説明

フィルムプローブ及びその製造方法

【課題】 特に狭小なピッチの半導体や表示装置の検査に好適な、検査を行う際の押圧力やクリーニングのための払拭等の外力による脱落や破損が生じにくいフィルムプローブ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 接触子2の鍔部21が接触子上部側の鍔上層部21bと鍔下層部21aからなり、かつ、鍔上層部21bの径Bは鍔下層部21aの径Aより小さく構成されている。そして、鍔部21は絶縁樹脂層1に埋設されている。
【図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭小なピッチの端子を有する半導体や表示装置等の検査に用いるのに好適なフィルムプローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように、半導体等の検査に際し、半導体等(被検査体側)と検査装置側とを導通させる為の手段として、二ードル型プローブもしくはL字ピン型プローブが使用されている。これらのプローブは、ニードルもしくはピンを精度良く組み立てなければならなく、高度な熟練度と多大な作業工数を必要とする。その為、被検査体の端子ピッチが、およそ100μm以下の狭小ピッチである場合や、同時に検査すべき端子数が数百以上といったように多い場合においては非常に高価になり、更に、数十μm以下の狭小ピッチの場合においては、それの製造が非常に難しいといった欠点を有している。
【0003】
そこで、それらに代えて、可撓性の絶縁樹脂層に接触子を設けた一般にフィルムプローブと呼ばれているものが既に提案されており、かかるフィルムプローブの製造方法の一例が下記引用文献1に記載されている。この公知の製造方法は、可撓性の絶縁樹脂層の一面に導電性金属層を積層した積層基材を用意し、該導電性金属層を配線回路および/もしくはランドにパターン加工する。次いで、該絶縁樹脂層、配線回路および/もしくはランドの必要箇所に保護絶縁樹脂層を積層し、次いで、保護絶縁樹脂層に開孔を形成した後、配線回路を陰極として開孔内に導電性金属をめっき形成し、よって、めっき形成された導電性金属が保護絶縁樹脂層の一面に達して等方的に拡がって半球状の接触子を形成することができるものである。
【0004】
なお、保護絶縁樹脂層に開孔を設けることに代えて、絶縁樹脂層に開孔を設け、該開孔内に導電性金属をめっき成長させて絶縁樹脂層表面に接触子を形成することもできるが、この方法によれば、フォトリソグラフィ技術やレーザー加工技術を利用することができて接触子のピッチが100μm以下といった狭小であっても、また、数百又は数千を超える接触子数であっても、容易に、かつ比較的精度良く製造することができる。しかし、この方法で製造したフィルムプローブは、接触子の形状が半球状である為に、接触子のピッチが小さくなると絶縁樹脂層表面からの接触子高さも小さくなるという欠点を有している。
【0005】
一般に、半導体の端子部周辺には、端子を残して保護層(パッシベーション)が形成されるが、この保護層と接触子とが干渉することを避けるために、接触子高さは10μm以上、望ましくは20μm以上の高さにする必要がある。ところが、上述の方法によると、接触子が、絶縁樹脂層表面上で高さ方向のみならず横方向にも成長形成されるため、接触子の高さを大きくすると、接触子の径も大きくなるため、およそ100μm以下の狭小ピッチの場合においては、隣接する接触子が短絡し易くなって、十分な高さの接触子を得ることが困難となるといった問題があった。また、接触子の高さは、メッキ成長速度に左右されるから、かかる速度を一定に制御しなければならないが、実際上、メッキ槽内の場所による電流密度のムラ等によってメッキ速度のムラが避けられない為に接触子高さのムラが生じ易いといった問題もあった。
【0006】
更に、上述の方法によって得られるフィルムプローブは、狭小ピッチの場合においては、接触子と絶縁樹脂層との接合面積も小さくなるため、その構成、形状によっては繰り返し使用時等において破損、脱落しやすいという欠点も有しており、これでは、エレクトロニクス製品の小型、軽量化及び高機能化に追従して半導体の小型化、高集積化や表示装置の高精細化が進み、それに伴って、それらの端子ピッチの狭小化や端子数増加が進んでいる現状に対応できない。
【0007】
