説明

フェナゾピリジン化合物

本発明は、式Iで表される置換フェナゾピリジンを対象とする。本発明は、式Iの化合物は非結合フェナゾピリジンと比べて高いバイオアベイラビリティを有するとの発見にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、様々な結合体に共有結合しているフェナゾピリジンを記載する。これらの化合物および組成物は、高い(経口)バイオアベイラビリティおよび低い副作用を提供するために有用である。
【背景技術】
【0002】
関連技術
様々な発行物を本明細書において引用し、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。しかし、本明細書におけるいかなる参照文献の引用も、そのような参照文献が本出願の先行技術として利用可能であるとの自認であると解釈されるべきではない。
【0003】
フェナゾピリジンは尿路痛、灼熱、刺激、および不快、ならびに尿路感染、手術、損傷、または検査処置によって引き起こされる緊急かつ高頻度の排尿に対して指示される鎮痛化合物である。フェナゾピリジンは、有効な鎮痛剤であるが、悪いことの前兆となる副作用特性を有し、悪心、嘔吐、および一般的なGIの不調が最も重度の事象である。副作用特性を改善し、フェナゾピリジンの使用を拡大する試みの中で、胃腸上皮を通過しての輸送後に活性薬物を生成することになるプロドラッグ化合物の開発を推進することが推奨される。
【0004】
フェナゾピリジンまたは2,6-ピリジンジアミン,3-(フェニルアゾ)一塩化物(CAS番号94-78-0)は、尿路粘膜上の局所鎮痛または局部麻酔作用を発揮し、疼痛、灼熱、緊急性、頻発および感染、外傷、手術、内視鏡処置またはカテーテルの使用によって引き起こされる下部尿路の刺激から生じる他の不快な症状の軽減を提供するアゾ色素である。フェナゾピリジンは1925年から市販されており、1951年以降は処方薬および一般用医薬品(OTC)の二重の状態を有している。
【0005】
フェナゾピリジンは、Nefrecil、Phenazodine、Pyridiate、Pyridium、Sedural、Uricalm、Uropyrine、Urodine、およびUrogesicを含むいくつかの商標で、単剤の100mgおよび200mg錠として市販されている。単剤OTC薬物にはAzo-Gesic、Azo-Standard、およびUristat(95mg錠)、ReAzo(97mg錠)、およびURIReliefおよびBaridium(97.2mg錠)が含まれる。フェナゾピリジンはスルフイソキサゾールまたはスルファメトキサゾール/トリメトプリムとの組み合わせ処方薬として、およびフェナゾピリジンとヒオスシアミン(hyosciamine)との組み合わせとして入手可能である。
【0006】
通常の成人の用量は1日3回食後100〜200mgを2日まで、また小児では12mg/kg/日を3回に分けて食後、2日までである。フェナゾピリジンの鎮痛効果の薬理学的メカニズムは不明である。
【0007】
フェナゾピリジンは経口投与後、胃腸管から吸収される。ヒトにおける絶対バイオアベイラビリティは評価されていないが、最高処方用量の200mgで明らかに吸収は悪く、最大血漿レベルは10から20ng/mLの間である。フェナゾピリジンは尿中に最大65%まで未変化のまま速やかに排出され、1回用量の約90%は24時間以内に排出される。代謝物にはアニリン、N-アセチル-p-アミノフェノール(NAPAまたはアセトアミノフェン)およびp-アミノフェノールが含まれる。アニリンは経口投与したフェナゾピリジンの尿路粘膜における鎮痛効果に貢献している可能性がある。
【0008】
フェナゾピリジンの治療的用量に関連する有害反応には、頭痛、発疹そう痒、胃腸障害(悪心、嘔吐、および下痢)、橙色から赤色の尿変色およびソフトコンタクトレンズの着色が含まれる。腎クリアランスが不十分の場合、フェナゾピリジンは薬物の蓄積により皮膚、強膜または体液を黄色く変色させることがある。メトヘマグロビン血症(Methemaglobenemia)、溶血性貧血、腎および肝毒性が、通常は過量のレベルで報告されている。アナフィラキシー様反応が報告されている。
【0009】
フェナゾピリジンおよび代謝物アニリンは、ヘモグロビンのメトヘマグロビンへの変換により、赤血球内で酸化ストレスを引き起こしうる。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症の患者は、溶血性貧血に罹りやすくなっていることがある。腎機能が損傷している患者にはフェナゾピリジンを投与するべきではない。推奨用量を越えると、血清レベルの上昇および中毒反応を引き起こすことがある。メトヘマグロビン血症(Methemaglobinemia)は一般には過度の急な過量投与後に起こる。フェナゾピリジンの長い歴史とかなり広範な使用を考慮すると、重篤な毒性の報告は比較的まれである。
【0010】
塩酸フェナゾピリジンの長期(2年)投与はラットの大腸の腺腫および腺癌を誘導し、雌マウスで生涯投与すると肝細胞腺腫および癌を引き起こした。フェナゾピリジンは細菌では突然変異誘発性であり、哺乳動物細胞では突然変異誘発性および染色体異常誘発性であることが明らかにされている。塩酸フェナゾピリジンを投与した2,214名の患者による1つの限定的疫学試験において、最短3年間でいかなる型の癌でも発生率の上昇は観察されなかった。現在のフェナゾピリジン製品のラベルには下記のように表示されている:「塩酸フェナゾピリジンの長期投与はラット(大腸)およびマウス(肝臓)で異常増殖を誘導した。塩酸フェナゾピリジンとヒトにおける異常増殖との間に関連は報告されていないが、これらの系列に沿って十分な疫学的試験は実施されていない。」
【0011】
ラットでの最大50mg/kg/日または110mg/kg/日およびウサギでの最大39mg/kg/日の用量での生殖試験により、生殖能力または胚-胎仔発生に対して影響はないことが判明した。フェナゾピリジンは現在のところ妊娠カテゴリーBに分類されている。妊婦におけるフェナゾピリジン曝露の十分な管理下試験は行われていない。監視試験でフェナゾピリジン使用と先天性欠損との関連はないと報告されている。Collaborative Perinatal Projectでは、妊娠中に曝露が記録された1,109例と、最初の三半期に曝露があった219例を含む、50,282組の母子をモニターした。大小の奇形または個々の欠損との関連は見られなかった。229,101名のMichigan Medicaid患者の調査により、最初の三半期に469例のフェナゾピリジン曝露が認められた。薬物と異常とのいかなる関連を示すデータも得られなかった。
【0012】
フェナゾピリジンの急性毒性LD50は、ラットで472mg/kg(経口)および200(i.p.);マウスで180mg/kg(i.p.)と報告されている。フェナゾピリジンについての十分な安全性薬理試験および反復投与非臨床毒性試験は実施されていない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、フェナゾピリジンおよびその誘導体または類縁体の様々な化学部分への共有結合を提供する。化学部分には、プロドラッグ型、すなわち、通常の代謝プロセスによって体内でその活性型に変換される分子を生じる任意の物質が含まれうる。例えば、化学部分は1つのアミノ酸、ジペプチド、またはポリペプチドでありうる。
【0014】
化学部分はフェナゾピリジンに直接またはリンカーを通じて間接的のいずれかで共有結合される。結合部位は典型的にはフェナゾピリジン上の利用可能な官能基によって決定される。
【0015】
一つの態様において、フェナゾピリジンを、天然または合成アミノ酸のいずれかである1つのアミノ酸に結合する。別の態様において、フェナゾピリジンを、天然アミノ酸と合成アミノ酸の任意の組み合わせでありうるジペプチドまたはトリペプチドに結合する。別の態様において、アミノ酸はプロテアーゼによる消化のためにL-アミノ酸から選択される。
【0016】
本発明の他の目的、利点および態様を以下に記載し、これらは本記載および本発明の実施から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、様々なフェナゾピリジン-アミノ酸結合体を経口投与した後の、ラットにおけるフェナゾピリジン結合体の血漿濃度を示すグラフである。PAP-HCl、Gly-PAP、アラニル-PAP、メチオニル-PAP、ヒスチジニル-PAP、トリプトファニル-PAP、バリル-PAP、およびリジル-PAP投与後の時間に対するフェナゾピリジン(PAP)血漿濃度を示す。
【図2】図2は、2-アミノ-6-アミノアセトアミド-3-E-フェナゾピリジン二塩酸塩を示す図である。
【図3】図3は、1)塩酸フェナゾピリジン(2.8mg/kg、フェナゾピリジン塩基2.5mg/kgを含む)からのフェナゾピリジン、2)Gly-PAP(4mg/kg、フェナゾピリジン塩基2.5mg/kgを含む)からのフェナゾピリジン、および3)Gly-PAP(4mg/kg、フェナゾピリジン塩基2.5mg/kgを含む)からのGly-PAP完全プロドラッグのラット(雄)での平均血漿濃度曲線を示すグラフである。
【図4】図4は、1)塩酸フェナゾピリジン(2.8mg/kg、フェナゾピリジン塩基2.5mg/kgを含む)からのフェナゾピリジンおよび2)Gly-PAP(0.9mg/kg、フェナゾピリジン塩基0.6mg/kgを含む)からのフェナゾピリジンのラット(雄)での平均血漿濃度曲線を示すグラフである。
【図5】図5は、Gly-PAPの遊離塩基およびHCl塩としての室温での溶解性を示す表である。
【図6】図6は、Gly-PAP塩の水への溶解性およびラットにおけるバイオアベイラビリティを示す表である。
【図7】図7は、UV-HPLCによるGly-PAPの安定性試験の結果を示す表である。
【図8】図8は、UV-HPLCによる0.2mg/mlの4℃の水溶液中のGly-PAP-HClの安定性試験の結果を示す表である。
【図9】図9は、UV-HPLCによる8.8mg/mlの4℃の水溶液中のGly-PAP-HClの安定性試験の結果を示す表である。
【図10】図10は、UV-HPLCによる室温の水溶液中のGly-PAP-HClの安定性試験の結果を示す表である。
【図11】図11は、雄ラットでGly-PAPまたはフェナゾピリジンHClを経口投与した後の、フェナゾピリジンの薬物動態の概要を示す表である。
【図12】図12は、雄ラットでGly-PAPを経口投与した後の、Gly-PAPの薬物動態の概要を示す表である。
【図13】図13は、2)塩酸フェナゾピリジン(5.9mg/kg、フェナゾピリジン塩基5mg/kgを含む)からのフェナゾピリジン、2)Gly-PAP(8.1mg/kg、フェナゾピリジン塩基5mg/kgを含む)からのフェナゾピリジン、および3)Gly-PAP(8.1mg/kg、フェナゾピリジン塩基5mg/kgを含む)からのGly-PAP完全プロドラッグのイヌ(雄)での平均血漿濃度曲線を示すグラフである。
【図14】図14は、Gly-PAP(第1群)またはPAP・HCl(第2群)を1回経口投与した後の、雄イヌから採取した血漿中の薬物動態パラメーターの概要を示す表である。
【図15】図15は、Gly-PAP(第1群)またはPAP・HCl(第2群)を雄イヌに1回経口投与した後の、尿中のPAPおよびGly-PAP濃度の概要を示す表である。
【図16】図16は、2-アミノ-6-アミノアセトアミド-3-E-フェナゾピリジン二塩酸塩生成のための合成スキームである。
【図17】図17は、ラットにおけるGly-PAP塩の経口バイオアベイラビリティを示す表である。
【図18】図18は、GI副作用である嘔吐の軽減を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本出願の全体を通して、「ペプチド」の使用は1つのアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、または担体ペプチドを含むことになる。オリゴペプチドは2つのアミノ酸から70のアミノ酸を含むことになる。さらに、時には、活性物質結合体についての特定の態様を例示するために、本発明はアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたは担体ペプチドに結合している活性物質であると記載される。結合体の好ましい長さおよび他の好ましい態様を本明細書において記載する。
【0019】
本明細書において用いられる「組成物」とは、記載する分子結合体を含む任意の組成物を広く意味する。組成物は乾燥製剤、水溶液、または無菌組成物を含みうる。本明細書に記載の分子を含む組成物は、凍結乾燥型で保存してもよく、炭水化物などの安定化剤を伴ってもよい。使用において、組成物は、塩、例えば、NaCl、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および他の成分を含む水溶液中に含まれてもよい。
【0020】
「フェナゾピリジン」は下記を意味する。

