説明

フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置

【課題】剥離の発生し難いフィルムおよびその製造方法を提供する、コンパクトで設備費用の少ない新たな縦延伸法を提供する。
【解決手段】樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記2枚の偏光板の両方の面に対して垂直方向から光を照射しながら前記フィルム切片を0°〜90°の範囲で回転させた時に観測される消光位が、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって異なるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムおよびその製造方法に関する。また、該フィルムを有する偏光板および液晶表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示板等で使用されている光学補償フィルムは延伸することにより分子を配向させ複屈折を発現させていた。
このような延伸には大きく分けて縦延伸と横延伸の2つが知られており、所望される光学特性に応じて縦延伸および/または横延伸が適宜選択される。この中でも縦延伸により光学補償フィルムを製造する方法では、2対もしくはそれ以上のニップロールを用い、ニップロール間を、フィルムを加熱しながら通し、出口側のニップロールの周速度を入口側のニップロールの周速度より速くして延伸する方法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の縦延伸フィルムは、フィルム内で面内剥離(フィルムに粘着テープを貼り付け、それを剥した際にフィルムの表層が剥離する現象)が起き易いという問題があった。近年、求められる光学補償能が高まってきており、フィルムの延伸倍率を従来よりも高め、複屈折を発現させる必要が生じている。しかしながら、上記のような縦延伸フィルムにおける面内剥離の問題は、特に延伸倍率の上昇に伴い顕著に発生することから、改良が望まれているのが現状である。
【0004】
さらにこのような縦延伸を行う場合、一度フィルムを製膜した後に、新たに加熱装置、複数対のニップロールからなる大掛かりな縦延伸装置を通すことが必要であった。そのため、設備自体の費用および、設置するための大きなスペースが原因となり、フィルム製造コストが高くなっている。近年、さらなるフィルム製造コスト削減が求められており、新たな効率的な光学補償用フィルムの製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−239522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、フィルムおよびその製法に関し、フィルム内で面内剥離が発生し難いフィルムおよびその製造方法を提供することにある。また、コンパクトで設備費用の少ない新たなフィルムの製造方法、特に縦延伸フィルムの製造方法を提供することにある。さらに、該フィルムを用いた偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに対し、本発明者らが挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に、溶媒に溶解した樹脂を連続的に挟圧してフィルムを作成する製造方法において挟圧装置間の圧力を上げることを検討したところ、フィルム内で面内剥離が発生し難いフィルムを作ることができることが判明した。
本発明の特徴は、半流体(固化する前の流動性を保持した状態)の樹脂含有組成物に対し挟圧しながら挟圧装置間を通過させることで配向させることにあり、従来の縦延伸の方式(固体のフィルムを複数対のニップロール間で引き伸ばす方法)とは全く異なった概念に基づくものである。本発明の製造方法では、挟圧装置を構成する複数の挟圧体間に速度差を与えなくても半流体を、挟圧装置間を通過させることだけで配向させることができるが、半流体のある一箇所を挟圧している2つの挟圧体間に周速差を与えることで消光位(断面方向の構造)を制御できる。このような構造は従来の縦延伸法では形成できない。なお、ニップロールを用いた縦延伸法で周速差を与える態様は、詳しくは固体のフィルムが搬送される際の上流側を挟圧しているニップロールと下流側を挟圧しているニップロールとの間に周速差を付与する態様であり、本発明の方法(例えば、半流体のある一箇所を挟圧している1対のニップロールを構成する上下のロール間に周速差を付与するような態様)と全く具体的態様が異なる。
すなわち、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記製造方法およびその方法で作成されたフィルムが上記課題を解決できることを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
【0008】
[1] 樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記2枚の偏光板の両方の面に対して垂直方向から光を照射しながら前記フィルム切片を0°〜90°の範囲で回転させた時に観測される消光位が、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって異なるフィルム。
[2] 前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって、5°〜90°の範囲内の異なる角度に消光位が観測されることを特徴とする[1]に記載のフィルム。
[3] 前記フィルム切片を回転させたときに最初の観測される消光位と最後に観測される消光位が5°以上異なることを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルム。
[4] 樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、フィルム傾斜方位と直交する方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるサーキュラーレターダンスが5nmを超えるフィルム。
[5] 下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦Re[0°]≦600nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
−600nm≦Rth≦600nm (II)式
(式(II)中、Rthは波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。)
[6] 下記(III)式を満足することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦γ≦600nm (III)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
(式(III)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[7] 下記式(VI)で示されるγの分布が1〜30nmであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
γの分布=幅方向に測定したγの最大値−幅方向に測定したγの最小値 (VI)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (VI)’
(式(VI)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[8] 幅方向に遅相軸があることを特徴とする[7]に記載のフィルム。
[9] 下記(VII)式および(VIII)式を満足することを特徴とする[7]または[8]に記載のフィルム。
0nm≦Re[0°]≦200nm (VII)式
−50nm≦Rth≦300nm (VIII)式
(式(VII)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[10] 下記(IX)式を満足することを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦γ≦200nm (IX)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (IX)’式
(式(IX)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[11] 前記樹脂の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載のフィルム。
[12] 添加剤を含み、該添加剤の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項記載のフィルム。
[13] 前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載のフィルム。
[14] 樹脂と溶媒とを含むドープを供給手段から半流体膜として押出す工程と、押出された半流体膜を支持体上に流延する工程と、流延された半流体膜を支持体から剥離する工程と、剥離した半流体膜を乾燥する工程と、残留溶媒量を0.01〜3質量%に制御する工程と、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に1Pa・s〜10万Pa・sの粘度の前記半流体膜を20MPa〜500MPaの挟圧を加えながら通過させて連続的に挟圧する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
[15] 固形分に対する溶媒量が30質量%〜1000質量%である半流体膜を挟圧することを特徴する[14]に記載のフィルムの製造方法。
[16] 前記支持体がドラムまたはバンドであることを特徴とする[14]または[15]に記載のフィルムの製造方法。
[17] 供給手段の出口から支持体までの間において前記半流体膜を挟圧することを特徴とする[14]〜[16]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[18] 前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする[14]〜[17]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[19] 下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差の第一挟圧面の速度に対する比率が0.5〜20%であることを特徴とする[14]〜[18]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
[20] 前記第一挟圧面および第二挟圧面の少なくとも一方が、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールの表面であることを特徴とする[14]〜[19]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[21] 前記挟圧装置が2つのロールを含んでおり、第一挟圧面および第二挟圧面がそれぞれのロールの表面であることを特徴とする[14]〜[20]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[22] 前記支持体を−40℃〜15℃に制御することを特徴とする[14]〜[21]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[23] 前記半流体膜を挟圧する工程の後に、前記半流体膜中の溶媒を揮散させて固化する工程および前記半流体膜を貧溶媒中に浸漬させて固化する工程のうち、少なくとも一方の工程を含むことを特徴とする[14]〜[22]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[24] 前記半流体膜を延伸倍率X倍で延伸する工程と、該延伸方向と直交方向にY倍収縮させる工程を含むことを特徴とする[14]〜[23]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
1.00<X<2.50
0.40<Y<1.00
[25] 前記延伸が搬送方向と直交する方向への延伸であることを特徴とする[24]に記載のフィルムの製造方法。
[26] 前記挟圧の前に、前記延伸工程を実施することを特徴とする[24]または[25]に記載のフィルムの製造方法。
[27] 前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする[14]〜[26]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[28] [14]〜[27]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
[29] 偏光子と、少なくとも1枚の[1]〜[14]および[28]のいずれか一項に記載のフィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
[30] [1]〜[13]および[28]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、剥離の発生し難いフィルムおよびその製造方法を得ることができる。本発明の製造方法によれば、またコンパクトで設備費用の少ないため、製造コストが低いフィルム、特に縦延伸フィルムを得ることができる。また、本発明のフィルムの好ましい態様によれば、液晶ディスプレイに使用した場合に十分な光学補償を実現できる。詳しくは、上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルム(例えば、WVフィルム(富士フイルム社製))が偏光子に積層されて使用されるが、本発明の好ましい態様のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。
【図2】直交ニコルに配置された偏光板の回転角度と、フィルムの消光角の関係を表す模式図であり、(A)は本発明のフィルムの消光角、(B)は従来の縦延伸フィルムの消光角、(C)は溶融製膜で得られた従来の傾斜配向フィルムの消光角、(D)直交ニコルに配置された偏光板の回転角度を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。また、本明細書において、「挟圧体」とは、第一挟圧面または第二挟圧面の片方のみ、あるいは、第一挟圧面と第二挟圧面の両方を表す。
【0012】
[フィルム]
<第一の態様(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていないフィルム)>
本発明のフィルムは、延伸および延伸方向に直交する収縮をしていなくても、延伸および延伸方向に直交する収縮をしてもよい。このような態様の違いにより、面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRthなどの光学特性を制御することができる。まず、延伸および延伸方向に直交する収縮をされていない第一の態様のフィルムの光学特性について説明する。
【0013】
(消光位)
本発明者らが縦延伸フィルムの剥離現象を解析した結果、延伸に伴い分子が真っ直ぐに配向しすぎ、分子間の絡み合いが減少、その結果フィルム面内の相互作用が低減し剥離が起き易くなったことが判った。
これに対し、本発明では、樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01%〜3%含み、傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに固定配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記偏光板の面に対して垂直方向から光を照射しながら前記フィルム切片を0°〜90°の範囲で回転させた時に観測される消光位が、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって異なるフィルムとすることで、上記課題を解決した。ここで、本明細書中、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離とは、後述するReおよびRthの説明に用いたx軸、y軸およびz軸を用いて、フィルム切片の一端から厚み方位(z軸方向)への距離を表す。
【0014】
フィルム断面の消光位とは、前記フィルム切片(厚み方向に平行に切削したフィルム)の断面を直交ニコル下で、例えば偏光顕微鏡で偏光板を0°〜90°の範囲で回転させながら観察した際に、暗くなる偏光板の角度を指し、この方向またはこれと直交方向に分子の分極率が配向していることを示す。この消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっていると、配向方向の異なる層がフィルム中に2層以上存在していることを示す。即ち、厚み方向に全て平行に分子が配列しておらず、層間剥離が発生し難いことを示す。このような構造を本発明では「消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なる構造」と呼ぶ。一方、従来から行われている縦延伸法では2対のニップ間で分子が延伸方向に延ばされるだけであるため、消光位は0°以上90°未満の範囲で1つの角度しか存在しない。すなわち、消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によらず、ほぼ同一である。このような消光位は表面からの厚み方向への距離に応じて連続的に変化していてもよく、非連続的に複数の角度で観測されていてもよい。より好ましいのは非連続的に複数の角度で観測される場合である。
【0015】
観測される消光位の範囲は1度〜45度が好ましく、より好ましくは3度〜42度、さらに好ましくは5度〜40度である。
さらに、本発明のフィルムは、前記フィルム切片を−90°〜90°の範囲で回転させた時に、観測される消光位の範囲は1度〜45度もしくは−1度〜−44度が好ましく、より好ましくは3度〜42度もしくは−3度〜−42度、さらに好ましくは5度〜40度もしくは−5度〜−40度である。この角度はフィルム断面を偏光顕微鏡で観察した際に消光する角度を、フィルム面に平行な線を基準に求めたものである。
【0016】
これらの消光位はフィルム一端からの厚み方向への距離に応じて異なっていることがより好ましく、連続的に変化して異なっていてもよく、不連続に異なっていてもよい。これによりフィルム断面に種々の配向を持った分子を形成することができ好ましい。
【0017】
本発明のフィルムの消光位は、具体的には、例えば以下の方法で測定することができる。
(1)フィルムを5mm(傾斜方位と平行)×10mm(傾斜方位と直交)にサンプリングする。
(2)上記サンプルフィルムについて、傾斜方位と平行な一方の端部の面をミクロトーム(ライカ社製RM2265)にて平滑化を行う。
(3)平滑化を行った面から500μm離れた面を、傾斜方位と平行にカミソリ(日新EM社製片刃トリミング用カミソリ)にて切り、フィルムの傾斜方位と厚み方向を面内に含むフィルム切片を作成する。
(4)該フィルム切片を用いて、フィルム厚み方向に目視で色相の異なる領域(色相の差は厚み方向の複屈折の差に由来)のそれぞれについての消光の変化(直交ニコル下で最も暗くなる状態)を、2つの偏光板が直交ニコルに配置された偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて観察する。具体的には、該フィルム切片を前記2枚の偏光板と平行になるように配置し、該2つの偏光板を直交ニコルに配置された状態に固定し、該フィルム切片を0°〜90°の範囲で任意の角度ごと(例えば1°)ごとに回転させ、消光の変化を観察する。この際、消光は、上側の偏光子の吸収軸と平行の時にも、下側の偏光子の吸収軸と平行の時にも発生する。このためどちらの方向に消光位が存在するかを検証するために、位相差板(例えばλ/2板)を2枚の偏光子の吸収軸に平行に切片と偏光子の間に挿入してもよい。このとき位相差が増加する方向にサンプル切片の色が変化(複屈折が増加)した方向に消光位が存在する。
なお、偏光顕微鏡による観察に用いる光源は特に制限はないが、白色光源を用いることが好ましい。また、消光位の観測は直交ニコルで行われる限り特に制限ないか、直交ニコルで偏光顕微鏡によって観測した画像を基に、消光位を決定することが好ましい。また、前記フィルム切片は、前記2枚の偏光板のそれぞれの吸収軸を含む面と、平行に配置される。
【0018】
