説明

フェニルアミノチオフェン酢酸誘導体の硝酸塩エステル

式I[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は明細書中に記載された意味を有する]の化合物は新規の有効な抗炎症性化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬工業において医薬組成物の製造のために使用される新規のフェニルアミノチオフェン酢酸の誘導体の硝酸塩エステルに関する。
【0002】
背景技術
フェニルアミノチオフェン酢酸は、US特許第4,272,507号の記載から、明らかな鎮痛特性、解熱特性を有する薬剤として、殊に、急性及び慢性の炎症反応に対する優れた活性により実証されるような消炎特性を有する薬剤として公知である。US特許第4,272,507号の開示はここで参照することによりその全てが取り入れられる。
【0003】
国際特許出願WO9509831及びWO0145703には、プロピオン酸の誘導体の硝酸エステル及び特定の選択的COX−2インヒビターの硝酸エステルがそれぞれ記載されており、これらは抗炎症活性及び低減された副作用を有するとされている。
【0004】
腎系及び/又は呼吸器系及び/又は中枢神経系及び/又は自律神経系に対する、及び/又は殊に胃腸系及び/又は心臓血管系に対する良好な認容性を一緒に併せ持った顕著な抗炎症活性を示し、かつ/又は低い用量で使用することのできる薬剤が未だに厳しく求められている。
【0005】
発明の説明
より詳細を以下に記載するフェニルアミノチオフェン酢酸誘導体の硝酸塩エステルが、比較不可能な構造及び薬理学的特性によって先行技術の化合物と極めて異なり、かつ予期せぬ驚異的かつ著しく有利な特性を有することが見出された。
【0006】
従って、本発明は、式I
【0007】
【化1】

[式中、
R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素、ハロゲン又はC〜C−アルキルであるか、
又は
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素、ハロゲン又はC〜C−アルキルである]
の化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物に関する。
【0008】
〜C−アルキルは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基である。例はペンチル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、有利にエチル基及びメチル基である。
【0009】
〜C−アルコキシは、酸素原子に加えて1〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を含む基である。本発明の明細書中で挙げることのできる1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ基は、例えばペントキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基であり、有利にエトキシ基及びメトキシ基である。
【0010】
ハロゲンは、本発明の意味において臭素、塩素及びフッ素である。
【0011】
〜C−アルキレンは、直鎖又は分枝鎖C〜C−アルキレン基、例えばエチレン基(−CHCH−)、トリメチレン基(−CHCHCH−)、テトラメチレン基(−CHCHCHCH−)、1,2−ジメチルエチレン基[−CH(CH)−CH(CH)−]、1,1−ジメチルエチレン基[−C(CH−CH−]、2,2−ジメチルエチレン基[−CH−C(CH−]、1−メチルエチレン基[−CH(CH)−CH−]、ペンタメチレン基(−CHCHCHCHCH−)、ヘキサメチレン基(−CHCHCHCHCHCH−)及びヘプタメチレン基(CHCHCHCHCHCHCH−)を表す。アルキレン基Aのうち、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びペンチレン基、殊にブチレン基を強調することができる。ブチレン基のうち、テトラメチレン基(−CHCHCHCH−)を殊に強調することができる。
【0012】
本発明の範囲内の塩として、酸付加塩を挙げることができる。殊に、調剤に通常使用される無機酸又は有機酸の薬理学的に認容性の塩を挙げることができる。これらは、酸、例えば塩酸、臭化水素酸、燐酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、蓚酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸との非水溶性の酸付加塩及び殊に水溶性の酸付加塩であり、この場合には、一塩基酸が関係するか、多塩基酸が関係するかに応じて、また、等モル量の塩が望ましいか又は異なるモル量の塩が望ましいかに応じて、前記酸は、塩の製造に使用される。
【0013】
他方で、塩基との塩も、置換基に依存して適当である。塩基との塩の例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、アンモニウム、メグルミン又はグアニジウムの塩が挙げられ、ここでも塩基は等モル量か又は異なるモル量で塩の製造に使用される。
【0014】
当業者には自身の専門知識に基づいて、置換基に依存して、式Iの化合物と上記酸又は塩基との特定の組合せにより、化学的にあまり安定でない塩がもたらされ、かつ/又は塩の形成が生じないことは公知である。例えば、酸付加塩の場合、これは殊に、例えばアミノ窒素原子に結合したフェニル環上の電子求引性置換基パターンのためにアミノ窒素原子が十分に電子が不足した式Iの化合物に適用できる。従って、化学的に安定な塩及び/又は塩形成をもたらす式Iの化合物、殊に酸付加に反する前記の電子不足を有しない式Iの化合物は塩形成のために有利である。
【0015】
最初に、例えばプロセス生成物として本発明による化合物の製造において工業的規模で得ることができる薬理学的に認容性でない塩は、当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。
