フィルム外装電気デバイス
【課題】外装体フィルムの熱融着層を熱融着させる際に、軟化した熱融着層に何らかの部材が接触して該熱融着層が傷付けられることを回避する。
【解決手段】複数の正・負極延出部2a、2bが正・負極リード3a、3bにそれぞれ一括して接合された電池要素2が、少なくとも熱融着層10と金属層11とが積層されたラミネートフィルム5、6によって包囲されたフィルム外装電池1であって、少なくとも正・負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bと、それに対向するラミネートフィルム5の熱融着層10との間に、融点が熱融着層10よりも低い保護部材4aが配置されている。
【解決手段】複数の正・負極延出部2a、2bが正・負極リード3a、3bにそれぞれ一括して接合された電池要素2が、少なくとも熱融着層10と金属層11とが積層されたラミネートフィルム5、6によって包囲されたフィルム外装電池1であって、少なくとも正・負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bと、それに対向するラミネートフィルム5の熱融着層10との間に、融点が熱融着層10よりも低い保護部材4aが配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス要素が外装フィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器や電気自動車等の電源として用いられる電池には、軽量化、薄型化が強く要求されている。しかし、従来の電池の外装体(金属缶)には、軽量化、薄型化に限界があった。そこで、軽量化、薄型化が可能な外装体として、フィルムが用いられるようになった。具体的には、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムが電池の外装体として用いられるようになった。金属薄膜フィルムやラミネートフィルムは、金属缶に比べて形状変化の自由度が高いという利点もある。
【0003】
上記ラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の一面に、熱融着層としてのPP層(ポリプロピレン層)を、他面に保護層としてのナイロン層またはPET層(ポリエチレンテレフタレート層)が積層された3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
一般的なフィルム外装電池では、正極板および負極板がセパレータを介して積層された電池要素がラミネートフィルムによって包囲され、該ラミネートフィルムの周辺部が気密に熱融着されている。さらに、電池要素の正極および負極をラミネートフィルムの外部へ引き出すために、一端が正極板又は負極板に接続され、他端がラミネートフィルムの外に引き出された正極リードまたは負極リードが設けられている。上記セパレータとしては、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いて形成した多孔性フィルムなどが用いられるのが一般的である。
【0005】
図9を参照しながら従来のフィルム外装電池の構造についてさらに詳しく説明する。図9は、従来のフィルム外装電池の縦断面図である。
【0006】
フィルム外装電池301は、電池要素302と、電池要素302を電解液とともに収納する外装体とを有する。電池要素302は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層されたものである。各正極板は、アルミニウム箔に正極材料を塗布したものであり、各負極板は、銅箔に負極材料を塗布したものである。電極材料が塗布されていないアルミニウム箔及び銅箔の未塗装部(延出部)は、積層領域よりも外側に引き出されている。各正極板の延出部(正極延出部303a)は、一括して正極リード304aに接合されている。また、各負極板の延出部(負極延出部303b)は、一括して負極リード304bに接合されている。尚、正・負極延出部303a、303bの接合には、一般的に超音波溶接が用いられる。また、正極リード304a、負極リード304bは、アルミニウム板、銅板を打ち抜き加工することにより作製される。
【0007】
外装体は、電池要素302をその厚み方向両側から挟んで包囲する2枚のラミネートフィルム305、306である。各ラミネートフィルム305、306は、熱融着層としてのPP層310、金属層としてのアルミニウム層311、および保護層としてのナイロン層312を積層してなるものである。各ラミネートフィルム305、306は、PP層310が内側となる向きで電池要素302を包囲すると共に、対向する互いのPP層310の周縁部同士が熱融着されている。
【0008】
以上のような構造を有するフィルム外装電池においては、振動等により、正・負極延出部の接合部や正・負極リード、特に、それらの先鋭な角がラミネートフィルムの熱融着層に接触し、該熱融着層を傷付ける虞がある。さらに、熱融着層が傷付けられると、傷付けられた部分の厚みが薄くなって絶縁性が低下する。この結果、熱融着層の下層の金属層と接合部の角とが電気的短絡を起こす可能性が非常に高くなる。
【0009】
このような問題に対応するため、正、負極の端子と正、負極のリードとの各接合部を内部に収納する断面三角形の絶縁スペーサが提案されている(特許文献1:国際公開第00/59063号パンフレット)。この絶縁スペーサは、各リードを挿通させる挿通穴を有する。この絶縁スペーサは、正、負極の端子の集合部を収納するとともに、積層電極の端面を押さえつけて積層電極を固定して、リードの切断、外装フィルムの破損、あるいは外装フィルムと積層電極との電気的短絡を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第00/59063号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記パンフレットに開示されている技術を含む従来の技術は、フィルム外装電池の使用中に、ラミネートフィルムの熱融着層が正、負極集電部の角部によって傷付けられる、との前提に立脚した技術であった。
【0012】
しかし、本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ラミネートフィルムの熱融着層がフィルム外装電池の製造過程において既に傷付けられる場合が多いことを発見した。具体的には、対向する熱融着層の周辺部同士を熱融着させる際には、該熱融着層が加熱によって軟化する。この状態のときに、電池要素の一部が熱融着層に接触すると、熱融着層が部分的に傷付けられる。特に、接合された正、負極延出部の角は鋭利であるので、該角が軟化した熱融着層に接触すると、熱融着層には深く抉られたような傷が残る。正、負極延出部の接合部の角によって損傷を受けた熱融着層の状態を図10に模式的に示す。図中、符号400が熱融着層を示し、401が正極延出部の接合部、402が金属層、403が保護層、404が熱融着層400に残った傷をそれぞれ示す。尚、図10では、熱融着層400、金属層402および保護層403からなるラミネートフィルム405に熱融着された相手方のラミネートフィルムの図示は省略してある。
【0013】
ここで、フィルム外装電池の使用時、少なくとも熱融着工程が終了し、熱融着層が硬化した後に、接合部401の角が熱融着層400に接触した場合に比べて、加熱によって軟化している熱融着層400に接合部401の角が接触した場合の方が上記損傷が発生し易く、また、その損傷の程度も大きいことは自明である。
【0014】
以上のような製造過程における熱融着層の損傷は、上記パンフレットに開示されている絶縁スペーサやその他の樹脂製の保護部材を正・負極延出部の接合部と熱融着層との間に介在させただけでは十分に回避できない。即ち、樹脂製の保護部材の融点が熱融着層の融点と同等かそれ以上である場合には、熱融着層が融着可能な状態にまで軟化したとき、保護部材は熱融着層と同等かそれ以上の硬さを有する。従って、軟化した熱融着層に保護部材が接触すると、正・負極延出部の接合部が接触したときと同様に熱融着層が傷付けられる。例えば、熱融着層として一般的に用いられるPPの融点は、140℃〜150℃である。従って、熱融着層がPPによって形成されている場合に、保護部材が140℃〜150℃以上の融点を持つ材料で形成されていると、却って保護部材によって熱融着層が傷付けられる。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、電気デバイス要素を包囲している外装フィルムの熱融着層を保護する保護部材を備えたフィルム外装電気デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のフィルム外装電気デバイスは、正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
上記特徴を有する本発明のフィルム外装電気デバイスでは、外装体フィルムの熱融着層が接合部における正極延出部や負極延出部、正極リード、負極リードの角によって傷付けられることがない。
【0018】
また、前記保護部材は、前記第一または第二の接合部と対向する前記熱融着層の一方との間に配置された上面部と、前記第一または第二の接合部と対向する前記熱融着層の他方との間に配置された下面部と、それら上面部と下面部とを連結する連結部とを有し、該連結部に正極リードまたは負極リードを挿通可能な開口部が形成されているものであってもよい。このような保護部材を採用すれば、開口部に正極リードまたは負極リードを通すことによって、上面部を接合部と熱融着層との間に配置し、下面部を正極リードまたは負極リードと熱融着層との間に配置することができる。よって、接合部と熱融着層との間に配置される保護部材と、正極リードまたは負極リードと熱融着層との間に配置される保護部材とが別体である場合に比べて、保護部材の装着が容易であり、位置ずれ等の不具合が発生する可能性も低くなる。かかる構成を備えた保護部材は、例えば、二つ折りにした一枚のシート材またはフィルム材の一方の面を前記上面部、他方の面を前記下面部、折り返し部を前記連結部とすることによって得ることができる。
