フィルム加飾部品
【課題】真空成形または真空圧空成形よるフィルム加飾部品において、意匠面・裏面ともに、人の目に触れ、かつ、フィルムの端部を別の部品で覆い隠せない部品であっても、成形体と加飾フィルムとの密着性を確保すること、トリミング作業が容易で、トリミング後も外観品位を損なわないこと。
【解決手段】成形体12と、成形体12を覆う積層フィルム7と、成形体12と積層フィルム7との間に接着剤8とを有する加飾部品において、積層フィルム7の端部は成形体12の意匠面に露出する構成とし、かつ、積層フィルム7は少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、接着剤8は、成形体12との界面で剥離する。
上記構成により、密着性が確保できるとともに、フィルムの強度が向上することでトリミング作業が容易であり、トリミング後に成形体12の表面に接着剤8が残らず、外観品位を損なわない。
【解決手段】成形体12と、成形体12を覆う積層フィルム7と、成形体12と積層フィルム7との間に接着剤8とを有する加飾部品において、積層フィルム7の端部は成形体12の意匠面に露出する構成とし、かつ、積層フィルム7は少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、接着剤8は、成形体12との界面で剥離する。
上記構成により、密着性が確保できるとともに、フィルムの強度が向上することでトリミング作業が容易であり、トリミング後に成形体12の表面に接着剤8が残らず、外観品位を損なわない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム加飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外観品位を向上させる手段には、塗装、光輝材の練り込みなどがあるが、その中の一つにフィルム加飾技術がある。フィルム加飾技術とは、印刷などで柄を加飾したフィルムで成形体を被覆する技術である。フィルム加飾技術の優位な点として、フィルムの状態で加飾の柄を印刷などで加飾できるため、塗装や光輝材の練り込みなどよりも、多種多様な柄や色使いが可能となり、より高い外観品位を得ることが可能となる。また、フィルムの材質を選択することで、耐傷付き性や汚れの防止といった機能を付加することも可能となる。
【0003】
フィルム加飾技術には、真空成形・真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形などがある。
【0004】
中でも、真空成形・真空圧空成形は、比較的深絞りの大きい3次元形状の部品でも加飾ができる、また、被加飾部品である成形体の成形用の金型を、塗装など他の加飾技術を用いる部品や加飾を施さない部品と兼用できる、というメリットがある。
【0005】
しかしながら、真空成形・真空圧空成形は、成形体に加飾フィルム密着させた後、加飾フィルムをトリミング(所定の位置でカットして不要部分をはがす工程)することで加飾部品を得る工法であるため、フィルム端部の処理という課題が生じる。
【0006】
このため、従来は、フィルムの端部が露出しないように、フィルムの端部を成形体の裏面に持っていく、フィルムの端部を別部品で覆い隠す、などにより、フィルムの端部が人の目に触れない、人が触れないような構成としていた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図12は、特許文献1に記載された従来の加飾成形品を示すものである。図12に示すように、加飾成形品1は、裏面側が凹面形状をした樹脂基材2が、その表面をシート状加飾材3によって被覆されている。
【0008】
シート状加飾材3のトリミング部が表面から見えない位置にあるため、精度の悪い切断除去の仕方でも、シート状加飾材3の端部に剥がれが生じても加飾成形品1の加飾面への影響がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−284771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1など従来の構成は、裏面が、人の目に触れ、人が触ることができる部品、かつ、フィルムの端部を別の部品で覆い隠すことができないような部品の場合は、適用できないという課題を有していた。
【0011】
また、前記のような状況下では、フィルムの端部の露出が避けられないが、この場合、人が触るリスクが生じるので、従来よりも密着性が必要になる。その一方で、トリミング
の際に、はがしやすいことも求められる。
【0012】
また、前記フィルム加飾部品は、人の目に触れる外観部品であることから、外観品位を損なわないよう、トリミング後に不要部分をはがした跡がきれいであること、すなわちフィルムや接着剤が成形体の表面に残らないことも求められる。
【0013】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、真空成形または真空圧空成形によるフィルム加飾部品において、フィルム加飾により品位を向上するとともに、トリミング作業を容易にすること、および、トリミング後も外観品位を損なわないフィルム加飾部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明のフィルム加飾部品は、成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有し、かつ、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には成形体との界面で剥離する。
【0015】
積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムから構成することにより、強度が増し、トリミングの作業性が向上する。
【0016】
また、このとき、積層フィルムを、少なくとも異なる2種類の樹脂フィルムから構成すると、異なる特性を有する樹脂フィルム同士が互いの欠点を補完することでより一層強度が増し、トリミングの際に千切れることなく、トリミング作業が容易に行えるのでより望ましい。
【0017】
また、接着剤が、成形体との界面で剥離することによって、トリミングの際に、不要フィルムがはがしやすく、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残らず、外観品位を損なわない。
【0018】
なお、このとき、接着剤を、感圧型接着剤とすると、上記に加え、弾性を有するために成形体が比較的複雑な3次元形状でも追従しやすく密着性を確保できるので、より望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム加飾部品は、フィルム加飾により外観品位を向上するとともに、トリミングが容易で、トリミングによって外観品位を損なうことがないフィルム加飾部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における掃除機の全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における掃除機本体の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるフィルム加飾部品である掃除機の蓋の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図6】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図7】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図8】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図11】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図12】従来の加飾成形品の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、真空成形または真空圧空成形によるフィルム加飾部品において、成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有する構成であって、かつ、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には成形体との界面で剥離する。
【0022】