【0016】
本発明の化合物及びその塩が、例えばこれらが結晶形で単離される場合には、種々の量の溶剤を含有することができることは、当業者に公知である。従って、本発明の範囲内には、式Iの化合物の全ての溶媒和化合物及び殊に式Iの化合物の全ての水和物、並びに式Iの化合物の塩の全ての溶媒和化合物、殊に式Iの化合物の塩の全ての水和物も含まれる。
【0017】
本発明の1つの実施態様(実施態様a)は、式Iにおいて、
R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R3は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素又は塩素である、
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物に関する。
【0018】
本発明の他の実施態様(実施態様b)は、式Iにおいて、
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R2は水素又はメチルであり、
R3は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素又は塩素である、
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物に関する。
【0019】
本発明の他の実施態様(実施態様c)は、式Iにおいて、Aがテトラメチレン(−CHCHCHCH−)である式Iの化合物に関する。
【0020】
本発明の他の実施態様(実施態様d)は、式Iにおいて、R3が塩素であり、R4が塩素であり、R5が水素である式Iの化合物に関する。
【0021】
強調することができる実施態様aの化合物は、式Iにおいて、
R1は水素又は塩素であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R3は塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は塩素又はメチルであり、
R5は水素又は塩素である
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物である。
【0022】
強調することができる実施態様bの化合物は、式Iにおいて、
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R2は水素であり、
R3は塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は塩素又はメチルであり、
R5は水素又は塩素である
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物である。
【0023】
殊に強調することができる実施態様aの化合物は、式Iにおいて、
R1は水素であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R3は塩素又はメチルであり、
R4は塩素であり、
R5は水素である、
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物である。
【0024】
殊に強調することができる実施態様bの化合物は、式Iにおいて、
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R2は水素であり、
R3は塩素又はメチルであり、
R4は塩素であり、
R5は水素である、
式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物である。
【0025】
本発明による有利な化合物は、式Iにおいて、
R1は水素であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはテトラメチレンであり、
R3は塩素であり、
R4は塩素であり、
R5は水素である、
式Iの化合物及び前記化合物の溶媒和化合物である。
【0026】
本発明の有利な実施態様は、R3及びR4が、フェニル環が窒素原子に結合している結合位置に関してオルト位で結合している実施態様dである。
【0027】
本発明の更に有利な実施態様は、実施態様aである。
【0028】
本発明の更に有利な実施態様は、R1が水素である実施態様aである。
【0029】
本発明による例示的な代表的化合物は、[4−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−チオフェン−3−イル]−酢酸 4−ニトロオキシブチルエステル及びその溶媒和化合物である。
【0030】
本発明による式Iの化合物は、例えば以下の例において例を用いて記載されているように、反応式1に示されかつ以下に記載された合成経路に従って、又は類似又は同様の処理工程を用いて製造することができる。式III(ここで、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Mは適当な塩基又は適当な金属原子(例えばアルカリ金属原子、有利にナトリウム原子)を表す)の出発化合物、及び、式VI(ここで、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Mは前記の適当な塩基又は適当な金属原子である)の出発化合物、及びそれらの製造は、US特許第4,272,507号から公知であるか、又は公知の処理工程と類似又は同様に製造されることができ、例えば、US特許第4,272,507号からも公知である相応する酸から出発して、適当な無機又は有機塩基(例えばアルカリ金属炭酸塩)との反応により、単離されたか又は単離されない中間体として得ることができる。
【0031】
本発明の他の有利な実施態様において、式III又はVIの出発化合物は、特にUS特許第4,272,507号に開示された化合物である。
【0032】
本発明の他の有利な実施態様において、式III又はVIの出発化合物は、US特許第4,272,507号に有利な化合物として及び/又は例として開示された化合物である。
【0033】