【0019】
さらに、前記保護部材は、前記正極延出部および前記負極延出部の形状に合わせて立体的に形成することもできる。例えば、纏められた各延出部の断面形状が略三角形である場合には、前記上面部および前記下面部を前記開口部に近づくに連れて次第に近接させることによって、断面略三角形の袋状に形成することが好適である。加えて、保護部材を立体的に形成する場合には、前記上面部と前記下面部とを側面部によって一体に連結することが好適である。
【0020】
また、前記保護部材は、前記正極延出部および前記負極延出部の各接合部に被せることが可能なリング状に形成されていてもよい。
【0021】
前記保護部材を伸縮性のある材料で形成することによって、正極延出部および負極延出部の形状に応じて変形可能とすることもできる。また、保護部材が伸縮性を有する場合、保護部材の寸法を該保護部材が被せられる部材と同等がやや小さくすることによって、保護部材を自己の弾性復元力によって所定位置に固定することも可能となる。もちろん、保護部材を伸縮性のある材料によって立体的に形成することも可能である。保護部材に伸縮性を持たせる場合には、発泡材料によって保護部材を形成することが好適である。さらに、保護部材は、その一部のみが伸縮性を有するものであってもよい。保護部材の一部のみを伸縮可能とする場合には、保護部材の中央部を伸縮性材料で形成し、角部を非伸縮性材料で形成することが好ましい。
【0022】
さらに、前記保護部材を前記電気デバイス要素の周縁に被せることが可能な枠状に形成し、対向する一対の辺の一方に前記正極リードを挿通可能な第一の開口部を形成し、対向する一対の辺の他方に前記負極リードを挿通可能な第二の開口部を形成し、前記第一の開口部が形成された辺から延びる上面部を前記正極延出部の接合部と前記熱融着層との間に配置し、第二の開口部が形成された辺から延びる上面部を前記負極延出部の接合部と前記熱融着層との間に配置することもできる。
【0023】
本発明においては、前記保護部材が前記熱融着層よりも低融点であれば、それぞれの材料は特に限定されないが、保護部材がポリエチレンによって形成され、熱融着層がポリプロピレンによって形成されていることが好適である。
【0024】
本発明は、本件発明者らによる研究によって初めて得られた上記知見に基づくものである。上記及びそれ以外の本発明の目的、特徴及び利点は、下記の記載及び本発明の一例を示す添付図面の参照によって明らかになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外装体フィルムの熱融着層が傷付けられることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図2】図1に示すフィルム外装電池の部分拡大断面図である。
【図3】図1に示すフィルム外装電池の正極延出部の接合部付近の拡大断面図である。
【図4】保護部材の変形例を示す斜視図である。
【図5】図4に示す保護部材の配置状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8A】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8B】図8Aに示す保護部材の配置状態を示す平面図である。
【図9】従来のフィルム外装電池の基本構造を示す断面図である。
【図10】延出部の接合部によって損傷を受けた熱融着層を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明のフィルム外装電気デバイスの実施形態の一例について説明する。本例のフィルム外装電気デバイスは、電池要素がフィルム状の外装体によって包囲されたフィルム外装電池である。
【0028】
図1は、本例のフィルム外装電池の分解斜視図であり、図2は、一部省略の拡大断面図である。このフィルム外装電池1は、正極延出部2aおよび負極延出部2bを備えた電池要素2と、電池要素2を不図示の電解液とともに収納する外装体と、正極延出部2aに接続された正極リード3aと、負極延出部2bに接続された負極リード3bと、保護部材4a、4a’とを有する。外装体は、2枚のラミネートフィルム5、6から構成されている。尚、図1では、保護部材4a、4a’の図示は省略してある。
【0029】
電池要素2は、セパレータと、該セパレータを介して交互に積層された複数の正極板および負極板とから構成されている。具体的には、各正極板は、正極材料が塗布されたアルミニウム箔である。各負極板は、負極材料が塗布された銅箔ある。それぞれの箔の電極材料が塗布されていない部分(未塗装部分)は、積層領域よりも外側に引き出されて正・負極延出部2a、2bを構成している。そして、各正極延出部2aは、一括して正極リード3aの後部に超音波溶接によって接合されている。各負極延出部2bは、一括して負極リード3bの後部に超音波溶接によって接合されている。ここで、正極リード3aおよび負極リード3bの表裏面には、ラミネートフィルム5、6との融着性を向上させるべく、ポリプロピレンを帯状に塗布して被覆部7が形成されている。尚、正・負極リード3a、3bの被覆部7は、正・負極延出部2a、2bが正・負極リード3a、3bに接合されている位置よりも該リード3a、3bの先端寄りの位置に形成されている。
【0030】
外装体を構成している2枚のラミネートフィルム5、6は、電池要素2をその厚み方向両側から挟んで包囲している。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着層10、金属層11および保護層12の3層からなる。本例では、熱融着層10をPP(ポリプロピレン)によって、金属層11をアルミニウムによって、保護層12をナイロンまたはPET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成してある。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着層10が内側となる向きで電池要素2を包囲している。また、各ラミネートフィルム5、6の熱融着層10の対向する周辺部同士は、気密に熱融着されている。さらに、各ラミネートフィルム5、6の熱融着層10の周辺部のうち、正、負極リード3a、3bと対向する領域は、各リード3a、3bに形成されている被覆層7に熱融着されている。
【0031】
正、負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bとラミネートフィルム5(熱融着層10)との間には、保護部材4aが介在している。また、正・負極リード3a、3bとラミネートフィルム6(熱融着層10)との間には、保護部材4a’が介在している。尚、図2には、正極延出部2aの接合部10aとラミネートフィルム5との間に介在する保護部材4a、および正極リード3aとラミネートフィルム6との間に介在する保護部材4aのみを図示する。もっとも、正極側に配置される保護部材と負極側に配置される保護部材とは同一の構成を有し、同一の作用効果を奏する。よって、ここでは、図示されている保護部材4a、4a’を例にとってその構成及び作用効果について説明する。
【0032】
各保護部材4a、4a’は、熱融着層10よりも低融点の樹脂(本例ではPE:ポリエチレン)からなるフィルムまたはシートである。各保護部材4a、4a’の厚みは約100μmである。保護部材4a、は、正極リード3aに一括溶接された正極延出部2aの接合部20a、少なくとも、該接合部20aの角21を覆うことが可能な形状および寸法を有する。一方、保護部材4a’は、正極リード3aの後部、少なくとも、該リード3aの後方角部22を覆うことが可能な形状および寸法を有する。もっとも、本例では、保護部4a、4a’は同一の形状および寸法を有する。
【0033】
保護部材4a、4a’は、ラミネートフィルム5、6の熱融着層10を熱融着させる際に、該熱融着層10を保護する役割を果たす。具体的には、保護部材4aは、ラミネートフィルム5の熱融着層10と接合部20aとの間、少なくとも、該接合部20aの角21と熱融着層10との間に介在し、角21が熱融着層10に損傷を与えることを防止する。一方、保護部材4a’は、ラミネートフィルム6の熱融着層10と正極リード3aとの間、少なくとも、該リード3aの後方角部22と熱融着層10との間に介在し、後方角部22が熱融着層10に損傷を与えることを防止する。
【0034】
即ち、フィルム外装電池1の製造過程では電池要素2をその厚み方向両側から挟むようにラミネートフィルム5、6を配置した上で、ラミネートフィルム5、6の周辺部をヒータで加熱して、対向する熱融着層10の周辺部同士、および熱融着層10と被覆層7とを熱融着させる。このとき、加熱によって軟化した熱融着層10に接合部20aの角21や正極リード3aの後方角部22が接触すると、熱融着層10が損傷を受ける。しかし、保護部材4a、4a’によってかかる損傷が回避されることはこれまでの説明および図2等から自明である。
【0035】