図2は、(A)本発明のフィルム、(B)従来の一軸延伸フィルム、(C)従来の傾斜配向フィルムを観察した時に観測された偏光顕微鏡画像の模式図である。本発明のフィルムの特長を簡易的に説明するために4層に分割して模式図を作成してあるが、本発明のフィルムは4層に分かれている態様に限定されるものではない。また、従来の延伸フィルムとは、タッチロール製膜を行わずに未延伸フィルムを製膜後、テンター延伸機を用いてTg+5℃で2.0倍延伸することで作成したものである。
図2中、黒で塗りつぶした部分は直交ニコル下で最も暗くなることを表し、点の密度が小さくなると輝度が大きくなること表す。中央(B)の図は従来の延伸フィルムの切片を観察した模式図であり、厚み方向で均一に消光が変化しており、且つ、0°と90°に消光位が存在する。また、右(C)は特開平6−222213号公報、特開2007−38646号公報の方法を基に作成した従来の傾斜配向フィルムの切片を観察した模式図であり、厚み方向で均一に消光が変化しており、約15°に消光位が存在している。これらに対し、左(A)は本発明のフィルムであり、驚くべきことに厚み方向で均一に消光が変化しておらず、0°〜90°の範囲において消光位が複数存在する。
【0019】
本発明のフィルムは、前記フィルム切片を0°〜90°の範囲において回転させたときに最初に観測される消光位と最後に観測される消光位が5°以上異なることが好ましく、10°以上異なることがより好ましく、15°以上異なることが特に好ましい。実際に観察される偏光顕微鏡画像は、図2のように明確な複数層構成になっているわけではなく、連続的な層を形成している。顕微鏡の分解能を超えて層構成を測定することが出来ないため、本発明では上記(1)〜(4)で観察された厚み方向の消光位の変化を下記(i)および(ii)のように決定した。また、本発明のフィルムが下記条件(iii)を満たすことを判定することができる。
(i) 0°〜90°まで1°刻みに観察された偏光顕微鏡画像を厚み方向に1μmで分割を行い、片側の表面から順に層に分ける。
(ii) 0°〜90°の観察された画像を、前記各層ごとに輝度の変化を測定し、0°〜90°の範囲で、最も暗くなるときの角度、すなわち消光位を決定する。
(iii) 少なくとも2つの層の消光位が5°以上異なるか否かを判定する。
【0020】
本発明のフィルムは、フィルム表面から測定した厚み方向への距離によって、複屈折の大きさが異なることが、例えば液晶表示装置の光学補償板として使用する際好ましい。
【0021】
(残留溶媒量)
さらに本発明では、フィルム中に残留溶媒を0.01%〜3%含むことが好ましく、より好ましくは0.03%〜2%、さらに好ましくは0.05%〜1%である。このような僅かに溶媒を含むことで層間剥離を抑制する効果がある。即ち上記残留溶媒が存在することでフィルム中のポリマー分子の運動を促し、製膜後も分子間に絡み合いを形成し易くする効果を有する。一方、残留溶媒が上記を超えないことで、分子の流動性が増加しすぎることにより発生する消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造の解消を抑制できる。
残留溶媒量の測定について、特に制限はないが、例えばフィルムを測定用の溶媒に溶解させて、GCにより測定することができる。測定用のフィルムを溶解させる溶媒としては、前記樹脂(すなわち、フィルムや半流体膜)を溶解するものであれば特に制限は無く、例えば、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系フイルム、アクリル系フィルムであれば酢酸メチル、ジクロロメタン、アセトンなどが使用でき、シクロオレフィン(COC、COP)系フィルムであれば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が使用できる。
【0022】
(溶媒)
本明細書中、溶媒とは25℃において液体であり分子量が20〜200の分子を指す。本発明の溶媒量にするには、上記のような溶液製膜により達成される。
【0023】
本発明に用いられる溶媒は、樹脂を溶解可能であれば特に制限は無いが、沸点が20℃〜200℃のものが好ましく、より好ましくは30℃〜150℃である。ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジオキソラン、水等を好ましく使用できる。これらの溶媒は樹脂に対し上記粘度になるように添加すればよいが、好ましくは樹脂濃度が5%〜40%が好ましく、より好ましくは10%〜35%である。
【0024】
(サーキュラーリターダンス)
本発明のフィルムは、樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、フィルム傾斜方位と直交する方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるサーキュラーレターダンス(以下、CRe[40°]とも言う)が5nmを超える。例えば、本発明のフィルムをAXOMETRICS社(米国)のミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて傾斜方位と直交する方向(y軸)とフィルム法線(z軸)を含む面内で光学特性の傾斜角依存性を測定した場合、従来のフィルムとは異なり、サーキュラーリターダンス(Circular Reterdance)を有する。
一般的に、TN、ECBおよびOCBセルは、電圧印加状態で液晶分子のチルト角が厚さ方向で連続的に変化するため、サーキュラーリターダンスを有する。そこで,液晶セルの視野角補償を行うには、このサーキュラーリターダンスも補償できると好ましい。本発明のフィルムは従来のフィルムと異なり、上述したサーキュラーリターダンスが5nmを超えるため、上記セルに用いた場合に効果的な視野角補償を行えることができることが特徴の一つである。VA,IPSセルにおいても同様の効果が得られる場合もある。
【0025】
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
さらに本発明のフィルムは、下記(I)式および(II)式を満足することが、延伸および延伸方向に直交する収縮をされていないフィルムの場合に好ましい。
30nm≦Re[0°]≦600nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
−600nm≦Rth≦600nm (II)式
(式(II)中、Rthは、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは
40nm≦Re[0°]≦300nm (I)’式
−300nm≦Rth≦300nm (II)’式
さらに好ましくは
50nm≦Re[0°]≦200nm (I)’’式
−200nm≦Rth≦200nm (II)’’式
【0026】
このような範囲にすることで、液晶表示板の光学補償膜、有機EL表示板のλ/4波長板として有効に作用させることができる。Rthが正の領域は正の複屈折樹脂を使用するのがよく、例えばシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を挙げることができる。一方Rthが負の領域は負の複屈折性樹脂を用いればよく、アクリル系、ポリスチレン系樹脂を挙げることができる。セルロースアシレート系樹脂は一般的には正の複屈折性樹脂に分類できるが、アシル置換度を上げ結晶化を進めれば特開2007−249197号公報に記載のように負の複屈折性を発現させることができる。
【0027】
さらに、本発明では下記(III)式を満足することが、延伸および延伸方向に直交する収縮をされていないフィルムの場合に好ましい。
30nm≦γ≦600nm (III)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
(式(III)中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは
50nm≦γ≦300nm (III−2)式
さらに好ましくは
70nm≦γ≦200nm (III−3)式
このγが大きいことは、斜めから測定したReが例えば左側と右側とで異なることを意味し、フィルム中に厚み方向から見た際に傾斜構造が形成されたことを意味する。この傾斜構造が液晶表示装置中の液晶配向を相補し視野角を改善する効果を有する。さらにこのような傾斜構造によりフィルム層中の分子が面内に配向するのを抑制し、層間剥離を抑制する効果を有する。即ち上記範囲を下回らないことで分子がフィルム面方向に配列することによる層間剥離を抑制でき、上記範囲を上回らないことでフィルム面に直交方向に配向しすぎることによる層間剥離を抑制できる。
さらにγが前記の好ましい範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合のコントラストが顕著に改善され、画像むらが抑制される効果も有する。
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度(θ)の符号の正負を考慮しない場合、傾斜角度90°の方向である。傾斜角度(θ)の符号の正負を考慮する場合、Re[+40°]を測定する方向とRe[−40°]を測定する方向は、フィルム法線に対して、線対称な位置となる。
γ、Re[0°]およびRthが前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
【0028】
Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には、±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることがさらに好ましい。また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、表示ムラの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
【0029】
本明細書において、ReおよびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【数1】

なお、式中、Re[θ]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
また、式(A)において、nxは、面内における遅相軸方向(x軸方向)の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交するy軸方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交するz軸方向、すなわち厚み方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0030】
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の任意に設定した方位(KOBRA 21ADH又はWRに設定できる)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
【0031】
本明細書において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルム法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値および該法線に対して傾斜方位側又は仮傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を表す。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位を傾斜軸(回転軸)として、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
また、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]のバラツキとする。また、本発明では上記10点の平均値をRe[0°]、Re[+40°]、Re[−40°]とする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
【0032】
(膜厚)
本発明のフィルムの厚みは20μm〜200μmが好ましく、より好ましくは25μm〜150μm、さらに好ましくは30μm〜90μmである。
【0033】
(表面粗さ)
本発明のフィルムは、表面粗さRaが25nm以下であることが、光学補償板として使用した際に散乱によるコントラスト低下を抑制する観点から好ましい。表面粗さRaは120nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明のフィルムは、樹脂の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることが好ましい。すなわち、樹脂の組成に厚み方向の勾配がないことが好ましい。このように組成に勾配を無くすことで、組成の変化に伴う強度変化(分布)の発生を抑制することができる。この結果、剥離テストの際、強度の弱い所に応力が集中し発生する面内剥離を抑制できる。
【0035】
(樹脂)
本発明のフィルムは樹脂を含有する。用いることができる種類は、溶媒に溶解すれば特に制限は無い。本発明において用いることができる樹脂フィルムの樹脂は、熱硬化性樹脂(硬化途中での本発明の適用となるため、コントロールし難い点がある。)であっても熱可塑性樹脂(加熱することで歪み変形を受け易い状態に変化)であっても使用出来るが、取り扱い性より熱可塑性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、および脂環式オレフィンポリマーなどを挙げることができる。この中でも、熱可塑性樹脂としては、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、及びアクリル樹脂が好ましい。また、特開2004−212971号公報に記載されている光弾性係数が60×10−8cm2/N以上であるポリマー材料である、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリエステルイミド樹脂も好ましく用いることができる。以下のものが例示できる。
【0036】
(a)セルロースアシレート樹脂
本発明に用いることができるセルロースエステル樹脂は、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
これらの中で特に好ましいセルロースエステルは、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0038】
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、2.0≦X+Y≦3.0、0.1≦Y≦2.9が好ましく、下記式(XI)及び(XII)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂であることがより好ましい。
【0039】
式(XI) 2.4≦X+Y≦3.0
式(XII) 1.0≦X≦2.5
この内特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。上記アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0040】
更に、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、更に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0041】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
【0042】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
【0043】
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌した時のpHが6〜7、電気伝導度が1〜100μS/cmであることが好ましい。pHが6未満の場合、残留有機酸が加熱溶融時にセルロースの劣化を促進させる恐れがあり、pHが7より高い場合、加水分解が促進する恐れがある。また、電気伝導度が100μS/cm以上の場合、残留イオンが比較的多く存在するため、加熱溶融時にセルロースを劣化させる要因になると考えられる。
【0044】
粘度平均重合度は190〜550が好ましく、より好ましくは220〜500、さらに好ましくは250〜450である。
【0045】
また1価金属、2価金属と硫酸根、硝酸根を含んでおり、1価金属と2価金属の和が1ppm〜300ppm、より好ましくは10ppm〜200ppm、さらに好ましくは20ppm〜150ppmであり、硫酸根、硝酸根の和が1ppm〜300ppm、より好ましくは10ppm〜200ppm、さらに好ましくは20ppm〜150ppmであり、1価金属と2価金属の等量と硫酸根、硝酸根の等量の比(1価金属+2価金属/硫酸根+硝酸根)が0.3〜3であり、より好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.6〜1.5である。
このようなセルロースアシレートは例えば特開平11−269304号、特開2002−265639号、特開2002−20410号、特開2003−41053号、特開2003−171500号、特開2003−71863号、特開2004−71336号、特開2004−231784号、特開2005−42039号、特開2005−104148号、特開2004−315574号、特開2005−154650号、特開2005−272485号、特開2005−309348号、特開2006−28387号、特開2006−83357号、特開2006−96878号、特開2006−233098号、特開2006−313190号、特開2007−238758号、特開2007−328370号、特開2008−58597号、特開2008−69233号、特開2008−83307号、特開2008−209595号、特開2006−36840号、特開2006−249221号、特開2007−216600号、特開2007−216600号、特開2008−31396号、特開2008−63531号、特開2008−31396号、特開2008−137366号、特開2008−208231号、特公平7−120017号各公報等に記載のものを使用できる。
【0046】
(b)アクリル樹脂
本発明のアクリル樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体を重合して得られる樹脂およびその誘導体であり、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、一般式(1)
【0047】
【化1】

【0048】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示す。)で表される構造を有する化合物(単量体)、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらのうち1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。中でも、熱安定性に優れる点で、(メタ)アクリル酸メチル(MMA)が最も好ましい。
アクリル樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。これらの中でさらに好ましい樹脂は(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂、(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂である。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
【0049】
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号各公報等に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
(4)その他アクリル樹脂
特開2006−337493号公報に記載のグルタルイミド基を含むアクリル樹脂も好ましく使用できる。
【0050】
(c)ポリカーボネート樹脂
本発明では、種々の公知のポリカーボネート樹脂も使用することができる。本発明においては、特に芳香族ポリカーボネートを用いることが好ましい。当該芳香族ポリカーボネートについて特に制約はなく、所望するフィルムの諸特性が得られる芳香族ポリカーボネートであれば特に制約はない。
【0051】
一般に,ポリカーボネートと総称される高分子材料は,その合成手法において重縮合反応が用いられて,主鎖が炭酸結合で結ばれているものを総称するが,これらの内でも,一般に,フェノール誘導体と、ホスゲン、ジフェニルカーボネートらから重縮合で得られるものを意味する。通常、ビスフェノール−Aと呼称されている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンをビスフェノール成分とする繰り返し単位で表される芳香族ポリカーボネートが好ましく選ばれるが,適宜各種ビスフェノール誘導体を選択することで,芳香族ポリカーボネート共重合体を構成することができる。