ここで、意匠面とは、通常の製品使用時に人の目に触れる面、成形体をフィルムで被覆した面を指す。
【0023】
裏面が、人の目に触れ、人が触ることができる部品、かつ、積層フィルムの端部を別の部品で覆い隠すことができないような部品の場合、積層フィルムの端部の露出が避けられないが、積層フィルムを裏面まで巻き込ませるよりも意匠面でトリミングするほうが、密着性が確保しやすく、トリミング作業がしやすい。
【0024】
積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムを有する構成とすることによって、強度が増し、トリミング作業性が向上する。
【0025】
また、接着剤が、剥離時には成形体との界面で剥離することにより、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残ることなく、外観品位を損なわないフィルム加飾部品を得ることができる。
【0026】
第2の発明は、第1の積層フィルムが少なくとも異なる2種の樹脂フィルムを有し、かつ、接着剤が、感圧型接着剤である。
【0027】
積層フィルムを、少なくとも異なる2種類の樹脂フィルムから構成することによって、異なる特性を有する樹脂フィルム同士が互いの欠点を補完することで強度が増し、トリミングの際に千切れることなく、トリミング作業が容易に行える。また、最外層を外観品位向上、内層を最外層の補強、というようにそれぞれに異なる役割を持たせることもできる。
【0028】
また、接着剤が、感圧型接着剤であることにより、弾性を有するために成形体が比較的複雑な3次元形状でも追従しやすく密着性を確保できる一方で、トリミングの際に不要フィルムがはがしやすく、また、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残ることなく、外観品位を損なわないフィルム加飾部品を得ることができる。
【0029】
第3の発明は、第1または第2の請求項の積層フィルムが印刷層を有し、印刷層よりも外層の樹脂フィルムが、ヘーズが1以下、全光線透過率が90%以上とした。
【0030】
印刷層よりも人の目に近い層の樹脂フィルムの光学特性を上記範囲に限定することにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を発現する。
【0031】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの請求項の積層フィルムにおいて、外層より、第1の樹脂フィルム、印刷層、第2の樹脂フィルムとした。
【0032】
前記構成であることにより、第2の樹脂フィルムに、ヘーズが高く、全光線透過率が低いフィルムを使用しても、印刷層の見え方を阻害しないため、高外観品位を発現すること
ができる。このため、第2の樹脂フィルムの選択肢が広がり、コストや機械的特性から自由に選択できるようになる。
【0033】
第5の発明は、第4の請求項の積層フィルムを、第1の樹脂フィルムを、アクリル樹脂フィルム、第2の樹脂フィルムを、ABS樹脂フィルムとした。
【0034】
アクリル樹脂フィルムは、無色透明であるため、印刷層の色味を損なわず、また、他の透明樹脂に比べてヘーズが低く、全光線透過率が高いため、印刷層の外層に用いると、深み感や奥行き感が演出できる。また、耐候性に優れるため、その高品位外観を長期に渡って保持できる。また、最外層にアクリル樹脂フィルムを用いることは耐傷付き性を確保することにおいても適している。
【0035】
ABS樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルムと積層すると、引裂強度や収縮の補完だけでなく、成形性にも優れ、また、接着剤との密着性が高いため、トリミングの際に、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすくすることができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
フィルム加飾部品の一例として、掃除機の蓋を取り上げて説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施の形態における掃除機の全体斜視図を、図2は、掃除機本体の斜視図(蓋が開いている状態)を、図3は、加飾フィルムの断面図を、図4は、フィルム加飾部品である掃除機の蓋の断面図を示すものである。
【0039】
図1において、掃除機4の蓋5は、フィルム加飾部品である。蓋5は、通常使用時には、図1のように閉まっているため、閉まった状態で目に触れる面が意匠面である。また、蓋5は、図1のように閉まっていることが多いが、図2のように開けることもあるため、意匠面だけでなく、裏面も人の目に触れ、人が触れる部品の代表例である。
【0040】
図3に示すように、加飾フィルム6は、積層フィルム7と接着剤8からなり、積層フィルム7は、外層から、第1の樹脂フィルム9、印刷層10、第2の樹脂フィルム11という構成である。
【0041】
さらに、図4において、フィルム加飾部品である蓋5は、成形体12と加飾フィルム6とからなり、成形体12と積層フィルム7は接着剤8を介して密着している。また、蓋5は、成形体12の表面に積層フィルム7の端部が露出する構成である。
【0042】
なお、蓋5は、部品のときに積層フィルム7の端部が露出する構成のため、図1のように蓋5が閉まっている場合は、積層フィルム7の端部はボディ部品13によって隠れるが、本発明の構成は、部品のときに積層フィルム7の端部が露出する構成であればよいため、製品に組み込まれるときに積層フィルム7の端部が隠れる構成であっても、隠れない構成であってもよい。
【0043】
まず、積層フィルム7が、意匠面側に端部を有する構成とした理由を説明する。
【0044】
特に、裏面でも人が触ることができる部品の場合、成形体の裏面まで巻き込ませると、裏面での接着面積が小さいことと、伸びが大きくなることによる接着剤の薄肉化による密着性の低下により、剥離リスクが上がるからである。裏面での接着面積を上げることで密
着性の改善は可能だが、加飾フィルムが多く必要であり、きれいに巻き込ませるのに工法での工夫が必要になる。したがって、意匠面側に積層フィルムの端部を有する構成のほうが望ましい。
【0045】
ここで、積層フィルム7が、意匠面側に端部を有する構成であれば、端部の位置は特に指定するものではなく、求める意匠や部品形状によって、自由に設計が可能である。なお、成形体のパーティングラインを超えないような位置や、成形体の端部のRがかかった部位にかからないような位置すると、密着性が確保しやすいので望ましい。
【0046】
また、用いる樹脂フィルムは、意匠面に積層フィルムの端部が露出する構成の場合、樹脂フィルムが収縮すると外観品位が低下するため、できるだけ収縮率が小さいものを選定することが望ましい。
【0047】
用いる樹脂フィルムの材料は特に限定するものではなく、例えば、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなど)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂(以下、ABSと略す)、ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略す)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂、などが使用可能である。
【0048】
中でも、アクリル樹脂は、無色透明であるため、印刷層の色味を損なわず、また、他の透明樹脂に比べてヘーズが低く、全光線透過率が高いため、印刷層の外層に用いると、深み感や奥行き感が演出できるため、望ましい。また、耐候性に優れるため、その高品位外観を長期に渡って保持できるため、望ましい。また、最外層にアクリル樹脂を用いることは耐傷付き性を確保することにおいても適している。
【0049】
ここで、加飾フィルムの積層フィルムに、異なる2種類以上の樹脂フィルムを用いるのがより望ましい。その理由について説明する。
【0050】
加飾フィルムの強度を上げる方法として、フィルムを積層せずにフィルムの厚みを増すという方法もある。アクリル樹脂フィルム一層とし、厚みを上げる例を挙げる。アクリル樹脂フィルムの欠点は、引裂強度が低いことである。厚みを増すことで裂けにくくはなるものの、引き裂きに弱い特性そのものは変わらないため、トリミングの作業性は劇的には向上しない。これに対し、異種の樹脂フィルムを積層すると、互いの欠点を補完することができるため、トリミングの作業性が劇的に向上する。
