説明

フェード判定装置及び制動装置

【課題】適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができるフェード判定装置及び制動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フェード判定装置7は、車両1の減速度と車両1の車輪2のスリップ量とに基づいて、車輪2を制動するブレーキ装置11のフェード状態を判定することを特徴とする。制動装置6は、車両1の車輪2に生じる制動力を調節可能なブレーキ装置11と、制動力を制御して車輪2のスリップ状態を制御する制御装置7とを備え、制御装置7は、車両1の減速度と車輪2のスリップ量とに基づいて、ブレーキ装置11のフェード状態を判定し、フェード状態に応じて制動力の増減量を調節することを特徴とする。したがって、適正にブレーキ装置11のフェード状態を判定することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェード判定装置及び制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に適用される制動装置のフェード状態を判定する装置として、特許文献1には目標減速度と実減速度との差に応じてブレーキのフェード状態を判定するブレーキフェード警告装置が開示されている。このブレーキフェード警告装置は、実減速度が目標減速度よりも小さく、かつその差が所定値以上のときに、ブレーキフェードのおそれがあるとして運転者に注意を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−206218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載されているブレーキフェード警告装置は、例えば、フェード状態の判定の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができるフェード判定装置及び制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るフェード判定装置は、車両の減速度と前記車両の車輪のスリップ量とに基づいて、前記車輪を制動するブレーキ装置のフェード状態を判定することを特徴とする。
【0007】
また、上記フェード判定装置では、前記車両に対する制動操作の操作量が予め設定される所定操作量以上で、かつ、前記制動操作の操作速度が予め設定される所定操作速度より大きい場合に、前記フェード状態を判定するものとすることができる。
【0008】
また、上記フェード判定装置では、前記車両の減速度が予め設定される第1所定減速度であるときに、前記車両の前輪の前記スリップ量が予め設定される所定スリップ量以下である場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0009】
また、上記フェード判定装置では、前記車両の前輪に当該前輪がロックする大きさの制動力が作用した際に発生する前記車両の減速度が予め設定される第2所定減速度以上である場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0010】
また、上記フェード判定装置では、前記車両の後輪に当該後輪がロックする大きさの制動力が作用した際に発生する前記車両の減速度が予め設定される第3所定減速度以下である場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0011】
また、上記フェード判定装置では、前記車両の前輪に当該前輪がロックする大きさの制動力が作用する際に、すでに前記車両の後輪に当該後輪がロックする大きさの制動力が作用している場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0012】
また、上記フェード判定装置では、前記車両の前輪の車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下である場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0013】
また、上記フェード判定装置では、前記車両に対する制動操作の操作量が前記所定操作量以上の前記制動操作がなされてからABS制御が作動するまでの時間が予め設定される所定時間以上である場合に、前記フェード状態であると判定するものとすることができる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る制動装置は、車両の車輪に生じる制動力を調節可能なブレーキ装置と、前記制動力を制御して前記車輪のスリップ状態を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記車両の減速度と前記車輪のスリップ量とに基づいて、前記ブレーキ装置のフェード状態を判定し、前記フェード状態に応じて前記制動力の増減量を調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフェード判定装置、制動装置は、適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態に係る車両の概略構成図である。
【図2】図2は、制動力配分線図である。
