説明

フェンダ構造

【課題】簡易な構造にて、剛性を向上させたフェンダ構造を提供することにある。
【解決手段】車両の車輪の上方に配置される車体骨格部材10に縁部がボルトまたはクリップにて組み付けられる樹脂製のフロントフェンダ21と、車体骨格部材10とフロントフェンダ21との間に配置されるウレタン樹脂製の支持部材30とを具備し、支持部材30の側壁30aは、フロントフェンダ21における車両前後方向の中央近傍で、且つその上下方向の中央近傍でフロントフェンダ21に沿う形状にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のフェンダを具備するフェンダ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費向上の観点から車両の軽量化が図られており、樹脂製のフェンダを用いたフェンダ構造など種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂製のフェンダ内にこのフェンダと一体に形成された複数のリブがホイールアーチ部の上側部分に隣接して配置される車両の樹脂製フェンダ構造が記載されている。これにより、張り剛性がより必要とされるホイールアーチ部の上方部分を補強している。
【0004】
【特許文献1】特開2006−96169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の車両の樹脂製フェンダ構造では、フロントフェンダの上側の端部とこの下側のマッドガード部とをリブで接合するため張り剛性が向上するものの、リブとフロントフェンダの外壁部との間に空間があるため、前記フロントフェンダに所定以上の力が加わった場合には、この箇所が変形してしまう可能性があった。また、複数のリブがフロントフェンダと一体に形成されるため、構造が複雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、簡易な構造にて、剛性を向上させたフェンダ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明に係るフェンダ構造は、車両の車輪の上方に配置される車体骨格部材に縁部がボルトまたはクリップにて組み付けられる樹脂製のフェンダと、前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に配置されるウレタン樹脂製の支持部材とを具備し、前記支持部材の側壁が、前記フェンダにおける車両前後方向の中央近傍で、且つその上下方向の中央近傍で前記フェンダに沿う形状であることを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決する第2の発明に係るフェンダ構造は、第1の発明に係るフェンダ構造であって、前記車体骨格部材と前記フェンダとの隙間の車幅方向の距離が、上部より下部のほうが広く形成されると共に、前記支持部材が、その上端より下端のほうが車幅方向の厚みが増加する形状に形成され、前記フェンダを組み付けられた後に、前記支持部材を前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に下方より進入させて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフェンダ構造によれば、車両の車輪の上方に配置される車体骨格部材に縁部がボルトまたはクリップにて組み付けられる樹脂製のフェンダと、前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に配置されるウレタン樹脂製の支持部材とを具備し、前記支持部材の側壁が、前記フェンダにおける車両前後方向の中央近傍で、且つその上下方向の中央近傍で前記フェンダに沿う形状であることにより、前記支持部材が前記フェンダ自体の剛性が弱い中央近傍に配置されることとなり、車両内側への力が加えられたときの反力を、前記支持部材および前記車体骨格部材を介して得ることができ、力が加えられたときの変形を抑制することができる。その結果、フェンダ構造の剛性を向上させることができる。また、構造自体が簡易であり、製造コストの増加を抑制することができる。
支持部材の側壁が、フェンダに沿う形状であることにより、前記支持部材と前記フェンダとの間に空隙が無くなり、車両内側への力が前記フェンダに加えられたときの反力を、前記支持部材および前記車体骨格部材を介して直接得ることができ、力が加えられたときの変形を抑制して、フェンダ構造の剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明に係るフェンダ構造によれば、前記車体骨格部材と前記フェンダとの隙間の車幅方向の距離が、上部より下部のほうが広く形成されると共に、前記支持部材が、その上端より下端のほうが車幅方向の厚みが増加する形状に形成され、前記フェンダを組み付けられた後に、前記支持部材を前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に下方より進入させて固定することにより、樹脂製のフェンダを組み付けられたまま塗装工程を通過した車体に対して、樹脂製のフェンダを取り外すことなく支持部材の取り付けを可能にすることで、車両組み付けの作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係るフェンダ構造を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
