説明

フィルムの欠陥検査装置及び方法

【課題】光学補償フィルム等の僅かな厚みムラや塗工ムラを検出できるようにする。
【解決手段】連続的に搬送される検査対象フィルム7の下側の面に光源部15を配してあり、検査対象フィルム7に光を照射する。検査対象フィルム7からの透過光を受光する受光器16は、検査対象フィルム7を俯瞰するように配置されており、その光軸Pとフィルム7に垂直な基準線(法線)Lnと交差角度θ1が与えられ、基準線Lnを回転中心として液晶層の遅相軸Lmを基準に回転角度θ2だけ回転してある。撮影レンズ16aと、検査対象フィルム7との間に凸レンズ21を配してあり、撮影レンズ16aとともにテレセントリック光学系を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象のフィルムに光を照射し、その透過光に基づいてフィルムの欠陥を検出するフィルムの欠陥検査装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学異方性のある液晶層を透明なフィルム上に形成することにより、液晶表示装置の視野角を改善することができる光学補償フィルム(位相差フィルム)が知られている。例えば、この光学補償フィルムは、透明フィルムに配向膜を形成し、その上に液晶を塗布し乾燥して液晶層を形成する各種工程を経て製造される。その製造工程は、厳格な管理下に置かれるが、各種要因によって異物の混入、付着による分子配向ムラ、支持体となる透明フィルムの厚みムラ、液晶層での塗工ムラ等の欠陥の発生を完全になくすことは困難である。このため、製造ライン上で検査を行ういわゆるインライン検査を実施し、上記のような欠陥が発生した光学補償フィルム上の位置を把握している。
【0003】
上記のような光学補償フィルム等の欠陥を検査する手法が特許文献1によって知られている。この特許文献1では、検査対象となる光学補償フィルムをクロスニコル配置とした一対の偏光板の間に通し、一方の偏光板を介して光学補償フィルムに光源からの光を入射させ、光補償フィルムを透過して他方の偏光板から射出される光を受光器で受光する。また、受光器を、その光軸とフィルム面に垂直な基準線とが30°〜50°の範囲で交差し、基準線を回転中心にしてフィルムの搬送方向から−60°〜+60°の範囲で回転させた位置に配することで、極僅かなフィルム厚みのムラや塗工物の厚みムラを鋭敏に検出するようにしている。
【特許文献1】特開2005−250715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の欠陥検査に用いる受光器としては、検査対象フィルム上の検査エリアをライン状とすることに対応して、ラインセンサと撮影レンズを組み合わせたものが用いられるが、検査対象フィルムの視野角特性、すなわち検査対象フィルムの有する光学異方性に起因して、受光器によって受光される光量が検査エリア内で不均一となる。具体的には、受光量が検査エリアの一端側では低く、他端側では高くなるような受光量ムラが生じる。このため、他端側の受光量が大きくなりすぎるためセンサが飽和してしまい欠陥を検出することができなくなったり、検査エリア内において一定のS/N比を確保できないために、検出エリア内における欠陥検出精度にバラツキが生じたりするという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、受光器の受光量を改善し、検査対象フィルムの僅かな厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥の検出をすることができるフィルムの欠陥検査装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するにあたり、請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置では、検査対象フィルムの一方の面側に配置され検査対象フィルムに光を照射する光源と、検査対象フィルムを透過した光を集光する撮影レンズ及び複数の受光素子がライン状に配列され撮影レンズによって集光された光を受光して受光量に応じた受光信号を出力するラインセンサを有し撮影レンズの光軸と検査対象フィルムの面に垂直な基準線との間に交差角度θ1が与えられるとともに基準線を回転中心にした検査対象フィルムの遅相軸から回転角度θ2の位置に配された受光器と、光源と検査対象フィルムとの間に配された第1の偏光板と、受光器と検査対象フィルムとの間に配されて透過軸が第1の偏光板の透過軸に対して傾けられた第2の偏光板と、光源と受光器との間のいずれかの位置に配されラインセンサの各受光素子に受光される検査対象フィルムを透過した光の受光量を均一にするように補正する受光量補正手段とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載のフィルムの欠陥検査装置では、受光量補正手段を、撮影レンズと検査対象フィルムとの間に配された補正光学系とし、撮影レンズとともにテレセントリック光学系を構成するようにしたものである。