さらに、本例のフィルム外装電池1では、保護部材4a、4a’が熱融着層10よりも低融点のポリエチレンによって形成されている。このことには、次のような技術的意義がある。即ち、ポリプロピレンからなる熱融着層10同士を熱融着させるためには、140℃〜150℃の熱を加える必要がある。一方、ポリエチレンからなる保護部材4a、4a’の融点は、約120℃である。従って、熱融着層10が加熱されて軟化する前に、保護部材4a、4a’が十分に軟化する。この結果、軟化した熱融着層10に保護部材4a、4a’が接触したとしても、熱融着層10が保護部材4a、4a’によって損傷を受けることはない。仮に、熱融着層10に保護部材4a、4a’が接触した痕跡(傷)が熱融着層10に残ったとしても、保護部材4a、4a’は熱融着層10に比して十分に軟化しているので、その傷23の表面は、図3に示すような円弧状になる。また、傷の深さは非常に浅いものとなる。少なくとも、熱融着層10に図10に示す傷404のような深く抉れた傷が残ることはない。従って、熱融着層10の絶縁性が低下し、接合部20a、20bと金属層11との間で電気的短絡が発生する可能性が高まる虞はない。尚、図3では、図2に示されているラミネートフィルム6の図示は省略してある。
【0036】
尚、正・負極リード3a、3bの厚みが接合部20a、20bに比べて非常に薄い場合や、それらリード3a、3bの後方角部22が先鋭でない場合などには、保護部材4a’を省略し、保護部材4aのみを設けることも可能である。
【0037】
図4は、保護部材の一変形例を示す斜視図である。図4に示す保護部材4bは、熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)からなるシート材またはフィルム材を二つ折りにして形成したものである。この保護部材4bは、正・負極延出部2a、2b(図1)を覆う上面部30と、正・負極リード3a、3b(図1)の後部を覆う下面部31と、これら上面部30と下面部31とを連結する連結部32とが一体に形成されている。また、連結部32には、正・負極リード3a、3bを通すことが可能なスリット33が形成されている。保護部材4bは、正極側および負極側の双方に配置される。もっとも、正極側に配置される保護部材4bと、負極側に配置される保護部材4bの構成および作用効果は同一である。よって、正極側に配置される保護部材4bを例にとって、保護部材4bの構成及び作用効果について説明する。
【0038】
保護部材4bは、図5に示すように、スリット33に正極リード3aが通され、上面部30が正極延出部2aに被せられ、下面部31が正極リード2aの後部に被せられる。これによって、少なくとも接合部20aの角21および正極リード3aの後方角部22が保護部材4bによって覆われ、これら角21、後方角部22による熱融着層10の損傷が防止される。もちろん、図4に示す保護部材4bも熱融着層10よりも低融点のポリエチレンによって形成されているので、保護部材4bが熱融着層10を傷付ける虞はない。尚、図5でも、ラミネートフィルム6の図示は省略してある。
【0039】
ここで、上面部30の幅(W1)は、正極延出部2aの幅方向全体を覆うべく、該延出部2aの幅よりも若干大きく形成することが好適である。本例では、正極延出部2aの幅が66.0mmであるのに対し、上面部30の幅(W1)は66.5mmである。本例では、上面部30と下面部31の形状および寸法を共通にしてあるが、上面部30と下面部31の形状および寸法を共通にすることは必須ではない。
【0040】
また、スリット33は、正極リード3aを挿通可能な形状および寸法を有する。本例では、正極リード3aに形成されている被覆部7の奥まで保護部材4bが挿入されている(図5参照)。従って、スリット33の幅(W2)は、被覆部7を通すことができるように、該被覆部7の幅よりも若干大きく形成されている。具体的には、被覆部7の幅が46.0mmであるのに対し、スリット33の幅(W2)は、46.5mmである。もっとも、保護部材4bが伸縮性を有する材料(例えば、発泡材料)によって形成されている場合には、装着時にスリット33の幅をある程度広げることが可能である。よって、保護部材4bが伸縮性を有する場合には、スリット33の幅(W2)を被覆部7の幅と同一か、それより狭くしてもよい。
【0041】
図6は、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。図6に示す保護部材4cは、図4に示す保護部材4bの上面部30と下面部31とが側面部34によって一体に連結された立体的な袋状の形態を有する。図6に示す保護部材4cの装着方法や装着状態は、図4に示す保護部材4bと同一であるので、重複する説明は省略する。但し、図6に示す保護部材4cによれば、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bの上下面のみでなく、それらの側面も保護部材4c(具体的には、保護部材4cの側面部34)によって覆われる。よって、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bの側面やその角によって熱融着層10が傷付けられることも防止できる。
【0042】
図6に示す保護部材4cの断面形状は、正・負極板から遠ざかるに連れて厚みが薄くなる正・負極延出部2a、2bの形態(図3、図5参照)に合わせて、略三角形に形成されている。具体的には、スリット33に近づくに連れて、上面部30と下面部31とを近接させてある。しかし、保護部材4cが上記正・負極延出部2a、2bの形態に追従可能な伸縮性を有する場合には、保護部材4aの断面形状を正・負極延出部2a、2bの形態に合わせることは必ずしも必要ではない。
【0043】
図7は、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。同図に示す保護部材4dは、熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)からなるシート材またはフィルム材を正・負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bの外側に被せることが可能な扁平リング状に成形したものである。この保護部材4dは、正・負極リード3a、3bの先端側から接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せられる。具体的には、保護部材4dの上面35は接合部20a、20bに被せられ、下面36は正・負極リード3a、3bに被せられる。これによって、少なくとも接合部20a、20bの角21および正・負極リード3a、3bの後方角部22が対向する熱融着層10に直接触れることが防止される。ここで、保護部材4dが伸縮性材料によって形成されていれば、上記のようにして接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せられた保護部材4dは、自己の弾性復元力によって、接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに固定される。この場合、保護部材4dの内径を接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bの外径と同等かそれ以下とする。保護部材4dを接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せる際には、保護部材4dを伸張させて、その内径を一時的に広げる。保護部材4dを伸縮可能とする場合、保護部材4dの全体を伸縮可能とするだけでなく、その一部を伸縮可能としてもよい。さらに、保護部材4dの一部を伸縮可能とする場合には、上面35および下面36の中央部を伸縮可能とすることが好ましい。
【0044】
図8Aは、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。図8Aに示す保護部材4eは、電池要素2(図1参照)の周辺部に被せることが可能な略長方形の枠状に形成されている。保護部材4eの対向する短辺部40a、40bには、正・負極リード3a、3bを通すことが可能なスリット33が形成されている。図8Bに示すように、保護部材4eのスリット33に、正・負極リード3a、3bがそれぞれ通される。スリット33に、正・負極リード3a、3bが通されると、短辺部40aの上側が正・負極極延出部2a、2bに被さり、下側が正・負極リード3a、3bの後部に被さる。さらに、長辺部42a、42bが正・負極板の対向する長辺にそれぞれ被さる。これによって、電池要素2の全周が保護部材4eに覆われるので、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bのみでなく、電池要素2の如何なる部位によっても熱融着層10が傷付けられることはない。もちろん、保護部材4eも熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)によって形成されており、保護部材4eによって熱融着層10が傷付けられることはない。
【0045】
本明細書に添付の図面では、保護部材が正・負極延出部又は/及び正・負極リードに密着している例を図示した。しかし、これまでの説明から明らかなように、保護部材は、正・負極延出部又は/及び正・負極リードと熱融着層との間に介在し、熱融着層が傷付けられることを防止し得れば十分である。従って、保護部材は、正・負極延出部又は/及び正・負極リードに必ずしも密着している必要はない。
【0046】
また、本明細書に添付の図面では、正・負極延出部が正・負極リードと略同一の幅を有する例を図示した。しかし、正・負極延出部の幅は、正・負極リードの幅より狭くても、広くてもよい。もっとも、正・負極延出部や正・負極リードの幅が図示されているものと異なる場合には、正・負極延出部又は/及び正・負極リードが過不足なく覆われるように、保護部材の寸法や形状を適宜変更する。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明した。以下に、フィルム外装電池の各部の構成について補足する。
