説明

フィルムの歩留まり予測システム及び方法

【課題】光学フィルムの製造時、発生する欠陥を検出し、それにより製品の予想歩留まりを算出するためのフィルムの歩留まり予測システム及び方法を提供する。
【解決手段】歩留まり予測システムは、光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第1の欠陥データを生成する第1の検査部と、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第2の欠陥データを生成する第2の検査部と、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合するデータ併合部と、前記データ併合部で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する歩留まり予測部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造時、発生する欠陥を検出し、それにより製品の予想歩留まりを算出するためのフィルムの歩留まり予測システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムとは、液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display)の製造に用いられるフィルムであって、偏光フィルム、拡散フィルム、反射フィルム、プリズムフィルムなどを包括的に称する用語である。このような光学フィルムは、一般的にロール(roll)に巻取された形態で製造され、その後、ロールに巻取されたフィルムをユーザの所望のサイズで切削して供給する。この時、フィルム上に欠陥が発生した場合、該当部分は検収過程で廃棄され、このような欠陥の個数及び発生位置は、光学フィルムの歩留まりを決める重要な要因となる。
【0003】
このような光学製品の欠陥を確認するため、一般的に光学フィルムを製造する業界においては、インライン自動光学検査システムを利用している。インライン自動光学検査機は、欠陥発生位置にインクまたはバーコード等でマーキングを施すことで、後工程においてマーキングされた箇所を廃棄するか、またはそれに対して追加の検査を遂行することができるようにする。
【0004】
しかしながら、従来のインライン自動光学検査システムのような設備等は、欠陥の存在及びその位置のみを判別するだけであり、偏光フィルムの歩留まりを予測することは不可能であった。これにより、光学フィルム原反の製品化の前に製品のサイズまたは切削の位置による歩留まりを予測するためのシステムが必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光学フィルムの製造時、発生する欠陥を検出し、それにより製品の予想歩留まりを算出するためのフィルムの歩留まり予測システム及び方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第1の欠陥データを生成する第1の検査部と、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第2の欠陥データを生成する第2の検査部と、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合するデータ併合部と、前記データ併合部で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する歩留まり予測部とを備える、光学フィルムの歩留まり予測システム。
【0007】
2.上記1において、前記第1の検査部及び前記第2の検査部は、前記光学フィルムの上面から前記光学フィルムのイメージを撮影し、撮影された前記イメージから前記欠陥データを生成する、歩留まり予測システム。
【0008】
3.上記1において、前記データ併合部は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標を比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出し、算出された前記補正座標によりその位置が補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除いた残りの第1の欠陥データを、前記第2の欠陥データと結合することで、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する、歩留まり予測システム。
【0009】
4.上記3において、前記データ併合部は、前記第1の欠陥データに含まれる欠陥及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、重複される欠陥の数が最大になるように前記第1の欠陥データの補正座標を算出する、歩留まり予測システム。
【0010】
5.上記1において、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データから継目欠陥を排除する継目欠陥排除部を更に備える、歩留まり予測システム。
【0011】
6.上記5において、前記継目欠陥排除部は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識された場合、該当の欠陥を継目欠陥として認識して排除する、歩留まり予測システム。
【0012】
7.上記1において、前記歩留まり予測部は、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削されたフィルムのサイズ別に切削された、それぞれのフィルムの欠陥の存在有無を判断し、切削されたフィルムの個数及び切削されたフィルムのうち、欠陥が存在するフィルムの個数から、前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する、歩留まり予測システム。
