説明

フィルム外装電池及びそれが集合した組電池

【課題】 フィルム外装電池を大容量化する場合であっても、内部の電池要素の放熱を良好に行うことができ、かつ電池全体としての剛性も十分に確保できるフィルム外装電池等を提供する。
【解決手段】 電池セル50は、2つの電池要素と、それを密閉する2枚の外装フィルム24と、通路形成部材30とを有している。通路形成部材30は、扁平筒状をなし外装フィルム24によって形成された密閉空間内に、上記2つの電池要素に挟まれた状態で配置される筒状部と、その両端に設けられた2つの側縁部38とで構成されている。筒状部の内部には、側縁部38の通路32’を通じて冷却風が供給されるようになっている。外装フィルム24は、その2辺が各側縁部38に貼り付けられることによって、2次元的に折り曲げられた状態となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルム等によって形成された密閉空間内に電池要素が電解液と共に収容されたフィルム外装電池、及びそれが集合した組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば電気自動車のモータ駆動用の電源として軽量かつ小型の電池の開発が進められている。この種の電池としては、例えば図11に示すような電池セル420A(フィルム外装電池ともいう)を複数集合させた組電池が知られている。電池セル420Aは、外装フィルム424によって形成された密閉空間内に配置された電池要素422を有しており、電池要素422自体は、正極用及び負極用の金属箔がセパレータを介して交互に積層された構成となっている。電池要素422は、電解液と共に外装フィルム424内に収容されており、これにより各電極タブ425を通じて所定の起電力が出力される。この種の電池セル420Aは、例えば樹脂成形品からなるセルケース内に収容されて使用されることもある。
【0003】
ところで、このような構成の電池セルにおいて、電池を大容量化するためには、例えば図12に示すように、2つの電池要素422a、422bを2段重ねとすることも考えられる。すなわち、図12の電池セル420Bは、電池要素422a、422bを2つ有することにより、図11の電池セル420Aの倍の出力を得ようとしたものである。
【0004】
しかしながら、電池要素422は使用時に発熱するという性質を有しており、電池の短寿命化を防止する観点、及び電池性能を劣化させない観点から、発生した熱を放熱する必要がある。したがって、特に図12のような構成では、電池要素422a、422bの内部に熱がこもってしまうことから、実用化する上で問題があると考えられる。
【0005】
図13は特許文献1に開示された従来の組電池の構成を模式的に示している。図13に示すように、組電池550は、積層状態に集合した複数の電池セルBCを有しており、各電池セルBCは、並列接続の状態で電気的に接続されている。電池セルBCの温度上昇を防止するために、図示中央の電池セルBC内には、図14に示すような放熱手段(陽極板530)が収容されている。
【0006】
具体的には、陽極板530は、2枚の板521、522の間に形成される循環流路523を有しており、該循環流路内には作動流体として例えば純水が充填され、これによりヒートパイプとして機能するようになっている。このようなヒートパイプ式の陽極板530は、電池セルBC内の電池要素からの熱を受けることで、作動流体の温度が上昇するようになっており、その結果、作動流体は緩やかに循環することとなる。この循環により電池セルの放熱が行われる。
【特許文献1】特開平9−50821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、電池セルあるいは組電池を使用するに際しては、電池セルを効率的に放熱することが望ましい。これに対して、図14に示したような放熱手段によれば確かに効率的な放熱が得られるとも考えられるが、図14のような複雑な構造の冷却手段を電池セルあるいは組電池に組み込むことは、例えば製造コストの都合上好ましくはない。また、循環流路内の作動流体が電池セルBC内に漏れ出すおそれもあり、作動流体が漏れ出すことによって電池セルBCが故障する可能性もある。
【0008】