【特許文献1】特開平7−240443号公報(段落0035〜0038の記載参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の欠点に鑑みて発明されたものであって、その目的は、狭小なピッチで多数の端子をもつ半導体や表示装置等の検査に用いるのに好適なフィルムプローブ及びそのようなフィルムプローブを容易に得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係るフィルムプローブにおいては、接触子の鍔部を絶縁樹脂層に埋設し、該鍔部を、接触子頂部側の鍔上層部と接触子底部側の鍔下層部とで構成すると共に該鍔上層部の径もしくは幅を、該鍔下層部のそれよりも小さく設けている。その為、接触子同士間のピッチが狭小であっても、接触子が絶縁樹脂層に十分に強く保持されているので、脱落や破損が発生し難い。
【0010】
また、本発明に係るフィルムプローブの製造方法においては、第1絶縁樹脂層の一方の面に第1導電性金属層を積層すると共に他方の面に第2導電性金属層を積層した積層基材を用い、それの該第1導電性金属層及び該第1絶縁樹脂層に接触子形成用開孔を設け、次いで、該接触子形成用開孔に連通された鍔下層部形成用開孔を有するレジスト層を該第1導電性金属層上に形成し、次いで、該接触子形成用開孔と該鍔上層部形成用開孔内に、該第2導電性金属層を陰極として導電性金属体をめっき形成して該接触子の本体部と該鍔下層部とを一体に形成し、次いで、該レジスト層を除去後、該鍔下層部をマスクとして該第1導電性金属層をエッチング処理して該鍔下層部の径もしくは幅より小さい径もしくは幅の該鍔上層部を形成し、次いで、該鍔部が形成された該第1絶縁樹脂層上に第2絶縁樹脂層を積層し、そして、その後、エッチング処理により該第2導電性金属層及び該第1絶縁樹脂層を除去する。
【0011】
その為、接触子同士間のピッチが狭小であっても、接触子が第2絶縁樹脂層に十分に強く保持されて脱落や破損が発生し難い上述のフィルムプローブを容易に得ることができるが、その際、接触子の高さが、絶縁樹脂層の厚さによって規制されるために高さムラを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明によると、狭小なピッチで多数の端子をもつ半導体や表示装置等の検査に用いるのに好適なフィルムプローブ及びそのようなフィルムプローブを容易に得ることができる製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るフィルムプローブは、その一例の縦断面図である図1に示す如く、接触子2の鍔部21を可撓性の薄い絶縁樹脂層1に埋設しており、該鍔部21は、接触子頂部側の鍔上層部21bと接触子底部側の鍔下層部21aとで構成され、かつ、鍔上層部21bの径もしくは幅(B)が、鍔下層部21aの径もしくは幅(A)より小さく設けられている。また、鍔部21に配線回路5が接続、すなわち、配線回路5は、接触子頂部側の上層配線回路部5bと接触子底部側の下層配線回路部5aとを積層して形成され、そして、上層配線回路部5bを鍔上層部21bに接続していると共に下層配線回路部5aを鍔下層部21aに接続している。なお、図示されていないが、接触子2は、絶縁樹脂層1に狭小ピッチで多数固着されている。
【0014】
上述の絶縁樹脂層1としては、繊維強化エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又は液晶ポリエステル樹脂等が好適に用いられるが、それに限定はされず他の樹脂であってもよい。繊維強化エポキシ樹脂にあっては、ガラス繊維やアラミド繊維で強化されたものが好ましいが、接触子2の形成ピッチが狭小な場合(例えば、100μm以下の場合)においては、アラミド繊維で強化されたエポキシ樹脂の方がより好ましい。なお、図示の如く、接触子2の鍔上層部21bは、本体部21cと外層部21dとで形成されているが、両部は共に導電性材料で構成されている。しかし、例えば、本体部21cはニッケルであるのに対して外層部21dは銅であるといったように、その材質が異なっている。これは、一方の材のエッチングに際して他方の材がエッチングされないようにすることが必要とされる後述の方法によって製造された為である。従って、そのようなことを必要としない他の方法によって製造することができる場合においては、必ずしも材質は異なっていなくてもよく、同質であってもよい。
【0015】