【0021】
本発明において有用な化合物は式Iで表される:

式中、
R1およびR2は独立に
(a)水素;
(b)アミノ酸残基またはペプチド;
(C)

式中、R3は置換されていてもよいアルキルまたはアリールアルキルである;または
(d)アミノ酸のアミンがt-ブチルカルボニルで保護されているアミノ酸残基
であり、ここでR1およびR2の少なくとも1つは水素以外である。
【0022】
本特許は、絶対配置に関わらず、論じるすべての化合物を対象にすることになる。したがって、天然L-アミノ酸を論じるが、D-アミノ酸の使用も含まれる。
【0023】
「低減した」、「軽減した」、「減少した」または「低下した」などの語句の使用は、副作用における少なくとも10%の変化を含むことになり、より高いパーセンテージの変化が好ましい。例えば、変化は25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、またはその中の増分よりも大きくてもよい。
【0024】
プロドラッグの純度は好ましくは25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはその中の増分よりも大きい。
【0025】
増分なる用語は1桁の数、2桁の数、およびその端数、例えば、1、2、3、4、...または0.1、0.2、0.3、0.4などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0026】
列挙した態様のそれぞれについて、アミノ酸またはペプチドは1つまたは複数のグリシンまたは天然(L-)アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、トレオニン、チロシン、およびバリンを含んでいてもよい。別の態様において、アミノ酸またはペプチドは1つまたは複数のグリシンまたは天然(D)アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、トレオニン、チロシン、およびバリンからなる。別の態様において、アミノ酸またはペプチドは、アミノヘキサン酸、ビフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、ジエチルグリシン、ジプロピルグリシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、ホモセリン、ホモチロシン、ナフチルアラニン、ノルロイシン、オルニチン、(4-フルオロ)フェニルアラニン、(2,3,4,5,6ペンタフルオロ)フェニルアラニン、(4-ニトロ)フェニルアラニン、フェニルグリシン、ピペコリン酸、サルコシン、テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、およびtert-ロイシンなどの、1つまたは複数の非天然、非標準または合成アミノ酸からなる。別の態様において、アミノ酸またはペプチドは1つまたは複数のアミノ酸アルコール、例えば、セリンおよびトレオニンを含む。別の態様において、アミノ酸またはペプチドは1つまたは複数のN-メチルアミノ酸、例えば、N-メチルアスパラギン酸を含む。別の態様において、アミノ酸またはペプチドは1つまたは複数の環式アミノ酸、例えば、シス-4-ヒドロキシ-D-プロリンを含む。
【0027】
別の態様において、特定の担体を基礎となる短鎖アミノ酸配列として利用し、追加のアミノ酸を末端または側鎖に加える。別の態様において、前述のアミノ酸配列は、20の天然アミノ酸の1つで置換されている、もう1つのアミノ酸を有していてもよい。置換は配列内のアミノ酸と構造または電荷が類似のアミノ酸によることが好ましい。例えば、イソロイシン(Ile)[I]はロイシン(Leu)[L]に構造的に非常に類似しており、その一方でチロシン(Tyr)[Y]はフェニルアラニン(Phe)[F]に類似し、セリン(Ser)[S]はトレオニン(Thr)[T]に類似し、システイン(Cys)[C]はメチオニン(Met)[M]に類似し、アラニン(Ala)[A]はバリン(Val)[V]に類似し、リジン(Lys)[K]はアルギニン(Arg)[R]に類似し、アスパラギン(Asn)[N]はグルタミン(Gln)[Q]に類似し、アスパラギン酸(Asp)[D]はグルタミン酸(Glu)[E]に類似している。または、好ましいアミノ酸置換は、20の必須アミノ酸に付随する親水性(すなわち、極性)または他の一般的特徴に従って選択してもよい。好ましい態様は20の天然アミノ酸をそれらのGRAS特性ゆえに利用するが、アミノ酸鎖の本質的特性に影響しないアミノ酸鎖へのわずかな置換も企図されることが理解される。
【0028】
一つの態様において、担体の範囲は1から12の化学部分の間であり、1から8つの部分が好ましい。別の態様において、化学部分の数は1、2、3、4、5、6、または7から選択される。
【0029】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カプレット剤または錠剤などの、分離した単位で提供することができる。これらの経口製剤は、水性の液体または非水性の液体中の液剤または懸濁剤も含みうる。製剤は、水中油液体乳剤または油中水液体乳剤などの、乳剤でありうる。油は、精製または滅菌した液体を調製した経腸製剤に加え、次いでこれを嚥下不可能な患者の栄養管に入れることによって投与することもできる。
【0030】
軟ゲルまたは軟ゼラチンカプセルを、例えば、適当な媒体(植物油がよく用いられる)中に製剤を分散して、粘度の高い混合物を生成することによって調製してもよい。次いで、この混合物をゼラチンを基剤とするフィルムで、軟ゲル業界の当業者には公知の技術および機械を用いてカプセル化する。次いで、このようにして生成した工業的単位を一定重量になるまで乾燥する。
【0031】
例えば、咀嚼錠は製剤を、嚥下するのではなく咀嚼することが意図される、比較的柔らかい、着香した錠剤剤形を生成するよう設計された賦形剤と混合することによって調製してもよい。通常の錠剤機械および手順、すなわち直接圧縮および造粒の両方、または圧縮前のスラッギングを利用することができる。製薬業界では咀嚼剤形は非常に一般的な剤形であるため、薬学的固形剤形の産生に関わる個人は用いる工程および機械に精通している。
【0032】
例えば、フィルムコーティング錠は、錠剤に接触するフィルム層を沈着させるために回転皿コーティング法または気中懸濁法などの技術を用いて錠剤をコーティングすることにより調製してもよい。
【0033】
例えば、圧縮錠は製剤を、崩壊品質に結合品質を追加することが意図される賦形剤と混合することによって調製してもよい。混合物を、当業者には公知の方法および機械を用いて、直接圧縮するか、または造粒し、次いで圧縮する。得られた圧縮錠用量単位を次いで市場の必要に従い、すなわち、単位用量、ロール、バルク瓶、ブリスターパックなどに包装する。
【0034】
本発明は、広範な材料から調製しうる生物学的に許容される担体の使用も企図する。それに限定されることなく、そのような材料には、特定の薬用組成物を調製するための希釈剤、結合剤および接着剤、滑沢剤、可塑剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、着香剤、甘味剤ならびに緩衝剤および吸着剤などの種々の材料が含まれる。
【0035】
結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、または他の適当なセルロース誘導体、ポビドン、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、薬学的釉薬、ゴム、ホエーなどのミルク誘導体、デンプン、および誘導体、ならびに当業者には公知の他の通常の結合剤などの広範な材料から選択してもよい。例示的非限定的溶媒は水、エタノール、イソプロピルアルコール、塩化メチレンまたはその混合物および組み合わせである。例示的非限定的充填物質には、糖、乳糖、ゼラチン、デンプン、および二酸化ケイ素が含まれる。
【0036】
好ましい可塑剤は、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クロノチック酸(cronotic acid)、プロピレングリコール、フタル酸ブチル、セバシン酸ジブチル、ヒマシ油およびその混合物からなる群より選択してもよいが、それらに限定されるわけではない。明白であるとおり、可塑剤は本来、疎水性であっても親水性であってもよい。フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチルおよびヒマシ油などの水に不溶性の疎水性物質は、ビタミンB6およびビタミンCなどの水溶性ビタミンの放出を遅延させるために用いる。これに対し、親水性の可塑剤は、水に不溶性のビタミンを使用するときに用い、これはカプセル化したフィルムを溶解し、表面の通路を作るのを助け、栄養組成物の放出を助ける。
【0037】
特に前述する成分に加えて、本発明の製剤は、着香剤、保存剤および抗酸化剤などの他の適当な物質を含みうることが理解されるべきである。そのような抗酸化剤は食品として許容され、ビタミンE、カロテン、BHTまたは当業者には公知の他の抗酸化剤を含みうるであろう。
【0038】
混合により含まれうる他の化合物は、例えば、医学的に不活性な成分、例えば、錠剤またはカプセル剤のための乳糖、デキストロース、ショ糖、セルロース、デンプンまたはリン酸カルシウムなどの固体および液体希釈剤、ソフトカプセル剤のためのオリーブオイルまたはオレイン酸エチル、懸濁剤または乳剤のための水または植物油;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコールなどの滑沢剤;コロイド粘土などのゲル化剤;トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウムなどの増粘剤、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;発泡混合物;染料;甘味剤;レシチン、ポリソルベートまたはラウリル硫酸塩などの湿潤剤;ならびにそのような製剤のための公知の添加物である、保湿剤、保存剤、緩衝剤および抗酸化剤などの、他の治療上許容される補助成分である。