また、電池セルを大容量化するには、図12のような構成とする他にも、例えば図15に示すように、電池セル420Cの面積を大型化して電池セル420Aの倍の出力を得るようにすることも可能である。しかしながら、実際には、組電池に求められる外形サイズの都合上、このように電池セルを大面積化できないことも多い。また、電池セル自体は、一般に薄型に構成されることが多く、したがって、図15のように大面積化すると電池セル420Cの面剛性が低下するという問題もある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、フィルム外装電池を大容量化する場合であっても、内部の電池要素の放熱を良好に行うことができ、かつ電池全体としての剛性も十分に確保できるフィルム外装電池、及びそれが集合した組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明のフィルム外装電池は、扁平筒状をなす筒状部材と該筒状部材の軸線方向の両端に設けられた側縁部材とを備える通路形成部材と、前記筒状部材の両面にそれぞれ配置された2つの電池要素と、前記2つの電池要素を包囲して密閉する2枚の外装フィルムとを有し、前記筒状部材の内部には、前記側縁部材に形成された通路を通じて冷却風が供給されるようになっており、前記外装フィルムの外周部のうち、前記軸線方向両端の2辺が前記各側縁部材の一部に貼り付けられると共に、他の2辺では前記外装フィルム同士が互いに熱シールされることにより、前記外装フィルムが2次元的に折り曲げられた状態となっている。
【0011】
このように構成されたフィルム外装電池よれば、2つの電池要素を備えているため電池の大容量化が図られている。また、電池要素同士の間に挟み込まれた筒状部材の内部に冷却風を供給できるようになっているため、各電池要素の熱を放熱することが可能であり、したがって電池要素同士の間に熱がこもることもない。また、筒状部材は補強部材としても機能することから電池全体としての剛性も十分に確保される。更に、外装フィルムは、側縁部材の一部に沿って2次元的な折り曲げとなっているため、フィルムに3次元的な形状の構造部(例えばカップ部)等を設ける必要もない。なお、これについては〔発明を実施するための最良の形態〕の中で詳説する。
【0012】
上記本発明において、前記側縁部材は、外装フィルムが貼り付けられる前記一部を外周面とするフィルム貼付け部を有し、該フィルム貼付け部の高さ寸法が、前記電池要素2つ分の厚みに前記通路形成部材の厚みを加えた寸法以上に設定されていることが好ましい。また、このフィルム貼付け部の輪郭形状が六角形とされており、該六角形における鋭角角部のところで前記外装フィルム同士が互いに熱シールされていてもよい。
【0013】
側縁部材はより具体的には、前記フィルム貼付け部の外側が、前記電池要素の1辺に沿って延在する側面壁となっているものであり、該側面壁の両端はそれぞれ前記外周フィルムの両端より外側まで延びているものである。電池要素からの熱が良好に上記筒状部材に伝わるように、前記各電池要素は、その一方の面が前記筒状部材の一方の面と密着した状態で配置されていることが好ましい。筒状部材の内部は、リブによって仕切られた複数の冷却風通路となっていてもよい。
【0014】
フィルム外装電池におけるガス発生の問題に対応するため、前記筒状部材は、その両面のうち少なくとも一方の面に安全弁を有していることが好ましい。該安全弁は、前記外装フィルム内に生じたガスの圧力が所定の設定値を越えたときに破れる薄肉部である。また、上記本発明のフィルム外装電池は、前記各電池要素に電気的に接続されると共に、前記外装フィルム同士が熱シールされた部位から引き出されたシート状の電極タブを更に有するものであってもよく、この場合、該電極タブの一端側は前記通路形成部材によって支持されていることが好ましい。
【0015】
通路形成部材は、前記筒状部材と前記側縁部材とが一体に形成された樹脂成形品であってもよいし、あるいは、筒状部材が金属材料で構成されると共に、前記筒状部材の外周面に貼り付けられたフィルムにより絶縁されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述したように本発明によれば、2つの電池要素を備えるようにして電池を大容量化する場合であっても、電池要素同士の間に、筒状部材によって形成された冷却風通路が形成されていることから電池要素の放熱を良好に行うことができる。また、筒状部材が補強部材としても機能することから、電池全体としての剛性も十分に確保される。更には、外装フィルムが2次元的な折り曲げ形態となっているため、フィルムに3次元的な形状の構造部を設ける必要がなく、これは例えば製造工程の簡素化を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のフィルム外装電池の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の電池セルの構成を示す外観斜視図であり、図2は、図1の電池セルの上面図である。図3は、図1のA−A切断線における断面図であり、図4は、本実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材を単体の状態で示す斜視図である。