【0008】
請求項3記載のフィルムの欠陥検査装置では、撮影レンズを、テレセントリック光学系で構成し、撮影レンズを受光量補正手段で兼ねるようにしたものである。
【0009】
請求項4記載のフィルムの欠陥検査装置では、受光量補正手段を、光源と第1の偏光板との間に検査対象フィルムに対して傾けて配され、光源からの光を散乱させて検査対象フィルムに照射する散乱板としたものである。
【0010】
請求項5記載のフィルムの欠陥検査装置では、受光量補正手段を、ライトコントロールフィルムとしたものである。
【0011】
請求項6記載のフィルムの欠陥検査装置では、受光量補正手段を、ラインセンサの受光素子の配列方向に沿って連続的に透過率が変化するフィルタとしたものである。
【0012】
請求項7記載のフィルムの欠陥検査装置では、ラインセンサの受光素子の配列方向に沿って連続的に透過率が変化するフィルタを、ラインセンサと撮影レンズとの間に配したものである。
【0013】
請求項8記載のフィルムの欠陥検査装置では、受光量補正手段としてのライトコントロールフィルムあるいはラインセンサの受光素子の配列方向に沿って連続的に透過率が変化するフィルタを、光源と第1の偏光板との間に配したものである。
【0014】
請求項9記載のフィルムの欠陥検査装置では、交差角度θ1が、「30°≦θ1≦50°」の条件を満たし、回転角度θ2が、「−60≦θ2≦−30°」または「+30≦θ2≦+60°」の条件を満たすようにしたものである。
【0015】
請求項10記載のフィルムの欠陥検査装置では、第1及び第2の偏光板を、それぞれ検査対象フィルムと略平行に配したものである。
【0016】
請求項11記載のフィルムの欠陥検査装置では、検査対象フィルムを連続的に搬送する搬送手段を備え、受光器を、検査対象フィルムが一定長搬送されるごとに受光を行うよういにしたものである。
【0017】
請求項12記載のフィルムの欠陥検査方法では、検査対象フィルムの面に垂直な基準線に対して傾けられ、基準線を中心にして検査対象フィルムの遅相軸から回転させた位置でラインセンサによる受光を行うとともに、光源と受光器との間のいずれかの位置に配した受光量補正手段によってラインセンサの各受光素子に受光される検査対象フィルムを透過した光の受光量を均一となるように補正するようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、補正光学系やライトコントロールフィルム,散乱板,連続的に濃度が変化するフィルタ等の受光量補正手段を用いて受光器による受光量を、検査対象のフィルムの光学異方性に影響されることなくほぼ均一となるようにしたから、受光器からの信号に基づいて極僅かなフィルム厚みのムラや塗工物の厚みムラを鋭敏に検出することができ、フィルム厚みや塗工物の厚みに非常に高精度な検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1実施形態の欠陥検査装置を図1に示す。フィルムロール3から送り出された長尺の透明樹脂フィルム3aは、配向膜を形成する配向膜形成装置4に送られる。配向膜形成装置4は、透明樹脂フィルム3aの表面に配向膜形成用樹脂を含む塗布液を塗布してから加熱乾燥し、配向膜形成用樹脂層を形成する。さらに配向膜形成装置4は、配向膜形成用樹脂層に対してラビング処理を行い配向膜とする。ラビング処理は、周知のように布などで配向膜形成用樹脂層を所定の一方向に擦ることにより行われる。
【0020】
配向膜が形成された透明樹脂フィルム3aは、液晶層形成装置5に送られる。液晶層形成装置5は、透明樹脂フィルム3aの配向膜上に液晶性化合物を含む塗布液を塗布し、その塗布液の溶剤を蒸発させてから、液晶相形成温度に加熱して液晶層を形成する。この後に、液晶層に紫外線を照射して、液晶層を架橋する。このようにして所定の方向に液晶を配向して液晶層を形成して、光学異方性を有する位相差フィルムを製造する。この位相差フィルムは、例えば視野角を改善するための透過型の光学補償フィルムとして利用される。
【0021】
欠陥検査装置10は、上記のように製造された位相差フィルムを検査対象のフィルム(以下、検査対象フィルムという)7として、厚みムラ,液晶性化合物を含む塗布液の塗工ムラ,分子配向ムラ等の各種欠陥を検査・検出する。例えば厚みムラ,塗工ムラについては厚み差が1nm〜1μm,幅0.1mm〜50mm程度の欠陥を検出できるようにしてある。
【0022】
なお、本発明の欠陥検査装置の検査対象となるフィルム及びその製造方法は、上記のものに限られるものではなく、光学異方性(複屈折性)を有する各種フイルムに利用することができる。