【0039】
経口投与のために、希釈剤、分散剤および/または界面活性剤を含む微粉末または顆粒は、頓服水剤中、水中もしくはシロップ剤中、乾燥状態でカプセル内もしくはサシェ内、懸濁化剤を含んでいてもよい非水性懸濁剤中、または水もしくはシロップ中の懸濁剤中に存在してもよい。望ましい、または必要な場合には、着香剤、保存剤、懸濁化剤、増粘剤または乳化剤を含むこともできる。
【0040】
経口投与のための液体分散剤はシロップ剤、乳剤または懸濁剤であってもよい。シロップ剤は担体、例えば、ショ糖またはショ糖とグリセロールおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールとして含んでいてもよい。懸濁剤および乳剤は、担体、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含んでいてもよい。
【0041】
成人の用量範囲は、患者の年齢、体重および状態を含むいくつかの因子に依存することになる。錠剤および分離した単位で提供される他の体裁の剤形は、本発明の1つまたは複数の化合物の一日用量、またはその適当な割合を都合よく含む。例えば、単位は5mgから500mg、より通常は10mgから250mgの1つまたは複数の本発明の化合物を含んでいてもよい。
【0042】
当業者には公知の任意の放出型を組み合わせる剤形もまた可能である。これらには、即時放出、長期放出、パルス放出、可変的放出、制御放出、持効性放出、持続放出、遅延放出、長期作用およびその組合せが含まれる。即時放出、長期放出、パルス放出、可変的放出、制御放出、持効性放出、持続放出、遅延放出、長期作用特性およびその組合せを実現する能力は、当技術分野において公知である。
【0043】
本発明の組成物は、用量の一部すなわち分割用量を24時間の間に1回または複数回、24時間の間に1回用量で、24時間の間に2回用量で、または24時間の間に2回よりも多くの用量で投与してもよい。分割用量、2回用量または他の複数回用量は、24時間の間に同時または異なる時点で投与してもよい。用量は互いに、または異なる投与時の個別の成分について不均一な用量であってもよい。
【0044】
同様に、本発明の組成物は、ブリスターパックまたは他のそのような薬剤包装で提供してもよい。さらに、本発明の組成物は、個体がその組成物を処方された治療のための製品として特定できるようなしるしをさらに含むか、または添付されていてもよい。しるしは、組成物を投与するための上に明記された時間の表示をさらに含んでいてもよい。例えば、しるしは、組成物投与のための1日の特定または全体の時間を示す時間指標であってもよく、またはしるしは、組成物投与のための週の曜日を示す曜日指標であってもよい。ブリスターパックまたは他の組み合わせ包装は、第二の薬学的製品を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の組成物の薬理活性は、当技術分野において公知の標準的な薬理学的モデルを用いて示しうることが理解されよう。さらに、本発明の組成物は、部位特異的送達のために適当なポリマー基質もしくは膜に組み込む、もしくは封入しうるか、または部位特異的送達を行うことが可能な特異的標的指向物質によって機能化しうることが理解されよう。これらの技術ならびに他の薬物送達技術は当技術分野において周知である。
【0046】
本発明の別の態様において、組成物の溶解性および溶解速度は、腸内、粘膜表面、または血流中で遭遇する生理的条件下で実質的に変化する。別の態様において、溶解性および溶解速度は、フェナゾピリジンのバイオアベイラビリティを、特に治療を意図した用量を超える用量で実質的に低下させる。
【0047】
記載した態様のそれぞれに関して、以下の特徴の1つまたは両方が認められる:フェナゾピリジン結合体に関連する毒性または副作用は、フェナゾピリジン自体のものよりも実質的に低い。その他の提唱される利点のいくつかには、プロドラッグは経口投与後に加水分解されて、バイオアベイラビリティの上昇、Tmaxの上昇、極性および溶解性増大、ならびにPepT1または他の輸送体による能動輸送の可能性をもたらすという事実が含まれる。したがって、プロドラッグの利点はPAPへのGI曝露低下(およびそれに比例しての副作用の軽減)、全用量の低減および作用期間の延長も提供しうる。
【0048】
本発明の別の態様は、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、アルギニン、またはヒスチジンなどの20の天然アミノ酸を含む任意の1つのアミノ酸に共有結合しているフェナゾピリジンを提供する。
【0049】
別の態様において、フェナゾピリジンはジペプチドまたはポリペプチドに共有結合している。
【0050】
別の態様において、フェナゾピリジンはグリシンに共有結合している。
【0051】
別の態様において、フェナゾピリジンは少なくとも1つのグリシンおよび追加のアミノ酸に共有結合している。
【0052】
別の態様において、本発明のフェナゾピリジン結合体を、例えば、尿路痛、灼熱、刺激、不快、または尿路感染、手術、損傷、もしくは検査処置によって引き起こされる緊急もしくは高頻度の排尿を治療するために、治療上有効な量で患者に投与し、ここで患者に投与する量は標準の臨床プロトコルに従って投与される非結合フェナゾピリジンの標準用量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%、または他の分割量である。
【0053】
一つの態様において、本発明のフェナゾピリジン結合体を患者に投与し、例えば、悪心、嘔吐、および一般的なGIの不調などの観察される副作用のレベルは、フェナゾピリジンの標準用量を患者に投与した場合に観察される副作用のレベルと比べて、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上軽減される。
【0054】
列挙した態様のそれぞれについて、共有結合はアミドまたはカルバメート結合を含みうる。
【0055】
本明細書において用いられる略語は、特に記載がないかぎり、化学および生物学の技術分野の範囲内でのそれらの通常の意味を有する。例えば:「h」または「hr」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mol」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「×g」はかける重力を意味し、「aa」はアミノ酸を意味し、「k」はキロを意味し、「μ」はマイクロを意味し、「℃」は摂氏度を意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「DME」はジメトキシエタンを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「NMR」は核磁気共鳴を意味し、「BOC」はt-ブトキシカルボニルを意味し、「psi」はポンド/平方インチを意味し、かつ「TLC」は薄層クロマトグラフィを意味する。
【0056】
それ自体または別の基の一部で本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、1から10個の炭素または指定の数の炭素(C1-C10は1から10個の炭素を意味する)を有する、直鎖、分枝、または環式飽和脂肪族炭化水素を意味する。例示的アルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、n-オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシルなどが含まれる。
【0057】
それ自体または別の基の一部で本明細書において用いられる「置換されていてもよいアルキル」なる用語は、ニトロ、シアノ、アミノ、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよい複素環、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アルキルチオ、カルボキサミド、スルホンアミド、-COR、-SO2R、-N(R)COR、-N(R)SO2Rまたは-N(R)C=N(R)-アミノ(Rはアルキル基でありうる)から独立に選択される1から3つの置換基で置換されていてもよい、上で定義したアルキルを意味する。置換されているアルキル基の例として、-CH2OCH3、-CH2CH2NH2、-CH2CH2CN、-CH2SO2CH3等が含まれる。
【0058】
本発明の化合物は塩を形成してもよく、これらも本発明の範囲内である。本明細書における本発明の化合物への言及は、特に記載がないかぎり、その塩への言及を含むことが理解される。本明細書において用いられる「塩」なる用語は、無機および/または有機酸および塩基と形成される酸性および/または塩基性塩を示す。加えて、本発明の化合物が塩基性部分および酸性部分の両方を含む場合、両性イオン(「内部塩」)が形成されることがあり、これらは本明細書において用いられる「塩」なる用語の範囲内に含まれる。薬学的に許容される(すなわち、非毒性で、生理学的に許容される)塩が好ましいが、他の塩も、例えば、単離または精製段階において有用であり、これらは調製中に用いてもよい。本発明の化合物の塩は、例えば、塩が沈澱する媒質または水性媒質などの媒質中で、化合物を当量などの一定量の酸または塩基と反応させることによって形成してもよく、水性媒質の場合には続いて凍結乾燥を行う。
【0059】