【0052】
かかる共重合成分としてこのビスフェノール−A以外に,ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0053】
また、一部にテレフルタル酸及び/またはイソフタル酸成分を含む芳香族ポリエステルカーボネートを使用することも可能である。このような構成単位をビスフェノール−Aからなる芳香族ポリカーボネートの構成成分の一部に使用することにより芳香族ポリカーボネートの性質、例えば耐熱性、溶解性を改良することができるが,このような共重合体についても本発明は有効である。
【0054】
ここで用いられる芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、10000以上、200000以下であれば好適に用いられる。粘度平均分子量20000〜120000が特に好ましい。粘度平均分子量が10000より低い樹脂を使用すると得られるフィルムの機械的強度が不足する場合があり,また400000以上の高分子量になるとドープの粘度が大きくなり過ぎ取扱い上問題を生じるので好ましくない。粘度平均分子量は市販の高速液体クロマトグラフィ等で測定することができる。
【0055】
本発明に係る芳香族ポリカーボネートのガラス転移温度は200℃以上であることが高耐熱性のフィルムを得る上で好ましく、より好ましくは230℃以上である。これらは、上記共重合成分を適宜選択して得ることができる。ガラス転移温度は、DSC装置(示差走査熱量分析装置)にて測定することができ、例えばセイコー電子工業株式会社製:RDC220にて、10℃/分の昇温条件によって求められる、ベースラインが偏奇し始める温度である。
【0056】
本発明において、上記芳香族ポリカーボネートを含むドープ組成物に用いる溶媒は、メチレンクロライド、及び炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを4〜14質量部含有する混合溶媒であることが好ましい。
【0057】
上記炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールの混合量は、好ましくは4〜12質量部である。このような混合溶媒を用い、従来よりも高い残留溶媒濃度でウェブを剥離することにより、ウェブ剥離時の強い静電気の発生を抑制し、これによりベルトが損傷したり、フィルムのズジやムラ、微小傷の発生を防止したりすることができる。
【0058】
加えるアルコールの種類は用いる溶媒により制限される。アルコールと当該溶媒とが相溶性があることが必要条件である。これらは単独で加えてもよいし、2種類以上組み合わせても問題ない。本発明におけるアルコールとしては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4の鎖状、或いは分岐した脂肪族アルコールが好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ターシャリ−ブタノールなどが挙げられる。これらのうちエタノール、イソプロパノール、ターシャリ−ブタノールはほぼ同等の効果が得られるが、メタノールはやや効果が低い。理由は明らかでないが溶媒の沸点、即ち乾燥時の飛び易さが関係しているものと推測している。それ以上の高級アルコールは、高沸点であるためフィルム製膜後も残留しやすくなるので好ましくない。
【0059】
アルコールの添加量は慎重に選択されなければならない。これらのアルコールは芳香族ポリカーボネートに対する溶解性には全く乏しく、完全な貧溶媒である。従ってあまり多く加えることはできず、満足すべき剥離性が得られる最少量とすべきである。前述したようにメチレンクロライドに対して4〜14質量部、好ましくは4〜12質量部である。メチレンクロライド量に対しては、添加量が4〜14質量部の範囲であると、当該溶媒のポリマーに対する溶解性、ドープ安定性が向上し、剥離性改善の効果が大きくなる。
【0060】
本発明はドープ組成物中、上記メチレンクロライドと脂肪族アルコールで構成されるが、他の溶媒を使用することもできる。その他残りの溶媒としては芳香族ポリカーボネートを高濃度に溶解し、かつアルコールと相溶性があること、更に低沸点溶媒であれば特に限定はない。例えば、芳香族ポリカーボネートに対して溶解力のある溶媒として、塩化メチレン以外にクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の溶媒、シクロヘキサノン等のケトン系の溶媒が挙げられる。
【0061】
他の溶媒を使用する場合は特に限定はなく、効果を勘案して用いればよい。ここでいう効果とは、溶解性や安定性を犠牲にしない範囲で溶媒を混合することによる、たとえば溶液流延法により製膜したフィルムの表面性の改善(レベリング効果)、蒸発速度や系の粘度調節、結晶化抑制効果などである。これらの効果の度合により混合する溶媒の種類や添加量を決定すればよく、また混合する溶媒として1種または2種以上用いてもかまわない。
【0062】
好適に用いられる他の溶媒としてはクロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、メトキシエチルアセテートなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0063】
本発明に係るドープ組成物は、結果としてヘイズの低い透明な溶液が得られればいかなる方法で調製してもよい。あらかじめある溶媒に溶解させた芳香族ポリカーボネート溶液に、アルコールを所定量添加してもよいし、アルコールを含む混合溶媒に芳香族ポリカーボネートを溶解させてもよい。ただ先にも述べた様にアルコールは貧溶媒であるため、前者の後から添加する方法ではポリマーの析出によるドープ白濁の可能性があるため、後者の混合溶媒に溶解させる方法が好ましい。
【0064】
その他、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報に記載のものや特開2006−106386号、特開2006−284703号各公報記載のものが好ましく用いることができる。また特開平8−54614号、特開平8−54615号、特開平8−62419号、特開平8−160221号、特開平8−160222号、特開平9−222510号、特開平10−111412号、特開平10−231370号、特開平10−23952号、国際公開WO98/58789号、特開2002−328614号、特開2004−99754号、特開2006−18956号各公報も好ましく使用できる。
【0065】
(d)ノルボルネン系樹脂
本発明においては、環状オレフィン樹脂を用いることも好ましい。環状オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0066】
ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体又はそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体又はそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0067】
これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
【0068】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。
【0070】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体などが挙げられる。
【0071】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0072】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0073】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
【0074】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素添加物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素添加物、およびノルボルネン構造を有する単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体との付加共重合体の水素添加物は、これらの重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素添加触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素添加することによって得ることができる。
【0075】
ノルボルネン系樹脂の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系樹脂の繰り返し単位全体に対して90質量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの質量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる光学補償フィルム(光学フィルム)を得ることができる。
【0076】
本発明に用いる環状オレフィン樹脂の分子量は使用目的に応じて適宜選定される。溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常20,000〜150,000である。好ましくは25,000〜100,000、より好ましくは30,000〜80,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
【0077】
環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよい。耐久性及び延伸加工性の観点から、好ましくは130〜160℃、より好ましくは135〜150℃の範囲である。
【0078】
環状オレフィン樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、緩和時間、生産性等の観点から、1.2〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.7である。
【0079】
本発明に用いる環状オレフィン樹脂は、光弾性係数の絶対値が10×10−12Pa−1以下であることが好ましく、7×10−12Pa−1以下であることがより好ましく、4×10−12Pa−1以下であることが特に好ましい。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。環状オレフィン樹脂の光弾性係数が10×10−12Pa−1を超えると、延伸フィルムの面内リターデーションのバラツキが大きくなるおそれがある。
【0080】
環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましいが、この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行える。付加重合としては例えば特許3517471号公報のものや特許3559360号、特許3867178号、特許3871721号、特許3907908号、特許3945598号、特表2005−527696号、特開2006−28993号、国際公開WO2006/004376号各公報に記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471号公報に記載のものである。
開環重合としては国際公開WO98/14499号、特許3060532号、特許3220478号、特許3273046号、特許3404027号、特許3428176号、特許3687231号、特許3873934号、特許3912159号各公報に記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのが国際公開WO98−14499号、特許3060532号各公報に記載のものである。
また、特開平6−51117号、特開2002−114827号、特開2002−284971号、特開2003−238774号、特開2003−94464号、特開2004−133209号、特開2005−239740号、特開2006−77257号、特開2006−321912号、特開2007−106931号、特開2008−955号、特開2008−30243号、特開2008−37932号、特開2008−231361号、特開2008−238537号各公報等も使用できる。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のもののほうがより好ましい。
【0081】
本発明において、環状オレフィン樹脂には、実質的に粒子を含まないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含まないとは、環状オレフィン樹脂からなるフィルムへ粒子を添加しても、未添加状態からのヘイズの上昇幅が0.05%以下の範囲である量までは許容できることを意味する。特に、脂環式ポリオレフィン樹脂は、多くの有機粒子や無機粒子との親和性に欠けるため、上記範囲を超えた粒子を添加した環状オレフィン樹脂フィルムを延伸すると、空隙が発生しやすく、その結果として、ヘイズの著しい低下が生じるおそれがある。
【0082】
本発明において、環状オレフィン樹脂に荷重たわみ温度調整剤を入れることにより、上述したように優れた延伸適性を持たせ、高温下における光学特性の変化を改良した光学補償フィルムを得ることができる。
【0083】
これは、樹脂のガラス転位温度Tg(℃)と、荷重たわみ温度Tt(℃)との差が大きくなる事により、低温においてもフィルムに無理な力がかかることなく延伸ができ、その結果、リターデーションのムラが大幅に低減され、またリターデーションの熱緩和特性も改良されると考えられる。
【0084】
具体的には、TgとTtとの差が、Tg−Tt=5〜30(℃)であり、より好ましくは10〜30(℃)である。
【0085】
このような環状オレフィン化合物は、炭化水素系溶剤(C5〜C12の直鎖、分枝、環状の飽和、不飽和炭化水素)、芳香族系溶剤(ベンゼン、アルキルベンゼン(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化ベンゼン(クロルベンゼン、ブロモベンゼン等)、塩素系溶剤(ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等)、これらの混合溶剤等により溶解できる。
【0086】
(e)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレンを20モル%以上含む樹脂を指し、ポリスチレン樹脂の他、アクリロニトリル、ブタジエン、アクリル酸およびメタクリル酸等の共重合体も用いることができる。
【0087】
(f)ポリエステル系樹脂
例えば特表2002−532593、特開2006−231658、特開2006−264320のものを使用できる。
【0088】
(g)ビニルアルコール系樹脂(PVOH、EVOH等)
例えば特開平5−337967号、特開2002−86476号、特開2004−93906号各公報に記載のポリビニルアルコールやエチレン−ポリビニルアルコール共重合体を挙げることができる。
【0089】
(h)その他樹脂
特開平8−54613号公報に記載のポリアリレート、ポリスルフォン、特開平8−253680号、特開平8−318538号各公報に記載のポリエーテルスルフォン、特表2002−519458号公報に記載のポリスルフォン、国際公開WO2005/054311号公報記載のポリイミド等、特開2006−43907号公報に記載のマレイミド樹脂等にも好ましく使用できる。
【0090】
<添加剤>
本発明のフィルムは、上記樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、酸化防止剤、酸捕捉剤、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、帯電防止剤、剥離剤、光学異方性制御剤および光学調整剤が含まれる。
【0091】
本発明のフィルムは、添加剤を含み、該添加剤の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることが好ましい。樹脂が均一であることが好ましい理由と同様である。
【0092】
(1)光学調整剤
前記添加剤の中で、本発明に有効に寄与するのは光学異方性制御剤であり、特にリターデーション上昇剤が光学的に複屈折性を本願目的の平面から斜め方向に発現し易くするため好ましい。リターデーション上昇剤は、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物が好ましい。芳香族化合物は、樹脂の100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲で使用することが好ましい。そして、0.05乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。これらについては、特開2004−109410号、特開2003−344655号、特開2000−275434号、特開2000−111914号、特開平12−275434号公報などに詳細が記載されている。
本発明の好ましい態様では、本発明のフィルムが、樹脂に対して1〜30質量%の光学調整剤を含むことが好ましい。例えば、一つの分子中に2つ以上の芳香環を有する化合物やポルフィリン化合物などが挙げられ、Re、Rthを調整させることができる。
【0093】
上記以外にも下記のような光学調整剤を使用できる。
光学調調整剤としては、例えば下記に示す芳香環を2つ以上含む化合物を挙げることができる。
特許第3155465号公報に記載の[化1]に記載の化合物。
特許第4084519号公報に記載の[化1]に記載の化合物。
特許第3734211号公報に記載の[化1]〜[化9]の化合物。
特開2006−176736号公報に記載の[化1]〜[化7]の化合物。
特開2008−79548号公報に記載の[化1]〜[化3]の化合物。
特開平9−21914号公報に記載の[化1]〜[化163]の化合物。
これら以外にも、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。これらは単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
また特開2000−111914号、同2000−275434号、同2001−100039号、同2001−166144号、同2002−71948号、同2002−267838号、同2002−303722号同2003−43250号、同2003−344660号、同2003−344655号、同2004−4550号、同2004−10763号、同2004−51562号、同2004−51563号、同2004−53840号、同2004−53841号、同2004−109410号、同2005−338744号、同2006−8944号、同2006−63266号、同2006−89691号、同2006−91527号、同2006−98592号、同2006−117908号、同2006−119632号、同2006−188718号、同2006−265288号、同2006−265382号、同2006−267171号、同2006−292890号、同2006−292895号、同2006−323329号、同2006−335800号、同2006−342226号、同2007−31701号、同2007−52109号、同2007−71974号、同2007−144932号、特表2007−517234号、特開2007−197508号、同2007−248620号、同2007−262153号、同2007−291216号、同2007−297554号、特表2008−505195号、特開2008−120087号、特開2008−120875号、同2008−150592号、同2008−217022号、同2008−233814号、同2008−255340号、同2005−104148号各公報等に記載の光学調整剤も好ましくしようできる。
これらの光学調整剤は、樹脂に対して0質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは0質量%〜25質量%、さらに好ましくは0質量%〜20質量%である。これらの範囲内であれば、本発明のフィルムのRe[0°]、Rth、γを好ましい範囲に制御することができる。
【0094】
(2)安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記樹脂を含むドープを調整する前にまたはドープ調製時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜する際の製膜温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