【0013】
8.上記1において、前記光学フィルムの製造工程中の特定段階は、前記光学フィルムに粘着剤または接着剤を塗工する前の段階であり、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階は、前記光学フィルムに前記粘着剤または接着剤を塗工した後の段階である、歩留まり予測システム。
【0014】
9.上記1において、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データは、それぞれ独立的に検出された欠陥の明るさ及びサイズを更に含む、歩留まり予測システム。
【0015】
10.光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第1の欠陥データを生成する段階と、
前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第2の欠陥データを生成する段階と、
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する段階と、
前記併合段階で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する段階と
を含む、光学フィルムの歩留まり予測方法。
【0016】
11.上記10において、前記第1の欠陥データの生成段階及び前記第2の欠陥データの生成段階は、前記光学フィルムの上面から前記光学フィルムのイメージを撮影し、撮影された前記イメージから前記欠陥データを生成する、歩留まり予測方法。
【0017】
12.上記10において、前記併合段階は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標を比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出する段階と、算出された前記補正座標により前記第1の欠陥データの位置を補正する段階と、位置補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除いた残りの第1の欠陥データを、前記第2の欠陥データと結合する段階とを含む、歩留まり予測方法。
【0018】
13.上記12において、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データは、それぞれ独立的に検出された欠陥の明るさ及びサイズを更に含む、歩留まり予測方法。
【0019】
14.上記13において、前記第1の欠陥データの補正座標の算出段階は、
前記第1の欠陥データから既設定された値以上の明るさ及びサイズを有する欠陥を代表欠陥として選択する第1の段階と、
前記代表欠陥のうち一の欠陥を選択する第2の段階と、
前記第2の段階で選択された欠陥と同一の明るさ及びサイズを有する欠陥を、前記第2の欠陥データから選択する第3の段階と、
前記第2の段階で選択された欠陥及び前記第3の段階で選択された欠陥の位置の差値を算出し、算出された位置の差値だけ前記代表欠陥の位置を補正する第4の段階と、
前記第4の段階で補正された前記代表欠陥のうち、前記第2の欠陥データと重複される欠陥の個数を計算する第5の段階と、
前記第1の段階で選択された代表欠陥それぞれに対し、前記第2の段階ないし第5の段階を繰り返し遂行し、前記第5の段階で重複される欠陥の個数が一番多い代表欠陥の位置の差値を、前記補正座標に選定する第6の段階と
を含む、歩留まり予測方法。
【0020】
15.上記10において、前記併合段階の遂行前、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データから継目欠陥を排除する段階を更に含む、歩留まり予測方法。
【0021】
16.上記15において、前記継目欠陥排除段階は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識される場合、該当の欠陥を継目欠陥に認識して排除する、歩留まり予測方法。
【0022】
17.上記10において、前記光学フィルムの製造工程中の特定段階は、前記光学フィルムに粘着剤または接着剤を塗工する前の段階であり、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階は、前記光学フィルムに前記粘着剤または接着剤を塗工した後の段階である、歩留まり予測方法。
【0023】
18.上記10ないし17のいずれか一項に記載の方法をコンピュータ上で遂行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原反形態で製造された光学フィルムの後工程を遂行する前に、光学フィルムの切削の位置及びサイズによる予想歩留まりを正確に判断することができる。また、これにより最適の切削の位置及びサイズで光学フィルムを切削してシート型フィルムを製造することができるため、光学フィルムの製造単価を削減することができるといった長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による光学フィルムの積層構造を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による光学フィルムの歩留まり予測システムを説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による継目欠陥排除部での継目欠陥を排除する過程を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態によるデータ併合部での補正座標の算出方法を示すフローチャートである。
