説明

フォトクロミック繊維

【課題】 顔料の不均一分布による着色時の色ムラを発生することがなく、充分な発色濃度を有する、あらゆる繊維製品に応用可能なフォトクロミック繊維の提供。
【解決手段】下記式(1)を満たす粒径のフォトクロミック顔料と、結合材とからなるフォトクロミック層を設けてなる。繊維は単繊維で形成された糸、繊維が単繊維を集合して形成された原綿糸又は原綿を用いて形成したパイル生地である。フォトクロミック顔料は、フォトクロミック化合物と、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーとをマイクロカプセルに内包してなる顔料、或いは、フォトクロミック化合物と前記スチレン系オリゴマーとを樹脂粒子中に分散してなる顔料。


〔r:フォトクロミック顔料の粒径(μm)、D:単繊維の繊度(dtex)、ρ:単繊維の比重(g/cm3 )〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトクロミック繊維に関する。更に詳細には、変色性能に優れたフォトクロミック繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線の照射により変色する、所謂フォトクロミック性能を有する繊維としては、繊維中にフォトクロミック化合物を練り込んだものや、カチオン性ポリマーで処理した繊維製品をフォトクロミック材料の分散液中に浸漬することで形成されるものが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平6−313210号公報
【特許文献2】特開平5−44180号公報
【0003】
しかしながら、前記フォトクロミック繊維のうち、繊維中にフォトクロミック化合物を練り込んだものは、合成繊維にしか適用できないと共に、フォトクロミック化合物が樹脂の中に存在するため充分な紫外線吸収能を発揮できず、繊維製品を形成した際には充分な発色濃度が得難かった。
また、繊維製品を分散液中に浸漬したものは、顔料が複数の単繊維に跨って橋架け状に結合してしまうため、顔料が不均一に分布して着色時に色ムラが発生するものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題を解決するものであって、顔料の不均一分布による着色時の色ムラを発生することがなく、充分な発色濃度を有する、あらゆる繊維製品に応用可能なフォトクロミック繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、単繊維の表面に、下記一般式(1)を満たす粒径のフォトクロミック顔料と、結合材とからなるフォトクロミック層を設けてなることを要件とする。
【数1】