【0023】
搬送機構11は、検査対象フィルム7を一方向(S方向)に所定の速度で搬送する。検査対象フィルム7の搬送路には、検査ステージを設けてあり、この検査ステージには所定の間隔で2本のガイドローラ12,13を配してある。これらガイドローラ12,13の間に検査対象フィルム7を掛けて平面状に保持する。ガイドローラ12,13は、回動自在であり、検査対象フィルム7の搬送に従動して回転する。なお、検査ステージでは、液晶層を下にした姿勢で検査対象フィルム7が搬送されるが、この向きに限るものではない。
【0024】
また、検査ステージには、光源部15,複数の受光器16を配してある。光源部15は、搬送路の下側、すなわち検査対象フィルム7の下面側(液層層側)に配してあり、搬送中の検査対象フィルム7に向けて光を照射する。光源部15は、後述するように検査対象フィルム7の幅方向(M方向)に対して傾いた検査エリア17を照明するものであれば種々の構成を採用することができる。この例では、100〜200W程度の管状の複数のランプ15a(図3参照)を検査対象フィルム7の幅方向に対して傾けた姿勢で検査対象フィルム7の幅方向に並べてある。
【0025】
複数の受光器16は、搬送路の上側すなわち検査対象フィルム7の上面側に、検査対象フィルム7の幅方向に沿って一列に並べて配してある。各受光器16は、撮影レンズ16aと、ライン状に並べた多数の受光素子からなるラインセンサ16b(図4参照)とからなるリニアアレイカメラで構成されている。ラインセンサ16bとしては、例えばCCD型、MOS型のものを用いることができる。
【0026】
この受光器16は、検査対象フィルム7が一定長搬送されるごとに、検査対象フィルム7の検査エリア17を撮影して電気的な受光信号に変換して出力する。検査エリア17は、ラインセンサ16bの受光素子がライン状に配列されていることに対応して一方向に長いライン状になっている。なお、光源部15を液晶層側に配置してあるが、受光器16を液晶層側に配置し、光源部15を液晶層側と反対の面側に配置する構成であってもよい。
【0027】
各受光器16は、後述するように検査対象フィルム7の遅相軸を基準にして所定の角度で回転させた姿勢としてある。この例では、検査対象フィルム7の遅相軸が搬送方向とほぼ一致する方向となっているため、検査エリア17は検査対象フィルム7の幅方向に対してそれぞれ傾いている。上述のように複数の受光器16を幅方向に沿って並べることにより、その幅方向に傾いた検査エリア17を幅方向に並べ、検査対象フィルム7の幅方向の実際に使用される領域を検査できるようにしてある。
【0028】
受光器16と検査対象フィルム7との距離、検査エリア17の長さは適宜決定することができるが、この例では、受光器16と検査対象フィルム7との距離を1500mm、検査エリアの長さを250mmとし、受光器16から検査対象エリア17を望む角度を9.5度としてある。詳細を後述する受光量補正手段を用いて検査エリア17の各点に対する受光量ムラを解消して受光量の均一化を図っているため必ずしも必要ではないが、受光器16から検査対エリア17を望む角度を小さくすることは好ましい。
【0029】
光源部15と検査対象フィルム7との間に第1偏光板18を、検査対象フィルム7と受光器16との間に第2偏光板19を、それぞれ検査対象フィルム7と平行となるようにして配してある。これにより、光源部15からの光は第1偏光板18を介してフィルム7に照射され、受光器16は、第2偏光板19を透過する光を受光する。
【0030】
第1偏光板18と第2偏光板19は、それらの各透過軸(偏光方向)が直交するクロスニコル(直交)配置となっている。なお、この第1偏光板18と第2偏光板19の各透過軸の相互の角度は、検査対象フィルム7の特性等に応じて、平行とならない範囲で適宜に設定することができる。また、検査対象フィルム7に対する各偏光板18,19の透過軸方向は、適宜に設定することができる。さらに、偏光子が一体に形成された検査対象フィルム7の場合には、その検査対象フィルム7の偏光子を第1偏光板18あるいは第2偏光板19として利用することができる。
【0031】
各受光器16と第2偏光板18との間には、それぞれ凸レンズ21を配してある。この凸レンズ21は、検査エリア17の各位置に対するラインセンサ16bの受光量ムラを解消して受光量を均一に補正するための受光量補正手段としての補正光学系となっている。この凸レンズ21と撮影レンズ16aとによってテレセントリック光学系を構成する。このテレセントリック光学系は、物体側テレセントリック光学系、あるいは両側テレセントリック光学系としてあり、検査対象フィルム7から射出される光のうち撮影レンズ16aの光軸Pと平行な光をラインセンサ16bに集光して受光し、検査対象フィルム7の光学異方性に起因した受光量ムラを解消する。