【0018】
図1〜図3に示すように、本実施形態の電池セル50は、それぞれ所定の起電力(例えば3.6V)を出力するように構成された2つの電池要素22A、22Bと、電池要素を冷却するための冷却風通路を形成する通路形成部材30と、上記2つの電池要素22A、22Bを包囲して密閉する2枚の外装フィルム24A、24B(単に外装フィルム24ともいう)とを有している。
【0019】
電池要素22A、22Bはいずれも、正極用及び負極用の金属箔がセパレータを介して交互に積層されたものであり、直方体状の外形形状を有している。電池要素22A、22Bの厚さは例えば数mm〜十数mm程度である。図3に模式的に示すように、各電池要素の正極用の各金属箔は電極タブ25aに接続されるようになっており、各電池要素の負極用の各金属箔は電極タブ25bに接続されるようになっている。
【0020】
このように構成された本実施形態の電池セル50では、2つの電池要素22A、22Bが設けられていることにより、1つの電池セルで電池要素2つ分(3.6V×2=7.2V)の出力が得られるようになっている。
【0021】
通路形成部材30は樹脂成形品であり、図4に示すように、扁平筒状をなす筒状部35と、筒状部の軸線方向(図示Y方向)の両端に設けられた2つの側縁部38とに大別される。なお、通路形成部材30は、全体が一体に成形された一部材であってもよいし、あるいは、別体に構成された筒状部35と通路形成部材30とが一体に組立てられたものであってもよい。
【0022】
筒状部35の内部には、リブによって仕切られた複数の冷却風通路32が形成されている(図4(b)参照)。この冷却風通路32の高さ寸法は、特に限定されるものではないが例えば1〜2mm程度であってもよい。なお、リブを設けることなく、1つの冷却風通路とすることも可能であるが、本実施形態のようにリブを設けることにより筒状部35の剛性が確保される。
【0023】
筒状部35の上面35a及び下面35bは、いずれも平面であり、かつ互いに平行に形成されている。このように上面35a及び下面35bを平面とすることで、各面35a、35bと電池要素22A、22Bの一方の面とが面接触することとなり、これにより、電池要素からの熱が筒状部に良好に伝わるようになっている。
【0024】
側縁部38には、上記筒状部の各冷却風通路32から続く通路32’が複数形成されており、この通路32’を通じて冷却風通路32内に冷却風を送り込むことができるようになっている。側縁部38は、より細かく分けると、筒状部35側に位置するフィルム貼付け部38Aと、その外側に位置する側面壁38Bとで構成されている。
【0025】
フィルム貼付け部38Aは、図示Y方向から見て六角形の輪郭形状を有しており、その外周面(ハッチングにて示す)に外装フィルムが貼り付けられるようになっている。フィルム貼付け部38Aの高さ寸法H38は、電池要素2つ分の厚みに筒状部35の厚みを加えた寸法H22(図3参照)以上となるように設定されている。なお、図4では、フィルム貼り付け部38Aの高さ寸法と側面壁の高さ寸法とが同じに描かれているが、これに限定されるものではない。例えば、側面壁38Bの高さ寸法を僅かに大きくすれば(すなわち、フィルム貼付け部38Aの上面を一段低くすれば)、貼り付けられたフィルムの上面を、側面壁38Bの上面と同じくしたり、あるいはそれより低くしたりすることも可能である。
【0026】
側面壁38Bは、図示X方向に延在しており、その両端には貫通孔41が1つずつ設けられている。この貫通孔41に通しボルトを挿通させることにより複数の電池セル50の固定を行うことができるようになっている。側面壁38Bが図4に示すような構成となっていることにより、この側面壁38Bをセルケースとして利用できるため、本実施形態の電池セルによれば特別なセルケースを用意する必要もない。すなわち、側面壁38Bがセルケースとしても機能することに鑑みれば、図2に示すように、側壁面38Bの両端(図示X方向)が外周フィルム24の両端よりも外側まで延びていることが好ましい。