以下に、本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造につき、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造を具備する車両の前部側面の斜視図であり、図2は、本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造が具備するフロントフェンダの側面図であり、図3は、図2におけるIII−III矢視断面図であり、図4は、本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造が具備するフロントフェンダの板厚分布を示す図である。ただし、図中において、Upは車両上方を示し、Inは車両内側を示し、Frは車両前方を示す。図4において、板厚を色の濃淡で示し、厚みの増加に従い色を濃く示す。
【0013】
図1に示すように、車両50の前部側面には車体の外板をなすフェンダ構造20が設けられる。このフェンダ構造20は車体骨格部材10により支持されており、フェンダ構造20の前部の下部はバンパーを補強するバンパーリンフォースメント31により支持される。
【0014】
フェンダ構造20の前部の下部とバンパーリンフォースメント31とは、フェンダーパネルブラケット32により結合される。このフェンダーパネルブラケット32とバンパーリンフォースメント31とは、溶接またはボルトにより結合される。また、フェンダ構造20の前方にはヘッドランプ33が設置される。
【0015】
本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造20は、図1、図2、および図3に示すように、車両50の車輪の上方に配置される車体骨格部材10に縁近傍がボルト22,23またはクリップ24,25にて組み付けられる樹脂製のフロントフェンダ21と、車体骨格部材10とフロントフェンダ21との間に配置されるウレタン樹脂製の支持部材30とを具備し、支持部材30を、フロントフェンダ21における車両前後方向の中央近傍に、且つその上下方向の中央近傍で車体骨格部材10に固定される。
【0016】
上述した車体骨格部材10は、具体的には、車両内側に配置され、上下方向に延在し、下端部近傍が車両外側に屈曲し下方に延在するフロントアッパピラーインナ11と、フロントアッパピラーインナ11の車両内側に組み付けられ、上下方向に延在し、下方にて車両内側に湾曲するフロントアッパフレームインナ12と、フロントアッパピラーインナ11の下端部近傍における車両内側に上端部近傍が組み付けられ、上下方向に延在し、下方が車両内側に屈曲して延在し、フロントアッパフレームインナ12の下端部近傍における車両外側に下端部近傍が組み付けられるアッパフレームアウタ13と、フロントアッパフレームインナ12に一方の端部近傍が組み付けられ、アッパフレームアウタ13に他方の端部近傍が組み付けられ、車幅方向に延在するバルクヘッド15と、フロントピラーインナ11の車両外側に組み付けられたサイドパネルアウタ16とを有する。
【0017】
支持部材30は、上部から下部に向かうに従い車幅方向の厚みが増加する形状であり、この車両外側の側壁部30aがフロントフェンダ21に沿う形状である。また、支持部材30の車両内側の側壁部30bには、突起部30cが形成される。この突起部30cがアッパフレームアウタ13に形成された取付穴13aに嵌め込まれて支持部材30が車体骨格部材10に固定される。
【0018】
支持部材30の下方には、アッパフレームアウタ13の下部に、一方の端部が取り付けられ、車両外側に延在するフロントシールドスプラッシュ14を有し、車体骨格部材10とフロントフェンダ21との間の下方を塞いでいる。
【0019】
よって、この支持部材30によりフロントフェンダ21を含むフェンダ構造20の剛性が向上する。すなわち、フロントフェンダ21の外側から車両内側に力が加えられたとき、このフロントフェンダ21に加えられた力が支持部材30およびアッパフレームアウタ13またはこれらとバルクヘッド15を介して、フロントアッパピラーインナ11およびフロントアッパフレームインナ12に作用するため、このフロントフェンダ21の剛性が向上し、この変形を抑制することができる。
【0020】
また、上述した支持部材30は、フロントフェンダ21のホイールアーチ部21aにおける車両前後方向の中央近傍に、且つこの箇所の上下方向の略中央近傍に配置される。よって、フロントフェンダ21自体の剛性が弱い箇所を支持部材30により補強することとなり、フェンダ構造20の剛性が向上し、この変形を抑制することができる。
【0021】
さらに、支持部材30によりフロントフェンダ21の剛性が向上するため、このフロントフェンダ21の板厚をその部位により変えることができる。すなわち、図4に示すように、車体骨格部材10に固定されるフロントフェンダ21の中央上部近傍の領域Aならびにこのベルトライン21b近傍の領域B、および車体骨格部材10に固定されないホイールアーチ部21aである領域Cよりも、車両前側、およびホイールアーチ部21aの上方、ならびに車両後側下部の板厚を薄くすることができる。