【0032】
後述するよう交差角度θ1を大きく持たせる場合では、欠陥の検出感度が高くなる反面、検査対象フィルム7の視野角特性に起因した検査エリア17の各位置に対するラインセンサ16bの受光量ムラが大きくなるため、受光量補正手段が特に有効となる。
【0033】
なお、補正光学系としての構成は、凸レンズに限るものではなく、種々のレンズ構成のものを用いることができる。また、テレセントリック光学系として構成された撮影レンズを用いることができるのはいうまでもない。
【0034】
各受光器16からの受光信号は、信号処理装置22に送られる。また、ガイドローラ13には、このガイドローラ13が一定角度回転するごとに、すなわち検査対象フィルム7が一定長搬送されるごとに1個のエンコードパルス信号を発生するエンコーダ23を取り付けてある。このエンコーダ23からのエンコードパルス信号は、欠陥の位置を特定するための情報として信号処理装置22に送られる。
【0035】
図2に信号処理装置22の構成を示す。各受光器16からの受光信号は画像強調回路25に入力される。画像強調回路25は、受光信号に対して、検査対象フィルム7の欠陥の信号を強調する強調処理を行う。強調処理としては、例えば受光信号中の低周波及び高周波ノイズ成分を除去する処理や、輝度変化を強調させる空間フィルタ処理などが上げられる。また、このような処理とともに、撮影レンズ16aの周辺光量低下を補正するシェーディング補正等を行ってもよい。
【0036】
ゲイン補正回路26は、画像強調回路25からの受光信号にゲイン補正を行い、受光信号が適切な信号レベルとなるように自動的に調節する。ゲイン補正された受光信号は、判定処理部27に送られる。この判定処理部27は、所定のしきい値により受光信号を二値化する二値化回路27aを備えており、二値化された受光信号に基づいて欠陥の有無を判定する。この判定で欠陥を検出すると、判定処理部27は、検査対象フィルム7における欠陥の位置情報を位置メモリ27bに記憶し、またその欠陥を含む1ライン分の受光信号とその前後の数ラインの光電信号を画像メモリ27cに記憶する。欠陥の位置情報は、エンコーダ23からのエンコードパルス信号と、受光信号の欠陥箇所に対応する信号位置とから算出することができる。モニタ28には、位置メモリ27bに記憶された位置情報と画像メモリ27cに記憶された数ライン分の光電信号に基づいて作成された画像が表示される。
【0037】
図3に示すように、受光器16は、その光軸Pと検査対象フィルム7に垂直な基準線(法線)Lnとの間に角度(以下、交差角度という)θ1を持たせ(θ1≠0)、検査対象フィルム7を俯瞰するように配置してある。交差角度θ1を持たせることにより、正常な地合を検出しているときの受光信号レベルに対する欠陥を検出した際の受光信号レベルの比率、すなわち受光信号のS/N比を高くすることができる。このように交差角度θ1を大きくするとS/N比を高くすることができるが、これを大きくしすぎると逆にS/N比が低下するため、「30°≦θ1≦50°」を満たすように設定することが好ましい。
【0038】
また、図4に上方から見た状態を示すように、受光器16は、基準線Lnを回転中心として回転する方向で、その光軸Pと検査対象フィルム7の遅相軸Lmとの間に角度(以下、回転角度という)θ2を持たせてある(θ2≠0)。回転角度θ2を持たせることにより、受光信号のS/N比をより高くしている。回転角度θ2は、それを大きくしすぎると逆にS/N比が低下するため、遅相軸Lmに対して45°回転した方向を中心とした30°程度の角度範囲内とするのが好ましい。すなわち、例えば一方の面側から見て、遅相軸Lmを基準(0°)とし、時計方向を正,反時計方向を負とすれば、回転角度θ2は、「−60≦θ2≦−30°」または「+30≦θ2≦+60°」の条件を満たすようにすることが好ましい。なお、図4では、各偏光板18,19を省略して描いてある。
【0039】
このように交差角度θ1,回転角度θ2で受光器16を配置して、検査を行うことにより、深さが1nm程度の極僅かな厚みムラまでを検出可能としている。なお、遅相軸Lmの方向と回転角度θ2によっては、検査エリア17が検査対象フィルム7の幅方向に傾かず、その長手方向が幅方向と一致することもある。
【0040】
上記構成の作用について説明する。配向膜形成装置4,液晶層形成装置5によって製造された位相差フィルムが検査対象フィルム7として欠陥検査装置10に送り込まれ、検査ステージを通って、さらに下流へと搬送される。検査ステージの搬送中には、光源部15からの光が第1偏光板18を介して検査対象フィルム7に照射され、検査対象フィルム7が一定長送られるごとに各受光器16によって1ライン分の検査エリア17の撮影がそれぞれ行われる。
【0041】