反応式1に、例を用いて、式III(ここで、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Mは前記の適当な塩基又は適当な金属原子を表す)の化合物か、又は式VI(ここで、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Mは前記の適当な塩基又は適当な金属原子を表す)の化合物から出発して、式IV(ここで、Aは上記の意味を有し、Xは適当な脱離基(例えば塩素、ヨウ素又は有利に臭素)であり、Yはヒドロキシルか又はXと同じか又は異なる意味を有する他の適当な脱離基である)の化合物との置換反応により、第一の工程において、式II又はVの相応する化合物を得る、式I(ここで、R1、R2、R3、R4、R5及びAは上記の意味を有する)の化合物の製造を示す。前記の置換反応は以下の実施例において記載されているように、又は公知の方法で、適当な溶剤(例えばアセトン)中で、高められた温度か又は使用される溶剤の沸点で実施することができる。
【0034】
式IVの上記の化合物は公知であるか、又は当業者に自体公知の通りに取得することができる。
【0035】
【化2】

【0036】
第二の工程において、式II(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yは上記の適当な脱離基を表す)の化合物、又は式V(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yは上記の適当な脱離基を表す)の化合物のそれぞれを、適当な硝酸塩化合物(例えば硝酸銀)との置換反応により、式I(ここで、R1、R2、R3、R4、R5及びAは上記の意味を有する)の所望の硝酸塩エステル化合物に変換することができる。上記の置換反応は以下の実施例において記載されているように、又は当業者に公知の方法で、適当な溶剤(例えばアセトニトリル)中で、高められた温度か又は使用される溶剤の沸点で実施することができる。
【0037】
式II(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yはヒドロキシルである)の化合物、又は式V(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yはヒドロキシルである)の化合物のそれぞれを、式I(ここで、R1、R2、R3、R4、R5及びAは上記の意味を有する)の化合物の所望の硝酸塩エステル化合物へと処理することもできる。この変換は、当業者に自体公知の通りに、例えば硝酸のエステル化反応(例えばJ. March, Advanced Organic Chemistry, 第3版, Wiley, 1985, p. 357fに記載されている)により実施することができる。
【0038】
式II(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yは上記の適当な脱離基又はヒドロキシルである)の化合物か又は式V(ここで、A、R3、R4及びR5は上記の意味を有し、R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、Yは上記の適当な脱離基又はヒドロキシルである)の化合物は、式III及びVIの相応する遊離酸化合物と式VII(ここで、Aは上記の意味を有し、Yはヒドロキシル又は適当な脱離基である)の化合物とのエステル化反応によっても到達可能である。更に詳細には、前記反応は、当業者に公知の縮合試薬又はエステル結合カップリング試薬の存在下で実施される。本発明の明細書中で挙げることのできる例示的な試薬は、例えば適当な酸、カルボジイミド(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド又は1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、又はN,N’−カルボニルジイミダゾールである。
【0039】
HO−A−Y (VII)
更に、式II又はVの所望の化合物は、前記の式VIIの化合物と式VIII(ここで、R1、R3、R4及びR5は上記と同じ意味を有し、Zは適当な脱離基、有利に塩素原子を表す)の化合物又は式IX(ここで、R2、R3、R4及びR5は上記と同じ意味を有し、Zは適当な脱離基、有利に塩素原子を表す)の化合物との反応により、当業者に自体公知の慣用の方法で製造することもできる。
【0040】
【化3】

【0041】
式VIIの化合物は公知であるか又は公知の方法により製造することができる。
【0042】
式VIII及び式IXの化合物は、既にUS特許第4,272,507号に記載されている相応する遊離酸化合物からの公知の方法により取得することができる。
【0043】
それとは異なり、本発明による式Iの化合物は、式X(ここで、Aは上記の意味を有し、Wは適当な脱離基、有利に塩素、ヨウ素又は有利に臭素を表す)の化合物及び式III又はVIの前記の化合物から、当業者に公知の通りに、又は上記の通りに製造することもできる。
【0044】
W−A−O−NO (X)
それとは異なり、式III又はVIの化合物の前記の遊離酸誘導体、又は、前記の式VIII又はIXの化合物を、式XI(ここで、Aは上記の意味を有する)の化合物と、当業者に公知の通りに、又は上記と類似してか又は同様に反応させ、式Iの所望の化合物を得ることもできる。
【0045】
HO−A−O−NO (XI)
式X及びXIの化合物は公知であるか、又は当業者に公知であるかもしくは詳細を上記に記載した方法により、又はそれと類似してか又は同様に製造することができる。
【0046】
当業者には、出発又は中間体化合物上に多数の反応中心がある場合、反応を特に所望の反応中心で進行させるために、保護基により一つ以上の反応中心を一時的にブロックするのが必要であり得ることは公知である。多数の確立された保護基の使用のための詳細な記載は、例えば"Protective Groups in Organic Synthesis"、T.Greene and P.Wuts著(John Wiley & Sons, Inc. 1999, 3rd Ed)又は"Protecting Groups(Thieme Foundations Organic Chemistry Series N Group)"、P.Kocienski著(Thieme Medical Publishers, 2000)に記載されている。