【0027】
電池セル50の完成状態では、図2に示すように、外装フィルム24の外周部の4辺が封止部となる。この封止部23は、封止部23a、23bで構成され、封止部23aでは、外装フィルム24の内側面がフィルム貼付け部38Aに接着されている。封止部23bでは、対向する外装フィルムの内側面同士が互いに熱シールされており、そこから電極タブ25a、25bが引き出されている。本実施形態では、フィルム貼付け部38Aの外周面における鋭角角部のところで2枚のフィルム同士が熱シールされる構成となっており、フィルムが急な角度で折り曲げられていないため、フィルム同士の熱シール部が良好に形成されている。
【0028】
なお、外装フィルム24A、24Bの接着は、真空引きを行いながらされるものであってもよく、これにより外装フィルム内の密閉空間が減圧され、外装フィルムが電池要素の外周面(表面)に密着することとなる。また、外装フィルム24とフィルム貼付け部38Aとの間の接着は、例えば、外装フィルムの内側面をフィルム貼付け部38Aの外周面に対して熱シールすることでなされるものであってもよいし、あるいは、接着剤を用いて両部材が接着されるものであってもよい。
【0029】
ところで、従来のこの種のフィルム外装電池では、図5に示すように、外装フィルムにカップ部60が形成されることも多く、その角部65では、外装フィルムが3次元的に加工された状態となっている。この角部65は電池要素(不図示)の角部に対応した位置に形成されており、電池要素の角部とフィルムの角部65とが干渉することによって、場合によっては角部内側面が損傷する可能性もあった。また、このような3次元形状の角部65を得るためには、例えばプレス金型を用いてカップ部を形成する必要もあった。
【0030】
これに対し、本実施形態の電池セル50では、図1に示すように、外装フィルム24は、フィルム貼付け部38Aの外周面に沿って単に2次元的に折り曲げられているだけであり、図5のような角部65は生じていない。したがって、角部65においてフィルムが損傷するといった問題なども生じることはない。また、このように2次元曲げの構成となっている場合、例えば次のような工程により外装フィルムの接着を行うことも可能である。すなわち、カップ部が形成されていない平らな外装フィルムを通路形成部材30の所定位置に配置し、次いで、熱シール用の治具により封止部23となる部位を押圧する。これにより、封止部23が形成されると共に、同時に外装フィルムの折り曲げがなされることとなる。外装フィルムに予め折り目を付けた後に熱シールを行うことも勿論可能であるが、上記のような方法によれば工程が簡素化するという利点もある。
【0031】
以上説明したように本実施形態の電池50によれば、1つのフィルム包装体内に2つの電池要素22A、22Bを備えたものであるため、図15を参照して説明したような電池セルの大面積化を伴うことなく、電池の大容量化を行うことが可能である。そして、このように電池要素を積層する構成であっても、電池要素22A、22B同士の間には筒状部35が配置されていることから、次のような利点が得られる。
【0032】
すなわち、電池セル50の使用時(充放電時)に電池要素22A、22Bで発生した熱は、筒状部の上面35a又は下面35bに伝播する。これにより筒状部35の温度が上昇する。筒状部35に伝わった熱は、冷却風通路32内の空気に伝わることで外部に逃がされる。このように、本実施形態の電池セル50では、各電池要素で発生した熱を冷却風通路32を通じて逃がすことができるため、各電池要素の放熱が良好に行われる。また、本実施形態の電池セル50は、図14を参照して説明したような複雑な構造の放熱手段を用いるのではなく、比較的簡単な構造の通路形成部材30を利用して放熱を行うものであるため、例えば製造コストの観点、及び信頼性の観点でも有利である。
【0033】
また、筒状部35は、電池セル50における補強部材としての機能も備えている。通常、電池要素22A、22B自体は、前述の通り例えば数mm〜十数mm程度の扁平構造とされており、外力が加わった際に変形することもある。電池要素22A、22B自体の変形は、例えば正極用金属箔と負極用金属箔との短絡の原因となることもある。これに対して、本実施形態のように筒状部35が電池要素同士の間に配置されている構成であれば、電池セル50の面剛性が向上し、電池要素22A、22Bの変形の発生が防止される。