【0051】
異なる2種類以上の樹脂フィルムを用いるメリットは他にもある。収縮しやすいフィルムと収縮しにくいフィルムを積層することで、積層フィルムの収縮を抑制できることがある。例えば、アクリル樹脂フィルムのみでは、2倍以上に伸ばすと、ヒートサイクル試験で、わずかに(0.1〜0.2mm程度)収縮が発生したが、ABS樹脂フィルムとの積層フィルムでは、収縮しなくなることを確認した。
【0052】
また、樹脂フィルムの積層方法は、特に指定するものではない。例えば共押出し、熱ラミ、ドライラミなどが使用可能である。
【0053】
なお、図3は、本発明の加飾フィルムの構成における一例であるため、加飾フィルムの構成や積層順は指定するものではなく、例えば、樹脂フィルムが2層の場合は、図5のように、外層から、第1の樹脂フィルム9、第2の樹脂フィルム11、印刷層10、接着剤8でもよい。また、樹脂フィルムを3層以上有する構成でもよい。例えば、この場合は、
図6(第1の樹脂フィルム9、印刷層10、第2の樹脂フィルム11、第3のフィルム14、接着剤8)や図7(第1の樹脂フィルム9、第2の樹脂フィルム11、第3のフィルム14、印刷層10、接着剤8)などがあり、これ以外の構成でもよい。
【0054】
また、印刷層の印刷方法は、グラビア印刷、シルク印刷、オフセット印刷など特に指定するものではなく、求めるデザイン柄や色使い、フィルムとインクとの密着性で自由に選択できる。なお、加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムにおける印刷層の柄を設計しておくことが望ましい。
【0055】
ここで、前述の通り、積層順は指定するものではないが、高外観品位を発現するためには、印刷層の外層には、ヘーズが低く、全光線透過率が高い樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0056】
なお、ヘーズは、JIS K7136で測定されるものであり、印刷層の外層の樹脂フィルムのヘーズは、より高い外観品位を得るためには、1未満(厚み3mm時)が望ましい。また、全光線透過率は、JIS K7316で測定されるものであり、印刷層の外層の樹脂フィルムの全光線透過率は、より高い外観品位を得るためには、90%以上(厚み3mm時)が望ましい。
【0057】
ここで、図3や図6のように、第2の樹脂フィルムを印刷層の内層にするような構成とすると、第2の樹脂フィルムは、外観品位に直接的に影響しないため、ヘーズや全光線透過率をそれほど意識せずに、コストや機械的特性などから自由に選択ができるため、より望ましい。
【0058】
なお、積層フィルムにおいては、接着剤と隣接するのが、印刷層よりも、樹脂フィルムのほうが、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすいので望ましい。また、その場合、接着剤と隣接するのは、ABS樹脂フィルムとするのが望ましい。ABS樹脂フィルムはアクリル樹脂フィルムと積層すると、強度や収縮の補完だけでなく、成形性にも優れ、また、接着剤との密着性が高いため、トリミングの際に、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすくすることができる。
【0059】
また、加飾フィルムの厚さは特に指定するものではないが、薄すぎると、強度が低くなることで、トリミング作業がしにくくなり、また、厚すぎると、真空成形/真空圧空の際に伸びにくくなることで成形体の形状に追従しにくくなる、爪が引っかかりやすくなる、成形体がフィルム加飾しない部品と他の部品と金型を共有する場合に、他部品とのかみ合わせが悪くなる(たとえば、掃除機の蓋をフィルム加飾する場合、蓋が閉まらなくなる)などの理由から、50〜500μmが望ましい。なお、加飾部品における加飾フィルムの厚さは、一定でなくてもかまわない。一般に真空成形や真空圧空成形の場合、外周部や凹凸の多い部分は加飾フィルムが伸ばされやすいため、他より薄くなりやすい。このため、加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムの厚みを設計しておくことが望ましい。
【0060】
接着剤は、剥離時に、成形体との界面で剥離するが、剥離時(トリミング作業時)に、一部が界面剥離した場合に、他の部分も連鎖的に界面剥離するものが作業性が良く、望ましい。
【0061】
接着剤には、感圧型接着剤、ホットメルト、溶液型、反応型、などがあるが、中でも、感圧型接着剤が望ましい。
【0062】
感圧型接着剤は、JIS K6800では、「常温で圧力を加えるだけで接着する接着
剤」と定義されており、一般には粘着剤と同義で扱われる。
【0063】
感圧型接着剤は、弾性を有するために3次元形状への追従性が良好であり、積層フィルム7と成形体の密着性が確保しやすい。一方で、常温で接着・剥離が可能であるため、トリミング作業がしやすい。さらに、剥離時は成形体との界面で剥離するために、成形体の表面に接着剤が残らず、外観品位を損なわない。
【0064】
ここで、接着剤の材料は、特に指定するものではなく、例えば、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系などがある。中でも、密着性、耐候性、耐熱性、耐溶剤性に優れるため、アクリル系を用いるのが望ましい。
【0065】
接着剤の厚さは特に指定するものではないが、故意に爪ではがそうとしてもはがしにくいという観点から、爪よりも薄いことが望ましい。ただし、薄くなりすぎると密着性が低下するため、10〜50μmが望ましい。なお、加飾部品における接着剤の厚さは、一定でなくてもかまわない。一般に真空成形や真空圧空成形の場合、外周部や凹凸の多い部分は加飾フィルムが伸ばされやすいため、他より薄くなりやすい。フィルム加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムにおける接着剤の厚みを設計しておくことが望ましい。
【0066】
また、接着剤は、加飾フィルムの構成中にあるほうが、積層フィルムとの密着性が向上し、トリミングの際に成形体との界面で剥離しやすくなるため、望ましい。
【0067】
次に、成形体について説明する。
【0068】
成形体を構成する樹脂は、特に指定するものではなく、例えば、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせてポリマーアロイとして用いることもできる。あるいは、アロイ化も含めた種々の変性処理を行ってもよいし、前記以外の樹脂を組み合わせてもよい。
【0069】
前記樹脂は、製造コスト、外観品位、機械的物性などの諸条件を考慮した上で、適切なものを選択すればよい。中でも、ABS樹脂が、密着性、成形性(成形体表面にひけが生じにくい)、機械的強度、などから特に望ましい。
【0070】
成形体には、前記樹脂に加えて、種々の添加剤が含まれていてもよい。具体的には、充填剤、可塑剤、内部離型剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、抗菌剤などを挙げることができる。
【0071】
成形体の成形方法も特に指定するものではない。
【0072】
次に、成形体12の加飾フィルム6による加飾方法について説明する。
【0073】
まず、図8に示すように、成形体12と受け治具28を、下チャンバーボックス29内の設置治具30にセットし、加飾フィルム6を、下チャンバーボックス29上面にセットする。その後、上チャンバーボックス31を降下させ、上下チャンバーボックス内をそれぞれ気密状態とする。
【0074】
そして、上下チャンバーボックス内をそれぞれ真空ポンプ32で真空状態(減圧状態)
とし、ヒーター33を点灯して加飾フィルム6の加熱を行う。そして図9に示すように、下チャンバーボックス29内の設置治具30を上昇させ、加飾フィルム6に成形体12
を接触させる。
【0075】
その後、図10に示すように、真空配管34の弁を操作することで上チャンバーボックス31側の真空を開放して大気圧状態とすることにより、大気により加飾フィルム6を成形体12に均一に加圧することで、その形状に沿って加飾フィルム6を被覆することができる。加飾フィルム6の成形体12に接する面には接着剤8があるため、大気によって加圧されることで、加飾フィルム6が成形体12に密着する。
【0076】
また、このとき、図10に示すように、上チャンバーボックス31内に圧空タンク35から圧縮空気を入れることにより、加飾フィルム6をさらに大きな力で成形体12に密着させることもできる。なお、圧縮空気を入れる工程はあってもなくても良く、この工程がない場合を真空成形、この工程がある場合を真空圧空成形と呼ぶ。