【図5】第1の欠陥データ、第2の欠陥データ、及びデータ併合部で併合されたデータを例示する図である。
【図6A】歩留まり予測部での切削の位置による歩留まり予測シミュレーションを説明するための図である。
【図6B】歩留まり予測部での切削の位置による歩留まり予測シミュレーションを説明するための図である。
【図6C】歩留まり予測部での切削の位置による歩留まり予測シミュレーションを説明するための図である。
【図7A】歩留まり予測部での切削のサイズによる歩留まり予測シミュレーションを説明するための図である。
【図7B】歩留まり予測部での切削のサイズによる歩留まり予測シミュレーションを説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態による歩留まり予測システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかしながら、これは単なる例示に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0027】
本発明を説明するにあたり、本発明に係る公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を逸脱し得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして後述する用語等は、本発明での機能を考慮して定義する用語であって、これはユーザ、運用者の意図または慣例などによって変わり得る。このため、本明細書全般にわたった内容に基づいて定義されるべきである。
【0028】
本発明の技術的思想は、特許請求の範囲により決まり、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に具体的に説明するための一手段に過ぎない。
【0029】
本発明の実施形態等を説明する前に、先ず、一般的な光学フィルムの構造及び製造工程を簡単に説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による光学フィルムの積層構造を示す図である。図1に示すように、本発明の一実施形態による光学フィルムは、偏光子、前記偏光子の両面に積層される偏光子保護層、上側偏光子保護層の上面に積層されるセパレータ及び下側偏光子保護層の下面に積層される保護フィルムを含む。
【0031】
このような積層構造を有する光学フィルムの製造工程を説明すれば、以下のとおりである。先ず、染色、架橋及び延伸処理を施したポリビニルアルコール(PVA)フィルムを乾燥させて偏光子を得る。次に、前記製造した偏光子の両面に接着剤を使用し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを付着して偏光板を製造する。その後、製造した偏光板の一面に粘着剤を使用してセパレータ(SP Film)を付着し、反対面には保護フィルム(PF Film)を付着する。
【0032】
このように、光学フィルムを製造するための各光学フィルム部材等、すなわち、PVAフィルム、TACフィルム、セパレータ、保護フィルムなどは、ベルト状のシート状製品であって、ロール(roll)に巻取されて各工程に提供され、製造された光学フィルムもロールに巻取されて後工程に提供される。
【0033】
その後、後工程においては、ロ−ル状で巻取された前記光学シートを引き出して所定サイズのシート状製品に切削し、切削されたシートのうち、欠陥が発生したシートを除いて出荷するようになる。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態による光学フィルムの歩留まり予測システム200を説明するためのブロック図である。本発明の一実施形態による歩留まり予測システム200は、上述の光学フィルムの製造工程において、製造中の光学フィルムの欠陥(または欠点)を検出し、検出された欠陥の位置情報を利用して後工程を遂行する前に製造された光学フィルムの切削の位置及びサイズによる予想歩留まりを算出することで、一番高い歩留まりを得ることのできる切削の位置及びサイズを算出することのできるように、構成されているものである。
【0035】
図2に示すように、本発明の一実施形態による歩留まり予測システム200は、第1の検査部202、第2の検査部204、継目欠陥排除部206、データ併合部208及び歩留まり予測部210を備える。
【0036】
第1の検査部202及び第2の検査部204は、製造中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置、明るさ及びサイズの情報を含む欠陥データを生成する。区別のため、第1の検査部202から生成される欠陥データを第1の欠陥データと称し、第2の検査部204から生成される欠陥データを第2の欠陥データと称する。
【0037】
第1の検査部202及び第2の検査部204は、それぞれ光学フィルムの製造工程中、それぞれ互いに異なる段階に位置するように配置することができる。例えば、図1に示す実施形態のように、第1の検査部202は、TACフィルムを接着後、セパレータ/保護フィルムの粘着のため、粘着剤を塗工する前の光学フィルムから欠陥データを収集することができ(未塗工検査機)、第2の検査部204は、粘着剤の塗工後の光学フィルムから欠陥データを収集することができる(塗工検査機)。但し、これは例示的なものであり、第1の検査部202及び第2の検査部204は、光学フィルムの製造工程中、発生する光学フィルムの欠陥を識別するのに適した位置であれば、工程中、どこでも存在し得ることに留意する。
【0038】