【0034】
なお、図6には、本実施形態の電池セル50を複数集合させ、それらを直列に電気的に接続した組電池80が示されている。図示されているように、各電池セル50の通路形成部材30の一部がセルケースとしても機能することから、電池セル50同士を積層するだけで組電池80を構成することが可能である。各電池セル同士の固定は、各貫通孔41に通された通しボルト(不図示)により行われている。各電池セル50において、電極タブ25a、25bが引き出された部位には通路形成部材30の部材は存在していない。したがって、この部位に例えばウレタンフォーム等からなるタブ支持部材81を配置することにより、電極タブ25a、25bの支持が安定化する。
【0035】
また、上記説明では特に述べなかったが、冷却風通路32に流す冷媒としては、空気に限らず、液体をはじめとする種々の冷媒を利用可能である。また、外装フィルム24A、24Bは例えばラミネートフィルムであり、このラミネートフィルムとしては電池要素を良好に気密封止できるものが用いられる。具体的な一例を挙げれば、熱溶融性を有し内側面となる樹脂層と、金属薄膜などからなる非通気層と、ナイロンなどからなり外側面となる保護層とが、この順番に積層されたものであってもよい。
【0036】
(第2の実施形態)
通路形成部材は、上記実施形態で示したものの他にも例えば図7に示すようなものであってもよい。図7は、第2の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材130の斜視図であり中央部である筒状部135のみが示されている。図8は、図7のB−B切断線における部分断面図である。なお、本実施形態の電池セルは、その全体構成は図示しないが、第1の実施形態の電池セル50において通路形成部材30に代えて通路形成部材130を備えたものである。通路形成部材以外の構成要素は、第1の実施形態と同様であるためその説明は省略する。
【0037】
ところで、フィルム外装電池においては、例えば電池の使用時に規格範囲外の電圧が電池に印加されると、電池要素と共に封入された電界液溶媒が電気分解され、その結果、外装フィルム内にガスが発生することがある。また、電池が規格範囲外の高温条件で使用される場合にも、電解質塩の分解等に起因してガスが発生することもある。ガスが大量に発生し、外装フィルム内の内圧がある圧力まで達すると、外装フィルムの封止部が剥離してしまうこともある。この場合、その剥離がどこで生じるか予測することは困難であり、不測の箇所からガスが噴出すれば、隣接する他の電池セルを損傷させる可能性もある。
【0038】
そこで本実施形態では、こうしたガスの噴出の問題を解決するため、図7に示すように筒状部135の上面135aほぼ中央に安全弁140が設けられている。安全弁140は、図8に示すように上面135aの肉厚を部分的に薄くした構造部である。この薄肉部は、外装フィルム内の内圧が所定の設定圧(例えば大気圧力からの上昇分として0.05〜1MPa)を越えたときに破れるようになっている。これにより、外装フィルム内の密閉空間と冷却風通路132(ガス放出路)とが互いに連通し、ガスは冷却風通路132を通じて外部に放出されることとなる。
【0039】
以上のように構成された本実施形態の電池セルによれば、第1の実施形態と同様の利点に加え、安全弁140が設けられていることからガスに起因した不具合が生じにくいものとなる。また、本実施形態のように、通路形成部材130に安全弁140の機能を持たせることは、安全弁を構成するための特別な部材を必要としない点で好ましい。
【0040】
図7の冷却風通路132は、安全弁が破れた場合にガス放出路として機能するものであるが、安全弁が破れるまでは通常の冷却風通路として機能させることも可能である。ガスが放出されたことを検知するために、この冷却風通路内に例えば圧力センサ等が配置されていてもよい。また、複数の電池セルを集合させて組電池を構成した場合、圧力センサは、各電池セルごとに設けられていてもよいし、あるいは各電池セルの通路132に連通する共通のガス排出路(不図示)内に1つのみが設けられていてもよい。また、図7、図8では安全弁140は上面135aに1つのみ形成されているが、これに限らず例えば、通路形成部材130の上下面のそれぞれに安全弁が設けられていてもよい。