【0077】
そして、ヒーター33を消灯し、冷却する。そして、下チャンバーボックス29内を大気圧状態に戻し、上チャンバーボックス31を上昇させる。次に、加飾フィルム6を成形体12の周囲でカットし、図11のような、フィルム加飾された成形体12を取り出す。
【0078】
さらに、成形体12の意匠面で、加飾フィルム6をカットし、不要な加飾フィルム6をはがすことで図4のようなフィルム加飾部品を得る(この工程をトリミングと呼ぶ)。
【0079】
なお、加飾フィルム6のカットに使う道具は、特に指定するものではない。例えば、カッター、ホットナイフ、超音波カッターなどの方法が使用可能である。
【0080】
以上のように、積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムを有する構成とすることにより、トリミング作業が容易に行え、また、接着剤が、成形体の界面で剥離することにより、トリミングの際に不要フィルムがはがしやすく、また、トリミング後には、成形体の表面のフィルムをはがした跡は、接着剤が残らず、外観品位を損なわなかった。
【0081】
さらに実施例にて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
図3の加飾フィルムの構成を、外層より、アクリル樹脂フィルム75μm、印刷層、ABS樹脂フィルム150μm、アクリル系粘着剤25μmとし、成形体としてABS樹脂を用いた。
【0083】
なお、アクリル樹脂フィルムのヘーズは0.3、全光線透過率は92%である(いずれも厚さ3mm時)。
【0084】
この構成とすることにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0085】
また、トリミングの際も、アクリル樹脂フィルムの引裂きに弱い特性をABS樹脂フィルムが補完することにより、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0086】
掃除機の製品寿命を想定した試験(ヒートサイクル、温度加速、湿度加速)でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できた。
(実施例2)
図7の加飾フィルムの構成を、外層より、アクリル樹脂フィルム20μm、PC樹脂フィルム160μm、アクリル樹脂フィルム20μm、印刷層、アクリル系粘着剤30μmとし、成形体として、PC樹脂を用いた。
【0087】
なお、印刷層の外層のフィルム(アクリル樹脂フィルム、PC樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムの積層体)のヘーズは1、全光線透過率は90%である(いずれも厚さ3mm時)。
【0088】
この構成とすることにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0089】
また、トリミングの際も、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0090】
掃除機の製品寿命を想定した試験でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できた。
(実施例3)
図3の加飾フィルムの構成を、外層より、ABS樹脂フィルム100μm、印刷層、PET樹脂フィルム50μm、ゴム系粘着剤20μmとし、成形体として、ABS樹脂を用いた。なお、ヘーズと全光線透過率は、ABS樹脂フィルムが2、85%(いずれも厚さ3mm時)。
【0091】
この構成とすることにより、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0092】
また、トリミングの際も、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0093】
掃除機の製品寿命を想定した試験でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できていた。
【0094】
なお、実施例3の構成は、実施例1や実施例2よりは、若干ではあるが、外観品位が劣った。印刷層の外層のABS樹脂フィルムが、わずかに黄味を有していることと、実施例1、2よりも、ヘーズが高く、全光線透過率が低いため、と考える。
(比較例1)
加飾フィルムを、積層フィルムとせず、アクリル樹脂フィルム一層とし、アクリル樹脂フィルム125μm、印刷層、アクリル系粘着剤25μm、という構成とした。
【0095】
アクリル樹脂フィルムは引裂強度が低いため、トリミング作業の際に、フィルムが千切れ、作業性が低下した。さらにアクリル樹脂フィルムの厚みを増すことで千切れにくくなったが、アクリル樹脂フィルムは他のフィルムに比べ高価であり、厚みを増しても引き裂きに弱い特性そのものは変わらないため、できれば異種のフィルムを積層して引き裂き弱さを補うようにするほうが望ましい。また、アクリル樹脂フィルム一層では、わずかながらも収縮が発生したことから、異種のフィルムを積層するほうが望ましい。
(比較例2)
実施例1の加飾フィルムの接着剤を、PET系ホットメルト25μmに変えた。
【0096】
剥離の形態が接着剤の凝集剥離のため、成形体の表面に接着剤が残ってしまった。従っ
て、剥離の形態は接着剤と成形体との界面剥離であることが望ましい。
(比較例3)
加飾フィルムの構成は実施例1同様とし、加飾フィルムを裏側に巻き込む構成とした。
【0097】
トリミング作業をするためには、チャンバーから取り出した後で、成形体を裏返す必要があるため、トリミングの作業性が低下した。
【0098】
裏面も人が触ることができる部品の場合、加飾フィルムを裏まで巻き込ませると、裏面での接着面積が小さいために、剥離のリスクが上がるため、意匠面に端部が露出する構成とするほうが望ましい。
(比較例4)
加飾フィルムの構成を比較例2同様とし、フィルム端部の上からテープを貼り付け固定した。
【0099】
テープにより成形体の表面に残った接着剤の跡は隠すことができたが、部品数、工程数が増えることによりコストUPになった。また、成形体の外周の厚みがテープの分だけ厚くなってしまうため、成形体の金型の形状を変えないと蓋が閉まらなくなってしまうという問題も発生した。
(比較例5)
加飾フィルムが接着剤を有する構成ではなく、成形体の表面に接着剤を貼り付け、積層フィルムを貼り付ける構成とした。
【0100】
成形体が3次元形状のため、接着剤をきれいに貼り付けるのが難しく、作業にも時間がかかった。
【0101】
加飾フィルムが接着剤を有する構成のほうが、離型フィルムをはがして貼るだけなので、作業効率が高く、また、積層フィルムと接着剤の密着性が向上するので、成形体と接着剤の界面で剥離する構成に設計しやすいので、望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明にかかるフィルム加飾部品は、外観品位を要求される用途に適用できる。例えば、掃除機、エアコン、温水洗浄便座、冷蔵庫、洗濯機、などの家電製品に利用可能である。
【0103】
また、本発明の構成は、特に、意匠面・裏面ともに人の目に触れ、人が触ることができる、かつ、別部品でフィルムの端部を覆い隠せない、フィルム端部に人が触れる部品に好適に用いられる。例えば、掃除機の蓋や、エアコンのパネルなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
5 蓋(加飾部品)
7 積層フィルム
8 接着剤
9 第1の樹脂フィルム
10 印刷層
11 第2の樹脂フィルム
12 成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム加飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外観品位を向上させる手段には、塗装、光輝材の練り込みなどがあるが、その中の一つにフィルム加飾技術がある。フィルム加飾技術とは、印刷などで柄を加飾したフィルムで成形体を被覆する技術である。フィルム加飾技術の優位な点として、フィルムの状態で加飾の柄を印刷などで加飾できるため、塗装や光輝材の練り込みなどよりも、多種多様な柄や色使いが可能となり、より高い外観品位を得ることが可能となる。また、フィルムの材質を選択することで、耐傷付き性や汚れの防止といった機能を付加することも可能となる。
【0003】