このように、第1の検査部202及び第2の検査部204を、互いに異なる工程段階に位置するように構成する理由は、光学フィルムに存在する欠陥の認識率を向上させるためである。例えば、セパレータ及び保護フィルムの粘着前には容易に認識可能な欠陥が、セパレータ及び保護フィルムの粘着後にはうまく認識されないこともあり、反対に、セパレータ及び保護フィルムの粘着工程で新たに発生する欠陥も更に存在し得る。よって第1の検査部202及び第2の検査部204のうち一のみを具備する場合には、光学フィルムに存在する欠陥を検出する確率が相対的に低下するようになる。これにより、本発明においては、第1の検査部202及び第2の検査部204を利用し、各製造工程別に独立的に光学フィルム上の欠陥を認識し、後述するデータ併合部208で独立的に認識される欠陥を併合することで、光学フィルムに存在する欠陥を漏れ無く認識するように構成している。
【0039】
第1の検査部202及び第2の検査部204は、前記光学フィルムの上面に配置される複数個のカメラモジュールを備えることができ、前記カメラモジュールを使用して光学フィルムを撮影し、撮影されたイメージからフィルム上の欠陥を検出するように構成されることができる。また、このため、光学フィルムを基準として前記カメラモジュールが位置する面の反対面に、光源202a、204aを具備することができ、カメラモジュールは、前記光源202a、204aから放出され前記光学フィルムを透過する光を撮影するように構成されることができる。この場合、光学フィルムに欠陥が存在する場合、該当部分は光の透過度が低くなるため、容易に光学フィルム上の欠陥を識別することができる。
【0040】
継目欠陥排除部206は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データから継目欠陥を排除する。光学フィルムの生産工程中、TACフィルム、セパレータ、保護フィルムのうちいずれかのフィルムが消尽される場合には、既存フィルムの終わり部分及び新たに供給されるフィルムの始まり部分を、互いに貼り付ける作業を進行するようになる。この場合、各フィルムの継目部分は、第1の検査部202及び第2の検査部204で欠陥に認識され、具体的には、図3の左側図面に示すように、光学フィルムの長手方向(図面でZ方向)と垂直する方向に連続して欠陥が発生するものであると認識される(図面でAと示す部分)。
【0041】
このように、継目欠陥が発生する場合、後述するデータ併合部208で第1の欠陥データ及び第2の欠陥データを併合する際にエラーが発生する可能性が非常に高くなる。データ併合部208は、第1の欠陥データ及び第2の欠陥データに共通して示す欠陥の座標を利用してデータ併合を遂行するが、継目欠陥が発生する場合、互いに異なる継目部分を同一領域として誤って判断し得るためである。このため、継目欠陥排除部206は、第1の欠陥データ及び第2の欠陥データで継目欠陥を排除することで、データ併合部208で併合エラーが発生する可能性を防止する。具体的には、継目欠陥排除部206は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向(Z方向)と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識される場合、該当の欠陥を継目欠陥に認識して排除するように構成される。図3は、このような継目欠陥排除部206における継目欠陥排除過程を説明するための図であって、左側には継目欠陥(A部分)が排除される前、右側には継目欠陥が排除された後を、それぞれ示すものである。また、前記第1の欠陥データ及び第2の欠陥データに継目部分がない場合、継目欠陥排除部206は省略することができる。
【0042】
データ併合部208は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する。光学フィルムに発生する欠陥は、第1の欠陥データのみに記録される欠陥と、第2の欠陥データのみに記録される欠陥と、第1の欠陥データ及び第2の欠陥データに共通して記録される欠陥とに区分することができる。データ併合部208は、前記第1の欠陥データ及び第2の欠陥データに記録されるデータから重複するデータを排除し、二のデータを一に統合することで、光学フィルムから認識されるすべての欠陥データが含まれる、一の欠陥データが生成される。
【0043】
具体的には、データ併合部208は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標を比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出し、算出された前記補正座標によりその位置が補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除いた残りの第1の欠陥データを、前記第2の欠陥データと結合することで、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データが併合される。すなわち、同一の欠陥であっても、第1の検査部202、第2の検査部204及び光学フィルムの相対的な位置により、第1の検査部202及び第2の検査部204で互いに異なる位置に存在する欠陥を判断し得る。それ故に、データ併合部208は、第1の欠陥データ及び第2の欠陥データに共通して記録される欠陥の位置の差を利用して補正座標を算出し、これにより、第1の欠陥データの位置座標を補正することで、同一の欠陥が第1の欠陥データ及び第2の欠陥データ上で同一の位置に存在するようにする。前記実施形態においては、第1の欠陥データの位置を補正するものであると記載しているが、これは例示的なものであり、反対に、第2の欠陥データの位置を補正して第1の欠陥データに一致させることも可能であるのは明白である。
【0044】