【0095】
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
【0096】
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
【0097】
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
【0098】
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
【0099】
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
【0100】
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0101】
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
【0102】
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、樹脂組成物を含むドープを調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、ドープ調製工程の最後に添加してもよい。
【0103】
(3)可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号公報に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
例えば、特開2001−19776号、特開2001−206981号、特開2002−103358号、特開2002−128903号、特開2003−1652号、特開2003−33998号、特開2003−114333号、特開2004−314529号、特開2005−40999号、特開2005−62594号、特開2005−104148号、特開2005−148110号、特開2005−148519号、特開2005−156615号、特開2005−157038号、特開2005−165171号、特開2005−246797号、特表2005−530865、特開2006−116788、特開2006−232892、特開2006−233043号、特開2006−257380号、特開2006−259494号、特開2006−330087号、特開2007−112870号、特開2007−216600号、特開2007−254699号各公報等も好ましく用いることができる。また特開平10−160934号、特表2005−515285号、特開2005−88578号、特開2006−117714号、特開2006−232892号、特開2006−301592号、特開2006−328298号、特開2007−63310号、特開2007−231157号、特開2007−284570号、特開2007−293295号、特開2007−313754号、特開2008−80651号、特開2008−257220号各公報等に記載の可塑剤も好ましく使用できる。
【0104】
(4)微粒子:
本発明の光学フィルムは、作製されたフィルムがハンドリングされる際に、傷が付いたり、搬送性が悪化したりすることを防止するために、マット剤として、微粒子を添加することが好ましい。
【0105】
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0106】
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。光学フィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0107】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0108】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0109】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0110】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明の光学フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
【0111】
<第二の態様(延伸および延伸方向に直交する収縮をされたフィルム)>
本発明のフィルムは、延伸および延伸方向に直交する収縮をされていなくても、延伸および延伸方向に直交する収縮をされてもよい。このような態様の違いにより、本発明の第二の態様のフィルムはγの分布が1〜30nmであることを特徴とする。さらに、面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRthなどの光学特性を制御することができる。一方、本発明のフィルムが、延伸方向と直交する方向に収縮された第二の態様の場合において、前述した消光位、残留溶媒量、サーキュラーリターダンスや、その他添加剤、膜厚、表面粗さなどの好ましい範囲は、第一の態様(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていない態様)と同様である。
本発明の第二の態様のフィルムは上記の構成をとることにより、熱処理等で皺の発生し難い光学フィルムを提供することもできる。さらに、本発明の第二の態様により、光学ムラをも改良したフィルムを提供することが好ましい。以下において、以下、延伸および延伸方向に直交する収縮をされた第二の態様のフィルムの光学特性について説明する。
【0112】
(γの分布)
本発明の第二の態様のフィルムは、下記式(VI)で示されるγの分布が1〜30nmである。
γの分布=幅方向に測定したγの最大値−幅方向に測定したγの最小値 (VI)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (VI)’
(式(VI)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
本発明の特定の条件での挟圧による消光角の構造は、製膜方向(MD)に沿って発現する。この際、消光角の大きな部分と小さな部分が発生するところ、消光角の小さな部分は分子配向が小さく、僅かな挟圧むらでも消光角が変化し易く、これが光学むらとなる。これに対し、この分子配向の小さな部分を延伸され、さらに該延伸方向に直交する収縮をされたフィルムは、光学むらがさらに解消されている。
具体的には、本発明の第二の態様のフィルムでは、「半流体の挟圧」、「縦収縮を伴う横延伸」を実施した後(製膜、延伸、縦収縮まですべて完了した後)の残留溶剤量が前記特定の範囲に制御されていることにより、光学特性(消光角)の幅方向分布を改善できる。まず、「半流体の挟圧」、「縦収縮を伴う横延伸」により、フィルム内に残留応力が発現する。残留応力に起因する残留歪は局所的に発現することが多く、これが熱処理での皺の発生や、フィルム面内の分子配向を乱すため、光学特性(γ、Re[0°]、Rth)の分布(むら)を引起す原因となる。
これに対し、前記第一の態様で説明した本発明の残留溶媒量の範囲となるようにフィルム中に溶剤を残留させることで、フィルム内の分子の流動を促し、残留歪を解消する効果を奏する。この結果、皺や光学むらが低減する。残留溶媒量を本発明の範囲にすることで、これらのむらを低減できる。しかし、残留溶媒量が本発明の範囲の上限値以下であれば、残留溶剤による分子の流動が起き難くなり、これに伴い配向むらが発生することを抑制することができる。その結果、γの分布を上記本発明の第二の態様の範囲に制御することができる。また、溶剤が乾燥する際に収縮が発生し難くなり、熱処理での皺となり難くなり、乾燥収縮に伴いフィルム面内に残留応力が発現したり、むらが増大したりすることを抑制することができる。一方、残留溶剤が本発明の範囲の下限値以上であると、上述のような残留歪の緩和効果が十分発揮でき、むらや皺が発生し難くなる。
残留溶媒量を特定の範囲に制御することによってもむらや皺の改善に効果があるが、後述の本発明の第二の態様における挟圧、縦収縮を伴う延伸を行うこともむらや皺の改善に効果がある。本発明の第二の態様では、これらを組み合わせることで相乗効果を発現させ、さらに顕著な効果が得られるフィルムを提供することができる。
【0113】
(遅相軸)
本発明の第二の態様のフィルムは、幅方向に遅相軸があることが好ましい。すなわち、後述する本発明の第二の態様のフィルムの製造方法において、延伸方向がフィルム搬送方向に直交する方向(フィルム幅方向)として得られたフィルムであることが好ましい。
【0114】
(Re、Rth)
本発明の第二の態様のフィルムは、下記(VII)式および(VIII)式を満足することが好ましい。
0nm≦Re[0°]≦200nm (VII)式
−50nm≦Rth≦300nm (VIII)式
(式(VII)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは
20nm≦Re[0°]≦100nm (VII)’式
−30nm≦Rth≦200nm (VIII)’式
さらに好ましくは
30nm≦Re[0°]≦100nm (VII)’’式
−20nm≦Rth≦150nm (VIII)’’式
である。
このような範囲にすることで、液晶表示板の光学補償膜、有機EL表示板のλ/4波長板として有効に作用させることができる。Rthが正の領域は正の複屈折樹脂を使用するのがよく、例えばシクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を挙げることができる。一方Rthが負の領域は負の複屈折性樹脂を用いればよく、アクリル系、ポリスチレン系樹脂を挙げることができる。セルロースアシレート系樹脂は一般的には正の複屈折性樹脂に分類できるが、アシル置換度を上げ結晶化を進めれば特開2007−249197に記載のように負の複屈折性を発現させることができる。
【0115】
本発明の第二の態様のフィルムは、下記(IX)式を満足することが好ましい。
30nm≦γ≦200nm (IX)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (IX)’式
(式(IX)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは
50nm≦γ≦150nm (IX−2)式
さらに好ましくは
70nm≦γ≦100nm (IX−3)式
である。
【0116】
[フィルムの製造方法]
<<製膜方法>>
<第一の態様(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていないフィルム)の製造方法>
まず、本発明の第一の態様のフィルムの製造方法について説明する。
【0117】
(溶液製膜)
本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、樹脂と溶媒とを含むドープ(樹脂の高濃度溶液)を供給手段(例えば、ダイ)から半流体膜として押出す工程と、押出された半流体膜を支持体上に流延する工程と、流延された半流体膜を支持体から剥離する工程と、剥離した半流体膜を乾燥する工程と、残留溶媒量を0.01〜3質量%に制御する工程と、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に1Pa・s〜10万Pa・sの粘度の前記半流体膜を20MPa〜500MPaの挟圧を加えながら通過させて連続的に挟圧する工程を含むことを特徴とする。
なお、本明細書中、半流体膜とは、押出しから乾燥までの間の液体と固体フィルムの間の膜のことを言う。本発明の製造方法では、このようなフィルムは、ドープ(高分子の濃厚溶液)をダイから押出し、支持体上に流延し剥離、乾燥する溶液製膜法において、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を、20MPa〜500MPaの挟圧を加えながら、押出しから乾燥までの間の、液体と固体フィルムの間の膜(本発明では「半流体膜」と称する)の粘度が1Pa・s〜10万Pa・s、より好ましくは3Pa・s〜7万Pa・sで、さらに好ましくは5Pa・s〜5万Pa・sで通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形することが好ましい。なお、ここで云う粘度とは剪断速度=1sec−1であり、挟圧される点の組成(溶媒含有量)、温度で測定した値である。また、本発明の製造方法では、前記挟圧工程は、押出し工程から乾燥工程までの間のいずれの時期に実施しても、いずれの場所で実施してもよい。
【0118】
このような縦延伸法は製膜工程中に挟圧工程を付与するだけであるため、従来の縦延伸設備(加熱装置と複数対のニップロールを用いるもの)に比べ設備がコンパクトであり、既存の製膜装置中に容易に設置することができる。また設備費用も低価格で済む利点も有する。
上記挟圧の圧力の範囲を下回らないことで、本発明に必要な流速を達成できる。一方上記挟圧の圧力の範囲を上回らないことで、消光位がフィルムの一端からの厚み方向からの距離によって異なっている構造が解消されることを抑制できる。
挟圧時の半流体膜の粘度を上記の範囲を上回らないことで、半流体膜の流動性を確保し、上記のような流速による伸張変形、せん断応力による異なる角度において消光位を有する構造を形成することができる。さらに上記範囲を下回らないことで、配向緩和(流動性が大きすぎることにより一度配向させた半流体膜中の、消光位がフィルムの一端からの厚み方向からの距離によって異なっている構造が消失すること)を抑制できる。すなわち、このような粘度範囲にすることで消光位がフィルムの一端からの厚み方向からの距離によって異なっている構造を形成し易くすることができる。
以下、本発明の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0119】
このような各工程として、本発明の趣旨に反しない限り、公知の溶液製膜方法を用いることができる。例えば、本発明の製造方法では、樹脂を乾燥した後、溶媒に混合し、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜35質量%の濃厚溶液(ドープ)を作ることが好ましい。樹脂以外に上記添加物を加えることも好ましい。これを好ましくは濾過、脱泡した後ドラム、バンド等の支持体上に流延することが好ましい。このとき、共流延ダイなどを用い、複数層のフィルムを調製することも好ましい。このとき、上述のように支持体上から乾燥ゾーンまでの間に挟圧処理を行うのが好ましく、より好ましくは支持体から剥ぎ取った後から乾燥までの間である。
具体的には特開2000−84960号、特開2003−53749号、特開2004−66683号、特開2004−322535号、特開2006−283013号、特開2007−79561号、特開2007−178504号、特開2005−104148号、特開昭61−94724号、特開昭62−46625号、特開平3−193316号、特公平6−27206号、特公平7−106603号、特許2554553号、特許2630535号、特許2950709号、特許3220478号、特許3295238号、特許3326607号、特許3329154号、特許3355986号、特許3403882号、特許3531007号、特許3531835号、特許3537918号、特許3628933号、特許3637494号、特許3674284号、特許3742025号、特許3765765号、特許3815912号、特許3830559号、特許3879920号、特許3893862号、特許3903100号、特許3931514号、特許3935755号、特許3941860号、特許3946533号、特許3970022号、特許3974422号、特許3978862号、特許3994244号、特許4013568号、特許4017139号、特許4019855号、特許4032771号、特許4048944号、特許4059730号、特許4084431号、特許4088119号、特許4088128号、特許4109824号、特許4114232号、特許4128327号、特許4169183号、特許4175992号、特開2005−96474号、特開2005−103815号、特開2005−156682号、特開2005−181683号、特開2005−181747号、特開2005−186289号、特開2005−231185号、特開2005−271233号、特開2006−95971号、特開2006−116788号、特開2006−160863号、特開2006−199029号、特開2006−208516号、特開2006−256184号、特開2006−315417号、特開2007−15395号、特開2007−42594号、特開2007−45071号、特開2007−62064号、特開2007−93897号、特開2007−99855号、特開2007−125896号、特開2007−126571号、特開2007−249094号、特開2007−253499号、特開2008−80552号、特開2008−88221号、特開2008−111084号、特開2008−194928号、特開2008−201140号、特開2008−265271号、特開2008−268918号、特開平11216732号、特開2001−113544号、特開2002−79534号、特開2002−103357号、特開2002−103358号、特開2002−144357号、特開2002−316331号、特開2003−53750号、特開2003−20045号、特開2003−200478号、特開2003−236862号、特開2004−66613号、特開2004−107629号各公報等の製膜法を好ましく利用できる。
【0120】
<ドープの調製>
まず、前記樹脂を前記溶媒に溶解してドープを調製する。その際昇温してもよく冷却してもよくこれらを組み合わせて実施してもよい。樹脂は未使用のものを用いてもよく、一度使用したものを再使用してもよく、これらを混合して使用してもよい。この時の混合比率は再使用樹脂を5重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜40重量%にするのが好ましい。さらに上記の添加剤を加えることも好ましい。
【0121】
本発明の製造方法では、調製時のドープ粘度を調整することで、挟圧工程における半流体膜の粘度を本発明の範囲に制御することができる。前記調製時のドープ粘度は、ドープに添加する樹脂や添加剤の濃度、樹脂の分子量等により調整できる。前記調製時のドープ粘度は、全ドープ量に対して樹脂の量が5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜35質量%である。
【0122】
<押出し>
このように溶解したドープを濾過、脱泡した後、ポンプを経由して供給手段(好ましくは、ダイ)に連続的に送られることが好ましい。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでも構わない。さらに積層のためにマルチマニホールドダイやフィードブロックダイを用いてもよい。ダイの前に樹脂混合を促すためにスタティックミキサーを入れることも好ましい。
【0123】
供給手段(例えば、ダイ)の出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの5〜50倍がよく、好ましくは7〜40倍である。具体的には、0.2〜10mmであることが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましく、0.5〜3mmであることが特に好ましい。
本発明の製造方法においてダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
【0124】
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
【0125】
前記ドープは供給手段(例えばダイ)を通して支持体上に流延されるが、この時単層で流延してもよく、多層で流延してもよい。多層流延にはフィードブロックダイやマルチマニホールドダイを使用することができる。さらにスタティックミキサーとの組合せによりさらに多層化することも好ましい。好ましい層数は1層〜300層、より好ましくは1層〜100層、さらに好ましくは1層〜10層である。
【0126】
<挟圧工程>
本発明の製造方法では、第一挟圧面と前記第二挟圧面の間で溶媒を含んだ半流体膜を挟圧することを特徴としており、残留溶媒存在下、支持体上から剥ぎ取り前、あるいは剥ぎ取った後に実施できる。このような挟圧装置による半流体膜の挟圧は、調製後のドープを供給手段(例えば、ダイ)から半流体膜として支持体へ向けて押し出し、半流体膜が流動性を持っている間に行う必要がある。すなわち、半流体膜が乾燥され固体のフィルムになる前に前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させることを特徴とする。