【0048】
(正・負極リード)
正・負極リードの材料には、Al、Cu、Ni、Ti、Fe、燐青銅、真鍮、ステンレスなどを用いることができる。必要に応じて焼き鈍し処理を施してもよい。正・負極リードの厚さは、0.08〜1.0mmが好ましい。
【0049】
また、正・負極リードの少なくとも外装体と密着する部分に、外装体との密着性を向上させるための表面処理を施すことも好適である。この種の表面処理としては、例えば、化学的エッチング処理などによる粗面化処理、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜や燐酸亜鉛系皮膜などによる耐食性皮膜下地処理、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などが挙げられる。
【0050】
正・負極リードに形成する被覆層の材料には、例えば、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリ(エチレン−プロピレン)コポリマー、アイオノマーなどが使用可能である。
【0051】
(外装体)
外装体は、電解液が漏洩しないように電池要素を覆うことが可能であって柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではないが、金属層と熱融着層とが積層されたラミネートフィルムが特に好ましく用いられる。この種のラミネートフィルムとしては、例えば、厚さ10μm〜100μmの金属箔上に、厚さ3μm〜200μmの熱融着層を形成したものが使用できる。金属箔の材料としては、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金などが使用できる。熱融着層の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。また、保護層の材料としては、ナイロンなどのポリアミド、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリプロピレンなどが使用できる。
【0052】
(電池要素)
正極板は、放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、次の(1)〜(3)のような公知の正極材料のいずれも使用することができる。
(1)LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2等の金属酸化物
(2)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子
(3)一般式(R−Sm)n(Rは脂肪族または芳香族、Sは硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)
また、正極板に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては、電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。
【0053】
負極板は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、次の(1)〜(3)のような公知の負極材料のいずれも使用することができる。
(1)天然黒鉛、石炭、石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン
(2)石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン
(3)金属リチウムやAlLi等のリチウム合金
電池要素に含浸される電解液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の、二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒に、LiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンと、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-等のハロゲンを含む化合物のアニオンとからなる塩を溶解したものが挙げられる。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩を単独、あるいは複数組み合わせて用いることもできる。また、ゲル状電解質(電解液を含むポリマーゲル)でのよい。また、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3―プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
【0054】
上記材料は、電気デバイス要素がリチウムイオン二次電池である場合の材料の一例である。本発明のフィルム外装電気デバイスを構成する電気デバイス要素には、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池も含まれる。さらに、電気デバイス要素には、電気二重層キャパシタや電解コンデンサなどのキャパシタ要素も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 フィルム外装電池
2 電池要素
2a、2b 正・負極延出部
3a、3b 正・負極リード
4a〜4e 保護部材
5、6 ラミネートフィルム
7 被覆部
10 熱融着層
11 金属層
12 保護層
20a、20b 接合部
21 角
22 後方角部
23 傷
30 上面部
31 下面部
32 連結部
33、41 スリット
34 側面部
35 上面
36 下面
40a、40b 短辺部
42a、42b 長辺部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス要素が外装フィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器や電気自動車等の電源として用いられる電池には、軽量化、薄型化が強く要求されている。しかし、従来の電池の外装体(金属缶)には、軽量化、薄型化に限界があった。そこで、軽量化、薄型化が可能な外装体として、フィルムが用いられるようになった。具体的には、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムが電池の外装体として用いられるようになった。金属薄膜フィルムやラミネートフィルムは、金属缶に比べて形状変化の自由度が高いという利点もある。
【0003】
上記ラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の一面に、熱融着層としてのPP層(ポリプロピレン層)を、他面に保護層としてのナイロン層またはPET層(ポリエチレンテレフタレート層)が積層された3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
一般的なフィルム外装電池では、正極板および負極板がセパレータを介して積層された電池要素がラミネートフィルムによって包囲され、該ラミネートフィルムの周辺部が気密に熱融着されている。さらに、電池要素の正極および負極をラミネートフィルムの外部へ引き出すために、一端が正極板又は負極板に接続され、他端がラミネートフィルムの外に引き出された正極リードまたは負極リードが設けられている。上記セパレータとしては、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いて形成した多孔性フィルムなどが用いられるのが一般的である。
【0005】
図9を参照しながら従来のフィルム外装電池の構造についてさらに詳しく説明する。図9は、従来のフィルム外装電池の縦断面図である。
【0006】
フィルム外装電池301は、電池要素302と、電池要素302を電解液とともに収納する外装体とを有する。電池要素302は、複数の正極板と複数の負極板とがセパレータを介して交互に積層されたものである。各正極板は、アルミニウム箔に正極材料を塗布したものであり、各負極板は、銅箔に負極材料を塗布したものである。電極材料が塗布されていないアルミニウム箔及び銅箔の未塗装部(延出部)は、積層領域よりも外側に引き出されている。各正極板の延出部(正極延出部303a)は、一括して正極リード304aに接合されている。また、各負極板の延出部(負極延出部303b)は、一括して負極リード304bに接合されている。尚、正・負極延出部303a、303bの接合には、一般的に超音波溶接が用いられる。また、正極リード304a、負極リード304bは、アルミニウム板、銅板を打ち抜き加工することにより作製される。
【0007】
外装体は、電池要素302をその厚み方向両側から挟んで包囲する2枚のラミネートフィルム305、306である。各ラミネートフィルム305、306は、熱融着層としてのPP層310、金属層としてのアルミニウム層311、および保護層としてのナイロン層312を積層してなるものである。各ラミネートフィルム305、306は、PP層310が内側となる向きで電池要素302を包囲すると共に、対向する互いのPP層310の周縁部同士が熱融着されている。
【0008】
以上のような構造を有するフィルム外装電池においては、振動等により、正・負極延出部の接合部や正・負極リード、特に、それらの先鋭な角がラミネートフィルムの熱融着層に接触し、該熱融着層を傷付ける虞がある。さらに、熱融着層が傷付けられると、傷付けられた部分の厚みが薄くなって絶縁性が低下する。この結果、熱融着層の下層の金属層と接合部の角とが電気的短絡を起こす可能性が非常に高くなる。