【0047】
本発明による物質を、単離するか、かつ自他公知の方法で、例えば真空中で溶剤を留去し、かつ得られる残留物を適当な溶剤から再結晶させるか、又はこれを慣用の精製法の1つ、例えば適当な支持材料上でカラムクロマトグラフィーにかけることにより精製する。
【0048】
塩は、所望の酸を含有するか又は所望の酸が添加される適当な溶剤(例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン、エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン、塩素化炭化水素、例えば塩化メチレン又はクロロホルム、又は低分子脂肪族アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール)中に遊離化合物を溶解させることによって取得することができる。塩は、濾過、再沈、付加塩のための溶剤不含の沈殿により、又は溶剤の蒸発により取得することができる。取得することができる塩は、塩基性化により遊離化合物へと変換されることができ、この遊離化合物は同様に塩へと変換されることができる。このようにして、薬理学的に認容性でない塩を薬理学的に認容性の塩に変換することができる。
【0049】
当業者には、自身の専門知識及び本発明の開示に基づいて、本発明による更なる他の実施態様を見い出す方法は公知である。これらの全ての他の可能かつ/又は適当なその他の実施態様も本発明の範囲の一部である。
【0050】
以下の実施例により、本発明を制限することなくよりいっそう詳細に説明する。同様に、製造が明確には記載されていない式Iの他の化合物は、類似もしくは同様の方法か又は当業者に自体公知の方法で常用の製造法を用いて製造されることができる。
【0051】
実施例において、hは時間を表し、EFは実験式を表し、calcは算出を表し、fndは検出を表す。実施例に挙げられた化合物及びその溶媒和化合物は、本発明の有利な化合物である。
【実施例】
【0052】
最終生成物
1. [4−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−チオフェン−3−イル]−酢酸 4−ニトロオキシブチルエステル
アセトニトリル18ml中の硝酸銀1.75gの溶液を、アセトニトリル11ml中の[4−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−チオフェン−3−イル]−酢酸4−ブロモブチルエステル(化合物A1)3.0gに添加する。溶液を85℃で5h撹拌し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物をジクロロメタンで処理し、濾過する。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濃縮させる。残留物を、石油エーテル(低)/酢酸エチル=5/1の混合物を用いたシリカゲル上でのクロマトグラフにかけ、表題の化合物2.1gが油状物として生じる。
【0053】
EF:C1616Cl
元素分析:
cal.:
C 45.83 H 3.85 N 6.68 S 7.65 Cl 16.91
find.:
C 46.05 H 3.94 N 6.71 S 7.41 Cl 17.08
A1. [4−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−チオフェン−3−イル]−酢酸 4−ブロモブチルエステル
[4−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−チオフェン−3−イル]酢酸ナトリウム(US特許第4,272,507号に記載された製造)5.0gを室温で少量ずつアセトン250ml中の1,4−ジブロモブタン28.4mlの溶液に添加する。溶液を5h還流し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物を、石油エーテル(低)及び引き続き石油エーテル(低)/酢酸エチル=7/1の混合物を用いたシリカゲル上でのクロマトグラフにかけ、表題の化合物3.0gが油状物として生じる。
【0054】
商業的適用可能性
本発明による化合物は、本発明による化合物を商業的に有用にするその他の有用な薬理学的特性を有する。従って、例えば細胞保護性の酸化窒素放出性非ステロイド系抗炎症剤(NO−NSAID)として、及び、一酸化窒素供与型シクロオキシゲナーゼ阻害剤(CINOD)としての本発明による化合物の優れた特性により、本発明による化合物を、獣医学及び/又は殊にヒト医薬において、例えば炎症、疼痛(慢性と急性の双方)、発熱及び他のシクロオキシゲナーゼ媒介疾患を予防及び/又は治療するため、創傷の治癒を促進するため、及び胃を保護するため、腎臓又は他の毒性(例えば腎毒症)を低減又は反転させるため、及び、腎レベル、呼吸レベル、中枢神経系レベルもしくは自律神経系レベル、又は殊に胃腸もしくは心臓血管レベルにおいて改善された認容性の医薬品を提供するための活性成分として使用することが可能となる。
【0055】
本発明の明細書中で有利に挙げることができる上記のシクロオキシゲナーゼの特別なイソ形(isoform)には、特にシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)及びシクロオキシゲナーゼ−3(COX−3)が含まれる。前記のシクロオキシゲナーゼのイソ形(COX−1、COX−2及びCOX−3)のそれぞれは本発明による化合物の有用な薬理学的目標と見なすことができる。
【0056】
本発明による化合物に関して、有利な抗炎症性作用に関して強調することができる阻害のための目標の典型はシクロオキシゲナーゼ−2である。特にその優れたNO供与性能力のために、本発明による化合物は有益な認容性及び/又は有利かつ所望の治療プロフィールをも示す。
【0057】