【0127】
(挟圧箇所)
前記挟圧工程は半流体膜の粘度が上記本発明の範囲にあればどこで行ってもよい。まず、ドープは支持体上に流延された後、乾燥されながら支持体から剥離される。その後、好ましくは乾燥ゾーンに導かれることが好ましい。本発明の製造方法では、乾燥前の流動状態で挟圧体による上記変形を半流体膜に与えることで、消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を形成し易くすることが好ましい。すなわち供給手段(例えば、ダイ)出口から乾燥ゾーンまでの間で行うのが好ましく、より好ましくは供給手段(例えば、ダイ)出口から支持体上であり、さらに好ましくは供給手段(例えば、ダイ)出口から支持体までの間である。たとえば、(1)供給手段(例えばダイ)から支持体の間に1対の挟圧体(ロールやベルト)を設置してもよく、(2)支持体(バンドやドラム)上に挟圧体(ロールやベルト)を設置してもよく(この場合、支持体を一方の挟圧体として使用)、(3)支持体から剥ぎ取った後、1対の挟圧体(ロールやベルト)を設置してもよい。これらの中で特に(1)を用いることが好ましく、(1)の場合において、支持体あるいは支持体のケーシングを冷却し、半流体膜温度を10℃以下、−50℃以上に冷却しておくことで、挟圧体で形成した「消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造」を固定でき、より好ましい。これは半流体膜を冷却することで半流体膜の弾性を高めより変形(分子配向)を促すことができるためである。なお、本発明で乾燥ゾーンとは、フィルム中の溶媒が固形分に対し30質量%以下になっている100℃以上の領域を指す。
【0128】
(挟圧装置)
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載のロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、圧力を均一にかけられることから、2つのロールであることが好ましい。
挟圧は、圧力測定フィルム(富士フイルム社製 中圧用プレスケール等)を2つの挟圧体に通すことで測定することができる。 好ましい挟圧の範囲は、前記挟圧装置の説明における挟圧装置の挟圧面間において半流体膜を挟圧する圧力の好ましい範囲と同様である。
【0129】
本発明の製造方法では、挟圧装置間に圧力を20MPa〜500MPa付与することが好ましく、より好ましくは30〜300MPa、さらに好ましくは40〜200MPaである。このように圧力をかけることで、上述のような効果で分子配向を促し、複屈折を発現する効果を有する。
なお、挟圧装置間の圧力は、圧力測定フィルム(富士フイルム社製 中圧用プレスケール等)を挟圧装置間に通すことで測定することができる。
【0130】
本発明の製造方法では、第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度と等速でおこなってもよく、一方を速くしても構わない。本発明の製造方法では、前記γを発現させるため、移動速度差を設けることが好ましく、その場合、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面(移動速度の速い方の面)と第二挟圧面(移動速度の遅い方の面)の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することが好ましい。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
これによりメルトまたはドープにMD方向に斜め方向の分子配向を促すことができる。移動速度差は0%〜20%が好ましく、より好ましくは0%〜15%、さらに好ましくは0%〜10%である。この際、低速側の移動速度は10m/分〜300m/分が好ましく、より好ましくは20m/分〜250m/分、さらに好ましくは30m/分〜200m/分である。
この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と半流体膜が先に剥離し、その後もう一方の面と半流体膜が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度が前記第二挟圧面の移動速度よりも速いことが好ましいが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよい。剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
【0131】
本発明の製造方法では、2つの挟圧体は、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]、γのバラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
【0132】
(半流体膜の粘度)
本発明の製造方法では、ドープの溶解から挟圧前までの間の半流体膜の温度調整を行うことが、挟圧時の半流体膜の粘度を本発明の範囲にする観点から好ましい。流延するドープを加温、冷却することで達成してもよく、流延した支持体上で支持体の温度調節あるいは支持体のケーシング内の温度調節によって達成してもよい。この時の温度は−50℃から100℃未満が好ましく、より好ましくは−30℃〜80℃である。
また、挟圧時の半流体膜の粘度の制御は、調製時のドープの組成の調整および/またはドープの溶解から挟圧前までの間の半流体膜の温度調節で行うことができ、調製時のドープの組成の調整およびドープの溶解から挟圧前までの間の半流体膜の温度調節で行うことがより好ましい。調製時のドープの組成の調整に応じて、前記温度調節を制御することが特に好ましい。調製時のドープの組成から本発明の粘度範囲になる温度をあらかじめ測定しておき、半流体膜の温度調節を行うことで半流体膜の粘度制御がより特に好ましい。また、本発明の好ましい態様で用いられる樹脂や溶媒や添加剤を含むドープを用いる場合は、例えば固形分に対する溶媒量が30質量%〜1000質量%である半流体膜は本発明の製造方法の粘度に制御されるため、固形分に対する溶媒量が30質量%〜1000質量%である半流体膜を挟圧することも好ましい。
【0133】
また、本発明の製造方法では、半流体膜の温度を上記好ましい範囲として前記半流体膜の粘度を本発明の範囲にする観点から、挟圧体自体による温度調節を行うことが特に好ましい。これは挟圧体が半流体膜と直接接触し熱交換するため、挟圧時の半流体膜の温度を正確に制御できるためである。即ち挟圧体の温度は、ほぼ挟圧時の半流体膜の温度となる。このような挟圧体の温度制御は挟圧体中に熱媒を循環させる方法が好ましい。挟圧体の温度、すなわち挟圧時の半流体膜の温度は、−50℃から99℃が好ましく、より好ましくは−30℃〜80℃、さらに好ましくは−20℃〜60℃である。
さらに2つの挟圧体の表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は0℃〜30℃であり、より好ましくは0℃〜20℃、さらに好ましくは0℃〜10℃である。その際、2つのロールの温度は、−50℃から50℃に設定する。この温度差はどちらの挟圧面を高温にしてもよく、これにより傾斜配向をより強くすることができる。このような温度制御は、挟圧体内部に温調した液体、気体を通すことでも、外部の熱源、冷却源により挟圧体を加熱、冷却することで達成できる。
【0134】
本発明の製造方法では、固形分に対する溶媒量が30質量%〜1000質量%である半流体膜を挟圧することが、本発明の消光位を達成する上から好ましい。より好ましい残留溶媒量は固形分に対し50質量%〜600質量%、さらに好ましくは70質量%〜500質量%である。
【0135】
また、本発明の製造方法では、ダイ出口から挟圧前までの半流体膜中の溶媒の揮散を行うことが、挟圧時の半流体膜の粘度を本発明の範囲にする観点から好ましい。また、挟圧工程の時期によるが、支持体上あるいは支持体から剥ぎ取った後のフィルム中の溶媒を揮散させてもよい。好ましい溶媒量は固形分に対し30質量%〜1000質量%が好ましく、より好ましくは50質量%〜600質量%、さらに好ましくは70質量%〜500質量%である。
【0136】
(ライン速度)
本発明の製造方法では、挟圧体間で半流体膜に十分な変形を与えるため、ライン速度は10m/分〜300m/分が好ましく、より好ましくは20m/分〜250m/分、さらに好ましくは30m/分〜200m/分である。この範囲を下回らないことで十分な分子配向を与えられ、この範囲を上回らないことで半流体膜と挟圧体間の摩擦による表面の荒れ(シャークスキン)の発生やこれに由来する分子配向の不均一を抑制できる。
【0137】
本発明の製造方法では、前記範囲に挟圧するために、挟圧体を押し付けるシリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いるドープや2つの挟圧体の材質によっても異なるが、例えば、流延したドープの実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
【0138】
(挟圧装置の具体的構成)
前記メルトを、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧する方法としては、ベルト−ベルト間で挟圧してもよく、ベルト−ロール間で挟圧してもよく、ロール−ロール間で挟圧してもよいが、より好ましくはロール−ロール間である。ロール−ロール間にすることでより短時間に急激な変形を与えることができ、より多消光位構造を形成し易いうえ、構造形成中の溶媒の乾燥に伴うドープの流動むらに起因する多消光位構造の不均一性(むら)を抑制でき好ましい。より具体的には、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール)や、2本のロールからなる1対のニップロール)間を通過させることが好ましい。
なお、本明細書では、前記メルトを搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
【0139】
これらの挟圧体が周速運動する場合、周速度差は0%〜20%が好ましく、より好ましくは0.5%〜20%、さらに好ましくは1%〜10%である。
【0140】
本発明の製造方法では、前記範囲の挟圧にするために、挟圧体のショア硬さが45HS以上であるロールやベルトを使用することが好ましい。好ましいショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール、ベルトの幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
【0141】
ロール、ベルトの材質は、金属であることが前記ショア硬さを達成する観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、ロール、ベルトの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。また、ロール、ベルトの材質が金属製且つ剛性である場合、ロール、ベルト間の圧力を容易に高くすることができ、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールや金属ベルトは、特に制限なく用いることができるが、前記ロール圧力を達成できることが好ましい。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
【0142】
本発明の製造方法では、前記挟圧装置を構成する2つのロールの少なくとも一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることが好ましい。前記ロールの外筒厚みは6mm〜45mm、より好ましくは10mm〜40mm、さらに好ましくは15mm〜35mmの金属ロールが好ましい。このようなロールはタッチロールであることが好ましい。金属製外筒厚みが6〜45mmであれば本発明のRe[0°]、Rth、γのより好ましい領域を達成することができる。なお、従来金属製のタッチロールは特開平11−235747号公報のように2〜5mmと薄いものか、カレンダーロールのように厚み50mm以上が主流である。
【0143】
本発明の製造方法では、前記挟圧体にロールを使用する場合、少なくとも一方のロールが、直径が300〜2000nm、より好ましくは350〜1500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。このように直径の大きなロールを用いると、フィルム状のドープとロールの接触時間が長くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、配向構造を形成し易い上、支持体上でドープの温度が均一になり易く、しかもRe[0°]、γのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、2つのロールを挟圧体に使用する場合、両者の直径は等しくても、異なっていてもよい。
【0144】
このように金属ロールを使用することで、半流体膜中の溶媒によるロールの膨潤による変形を抑制することができ、挟圧の効果を均一にでき消光位構造の不均一性(むら)を抑制でき好ましい。
金属製外筒厚みは、この範囲を下回らないことで、挟圧によるロールの強度不足によるたわみが発生し、これによる挟圧部の周期的に変形し、これに伴う半流体膜の流れの乱れが発生、これにより形成した多消光位構造が解消するのを抑制できる。
また、金属製外筒厚みが前記範囲を上回らないことで、挟圧部の半流体膜を押し付けすぎることで面配向が却って進むことによる層間剥離の発生を抑制できる(上述のように挟圧部の間で半流体膜の流路が狭まり多消光位構造が形成されるが、ロールの強度(肉厚)が強すぎるとロールの変形によるプレス圧を吸収する効果が無くなり、挟圧で半流体膜が強く押されすぎ、面配向する効果が流速upによる多消光位形成の効果に勝りかえって剥離強度が低下する)。さらに挟圧むらを抑制できる効果も有する(ロール内は通常熱媒を流して温度調整しているが、ロールが厚すぎると熱伝達が充分に行えず、ドープの温度を制御できずむらが発生し易い)。
【0145】
よりRe[0°]、γのバラツキをなくす方法として、ドープが挟圧体に接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、ドープの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
【0146】
(エアーギャップ)
ダイから押出されたドープはエアーギャップ(供給手段出口から支持体までの距離)を通過し支持体上に流延されるが、エアーギャップは、具体的には3〜1000mmであることが好ましく、より好ましくは、5〜800mm、特に好ましくは、10〜500mmである。この間に挟圧装置を設置しても構わない。
【0147】
(支持体)
本発明の製造方法では、上記ドープを流延する支持体はドラムあるいはバンドであることが好ましく、より好ましくはドラムである。こられのドラムやバンドは内部あるいは外部から加熱、冷却し温度調整できるようになっていることが好ましく、これにより溶媒量を所望の範囲に調整し、挟圧体に供給することができる。
【0148】
本発明の製造方法では、支持体が−40℃〜40℃で実施できるが、好ましくは−40℃〜15℃、より好ましくは−30℃〜10℃、さらに好ましくは−25℃〜8℃に冷却することが好ましい。これによりドープの弾性を高くでき、流速による消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を形成し易くできる。さらに形成した構造を解消し難くする効果も有し、ダイと支持体の間で挟圧した場合に有効である。
【0149】
このような支持体の冷却はバンドよりドラムを用いた方が、冷却効率が高く設備も簡便にでき好ましい。このような効果(弾性率増加)はセルロースアシレート系樹脂に顕著であり、溶媒としてジクロロメタンと組み合わせた際に特に顕著である。
上記範囲を下回らないことで半流体膜の流動が低下しすぎるのを防ぎ、消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造形成を促す。一方、上記範囲を上回らないことで、流動性が多き過ぎることによる消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造の解消を抑止できる。
【0150】
(半流体膜の固化)
本発明のフィルムの製造方法は、前記半流体膜を挟圧する工程の後に、前記半流体膜中の溶媒を揮散させて固化する工程および前記半流体膜を貧溶媒中に浸漬させて固化する工程のうち、少なくとも一方の工程を含むことが、形成された消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を固定する観点から、好ましい。
【0151】
このように挟圧工程の後、挟圧体に、消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を固定する。固定には、半流体膜中の溶媒を揮散させてもよく、貧溶媒中に浸漬し固化してもよい。
【0152】
挟圧後に乾燥ゾーンを通過させ溶媒を揮散させることが好ましい。このように流動変形した後に乾燥ゾーンを設けることにより、流動変形で形成した消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を、溶媒を揮散させることで固定することが好ましい。また、ドープに挟圧をかけた後、急冷しドープの運動性を低下させ一時構造を固定した後、乾燥ゾーンに持ち込み急速乾燥することで消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造を固定してもよい。
前記乾燥ゾーンは100℃〜300℃が好ましく、より好ましくは110℃〜250℃、さらに好ましくは120℃〜200℃である。通過時間は10分〜300分であり、より好ましくは15分〜200分、さらに好ましくは20分〜120分である。この間のフィルムの搬送張力は1kg/m〜50kg/mが好ましく、より好ましくは3kg/m〜40kg/m、さらに好ましくは5kg/m〜30kg/mである。このような乾燥は1段で実施してもよく、多段で実施してもよい。
【0153】
本発明の製造方法は、残留溶媒量を0.01〜3質量%に制御する工程を含む。本発明の範囲となるように残留溶媒量を制御する方法としては、特に制限はなく、製膜中から適当量の溶剤を付与してもよく、製膜後に溶剤を塗布したり、溶剤に浸漬したりする方法でも達成できる。本発明の製造方法では、その中でも製膜中から適当量の溶剤を付与する方法が好ましい。これは挟圧、延伸などで残留応力等は発現した直後からすぐに上記緩和効果を発現できるため、より効率的にむらや皺を低減できるためである。
製膜中から適当量の溶剤を付与する方法の場合、上記のような乾燥時間、乾燥温度により本発明のフィルム中の残留溶媒量を制御できる。
【0154】
半流体膜中の溶媒を貧溶媒と交換することで固化することも好ましい。前記貧溶媒とは樹脂の溶解度が10%以下の溶媒を指し、水、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールおよびこれらの混合物が挙げられる。このように貧溶媒に浸漬後、上記条件で乾燥する。前記貧溶媒の温度はー20℃から100℃が好ましく、より好ましく0℃から70℃がより好ましい。浸漬時間は1秒〜30分好ましく、より好ましくは10秒〜10分である。
【0155】
さらに製膜したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
【0156】
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けてもよい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
【0157】
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
【0158】
本発明の製造方法において、製膜後のフィルムは厚みが10μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは25μm〜150μmであり、さらに好ましくは30μm〜90μmである。上記範囲の下限以上にすることで挟圧体間で十分な流動配向を与えることができ、上記範囲を上回らないことで、厚み方向の配向分布が乱れRe[0°]の不均一性を抑制できる。
【0159】
(フィルム幅)
溶液製膜または溶融製膜したフィルムの幅は1m〜4mが好ましく、より好ましくは1.2m〜3.5m、さらに好ましくは1.4m〜3mである。
【0160】
<フィルム面に平行方向の延伸工程>
本発明のフィルムの製造方法では、従来のフィルム面に平行方向の延伸処理を行うことができる。延伸処理は、フィルム平面性の向上、フィルム強度アップ、リターデーション値の調整の目的で行うことができる。