【0009】
このような問題に対応するため、正、負極の端子と正、負極のリードとの各接合部を内部に収納する断面三角形の絶縁スペーサが提案されている(特許文献1:国際公開第00/59063号パンフレット)。この絶縁スペーサは、各リードを挿通させる挿通穴を有する。この絶縁スペーサは、正、負極の端子の集合部を収納するとともに、積層電極の端面を押さえつけて積層電極を固定して、リードの切断、外装フィルムの破損、あるいは外装フィルムと積層電極との電気的短絡を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第00/59063号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記パンフレットに開示されている技術を含む従来の技術は、フィルム外装電池の使用中に、ラミネートフィルムの熱融着層が正、負極集電部の角部によって傷付けられる、との前提に立脚した技術であった。
【0012】
しかし、本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ラミネートフィルムの熱融着層がフィルム外装電池の製造過程において既に傷付けられる場合が多いことを発見した。具体的には、対向する熱融着層の周辺部同士を熱融着させる際には、該熱融着層が加熱によって軟化する。この状態のときに、電池要素の一部が熱融着層に接触すると、熱融着層が部分的に傷付けられる。特に、接合された正、負極延出部の角は鋭利であるので、該角が軟化した熱融着層に接触すると、熱融着層には深く抉られたような傷が残る。正、負極延出部の接合部の角によって損傷を受けた熱融着層の状態を図10に模式的に示す。図中、符号400が熱融着層を示し、401が正極延出部の接合部、402が金属層、403が保護層、404が熱融着層400に残った傷をそれぞれ示す。尚、図10では、熱融着層400、金属層402および保護層403からなるラミネートフィルム405に熱融着された相手方のラミネートフィルムの図示は省略してある。
【0013】
ここで、フィルム外装電池の使用時、少なくとも熱融着工程が終了し、熱融着層が硬化した後に、接合部401の角が熱融着層400に接触した場合に比べて、加熱によって軟化している熱融着層400に接合部401の角が接触した場合の方が上記損傷が発生し易く、また、その損傷の程度も大きいことは自明である。
【0014】
以上のような製造過程における熱融着層の損傷は、上記パンフレットに開示されている絶縁スペーサやその他の樹脂製の保護部材を正・負極延出部の接合部と熱融着層との間に介在させただけでは十分に回避できない。即ち、樹脂製の保護部材の融点が熱融着層の融点と同等かそれ以上である場合には、熱融着層が融着可能な状態にまで軟化したとき、保護部材は熱融着層と同等かそれ以上の硬さを有する。従って、軟化した熱融着層に保護部材が接触すると、正・負極延出部の接合部が接触したときと同様に熱融着層が傷付けられる。例えば、熱融着層として一般的に用いられるPPの融点は、140℃〜150℃である。従って、熱融着層がPPによって形成されている場合に、保護部材が140℃〜150℃以上の融点を持つ材料で形成されていると、却って保護部材によって熱融着層が傷付けられる。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、電気デバイス要素を包囲している外装フィルムの熱融着層を保護する保護部材を備えたフィルム外装電気デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のフィルム外装電気デバイスは、正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
上記特徴を有する本発明のフィルム外装電気デバイスでは、外装体フィルムの熱融着層が接合部における正極延出部や負極延出部、正極リード、負極リードの角によって傷付けられることがない。
【0018】
また、前記保護部材は、前記第一または第二の接合部と対向する前記熱融着層の一方との間に配置された上面部と、前記第一または第二の接合部と対向する前記熱融着層の他方との間に配置された下面部と、それら上面部と下面部とを連結する連結部とを有し、該連結部に正極リードまたは負極リードを挿通可能な開口部が形成されているものであってもよい。このような保護部材を採用すれば、開口部に正極リードまたは負極リードを通すことによって、上面部を接合部と熱融着層との間に配置し、下面部を正極リードまたは負極リードと熱融着層との間に配置することができる。よって、接合部と熱融着層との間に配置される保護部材と、正極リードまたは負極リードと熱融着層との間に配置される保護部材とが別体である場合に比べて、保護部材の装着が容易であり、位置ずれ等の不具合が発生する可能性も低くなる。かかる構成を備えた保護部材は、例えば、二つ折りにした一枚のシート材またはフィルム材の一方の面を前記上面部、他方の面を前記下面部、折り返し部を前記連結部とすることによって得ることができる。
【0019】
さらに、前記保護部材は、前記正極延出部および前記負極延出部の形状に合わせて立体的に形成することもできる。例えば、纏められた各延出部の断面形状が略三角形である場合には、前記上面部および前記下面部を前記開口部に近づくに連れて次第に近接させることによって、断面略三角形の袋状に形成することが好適である。加えて、保護部材を立体的に形成する場合には、前記上面部と前記下面部とを側面部によって一体に連結することが好適である。
【0020】
また、前記保護部材は、前記正極延出部および前記負極延出部の各接合部に被せることが可能なリング状に形成されていてもよい。
【0021】
前記保護部材を伸縮性のある材料で形成することによって、正極延出部および負極延出部の形状に応じて変形可能とすることもできる。また、保護部材が伸縮性を有する場合、保護部材の寸法を該保護部材が被せられる部材と同等がやや小さくすることによって、保護部材を自己の弾性復元力によって所定位置に固定することも可能となる。もちろん、保護部材を伸縮性のある材料によって立体的に形成することも可能である。保護部材に伸縮性を持たせる場合には、発泡材料によって保護部材を形成することが好適である。さらに、保護部材は、その一部のみが伸縮性を有するものであってもよい。保護部材の一部のみを伸縮可能とする場合には、保護部材の中央部を伸縮性材料で形成し、角部を非伸縮性材料で形成することが好ましい。
【0022】
さらに、前記保護部材を前記電気デバイス要素の周縁に被せることが可能な枠状に形成し、対向する一対の辺の一方に前記正極リードを挿通可能な第一の開口部を形成し、対向する一対の辺の他方に前記負極リードを挿通可能な第二の開口部を形成し、前記第一の開口部が形成された辺から延びる上面部を前記正極延出部の接合部と前記熱融着層との間に配置し、第二の開口部が形成された辺から延びる上面部を前記負極延出部の接合部と前記熱融着層との間に配置することもできる。
【0023】
本発明においては、前記保護部材が前記熱融着層よりも低融点であれば、それぞれの材料は特に限定されないが、保護部材がポリエチレンによって形成され、熱融着層がポリプロピレンによって形成されていることが好適である。
【0024】
本発明は、本件発明者らによる研究によって初めて得られた上記知見に基づくものである。上記及びそれ以外の本発明の目的、特徴及び利点は、下記の記載及び本発明の一例を示す添付図面の参照によって明らかになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外装体フィルムの熱融着層が傷付けられることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のフィルム外装電池の分解斜視図である。
【図2】図1に示すフィルム外装電池の部分拡大断面図である。
【図3】図1に示すフィルム外装電池の正極延出部の接合部付近の拡大断面図である。
【図4】保護部材の変形例を示す斜視図である。
【図5】図4に示す保護部材の配置状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8A】保護部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図8B】図8Aに示す保護部材の配置状態を示す平面図である。
【図9】従来のフィルム外装電池の基本構造を示す断面図である。
【図10】延出部の接合部によって損傷を受けた熱融着層を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明のフィルム外装電気デバイスの実施形態の一例について説明する。本例のフィルム外装電気デバイスは、電池要素がフィルム状の外装体によって包囲されたフィルム外装電池である。
【0028】
図1は、本例のフィルム外装電池の分解斜視図であり、図2は、一部省略の拡大断面図である。このフィルム外装電池1は、正極延出部2aおよび負極延出部2bを備えた電池要素2と、電池要素2を不図示の電解液とともに収納する外装体と、正極延出部2aに接続された正極リード3aと、負極延出部2bに接続された負極リード3bと、保護部材4a、4a’とを有する。外装体は、2枚のラミネートフィルム5、6から構成されている。尚、図1では、保護部材4a、4a’の図示は省略してある。
【0029】