更に、本発明による化合物は、全体として、どちらかのイソ形のための選択性はほとんどないが、通常シクロオキシゲナーゼ−1の阻害に不随する副作用のないシクロオキシゲナーゼ−1及びシクロオキシゲナーゼ−2の阻害を特徴とする薬剤を提供するために使用することができる。
【0058】
また更に、本発明による化合物は、根元的な硝酸塩処理されていない親ドラッグ(例えばEltenac)と比較して改善された特性を示す薬剤として使用することができる。
【0059】
従って、本発明による化合物は、例えば頭痛、片頭痛、術後痛、歯痛、筋肉痛及び癌に由来する疼痛を含むがこれに限定されない疼痛の治療における鎮痛剤として、リウマチ熱に限定することなく、インフルエンザ又は他のウイルス感染症、感冒、腰痛症及び首痛、月経困難症、頭痛、歯痛、捻挫、挫傷、筋肉炎、神経痛及び滑膜炎に関連する症状を含む発熱の治療における下熱剤として、又は、リウマチ性関節炎、変形性関節疾患(骨関節炎)、脊椎関節炎、痛風関節炎、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎を含むがこれに限定されない関節炎の治療における抗炎症剤として使用することができる。
【0060】
更に、特に本発明による化合物の細胞保護性酸化窒素の放出能力のために、本発明による化合物は、損傷、例えば潰瘍(例えば胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎等)、切断、熱傷等の治療及び/又は予防における創傷治癒を促進するために使用することができる。
【0061】
更に、特に発明による化合物の細胞保護性酸化窒素の放出能力のために、本発明による化合物は、胃腸炎疾患及び胃腸障害、例えば炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性結腸炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ストレス潰瘍、胃酸過多、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンガーエリソン症候群、胃食道逆流疾患、細菌性感染(例えばヘリコバクターピロリに関連する疾患を含む)、短腸(吻合)症候群、全身肥満細胞症又は好塩基性白血病と関連する分泌過多状態及び高ヒスタミン血症、及び、例えば神経外科、頭部損傷、激しい身体外傷又は熱傷から生じる出血消化性潰瘍の予防及び治療において使用することができる。
【0062】
特にシクロオキシゲナーゼ(COX)の異常及び/又は病的レベルにより特徴付けられる多数の病態生理学的状況が存在する。これに関連して、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)及びシクロオキシゲナーゼ−3(COX−3)媒介疾患を挙げることができ、それにより、COX−2の高められたレベルにより特徴付けられる疾患を示すことができる。一酸化窒素供与型シクロオキシゲナーゼ阻害剤としての本発明による化合物の特性のために、本発明による化合物を、これらに限定することなく、以下の疾患:血管形成、関節炎、喘息、気管支炎、月経痙攣、早産、腱炎、滑液嚢炎;肌関連状態、例えば乾癬、湿疹、表面創傷、熱傷及び皮膚炎;眼の手術、例えば白内障手術及び屈折手術等を含む術後炎症;新生組織形成、例えば脳癌、骨癌、上皮細胞由来の新形成(上皮癌腫)、例えば基底細胞癌腫、腺癌、胃腸癌、例えば唇癌、口腔癌、食道癌、小腸癌及び胃癌、結腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頚癌、肺癌、乳癌及び皮膚癌、例えば鱗状細胞癌及び基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌及び上皮細胞を全身にもたらす他の公知の癌、良性腫瘍及び癌性腫瘍、増殖、ポリープ、家族性腺腫様ポリープを含むがこれに限定されない腺腫様ポリープ、放射線療法から生じる線維症等の治療及び/又は予防;疾患、例えば血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、硬皮症、リウマチ熱、1型糖尿病、重症筋無力症を含む筋神経連結疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、類肉腫症、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯齦炎、腎炎、過敏症、術後に生じる腫れ、心筋虚血等における抗炎症プロセスの治療;眼の疾患及び障害、例えば網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼球羞明、眼組織に対する急性外傷、緑内障、眼の炎症及び眼内圧の上昇等の治療;肺炎、例えばウイルス感染症に関連する肺炎及び嚢胞線維症等の治療;特定の中枢神経系障害、例えばアルツハイマー病、血管痴呆、多発梗塞性痴呆、初老期痴呆、アルコール痴呆、老人性痴呆を含む皮質痴呆、及び発作から生じる中枢神経系損傷、虚血及び外傷等の治療;アレルギー性鼻炎、呼吸障害症候群、内毒素性ショック症候群、アテローム性動脈硬化症の治療;例えば眼、耳、鼻、のど及び/又は皮膚の炎症及び/又は感染症を含む炎症及び/又は微生物感染症の治療;心臓血管疾患、例えば冠状動脈疾患、動脈瘤、動脈硬化症、心臓移植組織のアテローム性動脈硬化症を含むがこれに限定されないアテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、虚血症、塞栓症、発作、血栓症、高血圧、静脈血栓、血栓塞栓症、血栓の閉塞及び妨害、再狭窄、アンギナ、不安定狭心症、ショック、心不全、冠状プラーク炎症、バクテリア誘発炎症、例えばクラミジア誘発炎症、ウイルス誘発炎症、外科手術手法、例えば人工血管、冠状動脈バイパス手術、血管再生手法、例えば血管形成術、ステント配置、動脈血管内膜切除術、動脈、静脈、毛細血管等を含む血管の処置に関連する炎症の治療及び/又は予防;尿及び/又は泌尿器障害、例えば失禁等の治療及び/又は予防;内皮機能不全、例えばこれらの機能不全に関連する疾患、高コレステロール血症からの内皮損傷、低酸素症からの内皮損傷、機械的及び化学的病毒からの内皮損傷、殊に薬剤の間及び後の、及び、例えば経皮経管血管造影(PTA)及び経皮経管冠動脈血管造影(PTCA)に続く狭窄された血管の機械的な再開口、心筋梗塞後段階における内皮損傷、バイパス手術に続く内皮媒介再閉塞、末梢動脈における血液供給障害、並びに心臓血管疾患等の治療及び/又は予防;例えば臓器移植のための臓器及び組織等の保存;炎症部位での好中球の活性化、癒着及び浸潤の阻害及び/又は予防;血小板凝集の阻害及び/又は予防のために使用することができる。本発明による化合物及び組成物は、酸性の胃内容物の吸引の危険を低減するために救急手術における麻酔前の薬剤投与として使用することもできる。