以下では、前記補正座標を算出する方法を説明する。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態によるデータ併合部208での補正座標の算出方法400を示すフローチャートである。本発明において、補正座標は、前記第1の欠陥データに含まれる欠陥及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、重複される欠陥の数が最大になるように算出される。
【0046】
先ず、第1の欠陥データ(または第2の欠陥データ)から所定個数の代表欠陥を選択する(402)。この時、前記代表欠陥は、前記第1の欠陥データ(第2の欠陥データ)に記録される欠陥のうち、既設定された値以上の明るさ及びサイズを有する欠陥であり得る。このような欠陥等は、相対的に認識が容易であることから、第1の欠陥データ及び第2の欠陥データすべてに含まれている可能性が高い。
【0047】
次に、前記選択された代表欠陥のうち、一の欠陥を選択し(404)、選択された欠陥に対応する欠陥、すなわち、選択された欠陥と同一の明るさ及びサイズを有する欠陥を、前記第2の欠陥データ(第1の欠陥データ)から選択する(406)。この時、選択された欠陥と「同一の」明るさ及びサイズを有する欠陥とは、選択された欠陥と完全に同一の明るさ及びサイズを有する欠陥のみならず、所定誤差の範囲内に存在する欠陥を含む。すなわち、同一の欠陥であっても、機器の誤差などによりそのサイズまたは明るさを相異に認識し得ることから、このような点に鑑みて対応する欠陥を選択する。
【0048】
次に、前記404段階で選択された欠陥及び前記406段階で選択された欠陥の位置の差値を算出し(408)、算出された位置の差値だけ前記代表欠陥に含まれる欠陥等の位置を補正した後(410)、前記410段階で補正された前記代表欠陥のうち、前記第2の欠陥データ(第1の欠陥データ)と重複する欠陥の個数を算出する(412)。
【0049】
その後、前記402段階で選択された代表欠陥それぞれに対し、前記404ないし412段階を繰り返し遂行し、前記第2の欠陥データ(第1の欠陥データ)と重複する欠陥の個数が一番多い代表欠陥の位置の差値を、前記補正座標に選定する(416)。
【0050】
図5は、第1の欠陥データ、第2の欠陥データ、及びデータ併合部208で併合されたデータを例示するものである。
【0051】
歩留まり予測部210は、データ併合部208で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する。
【0052】
具体的には、歩留まり予測部210は、既設定された切削の位置及び切削のサイズにより光学フィルムの切削シミュレーションを遂行し、前記併合された欠陥データに含まれる欠陥が切削されたフィルムのうち、どのフィルムに含まれるかの有無を算出する。
【0053】
図6は、歩留まり予測部210での切削の位置による歩留まり予測シミュレーションを説明するための図面であって、図6Aは、フィルムの進行方向を基準として左方向に傾斜してフィルムを四角形のシート形態で切断する場合、図6Bは、フィルムの中央を基準として切断する場合、図6Cは、右方向に傾斜してフィルムを切断する場合の例をそれぞれ示す。図面において点で示す部分は、フィルムの欠陥を示すものである。
【0054】
図から分かるように、図6Aの場合、18個のシートのうち欠陥が存在するシートは 8個であり、図6Bの場合には9個であり、図6Cの場合には6個である。これにより、それぞれの歩留まりを算出すると、図6Aの場合、10/18=55%、図6Bの場合、9/18=50%、図6Cの場合、12/18=66%である。よって図6のような形態で欠陥が分布されている場合には、図6Cのように、フィルムを切断する方が歩留まり面で有利であることが分かる。
【0055】
図7は、歩留まり予測部210での切削のサイズによる歩留まり予測シミュレーションを説明するための図面であって、図7Aは小さいサイズで、図7Bは大きいサイズでフィルムを切断した例を示す。図6と同一の方式で、各場合の歩留まりを予測すると、図7Aの場合、9/18=50%、図7Bの場合、4/10=40%となる。よってこの場合には、図7Aのようなサイズで切削する方が歩留まり面で有利であることが分かる。
【0056】
歩留まり予測部210は、このように既設定されたフィルムの切削の位置及び切削のサイズによる歩留まり予測シミュレーションを遂行し、各場合の算出された予想歩留まりがユーザに表示される。そしてユーザは、算出された予想歩留まりを確認して一番高い歩留まりを得ることのできる切削の位置及びサイズを選択し、後工程を遂行するようになる。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態による歩留まり予測方法(800)を示すフローチャートである。
【0058】
先ず、光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置、明るさ及びサイズを含む第1の欠陥データを生成する(802)。
【0059】
次に、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置、明るさ及びサイズを含む第2の欠陥データを生成する(804)。
【0060】
上述のように、前記802段階及び804段階は、前記光学フィルムの上面から前記光学フィルムのイメージを撮影し、撮影された前記イメージから前記欠陥データを生成することができる。
【0061】
次に、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに継目欠陥が存在する場合、継目欠陥を排除し(806)、継目欠陥が排除された前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する(808)。