【図3】図3は、ECUによる制御の一例を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、フェード状態の切り分けについて説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両の概略構成図、図2は、制動力配分線図、図3は、ECUによる制御の一例を説明するフローチャート、図4は、フェード状態の切り分けについて説明する概念図である。
【0019】
本実施形態は、典型的には、下記の構成要素を有している。
(1)4輪の車輪速度センサ。
(2)制動操作量を判別する油圧センサ。
(3)昇圧勾配(油圧の微分値)を演算するECU。
(4)車体速センサ、あるいは車体速度を推定する機構及びロジック。
(5)車輪速度の微分値(車輪加速度)および車輪速度を計測するECU。
(6)車体減速度センサ、あるいは車体減速度を算出するロジック。
(7)急制動及び強制動を判定するロジック。
(8)制動開始してから減速度が任意の値を超えるまでの時間を認識するロジック。
(9)車輪加速度の変化勾配を認識するロジック。
(10)ABS機能を実現できるアクチュエータ。
【0020】
そして、本実施形態は、これらの構成要素によって、例えば、いわゆるVSC(Vehicle Stability Control)システムに搭載されている既設の制御に用いられるセンサの検出結果(マスタシリンダ圧、車体減速度、車輪速度)等を有効に利用して、適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができ、これにより、例えば、フェード中のABS効率を向上することで車両の停止に要する距離(停止距離)の短縮化を実現することができるものである。
【0021】
具体的には、本実施形態のフェード判定装置としてのECU7は、図1に示すように車両1に搭載される。車両1は、車輪2として、左前輪2FL、右前輪2FR、左後輪2RL、右後輪2RRを備える。車両1は、アクセルペダル3、駆動源4、ブレーキペダル5、制動装置6、制御装置としてのECU7などを備える。車両1は、運転者によるアクセルペダル3の操作に応じて駆動源4が動力(トルク)を発生させ、この動力が動力伝達装置(不図示)を介して車輪2に伝達され、この車輪2に駆動力を発生させる。また、車両1は、運転者によるブレーキペダル5の操作に応じて制動装置6が作動することで車輪2に制動力を発生させる。本実施形態のECU7は、フェード判定装置であると共に制動装置6の制御装置としても兼用される。
【0022】
駆動源4は、内燃機関や電動機などの走行用の動力源である。制動装置6は、マスタシリンダ8から油圧制御装置(油圧アクチュエータ)9を介してホイールシリンダ10に接続する油圧経路に、作動流体であるブレーキオイルが充填された種々の公知の油圧式の制動装置である。制動装置6は、基本的には運転者がブレーキペダル5を操作することで、ブレーキペダル5に作用するペダル踏力(操作力)に応じてマスタシリンダ8によりブレーキオイルにマスタシリンダ圧(操作圧力)が付与される。そして、制動装置6は、このマスタシリンダ圧が各ホイールシリンダ10にてホイールシリンダ圧(制動圧力)として作用することで、キャリパ、ブレーキパッド、ディスクロータなどを含んで構成される油圧式のブレーキ装置11が作動し車輪2に圧力制動力を発生させる。各ブレーキ装置11は、ブレーキパッドがディスクロータに当接し押し付けられることで、車輪2と共に回転するディスクロータに対して、ホイールシリンダ圧に応じた所定の回転抵抗力が作用し、このディスクロータ及びこれと一体で回転する車輪2に制動力を付与することができる。この間、制動装置6は、油圧制御装置9によってホイールシリンダ圧が運転状態に応じて適宜調圧される。なお、マスタシリンダ8は、ブレーキペダル5に対する制動操作、すなわち、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧を発生させるものであり、マスタシリンダ圧は、運転者によるブレーキペダル5への制動操作の操作量に相当する。
【0023】
ECU7は、車両1の各部の駆動を制御するものであり、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。ECU7は、例えば、各車輪2の回転速度を検出する各車輪速度センサ12、車両1の車体に生じる前後方向(走行方向)の加速度を検出する前後加速度センサ13、マスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ14等の車両1の各所に取り付けられた種々のセンサ、検出装置が電気的に接続され、検出結果に対応した電気信号が入力される。ECU7は、各種センサから入力された各種入力信号や各種マップに基づいて、格納されている制御プログラムを実行することにより、駆動源4や制動装置6の油圧制御装置9などの車両1の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
【0024】
ここで、油圧制御装置9は、例えば、複数の配管、オイルリザーバ、オイルポンプ、各車輪2にそれぞれ設けられた各ホイールシリンダ10に接続する各油圧配管、各油圧配管の油圧を各々に増圧、減圧、保持するための複数の電磁弁などを含んで構成され、ECU7により制御される。油圧制御装置9は、通常の運転時には、例えば、ECU7の制御指令にしたがってオイルポンプや所定の電磁弁が駆動することで、運転者によるブレーキペダル5の操作量(踏み込み量)に応じてホイールシリンダ10に作用するホイールシリンダ圧を調圧することができる。また、油圧制御装置9は、後述する車両制御時には、例えば、ECU7の制御指令にしたがってオイルポンプや所定の電磁弁が駆動することで、ホイールシリンダ10に作用するホイールシリンダ圧を増圧する増圧モード、ほぼ一定に保持する保持モード、減圧する減圧モードなどで作動可能である。油圧制御装置9は、ECU7による制御によって、車両1の走行状態に応じて各車輪2にそれぞれ設けられた各ブレーキ装置11のホイールシリンダ10ごとに個別に上記モードを設定することができる。