電池要素2は、セパレータと、該セパレータを介して交互に積層された複数の正極板および負極板とから構成されている。具体的には、各正極板は、正極材料が塗布されたアルミニウム箔である。各負極板は、負極材料が塗布された銅箔ある。それぞれの箔の電極材料が塗布されていない部分(未塗装部分)は、積層領域よりも外側に引き出されて正・負極延出部2a、2bを構成している。そして、各正極延出部2aは、一括して正極リード3aの後部に超音波溶接によって接合されている。各負極延出部2bは、一括して負極リード3bの後部に超音波溶接によって接合されている。ここで、正極リード3aおよび負極リード3bの表裏面には、ラミネートフィルム5、6との融着性を向上させるべく、ポリプロピレンを帯状に塗布して被覆部7が形成されている。尚、正・負極リード3a、3bの被覆部7は、正・負極延出部2a、2bが正・負極リード3a、3bに接合されている位置よりも該リード3a、3bの先端寄りの位置に形成されている。
【0030】
外装体を構成している2枚のラミネートフィルム5、6は、電池要素2をその厚み方向両側から挟んで包囲している。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着層10、金属層11および保護層12の3層からなる。本例では、熱融着層10をPP(ポリプロピレン)によって、金属層11をアルミニウムによって、保護層12をナイロンまたはPET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成してある。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着層10が内側となる向きで電池要素2を包囲している。また、各ラミネートフィルム5、6の熱融着層10の対向する周辺部同士は、気密に熱融着されている。さらに、各ラミネートフィルム5、6の熱融着層10の周辺部のうち、正、負極リード3a、3bと対向する領域は、各リード3a、3bに形成されている被覆層7に熱融着されている。
【0031】
正、負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bとラミネートフィルム5(熱融着層10)との間には、保護部材4aが介在している。また、正・負極リード3a、3bとラミネートフィルム6(熱融着層10)との間には、保護部材4a’が介在している。尚、図2には、正極延出部2aの接合部10aとラミネートフィルム5との間に介在する保護部材4a、および正極リード3aとラミネートフィルム6との間に介在する保護部材4aのみを図示する。もっとも、正極側に配置される保護部材と負極側に配置される保護部材とは同一の構成を有し、同一の作用効果を奏する。よって、ここでは、図示されている保護部材4a、4a’を例にとってその構成及び作用効果について説明する。
【0032】
各保護部材4a、4a’は、熱融着層10よりも低融点の樹脂(本例ではPE:ポリエチレン)からなるフィルムまたはシートである。各保護部材4a、4a’の厚みは約100μmである。保護部材4a、は、正極リード3aに一括溶接された正極延出部2aの接合部20a、少なくとも、該接合部20aの角21を覆うことが可能な形状および寸法を有する。一方、保護部材4a’は、正極リード3aの後部、少なくとも、該リード3aの後方角部22を覆うことが可能な形状および寸法を有する。もっとも、本例では、保護部4a、4a’は同一の形状および寸法を有する。
【0033】
保護部材4a、4a’は、ラミネートフィルム5、6の熱融着層10を熱融着させる際に、該熱融着層10を保護する役割を果たす。具体的には、保護部材4aは、ラミネートフィルム5の熱融着層10と接合部20aとの間、少なくとも、該接合部20aの角21と熱融着層10との間に介在し、角21が熱融着層10に損傷を与えることを防止する。一方、保護部材4a’は、ラミネートフィルム6の熱融着層10と正極リード3aとの間、少なくとも、該リード3aの後方角部22と熱融着層10との間に介在し、後方角部22が熱融着層10に損傷を与えることを防止する。
【0034】
即ち、フィルム外装電池1の製造過程では電池要素2をその厚み方向両側から挟むようにラミネートフィルム5、6を配置した上で、ラミネートフィルム5、6の周辺部をヒータで加熱して、対向する熱融着層10の周辺部同士、および熱融着層10と被覆層7とを熱融着させる。このとき、加熱によって軟化した熱融着層10に接合部20aの角21や正極リード3aの後方角部22が接触すると、熱融着層10が損傷を受ける。しかし、保護部材4a、4a’によってかかる損傷が回避されることはこれまでの説明および図2等から自明である。
【0035】
さらに、本例のフィルム外装電池1では、保護部材4a、4a’が熱融着層10よりも低融点のポリエチレンによって形成されている。このことには、次のような技術的意義がある。即ち、ポリプロピレンからなる熱融着層10同士を熱融着させるためには、140℃〜150℃の熱を加える必要がある。一方、ポリエチレンからなる保護部材4a、4a’の融点は、約120℃である。従って、熱融着層10が加熱されて軟化する前に、保護部材4a、4a’が十分に軟化する。この結果、軟化した熱融着層10に保護部材4a、4a’が接触したとしても、熱融着層10が保護部材4a、4a’によって損傷を受けることはない。仮に、熱融着層10に保護部材4a、4a’が接触した痕跡(傷)が熱融着層10に残ったとしても、保護部材4a、4a’は熱融着層10に比して十分に軟化しているので、その傷23の表面は、図3に示すような円弧状になる。また、傷の深さは非常に浅いものとなる。少なくとも、熱融着層10に図10に示す傷404のような深く抉れた傷が残ることはない。従って、熱融着層10の絶縁性が低下し、接合部20a、20bと金属層11との間で電気的短絡が発生する可能性が高まる虞はない。尚、図3では、図2に示されているラミネートフィルム6の図示は省略してある。
【0036】
尚、正・負極リード3a、3bの厚みが接合部20a、20bに比べて非常に薄い場合や、それらリード3a、3bの後方角部22が先鋭でない場合などには、保護部材4a’を省略し、保護部材4aのみを設けることも可能である。
【0037】
図4は、保護部材の一変形例を示す斜視図である。図4に示す保護部材4bは、熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)からなるシート材またはフィルム材を二つ折りにして形成したものである。この保護部材4bは、正・負極延出部2a、2b(図1)を覆う上面部30と、正・負極リード3a、3b(図1)の後部を覆う下面部31と、これら上面部30と下面部31とを連結する連結部32とが一体に形成されている。また、連結部32には、正・負極リード3a、3bを通すことが可能なスリット33が形成されている。保護部材4bは、正極側および負極側の双方に配置される。もっとも、正極側に配置される保護部材4bと、負極側に配置される保護部材4bの構成および作用効果は同一である。よって、正極側に配置される保護部材4bを例にとって、保護部材4bの構成及び作用効果について説明する。
【0038】
保護部材4bは、図5に示すように、スリット33に正極リード3aが通され、上面部30が正極延出部2aに被せられ、下面部31が正極リード2aの後部に被せられる。これによって、少なくとも接合部20aの角21および正極リード3aの後方角部22が保護部材4bによって覆われ、これら角21、後方角部22による熱融着層10の損傷が防止される。もちろん、図4に示す保護部材4bも熱融着層10よりも低融点のポリエチレンによって形成されているので、保護部材4bが熱融着層10を傷付ける虞はない。尚、図5でも、ラミネートフィルム6の図示は省略してある。
【0039】
ここで、上面部30の幅(W1)は、正極延出部2aの幅方向全体を覆うべく、該延出部2aの幅よりも若干大きく形成することが好適である。本例では、正極延出部2aの幅が66.0mmであるのに対し、上面部30の幅(W1)は66.5mmである。本例では、上面部30と下面部31の形状および寸法を共通にしてあるが、上面部30と下面部31の形状および寸法を共通にすることは必須ではない。
【0040】
また、スリット33は、正極リード3aを挿通可能な形状および寸法を有する。本例では、正極リード3aに形成されている被覆部7の奥まで保護部材4bが挿入されている(図5参照)。従って、スリット33の幅(W2)は、被覆部7を通すことができるように、該被覆部7の幅よりも若干大きく形成されている。具体的には、被覆部7の幅が46.0mmであるのに対し、スリット33の幅(W2)は、46.5mmである。もっとも、保護部材4bが伸縮性を有する材料(例えば、発泡材料)によって形成されている場合には、装着時にスリット33の幅をある程度広げることが可能である。よって、保護部材4bが伸縮性を有する場合には、スリット33の幅(W2)を被覆部7の幅と同一か、それより狭くしてもよい。
【0041】
図6は、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。図6に示す保護部材4cは、図4に示す保護部材4bの上面部30と下面部31とが側面部34によって一体に連結された立体的な袋状の形態を有する。図6に示す保護部材4cの装着方法や装着状態は、図4に示す保護部材4bと同一であるので、重複する説明は省略する。但し、図6に示す保護部材4cによれば、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bの上下面のみでなく、それらの側面も保護部材4c(具体的には、保護部材4cの側面部34)によって覆われる。よって、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bの側面やその角によって熱融着層10が傷付けられることも防止できる。
【0042】