【0062】
この時、前記806段階は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識される場合、該当の欠陥を継目欠陥に認識して排除することができる。
【0063】
また、前記808段階は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標と比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出し、算出された前記補正座標により前記第1の欠陥データの位置を補正した後、位置補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除く、前記第1の欠陥データを前記第2の欠陥データと結合するように構成されることができる。
【0064】
その後、併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する(810)。
【0065】
一方、本発明の実施形態は、本明細書で記述している方法等をコンピュータ上で遂行するためのプログラムを含む、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含むことができる。前記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、プログラム命令、ローカルデータファイル、ローカルデータ構造などを単独または組み合わせて含むことができる。前記媒体は、本発明のために特別に設計され構成されたものであり得るか、或いはコンピュータソフトウェア分野において通常の知識を有する者に公知されて使用可能なものでもあり得る。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープといった磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、フロッピーディスクのような磁気−光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリといったプログラム命令を格納して遂行するように、特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラム命令の例としては、コンパイラにより生成された機械語コードのみならず、インタプリタなどを用いてコンピュータにより実行されることのできる高級言語コードを含むことができる。
【0066】
以上、代表的な実施形態により本発明について詳細に説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、上述した実施形態に対して本発明の範疇から逸脱しない範囲内で様々な変形が可能であることを理解する。
【0067】
したがって、本発明の権利範囲は説明した実施形態に限定して定めてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定められなければならない。
【符号の説明】
【0068】
100: 歩留まり予測システム
102: 第1の検査部
104: 第2の検査部
106: 継目欠陥排除部
108: データ併合部
110: 歩留まり予測部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第1の欠陥データを生成する第1の検査部と、
前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第2の欠陥データを生成する第2の検査部と、
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合するデータ併合部と、
前記データ併合部で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する歩留まり予測部と
を備える、光学フィルムの歩留まり予測システム。
【請求項2】
前記第1の検査部及び前記第2の検査部は、前記光学フィルムの上面から前記光学フィルムのイメージを撮影し、撮影された前記イメージから前記欠陥データを生成する、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項3】
前記データ併合部は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標を比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出し、算出された前記補正座標によりその位置が補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除いた残りの第1の欠陥データを、前記第2の欠陥データと結合することで、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項4】
前記データ併合部は、前記第1の欠陥データに含まれる欠陥及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、重複される欠陥の数が最大になるように前記第1の欠陥データの補正座標を算出する、請求項3に記載の歩留まり予測システム。
【請求項5】
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データから継目欠陥を排除する継目欠陥排除部を更に備える、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項6】
前記継目欠陥排除部は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識された場合、該当の欠陥を継目欠陥として認識して排除する、請求項5に記載の歩留まり予測システム。