フィルム加飾技術には、真空成形・真空圧空成形、インモールド成形、インサート成形などがある。
【0004】
中でも、真空成形・真空圧空成形は、比較的深絞りの大きい3次元形状の部品でも加飾ができる、また、被加飾部品である成形体の成形用の金型を、塗装など他の加飾技術を用いる部品や加飾を施さない部品と兼用できる、というメリットがある。
【0005】
しかしながら、真空成形・真空圧空成形は、成形体に加飾フィルム密着させた後、加飾フィルムをトリミング(所定の位置でカットして不要部分をはがす工程)することで加飾部品を得る工法であるため、フィルム端部の処理という課題が生じる。
【0006】
このため、従来は、フィルムの端部が露出しないように、フィルムの端部を成形体の裏面に持っていく、フィルムの端部を別部品で覆い隠す、などにより、フィルムの端部が人の目に触れない、人が触れないような構成としていた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図12は、特許文献1に記載された従来の加飾成形品を示すものである。図12に示すように、加飾成形品1は、裏面側が凹面形状をした樹脂基材2が、その表面をシート状加飾材3によって被覆されている。
【0008】
シート状加飾材3のトリミング部が表面から見えない位置にあるため、精度の悪い切断除去の仕方でも、シート状加飾材3の端部に剥がれが生じても加飾成形品1の加飾面への影響がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−284771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1など従来の構成は、裏面が、人の目に触れ、人が触ることができる部品、かつ、フィルムの端部を別の部品で覆い隠すことができないような部品の場合は、適用できないという課題を有していた。
【0011】
また、前記のような状況下では、フィルムの端部の露出が避けられないが、この場合、人が触るリスクが生じるので、従来よりも密着性が必要になる。その一方で、トリミング
の際に、はがしやすいことも求められる。
【0012】
また、前記フィルム加飾部品は、人の目に触れる外観部品であることから、外観品位を損なわないよう、トリミング後に不要部分をはがした跡がきれいであること、すなわちフィルムや接着剤が成形体の表面に残らないことも求められる。
【0013】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、真空成形または真空圧空成形によるフィルム加飾部品において、フィルム加飾により品位を向上するとともに、トリミング作業を容易にすること、および、トリミング後も外観品位を損なわないフィルム加飾部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明のフィルム加飾部品は、成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有し、かつ、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には成形体との界面で剥離する。
【0015】
積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムから構成することにより、強度が増し、トリミングの作業性が向上する。
【0016】
また、このとき、積層フィルムを、少なくとも異なる2種類の樹脂フィルムから構成すると、異なる特性を有する樹脂フィルム同士が互いの欠点を補完することでより一層強度が増し、トリミングの際に千切れることなく、トリミング作業が容易に行えるのでより望ましい。
【0017】
また、接着剤が、成形体との界面で剥離することによって、トリミングの際に、不要フィルムがはがしやすく、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残らず、外観品位を損なわない。
【0018】
なお、このとき、接着剤を、感圧型接着剤とすると、上記に加え、弾性を有するために成形体が比較的複雑な3次元形状でも追従しやすく密着性を確保できるので、より望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィルム加飾部品は、フィルム加飾により外観品位を向上するとともに、トリミングが容易で、トリミングによって外観品位を損なうことがないフィルム加飾部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における掃除機の全体斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における掃除機本体の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるフィルム加飾部品である掃除機の蓋の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図6】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図7】本発明の実施の形態1における加飾フィルムの断面図
【図8】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図11】本発明の実施の形態1における加飾工程を説明する断面図
【図12】従来の加飾成形品の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、真空成形または真空圧空成形によるフィルム加飾部品において、成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有する構成であって、かつ、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には成形体との界面で剥離する。
【0022】
ここで、意匠面とは、通常の製品使用時に人の目に触れる面、成形体をフィルムで被覆した面を指す。
【0023】
裏面が、人の目に触れ、人が触ることができる部品、かつ、積層フィルムの端部を別の部品で覆い隠すことができないような部品の場合、積層フィルムの端部の露出が避けられないが、積層フィルムを裏面まで巻き込ませるよりも意匠面でトリミングするほうが、密着性が確保しやすく、トリミング作業がしやすい。
【0024】
積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムを有する構成とすることによって、強度が増し、トリミング作業性が向上する。
【0025】
また、接着剤が、剥離時には成形体との界面で剥離することにより、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残ることなく、外観品位を損なわないフィルム加飾部品を得ることができる。
【0026】
第2の発明は、第1の積層フィルムが少なくとも異なる2種の樹脂フィルムを有し、かつ、接着剤が、感圧型接着剤である。
【0027】
積層フィルムを、少なくとも異なる2種類の樹脂フィルムから構成することによって、異なる特性を有する樹脂フィルム同士が互いの欠点を補完することで強度が増し、トリミングの際に千切れることなく、トリミング作業が容易に行える。また、最外層を外観品位向上、内層を最外層の補強、というようにそれぞれに異なる役割を持たせることもできる。
【0028】
また、接着剤が、感圧型接着剤であることにより、弾性を有するために成形体が比較的複雑な3次元形状でも追従しやすく密着性を確保できる一方で、トリミングの際に不要フィルムがはがしやすく、また、トリミング後に成形体の表面に接着剤が残ることなく、外観品位を損なわないフィルム加飾部品を得ることができる。
【0029】
第3の発明は、第1または第2の請求項の積層フィルムが印刷層を有し、印刷層よりも外層の樹脂フィルムが、ヘーズが1以下、全光線透過率が90%以上とした。
【0030】
印刷層よりも人の目に近い層の樹脂フィルムの光学特性を上記範囲に限定することにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を発現する。
【0031】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの請求項の積層フィルムにおいて、外層より、第1の樹脂フィルム、印刷層、第2の樹脂フィルムとした。
【0032】