塩基性部分を含む本発明の化合物は、様々な有機および無機酸と塩を形成しうる。例示的な酸付加塩には酢酸塩(酢酸またはトリハロ酢酸、例えば、トリフルオロ酢酸と形成されるものなど)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸と形成される)、臭化水素酸塩(臭化水素酸と形成される)、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸と形成される)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸と形成される)、2-ナフタレンスルホン、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸と形成されるものなど)、スルホン酸塩(本明細書において言及するものなど)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラートなどのトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。
【0060】
酸性部分を含む本発明の化合物は、様々な有機および無機塩基と塩を形成しうる。例示的な塩基性塩にはアンモニウム塩;ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N-ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンと形成される)、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミド、t-ブチルアミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)との塩;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが含まれる。
【0061】
本明細書において用いられる立体化学用語および規則は、特に記載がないかぎり、Pure & Appl. Chem 68:2193 (1996)に記載のものと一致している。
【0062】
「鏡像異性体過剰率」または「ee」なる用語は、一方の鏡像異性体が他方に比べてどれだけ存在するかの尺度を意味する。RおよびS鏡像異性体の混合物について、鏡像異性体過剰パーセントは|R-S|*100と規定され、式中RおよびSはR+S=1であるような混合物中の鏡像異性体のそれぞれのモルまたは重量画分である。キラル物質の旋光度がわかれば、鏡像異性体過剰パーセントは([α]obs/[α]max)*100と規定され、式中[α]obsは鏡像異性体の混合物の旋光度であり、[α]maxは純粋な鏡像異性体の旋光度である。鏡像異性体過剰率を求めるのは、NMR分光法、キラルカラムクロマトグラフィまたは旋光分析を含む、様々な分析技術を用いて可能である。
【0063】
「鏡像異性体として純粋」または「エナンチオピュア」なる用語は、その分子すべて(検出限界の範囲内で)が同じ鏡像異性の方向を有するキラル物質の試料を意味する。
【0064】
「鏡像異性体を多く含む」または「エナンチオエンリッチド」なる用語は、その鏡像異性比が50:50よりも大きいキラル物質の試料を意味する。鏡像異性体を多く含む化合物は鏡像異性体として純粋であることもある。
【0065】
「不斉炭素原子」なる用語は、4つの異なる原子または原子団に結合している、有機化合物の分子内の炭素原子を意味する。
【0066】
「主に(predominantly)」なる用語は、50:50よりも大きい比を意味する。
【0067】
「脱離基」または「LG」なる用語は、特定の反応における基質の残部または主部であると考えられる部分の原子または基から離される原子または基を意味する。アミドカップリング反応において、例示的脱離基には-F、-Cl、-Br、-OC6F5などが含まれる。
【0068】
本発明の目的のために「単離された」なる用語は、その元の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された材料(例えば、化学的化合物)を意味する。
【0069】
薬学的に許容される担体には、糖類、例えば、乳糖もしくはショ糖、マンニトールもしくはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、例えば、リン酸トリカルシウムもしくはリン酸水素カルシウムなどの充填剤、ならびに例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプンを用いたデンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンなどの結合剤が含まれる。望まれる場合には、前述のデンプンおよびカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤を加えてもよい。補助剤は流動調節剤および滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムなどのその塩、および/あるいはポリエチレングリコールである。一つの態様において、糖衣錠の核は、望まれる場合には胃液に対して抵抗性の適当なコーティングをして提供される。この目的のために、濃縮糖溶液を用いてもよく、これは任意にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい。胃液に対して抵抗性のコーティングを生成するために、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの適当なセルロース調製物の溶液を用いる。染料または色素を、例えば、特定のために、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0070】
経口で用いることができる他の薬学的製剤には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作られた密封軟カプセル剤が含まれる。プッシュフィットカプセル剤は、任意に乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意に安定化剤と混合されていてもよい、顆粒またはナノ粒子の形の活性化合物を含むことができる。一つの態様において、活性化合物を脂肪油、または流動パラフィンなどの適当な液体に、任意に安定化剤と共に溶解または懸濁する。
【0071】
脂肪油はモノ、ジまたはトリグリセリドを含みうる。モノ、ジおよびトリグリセリドには、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20およびC22酸から誘導されるものが含まれる。例示的ジグリセリドには、特に、ジオレイン、ジパルミトレイン、および混合カプリリン-カプリンジグリセリドが含まれる。好ましいトリグリセリドには、植物油、魚油、動物性脂肪、硬化植物油、部分硬化植物油、合成トリグリセリド、加工トリグリセリド、精留トリグリセリド、中鎖および長鎖トリグリセリド、構造化トリグリセリド、ならびにその混合物が含まれる。例示的トリグリセリドには:アーモンド油;ババス油;ルリジサ油;クロフサスグリ種子油;キャノーラ油;ヒマシ油;ヤシ油;トウモロコシ油;綿実油;月見草油;グレープシード油;落花生油;カラシ油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナッツ油;ナタネ油;ベニバナ油;ゴマ油;サメ肝油;ダイズ油;ヒマワリ油;硬化ヒマシ油;硬化ヤシ油;硬化パーム油;硬化ダイズ油;硬化植物油;硬化綿実およびヒマシ油;部分硬化ダイズ油;部分ダイズおよび綿実油;トリカプロン酸グリセリン;トリカプリル酸グリセリン;トリカプリン酸グリセリン;トリウンデカン酸グリセリン;トリラウリン酸グリセリン;トリオレイン酸グリセリン;トリリノール酸グリセリン;トリリノレン酸グリセリン;トリカプリル酸/カプリン酸グリセリン;トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリン;トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリン;およびトリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリンが含まれる。
【0072】
非経口投与に適した製剤には、水溶性型、例えば、水溶性の塩およびアルカリ溶液のリガンドの水性溶液が含まれる。加えて、適宜、活性物質の懸濁液、油性注射懸濁剤を投与してもよい。適当な親油性溶媒または媒体には、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドまたはポリエチレングリコール-400が含まれる。水性注射懸濁剤は、懸濁液の粘性を高める物質を含んでいてもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランが含まれる。任意に、懸濁剤は安定化剤を含んでいてもよい。
【0073】
薬学的組成物に加えうる抗酸化剤の例には、BHAおよびBHTが含まれる。
【0074】
薬学的組成物は0.01重量%から99重量%の活性物質を含みうる。組成物は1回または複数回用量剤形のいずれかでありうる。任意の特定の薬学的組成物におけるリガンドの量は有効用量、すなわち所望の遺伝子発現または抑制を誘発するのに必要な用量に依存することになる。
【0075】
薬学的組成物を投与するのに適した経路には、経口、口腔、舌下、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および経鼻胃管を含む)が含まれる。当業者であれば、好ましい投与経路は治療中の状態に依存することになり、受容者の状態などの因子によって変動しうることが理解されるであろう。薬学的組成物を1日に1回または複数回投与してもよい。
【実施例】
【0076】
一般合成法の例
アミノアシル-フェナゾピリジン(PAP)誘導体の合成
実施例1:Boc-グリシル-フェナゾピリジンの調製

