説明

フェイズドアレイレーダ

【課題】安価に製造でき、リンギングの起こりにくい小型化に適した送受信モジュールを備え、短パルス/長パルス交互送信をおこなうフェイズドアレイレーダを提供する。
【解決手段】長パルス生成用の大容量コンデンサバンク11を送受信モジュール100の外部に配置し、低速スイッチ回路12と、高速スイッチ回路14とを並列に接続した。そして、低速スイッチ回路12によってパルスを駆動するとともに、短パルス生成用の小容量コンデンサバンク13を送受信モジュール100内に配置し、高速スイッチ回路14によってパルスを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイズドアレイレーダに係り、特に短パルスと長パルスを交互に送受信するのに適したバイアス用パルス電圧を供給する回路を備えるフェイズドアレイレーダに関する。
【背景技術】
【0002】
フェイズドアレイレーダは複数の送受信モジュールを配置し、位相をそろえて目標にパルスを発信し、反射波を受信して目標を検出する。より遠くの目標を捕らえるには、エネルギーの大きい長パルスを送信する必要がある。しかし、長パルスを送信中は反射波を受信できないため、近くの目標は検出できなくなる。このため、遠くの目標を検出するのに適した長パルスと、近くの目標を検出するのに適した短パルスとを交互に送信するフェイズドアレイレーダが開発された。
【0003】
近年ではこのフェイズドアレイレーダを小型化する必要が出てきている。フェイズドアレイレーダを小型化するには送受信モジュールの配置間隔を狭める必要がある。しかし、長パルスを送信するためのコンデンサは容量を大きくする必要があり、容量を大きくするとコンデンサの大きさも大きくなり送受信モジュールの配置間隔を狭めることを妨げる。
【0004】
この点に関し、大容量のコンデンサを送受信モジュールの外に配置し、長パルスを送信する場合には増幅器のドレインを用いてスイッチングし、短パルスを送信する場合には増幅器のゲートを用いてスイッチングする技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、ゲートを用いてスイッチングするには絶縁破壊電圧の高いGaN(ガリウムナイトライド)などを用いた半導体素子を用いる必要があり、製造コストが高くなるという問題点がある。また、大容量のコンデンサと増幅器との距離が大きいと配線インダクタンスによりリンギングが起こるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−147943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安価に製造でき、リンギングの起こりにくい小型化に適した送受信モジュールを備え、短パルス/長パルス交互送信をおこなうフェイズドアレイレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、位相器と、受信増幅器と、送信増幅器と、高速スイッチ回路と、高速スイッチ回路を介して送信増幅器に接続する小容量コンデンサバンクと、を含む送受信モジュールと、送受信モジュールの外部に設けられる低速スイッチ回路と、送受信モジュールの外部に設けられ、低速スイッチ回路を介して送信増幅器に接続する大容量コンデンサバンクと、を備える、フェイズドアレイレーダを提供する。
【発明の効果】
【0009】
リンギングの発生を抑えたフェイズドアレイレーダを安価に製造することが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のフェイズドアレイレーダの要部を示す回路図である。
【図2】第1の実施形態のフェイズドアレイレーダの動作を示す図である。
【図3】第2の実施形態のフェイズドアレイレーダの要部を示す回路図である。
【図4】第2の実施形態のフェイズドアレイレーダの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係るフェイズドアレイレーダを、図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1の実施形態のフェイズドアレイレーダ(以下、単にフェイズドアレイレーダと呼ぶ。)の要部を示す回路図である。図1に示すように、本実施形態のフェイズドアレイレーダは、送受信モジュール100の外部に配置される大容量コンデンサバンク11と、送受信モジュール100の外部に配置される低速スイッチ回路12と、送受信モジュール100とを備える。
【0012】