接触子2の材質は、一般には、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金等であるが、それに限定されず他の導電性材料であってもよい。硬度を高めるためのロジウムやパラジウム等を、また、耐食性を高めるための金、スズ等を、その表面に積層してもよい。また、接触子2の縦断面形状および接触子頂部側(図1において下側)から見た平面形状は、円形、楕円形又は矩形等のいずれであってもよい。鍔部21の該平面形状が、楕円もしくは矩形である場合には、少なくともその長径もしくは長辺が接触子2のその部位の径もしくは幅より大きい鍔部を形成していればよく、短径もしくは短辺は必ずしも接触子のその部位の径もしくは幅より大きくなくてもかまわない。
【0016】
鍔部21の径もしくは幅は、隣接する接触子間のスペースの大きさや、配線回路5が接触子近傍に設けられている場合にはその配線回路5と接触子2の間のスペースの大きさ等から好適な大きさが選ばれる。特に該スペースが狭小な場合には接触子2が配列されている方向と直行する方向にのみ鍔部21を形成してもよい。
【0017】
鍔部21を形成する接触子底部側(図1において上側)の鍔下層部21aの径もしくは幅に対して、接触子頂部側の鍔上層部21bのそれは、一般に、およそ4μmから20μm程度小さく設ければよいが、必ずしもこの範囲に限定されず、必要に応じて所定に小さく設ければよい。また、鍔部21の厚さや鍔上下層部21a、21bの厚さも、特に限定されるものではない。鍔部21の厚さはおよそ4μmから20μm、鍔上下層部21a、21bの厚さはおよそ2から10μmの範囲が好適である。
【0018】
更に、接触子2の絶縁樹脂層表面からの高さ(突出高さ)は、半導体等の被検査電極の周辺に保護層が形成されている場合には、該保護層とフィルムプローブが接触することを防ぐために、およそ15μm以上、望ましくは20μm以上であることが好ましい。絶縁樹脂層1に設けられた配線回路5の上に保護層が設けられ、かつ接触子2が該保護層表面に突出された形のフィルムプローブであって、被検査電極周辺に保護層が設けられていないか若しくは厚さが非常に小さい場合においては、接触子2の保護層表面からの高さは、およそ2μm、望ましくは5μm以上あればよい。
【0019】
なお、上述のフィルムプローブは、配線回路5を設けているが、本発明に係るフィルムプローブは、そのような配線回路を設けていないものであってよく、例えば、図2又は図3に示すようなフィルムプローブであってもよい。図2のフィルムプローブは、絶縁樹脂層1に、接触子2を検査装置側と接続する為の孔31を設けている。また、図3のフィルムプローブは、接続端子32を設けている。
【0020】
次に、配線回路5を設けている上述のフィルムプローブの製造方法について述べると、このフィルムプローブは、図4に示されている諸工程を経て製造することができる。その際、予め準備された積層基材35(図5(a)参照)を用いるが、かかる積層基材35は、第1絶縁樹脂層10の一方の面に第1導電性金属層11aを積層すると共に他方の面に第2導電性金属層11bを積層して構成されている。
【0021】
第1絶縁樹脂層10及び第1,2導電性金属層11a,11bの材質は、後述の各工程で用いる薬品に対する耐性やエッチング性を考慮して選定され、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等樹脂層の両面に銅箔をラミネートするか又は銅層をめっき形成した市販の積層材料を利用することができる。所謂、2層型と呼ばれている接着剤を用いないで積層したものがより好適であるが、3層型と呼ばれている接着剤を用いるタイプのものであってもよい。ドライフィルムレジストに銅箔を積層したものも利用することができる。なお、積層基材35の第1絶縁樹脂層10厚さは、後工程で形成する接触子の突出高さ(図1の絶縁樹脂層1の表面からの高さ)に対応する為、10μmから100μmが好適である。
【0022】
まず、図4(a)に示す如く、上述の積層基材35に接触子形成用開孔10cを設ける。その方法としては通常のフォトリソグラフィー技術やレーザー加工技術が利用できる。すなわち、第1導電性金属層11a上にレジスト膜20を積層し、マスクを用いて露光、現像して加工すべき所定の個所に開孔20cを設ける(図5(b)参照)。レジスト膜20としては、ドライフィルムレジストが好適であるが、ワニス状のレジストをスピンコーター等により塗布して形成してもよい。
【0023】