【0025】
そして、本実施形態のECU7は、車両1の走行状態に応じて駆動源4や油圧制御装置9を制御することで、車両1のABS(Antilock Brake System)機能やTRC(Traction Control System)機能などを実現することができる。すなわち、ECU7は、運転者によるアクセルペダル3の踏み込み操作(加速操作)やブレーキペダル5の踏み込み操作(制動操作)に伴って車輪2がスリップしたとき、そのスリップ状態にある車輪2の制駆動力を調節することで、車両1の走行状態に応じた最適な制駆動力を車輪2に対して付与するようにする。ECU7は、駆動源4の出力や各ブレーキ装置11の制動圧力としての各ホイールシリンダ圧(以下、「ブレーキ圧」という場合がある。)を調節し車輪2に生じる制駆動力を制御することで、車輪2のスリップ状態、例えば、車輪2のタイヤと路面とのスリップ(滑り)をあらわす指標である車輪2のスリップ率を制御する。
【0026】
例えば、ECU7は、運転者によるブレーキペダル5の踏み込み操作に応じて制動装置6が作動した際に車輪2と路面との間に生じうるスリップを抑制するためにABS機能が作動したときの制動力制御(ABS制御)として上記スリップ率制御を実行する。この場合、ECU7は、実際のスリップ率が目標のスリップ率になるように各ブレーキ装置11のブレーキ圧を調節し車輪2に生じる制動力を制御する。ECU7は、実際のスリップ率が目標のスリップ率より大きくなった場合にブレーキ圧を減圧し制動力を低減する一方、実際のスリップ率が目標のスリップ率より小さくなった場合にブレーキ圧を増圧し制動力を増加する。ECU7は、これを周期的に繰り返すことでブレーキロックを防止しつつ車両1の制動距離を短くすることができると共に車両安定性や操舵性を向上することができる。
【0027】
そして、本実施形態のECU7は、車両1の減速度と車輪2のスリップ量とに基づいて、車輪2を制動するブレーキ装置11のフェード状態を判定することで、適正に各ブレーキ装置11のフェード状態を判定している。
【0028】
ここで、ブレーキ装置11のフェード状態とは、ブレーキ装置11のブレーキパッドとディスクロータとの間の摩擦係数が低下し、ブレーキ装置11が発生させる制動力(制動トルク)が低下するフェード現象が生じた状態である。ブレーキ装置11のフェード現象は、例えば、ブレーキ装置11の摩擦材の過熱や錆、雪の付着等に起因して生じるおそれがある。
【0029】
ここで、図2の制動力配分線図を参照して前輪2FL、2FRのブレーキ装置11のフェード状態時の特徴を説明する。図2中、第1象限は、前輪制動力と後輪制動力との対応関係(前輪制動力/後輪制動力)を表している。点線直線L11は、リヤロック限界線L11、点線直線L12は、フロントロック限界線L12である。リヤロック限界線L11、フロントロック限界線L12は、それぞれ後輪2RL、2RR、前輪2FL、2FRのABS制御が実行される前輪制動力と後輪制動力との配分を表しており、典型的には、それぞれ後輪2RL、2RR、前輪2FL、2FRがロックする限界の制動力(ロック制動力)の配分の一例を表している。実線曲線L2は、理想制動力配分線L2である。理想制動力配分線L2は、車両1の車体に減速度が作用した際に生じるリヤ側(後輪側)からフロント側(前輪側)への荷重移動を踏まえて最大の減速度を発生させうる理想的な前輪制動力と後輪制動力との配分を表しており、典型的には、前輪2FL、2FRのスリップ率と後輪2RL、2RRのスリップ率とが均一化されて、四輪が同時にロックする限界の制動力配分(すなわち、リヤロック限界線L11とフロントロック限界線L12との交点の制動力配分)を表している。実線直線L31、一点鎖線直線L32は、実制動力配分線L31、L32である。実制動力配分線L31、L32は、実際に生じる前輪制動力と後輪制動力との配分の一例を表している。実制動力配分線L31、L32は、典型的には、理想制動力配分線L2の内側(フロント側)となり、前輪2FL、2FRが後輪2RL、2RRより先にロックするように設定される。点線直線L41、L42は、等減速度線L41、L42である。等減速度線L41、L42は、車両1に同等の減速度が作用する前輪制動力と後輪制動力との配分の組み合わせの一例を表している。
【0030】
図2中、第2象限は、後輪油圧(後輪のブレーキ圧)と後輪制動力との対応関係(後輪油圧/後輪制動力)を表しており、実線直線L5は、後輪油圧と後輪制動力との関係の一例を表している。第3象限は、後輪油圧と前輪油圧(前輪のブレーキ圧)との対応関係(後輪油圧/前輪油圧)を表しており、実線直線L6は、後輪油圧と前輪油圧との関係の一例を表している。この実線直線L6は、マスタシリンダ圧に応じた直線となる。第4象限は、前輪油圧と前輪制動力との対応関係(前輪油圧/前輪制動力)を表しており、実線直線L71、一点鎖線直線L72は、前輪油圧と前輪制動力との関係の一例を表している。
【0031】