【0022】
さらに車体骨格部材10とフロントフェンダ21との隙間の車幅方向の距離は、上部より下部のほうが広く形成されると共に、支持部材30は、その上端より下端のほうが車幅方向の厚みが増加する形状に形成されるので、塗装前にフロントフェンダ21を組み付け、塗装工程を通過させた後に、フロントフェンダ21を取り外すことなく、支持部材30を車体骨格部材10とフロントフェンダ21との間に下方より進入させて取り付けることができ、車両組み付けの作業性を向上させることができる。
尚、フロントシールドスプラッシュ14は、支持部材30を取り付けた後で車体骨格部材10とフロントフェンダ21との間の下方を塞ぐように取り付けられる。
【0023】
したがって、本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造20によれば、支持部材30がフロントフェンダ21自体の剛性が弱い中央近傍に配置されることとなり、車両内側への力が加えられたときの反力を、支持部材30および車体骨格部材10を介して得ることができ、力が加えられたときの変形を抑制することができる。その結果、フェンダ構造20の剛性を向上させることができる。また、構造自体が簡易であり、製造コストの増加を抑制することができる。支持部材30がウレタン樹脂であることにより、これ自体が耐水性に優れるため、サビなどによる腐食を防止する処理を行う必要が無く、製造コストの増加を抑制することができる。
【0024】
さらに、支持部材30の側壁30aが、フロントフェンダ21に沿う形状であることにより、支持部材30とフロントフェンダ21との間に空隙が無くなり、車両内側への力がフロントフェンダ21に加えられたときの反力を、支持部材30および車体骨格部材10を介して直接得ることができ、力が加えられたときの変形を抑制して、フェンダ構造20の剛性をさらに向上させることができる。
【0025】
なお、上記では、車両50のフロントに設けられたフェンダ構造20を用いて説明したが、車両のリヤに設けられるフェンダ構造に用いても良く、このような箇所に設けられるフェンダ構造でも、上述した本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造20と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、フェンダ構造に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造を具備する車両の前部側面の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造が具備するフロントフェンダの側面図である。
【図3】図2におけるIII−III矢視断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係るフェンダ構造が具備するフロントフェンダの板厚分布を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 車体骨格部材
11 フロントアッパピラーインナ
12 フロントアッパフレームインナ
13 アッパフレームアウタ
14 フロントシールドスプラッシュ
15 バルクヘッド
16 サイドパネルアウタ
20 フェンダ構造
21 フロントフェンダ
22,23 ボルト
24,25 クリップ
30 支持部材
31 バンパーリンフォースメント
32 フェンダーパネルブラケット
33 ヘッドランプ
50 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪の上方に配置される車体骨格部材に縁部がボルトまたはクリップにて組み付けられる樹脂製のフェンダと、
前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に配置されるウレタン樹脂製の支持部材とを具備し、
前記支持部材の側壁は、前記フェンダにおける車両前後方向の中央近傍で、且つその上下方向の中央近傍で前記フェンダに沿う形状である
ことを特徴とするフェンダ構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたフェンダ構造であって、
前記車体骨格部材と前記フェンダとの隙間の車幅方向の距離は、上部より下部のほうが広く形成されると共に、
前記支持部材は、その上端より下端のほうが車幅方向の厚みが増加する形状に形成され、
前記フェンダを組み付けられた後に、前記支持部材を前記車体骨格部材と前記フェンダとの間に下方より進入させて固定する
ことを特徴とするフェンダ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162416(P2008−162416A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354235(P2006−354235)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】