【請求項7】
前記歩留まり予測部は、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削されたフィルムのサイズ別に切削された、それぞれのフィルムの欠陥の存在有無を判断し、切削されたフィルムの個数及び切削されたフィルムのうち、欠陥が存在するフィルムの個数から、前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項8】
前記光学フィルムの製造工程中の特定段階は、前記光学フィルムに粘着剤または接着剤を塗工する前の段階であり、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階は、前記光学フィルムに前記粘着剤または接着剤を塗工した後の段階である、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項9】
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データは、それぞれ独立的に検出された欠陥の明るさ及びサイズを更に含む、請求項1に記載の歩留まり予測システム。
【請求項10】
光学フィルムの製造工程中、特定段階を遂行中の光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第1の欠陥データを生成する段階と、
前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階を遂行中の前記光学フィルム上の欠陥を検出し、検出された欠陥の位置を含む第2の欠陥データを生成する段階と、
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データを併合する段階と、
前記併合段階で併合された欠陥データにより、前記光学フィルムの予想切削の位置及び切削のサイズによる前記光学フィルムの予想歩留まりを算出する段階と
を含む光学フィルムの歩留まり予測方法。
【請求項11】
前記第1の欠陥データの生成段階及び前記第2の欠陥データの生成段階は、前記光学フィルムの上面から前記光学フィルムのイメージを撮影し、撮影された前記イメージから前記欠陥データを生成する、請求項10に記載の歩留まり予測方法。
【請求項12】
前記併合段階は、
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データの位置座標を比較して前記第1の欠陥データの補正座標を算出する段階と、
算出された前記補正座標により前記第1の欠陥データの位置を補正する段階と、
位置補正された前記第1の欠陥データのうち、前記第2の欠陥データと同一位置に存在する欠陥を除いた残りの第1の欠陥データを、前記第2の欠陥データと結合する段階と
を含む、請求項10に記載の歩留まり予測方法。
【請求項13】
前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データは、それぞれ独立的に検出された欠陥の明るさ及びサイズを更に含む、請求項12に記載の歩留まり予測方法。
【請求項14】
前記第1の欠陥データの補正座標の算出段階は、
前記第1の欠陥データから既設定された値以上の明るさ及びサイズを有する欠陥を代表欠陥として選択する第1の段階と、
前記代表欠陥のうち一の欠陥を選択する第2の段階と、
前記第2の段階で選択された欠陥と同一の明るさ及びサイズを有する欠陥を、前記第2の欠陥データから選択する第3の段階と、
前記第2の段階で選択された欠陥及び前記第3の段階で選択された欠陥の位置の差値を算出し、算出された位置の差値だけ前記代表欠陥の位置を補正する第4の段階と、
前記第4の段階で補正された前記代表欠陥のうち、前記第2の欠陥データと重複される欠陥の個数を算出する第5の段階と、
前記第1の段階で選択された代表欠陥それぞれに対し、前記第2の段階ないし第5の段階を繰り返し遂行し、前記第5の段階で重複される欠陥の個数が一番多い代表欠陥の位置の差値を、前記補正座標に選定する第6の段階と
を含む、請求項13に記載の歩留まり予測方法。
【請求項15】
前記併合段階の遂行前、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データから継目欠陥を排除する段階を更に含む、請求項10に記載の歩留まり予測方法。
【請求項16】
前記継目欠陥排除段階は、前記第1の欠陥データ及び前記第2の欠陥データに含まれる欠陥のうち、前記光学フィルムの長手方向と垂直する方向に既設定された個数以上の欠陥が認識される場合、該当の欠陥を継目欠陥に認識して排除する、請求項15に記載の歩留まり予測方法。
【請求項17】
前記光学フィルムの製造工程中の特定段階は、前記光学フィルムに粘着剤または接着剤を塗工する前の段階であり、前記特定段階と区別される前記製造工程中の他の段階は、前記光学フィルムに前記粘着剤または接着剤を塗工した後の段階である、請求項10に記載の歩留まり予測方法。
【請求項18】
請求項10ないし17のいずれか一項に記載の方法をコンピュータ上で遂行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2013−24868(P2013−24868A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154814(P2012−154814)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(503454506)東友ファインケム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】