例えば、運転者によって相対的に大きな操作量、操作速度で制動操作がなされて前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態となった場合、前輪2FL、2FR側のフェードにより、フロント側のブレーキ装置11の効きが相対的に低下し、同等の前輪油圧で発生する前輪制動力が低下することで、図2中の矢印Aに示すように、前輪油圧と前輪制動力との関係が実線直線L71から一点鎖線直線L72側に変化する。このとき、同等の後輪油圧に対する後輪制動力の大きさは、ほぼ変わらず、後輪油圧と後輪制動力との関係は、実線直線L5のままで維持される。このため、運転者による操作量に応じた同等のマスタシリンダ圧に対する実際の制動力配分は、図2中の矢印Bに示すように、後輪制動力の配分が相対的に増加するようにリヤ寄りに変化し、例えば、実制動力配分線L31から実制動力配分線L32側に変化する。
【0032】
ECU7は、上記のように、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態となった場合に実制動力配分がリヤ寄に変化することによる特徴変化を利用して、ブレーキ装置11がフェード状態、典型的には前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であるか否かを判定し、フェード状態を特定する。
【0033】
ここで、ECU7は、運転者による制動操作の操作量が非フェード時に4輪が共にABS作動可能な操作量に達するような強制動状態で、かつ、急制動であることを前提条件として、各種特徴変化の判定を行う。典型的には、ECU7は、車両1に対する制動操作の操作量が予め設定される所定操作量以上で、かつ、制動操作の操作速度が予め設定される所定操作速度より大きい場合に、フェード状態を判定する。ECU7は、マスタシリンダ圧センサ14の検出結果に基づいて、制動操作の操作量としてのマスタシリンダPMCを取得し、取得したマスタシリンダ圧PMCに基づいて、制動操作の操作速度として、マスタシリンダ圧PMCの変化速度、例えば、マスタシリンダ圧微分値ΔPMCを演算する。ECU7は、マスタシリンダ圧PMCが予め設定される所定操作量KFApmc以上で、かつ、マスタシリンダ圧微分値ΔPMCが予め設定される所定操作速度KFADpmcより大きい場合に、フェード状態を判定する。所定操作量KFApmc、所定操作速度KFADpmcは、車両1の各部の仕様、制動力配分線図、実車評価等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。例えば、所定操作量KFApmcは、4輪が共にABS作動可能な操作量に応じて設定され、所定操作速度KFADpmcは、運転者による急な制動操作を検出可能なように設定される。これにより、ECU7は、運転者による強制動かつ急制動状態で、そのときの各種特徴変化を検出し、例えば、運転者がゆっくりと制動操作したような場合等と区別して、精度よくフェード状態を判定することができる。
【0034】
そして、ECU7は、制動力配分がリヤ寄に変化することによる特徴変化の判定として、所定の減速度のときの前輪2FL、2FRのスリップ量が低下したか否かを判定する。典型的には、ECU7は、車両1の減速度Gxが予め設定される第1所定減速度としての所定減速度KD1であるときに、車両1の前輪2FL、2FRのスリップ量slipFL、slipFRが予め所定スリップ量Kc3以下である場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定する。所定減速度KD1、所定スリップ量Kc3は、車両1の各部の仕様、制動力配分線図、実車評価等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。ECU7は、前後加速度センサ13の検出結果に基づいて、減速度Gxを取得する。ECU7は、各車輪速度センサ12の検出結果に基づいて、前輪2FL、2FRのスリップ量slipFL、slipFRを演算する。スリップ量slipFL、slipFRは、前輪2FL、2FRと路面とのスリップ(滑り)をあらわす指標であり、ECU7は、例えば、車輪速度センサ12が検出した各車輪2の車輪速度と、各車輪2の車輪速度の平均値などから推定される車両1の車体速度とに基づき、スリップ量slipFL、slipFR(=車体速度−前輪車輪速度)を算出すればよい。また、ECU7は、前輪2FL、2FRのスリップ率(=(車体速度−前輪車輪速度)/車体速度)を算出しこれをスリップ量slipFL、slipFRに相当する値として用いてもよいし、前後輪車輪速差(=前輪車輪速度−後輪車輪速度)を算出しこれをスリップ量slipFL、slipFRに相当する値として用いてもよい。
【0035】