【0161】
延伸方向としては、長手方向(MD)、幅手方向(TD)が一般的であるが、長手方向に対して、斜め方向の延伸であってもよい。
【0162】
最初に、長手方向(MD)の延伸方法について説明する。
【0163】
長手方向に一段または多段MD延伸してもよい。延伸する際は、フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向(長手方向;MD)或いは幅手方向(TD)に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。また延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。なお、延伸に関して記載した際のTgは、延伸を行う際のフィルムの状態でのTgを指し、例えば、溶剤を含んだ状態で延伸する場合は、その状態でのTgを指す。このようなTgは、延伸時と同様に溶剤を含んだフィルムを密閉型のパンに封入し、DSC測定することで求めることができる。
【0164】
光学フィルムの溶剤を含まない状態でのTgは、110℃以上が好ましく、更に120℃以上が好ましい。これは液晶表示装置に本発明に係る光学フィルムを用いた場合、当該フィルムのTgが上記よりも低いと、使用環境の温度や湿度、バックライトの熱による影響によって、フィルム内部に固定された分子の配向状態に影響を与え、リターデーション値及びフィルムとしての寸法安定性や形状に大きな変化を与える可能性が高くなる。また、フィルムの形状を保持できなくなることがある。逆に当該フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料の分解温度に近づくため製造しにくくなり、フィルム化するときに用いる材料自身の分解によって揮発成分の存在や着色を呈することがある。従ってガラス転移温度は180℃以下、より好ましくは150℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
【0165】
縦延伸工程では、少なくとも2対以上のニップロールを用い、この間を加熱しながらフィルム搬送方向上流側に設置された2本のロールからなる第1のニップロールと、下流側に設置された2本のロールからなる第2のニップロールの周速度とを、前記第2のニップロールの周速度を上流側の第1のニップロールの周速より速くすることで実施できる。
【0166】
縦延伸工程は、樹脂のガラス転移温度をTgとして、Tg−20℃〜Tg+50℃、より好ましくはTg−10℃〜Tg+40℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+30℃で延伸することが好ましい。また、前記縦延伸工程における縦延伸倍率は、1.05倍〜3倍であることが好ましく、より好ましくは1.1倍〜2.5倍、さらに好ましくは1.2倍〜2.2倍である。
好ましいニップロールの直径は30mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは80mm〜1000mm、さらに好ましくは150mm〜700mmである。また、ニップロールを構成する2つのロールは直径が等しいことが得られるフィルムの均一化の観点から好ましい。
【0167】
好ましいニップ圧は10kg/cm〜100kg/cmが好ましく、より好ましくは20kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは25kg/cm〜70kg/cmである。
【0168】
好ましい縦延伸の延伸速度(ニップロールの入口側(延伸前)の速度は5m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは10m/分〜80m/分、さらに好ましくは15m/分〜60m/分である。
このような縦延伸工程では、例えば、特開2007−301978号、特開2004−133323号、特開2005−264022、特開2005−330412号、特開2006−130884号、特開2007−121352号、特開2008−39808号、特開2008−93946号、特開2008−185726号各公報等のものを使用できる。
【0169】
次に、幅手方向(TD)の延伸方法について説明する。
【0170】
TD延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終TD延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
【0171】
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。吹き込み風の温度は、30℃〜150℃が好ましく、45℃〜135℃がより好ましく、50℃〜120℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.00倍を超え2.50倍、より好ましく1.10〜2.20倍、さらに好ましくは1.20〜1.80倍である。
横延伸と同時に、或いは横延伸後に縦方向に収縮させることが好ましい。好ましい倍率は0.40倍以上1.00倍未満であり、より好ましくは0.50倍以上0.95倍以下、さらに好ましくは0.60倍以上0.90倍以下である。ここでいう倍率は、収縮処理前の長さを収縮処理後の長さで割ったものである。このような縦方向の収縮は、下記のような方法で実施できる。
縦収縮は横延伸中に実施してもよく、横延伸後に実施してもよい。縦収縮は具体的には下記<1>〜<4>で実施できるが、より好ましいのが<2>、<4>である。これらは単独で実施してもよく、組み合わせて実施してもよい。
(1)横延伸後に縦収縮
<1>横延伸(テンター延伸)に引き続き行うテンター内の搬送におけるクリップの搬送速度を、延伸中のクリップの搬送速度より遅くする。
このような縦収縮は、例えば横延伸と縦収縮を別のテンターレールを用意し、速度を独立に制御できるようにすることで達成できる。例えば特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報等に記載のようなものを使用し、縦(搬送方向)に収縮させることで実現できる。
【0172】
<2>テンターによる横延伸の後(テンターのクリップを外した後)、熱処理ゾーンに延伸フィルムを入れ、延伸フィルムの搬送速度を入口側より出口側の遅くしながら熱処理する。さらに縦方向の収縮を優先的に発生させるために、熱処理ゾーンの縦横比(ゾーン長を入口側フィルム幅で割った値)は0.01〜2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.6、さらに好ましくは0.1〜1.3である。
このような縦収縮は、例えばテンターの後に設けられる熱処理ゾーンの出口にニップロールを設け、この速度をテンターの搬送速度より上記の様に遅らせることで達成できる。また、2対以上のニップロールを用意し、出口側の搬送速度を入口側より上記のように遅らせることで達成できる。このような熱処理はニップロール間に熱処理ゾーンやヒーターを設けて行ってもよく、またニップロールを加熱し樹脂フィルムを上記範囲に調整することで行ってもよい。この縦収縮は、横延伸の後に引き続き実施してもよく、あるいは横延伸後一度巻き取ったものを送り出して実施してもよい。
横方向の収縮を抑制し縦方向にのみ収縮を行わせる必要がある。これには多数のロール間を通過させることで、ロールと樹脂フィルムの間の摩擦力で幅方向収縮を抑制でき有効である。ロールラップ長(W)/ロール間長(G)が0.01以上3以下が好ましく、より好ましくは0.03以上1以下、さらに好ましくは0.05以上0.5以下である。ロールの数は2本以上100本以下が好ましく、より好ましくは3本以上50本以下、さらに好ましくは4本以上20本以下である。好ましいロールの直径は5cm以上100cm以下が好ましく、より好ましくは10cm以上80cm以下、さらに好ましくは15cm以上60cm以下である。
【0173】
<3>テンターのチャック上で樹脂フィルムを搬送方向に収縮させることにより達成される。即ち、横延伸中あるいは横延伸後にチャック上で樹脂フィルムを搬送方向にスリップさせることで縦収縮させることができる。延伸した樹脂フィルムは収縮しようとし収縮応力が働くが、延伸(幅)方向にはチャックで把持されており収縮できない。一方、チャックに搬送(縦)方向に樹脂フィルムが滑るようにしておくと、この収縮応力により縦収縮させることができる。このような方法としては特に限定されないが、例えばチャックのクリップ部に搬送方向に滑車を設置することでも達成でき、またクリップの樹脂フィルム把持面に滑性の素材(例えばテフロン)を貼り付けてもよい。
【0174】
(2)横延伸中に縦収縮
<4>横延伸中の縦収縮は、横延伸中にテンター内のクリップの搬送速度を入口側から出口側に向かって遅くしながら幅方向に延伸することで達成でき、例えば、二軸延伸機を用いて行うことができ、具体的には、横延伸と縦収縮とを自動的に行うことができる。例えば、特開2003−211533、特開平6−210726、特開平6−278204、特開平11−77825、特開2000−246795、特開2004−106434、特開2004−195712、特開2006−142595、特開2006−22916、特開2008−44339、等に記載の装置を使用できる。具体的には、市金工業社製の高機能薄膜装置(商品名FITZ)等が使用できる。この装置は、縦方向(フィルムの長手方向=フィルムの進行方向)の延伸倍率と横方向(幅方向=フィルムの進行方向と垂直方向)の延伸倍率を任意に設定でき、さらに縦方向(長手方向)の収縮倍率も任意に設定可能であるため、延伸および収縮を同時に所定の条件で行うことができる。また、例えば、一般的に知られているレール幅制御方式、パンダグラフ方式、リニアモーターによる走行速度を制御する方式等を適宜組合せることによって、幅方向の延伸倍率を制御するとともに、フィルム端部を挟時したクリップの間隔を変化させて長手方向の長さを制御するようにした二軸延伸機等も使用できる。
【0175】
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
【0176】
熱固定は、その最終TD延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
熱固定の際、延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)幅を縮めることが、上記縦方向の収縮の効果をより発現し易く好ましい。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
【0177】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0178】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリカーボネートやセルロースエステル等の樹脂や可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0179】
(緩和処理)
さらに、これらの縦、横延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
【0180】
<第二の態様(延伸および延伸方向に直交する収縮をされたフィルム)の製造方法>
次に、本発明の第二の態様のフィルムの製造方法について説明する。本発明の第二の態様のフィルムの製造方法は、前記半流体膜を延伸倍率X倍で延伸する工程と、該延伸方向と直交方向にY倍収縮させる工程を含むことを特徴とする。
1.00<X<2.50
0.40<Y<1.00
前記XおよびYの好ましい範囲は、前述の本発明の第一の態様のフィルムの製造方法における横延伸および縦収縮の好ましい範囲と同様である。
【0181】
特許文献1において製膜した後のフィルムを、周速差を有する一対のロールの間を通し剪断を与え、光学軸を傾斜させ液晶表示基板の光学補償フィルムとして使用する技術が開示されている。
特開2010−61091号公報において、製膜フィルムを搬送方向と直交方向にX倍(1.00<X<2.5)延伸し、搬送方向にY倍(0.40<Y<1.00)延伸した後、特定のロール間隔、周速差の一対のロール間を通し剪断を加え、傾斜軸を形成する技術が開示されている。これにより、特許文献1の課題(表面の擦り傷)を解消している。
しかし、特許文献1、特開2010−61091号公報において、偏光板作成での乾燥工程(50〜150℃)等の熱処理で皺が発生し、解決が望まれていた。
これに対し、本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、上記構成をとることで、熱処理等で皺の発生し難い光学フィルムを提供することができる。
【0182】
(横延伸+縦収縮)
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、前記延伸が搬送方向と直交する方向への延伸であることが好ましい。
前記延伸が搬送方向と直交する方向への延伸、すなわち「横延伸+縦収縮」を組み合わせて製造することにより、熱処理での皺の発生をいっそう低減でき、さらには光学むらをも低減できる。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、消光角の直交方向(幅方向)に延伸を行うことで、消光角への影響を低減できる。また、このような消光角の変化を伴う分子配向は縦(製膜方向)に向かって発現する。これに横方向の延伸を加えることで、横(幅)方向にも分子が配向する。この結果、縦配向と横配向が相殺し、熱収縮の縦横異方性により増長される皺の発生を抑制できる。さらに、この横延時に縦方向に収縮させると、分子の横配向が更に促され効果が増大する。
【0183】
このような横延伸の際、縦収縮を組合せることで、横方向の分子配向をより促進でき、上記効果が顕在化し、光学特性(均一性)が大きく向上する。
【0184】
このような延伸は、挟圧の前、後どちらで実施してもよいが、挟圧前の実施がより好ましい。すなわち、本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、前記挟圧の前に、前記延伸工程を実施することが好ましい。挟圧前にフィルム全体を幅方向に配向させ(これは厚み方向に均一に配向する)、これを挟圧することで、消光角の分布を形成する。これにより、消光角の小さな部分も配向させ、配向が少ないことにより引き起される光学むらを低減する。一方、挟圧の後に延伸しても、消光角の小さな分子が配向され、配向が少ないことにより引き起される光学むらは低減するが、消光角の方向と直交する方向に延伸するため、先に形成した消光角が目減りし易い。
【0185】
(挟圧箇所)
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、供給手段(例えば、ダイ)出口から乾燥ゾーンまでの間で行うのが好ましく、より好ましくは支持体から溶剤を含んだ状態で剥ぎ取られてから乾燥ゾーンの間である。従って、本発明では、(1’)ダイの出口(ダイリップの部分)に挟圧体を設けてもよく、(2’)ダイと支持体の間に挟圧面を設置してもよく、(3’)バンドやドラムの支持体上に挟圧面を設置してもよく(この場合、一方の挟圧面はバンドあるいはドラムとなる)、(4’)支持体から剥離し搬送中に挟圧面で挟んでもよい。より好ましいのは(4’)の方法である。
このように流動変形した後に乾燥ゾーンを設けることにより、流動変形で形成した「消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造」を、溶剤を揮散させることで固定することが好ましい。また、ドープに挟圧をかけた後、急冷しドープの運動性を低下させ一時構造を固定した後、乾燥ゾーンに持ち込み急速乾燥することで「消光位がフィルムの一端からの厚み方向への距離によって異なっている構造」を固定してもよい。
【0186】
(挟圧装置)
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載のロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、圧力を均一にかけられることから、2つのロールであることが好ましい。
【0187】
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、挟圧装置間に圧力を20MPa〜500MPa付与することが好ましく、より好ましくは30〜300MPa、さらに好ましくは40〜200MPaである。
【0188】
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法では、前記挟圧装置の挟圧面の移動速度差は0%以上20%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以上20%以下、さらに好ましくは1%以上10%以下である。
【0189】
[偏光板]
<第一の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていない)フィルムを用いた偏光板>
本発明の第一の態様のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の第一の態様の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の第一の態様の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
【0190】
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
【0191】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
【0192】
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
【0193】
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
【0194】
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フイルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
【0195】
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
【0196】
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
【0197】
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
【0198】
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0199】
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
【0200】
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
【0201】
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していてもよい(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
【0202】
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。 本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
【0203】
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
【0204】
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号各公報に記載の方法である。
【0205】
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
【0206】
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
【0207】
<第二の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされた)フィルムを用いた偏光板>
本発明に係る第二の態様のフィルムを光学補償フィルムの機能と偏光板保護フィルムの機能を併せ持つフィルムとして使用することができ、第二の態様の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて本発明に係るフィルムを貼合する。偏光子の反対面には、下記の、従来の偏光板保護フィルムとして、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC12UR、KC8UXW−H、KC8UYW−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いることができる。