【0041】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材230の斜視図であり、中央部である筒状部235のみが示されている。第1の実施形態で説明したように、通路形成部材30は電池要素22A、22Bと共に外装フィルム内に収容されるものであるため、原則として、樹脂等の絶縁性材料で構成されている必要がある。他方、通路形成部材は、電池要素からの熱を冷却風通路内に逃がす機能を備えたものであるため、熱伝導率の高い材料で構成されていることが好ましい。
【0042】
この点に鑑み、本実施形態における通路形成部材230は、例えば金属材料など熱伝導率の高い材料(「熱良導体」ともいう)で構成された筒状部235と、その両面に貼り付けられる2枚の絶縁フィルム245a、245bとを有している。筒状部235は、2枚の絶縁フィルム245a、245bによって両面側から挟み込まれることによって絶縁された状態となっている。2枚の絶縁フィルム245a、245bは、先細り部233Bの先端のところで互いに熱シールされていてもよい。本実施形態の電池セルによれば、通路形成部材230の筒状部235が金属材料等の熱良導体で構成されていることから、電池セルの放熱性がより良好なものとなる。
【0043】
(第4の実施形態)
通路形成部材は更に図10に示すようなものであってもよい。図10の通路形成部材330は、筒状部335の図示X方向両端部から更に外側に向かって延びるように形成された接続部337を有している。接続部337には突起337aが形成されている。このような構成によれば、電極タブ325の穴325aを接続部337の突起337aに係合させることで、電極タブ325と通路形成部材337とが相互に接続される。なお、電極タブと通路形成部材とを接続するには、当然ながら図9に示す形態の他にも種々の接続形態を利用可能である。
【0044】
電極タブ325が通路形成部材337に接続されている場合、換言すれば、電極タブ325の一端側が通路形成部材337によって支持されている場合、次のような理由から、最終的な電池セルの信頼性が向上する。すなわち、図10の構成では、電極タブ325に引っ張り荷重等がかかった際に、電極タブ325はより変位しにくいものとなっている。このように電極タブが変位しにくい構成となっていることにより、電極タブ325と電池要素との電気的接続部が破損したり、あるいは、電極タブ325とフィルム封止部との間に空隙が生じたりすることが防止され、結果的に電池セルの信頼性が高まることとなる。
【0045】
なお、以上説明した各実施形態の構成を種々組み合わせて利用することも可能である。また、図15を参照して説明したような、電池要素を大面積化させて電池を大容量化することを本発明に係る電池要素に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態の電池セルの構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1の電池セルの上面図である。
【図3】図1のA−A切断線における断面図である。
【図4】第1の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材を単体の状態で示す斜視図である。
【図5】従来のフィルム外装電池の外装フィルムの形態を一例として示す斜視図である。
【図6】第1の実施形態の電池セルから構成された組電池を示す斜視図である。
【図7】第2の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材の斜視図である。
【図8】図7のB−B切断線における部分断面図である。
【図9】第3の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材の斜視図である。
【図10】第4の実施形態の電池セルに用いられる通路形成部材の斜視図である。
【図11】従来のフィルム外装電池の構成を示す断面図である。
【図12】電池要素を積層させて大容量化を図る電池セルの一例を示す断面図である。
【図13】従来の組電池の構成を模式的に示す平面図である。
【図14】電池セル内に収容された従来の放熱手段の一例を示す斜視図である。
【図15】電池の大容量化のために大面積化された電池セルを示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
22A、22B 電池要素