バイアス電源には大容量のコンデンサバンク11が接続され、大容量コンデンサバンクに低速スイッチ回路12が接続される。低速スイッチ回路12には送受信モジュール100の内部の小容量コンデンサバンク13が接続される。小容量のコンデンサバンク13には、高速スイッチ回路14が接続され、高速スイッチ回路14は送信増幅器18のドレインに接続される。
【0013】
図1に示すように、大容量コンデンサバンク11と、低速スイッチ回路12と、小容量コンデンサバンク13と、高速スイッチ回路14とは直列に接続されている。
【0014】
送信入力端子受信出力端子15は移相器16に接続する、移相器16はスイッチ回路17に接続する。スイッチ回路17は送信増幅器18と受信増幅器19とを切り替える。送信増幅器18と受信増幅器19とはスイッチ回路20に接続する。スイッチ回路20は送信増幅器18及び受信増幅器19と送信出力端子受信入力端子21との接続を切り替える。
【0015】
短パルス用送信ドライブ信号22は高速スイッチ回路14のスイッチングを制御する。長パルス用送信ドライブ信号23は低速スイッチ回路12のスイッチングを制御する。
【0016】
図2は、第1の実施形態のフェイズドアレイレーダの動作を示す図である。図2に示すように、長パルスを送信する場合は、短パルス用送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をONにする。次いで、長パルス用送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をONにする。低速スイッチ回路12はゆっくり立ち上がるため、送信増幅器バイアス電源24はゆっくり立ち上がる。送信増幅器バイアス電源24がゆっくり立ち上がると、送信パルス25はリンギングを発生させずにパルスが立ち上がる。
【0017】
次いで、長パルス送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をOFFにする。低速スイッチ回路12はゆっくり立ち下がるため、送信増幅器バイアス電源24はゆっくり立ち下がる。送信増幅器バイアス電源24がゆっくり立ち下がると、送信パルス25はリンギングを発生させずにパルスが立ち下がる。次いで、短パルス用送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をOFFにする。
【0018】
短パルスを送信する場合は、長パルス用送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をONにする。次いで、短パルス用送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をONにする。高速スイッチ回路14は俊敏に立ち上がるため、送信増幅器バイアス電源24は俊敏に立ち上がる。送信増幅器バイアス電源24が俊敏に立ち上がると、送信パルス25は俊敏にパルスが立ち上がる。
【0019】
次いで、短パルス送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をOFFにする。高速スイッチ回路14は俊敏に立ち下がるため、送信増幅器バイアス電源24は俊敏に立ち下がる。送信増幅器バイアス電源24が俊敏に立ち下がると、送信パルス25は俊敏にパルスが立ち下がる。次いで、長パルス送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をOFFにする。
【0020】
ここで、短パルスのバイアス電圧は小容量コンデンサバンク13から供給される。小容量コンデンサバンク13は送信増幅器18に近いため、配線インダクタンスは無視できるほど小さい。このため、リンギングは発生しない。
【0021】
以上述べたように、本実施形態のフェイズドアレイレーダは、長パルス生成用の大容量コンデンサバンク11を送受信モジュール100の外部に配置し、低速スイッチ回路12によってパルスを駆動するとともに、短パルス生成用の小容量コンデンサバンク13を送受信モジュール100内に配置し、高速スイッチ回路14によってパルスを駆動する。
【0022】
従って、リンギングの発生を抑えたフェイズドアレイレーダを安価に製造することが可能となるという効果がある。
【0023】
図3は、第2の実施形態のフェイズドアレイレーダの要部を示す回路図である。図3に示すように、本実施形態のフェイズドアレイレーダは、バイアス電源に大容量コンデンサバンク11が接続される。大容量コンデンサバンク11には並列に低速スイッチ回路12と、小容量コンデンサバンク13とが接続される。
【0024】
低速スイッチ12は送信増幅器18のドレインに接続する。小容量コンデンサバンク13は高速スイッチ回路14を介して送信増幅器18のドレインに接続する。
【0025】