THF(15mL)中のBoc-グリシン(875mg、5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(955mg、5mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.06g、5mmol)を加えた。反応混合物を室温で22時間撹拌し、その時点でBoc-グリシン(875mg、5mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(955mg、5mmol)を追加した。さらに48時間撹拌した後、沈澱した固体をろ過し、ろ液を濃縮乾固した。残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、粗生成物(2.24g)を橙色油状物で得た。生成物をシリカゲル(62g)で、溶離剤としてヘキサン-酢酸エチル50:50を用いてのカラムクロマトグラフィにより精製した。Boc-グリシル-フェナゾピリジンを橙色油状物で得た:収率330mg(18%)。

【0077】
実施例2:グリシル-フェナゾピリジン(6-N-グリシルフェナゾピリジン)の調製

ジクロロメタン(20mL)中のBoc-グリシル-フェナゾピリジン(330mg、0.89mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(3.10mL、41.3mmol)を加えた。反応混合物を室温で2.5時間撹拌し、その時点で反応は完了した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)に加え、層を分離し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(40mL)で1回洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で溶媒を除去した後、グリシル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率140mg(58%)。

【0078】
実施例3:グリシル-フェナゾピリジン塩酸塩の調製

EtOAc(20mL)中のBoc-グリシル- フェナゾピリジン(1.0g、2.70mmol)の溶液を冷却(0〜5℃)し、これに乾燥HCl(g)[36%HCl溶液(5mL)をH2SO4に加えることにより調製]をゆっくり通気した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、その後HPLC分析により反応が完了したが示された。粘稠混合物をろ過し、生成物をEtOAc(15mL)で4回洗浄し、P2O5により減圧下、45℃で6時間乾燥した。グリシル-フェナゾピリジン二塩酸塩を橙色固体で得た:収率878mg(94%)。

【0079】
実施例4:グリシル-フェナゾピリジンメシラート塩の調製

ジオキサン(8mL)中のBoc-グリシル-フェナゾピリジン(300mg、0.8mmol)の溶液に、メタンスルホン酸(207μL、3.2mmol)を滴加した。反応混合物を室温で90分間撹拌し、その後4%の変換しか観察されなかった。1時間45分後、メタンスルホン酸(414μL、6.4mmol)を追加し、撹拌を室温で3時間続けた。沈澱した生成物をろ過し、1,4-ジオキサン(6mL)で3回とアセトン(6mL)で3回洗浄し、P2O5により減圧下、45℃で18時間乾燥した。グリシル-フェナゾピリジンメシラート塩を橙色固体で得た:収率352mg(94%)。

【0080】
実施例5:Boc-アラニル-フェナゾピリジンの調製

THF(15mL)中のBoc-アラニン(945mg、5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(955mg、5mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.06g、5mmol)を加えた。反応混合物を室温で65時間撹拌し、その時点でBoc-アラニン(945mg、5mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(955mg、5mmol)を追加した。さらに24時間撹拌した後、反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(40mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、橙色油状物(2.1g)を得た。油状物をシリカゲル(60g)で、溶離剤としてヘキサン-酢酸エチル50:50を用いてのカラムクロマトグラフィにより精製した。Boc-アラニル-フェナゾピリジンを橙色油状物で得た:収率610mg(32%)。
【0081】
実施例6:アラニル-フェナゾピリジンの調製

ジクロロメタン(15mL)中のBoc-アラニル-フェナゾピリジン(610mg、1.59mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(5.51mL、73.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、その時点で反応は完了した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)に加え、層を分離し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。アラニル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率290mg(64%);

【0082】
実施例7:Boc-メチオニル-フェナゾピリジンの調製

THF(10mL)中のBoc-メチオニン(1.24g、5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(955mg、5mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.06g、5mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その時点でBoc-メチオニン(1.24g、5mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(955mg、5mmol)を追加した。さらに48時間撹拌した後、反応混合物を濃縮乾固し、酢酸エチル(40mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗製橙色油状物をシリカゲル(32g)で、溶離剤としてヘキサン-酢酸エチル50:50を用いてのカラムクロマトグラフィにより精製した。Boc-メチオニル-フェナゾピリジンを橙色油状物で得た:収率700mg(32%)。
【0083】
実施例8:メチオニル-フェナゾピリジンの調製

ジクロロメタン(15mL)中のBoc-メチオニル-フェナゾピリジン(700mg、1.57mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(2.3mL、31.4mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、その時点で反応は完了した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(60mL)に加え、層を分離し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。メチオニル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率247mg(46%)。

【0084】
実施例9:ビス-Boc-トリプトファニル-フェナゾピリジンの調製

THF(15mL)中のビス-Boc-トリプトファン(2.0g、5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(955mg、5mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.06g、5mmol)を加えた。反応混合物を室温で6時間撹拌し、その時点でビス-Boc-トリプトファン(2.0g、5mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(955mg、5mmol)を追加した。さらに72時間撹拌した後、反応混合物をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(40mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、橙色泡状物(5.47g)を得た。粗生成物をシリカゲル(41g)で、溶離剤としてヘキサン-酢酸エチル50:50を用いてのカラムクロマトグラフィにより精製した。ビス-Boc-トリプトファニル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率2.43g(81%)。
【0085】
実施例10:トリプトファニル-フェナゾピリジンの調製

ジクロロメタン(15mL)中のビス-Boc-トリプトファニル-フェナゾピリジン(360mg、0.60mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1.80mL、24.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、その時点で反応は完了した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)に加え、層を分離し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)で1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル(41g)で、溶離剤としてヘキサン-酢酸エチル50:50を用いてのクロマトグラフィにより精製した。トリプトファニル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率10mg(4%)。

【0086】
実施例11:Boc-バリル-フェナゾピリジンの調製

THF(10mL)中のBoc-バリン(1.51g、7.0mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.33g、7.0mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.5g、7.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その時点でBoc-バリン(1.51g、7.0mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.33g、7.0mmol)およびN-メチルモルホリン(1.4g、14mmol)を追加し、混合物をさらに24時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルで、ヘキサン-酢酸エチル1:1で溶出してのカラムクロマトグラフィにより精製し、Boc-バリル-フェナゾピリジンを橙色油状物で得た:収率300mg(10%)。
【0087】
実施例12:バリル-フェナゾピリジンの調製

ジクロロメタン(10mL)中のBoc-バリル-フェナゾピリジン(300mg、0.73mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1.72g、1.1mL、14.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で3.5時間撹拌し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に滴加した。層を分離し、水層をジクロロメタンで1回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。バリル-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率110mg(48%)。

【0088】
実施例13:ビス-Boc-リジル-フェナゾピリジンの調製

THF(10mL)中のビス-Boc-リジン(1.73g、5mmol)の溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(955mg、5mmol)と、続いてフェナゾピリジン(1.06g、5mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、粗生成物を赤色油状物で得た。粗生成物をシリカゲルカラムで、ヘキサン-酢酸エチル1:1により溶出して精製し、ビス-Boc-リジル-PAPを橙色油状物で得た:収率360mg(13%)。
【0089】
実施例14:リジル-フェナゾピリジンの調製

ジクロロメタン(20mL)中のビス-Boc-リジル-フェナゾピリジン(360mg、0.66mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(3.40g、2.2mL、29.7mmol)を加えた。反応混合物を室温で22時間撹拌した。トリフルオロ酢酸(1.53g、13.4mmol)を追加し、撹拌を室温で2時間続けた。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、橙色固体が沈澱した。生成物をろ過し、ヘプタンおよびイソプロパノールで2回洗浄し、減圧下、室温で乾燥した:収率200mg(88%)。

【0090】
実施例15:Boc-(N-トシル-ヒスチジニル)-フェナゾピリジンの調製

EDCI(1.40g、7.33mmol)の試料を無水THF(60mL)中のBoc-his(Tos)-OH(3.00g、7.33mmol)の溶液に一度に加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いでフェナゾピリジン(1.56g、7.33mmol)を一度に加えた。反応混合物を室温で96時間(HPLCでさらなる反応の進行が検出されなくなるまで)撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc(200mL)に溶解し、水(150mL)、飽和NaHCO3水溶液(150mL)、食塩水(150mL)で逐次洗浄し、乾燥(Na2SO4)した。溶媒を減圧下で濃縮した。未反応のフェナゾピリジンを除去するために、油状残渣を酸化アルミナカラムのクロマトグラフィ(CHCl3と、次いでCHCl3-MeOH 99:1で溶出)により精製した。シリカゲルカラム(CHCl3-MeOH 99:1と、次いでCHCl3-MeOH 98:2で溶出)でさらに精製して、生成物を橙色固体で得た:収率0.43g(10%)。
【0091】
実施例16:N-トシル-ヒスチジニル-フェナゾピリジンの調製