例えば、実制動力配分線L31とフロントロック限界線L12との交点が所定の減速度、例えば、等減速度線L41上に位置しているとする。この状態から、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態となり実制動力配分がリヤ寄に変化すると、実制動力配分線L31が実制動力配分線L32に変化することで、図2中の矢印Cに示すように、実制動力配分線L32とフロントロック限界線L12との交点が等減速度線L41より大きな減速度の等減速度線L42上に移動する。言い換えれば、図2中の矢印Dに示すように、実制動力配分線L32と等減速度線L41との交点がフロントロック限界線L12から離れて位置することになる。このため、実制動力配分が実制動力配分線L31である場合にはロック制動力に達しているはずの減速度(等減速度線L41)であっても、実制動力配分線L31が実制動力配分線L32に変化した状態では、同等の減速度(等減速度線L41)を実現可能な前輪制動力がロック制動力に達していない状態、すなわち、前輪制動力がフロントロック限界線L12に対して余裕がある状態となり、結果的に、前輪2FL、2FRのスリップ量slipFL、slipFRが相対的に小さい状態となる。したがって、ECU7は、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1であるときに、車両1の前輪2FL、2FRのスリップ量slipFL、slipFRが予め所定スリップ量Kc3以下である場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定することが可能となる。
【0036】
また、ECU7は、制動力配分がリヤ寄に変化することによる特徴変化の判定として、さらに、前輪2FL、2FRにロック制動力が作用した際に発生する減速度が上昇したか否か、後輪2RL、2RRにロック制動力が作用した際に発生する減速度が低下したか否かを判定する。典型的には、ECU7は、車両1の前輪2FL、2FRにこの前輪2FL、2FRがロックする大きさの制動力が作用した際に発生する車両1の減速度Gxが予め設定される第2所定減速度としての所定減速度KD1以上である場合、あるいは、車両1の後輪2RL、2RRにこの後輪2RL、2RRがロックする大きさの制動力が作用した際に発生する車両1の減速度Gxが予め設定される第3所定減速度としての所定減速度KD1以下である場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定する。例えば、ECU7は、各車輪速度センサ12の検出結果に基づいて、車両1の前輪2FL、2FR、後輪2RL、2RRの車輪速度の微分値を算出しこれらを車輪加速度dvwFL、dvwFR、dvwRL、dvwRRとして用いる。そして、ECU7は、車輪加速度dvwFL、dvwFR、dvwRL、dvwRRが予め設定される所定加速度Kc1、Kc2以下になったか否かに基づいて、前輪2FL、2FR、後輪2RL、2RRに前輪2FL、2FR、後輪2RL、2RRがロックする大きさの制動力が作用したか否かを判定すればよい。所定減速度KD1、所定加速度Kc1、Kc2は、車両1の各部の仕様、制動力配分線図、実車評価等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。例えば、所定加速度Kc1、Kc2は、前輪2FL、2FR、後輪2RL、2RRのロックを検出可能なように設定される。なおここでは、第1所定減速度、第2所定減速度及び第3所定減速度は、同じ所定減速度KD1を用いるものとして説明するが、適宜、異なる値を用いてもよい。
【0037】
上記で説明したように、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態となり実制動力配分がリヤ寄に変化すると、実制動力配分線L31が実制動力配分線L32に変化することで、前輪制動力がフロントロック限界線L12に達した際の減速度が大きくなり、後輪制動力がフロントロック限界線L12に達した際の減速度が小さくなる。したがって、ECU7は、前輪2FL、2FRにロック制動力が作用した際に発生する車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以上である場合、後輪2RL、2RRにロック制動力が作用した際に発生する車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以下である場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定することが可能となる。
【0038】
また、ECU7は、制動力配分がリヤ寄に変化することによる特徴変化の判定として、さらに、前輪2FL、2FRにロック制動力が作用した際に、すでに後輪2RL、2RRにロック制動力が作用しているか否かを判定してもよい。典型的には、ECU7は、車両1の前輪2FL、2FRに前輪2FL、2FRがロックする大きさの制動力が作用する際に、すでに車両1の後輪2RL、2RRに後輪2RL、2RRがロックする大きさの制動力が作用している場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定する。例えば、ECU7は、車輪加速度dvwFL、dvwFRが所定加速度Kc1以下になる前に車輪加速度dvwRL、dvwRRが所定加速度Kc2以下となったか否かに基づいて、前輪2FL、2FRにロック制動力が作用した際に、すでに後輪2RL、2RRにロック制動力が作用しているか否かを判定すればよい。この場合も、ECU7は、上記で説明したように、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態となり実制動力配分がリヤ寄に変化すると、実制動力配分線L31が実制動力配分線L32に変化することで、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定することが可能となる。
【0039】