図6に示す保護部材4cの断面形状は、正・負極板から遠ざかるに連れて厚みが薄くなる正・負極延出部2a、2bの形態(図3、図5参照)に合わせて、略三角形に形成されている。具体的には、スリット33に近づくに連れて、上面部30と下面部31とを近接させてある。しかし、保護部材4cが上記正・負極延出部2a、2bの形態に追従可能な伸縮性を有する場合には、保護部材4aの断面形状を正・負極延出部2a、2bの形態に合わせることは必ずしも必要ではない。
【0043】
図7は、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。同図に示す保護部材4dは、熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)からなるシート材またはフィルム材を正・負極延出部2a、2bの各接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bの外側に被せることが可能な扁平リング状に成形したものである。この保護部材4dは、正・負極リード3a、3bの先端側から接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せられる。具体的には、保護部材4dの上面35は接合部20a、20bに被せられ、下面36は正・負極リード3a、3bに被せられる。これによって、少なくとも接合部20a、20bの角21および正・負極リード3a、3bの後方角部22が対向する熱融着層10に直接触れることが防止される。ここで、保護部材4dが伸縮性材料によって形成されていれば、上記のようにして接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せられた保護部材4dは、自己の弾性復元力によって、接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに固定される。この場合、保護部材4dの内径を接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bの外径と同等かそれ以下とする。保護部材4dを接合部20a、20bおよび正・負極リード3a、3bに被せる際には、保護部材4dを伸張させて、その内径を一時的に広げる。保護部材4dを伸縮可能とする場合、保護部材4dの全体を伸縮可能とするだけでなく、その一部を伸縮可能としてもよい。さらに、保護部材4dの一部を伸縮可能とする場合には、上面35および下面36の中央部を伸縮可能とすることが好ましい。
【0044】
図8Aは、保護部材の他の変形例を示す斜視図である。図8Aに示す保護部材4eは、電池要素2(図1参照)の周辺部に被せることが可能な略長方形の枠状に形成されている。保護部材4eの対向する短辺部40a、40bには、正・負極リード3a、3bを通すことが可能なスリット33が形成されている。図8Bに示すように、保護部材4eのスリット33に、正・負極リード3a、3bがそれぞれ通される。スリット33に、正・負極リード3a、3bが通されると、短辺部40aの上側が正・負極極延出部2a、2bに被さり、下側が正・負極リード3a、3bの後部に被さる。さらに、長辺部42a、42bが正・負極板の対向する長辺にそれぞれ被さる。これによって、電池要素2の全周が保護部材4eに覆われるので、正・負極延出部2a、2bや正・負極リード3a、3bのみでなく、電池要素2の如何なる部位によっても熱融着層10が傷付けられることはない。もちろん、保護部材4eも熱融着層10よりも低融点の材料(本例では、ポリエチレン)によって形成されており、保護部材4eによって熱融着層10が傷付けられることはない。
【0045】
本明細書に添付の図面では、保護部材が正・負極延出部又は/及び正・負極リードに密着している例を図示した。しかし、これまでの説明から明らかなように、保護部材は、正・負極延出部又は/及び正・負極リードと熱融着層との間に介在し、熱融着層が傷付けられることを防止し得れば十分である。従って、保護部材は、正・負極延出部又は/及び正・負極リードに必ずしも密着している必要はない。
【0046】
また、本明細書に添付の図面では、正・負極延出部が正・負極リードと略同一の幅を有する例を図示した。しかし、正・負極延出部の幅は、正・負極リードの幅より狭くても、広くてもよい。もっとも、正・負極延出部や正・負極リードの幅が図示されているものと異なる場合には、正・負極延出部又は/及び正・負極リードが過不足なく覆われるように、保護部材の寸法や形状を適宜変更する。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明した。以下に、フィルム外装電池の各部の構成について補足する。
【0048】
(正・負極リード)
正・負極リードの材料には、Al、Cu、Ni、Ti、Fe、燐青銅、真鍮、ステンレスなどを用いることができる。必要に応じて焼き鈍し処理を施してもよい。正・負極リードの厚さは、0.08〜1.0mmが好ましい。
【0049】
また、正・負極リードの少なくとも外装体と密着する部分に、外装体との密着性を向上させるための表面処理を施すことも好適である。この種の表面処理としては、例えば、化学的エッチング処理などによる粗面化処理、部分アミノ化フェノール系重合体と燐酸化合物とチタン化合物とからなる皮膜や燐酸亜鉛系皮膜などによる耐食性皮膜下地処理、チタニウム系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤などによる表面処理などが挙げられる。
【0050】
正・負極リードに形成する被覆層の材料には、例えば、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリ(エチレン−プロピレン)コポリマー、アイオノマーなどが使用可能である。
【0051】
(外装体)
外装体は、電解液が漏洩しないように電池要素を覆うことが可能であって柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではないが、金属層と熱融着層とが積層されたラミネートフィルムが特に好ましく用いられる。この種のラミネートフィルムとしては、例えば、厚さ10μm〜100μmの金属箔上に、厚さ3μm〜200μmの熱融着層を形成したものが使用できる。金属箔の材料としては、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金などが使用できる。熱融着層の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。また、保護層の材料としては、ナイロンなどのポリアミド、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリプロピレンなどが使用できる。
【0052】
(電池要素)
正極板は、放電時に正イオンを吸収するもの又は負イオンを放出するものであれば特に限定されず、次の(1)〜(3)のような公知の正極材料のいずれも使用することができる。
(1)LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2等の金属酸化物
(2)ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性高分子
(3)一般式(R−Sm)n(Rは脂肪族または芳香族、Sは硫黄であり、m、nは、m≧1、n≧1の整数である)で示されるジスルフィド化合物(ジチオグリコール、2、5−ジメルカプト−1、3、4−チアジアゾール、S−トリアジン−2、4、6−トリチオール等)
また、正極板に正極活物質(図示せず)を適当な結着剤や機能性材料と混合して形成することもできる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有高分子等が、機能性材料としては、電子伝導性を確保するためのアセチレンブラック、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子、イオン伝導性を確保するための高分子電解質、それらの複合体等が挙げられる。
【0053】
負極板は、カチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、次の(1)〜(3)のような公知の負極材料のいずれも使用することができる。
(1)天然黒鉛、石炭、石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン
(2)石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボン
(3)金属リチウムやAlLi等のリチウム合金
電池要素に含浸される電解液としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、m−クレゾール等の、二次電池の電解液として利用可能な極性の高い塩基性溶媒に、LiやK、Na等のアルカリ金属のカチオンと、ClO4-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-等のハロゲンを含む化合物のアニオンとからなる塩を溶解したものが挙げられる。また、これらの塩基性溶媒からなる溶剤や電解質塩を単独、あるいは複数組み合わせて用いることもできる。また、ゲル状電解質(電解液を含むポリマーゲル)でのよい。また、スルホラン、ジオキサン、ジオキソラン、1,3―プロパンスルトン、テトラヒドロフラン、ビニレンカーボネートなどを微量添加してもよい。
【0054】
上記材料は、電気デバイス要素がリチウムイオン二次電池である場合の材料の一例である。本発明のフィルム外装電気デバイスを構成する電気デバイス要素には、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池も含まれる。さらに、電気デバイス要素には、電気二重層キャパシタや電解コンデンサなどのキャパシタ要素も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 フィルム外装電池