前記構成であることにより、第2の樹脂フィルムに、ヘーズが高く、全光線透過率が低いフィルムを使用しても、印刷層の見え方を阻害しないため、高外観品位を発現すること
ができる。このため、第2の樹脂フィルムの選択肢が広がり、コストや機械的特性から自由に選択できるようになる。
【0033】
第5の発明は、第4の請求項の積層フィルムを、第1の樹脂フィルムを、アクリル樹脂フィルム、第2の樹脂フィルムを、ABS樹脂フィルムとした。
【0034】
アクリル樹脂フィルムは、無色透明であるため、印刷層の色味を損なわず、また、他の透明樹脂に比べてヘーズが低く、全光線透過率が高いため、印刷層の外層に用いると、深み感や奥行き感が演出できる。また、耐候性に優れるため、その高品位外観を長期に渡って保持できる。また、最外層にアクリル樹脂フィルムを用いることは耐傷付き性を確保することにおいても適している。
【0035】
ABS樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルムと積層すると、引裂強度や収縮の補完だけでなく、成形性にも優れ、また、接着剤との密着性が高いため、トリミングの際に、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすくすることができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
フィルム加飾部品の一例として、掃除機の蓋を取り上げて説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施の形態における掃除機の全体斜視図を、図2は、掃除機本体の斜視図(蓋が開いている状態)を、図3は、加飾フィルムの断面図を、図4は、フィルム加飾部品である掃除機の蓋の断面図を示すものである。
【0039】
図1において、掃除機4の蓋5は、フィルム加飾部品である。蓋5は、通常使用時には、図1のように閉まっているため、閉まった状態で目に触れる面が意匠面である。また、蓋5は、図1のように閉まっていることが多いが、図2のように開けることもあるため、意匠面だけでなく、裏面も人の目に触れ、人が触れる部品の代表例である。
【0040】
図3に示すように、加飾フィルム6は、積層フィルム7と接着剤8からなり、積層フィルム7は、外層から、第1の樹脂フィルム9、印刷層10、第2の樹脂フィルム11という構成である。
【0041】
さらに、図4において、フィルム加飾部品である蓋5は、成形体12と加飾フィルム6とからなり、成形体12と積層フィルム7は接着剤8を介して密着している。また、蓋5は、成形体12の表面に積層フィルム7の端部が露出する構成である。
【0042】
なお、蓋5は、部品のときに積層フィルム7の端部が露出する構成のため、図1のように蓋5が閉まっている場合は、積層フィルム7の端部はボディ部品13によって隠れるが、本発明の構成は、部品のときに積層フィルム7の端部が露出する構成であればよいため、製品に組み込まれるときに積層フィルム7の端部が隠れる構成であっても、隠れない構成であってもよい。
【0043】
まず、積層フィルム7が、意匠面側に端部を有する構成とした理由を説明する。
【0044】
特に、裏面でも人が触ることができる部品の場合、成形体の裏面まで巻き込ませると、裏面での接着面積が小さいことと、伸びが大きくなることによる接着剤の薄肉化による密着性の低下により、剥離リスクが上がるからである。裏面での接着面積を上げることで密
着性の改善は可能だが、加飾フィルムが多く必要であり、きれいに巻き込ませるのに工法での工夫が必要になる。したがって、意匠面側に積層フィルムの端部を有する構成のほうが望ましい。
【0045】
ここで、積層フィルム7が、意匠面側に端部を有する構成であれば、端部の位置は特に指定するものではなく、求める意匠や部品形状によって、自由に設計が可能である。なお、成形体のパーティングラインを超えないような位置や、成形体の端部のRがかかった部位にかからないような位置すると、密着性が確保しやすいので望ましい。
【0046】
また、用いる樹脂フィルムは、意匠面に積層フィルムの端部が露出する構成の場合、樹脂フィルムが収縮すると外観品位が低下するため、できるだけ収縮率が小さいものを選定することが望ましい。
【0047】
用いる樹脂フィルムの材料は特に限定するものではなく、例えば、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチルなど)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂(以下、ABSと略す)、ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略す)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂、などが使用可能である。
【0048】
中でも、アクリル樹脂は、無色透明であるため、印刷層の色味を損なわず、また、他の透明樹脂に比べてヘーズが低く、全光線透過率が高いため、印刷層の外層に用いると、深み感や奥行き感が演出できるため、望ましい。また、耐候性に優れるため、その高品位外観を長期に渡って保持できるため、望ましい。また、最外層にアクリル樹脂を用いることは耐傷付き性を確保することにおいても適している。
【0049】
ここで、加飾フィルムの積層フィルムに、異なる2種類以上の樹脂フィルムを用いるのがより望ましい。その理由について説明する。
【0050】
加飾フィルムの強度を上げる方法として、フィルムを積層せずにフィルムの厚みを増すという方法もある。アクリル樹脂フィルム一層とし、厚みを上げる例を挙げる。アクリル樹脂フィルムの欠点は、引裂強度が低いことである。厚みを増すことで裂けにくくはなるものの、引き裂きに弱い特性そのものは変わらないため、トリミングの作業性は劇的には向上しない。これに対し、異種の樹脂フィルムを積層すると、互いの欠点を補完することができるため、トリミングの作業性が劇的に向上する。
【0051】
異なる2種類以上の樹脂フィルムを用いるメリットは他にもある。収縮しやすいフィルムと収縮しにくいフィルムを積層することで、積層フィルムの収縮を抑制できることがある。例えば、アクリル樹脂フィルムのみでは、2倍以上に伸ばすと、ヒートサイクル試験で、わずかに(0.1〜0.2mm程度)収縮が発生したが、ABS樹脂フィルムとの積層フィルムでは、収縮しなくなることを確認した。
【0052】
また、樹脂フィルムの積層方法は、特に指定するものではない。例えば共押出し、熱ラミ、ドライラミなどが使用可能である。
【0053】
なお、図3は、本発明の加飾フィルムの構成における一例であるため、加飾フィルムの構成や積層順は指定するものではなく、例えば、樹脂フィルムが2層の場合は、図5のように、外層から、第1の樹脂フィルム9、第2の樹脂フィルム11、印刷層10、接着剤8でもよい。また、樹脂フィルムを3層以上有する構成でもよい。例えば、この場合は、
図6(第1の樹脂フィルム9、印刷層10、第2の樹脂フィルム11、第3のフィルム14、接着剤8)や図7(第1の樹脂フィルム9、第2の樹脂フィルム11、第3のフィルム14、印刷層10、接着剤8)などがあり、これ以外の構成でもよい。
【0054】
また、印刷層の印刷方法は、グラビア印刷、シルク印刷、オフセット印刷など特に指定するものではなく、求めるデザイン柄や色使い、フィルムとインクとの密着性で自由に選択できる。なお、加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムにおける印刷層の柄を設計しておくことが望ましい。
【0055】
ここで、前述の通り、積層順は指定するものではないが、高外観品位を発現するためには、印刷層の外層には、ヘーズが低く、全光線透過率が高い樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0056】
なお、ヘーズは、JIS K7136で測定されるものであり、印刷層の外層の樹脂フィルムのヘーズは、より高い外観品位を得るためには、1未満(厚み3mm時)が望ましい。また、全光線透過率は、JIS K7316で測定されるものであり、印刷層の外層の樹脂フィルムの全光線透過率は、より高い外観品位を得るためには、90%以上(厚み3mm時)が望ましい。
【0057】
ここで、図3や図6のように、第2の樹脂フィルムを印刷層の内層にするような構成とすると、第2の樹脂フィルムは、外観品位に直接的に影響しないため、ヘーズや全光線透過率をそれほど意識せずに、コストや機械的特性などから自由に選択ができるため、より望ましい。
【0058】