【0063】
本発明の明細書中で、本発明による化合物の優れた薬理学的特性のために、疼痛、変形性関節症、リウマチ様関接炎及びアルツハイマー病の治療及び/又は予防における本発明による化合物の特別な有用性を殊に強調することができる。
【0064】
更に、本発明の他の実施態様において、本発明による化合物の非シクロオキシゲナーゼ媒介特性は言及に値する。殊に、サイトカインパターンの調節に対する(殊に炎症性サイトカイン誘発の阻害に対する)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アルファ(PPARアルファ)に対する、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ(PPARガンマ)に対する、及びペルオキシソーム増殖剤活性化受容体デルタ(PPARデルタ)に対する、本発明による化合物の効果は、これに関連して強調することができ、かつ上記の疾患、障害又は疾病の治療及び/又は予防のために有用であると強調することができる。
【0065】
本発明の他の実施態様は、疾患、障害又は疾病、特に上記疾病の1つに病む、治療又は予防のための方法を必要とする哺乳動物、殊にヒトの治療又は予防のための方法を提供する。これに関連して言及することのできる本発明による方法は、例えば、炎症、疼痛(慢性及び急性の双方)、発熱及び他のシクロオキシゲナーゼ媒介疾患、特にペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アルファ(PPARアルファ)及び/又はペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ(PPARガンマ)及び/又はペルオキシソーム増殖剤活性化受容体デルタ(PPARデルタ)を目的とする治療法、創傷治癒及び胃保護のための方法、腎臓又は他の毒性(例えば腎毒症)の低減又は反転のための方法、及び、胃腸疾患を低減及び/又は予防し、かつ根元的な硝酸塩処理されていない親ドラッグの胃腸特性を改善するための方法である。前記方法には、この方法を必要とする患者に、治療学的に活性でありかつ製薬学的に有効かつ認容性の量の本発明による1つ以上の化合物を投与することを含む。
【0066】
更に本発明は、疾病、殊に上記の疾病の治療又は予防において使用するための本発明による化合物に関する。
【0067】
更に本発明は、炎症性疾患を治療又は予防するために使用する医薬組成物を製造するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0068】
これに関連して、「炎症性疾患」という用語は、本発明の意味において、当業者に公知でありかつ/又は本発明の明細書中に記載された疾患、疾病又は障害を指す。
【0069】
本発明は、上記の疾患、障害又は疾病を治療又は予防するための、1つ以上の本発明による化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0070】
本発明の化合物及び組成物は、上記の疾病の共同療法及び/又は予防のための他の適当な物質と一緒の確定された組み合わせ又は自由な組み合わせで使用することもできる。前記の適当な物質には、これらに限定することなく、例えばオピオイド及び他の鎮痛薬、誘導性酸化窒素シンターゼインヒビター、ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)インヒビター、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)インヒビター、ロイコトリエンB(LTB)レセプターアンタゴニスト、ロイコトリエンA(LTA)ヒドロラーゼインヒビター、5−HTアゴニスト、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)インヒビター、H2アンタゴニスト、抗腫瘍薬、抗血小板物質薬、鎮咳薬、うっ血除去薬、利尿薬、鎮静又は非鎮静抗ヒスタミン、ヘリコバクターピロリインヒビター、可逆性及び非可逆性プロトンポンプインヒビター(例えば刊行物、例えばGoodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw-Hill, 1995, p. 901-915又は the Merck Index on CD-ROM, 12th Edition, Version 12:1, 1996に記載されたもの、該刊行物により、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール及びパントプラゾールが殊に言及される)、イソプロスタンインヒビター及び場合により酸化窒素を供与、移動又は放出する少なくとも1つの化合物、又は、内因性の内皮細胞由来弛緩因子(EDRF)もしくは酸化窒素の高められたレベルが含まれるか、又は酸化窒素シンターゼのための基質である。化合物は別個に、順に又は同時に投与することができる。
【0071】
これに関連して、本発明は、1つ以上の本発明による化合物及び共同療法のための1つ以上の上記の適当な物質を含む医薬品キットをも提供する。そのようなキットには、付加的な治療薬又は組成物、投与のための手段、及び、ヒトのための製造、使用又は販売の機関による認可を反映する医薬品又は生物製剤の製造、使用又は販売を規制する官公庁により定められた形の指示書が付随する。
【0072】
更に、本発明は、治療又は予防のための方法を必要とする哺乳動物、殊にヒトに、治療学的に活性でありかつ製薬学的に有効かつ認容性の量の本発明による1つ以上の化合物を投与することを含む、上記の疾病、疾患又は障害の治療又は予防のための方法にも向けられている。