光源部15から照射された光は、第1偏光板18を透過することにより、直線偏光の成分だけとされて検査対象フィルム7に入射する。検査対象フィルム7に入射した直線偏向光は、検査対象フィルム7の光学異方性によって楕円偏光となって射出され、第2偏光板19に入射する。そして、楕円偏光された光の第2偏光板19への入射により、その光成分のうちの第2偏光板19の透過軸方向の直線偏光成分のみが透過して凸レンズ21に入射する。
【0042】
検査エリア17の各位置には、光源部15から第1偏光板18を介して様々な方向から光が入射し、それに応じて反対側の面から様々な方向に光が射出され、その射出方向に応じて検査対象フィルム7の光学異方性が影響する程度が異なり、その光が第2偏光板19に入射する。このため、進行方向が異なると第2偏光板を透過する直線偏光成分の大きさが変化してしまい、受光量ムラの原因となる。しかしながら、凸レンズ21は、撮影レンズ16aとともにテレセントリック光学系を構成しているため、検査対象フィルム7,第2偏光板19を透過した光のうち、撮影レンズ16aの光軸Pと平行な方向に射出される光成分だけを撮影レンズ16aを介してラインセンサ16bに受光させる。このため、ラインセンサ16bによる受光には、検査対象フィルム7の光学異方性に起因した受光量ムラが発生しない
【0043】
上記のように各受光器16での受光が繰り返し行われ、受光量に基づく受光信号が信号処理装置22に送られ、その受光信号の変化等に基づいて検査対象フィルム7の欠陥が判定される。例えば検査対象フィルム7の正常な部分を受光している場合には、その正常な部分を透過する光の楕円偏光成分がほぼ一定であり、第2偏光板19を透過して受光器16に受光される光量も一定となる。これに対して、欠陥部分を光が透過すると、その透過した楕円偏光成分が正常な部分のものとは異なり、受光器16による受光量が異なったものとなり、その変化により欠陥部分が検出される。
【0044】
このように欠陥検出が行われるが、前述のように検査対象フィルム7の光学異方性に起因した受光量ムラがないため、ラインセンサ16bのダイナミックレンジを有効に使って、検査エリア17内において同じ精度で厚みムラ,塗工ムラ,分子配向ムラ等の欠陥を精度良く検出することが可能であり、極僅かな厚み差の厚みムラ,塗工ムラをも検出することができる。
【0045】
図5は、受光量補正手段として連続的に透過率を変化させたフィルタを用いた例を示している。なお、以下に説明する他は、最初の実施形態と同様であり、実質的に同じ構成部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
光源部15と第1偏光板18との間に、フィルタユニット31を配してある。このフィルタユニット31は、図6に示すように各検査エリア17に対応する位置にフィルタ32を設けてあり、光源部15からの光は、このフィルタ32と第1偏光板18を通して検査対象フィルム7に照射される。
【0047】
各フィルタ32は、矢線で示す検査エリア17の長手方向について、一端側から他端側に向けて連続的に光の透過率が減少、すなわち濃度が増大するものとなっており、検査対象フィルム7の光学異方性に起因して受光量が大きくなる側の濃度が高く、受光量が小さい側の濃度が低くなる向きで配してある。また、フィルタ32の濃度の変化率は、受光器16による1ライン分の受光量ムラが解消されてほぼ均一となるように、検査すべき検査対象フィルム7の特性に基づいて決定される。なお、このようなフィルタ32としては、例えば商品名「可変濃度フィルター(エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社製)」を利用することができる。
【0048】
この実施形態によれば、検査対象フィルム7の光学異方性によって受光量が大きくなる検査対象フィルム7の部分ほど、フィルタ32によって光の照射量が減らされるため、結果として検査エリア17内をほぼ均一な受光量で受光することができる。
【0049】
なお、この例のようにフィルタユニット31を光源部15と第1偏光板18との間に配置することが好ましい形態であるが、ラインセンサ16bと光源部15との間のいずれの位置に配することもできる。例えば、フィルタユニット31を第1偏光板18と検査対象フィルム7の間、第2偏光板19と検査対象フィルム7との間、第2偏光板19と撮影レンズ16aとの間に配してよい。また、図7に示すように、ラインセンサ16bの前面に連続的に光の透過率が変化するフィルタ33を設けることも好ましい。フィルタ32,33としては、いわゆるNDフィルタのように照明光の各波長について光量をほぼ均一に減光させるタイプの他、不要な波長域をカットする特性であってもよい。
【0050】