トリフルオロ酢酸(1.28mL、17.2mmol)の試料を無水CH2Cl2(12mL)中のBoc-(N-トシルヒスチジニル)-フェナゾピリジン(0.26g、0.43mmol)の溶液に滴加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次いで飽和NaHCO3水溶液に加えた。有機層を分離し、乾燥(Na2SO4)した。溶媒を減圧下で濃縮して、粗生成物を橙色固体で得た:収率200mg(100%)。純粋な試料を調製用HPLCを用いて得た(収率93%);溶出はCH3CNの勾配中0.1%HOAcであった;質量スペクトル (ESI) m/z 505 (M + H)+および527 (M + Na)+。C24H24O3S・HOAcの元素分析計算値:C、55.31;H、5.00;N、19.85。実測値:C、55.71;H、4.78;N、19.57。
【0092】
実施例17:ヒスチジニル-フェナゾピリジンの調製

1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(65mg、0.48mmol)の試料を無水THF(10mL)中の12mg(0.24mmol)のN-トシルヒスチジニル-フェナゾピリジン(0.12g、0.24mmol)の懸濁液に加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(65mg、0.48mmol)を追加し、混合物をさらに3時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をEtOAc(15mL)に溶解し、0.05N HCl(10mL)で2回抽出した。合わせた水層を飽和Na2CO3水溶液を加えてpH約8に調節し、次いでEtOAc(15mL)で3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(Na2SO4)し、溶媒を減圧下で濃縮して、橙色固体を得た。これを調製用HPLCで精製して、生成物を暗橙色固体で得た:収率40mg(41%)。

【0093】
フェナゾピリジン(PAP)カルバメートの合成
実施例18:エチルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(4.68mL、4.68mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.50g、2.34mmol)の溶液に、室温で10分間かけて滴加した。さらに10分後、THF(5mL)中のクロロギ酸エチル(0.26g、0.23mL、2.40mmol)の溶液を反応混合物に5分間かけて滴加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(17×3cm)で精製した。ヘキサン中ジクロロメタンの段階的勾配(20→80%)で溶出して、モノカルバメートを橙色固体で得た:収率203mg(30%)。

【0094】
実施例19:ベンジルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(4.68mL、4.68mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.5g、2.34mmol)の溶液に、室温で10分間かけて滴加した。さらに10分後、THF(5mL)中のクロロギ酸ベンジル(0.41g、0.34mL、2.40mmol)の溶液を反応混合物に5分間かけて滴加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(18×3cm)で精製した。ヘキサン中ジクロロメタンの段階的勾配(50→80%)と、次いでジクロロメタン中1%Et3Nで溶出して、モノカルバメートを橙色固体で得た:収率273mg(33%)。

【0095】
実施例20:イソブチルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(4.68mL、4.68mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.5g、2.34mmol)の溶液に、室温で10分間かけて滴加した。さらに10分後、THF(5mL)中のクロロギ酸イソブチル(0.32g、0.31mL、2.40mmol)の溶液を反応混合物に5分間かけて滴加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(17×3cm)で精製した。ヘキサン中EtOAcの段階的勾配(0から15%)で溶出して、ビスカルバメートを橙色固体で得:収率140mg(14%)、続いてモノカルバメートを橙色固体で得た:収率202mg(27%)。

【0096】
実施例21:ドデシルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(4.68mL、4.68mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.5g、2.34mmol)の溶液に、室温で10分間かけて滴加した。-5℃でさらに10分後、5mLのTHF(5mL)中のクロロギ酸ドデシル(0.59g、0.65mL、2.40mmol)の溶液を反応混合物に-5℃で5分間かけて滴加した。反応混合物を-5℃〜0℃で1時間と、次いで室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(18×3cm)で精製した。ヘキサン中20%EtOAcで溶出して、わずかに不純物を含むモノカルバメートを橙色固体で得た。生成物を熱EtOAc(5mL)に溶解し、混合物を室温まで冷却した。沈澱した生成物をろ取し、減圧下で乾燥した。フェナゾピリジンドデシルモノカルバメートを橙色固体で得た:収率361mg(36%)。

【0097】
実施例22:2-エチルヘキシルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(2.81mL、2.81mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.3g、1.40mmol)の冷却溶液に、-5℃で13分間かけて滴加した。-5℃でさらに10分後、THF(35mL)中のクロロギ酸2-エチルヘキシル(0.28g、0.28mL、1.45mmol)の溶液を-5℃で5分間かけて滴加した。反応混合物を0℃で1時間と、次いで室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(17×3cm)のクロマトグラフィで精製した。ヘプタン中EtOAcの段階的勾配(0→10%)で溶出して、ビスカルバメートを橙色シロップで得:収率57mg(7%)、続いてモノカルバメートを橙色シロップで得た:収率309mg(59%)。

【0098】
実施例23:tert-ブチルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)(THF中1M)(4.68mL、4.68mmol)の溶液を、THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.5g、2.34mmol)の溶液に、5℃で8分間かけて滴加した。-5℃でさらに10分後、THF(5mL)中の(Boc)2O(0.53g、2.46mmol)の溶液を0℃で10分間かけて滴加した。反応混合物を0℃で1時間と、次いで室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(18×3cm)で精製した。ヘキサン中EtOAcの段階的勾配(0→10%)で溶出して、モノおよびビスカルバメートの混合物を得た。混合物を調製用HPLCカラムでさらに精製した。モノカルバメート(Rt 19.9分)を橙色泡状物で得た:収率451mg(61%)。

ビスカルバメート(Rt 22.5分)を橙色シロップで得た:収率118mg(12%);質量スペクトル (ESI) m/z 414 (M + H)+および436 (M + Na)+
【0099】
実施例24:トリクロロエチルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.50g、2.34mmol)の溶液に、オーブン乾燥したK2CO3(0.64g、4.68mmol)と、続いてTHF(5mL)中のクロロギ酸トリクロロエチル(0.5g、0.32mL、2.4mmol)の溶液を加えた(室温で20分間かけて滴加した)。反応混合物を室温で4日間撹拌した。不溶性材料をろ過し、溶媒を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(16×3cm)で、ヘキサン中EtOAcの段階的勾配(0→8%)で溶出して精製した。生成物をモノおよびビスカルバメートの混合物で得た。この混合物を調製用HPLCカラムで分取した。モノカルバメート(Rt 20.3分)を橙色固体で得た:収率169mg(18%)。

ビスカルバメート(Rt 22.9分)を橙色固体で得た:収率58mg(4%);質量スペクトル (ESI) m/z 564 (M)+
【0100】
実施例25:n-ブチルカルバミル-フェナゾピリジンの調製

THF(10mL)中のフェナゾピリジン(0.50g、2.34mmol)の溶液に、オーブン乾燥したK2CO3(0.64g、4.68mmol)と、続いてTHF(5mL)中のクロロギ酸n-ブチル(0.32g、0.31mL、2.4mmol)の溶液を加えた(室温で10分間かけて滴加した)。反応混合物を室温で4日間撹拌した。不溶性材料をろ過し、溶媒を減圧下で濃縮した。残渣をシリカの短いパッドで、ヘキサン中20%EtOAcで溶出して精製した。生成物を調製用HPLCカラムでさらに精製した。モノカルバメート(Rt 20.1分)を橙色固体で得た:収率252mg(34%)。

【0101】
実施例26:Nα-Boc-グリシンシアノメチルエステルの調製

EtOAc(25mL)中にNα-Boc-グリシン(2.0g、11.4mmol)を含む溶液に、トリエチルアミン(1.73g、2.38mL、17.1mmol)と、続いてブロモアセトニトリル(2.05g、1.19mL、17.1mmol)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下、60℃で16時間撹拌した。不均質な混合物を室温まで冷却し、シリカの短いパッドを通してろ過し、EtOAcで洗浄して沈澱したトリエチルアミン臭化水素酸塩を除去した。ろ液を減圧下で濃縮して、Nα-Boc-グリシンシアノメチルエステルを無色シロップで得、これは放置すると固化した。粗生成物をそれ以上精製せずに次の段階で直接用いた:収率2.12g(87%)。

【0102】
実施例27:6-N-Boc-フェナゾピリジンおよび2,6-N,N-ビス-Boc-フェナゾピリジンの調製

無水THF(20mL)中のフェナゾピリジン(3.2g、15mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下でTHF中のLiHMDSの1M溶液(30mL、30mmol)を15分間かけて加えた。さらに10分後、無水THF(15mL)中の(Boc)2O(3.27g、15mmol)の溶液を20分間かけてゆっくり加え、室温でさらに3時間反応を進行させた。溶媒を減圧下で濃縮し、残渣をジクロロメタン(100mL)と0.1N HCl水溶液(100mL)との間で分配した。有機層を水(50mL)で2回洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラム(20×4cm)のクロマトグラフィで、ヘキサン-酢酸エチル(7:1および6:1)で溶出して精製し、橙色泡状物としての2,6-N,N-ビス-Boc-フェナゾピリジン:収率1.28g(20%);シリカゲルTLC Rf 0.44(ヘキサン-酢酸エチル5:1);