【0073】
更に、本発明は、治療又は予防のための方法を必要とする哺乳動物、殊にヒトに、治療学的に活性でありかつ製薬学的に有効かつ認容性の量の本発明による1つ以上の化合物及び共同療法に適当な1つ以上の上記の物質を別個に、順に又は同時に投与することを含む、上記の疾病、疾患又は障害の治療又は予防のための方法にも向けられている。
【0074】
更に、本発明は、治療又は予防のための方法を必要とする患者に、治療学的に活性でありかつ製薬学的に有効かつ認容性の量の1つ以上の本発明による化合物を投与することによる、US特許第4,272,507号に開示されている化合物の、殊に胃腸系及び/又は心臓血管系に対する治療プロフィール及び/又は認容性を改善するための方法を提供する。
【0075】
更に、本発明は、前記の抗炎症剤を本発明に開示及び明記された同一、類似又は同様の構造変換にかけることを含む、適当な抗炎症剤、例えば、いずれかのイソ形のために選択性がほとんどなくシクロオキシゲナーゼ−1及びシクロオキシゲナーゼ−2の双方を阻害するか又はCOX−1選択性である当業者に公知の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)の活性成分の(例えば胃腸レベルに対する)治療プロフィール及び/又は認容性を改善するための方法を開示する。
【0076】
医薬組成物は、当業者に自体公知である方法により製造される。医薬組成物として、本発明による化合物(=活性化合物)は、それ自体か又は好ましくは、適当な製薬学的助剤及び/又は賦形剤と組み合わせて錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、カプレット剤、坐剤、パッチ剤(例えばTTSとして)、乳剤、懸濁液、ゲル又は溶液の形で使用され、この場合活性化合物の含量は、有利に0.1〜95%であり、助剤及び/又は賦形剤の適当な選択により活性化合物に正確に適合し、かつ/又は作用の望ましい開始時点及び/又は時間に正確に適合する製薬学的投与形(例えば、徐放形又は腸内形)を得ることが可能である。
【0077】
当業者には自身の専門知識のために、望ましい製薬学的処方物に適した助剤又は賦形剤は公知である。溶剤、ゲル形成剤、軟膏基剤及び他の活性化合物と共に、賦形剤、例えば酸化防止剤、分散剤、乳化剤、保存剤、可溶化剤、着色剤、錯化剤又は浸透促進剤を使用することができる。
【0078】
本発明による医薬組成物の投与は、当業者が利用し得る投与の一般に受容される任意の形式で実施することができる。投与の適当な形式の実例には、静脈内、経口的、経鼻的、非経口的、局所的、経皮的及び直腸でのデリバリーが含まれる。経口的及び静脈内でのデリバリーが有利である。
【0079】
呼吸気道の疾病の治療のために、本発明による化合物をエアロゾルの形で吸入により適用するのが有利である;固体、液体又は混合組成物のエアロゾル粒子は直径0.5〜10μm、好ましくは2〜6μmを有するのが有利である。
【0080】
エアロゾル形成は、例えば圧力推進式ジェットアトマイザー又は超音波アトマイザーにより実施できるが、有利に、吸入カプセルからの微粉化された活性化合物の推進剤推進式計量エアロゾル(Propellant-driven metered aerosol)又は推進剤なしでの適用により実施することができる。
【0081】
使用される吸入器システムに依存して、活性化合物に加えて適用形は、付加的に、所望の賦形剤、例えば推進剤(例えば計量されたエアロゾルの場合はフリゲン)、界面活性剤、乳化剤、安定剤、保存剤、芳香剤、充填剤(例えば粉剤吸入器の場合はラクトース)又は適切な場合には更なる活性化合物を含有する。
【0082】
吸入の目的のために、それを用いて最適粒径のエアロゾルを発生させることができ、患者にとってできるだけ適切である吸入法を用いて適用することができる多くの装置が入手される。アダプター(スペーサー、エキスパンダー)及び梨形容器(例えばNebulator(R)、Volumatic(R))及び噴射スプレーを発生するオートマチックデバイス(Autohaler(R))の使用に加えて、特に粉剤吸入器の場合には計量されたエアロゾルを得るために、多くの工業的溶剤が利用でき(例えばDiskhaler(R)、Rotadisk(R)、Turbohaler(R)又は欧州特許出願EP0505321に記載の吸入器)、これを用いて活性化合物の最適な投与が達成できる。
【0083】
皮膚病の治療のために、本発明の化合物は特に局所的投与に好適である医薬組成物の形で投与される。この医薬組成物の製造のために、本発明による化合物(=活性化合物)を適当な製剤学的賦形剤と混合し、更に処理して適当な製剤学的処方物を形成させるのが有利である。適当な製剤学的処方物は、例えば粉剤、乳液、懸濁液、スプレー、油剤、軟膏、油性軟膏、クリーム、ペースト、ゲル又は溶液である。
【0084】
本発明による医薬組成物は、自体公知の方法で製造される。活性化合物の投与は、慣用の量で行う。従って、皮膚病の治療のための局所適用形(例えば軟膏)は、活性化合物を例えば0.1〜99%の濃度で含有する。吸入による投与のための用量は、通常は0.1〜10mg/dayである。全身性治療の場合の慣用量は経口的には0.3〜30mg/kg/dayであり、静脈内では0.3〜30mg/kg/hである。
【0085】
生物学的研究
インビトロCox−2アッセイ
新鮮血を、同意を得た男性及び女性の双方のボランティアから静脈穿刺によりヘパリン処理(8U/ml、Roche、スイス在)されたチューブ内に採取した。被検者は外見上の炎症状態を有しておらず、採血前の7日間にNSAIDを摂取しなかった。血液450μlのアリコートをそれぞれ100μM〜10nMの最終濃度の1μlビヒクル(DMSO)又は試験化合物1μlを含むディープウェル中で、37℃で15分間インキュベートした。この後に、24時間にわたり、0.1%ヒドロキシルアミン/PBS(Sigma)中の10μg/mlのリポ多糖類(LPS、Sigma、ドイツ)50μlを伴う血液のインキュベーションを行った。インキュベーションの最後に血液を2000gで5分間遠心分離し、上澄み100〜150mlを免疫学的検定キット(RD Systems, ドイツ)を用いてPGEに関してアッセイした。