さらに、ECU7は、制動力の時間応答性の判定として、車両1の前輪2FL、2FRの車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下であるか否か、言い換えれば、車輪加速度の変化に時間がかかるようになったか否かを判定してもよい。典型的には、ECU7は、前輪2FL、2FRの車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下である場合に前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定する。例えば、ECU7は、前輪2FL、2FRの車輪速度変化量に相当する車輪加速度dvwFL、dvwFRが予め設定される判定加速度A1より大きくなってから判定加速度B1以下となるまでの時間が予め設定された所定時間T1以上であるか否かに基づいて、車両1の前輪2FL、2FRの車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下であるか否かを判定すればよい。判定加速度A1、B1、所定時間T1は、車両1の各部の仕様、制動力配分線図、実車評価等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。この場合、ECU7は、フェードが発生すると制動力の立ち上がり方が鈍くなる傾向にあることから、前輪2FL、2FRの車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下である場合に、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定することが可能となる。
【0040】
また、ECU7は、制動力の時間応答性の判定として、車両1に対する制動操作の操作量が所定操作量以上の制動操作がなされてからABS制御が作動するまでの時間が予め設定される所定時間T2以上であるか否かを判定してもよい。典型的には、ECU7は、車両1に対する制動操作の操作量が所定操作量以上の制動操作がなされてからABS制御が作動するまでの時間が所定時間T2以上である場合に前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定する。例えば、ECU7は、マスタシリンダ圧PMCが判定操作量Kpmcより大きくなってからABS制御が作動し、車両1の減速度Gxが予め設定される判定減速度KF1より大きくなるまでの時間が所定時間T2以上であるか否かに基づいて、ABS制御が作動するまでの時間が所定時間T2以上であるか否かを判定すればよい。判定操作量Kpmc、判定減速度KF1、所定時間T2は、車両1の各部の仕様、制動力配分線図、実車評価等に応じて予め設定され記憶部に記憶されている。例えば、判定操作量Kpmcは、所定操作量KFApmcを用いてもよい。この場合も、ECU7は、フェードが発生すると制動力の立ち上がり方が鈍くなる傾向にあることから、車両1に対する制動操作の操作量が所定操作量以上の制動操作がなされてからABS制御が作動するまでの時間が所定時間T2以上である場合に前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定することが可能となる。
【0041】
そして、ECU7は、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11がフェード状態であると判定すると、例えば、このフェード状態をABS制御等に反映させ、フェード状態に応じてABS制御におけるブレーキ圧の増減圧量を補正し、制動力の増減量を調節する。これにより、ECU7は、フェード状態下でのABS制御において、例えば、ブレーキ圧減圧後の増圧量が不足することを抑制することができ、フェード状態に応じて適正なABS制御を行うことができる。
【0042】
次に、図3のフローチャートを参照してECU7による制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0043】
まず、ECU7は、制動装置6等の各部の作動状態等に応じて、前輪2FL、2FRが両輪ともABS制御前であるか否かを判定する(ST1)。ECU7は、前輪2FL、2FRがABS制御中であると判定した場合(ST1:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0044】
ECU7は、前輪2FL、2FRがABS制御前であると判定した場合(ST1:Yes)、マスタシリンダ圧センサ14の検出結果に基づいて、マスタシリンダ圧PMCが所定操作量KFApmc以上で、かつ、マスタシリンダ圧微分値ΔPMCが所定操作速度KFADpmcより大きいか否かを判定する(ST2)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST2:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0045】
ECU7は、マスタシリンダ圧PMCが所定操作量KFApmc以上で、かつ、マスタシリンダ圧微分値ΔPMCが所定操作速度KFADpmcより大きいと判定した場合(ST2:Yes)、前後加速度センサ13、マスタシリンダ圧センサ14の検出結果に基づいて、マスタシリンダ圧PMCが判定操作量Kpmcより大きくなってから車両1の減速度Gxが判定減速度KF1より大きくなるまでの時間が所定時間T2以上であるか否かを判定する(ST3)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST3:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0046】