送信入力端子受信出力端子15は移相器16に接続する、移相器16はスイッチ回路17に接続する。スイッチ回路17は送信増幅器18と受信増幅器19とを切り替える。送信増幅器18と受信増幅器19とはスイッチ回路20に接続する。スイッチ回路20は送信増幅器18及び受信増幅器19と送信出力端子受信入力端子21との接続を切り替える。
【0026】
短パルス用送信ドライブ信号22は高速スイッチ回路14のスイッチングを制御する。長パルス用送信ドライブ信号23は低速スイッチ回路12のスイッチングを制御する。
【0027】
図4は、第2の実施形態のフェイズドアレイレーダの動作を示す図である。図4に示すように、長パルスを送信する場合は、長パルス用送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をONにする。低速スイッチ回路12はゆっくり立ち上がるため、送信増幅器バイアス電源24はゆっくり立ち上がる。送信増幅器バイアス電源24がゆっくり立ち上がると、送信パルス25はリンギングを発生させずにパルスが立ち上がる。
【0028】
次いで、長パルス送信ドライブ信号23が低速スイッチ回路12をOFFにする。低速スイッチ回路12はゆっくり立ち下がるため、送信増幅器バイアス電源24はゆっくり立ち下がる。送信増幅器バイアス電源24がゆっくり立ち下がると、送信パルス25はリンギングを発生させずにパルスが立ち下がる。
【0029】
短パルスを送信する場合は、短パルス用送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をONにする。高速スイッチ回路14は俊敏に立ち上がるため、送信増幅器バイアス電源24は俊敏に立ち上がる。送信増幅器バイアス電源24が俊敏に立ち上がると、送信パルス25は俊敏にパルスが立ち上がる。
【0030】
次いで、短パルス送信ドライブ信号22が高速スイッチ回路14をOFFにする。高速スイッチ回路14は俊敏に立ち下がるため、送信増幅器バイアス電源24は俊敏に立ち下がる。送信増幅器バイアス電源24が俊敏に立ち下がると、送信パルス25は俊敏にパルスが立ち下がる。
【0031】
ここで、短パルスのバイアス電圧は小容量コンデンサバンク13から供給される。小容量コンデンサバンク13は送信増幅器18に近いため、配線インダクタンスは無視できるほど小さい。このため、リンギングは発生しない。
【0032】
以上述べたように、本実施形態のフェイズドアレイレーダは、長パルス生成用の大容量コンデンサバンク11を送受信モジュール100の外部に配置し、低速スイッチ回路12と、高速スイッチ回路14とを並列に接続した。そして、低速スイッチ回路12によってパルスを駆動するとともに、短パルス生成用の小容量コンデンサバンク13を送受信モジュール100内に配置し、高速スイッチ回路14によってパルスを駆動する。
【0033】
従って、制御の簡単なリンギングの発生を抑えたフェイズドアレイレーダを安価に製造することが可能となるという効果がある。
【符号の説明】
【0034】
11:大容量コンデンサバンク、
12:低速スイッチ回路、
13:小容量コンデンサバンク、
14:高速スイッチ回路、
100,200:送受信モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移相器と、受信増幅器と、送信増幅器と、高速スイッチ回路と、前記高速スイッチ回路を介して前記送信増幅器に接続する小容量コンデンサバンクと、を含む送受信モジュールと、
前記送受信モジュールの外部に設けられる低速スイッチ回路と、
前記送受信モジュールの外部に設けられ、前記低速スイッチ回路を介して前記送信増幅器に接続する大容量コンデンサバンクと、
を備える、フェイズドアレイレーダ。
【請求項2】
バイアス電源に、前記大容量コンデンサバンクと、低速スイッチ回路と、小容量コンデンサバンクと、高速スイッチ回路と、が直列に接続される請求項1記載のフェイズドアレイレーダ。
【請求項3】
バイアス電源に、前記低速スイッチ回路と、前記小容量スイッチ回路とが並列に接続され、前記小容量コンデンサに前記高速スイッチ回路が接続される請求項1記載のフェイズドアレイレーダ。
【請求項4】
長パルスを、前記大容量コンデンサを用いて低速スイッチ回路によって駆動し、短パルスを、前記小容量コンデンサを用いて高速スイッチ回路によって駆動する請求項1記載のフェイズドアレイレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197295(P2010−197295A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44152(P2009−44152)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】