【0086】
インビトロCox−1アッセイ
新鮮血を、抗凝固薬を含まないVacutainer中に採取した。アリコート450μlを100μM〜10nMの最終濃度のDMSO又は試験化合物1μlを予め装入したディープウェルプレート中に直ちに移した。更に、ヒドロキシルアミン/PBS 50μlを添加し、チューブを撹拌混合し、37℃で1時間インキュベートし、血液を凝固させた。インキュベートの後で、遠心分離(2000g/5分)により血清を取得し、上澄みを製造指示の通りに免疫学的検定キット(RD Systems, ドイツ)を用いてTxBに関してアッセイした。
【0087】
算出
データをGRAPHPAD/プリズムを用いて非線形概算プログラムを用いた2〜3の独立した用量応答曲線から分析し、plC50として与えられた。
【0088】
結果
本発明による典型的な化合物のために決定された阻害値は、以下の表Aの通りであり、ここで、化合物の数字は実施例の数に相応する。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R4はR3の意味の1つを有し、
R5は水素、ハロゲン又はC〜C−アルキルであるか、
又は
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R2は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はトリフルオロメチルであり、
R4はR3の意味の1つを有し、
R5は水素、ハロゲン又はC〜C−アルキルである]
の化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物。
【請求項2】
式Iにおいて、
R1は水素、塩素、臭素又はメチルであり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R3は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素又は塩素であるか、
又は
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
AはC〜C−アルキレンであり、
R2は水素又はメチルであり、
R3は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は水素、塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R5は水素又は塩素である、
請求項1記載の式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物。
【請求項3】
式Iにおいて、
R1は水素又は塩素、であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R3は塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は塩素又はメチルであり、
R5は水素又は塩素であるか、
又は
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R2は水素であり、
R3は塩素、メチル又はトリフルオロメチルであり、
R4は塩素又はメチルであり、
R5は水素又は塩素である、
請求項1記載の式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物。
【請求項4】
式Iにおいて、
R1は水素であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R3は塩素又はメチルであり、
R4は塩素であり、
R5は水素であるか、
又は
R1は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはブチレンであり、
R2は水素であり、
R3は塩素又はメチルであり、
R4は塩素であり、
R5は水素である、
請求項1記載の式Iの化合物及び前記化合物の塩、前記化合物の溶媒和化合物及び前記化合物の塩の溶媒和化合物。
【請求項5】
式Iにおいて、
R1は水素であり、
R2は−CH−C(O)−O−A−O−NOであり、ここで、
Aはテトラメチレンであり、
R3は塩素であり、
R4は塩素であり、
R5は水素である、
請求項1記載の式Iの化合物及び前記化合物の溶媒和化合物。
【請求項6】
疾患を治療又は予防するための、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項7】
請求項1記載の式Iの1つ以上の化合物を慣用の製薬学的助剤及び/又は賦形剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項8】
炎症性疾患を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
哺乳動物における疾病、障害又は疾患を治療又は予防するための方法において、治療学的に活性でありかつ製薬学的に効果的かつ認容性の量の請求項1記載の式Iの化合物を前記の哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする、哺乳動物における疾病、障害又は疾患を治療又は予防するための方法。
【請求項10】
患者における炎症性疾患の治療法において、治療学的に活性でありかつ製薬学的に効果的かつ認容性の量の請求項1記載の式Iの化合物を前記の患者に投与することを含むことを特徴とする、患者における炎症性疾患の治療法。

【公表番号】特表2006−517953(P2006−517953A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502032(P2006−502032)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050144
【国際公開番号】WO2004/074271
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】