【0208】
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
【0209】
(表示装置)
本発明の第二の態様のフィルムの製造方法により製造されたフィルムを用いることにより、種々の視認性に優れた表示装置を作製することができる。本発明に係るフィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
【0210】
また、芳香族ポリカーボネートフィルムは平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0211】
[液晶表示装置]
<第一の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていない)フィルムを用いた液晶表示装置>
本発明の第一の態様のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
【0212】
<第二の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされた)フィルムを用いた液晶表示装置>
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明に係る光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムは平面性・リターデーションの均一性が高いため、どの部位に配置しても優れた表示性が得られる。液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには、クリアハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられた偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが好ましい。また光学補償層を設けた偏光板保護フィルムや、延伸操作等によりそれ自身に適切な光学補償能を付与した偏光板保護フィルムの場合には、液晶セルと接する部位に配置することで、優れた表示性が得られる。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮することができる。
【0213】
マルチドメイン化とは、1画素を構成する液晶セルを更に複数に分割する方式であり、視野角依存性の改善・画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。当該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),18
(2003)」にも示されており、これらに限定される訳ではない。
【0214】
表示セルの表示品質は、人の観察において左右対称であることが好ましい。従って、表示セルが液晶表示セルである場合、実質的に観察側の対称性を優先してドメインをマルチ化することができる。ドメインの分割は、公知の方法を採用することができ、2分割法、より好ましくは4分割法によって、公知の液晶モードの性質を考慮して決定できる。
【0215】
偏光板は、垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることができる。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することもできる。偏光板を用いることによって本発明の効果が発現できれば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
【0216】
当該液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても高性能であるため、本発明に係る光学フィルムを用いた液晶表示装置、特に大型の液晶表示装置の表示品質は、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【0217】
《TN型液晶表示装置》
本発明に係る光学フィルムが特に好適に用いられるTN型液晶表示装置について説明する。
【0218】
当該TN型液晶表示装置としては、特に制限されない。また、さらに光源を有してもよく、光源としては、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0219】
光学フィルムが特に好適に用いられるTN型液晶表示装置の例を、特開2010−61091号公報の図3及び図4を使用して説明する。以下、本明細書中において、図3、図4という場合は、特開2010−61091号公報の図3及び図4を意味する。第1の偏光板13及び第2の偏光板15は、それぞれ、偏光膜2,10を2枚の偏光板保護フィルムにより挟む構造を有する(偏光膜2は第1偏光板保護フィルム1及び第2偏光板保護フィルム3により挟み、偏光膜10は第3偏光板保護フィルム9および第4偏光板保護フィルム11により挟む。)。
【0220】
第2偏光板保護フィルム3および第3偏光板保護フィルム9のRo、Rtが15≦Ro≦70、70≦Rt≦200の範囲に存在する。
【0221】
TN方式液晶セル14は、2枚のガラスセル基板4,8により挟まれた空間に液晶層6を有する。液晶層6の平均厚さが液晶セルギャップである。
【0222】
ガラスセル基板4、8には液晶を配向するための配向層5、7が設けられており、配向層にはラビング処理が施されている。そして液晶のツイスト角は対向するラビング処理の方向つまりラビング軸の成す角度と一致し、配向膜5のラビング軸(基準0°とする。)と配向膜7のラビング軸の成す角度が115±22°である。
【0223】
第1の偏光板13の透過軸(偏光膜2の透過軸と等しい。)と液晶配向層5のラビング軸の成す角度が3.5±3°であり、第2の偏光板15の透過軸(偏光膜10の透過軸と等しい。)と液晶配向層7のラビング軸の成す角度が、3.5±3°である。
【0224】
なお、第1の偏光板と第2の偏光板は、クロスニコル(互いの透過軸が90°を成す。)になるように配置される。
【0225】
本発明の光学フィルムは、光学補償機能と偏光板保護機能を有する、第2偏光板保護フィルム3と第3偏光板保護フィルム9として使用することが好ましい。
【0226】
また、図示しないが、第2偏光板保護フィルム3と第3偏光板保護フィルム9には、偏光板保護機能を有するセルロースエステルフィルムを使用し、本発明の光学フィルムは光学補償フィルムとして、図3の第2偏光板保護フィルム3とガラスセル基板4の間と、2偏光板保護フィルム9とガラスセル基板8の間の2箇所(液晶セルの両側)に設置する対応も好ましい対応である。
【0227】
[光学補償フィルム]
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
【0228】
<積層フィルム>
本発明のフィルムには、必要に応じてさらに光学異方性層を付与することもできる。
【実施例】
【0229】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0230】
《測定法》
(1)フィルム残留溶媒量、半流体膜中の溶媒量
サンプルフィルム300mgを溶媒(フィルムを溶解するものであれば特に限定されないが、本実施例ではTAC、CAP−1〜CAP−3、DAC、アクリルおよびPCについてはジクロロメタンを用い、COPおよびCOCについてはn−ヘキサンを用いた)30mlに溶解する。このフィルム溶解液を、ガスクロマトグラフィー(GC)を用い、下記条件で測定する。
【0231】
カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚0.25μm)
カラム温度:50℃
キャリアーガス:窒素
分析時間:15分間
サンプル注入量:1μl
あらかじめ測定しておいた検量線から溶媒量をもとめ、サンプル量で割り残留溶媒量を求める。
【0232】
(2)消光位
明細書中に記載した方法に従い、実施例1のフィルムの消光位を、1°刻みで回転させながら、偏光顕微鏡(NIKON社製エクリプスE600POL)にて観測した。得られた結果から、最初に観測される消光位と、最後に観測される消光位を測定し、表1および2に記載した。
【0233】
(3)Re[0°]、γ、Rth、CRe[40°]
明細書中に記載した方法に従い、これらの光学特性を測定した。
【0234】
(4)挟圧
挟圧は、中圧用プレスケール(富士フイルム社製)を、半流体膜のない状態で等周速(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を挟圧時の圧力(挟圧)とした。
【0235】
(5)半流体膜の粘度
挟圧部分の半流体膜をサンプリングし、これを挟圧時の挟圧体の温度で、コーンプレート型レオメーター(例えばAnton Paar社製Physica MCR301型)を用いて1sec−1の剪断速度で測定する。なお、コーンプレートはシーリングを行い、測定中に溶媒が揮散しないようにした。
【0236】
(樹脂)
(1)COC(付加重合型ノルボルネン樹脂)
ポリプラスチックス(株)製TOPAS6013(Tg=130℃)
(2)COP(開環重合型ノルボルネン樹脂)
国際公開WO98/14499号パンフレットの実施例1の化合物(Tg=136℃)
(3)PC(PC−1とも言う)
パンライト グレードC−1400QJ(帝人化成(株)製/Tg=158℃)
(3’)PC−2
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水152400部、25%水酸化ナトリウム水溶液84320部を入れ、HPLC分析で純度99.8%の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)34848部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン9008部(以下“ビスフェノールA”と略称することがある)及びハイドロサルファイト88部を溶解した後、塩化メチレン178400部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン18248部を60分かけて吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール177.8部を塩化メチレン2640部に溶解した溶液及び25%水酸化ナトリウム水溶液10560部を加え、乳化後、トリエチルアミン32部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去して得たポリカーボネート(共重合体A)はビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で70:30であった(ポリマー収率97%)。また、このポリマーの極限粘度は0.674、Tgは226℃であった。
(4)アクリル
特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、Tg=134℃のアクリル系化合物を得た。
(5)セルロースアシレート樹脂
イ)CAP−1:特開2008−87398号公報実施例1に記載のペレットを使用したもの
(Pr=0.7置換、Ac=1.95置換/KM特許)
ロ)CAP−2:特開2008−50562号公報表3に記載の実施例101の樹脂
(Pr=2.55、Ac=0.15)
ハ)CAP−3:特開2008−197424号公報実施例に記載のセルロースエステルC
(アセチル置換度=1.0、プロピオニル置換度=1.2:Tg=150℃)
ニ)TAC:特開2008−260921号公報実施例1に記載のセルローストリアセテート
(アセチル置換度=2.84:Tg=165℃)
ホ)DAC:ダイセル化学工業社製酢酸セルロースL−70
(アセチル置換度=2.43、Tg=170℃)
【0237】
(ドープの作成)
(1)COC、COP
トルエンとn−ヘキサンの1:1混合物(重量比)に樹脂を10重量%(溶媒量に対する樹脂の重量比)で溶解した。これに安定剤(チバガイギー社製イルガノックス1010)を樹脂に対して0.3重量%添加した。
【0238】
(2)PC
特開平10−239522号公報実施例1の段落番号0040と同様にして固形分18質量%(溶媒量に対する固形分の重量比)のドープを調整した。
(2’)PC−2
エタノールを4質量部含む、メチレンクロライドとエタノール混合溶媒75質量部に対して、前記ポリカーボネート(PC−2)25質量部を25℃で攪拌しながら溶解して、透明で粘ちょうなドープを得た。
【0239】
(3)アクリル
ジクロロメタン/アセトン混合溶媒(重量比80/20)に樹脂を20重量%(溶媒量に対する樹脂の重量比)で溶解した。これに安定剤(チバガイギー社製イルガノックス1010)を樹脂に対して0.3重量%添加した。
【0240】
(4)セルロースアシレート樹脂:CAP−1、CAP−2、DAC
イ)〜ホ)いずれも、ジクロロメタン/メタノール/ブタノールの混合溶媒(90/8/2重量比)に樹脂を20重量%(溶媒量に対する樹脂の重量比)、下記光学調整剤8重量%、下記可塑剤a)、b)、c)9%(各3重量%)を添加した。
【0241】
但し、本発明52に用いたCAP−2のドープは樹脂の量を5重量%、光学調整剤の量を1.6重量%、可塑剤量を1.8重量%に変更し、本発明53に用いたCAP−2のドープは樹脂の量を4.5重量%、光学調整剤の量を1.4重量%、可塑剤量を1.6重量%に変更した。
【0242】
・光学調整剤(特開2008−76548号公報[化4]の化合物)
【化2】

・可塑剤
a)トリフェニルホスフェート
b)特開2008−197424号公報表2に記載の重合体A
c)特開2008−197424号公報表2に記載の重合体C
(5)セルロースアシレート樹脂:CAP−3
特開2008−197424号公報実施例1に記載に従い溶媒に対し固形分31質量%(溶媒量に対する樹脂の重量比)のドープを調整した。
(6)セルロースアシレート樹脂:TAC
特開2008−260921号公報実施例1の記載に従い溶媒に対し固形分27質量%(溶媒量に対する樹脂の重量比)のドープを調整した。
【0243】
<第一の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされていない)フィルムの製膜と応用>
(溶液製膜)
上記ドープを5μmの濾剤で濾過した後、押出し温度260℃(アクリルのみ230℃)で、幅1450mm、リップギャップ1mmのTダイからドープを、表1および2記載の支持体上に押出した。最終的に剥ぎ取った。この時、下記条件で挟圧処理を行った。
バンド方式は直径1mの2本のロール(駆動ロール)を10m離して設置し、この間に厚み3mmのステンレスベルトを設け、一方の駆動ロール上にダイからドープを押出し、バンド上で1周する直前に流延したドープ(半流体膜)を剥ぎ取った。バンド上の半流体膜の温度はバンドを囲んで設置したケーシングに温調風を導入することで所望の温度に調整した。
ドラム方式は直径1.5mのステンレスドラム上にドープをダイから押出し、ドラム上で1周する直前に流延したドープ(半流体膜)を剥ぎ取った。ドラム上の半流体膜の温度はドラム内を循環する熱媒の温度を調整することで所望の温度に調整した。
【0244】
(1)挟圧方式
下記の中から選択し表1および2に記載した。なお、いずれの態様でも、表1および2に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定した。
(1−1)ロールとロール(R&Rと表1および2に記載)
幅1400mm、直径300mm、表1および2記載の外筒厚みのHcrメッキされた金属ロールを使用し、両ロールとも中空とし、この中に温調した熱媒を循環させることでロールの温度を調整した。また挟圧はロール間の押圧を調整することで調整した。なお、両ロールとも同じ幅、直径、材質の物を用いた。
(1−2)ロールとベルト(R&Bと表1および2に記載)
幅1400mm、直径300mm、表1および2記載の外筒厚みのHcrメッキされた金属ロールAに、幅1500mm、直径100mmのロールBおよびB’を接触させた。ロールB、ロールAおよびロールB’を結ぶ角が90度となるように配置し、ロールBとB’間を厚み500μmのステンレスベルトで結んだ。ロールBおよびB’は内部が中空となっており、この中に温調した熱媒を循環させることでベルトの温度を調整した。ロールAも同様に中空の内部に熱媒を通して温調した。また挟圧はロールBおよびB’のロールAへの押圧を調整することで調整した。また、ステンレスベルトは、幅1500mmのものを用いた。
(1−3)ベルトとベルト(B&Bと表1および2に記載)
幅1400mm、直径100mmのロールAおよびA’をロールの中心間が300mmになるように位置し、この間を厚み500μmのステンレスベルトで結んだ。ロールAおよびA’は内部が中空となっており、この中に温調した熱媒を循環させることでベルトの温度を調整した。これと同じものをもう一組作成し、これらのベルト間を接触させた。これら2対のロールの押圧を調整することで挟圧を調整した。また、ステンレスベルトは、幅1500mmのものを用いた。
(1−4)ロールと支持体(R&Sと表1および2に記載)
支持体上に、幅1400mm、直径300mm、表1および2に記載の厚みの金属ロールAを接触させた。この時、ロールAの温度を調整することで半流体膜の温度を調整した。また挟圧はロールAの押圧を調整することで調整した。なお、支持体がバンドの場合は駆動ロール(ドープを流延していない方のロール)上にロールAを設置した。
(1−5)ベルトと支持体(B&Sと表1および2に記載)
幅1400mm、直径100mmのロールAおよびA’をロールの中心間が300mmになるように配置し、この間を厚み500μmのステンレスベルトで結んだ。ロールAおよびA’は内部が中空となっており、この中に温調した熱媒を循環させることでベルトの温度を調整した。これを、支持体がバンドの場合は駆動ロール(ドープを流延していない方のロール)上にロールAを設置した。
【0245】
(2)挟圧箇所
下記の中から選定し表1および2に記載した。
(2−1)ダイ出口(表1および2中にD出と記載)
ダイリップに挟圧装置を設置した。なお、ここでは直径5cm、表1および2に記載の外筒厚みの金属ロール1対を用いた。表1および2において、「挟圧体の外筒厚み」欄は、挟圧体である金属ロールの外筒厚みを表す。
(2−2)ダイ−支持体間(表1および2にはDS間と記載)
ダイと支持体の中間点に挟圧装置を設置した。
(2−3)支持体上(表1および2にはS上と記載)
ドラム方式の場合は、ドープ着地点と剥離点の中央に、バンド方式のときはドープを流延していない方の駆動ロール上に挟圧装置を設置した。
(2−4)支持体−乾燥ゾーン間(表1および2にはSd間と記載)
半流体膜の支持体からの剥離点から乾燥ゾーン入口までの間の中央に挟圧装置を設置した。
(2−5)乾燥ゾーン(表1および2にはd内と記載)
乾燥ゾーンの120℃に設置した乾燥ゾーンに半流体を導入し、この残留溶剤が表1および2記載に値となる所に、挟圧装置を設置した。
【0246】
(3)挟圧温度
表1および2記載の温度に挟圧体の温度を調整することで、挟圧時の半流体膜の粘度を表1および2記載の値とした。
【0247】
(4)固化
挟圧の後、半流体膜を下記方法で固化し、表1および2に「乾燥」「貧溶媒」と記載した。
(4−1)乾燥
半流体膜を120℃の乾燥ゾーンに導入し、表1および2記載の時間乾燥することで表1および2記載の残留溶媒のフィルムを得た。
(4−2)貧溶媒浸漬
貧溶媒として水とメタノールの混合溶液(各50質量%)を20℃に調温した中に半流体膜を5分浸漬し固化した後、120℃で30分乾燥した。
【0248】
(5)巻取り
これらのフィルムは、両端をトリミングし、両端に30μmの高さのエンボス加工(ナーリング)を行った後、巻き取った。いずれの水準も幅は1.5m、巻取り長は3000mであった。
【0249】
(フィルムの特性評価)
各実施例および比較例のフィルムの特性を上記の方法で評価し表1および2に記載した。なお、本発明のフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向であった。
【0250】
(フィルムの断面遅相軸)
次に、上側偏光板の間に特定の位相差を有する位相差板Aを45°方位に挿入した以外は消光位の測定方法と同じ測定を行い、実施例1のフィルム切片の遅相軸(本明細書中、断面遅相軸と言う)の変化と複屈折の大きさを測定した。位相差板Aとして、λ/4板、λ/2板、λ板を用い、干渉色図表と照らし合わせて複屈折の大きさを測定した。その結果、驚くべきことに断面遅相軸が厚み方向で変化し、厚み方向で複屈折が変化していることが分かった。また、実施例1のフィルムは、厚み方向において断面遅相軸が5°以上異なった角度に分布していることを確認した。
【0251】
(厚み方向の組成勾配)
各実施例および比較例のフィルムの厚み方向の組成勾配を、下記の方法で測定した。