次いで6-N-Boc-フェナゾピリジンおよび2,6-N,N-ビス-Boc-フェナゾピリジンの8:1の比の混合物:収率1.15g、最後に6-N-Boc-フェナゾピリジン:収率0.99gを逐次得た。さらに0.61gの6-N-Boc-フェナゾピリジンを、混合物のヘキサン-酢酸エチル7:1(32mL)からの結晶化により回収した。6-N-Boc-フェナゾピリジンを橙色固体で得た:収率1.6g(34%);シリカゲルTLC Rf 0.34(ヘキサン-酢酸エチル5:1)。

【0103】
実施例28:2-N-(Nα-Boc-グリシル)-6-N-Boc-フェナゾピリジンの調製

無水THF(9mL)中の6-N-Boc-フェナゾピリジン(215mg、0.68mmol)の溶液に、THF中のLiHMDSの1M溶液(0.69mL、0.69mmol)と、続いてNα-Boc-グリシンシアノメチルエステル(147mg、0.69mmol)を滴加した。反応混合物を室温で45分間撹拌した。さらにTHF中のLiHMDSの1M溶液(0.69mL、0.69mmol)と、続いてNα-Boc-グリシンシアノメチルエステル(147mg、0.69mmol)を滴加した。この手順を45分ごとにさらに4回繰り返し、撹拌を室温でさらに19時間続けた。水(25mL)をゆっくり加えて反応を停止し、反応混合物を酢酸エチル(25mL)で2回抽出した。合わせた有機層を乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラム(15×4cm)のクロマトグラフィで、ヘキサン中EtOAcの段階的勾配(10→50%)で溶出して精製し、2-N-(Nα-Boc-グリシル)-6-N-Boc-フェナゾピリジンを褐色固体で得た:収率94mg(29%)。

【0104】
実施例29:2-N-グリシル-フェナゾピリジン塩酸塩の調製

2-N-(Nα-Boc-グリシル)-6-N-Boc-フェナゾピリジン(34mg、0.07mmol)にEtOAc中のHClの1M溶液(2.5mL、2.5mmol)を加えた。反応混合物を65℃で2.5時間撹拌した。EtOAc中の1M HCl(2mL、2mmol)を追加し、撹拌を65℃でさらに45分間続けた。沈澱した生成物をろ過し、EtOAc(5mL)で2回洗浄し、減圧下で24時間乾燥した。2-N-グリシル-フェナゾピリジン塩酸塩を褐色固体で得た:収率20.8mg(84%)。

【0105】
実施例30:ラットにおけるPAPプロドラッグの経口バイオアベイラビリティ
PAP(フェナゾピリジン)プロドラッグの経口バイオアベイラビリティを健常ラットで評価した。すべてのPAPアミド(アミノ酸誘導体)塩基を0.1N HClに溶解した(より低いモル濃度でも同じ結果が得られる)が、PAP-カルバメートは水溶性が非常に低いため、カルバメートはPEG-400に溶解した。様々なPAP誘導体の物理化学的性質を表1に示す。一般に、PAPのアミノ酸アミド誘導体はすべて、PAPカルバメートよりも高い水溶性を有していた。別のPK試験において、PAP・HCl塩、Gly-PAP・HCl塩およびGly-PAP・メシラート塩を水に溶解して、それぞれの場合に澄明溶液を生じた後、経口投与した。
【0106】
ラットを投与前に終夜絶食させた。適当な量の各化合物を胃管栄養法により投与し、あらかじめ決められた時点(1、2、4、6、および24時間)でラットから血液試料を採取した。全血をただちに遠心沈降し、上清(血漿)を集めた。血漿試料のPAPをLC-MS-MSを用いて検定した。
【0107】
(表1)PAPプロドラッグの物理化学的性質とラットに投与した経口用量

【0108】
(表2)ラットに経口投与した後のPAPプロドラッグの薬物動態分析

AUC:時間に対する血漿濃度プロットの曲線下面積、0〜24時間
相対バイオアベイラビリティ(%)= [AUC(プロドラッグ)/AUC(薬物)×用量(薬物)/用量(プロドラッグ)]100
BQL:定量限界未満(<0.5ng/mL)
Cmax:ピーク血漿濃度
Tmax:ピーク血漿濃度(Cmax)に達するまでの時間
【0109】
薬物動態データを表2にまとめている。PAPプロドラッグの相対バイオアベイラビリティは以下の順であった:グリシン>リジン>アラニン>ヒスチジン>メチオニン>トリプトファン>バリン>イソブチルカルバミル>ベンジルカルバミル>エチルカルバミル。Tmaxはイソブチルカルバミル-PAPおよびトリプトファニル-PAPについては長かったが、残りのPAP誘導体のTmaxは1時間未満であった。
【0110】
Gly-PAPの様々な塩型の薬物動態データを表3に示す。Gly-PAPの遊離塩基、ならびにHClおよびメシラート塩は、PAPのHCl塩と比べて有意に高いバイオアベイラビリティを有している。
【0111】
Gly-PAPの様々な塩型の薬物動態データを表3に示す。Gly-PAPの遊離塩基、ならびにHClおよびメシラート塩は、PAPのHCl塩と比べて有意に高いバイオアベイラビリティを有している。
【0112】
(表3)PAP・HCl塩、Gly-PAP遊離塩基、Gly-PAP・HCl塩、およびGly-PAP・メシラート塩を経口投与した後のラットにおけるPAP薬物動態

【0113】
実施例31:2-アミノ-6-アミノアセトアミド-3-E-フェナゾピリジン二塩酸塩の代替合成

化学式:C13H16Cl2N6O
分子量:343.21
【0114】
図16に示す製造工程の説明。Gly-PAPはフェナゾピリジンのアミドプロドラッグであって、グリシンのカルボキシル基がフェナゾピリジンの6-アミンの窒素に共有結合しているものである。
【0115】
Gly-PAPの生成の第一段階において、炭酸カリウム水溶液を用いて塩酸フェナゾピリジン(PAP)を遊離塩基に変換した。遊離塩基を酢酸エチル中に抽出し、溶媒を濃縮して、収率92%で単離した。工程の第二段階において、フェナゾピリジン遊離塩基をDMF中でBOC-グリシン-OSuにより、塩基として水素化ナトリウムを用いて処理した。反応混合物に水を加え、これにより生成物を沈澱させて、中間体を単離した。生成物をろ過により単離し、水で洗浄し、イソプロピルアルコールから再結晶して、中間体を収率34%で得た。第三段階において、BOC-Gly-PAPを酢酸エチル中でHCl処理することにより脱保護した。生成物をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下45℃で乾燥して、収率96%で単離した。
【0116】
実験手順
フェナゾピリジン遊離塩基のHCl塩からの調製
水(200mL)中の炭酸カリウム(27.6g、200mmol)の溶液に、塩酸フェナゾピリジン(20.0g、80mmol)と、続いて酢酸エチル(200mL)を加えた。混合物を室温で30分間撹拌した。層を分離し、水層を酢酸エチル(100mL)で1回抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、生成物を減圧下、室温で乾燥して橙色固体を得た:収率15.1g(92%)。

【0117】
フェナゾピリジン遊離塩基のN-Boc-グリシンスクシンイミドエステルによる処理
0〜5℃に維持したDMF(500mL)中のNaH(5.39g、224.5mmol)の懸濁液に、DMF(250mL)中のフェナゾピリジン(16.0g、74.40mmol)の溶液を滴加し、反応混合物を0〜5℃で30分間撹拌した。DMF(190mL)中のN-Boc-グリシンスクシンイミドエステル(25.4g、93.50mmol)を0〜5℃で滴加し、次いで混合物を室温まで加温し、1.5時間撹拌した。イソプロピルアルコール(25mL)を滴加し、混合物を室温で15分間撹拌した。反応混合物にセライト(商標)(60g)を加え、15分間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ過ケークをDMF(100mL)で2回洗浄した。水(2,500mL)をDMF溶液に加えて、橙色固体を沈澱させた。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで沈澱した生成物をろ過し、水(250mL)で4回洗浄し、次いでP2O5により減圧下、45℃で18時間乾燥した。粗生成物を橙色粉末で得た:収率12.63g(46%)、HPLCによる純度95.9%。
【0118】
粗生成物(12.63g、34.1mmol)をiPrOH(170mL)に80℃で溶解して、澄明な暗橙色溶液を生成した。これを室温までゆっくり冷却し、次いで0〜5℃まで冷却した。結晶化した生成物をろ取し、P2O5により減圧下、45℃で2時間乾燥した。生成物、BOC-グリシン-フェナゾピリジンを淡橙色固体で得た:収率9.4g(74%)、HPLCによる純度98.2%。全収率34%。

【0119】
BOC-グリシン-フェナゾピリジンの脱保護によるGly-PAP二塩酸塩の生成
酢酸エチル(236mL)中のBOC-グリシン-フェナゾピリジン(9.3g、25.1mmol)の溶液に、別のフラスコで濃硫酸(133mL)に濃HCl(46mL、55.2g、1.53mol)を加えることにより生じたHClガスを通気した。HClの添加が完了した後、反応混合物を室温で3.5時間撹拌した。生成した固体をろ過により単離し、酢酸エチル(500mL)で洗浄した。生成物を高減圧下、室温で乾燥して、Gly-PAP(8.4g)を橙色固体で得た:収率98.1%、HPLCによる純度98.9%。