受光量補正手段として、図8に示すような透過光の方向を制御するライトコントロールフィルム35を用いることも有効である。ライトコントロールフィルム35は、微小な間隔で相互に平行に配置した多数の不透明なルーバ36を一対の透明なフィルム37で挟み込んだ構造をしており、一方の面に入射して他方の面から射出される光の照射方向をルーバ36と平行な方向、すなわちライトコントロールフィルム35の面の法線方向に規制するものである。このようなライトコントロールフィルム35としては、例えば住友スリーエム株式会社製のものを用いることができる。
【0051】
ライトコントロールフィルム35は、例えばフィルタユニット31と同様に光源部18と第1偏光板18との間に配置される。また、ライトコントロールフィルム35から射出される光の方向が検査対象フィルム7の法線方向となるように、ライトコントロールフィルム35は検査対象フィルム7と平行に配置される。これによれば、ほぼ一方向の光だけが検査対象フィルム7に入射して透過するので、光学異方性に起因した受光量の変化が生じなくなり、検査エリア17内について均一な受光量を得ることができる。なお、ライトコントロールフィルム35についても、フィルタユニット31と同様に受光器16と光源部15との間のいずれの位置に配してもよいが、この例のように光源部18と第1偏光板18との間に配置するのが好ましい。
【0052】
図9に示すように、受光量補正手段として、光源部15と第1偏光板18との間に傾けた姿勢で配置した散乱板38を用いることもできる。散乱板38は、一方の面から入射する光を散乱させて射出する。この散乱板38は、検査対象フィルム7の光学異方性に起因して、受光量が小さくなる側ほど検査対象フィルム7に近づくように傾けた姿勢で配される。これにより、光学異方性に起因して受光量が小さくなる側ほど大きな光量で検査エリア17を照明し、受光器16による検査エリア17の受光量をほぼ均一とする。なお、光源部15とともに散乱板38を傾けた姿勢で配置することもできる。
【0053】
この図9の例のように散乱板38を用いた場合における受光器16からの受光信号の波形の一例を図10に示す。また、散乱板38等の受光量補正手段を用いずに受光した場合の受光信号の波形を図11に示す。いずれの場合も、撮影距離、すなわち受光器16と検査対象フィルム7の距離は1500mmであり、検査エリア17は250mmであって、受光器16が検査エリア17を望む角度は9.5°としたものである。また、交差角度θ1は、「40°」、回転角θ2は、「−45°」としている。散乱板としては、三菱レイヨン株式会社製アクリライト(商品名)No.422を用い、これを15°の角度で傾けた。
【0054】
散乱板38を用いない場合には受光信号の波形に傾きがあり、また検査エリア17の一方の端部近傍でラインセンサ16bの受光量が過剰となって信号変化が検出できなくなったのに対し、散乱板38を用いた場合には、ほぼフラットな受光信号の波形が得られ、光学異方性に起因した受光量ムラが解消されていることがわかる。また、散乱板38を用いない場合には、検査エリア17のS/N比は、一端が「1.5」、中央が「2.5」、他端が「3.5」であり、S/N比に「2.0」の差が生じたのに対し、拡散板を用いた場合には、検査エリアのいずれの点においてもS/N比が「3.0」となり、欠陥検出に良好な結果を得られるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を実施した欠陥検査装置を示す概略図である。
【図2】受光信号に基づいて欠陥を判定する信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】受光器の交差角度θ1を説明する説明図である。
【図4】受光器の回転角度θ2を説明する説明図である。
【図5】フィルタユニットを配した欠陥検査装置を示す概略図である。
【図6】フィルタユニットのフィルタと検査エリアの関係を示す説明図である。
【図7】フィルタをラインセンサと撮影レンズとの間に配した例を示す説明図である。
【図8】ライトコントフィルムの構成を示す部分断面図である。
【図9】散乱板を配した欠陥検査装置の構成を示す説明図である。
【図10】散乱板を用いたときに得られる受光信号の波形の一例を示すグラフである。
【図11】散乱板を用いないときに得られる受光信号の波形の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
7 検査対象フィルム
10 欠陥検査装置
15 光源部
16 受光器
16a 撮影レンズ
16b ラインセンサ
18,19 偏光板
21 凸レンズ
32 フィルタ
35 ライトコントロールフィルム
38 散乱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象フィルムを透過した光を受光して得られる受光信号に基づいて、検査対象フィルムの欠陥を検出するフィルムの欠陥検査装置において、