なお、積層フィルムにおいては、接着剤と隣接するのが、印刷層よりも、樹脂フィルムのほうが、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすいので望ましい。また、その場合、接着剤と隣接するのは、ABS樹脂フィルムとするのが望ましい。ABS樹脂フィルムはアクリル樹脂フィルムと積層すると、強度や収縮の補完だけでなく、成形性にも優れ、また、接着剤との密着性が高いため、トリミングの際に、成形体と接着剤との間で界面剥離しやすくすることができる。
【0059】
また、加飾フィルムの厚さは特に指定するものではないが、薄すぎると、強度が低くなることで、トリミング作業がしにくくなり、また、厚すぎると、真空成形/真空圧空の際に伸びにくくなることで成形体の形状に追従しにくくなる、爪が引っかかりやすくなる、成形体がフィルム加飾しない部品と他の部品と金型を共有する場合に、他部品とのかみ合わせが悪くなる(たとえば、掃除機の蓋をフィルム加飾する場合、蓋が閉まらなくなる)などの理由から、50〜500μmが望ましい。なお、加飾部品における加飾フィルムの厚さは、一定でなくてもかまわない。一般に真空成形や真空圧空成形の場合、外周部や凹凸の多い部分は加飾フィルムが伸ばされやすいため、他より薄くなりやすい。このため、加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムの厚みを設計しておくことが望ましい。
【0060】
接着剤は、剥離時に、成形体との界面で剥離するが、剥離時(トリミング作業時)に、一部が界面剥離した場合に、他の部分も連鎖的に界面剥離するものが作業性が良く、望ましい。
【0061】
接着剤には、感圧型接着剤、ホットメルト、溶液型、反応型、などがあるが、中でも、感圧型接着剤が望ましい。
【0062】
感圧型接着剤は、JIS K6800では、「常温で圧力を加えるだけで接着する接着
剤」と定義されており、一般には粘着剤と同義で扱われる。
【0063】
感圧型接着剤は、弾性を有するために3次元形状への追従性が良好であり、積層フィルム7と成形体の密着性が確保しやすい。一方で、常温で接着・剥離が可能であるため、トリミング作業がしやすい。さらに、剥離時は成形体との界面で剥離するために、成形体の表面に接着剤が残らず、外観品位を損なわない。
【0064】
ここで、接着剤の材料は、特に指定するものではなく、例えば、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系などがある。中でも、密着性、耐候性、耐熱性、耐溶剤性に優れるため、アクリル系を用いるのが望ましい。
【0065】
接着剤の厚さは特に指定するものではないが、故意に爪ではがそうとしてもはがしにくいという観点から、爪よりも薄いことが望ましい。ただし、薄くなりすぎると密着性が低下するため、10〜50μmが望ましい。なお、加飾部品における接着剤の厚さは、一定でなくてもかまわない。一般に真空成形や真空圧空成形の場合、外周部や凹凸の多い部分は加飾フィルムが伸ばされやすいため、他より薄くなりやすい。フィルム加飾部品における加飾フィルムの伸びを考慮して、加飾前の加飾フィルムにおける接着剤の厚みを設計しておくことが望ましい。
【0066】
また、接着剤は、加飾フィルムの構成中にあるほうが、積層フィルムとの密着性が向上し、トリミングの際に成形体との界面で剥離しやすくなるため、望ましい。
【0067】
次に、成形体について説明する。
【0068】
成形体を構成する樹脂は、特に指定するものではなく、例えば、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、PC樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせてポリマーアロイとして用いることもできる。あるいは、アロイ化も含めた種々の変性処理を行ってもよいし、前記以外の樹脂を組み合わせてもよい。
【0069】
前記樹脂は、製造コスト、外観品位、機械的物性などの諸条件を考慮した上で、適切なものを選択すればよい。中でも、ABS樹脂が、密着性、成形性(成形体表面にひけが生じにくい)、機械的強度、などから特に望ましい。
【0070】
成形体には、前記樹脂に加えて、種々の添加剤が含まれていてもよい。具体的には、充填剤、可塑剤、内部離型剤、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、抗菌剤などを挙げることができる。
【0071】
成形体の成形方法も特に指定するものではない。
【0072】
次に、成形体12の加飾フィルム6による加飾方法について説明する。
【0073】
まず、図8に示すように、成形体12と受け治具28を、下チャンバーボックス29内の設置治具30にセットし、加飾フィルム6を、下チャンバーボックス29上面にセットする。その後、上チャンバーボックス31を降下させ、上下チャンバーボックス内をそれぞれ気密状態とする。
【0074】
そして、上下チャンバーボックス内をそれぞれ真空ポンプ32で真空状態(減圧状態)
とし、ヒーター33を点灯して加飾フィルム6の加熱を行う。そして図9に示すように、下チャンバーボックス29内の設置治具30を上昇させ、加飾フィルム6に成形体12
を接触させる。
【0075】
その後、図10に示すように、真空配管34の弁を操作することで上チャンバーボックス31側の真空を開放して大気圧状態とすることにより、大気により加飾フィルム6を成形体12に均一に加圧することで、その形状に沿って加飾フィルム6を被覆することができる。加飾フィルム6の成形体12に接する面には接着剤8があるため、大気によって加圧されることで、加飾フィルム6が成形体12に密着する。
【0076】
また、このとき、図10に示すように、上チャンバーボックス31内に圧空タンク35から圧縮空気を入れることにより、加飾フィルム6をさらに大きな力で成形体12に密着させることもできる。なお、圧縮空気を入れる工程はあってもなくても良く、この工程がない場合を真空成形、この工程がある場合を真空圧空成形と呼ぶ。
【0077】
そして、ヒーター33を消灯し、冷却する。そして、下チャンバーボックス29内を大気圧状態に戻し、上チャンバーボックス31を上昇させる。次に、加飾フィルム6を成形体12の周囲でカットし、図11のような、フィルム加飾された成形体12を取り出す。
【0078】
さらに、成形体12の意匠面で、加飾フィルム6をカットし、不要な加飾フィルム6をはがすことで図4のようなフィルム加飾部品を得る(この工程をトリミングと呼ぶ)。
【0079】
なお、加飾フィルム6のカットに使う道具は、特に指定するものではない。例えば、カッター、ホットナイフ、超音波カッターなどの方法が使用可能である。
【0080】
以上のように、積層フィルムを、少なくとも2層の樹脂フィルムを有する構成とすることにより、トリミング作業が容易に行え、また、接着剤が、成形体の界面で剥離することにより、トリミングの際に不要フィルムがはがしやすく、また、トリミング後には、成形体の表面のフィルムをはがした跡は、接着剤が残らず、外観品位を損なわなかった。
【0081】
さらに実施例にて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
図3の加飾フィルムの構成を、外層より、アクリル樹脂フィルム75μm、印刷層、ABS樹脂フィルム150μm、アクリル系粘着剤25μmとし、成形体としてABS樹脂を用いた。
【0083】
なお、アクリル樹脂フィルムのヘーズは0.3、全光線透過率は92%である(いずれも厚さ3mm時)。
【0084】
この構成とすることにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0085】
また、トリミングの際も、アクリル樹脂フィルムの引裂きに弱い特性をABS樹脂フィルムが補完することにより、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0086】
掃除機の製品寿命を想定した試験(ヒートサイクル、温度加速、湿度加速)でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できた。
(実施例2)
図7の加飾フィルムの構成を、外層より、アクリル樹脂フィルム20μm、PC樹脂フィルム160μm、アクリル樹脂フィルム20μm、印刷層、アクリル系粘着剤30μmとし、成形体として、PC樹脂を用いた。
【0087】