【0120】
原料および試薬

【0121】
実施例32. PAPおよびGly-PAPの経口バイオアベイラビリティ(バイオアベイラビリティの改善、限定されたGly-PAP曝露、Gly-PAPからのPAPの持続放出、作用部位への送達増大)
PAPおよびGly-PAP(完全なプロドラッグ)の薬物動態を雄ラットでmg/kg用量の経口胃管栄養法による投与後に評価した。ラットを投与前に終夜絶食させた。血液試料を0.25、0.5、1、2、4、6、および24時間の時点で採取した。全血をただちに遠心沈降し、上清(血漿)を集めた。血漿試料のPAPおよびGly-PAPをLC-MS-MSにより検定した。
【0122】
Gly-PAPの用量4.0mg/kg(フェナゾピリジンHClのヒト等価用量(HED*)30mgに近似する2.5mg/kgのフェナゾピリジン塩基を含む)で、等価の塩酸フェナゾピリジンの用量(フェナゾピリジン塩基含有量2.5)と比べてGly-PAPからのフェナゾピリジンのおよそ3倍の増加が観察された。Gly-PAPの血漿レベルはGly-PAPからのフェナゾピリジンの血漿レベルの<5%で、Gly-PAPの効率的な加水分解と、プロドラッグへの限定された全身曝露が示された。結果を図1、3、4、11、および12に示す。
【0123】
Gly-PAPからのフェナゾピリジンの薬物動態を、Gly-PAP 0.9mg/kgの低用量(フェナゾピリジン塩基0.6mg/kg)について評価した。約4倍の用量のフェナゾピリジンHCl 2.8mg/kg(フェナゾピリジン塩基2.5mg/kg)からのフェナゾピリジン濃度でプロットすると、低いGly-PAP用量ではフェナゾピリジンの持続放出が見られ、AUCはほぼ等しかった(図3および12)。
【0124】
ヒトにおける100、200および300mg(60kgのヒトを基準とするおよそのヒト等価用量(HED)(ラット変換因子6.2)-業界向けガイダンス:成人健常志願者における治療薬の最初の臨床試験のための最大安全開始用量の推定(Guidance for Industry:Estimating the Maximum Safe Starting Dose for Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers))の経口投与後のフェナゾピリジンのレベルと比較すると、ラットにおけるフェナゾピリジンのレベルは、Gly-PAPおよび塩酸フェナゾピリジンの両方について、約100mg以下のHEDでもかなり高かった。ヒトにおける塩酸フェナゾピリジンの絶対バイオアベイラビリティは評価されていないが、吸収が悪いと思われる。(Shang E, et al. Determination of phenazopyridine in human plasma via LC-MS and subsequent development of a pharmacokinetic model. Anal Bioanal Chem. 2005 May;382(1):216-22)。ラットでの薬物動態はヒトでの薬学的組成物と高度に相関していることが明らかにされている。(Chiou, W.L, et al., Pharm. Res. 17:135-140 (2000);Chiou, W.L., et al., Pharm. Res. 15:1474-1479 (1998);およびChiou, W.L., et al., J. Clin. Pharmacol. Ther. 55:532-539 (2000)参照。
【0125】
PAPおよびGly-PAP(完全なプロドラッグ)の薬物動態をイヌでmg/kg用量の経口胃管栄養法による投与後に評価した。血液(約2mL)を頸静脈からヘパリンリチウム抗凝血剤を含むチューブに投与前ならびに投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12、および24時間の時点で採取した。尿を氷で囲んだプラスティック容器に投与前(-18〜0)および投与後0〜24時間に採取した。各試料の体積を記録した。血漿および尿試料のPAPおよびGly-PAPをLC-MS-MSにより検定した。
【0126】
Gly-PAPを与えられたイヌにおいて、フェナゾピリジンHClの200mgのHED(60kgのヒトを基準とするおよそのヒト等価用量(HED)(イヌ変換因子1.8-業界向けガイダンス:成人健常志願者における治療薬の最初の臨床試験のための最大安全開始用量の推定)に近似する、Gly-PAP 8.1mg/kgを経口投与した後にフェナゾピリジンの有効な送達が見られた。等価の量のフェナゾピリジンを含むフェナゾピリジンHClからのフェナゾピリジンは、より高いフェナゾピリジンの経口バイオアベイラビリティをもたらしたが、Gly-PAPからはより多くの量のフェナゾピリジンが尿に送達された。フェナゾピリジンの作用部位は膀胱および尿道である。血漿Tmaxは、フェナゾピリジンHClからのフェナゾピリジンと比べてGly-PAPからのフェナゾピリジンで延長され、持続放出が示された。Gly-PAP投与後のイヌにおいて、Gly-PAPへの曝露(AUC0-24)は、フェナゾピリジンの値の10%未満であった(図13〜15)。
【0127】
Gly-PAPの様々な塩の薬物動態を、ラットへの経口投与後に比較した。すべての塩型は、フェナゾピリジンHClからのバイオアベイラビリティと比べてフェナゾピリジンの経口バイオアベイラビリティを改善した。Gly-PAP・HClは最も高いバイオアベイラビリティを示した(図17)。
【0128】
実施例33. イヌにおける嘔吐軽減
イヌ(雄1匹/雌1匹)に、40mg/kg Gly-PAPまたは29mg/kgフェナゾピリジンHCl(用量は等価の量の24.8mg/kgフェナゾピリジン塩基を含んでいた)を8時間ごとに3回(TID)経口胃管栄養法により投与した。Gly-PAPでは1例の嘔吐が観察されたが、これに対してフェナゾピリジンHClでは4例の嘔吐が観察された。GI副作用である嘔吐の軽減を示す結果を図18に例示する。
【0129】
ここまで本発明を詳細に記載してきたが、当業者であれば、本発明の範囲またはその任意の態様に影響をおよぼすことなく、広く等価の範囲の条件、製剤および他のパラメーターの範囲内で、本発明を実施しうることが理解されるであろう。本明細書において引用するすべての特許、特許出願、および発行物は全体が参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:

式中、
R1およびR2は独立に
(a)水素;
(b)アミノ酸残基またはペプチド;
(C)

式中、R3は置換されていてもよいアルキルまたはアリールアルキルである;または
(d)アミノ酸のアミンがt-ブチルカルボニルで保護されているアミノ酸残基
であり、ここでR1およびR2の少なくとも1つは水素以外である。
【請求項2】
R1がアミノ酸残基であり、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が(L-)アミノ酸残基であり、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
アミノ酸残基がアラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グリシン残基、グルタミン酸残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トリプトファン残基、トレオニン残基、チロシン残基、およびバリン残基からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
(L-)アミノ酸残基がアラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン酸残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トリプトファン残基、トレオニン残基、チロシン残基、およびバリン残基からなる群より選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
R1がアミノ酸残基グリシンであり、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R1がアミノ酸残基リジンであり、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
R1がアミノ酸残基アラニンであり、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
R1が(c)であり、R3がエチル、ベンジル、イソブチル、ドデシル、エチルヘキシル、トリクロロエチル、およびn-ブチルからなる群より選択され、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
R2がアミノ酸残基であり、かつR1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R2が(L-)アミノ酸残基であり、かつR1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
アミノ酸残基がアラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グリシン残基、グルタミン酸残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トリプトファン残基、トレオニン残基、チロシン残基、およびバリン残基からなる群より選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
(L-)アミノ酸残基がアラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン酸残基、グルタミン残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トリプトファン残基、トレオニン残基、チロシン残基、およびバリン残基からなる群より選択される、請求項11記載の化合物。
【請求項14】
R2がアミノ酸残基グリシンであり、かつR1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
R2がアミノ酸残基リジンであり、かつR1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
R2がアミノ酸残基アラニンであり、かつR1が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
R2が(c)であり、R3がエチル、ベンジル、イソブチル、ドデシル、エチルヘキシル、トリクロロエチル、およびn-ブチルからなる群より選択され、かつR2が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
請求項1記載の化合物の治療上有効な量を含む、薬学的組成物。
【請求項19】
化合物の治療上有効な量が非結合フェナゾピリジンの治療上有効な量の50%未満である、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
請求項1記載の化合物の治療上有効な量を投与する段階を含む、個体の治療方法。
【請求項21】
化合物の治療上有効な量が非結合フェナゾピリジンの治療上有効な量の50%未満である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
尿路痛、灼熱、刺激、不快、または尿路感染、手術、損傷、もしくは検査処置によって引き起こされる緊急もしくは高頻度の排尿を治療するための、請求項20記載の方法。
【請求項23】
化合物の投与の副作用が、非結合フェナゾピリジンの投与の副作用よりも症状が軽い、請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−512914(P2012−512914A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542540(P2011−542540)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068963
【国際公開番号】WO2010/071878
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511148112)ピナクル ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】