次いで、エッチング液で処理して第1導電性金属層11aの所定の位置に開孔11acを形成する(図5(c)参照)。第1導電性金属膜11aが銅の場合にはエッチング液としては塩化第2銅、塩化第2鉄、アンモニア等の水溶液が利用でき、他の金属の場合にはその金属に作用するエッチング液を選定すればよい。また、レジスト膜20を形成することなく直接レーザー加工により開孔11acを設けてもよい。
【0024】
そして、開孔11acを設けた後、レジスト膜20をアルカリ水溶液で除去する。引き続いて、第1導電性金属膜11aに設けた開孔11acを利用してエッチング処理もしくはレーザー加工等により第1絶縁樹脂層10に第2導電性金属膜11bに達する接触子形成用開孔10cを設ける(第4図(a)参照)。その際、第1絶縁樹脂層10の材質がポリイミドや液晶ポリエステル樹脂の場合には、エッチング処理液としてはアルカリと脂肪族アミノアルコールを含む水溶液を用いることができる。
【0025】
かかるエッチング処理により加工した接触子形成用開孔10cは、図示の如く、第1導電性金属層11a側の径に対して第2導電性金属膜11b側の径が小さくなっているテーパー孔になっている。その為、後述するように、後工程で該開孔を利用して接触子を形成すると、接触子頂部の断面が接触子底部の断面よりも小さい円錐台もしくは多角錐台状の好ましい形状の接触子を得ることができる。
【0026】
なお、第1絶縁樹脂層10の厚さが例えば25μmの場合、接触子形成用開孔10cの第1導電性金属層11a側の径もしくは幅が40μm以下であると、第2導電性金属層11b側の径もしくは幅が小さ過ぎるか又は深さが第2導電性金属層11bに届かず、従って、所定の接触子形成用開孔10cを設けることが困難である。そのような場合においては、第1導電性金属膜11aに設けられた開孔11acを利用して、炭酸ガスレーザー、UVレーザーやエキシマレーザーレーザーを照射して接触子形成用開孔10cを設ければよい。
【0027】
次いで、上述の工程、すなわち、第1絶縁樹脂層10の一方の面に第1導電性金属層11aを積層すると共に他方の面に第2導電性金属層11bを積層した積層基材35の該第1導電性金属層11a及び該第1絶縁樹脂層10に接触子形成用開孔10cを設ける工程(イ)に引き続いて、第1導電性金属膜11a上にレジスト膜30を積層し、ガラスマスクを用いて露光、現像することによって、接触子形成用開孔10cに連通された鍔下層部形成用開孔30c及び下層配線回路部形成用開口30dを有するレジスト膜30を第1導電性金属層11a上に形成する(図4(b)参照)。
【0028】
次いで、鍔下層部形成用開孔30c及び下層配線回路部形成用開孔30dを有するレジスト膜30を形成する上述の工程(ロ)を終えると、引き続いて、第2導電性金属層11bを陰極として電解めっきにより接触子形成用開孔10c内に導電性金属を析出成長せしめる。そして、めっき析出金属が第1導電性金属層11aまで到達すると、第1導電性金属層11aと第2導電性金属層11bとが導通され、従って、第1導電性金属層11a上の鍔下層部形成用開孔30c及び下部配線回路部形成用開口30d内にも導電性金属を析出成長せしめる。このようにして、接触子の本体部21cと鍔下層部21a(図1参照)とを一体に形成すると共に、配線回路の下部配線回路部5aを鍔下層部21aに接続させて形成することができる(図4(c)参照)。なお、第1導電性金属層11a上にめっき形成される導電性金属膜厚さは、およそ2μmから15μmとするのが好ましい。
【0029】
接触子の本体部と該鍔下層部とを一体に形成する上述の工程(ハ)において、第1導電性金属層11a及び第2導電性金属層11bの両者を陰極となしてめっきを行うと、第2導電性金属層11b表面からだけでなく、第1導電性金属層11a表面及び開孔11ac(図5(c)参照)側面からもめっき析出が起こり、充填形成される接触子2内に空洞が出来たり、鍔状部21aや配線回路5aが厚くなりすぎるという不都合が起こるため、めっき開始後、およそめっき析出金属が第1導電性金属膜11aに到達するまでの間は導電性金属層11aには通電しない方が好ましい。
【0030】
また、接触子形成用開孔10c内の第2導電性金属層11bの表面に樹脂層等が残存していると、接触子形成用開孔10c内における析出物の充填形成が不完全になる原因となる。従って、第1絶縁樹脂層10をエッチング処理して接触子形成用開孔10cを設けた後に、レーザー光を照射して第2導電性金属層11b表面の残存樹脂等の残さを取り除くことが有効である。