23、23a、23b 封止部
24A、24B、24 外装フィルム
25a、25b、325 電極タブ
325a 穴
30 通路形成部材
32、132、232 冷却風通路
32’ 通路
233B 先細り部
35、135、235、335 筒状部
35a、135a 上面
35b、135b 下面
337 接続部
337a 突起
38 側縁部
38A フィルム貼付け部
38B 側面壁
140 安全弁
41 貫通孔
245a、245b 絶縁フィルム
50 電池セル
60 カップ部
65 角部
80 組電池
81 タブ支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平筒状をなす筒状部材と該筒状部材の軸線方向の両端に設けられた側縁部材とを備える通路形成部材と、前記筒状部材の両面にそれぞれ配置された2つの電池要素と、前記2つの電池要素を包囲して密閉する2枚の外装フィルムとを有し、前記筒状部材の内部には、前記側縁部材に形成された通路を通じて冷却風が供給されるようになっており、
前記外装フィルムの外周部のうち前記軸線方向両端の2辺が、前記各側縁部材の一部に貼り付けられると共に、他の2辺では前記外装フィルム同士が互いに熱シールされることにより、前記外装フィルムが2次元的に折り曲げられた状態となっているフィルム外装電池。
【請求項2】
前記側縁部材は、外装フィルムが貼り付けられる前記一部を外周面とするフィルム貼付け部を有し、該フィルム貼付け部の高さ寸法が、前記電池要素2つ分の厚みに前記通路形成部材の厚みを加えた寸法以上に設定されている、請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項3】
前記フィルム貼付け部の輪郭形状が六角形とされており、該六角形における鋭角角部のところで前記外装フィルム同士が互いに熱シールされている、請求項2に記載のフィルム外装電池。
【請求項4】
前記側縁部材における前記フィルム貼付け部の外側は、前記電池要素の1辺に沿って延在する側面壁となっており、該側面壁の両端はそれぞれ、前記外周フィルムの両端より外側まで延びている、請求項2又は3に記載のフィルム外装電池。
【請求項5】
前記各電池要素は、その一方の面が前記筒状部材の一方の面と密着した状態で配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム外装電池。
【請求項6】
前記筒状部材の内部は、リブによって仕切られた複数の冷却風通路となっている、請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルム外装電池。
【請求項7】
前記筒状部材は、その両面のうち少なくとも一方の面に安全弁を有しており、該安全弁は、前記外装フィルム内に生じたガスの圧力が所定の設定値を越えたときに破れる薄肉部である、請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項8】
前記各電池要素に電気的に接続されると共に、前記外装フィルム同士が熱シールされた部位から引き出されたシート状の電極タブを更に有し、該電極タブの一端側は前記通路形成部材によって支持されている、請求項1に記載のフィルム外装電池。
【請求項9】
前記通路形成部材は、前記筒状部材と前記側縁部材とが一体に形成された樹脂成形品である、請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルム外装電池。
【請求項10】
前記筒状部材が金属材料で構成されると共に、前記筒状部材の外周面に貼り付けられたフィルムにより絶縁されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルム外装電電池。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のフィルム外装電池が複数集合し、前記フィルム外装電池同士が直列及び/又は並列に電気的接続されている組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−351373(P2006−351373A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176423(P2005−176423)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】