ECU7は、マスタシリンダ圧PMCが判定操作量Kpmcより大きくなってから車両1の減速度Gxが判定減速度KF1より大きくなるまでの時間が所定時間T2以上であると判定した場合(ST3:Yes)、車輪速度センサ12、前後加速度センサ13の検出結果に基づいて、車輪加速度dvwFL及び車輪加速度dvwFRのうちの最大の値が所定加速度Kc1以下で、かつ、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以上である、あるいは、車輪加速度dvwRL及び車輪加速度dvwRRのうちの最大の値が所定加速度Kc2以下で、かつ、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以下であるか否かを判定する(ST4)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST4:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0047】
ECU7は、車輪加速度dvwFL及び車輪加速度dvwFRのうちの最大の値が所定加速度Kc1以下で、かつ、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以上であると判定した場合、あるいは、車輪加速度dvwRL及び車輪加速度dvwRRのうちの最大の値が所定加速度Kc2以下で、かつ、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以下であると判定した場合(ST4:Yes)、車輪速度センサ12、前後加速度センサ13の検出結果に基づいて、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以上で、かつ、車両1の前輪2FL、2FRのスリップ量slipFR及びスリップ量slipFLのうちの最大の値が所定スリップ量Kc3以下であるか否を判定する(ST5)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST5:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0048】
ECU7は、車両1の減速度Gxが所定減速度KD1以上で、かつ、車両1の前輪2FL、2FRのスリップ量slipFR及びスリップ量slipFLのうちの最大の値が所定スリップ量Kc3以下であると判定した場合(ST5:Yes)、車輪速度センサ12の検出結果に基づいて、車輪加速度dvwFL及び車輪加速度dvwFRのうちの最大の値が所定加速度Kc1以下になる前に車輪加速度dvwRL及び車輪加速度dvwRRのうちの最大の値が所定加速度Kc2以下となったか否かを判定する(ST6)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST6:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0049】
ECU7は、車輪加速度dvwFL及び車輪加速度dvwFRのうちの最大の値が所定加速度Kc1以下になる前に車輪加速度dvwRL及び車輪加速度dvwRRのうちの最大の値が所定加速度Kc2以下となったと判定した場合(ST6:Yes)、車輪速度センサ12の検出結果に基づいて、前輪2FLの車輪加速度dvwFL、あるいは、前輪2FRの車輪加速度dvwFRが判定加速度A1より大きくなってから判定加速度B1以下となるまでの時間が所定時間T1以上であるか否かを判定する(ST7)。ECU7は、この判定条件を満たさないと判定した場合(ST7:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0050】
ECU7は、前輪2FLの車輪加速度dvwFL、あるいは、前輪2FRの車輪加速度dvwFRが判定加速度A1より大きくなってから判定加速度B1以下となるまでの時間が所定時間T1以上であると判定した場合(ST7:Yes)、前輪2FL、2FRのブレーキ装置11のフェード状態が成立したと特定し(ST8)、このフェード状態に応じてABS制御量、例えば、ブレーキ圧の増減圧量を補正してABS制御を実行し(ST9)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0051】
ECU7は、上記のような判定を行うことで、図4に示すように、非フェード状態におけるLVW(Light vehicle Weight、軽積状態(無積載時))及びGVW(Gross Vehicle Weight、積載状態(最大積載時)と、フェード状態とを正確に切り分けることができる。すなわち、ECU7は、ST3の判定により、非フェード状態におけるLVWである可能性を排除することができ、ST4、ST5の判定により、非フェード状態におけるGVWである可能性を排除することができ、ST6、ST7の判定によりフェード状態であることを確定することができる。
【0052】
以上で説明した実施形態に係るECU7によれば、車両1の減速度と車両1の車輪2のスリップ量とに基づいて、車輪2を制動するブレーキ装置11のフェード状態を判定する。したがって、ECU7は、例えば、既設の制御に用いられるセンサの検出結果(マスタシリンダ圧、車体減速度、車輪速度)を用いて簡易にフェード判定の精度を向上することができ、適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができる。