【0031】
第1導電性金属層11aの厚さは、およそ1μmから20μmの範囲であるが、第1導電性金属膜11aの厚さが厚すぎると、メッキ析出金属が導電性金属層11aに到達した後においても開孔11ac内を充填するために更に長い時間メッキを続ける。その為、それと並行して形成される鍔下層部21aや下層配線回路部5aの厚さが過大になってしまうといった問題がおこるため、およそ1〜10μmの厚さが好適である。
【0032】
次いで、上述の工程(ハ)に引き続いて、レジスト膜30をアルカリ水溶液等で除去した後(図4(d)参照)、前工程で形成された鍔下層部21a及び下層配線回路部5aをマスクとして利用し、エッチング処理により第1導電性金属層11aの不要部分を除去することによって鍔上層部21b及び上層配線回路部5bを形成する(第4図(e)参照)。このとき、エッチング時間をコントロールして、鍔上層部21bの径もしくは幅が、鍔下層部21aの径もしくは幅よりも、およそ4μmから20μm小さい所望の寸法にすることができる。
【0033】
次いで、上述の工程(ニ)に引き続いて、第1絶縁樹脂層10の一面、すなわち、接触子の鍔下層部21a等が形成されている方の面に、可撓性の薄い第2絶縁樹脂層36を積層する(図4(f)参照)。かかる第2絶縁樹脂層36としては、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂や繊維強化エポキシ樹脂が好適であるが、その他の樹脂であってもよい。
【0034】
繊維強化エポキシ樹脂、液晶ポリエステル樹脂や熱可塑性ポリイミド樹脂は熱可塑性であるため、ガラス転移点を超える温度で圧着することによって容易に積層出来る。繊維強化エポキシ樹脂としてはガラス繊維もしくはアラミド繊維により強化されたエポキシ樹脂が利用出来るが接触子や配線回路のピッチが狭小ピッチの場合には、アラミド繊維強化エポキシ樹脂の方がより好適に利用できる。一方、第2絶縁樹脂層36が非熱可塑性ポリイミド樹脂の場合には加熱しても流動性や接着性を発現しないため第1絶縁樹脂層上に積層することが困難であるが、この場合には、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド
系等の接着剤層を介して加熱圧着することにより積層することができる。
【0035】
次いで、上述の工程(ホ)に引き続いて、第2導電性金属層11b及び絶縁樹脂層10を順次、エッチング処理によって除去する(図4(g),図4(f)参照)。例えば、第2導電性金属層11bが銅の場合には塩化第2銅水溶液や塩化第2鉄水溶液、第1絶縁樹脂層10がポリイミド樹脂や液晶ポリエステル樹脂の場合にはアルカリ金属塩を含む水溶液によってそれぞれエッチング処理する。
【0036】
以上、詳述の方法によって、図1のフィルムプローブを製造することができるが、図1〜3及び図7の絶縁樹脂層1は、図4の第2絶縁樹脂層36に該当する。
【0037】
なお、本発明においては、上述の積層基材35は、図6に示すものであってもよい。図示の積層基材35aは、第2導電性金属層11b表面に支持基材6を積層しているが、このような積層基材35aは、例えば、支持基材6として導電性の基材を用い、その表面に電解めっきもしくは無電解めっきにより導電性金属層を形成して、更に、その上に片面に導電性金属層11aを有する第1絶縁樹脂層10を積層することによって支持基材6、第2導電性金属層11b、絶縁樹脂層10、第1導電性金属層11aの順に積層された積層基材35aを得ることができる。このような積層基材35aを用いることによって、フィルムプローブを製造する諸工程の大部分において、樹脂に比較して温度や湿度による寸法変化が小さく、実質的に寸法変化が殆どない支持基材6上に保持された状態で上述の加工等をすることができるため、接触子ピッチ等の寸法精度が高いフィルムプローブを製造することができる。
【0038】
積層基材35aを用いる場合には、前述した(へ)の工程に先立って、(ホ)の工程で得られる積層体の第2導電性金属層11bと支持基材6との間で剥離を行うが、この時、支持基材6および導電性金属層11bとして表面を鏡面上に仕上げるか、クロム酸処理したステンレス製基板6の表面に導電性金属層11bをめっき形成した基材を用いれば第1絶縁樹脂層10や第2絶縁樹脂層36に歪みが残らない程度の十分に小さい力でこれらを剥離すること出来る。