フィルムを断面方向に切削し、厚み1μmの切片を作成する。これに対し、顕微IR分析を下記のように行う。
(1)顕微IRのアパーチャーを5μm×20μmの矩形に調整する。
(2)20μmの辺がフィルム表面と平行になるようにし、5μmごとずらしながら、一方の表面側から他方の表面側に向かって500cm−1〜4000cm−1の間でIR測定する。
(3)中央の厚みのIRスペクトルスペクトルをS(0)とし、このうちで最も強い吸光度のピークをAとし、その吸光度をα(0)、ピーク位置をacm−1とする。
(4)中央の厚みのスペクトルから一方の表面に向かって測定したIRスペクトルをS(i)、他方の表面に向かって測定したIRスペクトルをS(−i)とする(i=正の整数で1,2,3・・)。S(i)とS(0)の差スペクトルを下記式のように実施し、差スペクトルacm−1の吸光度が0になるように下記式の係数bを調整する。この差スペクトルのうち最も強い吸光度をC(i)とする。これを一方の表面から他方の表面に渡って求め、C(i)の絶対値の平均値を求める(C(i)avとする)。
式:
S(0)−S(i)×b=0
(5)C(I)av/α(0)が0.05以上のものが「組成勾配あり」とした。
【0252】
(剥離故障)
また、各実施例および比較例のフィルムの剥離故障は下記の方法で測定した。
・フィルムの片面に3mm間隔で11本、両刃剃刀で表面に切れ込みを入れる。これと直交方向に3mm間隔で11本の切れ込みを同様の方法で入れ、10×10の升目を作る。
・これに粘着テープ(日東電工製ポリエステル粘着テープNo.31B)を張りつけ、表面をよく擦り、粘着させた後、一気にテープを引き剥がす。
・フィルム表面が剥離した升目を数え、これを剥離故障の発生率とする。
・上記測定をフィルムの反対面でも同様に実施し剥離故障の発生率を求める。
・これらの平均値を表1および2に記載した。
【0253】
(サーキュラーリターダンス)
実施例のフィルムのサーキュラーリターダンスを本明細書記載の方法で測定した。その結果、いずれの実施例のフィルムも5nmを超えた。
【0254】
【表1】

【0255】
【表2】

【0256】
表1および2中、「挟圧時の半流体膜温度」は、挟圧時の挟圧体の温度と同じであった。すなわち、上記挟圧時の半流体膜粘度になるように挟圧体の温度を設定し、制御した。また、「挟圧体の外筒厚み」欄の「−」は、挟圧体として0.8mmの厚みのベルトを使用しロールを使用した。
【0257】
表1および2より、実施例1〜4および比較例1、2は挟圧の効果を比較したものである。実施例5〜8、比較例3および4は挟圧時の半流体膜の粘度の効果を検討したものである。実施例9〜10、比較例5および6は、残留溶媒量の効果を検討したものである。実施例11〜16は挟圧時の半流体膜の温度の効果を検討したものである。実施例17〜21は挟圧体に使用したロールの厚みの効果を示したものである。実施例22〜26は支持体の温度の効果を検討したものである。実施例27〜31は挟圧体の周速差によるγの発現性を示したものである。実施例32および33は挟圧体の設置箇所および挟圧時の溶媒量の効果を示したものである。実施例34〜38は挟圧方式を比較したものである。実施例39〜44はRe[0°]、Rthの発現性を示したものである。実施例45〜51はより好ましい態様を一つずつ増やしてゆきその相乗効果をみたものである。実施例52および53は挟圧時の溶媒量の効果を検討したものである。実施例54および55は固化方式(乾燥、貧溶媒に浸漬)を比較検討したものである。比較例7は従来の延伸方式の特開平10−239522号公報の結果であり、それに近い条件で本発明を実施したのが実施例56である。なお、該公報実施例の条件に合わせるため、比較例7および実施例56では乾燥温度を100℃とした。
また、実施例1〜56および比較例1〜7のフィルムは、いずれもフィルム厚み方向の組成勾配はなかった。
本発明の第一の態様により、簡便な方法で剥離故障の少ない延伸フィルムを提供できたことがわかった。
【0258】
(偏光板)
作成した実施例1〜56のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて各偏光フィルムを作製した。これらの偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フイルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1〜56のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1〜56のフィルムを用いた偏光板をそれぞれ2枚ずつ作製した。
【0259】
(液晶表示板)
実施例1〜56のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶板の間に設置した。また、実施例1〜56のフィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に配置した。液晶表示板としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードのものを使用したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。
【0260】
[実施例101〜139、比較例101〜108、参考例101〜106]
<第二の態様の(延伸および延伸方向に直交する収縮をされた)フィルムの製膜と応用>
次に、第一の態様のフィルムの製膜において、以下の態様で半流体膜の固化前に延伸および収縮を行った以外は同様にして、第二の態様のフィルムの製膜を行った。
【0261】
(I)挟圧、延伸手順
ドラム、バンドから剥ぎ取った後、各水準について下記手順から挟圧と延伸の手順を選択し(表3に記載)延伸、挟圧処理を行った。なお、ドラム、バンド上や延伸中の乾燥時間、温度の調整により表3に記載の半流体の粘度を調整した。
手順(i) :「横延伸+縦収縮」→挟圧→横延伸
手順(ii) :「横延伸+縦収縮」→挟圧
手順(iii) :横延伸→挟圧
手順(iv) :挟圧
手順(v) :挟圧→「横延伸+縦収縮」
【0262】
(II)挟圧、延伸条件
(II−1)挟圧
表3記載の挟圧、ロール厚みで実施した。
(II−2)「横延伸+縦収縮」
表3記載の温度、倍率で実施した。なお、倍率とは延伸前の長さを延伸後の長さで割った値であり、1未満は収縮させたことを意味する。なお、「横延伸+縦収縮」は、下記の中から選択し表3に記載した。
方法(1):横延伸の後テンターのクリップを外し熱処理ゾーンに延伸フィルムを入れ、入口のニップロールより出口のニップロールの搬送速度を遅くした。この時、ロールラップ長(W)/ロール間長(G)が0.2となるように配置した10本のロールを搬送させた。なお、各ロールの直径は40cm、ラップ角は120°とした。
方法(2):搬送(縦)方向に滑車をつけたチャックを用い、横延伸後に縦収縮させた。縦収縮量はテンター出口の巻き取り機の張力を調整することで達成した。
方法(3):市金工業社製の同時2軸延伸機(商品名FITZ)を用い、延伸中にチャックの搬送速度を遅くすることで達成した。
方法(4):特開平9−138307の実施例2に記載の方法(テンターで横延伸中に縦収縮)に従い実施した。
方法(5):特開2008−44339号公報に開示されている延伸装置に準拠した装置を用いて、縦方向にパンタグラフを収縮させることで達成した。
【0263】
(II−3)横延伸
表3記載の温度、倍率でテンターを用いて実施した。
【0264】
(フィルムの特性評価)
各実施例および比較例のフィルムの特性を上記の方法で評価し表3に記載した。
表3に1箇所の観察点中に発現した最大消光角と最小消光角を「/」で挟んで示した。(特開2010−61091号公報の表2に記載の「傾斜角」は「〜」で表示してあるが、これとは異なる。即ち特開2010−61091号公報では段落[0148]に記載のようにサンプル長30〜39mの間から10点サンプリングした長手方向の測定点のばらつきを示し、本発明のように、1箇所の測定点の中の分布を示すものではない。さらに特開2010−61091号公報では、段落[0148]に記載のように「KOBRA」で測定しており、この方式では1点の測定点に対し1つの傾斜角データしか取れず、本発明のような1つの観測点での断面方向の複数の傾斜角の分布を示すものではなく、本発明と本質的に異なるものである。
なお、Re[0°]が正の値である場合は遅相軸がTDに存在していることを示し、負の場合は遅相軸がMDに存在することを示す。Rthが正の値である場合はフィルム面内に配向が進んでいることを示し、負はフィルム面の法線方向に配向が進んでいることを示す。
γ、Re[0°]、Rthの分布は、下記手順で測定し表3に記載した。この値が大きいものほど光学均一性が低いことを示し、光学補償板として使用した際にムラが強いことを示す。
・幅方向10cm間隔で全幅に亘り、上記の方法でγ、Re[0°]、Rthを測定。
・下記式に従い「γの分布」を求める。
γの分布(%)=最大γ値−最小γ値
Re[0°]の分布(%)=最大Re[0°]値−最小Re[0°]値
Rthの分布(%)=最大Rth値−最小Rth値
【0265】
熱収縮に伴う皺は以下の方法で測定し、結果を表3に記載した。
・フィルムを全幅にわたり1m長サンプリングする。
・これを無張力下で、100℃のオーブンに10分入れる。
・これを平滑で水平な台に置き、トタン板上に凹凸が発生している本数を目視で数える。
【0266】
【表3】

【0267】
表3中、「挟圧時の半流体膜温度」は、挟圧時の挟圧体の温度と同じであった。すなわち、上記挟圧時の半流体膜粘度になるように挟圧体の温度を設定し、制御した。また、「挟圧体の外筒厚み」欄の「−」は、挟圧体として0.8mmの厚みのベルトを使用しロールを使用した。
【0268】
表3の、実施例101〜104、比較例101および102は挟圧の効果を示したものである。実施例105〜108、比較例103および104は挟圧時の半流体の粘度の効果を示したものである。実施例109〜110、比較例105および106は残留溶剤の効果を示したものである。実施例111〜113、参考例101および102は挟圧と横延伸、縦収縮の手順の効果を示したものである。実施例114〜118は挟圧体のロール厚みの効果を示したものである。実施例119〜121、参考例103および104は横延伸倍率の効果を示したものである。実施例122〜124および参考例105、106は縦収縮倍率の効果を示したものである。実施例125〜129は、挟圧時体の周速差の効果を示したものである。実施例130〜135は、好ましい態様を順に増やしていった際の相乗効果を示したものである。実施例136〜137は、固化方法の効果を示したものである。実施例138は、特開2020−61091号公報実施例の本発明Aに準じて追試した比較例107との比較を示したものである。実施例139は、特開平6−222213号公報実施例F−1に順じて追試した比較例108との比較を示したものである。
本発明の第二の態様により、簡便な方法で、熱処理等で皺の発生し難いフィルムを提供できたことがわかった。また、本発明の第二の態様のより好ましい態様により、光学むらも少ないフィルムを提供できたことがわかった。
なお、厚み方向の組成勾配はいずれの実施例、比較例および参考例にも存在しないことを確認した。
【0269】
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、コニカミノルタタックKC8UXを2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させ、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤で、前記偏光膜の両面に貼り合わせて偏光板を製作した。
【0270】
(液晶表示装置による評価)
NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jの予め貼合されていた光学補償フィルム及び偏光板を剥がしたものを使用した。
【0271】
上記シートの光学補償フィルムについて、偏光板と併せて液晶セルの両面に配置した。液晶表示装置を、全面白表示とし、真っ暗な部屋において目視で色むら、濃度むらの認識できる領域の面積を求め、これを全画面面積で割り百分率表示し、表3に「表示むら」として記載した。
表3より、本発明の第二の態様のフィルムを用いた液晶表示装置は、いずれも表示むらが小さいことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、
傾斜方位と厚み方向を面内に含む前記フィルムの切片を直交ニコルに配置された2枚の偏光板の間に配置し、前記2枚の偏光板の両方の面に対して垂直方向から光を照射しながら前記フィルム切片を0°〜90°の範囲で回転させた時に観測される消光位が、前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって異なるフィルム。
【請求項2】
前記フィルム切片の一端からの厚み方向への距離によって、5°〜90°の範囲内の異なる角度に消光位が観測されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルム切片を回転させたときに最初の観測される消光位と最後に観測される消光位が5°以上異なることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
樹脂を含み、かつ、溶媒を0.01〜3質量%含むフィルムであって、
フィルム傾斜方位と直交する方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるサーキュラーレターダンスが5nmを超えるフィルム。
【請求項5】
下記(I)式および(II)式を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦Re[0°]≦600nm (I)式
(式(I)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
−600nm≦Rth≦600nm (II)式
(式(II)中、Rthは波長550nmにおける厚み方向のレターデーションを表す。)
【請求項6】
下記(III)式を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦γ≦600nm (III)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (III)’式
(式(III)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項7】
下記式(VI)で示されるγの分布が1〜30nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
γの分布=幅方向に測定したγの最大値−幅方向に測定したγの最小値 (VI)
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (VI)’
(式(VI)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項8】
幅方向に遅相軸があることを特徴とする請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
下記(VII)式および(VIII)式を満足することを特徴とする請求項7または8に記載のフィルム。
0nm≦Re[0°]≦200nm (VII)式
−50nm≦Rth≦300nm (VIII)式
(式(VII)中、Re[0°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項10】
下記(IX)式を満足することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のフィルム。
30nm≦γ≦200nm (IX)式
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (IX)’式
(式(IX)’中、Re[+40°]はフィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
【請求項11】
前記樹脂の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
添加剤を含み、該添加剤の濃度が、フィルム厚み方向において均一であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
樹脂と溶媒とを含むドープを供給手段から半流体膜として押出す工程と、
押出された半流体膜を支持体上に流延する工程と、
流延された半流体膜を支持体から剥離する工程と、
剥離した半流体膜を乾燥する工程と、
残留溶媒量を0.01〜3質量%に制御する工程と、
挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に1Pa・s〜10万Pa・sの粘度の前記半流体膜を20MPa〜500MPaの挟圧を加えながら通過させて連続的に挟圧する工程を含むことを特徴とするフィルムの製造方法。
【請求項15】
固形分に対する溶媒量が30質量%〜1000質量%である半流体膜を挟圧することを特徴する請求項14に記載のフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記支持体がドラムまたはバンドであることを特徴とする請求項14または15に記載のフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記供給手段の出口から支持体までの間において前記半流体膜を挟圧することを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項19】
下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差の第一挟圧面の速度に対する比率が0.5〜20%であることを特徴とする請求項14〜18のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
【請求項20】
前記第一挟圧面および第二挟圧面の少なくとも一方が、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールの表面であることを特徴とする請求項14〜19のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記挟圧装置が2つのロールを含んでおり、第一挟圧面および第二挟圧面がそれぞれのロールの表面であることを特徴とする請求項14〜20のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記支持体を−40℃〜15℃に制御することを特徴とする請求項14〜21のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項23】
前記半流体膜を挟圧する工程の後に、
前記半流体膜中の溶媒を揮散させて固化する工程および前記半流体膜を貧溶媒中に浸漬させて固化する工程のうち、少なくとも一方の工程を含むことを特徴とする請求項14〜22のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項24】
前記半流体膜を延伸倍率X倍で延伸する工程と、該延伸方向と直交方向にY倍収縮させる工程を含むことを特徴とする請求項14〜23のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
1.00<X<2.50
0.40<Y<1.00
【請求項25】
前記延伸が搬送方向と直交する方向への延伸であることを特徴とする請求項24に記載のフィルムの製造方法。
【請求項26】
前記挟圧の前に、前記延伸工程を実施することを特徴とする請求項24または25に記載のフィルムの製造方法。
【請求項27】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項14〜26のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項28】
請求項14〜27のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするフィルム。
【請求項29】
偏光子と、少なくとも1枚の請求項1〜13および28のいずれか一項に記載のフィルムを使用したことを特徴とする偏光板。
【請求項30】
請求項1〜13および28のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−34069(P2011−34069A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152445(P2010−152445)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】