なお、印刷層の外層のフィルム(アクリル樹脂フィルム、PC樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムの積層体)のヘーズは1、全光線透過率は90%である(いずれも厚さ3mm時)。
【0088】
この構成とすることにより、深み感や奥行き感が演出でき、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0089】
また、トリミングの際も、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0090】
掃除機の製品寿命を想定した試験でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できた。
(実施例3)
図3の加飾フィルムの構成を、外層より、ABS樹脂フィルム100μm、印刷層、PET樹脂フィルム50μm、ゴム系粘着剤20μmとし、成形体として、ABS樹脂を用いた。なお、ヘーズと全光線透過率は、ABS樹脂フィルムが2、85%(いずれも厚さ3mm時)。
【0091】
この構成とすることにより、高品位外観を有する加飾部品が得られた。
【0092】
また、トリミングの際も、不要部分のフィルムが千切れることなく、はがすことができ、また、成形体の表面に接着剤が残ることがないため、外観を損なうことがなかった。
【0093】
掃除機の製品寿命を想定した試験でも、フィルムの剥離や収縮がなく、また、使用中の蓋開閉を想定してフィルム端部を爪で所定回数引っかいたが、剥離することがなく、密着性も確保できていた。
【0094】
なお、実施例3の構成は、実施例1や実施例2よりは、若干ではあるが、外観品位が劣った。印刷層の外層のABS樹脂フィルムが、わずかに黄味を有していることと、実施例1、2よりも、ヘーズが高く、全光線透過率が低いため、と考える。
(比較例1)
加飾フィルムを、積層フィルムとせず、アクリル樹脂フィルム一層とし、アクリル樹脂フィルム125μm、印刷層、アクリル系粘着剤25μm、という構成とした。
【0095】
アクリル樹脂フィルムは引裂強度が低いため、トリミング作業の際に、フィルムが千切れ、作業性が低下した。さらにアクリル樹脂フィルムの厚みを増すことで千切れにくくなったが、アクリル樹脂フィルムは他のフィルムに比べ高価であり、厚みを増しても引き裂きに弱い特性そのものは変わらないため、できれば異種のフィルムを積層して引き裂き弱さを補うようにするほうが望ましい。また、アクリル樹脂フィルム一層では、わずかながらも収縮が発生したことから、異種のフィルムを積層するほうが望ましい。
(比較例2)
実施例1の加飾フィルムの接着剤を、PET系ホットメルト25μmに変えた。
【0096】
剥離の形態が接着剤の凝集剥離のため、成形体の表面に接着剤が残ってしまった。従っ
て、剥離の形態は接着剤と成形体との界面剥離であることが望ましい。
(比較例3)
加飾フィルムの構成は実施例1同様とし、加飾フィルムを裏側に巻き込む構成とした。
【0097】
トリミング作業をするためには、チャンバーから取り出した後で、成形体を裏返す必要があるため、トリミングの作業性が低下した。
【0098】
裏面も人が触ることができる部品の場合、加飾フィルムを裏まで巻き込ませると、裏面での接着面積が小さいために、剥離のリスクが上がるため、意匠面に端部が露出する構成とするほうが望ましい。
(比較例4)
加飾フィルムの構成を比較例2同様とし、フィルム端部の上からテープを貼り付け固定した。
【0099】
テープにより成形体の表面に残った接着剤の跡は隠すことができたが、部品数、工程数が増えることによりコストUPになった。また、成形体の外周の厚みがテープの分だけ厚くなってしまうため、成形体の金型の形状を変えないと蓋が閉まらなくなってしまうという問題も発生した。
(比較例5)
加飾フィルムが接着剤を有する構成ではなく、成形体の表面に接着剤を貼り付け、積層フィルムを貼り付ける構成とした。
【0100】
成形体が3次元形状のため、接着剤をきれいに貼り付けるのが難しく、作業にも時間がかかった。
【0101】
加飾フィルムが接着剤を有する構成のほうが、離型フィルムをはがして貼るだけなので、作業効率が高く、また、積層フィルムと接着剤の密着性が向上するので、成形体と接着剤の界面で剥離する構成に設計しやすいので、望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明にかかるフィルム加飾部品は、外観品位を要求される用途に適用できる。例えば、掃除機、エアコン、温水洗浄便座、冷蔵庫、洗濯機、などの家電製品に利用可能である。
【0103】
また、本発明の構成は、特に、意匠面・裏面ともに人の目に触れ、人が触ることができる、かつ、別部品でフィルムの端部を覆い隠せない、フィルム端部に人が触れる部品に好適に用いられる。例えば、掃除機の蓋や、エアコンのパネルなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
5 蓋(加飾部品)
7 積層フィルム
8 接着剤
9 第1の樹脂フィルム
10 印刷層
11 第2の樹脂フィルム
12 成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空成形または真空圧空成形により加飾されるものであり、本体を構成する成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有する加飾部品であって、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には前記成形体との界面で剥離することを特徴とするフィルム加飾部品。
【請求項2】
前記積層フィルムが少なくとも2種類の樹脂フィルムから構成され、かつ、前記接着剤が、感圧型接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム加飾部品。
【請求項3】
前記積層フィルムが、最外層のフィルムよりも内側に印刷層を有し、印刷層より外層の樹脂フィルムが、ヘーズが1以下、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム加飾部品。
【請求項4】
前記積層フィルムが、外層より、第1の樹脂フィルム、印刷層、第2の樹脂フィルムという構成であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム加飾部品。
【請求項5】
前記第1の樹脂フィルムが、アクリル樹脂フィルムであり、前記第2の樹脂フィルムが、ABS樹脂フィルムである請求項4に記載のフィルム加飾部品。
【請求項1】
真空成形または真空圧空成形により加飾されるものであり、本体を構成する成形体と、前記成形体を覆う積層フィルムと、前記成形体と前記積層フィルムとの間に接着剤とを有する加飾部品であって、前記積層フィルムの端部は前記成形体の意匠面に露出する構成とし、かつ、前記積層フィルムは少なくとも2層の樹脂フィルムを有し、かつ、前記接着剤は、剥離時には前記成形体との界面で剥離することを特徴とするフィルム加飾部品。
【請求項2】
前記積層フィルムが少なくとも2種類の樹脂フィルムから構成され、かつ、前記接着剤が、感圧型接着剤であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム加飾部品。
【請求項3】
前記積層フィルムが、最外層のフィルムよりも内側に印刷層を有し、印刷層より外層の樹脂フィルムが、ヘーズが1以下、全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム加飾部品。
【請求項4】
前記積層フィルムが、外層より、第1の樹脂フィルム、印刷層、第2の樹脂フィルムという構成であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム加飾部品。
【請求項5】
前記第1の樹脂フィルムが、アクリル樹脂フィルムであり、前記第2の樹脂フィルムが、ABS樹脂フィルムである請求項4に記載のフィルム加飾部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−187887(P2012−187887A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55120(P2011−55120)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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