【0039】
支持基材6の厚さは、薄すぎると製造工程中の温度や湿度の変化によって絶縁樹脂層等の寸法が変化することを規制する効果が小さく、また厚すぎると、取り扱いに支障をきたすため、およそ0.2mmから5mmの範囲が好適に用いられる。
【0040】
また、支持基材6は繰り返し使用してもキズや錆がつきにくいステンレス基板が特に好適であるが、他の導電性材料であっても良い。また、ガラス等の非導電性材料の表面にスパッタ処理等で金属薄膜を形成して導電性を付与した材料であっても良い。
【0041】
また、上述した第1絶縁樹脂層10をエッチング除去する工程において、第1絶縁樹脂
層を完全に除去するのでなく、一部を残すことによって、接触子が絶縁樹脂層表面に突出した形状のフィルムプローブを得ることも出来る(図7参照)。かかるフィルムプローブは第1絶縁樹脂層を完全に除去したプローブと比較して樹脂層表面からの接触子高さを高くしづらいという欠点があるが、第1絶縁樹脂層の残存層を保護層として利用できるため、被検査電極周辺に保護層が設けられていないか、もしくは保護層の厚さが十分薄く、接触子高さが低くても支障ない場合には特に効果的である。
【実施例】
【0042】
両面に4μmの厚さの銅層を有する厚さ25μmの宇部興産社製ポリイミドフィルム(商品名ユーピレックス)層からなる積層基材を準備した。
この積層基材の一方の銅層表面上に日合・モートン社製ドライフィルム「NT2025」(厚さ25μm)を積層し、径40μm、ピッチ80μmのパターンを持つガラスマスクを介して紫外線露光し、炭酸ソーダ水溶液により現像して所定の開孔を有するレジスト膜を形成した。
【0043】
この、レジスト層を形成した積層基材を塩化第2鉄水溶液によりエッチング処理して一方の銅層に開孔を設けた。その後、レジスト膜を旭電化工業社製「アデカリムーバー」により剥離した。
【0044】
次に、この積層基材を東レエンジニアリング社製エッチング液「TPE―3000」でエッチング処理してポリイミドフィルム層に、一方の銅層に設けた開孔に連なり、かつ、他方の銅層に達する接触子形成用開孔を設けた。
【0045】
次に、この積層基材の開孔を設けた銅層表面にドライフィルム「NT2025」を積層し、径55μm、ピッチ80μmの鍔状部パターンおよびこれに連なる幅20μm、ピッチ80μmの配線回路部パターンを持つガラスマスクを介して紫外線露光し、炭酸ソーダ水溶液により現像して、銅層およびポリイミドフィルム層に設けた接触子形成用開孔と同芯円状の鍔下層部形成用開孔およびこれに連なる下層配線回路部形成用開孔を持つレジスト膜を形成した。
【0046】
次に、この積層基材の開孔を設けていない側の銅層を陰極としてスルファミン酸ニッケル浴でニッケルめっきを行って接触子形成用開孔内に金属充填体をめっき形成し、続いて銅層に設けた開孔内、鍔下層部形成用開孔内および下層配線回路部形成用開孔内にそれぞれ鍔上層部本体部、鍔下層部、下層配線回路部をめっき形成した。しかる後、レジスト膜をレジスト剥離液で剥離した。
【0047】
次に表面に鍔下層部とこれに連なる下層配線回路部が形成された銅層をメルテックス社製「Aプロセス」でエッチング処理して銅層の不要部分をとり除いた。
【0048】
かかる処理によって、径が55μmで厚さがおよそ5μmの鍔下層部及び径がおよそ48μmで厚さが4μmの鍔上層部で構成された鍔部と、該鍔部に接続された幅20μmの下層配線回路部と幅がおよそ12μmの上層配線回路部が第1絶縁樹脂層上に形成された。
【0049】
次に、第1絶縁樹脂層の鍔部と配線回路部が形成された面上に、第2絶縁樹脂層として
厚さ75μmの新神戸電機社製アラミド不織布エポキシ樹脂プリプレグを真空プレスを用いて圧力2MPa、温度180℃の条件で積層した。
【0050】
次に、この積層体の第2絶縁樹脂層が積層されていない表面の銅層を前記「Aプロセス」でエッチング除去し、続いて、第1絶縁樹脂層を東レエンジナリング社製「TPE―3000」を用いてエッチング除去して、第2絶縁樹脂層表面に接触子が突出して形成され、かつ、接触子鍔部および配線回路部が第2絶縁樹脂層表面に埋設形成されたフィルムプローブを得た。
【0051】
なお、めっきやエッチングを行うに際して、それらを行わない面に対して必要に応じてマスキングテープによるマスキングを施した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るフィルムプローブの縦断面図である。