検査対象フィルムの一方の面側に配置され、検査対象フィルムに光を照射する光源と、
検査対象フィルムを透過した光を集光する撮影レンズ及び複数の受光素子がライン状に配列され前記撮影レンズによって集光された光を受光し、受光量に応じた受光信号を出力するラインセンサを有し、前記撮影レンズの光軸と検査対象フィルムの面に垂直な基準線との間に交差角度θ1が与えられるとともに、前記基準線を回転中心にした検査対象フィルムの遅相軸から回転角度θ2の位置に配された受光器と、
前記光源と検査対象フィルムとの間に配された第1の偏光板と、
前記受光器と検査対象フィルムとの間に配され、透過軸が前記第1の偏光板の透過軸に対して傾けられた第2の偏光板と、
前記光源と前記受光器との間のいずれかの位置に配され、前記ラインセンサの各受光素子に受光される検査対象フィルムを透過した光の受光量を均一にするように補正する受光量補正手段とを備えたことを特徴とするフィルムの欠陥検査装置。
【請求項2】
前記受光量補正手段は、撮影レンズと検査対象フィルムとの間に配された補正光学系であり、前記撮影レンズとともにテレセントリック光学系を構成することを特徴とする請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮影レンズは、テレセントリック光学系で構成されており、前記撮影レンズが前記受光量補正手段であることを特徴とする請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項4】
前記受光量補正手段は、前記光源と前記第1の偏光板との間に検査対象フィルムに対して傾けて配され、光源からの光を散乱させて検査対象フィルムに照射する散乱板であることを特徴とする請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項5】
前記受光量補正手段は、ライトコントロールフィルムであることを特徴とする請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項6】
前記受光量補正手段は、ラインセンサの受光素子の配列方向に沿って連続的に透過率が変化するフィルタであることを特徴とする請求項1記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項7】
前記フィルタは、前記ラインセンサと前記撮影レンズとの間に配されていることを特徴とする請求項6記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項8】
前記受光量補正手段は、前記光源と第1の偏光板との間に配されていることを特徴とする請求項5または6に記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項9】
交差角度θ1は、「30°≦θ1≦50°」の条件を満たし、回転角度θ2は、「−60≦θ2≦−30°」または「+30≦θ2≦+60°」の条件を満たすことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の偏光板は、それぞれ検査対象フィルムと略平行に配されていること特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項11】
検査対象フィルムを連続的に搬送する搬送手段を備え、前記受光器は、検査対象フィルムが一定長搬送されるごとに受光を行うことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のフィルムの欠陥検査装置。
【請求項12】
光源からの光を第1の偏光板を介して検査対象フィルムに照射し、この検査対象フィルムを透過した光を、透過軸が第1の偏光板の透過軸に対して傾けられた第2の偏光板を介してラインセンサで受光し、この受光で得られる受光信号に基づいて、検査対象フィルムの欠陥を検出するフィルムの欠陥検査方法において、
前記検査対象フィルムの面に垂直な基準線に対して傾けられ、基準線を中心にして検査対象フィルムの遅相軸から回転させた位置で前記ラインセンサによる受光を行うとともに、前記光源と前記受光器との間のいずれかの位置に配した受光量補正手段によって前記ラインセンサの各受光素子に受光される検査対象フィルムを透過した光の受光量を均一となるように補正することを特徴とするフィルムの欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−298566(P2008−298566A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144558(P2007−144558)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】