2 電池要素
2a、2b 正・負極延出部
3a、3b 正・負極リード
4a〜4e 保護部材
5、6 ラミネートフィルム
7 被覆部
10 熱融着層
11 金属層
12 保護層
20a、20b 接合部
21 角
22 後方角部
23 傷
30 上面部
31 下面部
32 連結部
33、41 スリット
34 側面部
35 上面
36 下面
40a、40b 短辺部
42a、42b 長辺部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置されていることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項2】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の両方を覆うリング状の保護部材と、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の両方を覆うリング状の保護部材、のいずれか一方又は両方を備えたことを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項3】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記電気デバイス要素の周辺部に被せられる枠状の保護部材をさらに備え、
該枠状の保護部材は、
前記正極リードを挿通する開口部が形成され、前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の両方を覆う、正極側の保護部と、
前記負極リードを挿通する開口部が形成され、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の両方を覆う、負極側の保護部と、
を含むことを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項4】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置され、
前記保護部材の厚みが100μmであり、前記保護部材がポリエチレンによって形成されていることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項5】
前記保護部材が伸縮性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項5記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項6】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
二つ折りにされたシート材またはフィルム材からなる保護部材をさらに備え、
該保護部材は、折り返された一方の面が上面部とされ、その他方の面が下面部とされ、折り返し部が連結部とされており、
前記上面部は、前記第一の接合部における前記正極延出部の角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間、または、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間に配置され、
前記下面部は、前記第二の接合部における前記正極リードの角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間、または、前記第二の接合部における前記負極リードの角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間に配置され、
前記連結部には、前記正極リードまたは前記負極リードを挿通する開口部が形成されており、前記上面部と前記下面部とが、前記開口部に近づくに連れて次第に近接していることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項1】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置されていることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項2】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の両方を覆うリング状の保護部材と、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の両方を覆うリング状の保護部材、のいずれか一方又は両方を備えたことを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項3】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記電気デバイス要素の周辺部に被せられる枠状の保護部材をさらに備え、
該枠状の保護部材は、
前記正極リードを挿通する開口部が形成され、前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の両方を覆う、正極側の保護部と、
前記負極リードを挿通する開口部が形成され、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の両方を覆う、負極側の保護部と、
を含むことを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項4】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記第一の接合部における前記正極延出部の角と前記正極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間に保護部材が配置され、かつ、
前記第二の接合部における前記負極延出部の角と前記負極リードの角の各々またはいずれか一方と、少なくとも該角を覆う部分の前記熱融着層と、の間にも保護部材が配置され、
前記保護部材の厚みが100μmであり、前記保護部材がポリエチレンによって形成されていることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項5】
前記保護部材が伸縮性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項5記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項6】
正極リード、複数の正極板、該複数の正極板の各々から延出された複数の正極延出部、負極リード、複数の負極板、該複数の負極板の各々から延出された複数の負極延出部、およびセパレータを有し、前記正極板と前記負極板が前記セパレータを介して交互に積層され、前記複数の正極延出部が前記正極リードに接合され、前記複数の負極延出部が前記負極リードに接合された電気デバイス要素と、
金属層、および該金属層の一面に形成された熱融着層を有し、該熱融着層を内側にして前記電気デバイス要素を包囲し、対向する前記熱融着層同士が熱融着された外装体フィルムと、
前記正極リードに接合された前記正極延出部の一部である第一の接合部と、
前記負極リードに接合された前記負極延出部の一部である第二の接合部と、を有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
二つ折りにされたシート材またはフィルム材からなる保護部材をさらに備え、
該保護部材は、折り返された一方の面が上面部とされ、その他方の面が下面部とされ、折り返し部が連結部とされており、
前記上面部は、前記第一の接合部における前記正極延出部の角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間、または、前記第二の接合部における前記負極延出部の角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間に配置され、
前記下面部は、前記第二の接合部における前記正極リードの角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間、または、前記第二の接合部における前記負極リードの角と、少なくとも該角を覆う位置の前記熱融着層と、の間に配置され、
前記連結部には、前記正極リードまたは前記負極リードを挿通する開口部が形成されており、前記上面部と前記下面部とが、前記開口部に近づくに連れて次第に近接していることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−41851(P2013−41851A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−245148(P2012−245148)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2008−505070(P2008−505070)の分割
【原出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2008−505070(P2008−505070)の分割
【原出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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