【図2】本発明に係る他のフィルムプローブの縦断面図である。
【図3】本発明に係る他のフィルムプローブの縦断面図である。
【図4】図1のフィルムプローブの製造工程を示し、図4(a)は接触子形成用開孔を形成した状態を示す縦断面図、図4(b)は接触子形成用開孔に連通の鍔下層部形成用開孔及びそれに連通の下層配線回路部形成用開孔を形成した状態示す縦断面図、図4(c)は鍔下層部形成用開孔及び下層配線回路部形成用開孔内に導電性金属を析出形成した状態を示す縦断面図、図4(d)はレジスト膜を除去した状態を示す縦断面図、図4(e)はエッチング処理して鍔上層部および上層配線回路部を形成した状態を示す縦断面図、図4(f)は第2絶縁樹脂層を積層した状態を示す縦断面図、図4(g)は第2導電性金属層を分離した状態を示す縦断面図、図4(h)は第1絶縁樹脂層を分離して接触子を突出させた状態を示す縦断面図である。
【図5】図5は積層基材に接触子形成用開孔を設けるための工程を示し、図5(a)は積層基材の縦断面図、図5(b)は積層基材上のレジスト膜に開孔を形成した状態を示す縦断面図、図5(c)は積層基材上のレジスト膜に形成した開孔に連通した開孔を第1導電性金属層に形成した状態を示す縦断面図である。
【図6】他の積層基材の縦断面図である。
【図7】第1絶縁樹脂層を完全に分離しないで、その一部を接触子部や配線回路部に残存させた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:絶縁樹脂層
10:第1絶縁樹脂層
10c:接触子形成用開孔
11a:第1導電性金属層
11b:第2導電性金属層
2:接触子
21:鍔部
21a:鍔下層部
21b:鍔上層部
21c:本体部
21d:外層部
30:レジスト膜
30c:鍔下層部形成用開孔
30d:下層配線回路部形成用開孔
35、35a:積層基材
36:第2絶縁樹脂層
5:配線回路
5a:上層配線回路部
5b:下層配線回路部
6:支持基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子の鍔部が、接触子頂部側の鍔上層部と接触子底部側の鍔下層部とで構成され、該鍔部が絶縁樹脂層に埋設され、しかも、該鍔上層部の径もしくは幅が該鍔下層部のそれよりも小さいことを特徴とするフィルムプローブ。
【請求項2】
接触子の鍔部が、接触子頂部側の鍔上層部と接触子底部側の鍔下層部とで構成され、該鍔部が絶縁樹脂層に埋設され、しかも、該鍔上層部の径もしくは幅が該鍔下層部のそれよりも小さいフィルムプローブの製造方法において、下記(ィ)から(ヘ)の工程を有することを特徴とするフィルムプローブの製造方法。
(ィ)第1絶縁樹脂層の一方の面に第1導電性金属層を積層すると共に他方の面に第2導電性金属層を積層した積層基材の該第1導電性金属層及び該第1絶縁樹脂層に接触子形成用開孔を設ける工程。
(ロ)該接触子形成用開孔に連通された鍔下層部形成用開孔を有するレジスト層を該第1導電性金属層上に形成する工程。
(ハ)該接触子形成用開孔と該鍔上層部形成用開孔内に、該第2導電性金属層を陰極として導電性金属体をめっき形成して該接触子の本体部と該鍔下層部とを一体に形成する工程。
(ニ)該(ハ)の工程の後で、該レジスト層を除去し、次いで、該鍔下層部をマスクとして該第1導電性金属層をエッチング処理して該鍔下層部の径もしくは幅より小さい径もしくは幅の該鍔上層部を形成する工程。
(ホ)該(ニ)の工程の後で、該第1絶縁樹脂層上に第2絶縁樹脂層を積層する工程。
(ヘ)該(ホ)の工程の後で、エッチング処理により該第2導電性金属層及び該第1絶縁樹脂層を除去する工程。
【請求項3】
該積層基材の該第2導電性金属層上に支持基材が積層されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルムプローブの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−17460(P2006−17460A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192498(P2004−192498)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(594066132)レイテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】