【0053】
以上で説明した実施形態に係る制動装置6によれば、車両1の車輪2に生じる制動力を調節可能なブレーキ装置11と、制動力を制御して車輪2のスリップ状態を制御するECU7とを備え、ECU7は、車両1の減速度と車輪2のスリップ量とに基づいて、ブレーキ装置11のフェード状態を判定し、フェード状態に応じて制動力の増減量を調節する。したがって、制動装置6は、適正にブレーキ装置のフェード状態を判定することができ、このフェード状態に応じて適正なABS制御を行うことができ、これにより、フェード中のABS効率を向上することで車両1の停止距離を短縮化することができる。
【0054】
なお、上述した本発明の実施形態に係るフェード判定装置及び制動装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
以上の説明では、フェード判定装置、制動装置の制御装置は、車両の各部を制御するECUであるものとして説明したが、これに限らず、例えば、それぞれECUとは別個に構成され、このECUと相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行う構成であってもよい。
【0056】
また、以上の説明では、制動操作の操作量は、マスタシリンダ圧を用いるものとして説明したが、これに限らず、例えば、ブレーキペダル5のブレーキ踏み込み量(ペダルストローク)やペダル踏力等を用いてもよい。
【0057】
また、以上の説明では、複数の特徴変化を組み合わせて判定を行うことで精度よくフェード状態を判定するものとして説明したが、すべての判定条件を満たさなくてもよく、例えば、ST5の判定だけでフェード状態を判定してもよい。この場合であっても、フェード判定装置は、より簡易に適正にフェード状態を判定することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 車輪
2RR、2RL 後輪
2FR、2FL 前輪
3 アクセルペダル
4 駆動源
5 ブレーキペダル
6 制動装置
7 ECU(フェード判定装置、制御装置)
8 マスタシリンダ
9 油圧制御装置
10 ホイールシリンダ
11 ブレーキ装置
12 車輪速度センサ
13 前後加速度センサ
14 マスタシリンダ圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の減速度と前記車両の車輪のスリップ量とに基づいて、前記車輪を制動するブレーキ装置のフェード状態を判定することを特徴とする、
フェード判定装置。
【請求項2】
前記車両に対する制動操作の操作量が予め設定される所定操作量以上で、かつ、前記制動操作の操作速度が予め設定される所定操作速度より大きい場合に、前記フェード状態を判定する、
請求項1に記載のフェード判定装置。
【請求項3】
前記車両の減速度が予め設定される第1所定減速度であるときに、前記車両の前輪の前記スリップ量が予め設定される所定スリップ量以下である場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項1又は請求項2に記載のフェード判定装置。
【請求項4】
前記車両の前輪に当該前輪がロックする大きさの制動力が作用した際に発生する前記車両の減速度が予め設定される第2所定減速度以上である場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフェード判定装置。
【請求項5】
前記車両の後輪に当該後輪がロックする大きさの制動力が作用した際に発生する前記車両の減速度が予め設定される第3所定減速度以下である場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のフェード判定装置。
【請求項6】
前記車両の前輪に当該前輪がロックする大きさの制動力が作用する際に、すでに前記車両の後輪に当該後輪がロックする大きさの制動力が作用している場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のフェード判定装置。
【請求項7】
前記車両の前輪の車輪速度変化量が予め設定される所定変化量以下である場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のフェード判定装置。
【請求項8】
前記車両に対する制動操作の操作量が前記所定操作量以上の前記制動操作がなされてからABS制御が作動するまでの時間が予め設定される所定時間以上である場合に、前記フェード状態であると判定する、
請求項2に記載のフェード判定装置。
【請求項9】
車両の車輪に生じる制動力を調節可能なブレーキ装置と、
前記制動力を制御して前記車輪のスリップ状態を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記車両の減速度と前記車輪のスリップ量とに基づいて、前記ブレーキ装置のフェード状態を判定し、前記フェード状態に応じて前記制動力の増減量を調節することを特徴とする、
制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153201(P2012−153201A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12299(P2011−12299)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】