記誘電体フィルタ用凹部空間内に設けられる誘電体フィルタと、
前記素子搭載部材の一方の主面と接合されて前記弾性表面波フィルタを気密封止させる蓋部材と、
前記誘電体フィルタを被覆する絶縁性樹脂と、
から主に構成されていることを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−160021(P2011−160021A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17628(P2010−17628)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】