〔r:フォトクロミック顔料の粒径(μm)、D:単繊維の繊度(dtex)、ρ:単繊維の比重(g/cm3 )〕
更に、前記フォトクロミック繊維が単繊維で形成された糸であること、前記フォトクロミック繊維が単繊維を集合して形成された原綿であること、前記糸又は原綿を用いて形成したパイル生地であることを要件とする。
更に、前記フォトクロミック顔料が、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物と、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーとをマイクロカプセルに内包してなる顔料、或いは、前記フォトクロミック化合物と前記スチレン系オリゴマーとを樹脂粒子中に分散してなる顔料であることを要件とする。
更に、前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーとの重量比が1:1〜1:10000であること、前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000であること、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなること、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなること、前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(2)で示される化合物であることを要件とする。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明により、顔料の不均一分布による着色時の色ムラが発生することなく、充分な発色濃度を有し、柔軟性や風合いを備え、擦過強度、洗濯性、加工性に優れた、各種繊維製品に応用可能なフォトクロミック繊維を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフォトクロミック繊維は、各単繊維にフォトクロミック層が設けられており、使用する単繊維の繊度に適した粒径のフォトクロミック顔料を用いるため、均一性、柔軟性、風合い、擦過性、洗濯性、加工性にきわめて優れた性能を有し、あらゆる形態の繊維製品への応用が可能なものである。
【0008】
本発明において、繊維が良好かつ均一なフォトクロミック効果(光変色効果)を奏するためには、適用する単繊維に対してフォトクロミック顔料の粒径rが、一般式(1)を満足することが必要である。前記フォトクロミック繊維は、構成する単繊維が1本1本独立しているため、繊維全体に対するフォトクロミック顔料の分布が均一となるので、繊維の風合いが良く、光変色時の色ムラが発生しないという特徴を有する。このためには、フォトクロミック顔料の粒径rが特定の範囲になくてはならない。
【0009】
従来のフォトクロミック顔料を被覆した繊維の色ムラは、顔料の不均一な分布により生じるものであり、この不均一な分布は、顔料が複数本の繊維に跨って橋架けを起こすことにより生じるものである。即ち、顔料の粒径と単繊維の太さによっては、顔料が複数本の単繊維を橋架け状に結合し、該結合部分に顔料が多く集まる傾向がある。このため、フォトクロミック顔料の分布が不均一になり色ムラを生じるのである。
フォトクロミック繊維の色ムラは、前記の橋架け現象に起因するため、単に顔料の粒径を規制するだけでは防止できず、単繊維の太さとの関係が重要な問題となる。このような問題を解決すべく研究した結果、顔料と単繊維の間で、一般式(1)の関係を満たせば、単繊維の断面形状に関係なく、前述の現象を防止でき、色ムラを防ぐことを見出したのである。
【0010】
また、各単繊維の表面に、フォトクロミック顔料と結合材とからなるフォトクロミック層が設けられているため、繊維全体においてフォトクロミック顔料の分布が均一になり色ムラを防止できると共に、繊維全体の風合い、柔軟性、顔料付着強度に優れたものとなる。
【0011】
前記フォトクロミック層は、単繊維に対して3重量%〜90重量%の付着量が適当であり、特に5重量%〜70重量%が光変色性の変色効果からみて好適である。
3重量%未満では風合いは良好であるが、濃度が低く色変化が明瞭でないため、繊維としての実用に欠けるものである。また、90重量%を超える付着量では、濃度が高く色変化は明瞭であるが、単繊維間の結着が起こりやすくなり、単繊維を1本1本独立した状態で存在させることが困難であるため、風合いが損なわれ、柔軟な感触が得られ難くなる。したがって、3重量%〜90重量%の範囲の付着量で、色変化の明瞭さと柔軟な風合いの両面を満足する実用範囲となる。更にその中でも、5重量%〜70重量%の範囲の付着量では、濃度、色変化の明瞭さが充分であり、且つ、単繊維間の結着が生じ難く、各単繊維が独立して存在するため、非常に柔軟な風合いを示し、顔料付着強度も充分なバランスの取れたより高品質のフォトクロミック繊維が得られ、優れた効果を奏するものとなる。
【0012】
前記フォトクロミック層を構成するフォトクロミック顔料としては、紫外線の照射により発消色するものであれば汎用のものが使用でき、例えば、スピロピラン系誘導体、フルギド系誘導体、ジヒドロピレン系誘導体、インジゴ系誘導体、アジリジン、多環芳香族系誘導体、アゾベンゼン系誘導体、サリチリデンアニリン系誘導体、キサンテン系誘導体、スピロオキサジン系誘導体、ジアリールエテン系誘導体、ナフトピラン系誘導体、ナフトオキサジン系誘導体等が例示できるが、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体が好適に用いられる。
【0013】
前記スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物は、スチレン系オリゴマーに溶解して用いられる。
前記スチレン系オリゴマーは重量平均分子量が200乃至6000、好ましくは200乃至4000のものが用いられる。
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200未満の場合、含有モノマーが多くなり、安定性に欠けるため耐光性向上効果を発現し難くなる。
また、重量平均分子量が6000を越えると、光照射により色残りが発生し、且つ、発色濃度が低くなり、変色感度は鈍くなる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定する。
【0014】
前記スチレン系オリゴマーとしては、低分子量ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、d−リモネン重合体等が挙げられる。低分子量ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB−75(重量平均分子量2000)、ハイマーST−95(重量平均分子量4000)等が用いられる。
スチレン−α−メチルスチレン系共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックA5(重量平均分子量317)、ピコラスチックA75(重量平均分子量917)等が用いられる。
α−メチルスチレン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:クリスタレックス3085(重量平均分子量664)、クリスタレックス3100(重量平均分子量1020)、クリスタレックス1120(重量平均分子量2420)等が用いられる。
α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコテックスLC(重量平均分子量950)、ピコテックス100(重量平均分子量1740)等が用いられる。
α−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトA115(重量平均分子量833)が用いられる。
β−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトS115(重量平均分子量1710)が用いられる。
d−リモネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトC115(重量平均分子量902)が用いられる。
前記スチレン系オリゴマーは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0015】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロオキサジン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
インドリノスピロベンゾオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5,7−ジフルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−ニトロジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−6′−クロロ−3,3−ジメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ブロモ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ヨード−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,6′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′,6′−ジフルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−フェニルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,7′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3−ジメチル−3−エチル−5′−メトキシスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチル−5−ニトロスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′,6′−ジメチルスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
9″−ブロモ−1′−メトキシカルボニルメチル−5′−トリフルオロメチルジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′〔1′H〕,3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−3,3−ジ−nブチル−7′−エチル−5−メトキシスピロ〔2H−インドール−1,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−n−ブチル−6′−ヨードジスピロ〔シクロヘプタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−9′−ヨード−1−ナフチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′−シアノ−1′−(2−(メトキシカルボニル)エチル)ジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7−メトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4−ブロモ−3,3−ジエチル−9′−エトキシ−1−(2−フェニル)エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エチル−9−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−ベンジル−6″−ヨードジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−トリクロロメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3−ジエチル−3−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メトキシカルボニルメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H)−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕等、インドリノスピロベンゾオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0016】
インドリノスピロナフトオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−ブロモ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5−テトラメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロピル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−iso−ブチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロポキシ−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−シアノ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−プロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−iso−ブチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクタデシル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−8′−スルホン酸ナトリウム−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−メトキシスピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−トリフルオロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1−(4′−メチルフェニル)−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(2,3−ジヒドロ−1−インドリノ)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、1−イソプロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フェノキシエチル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−8′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、1,3,3,5−テトラメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−5′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5′−メトキシ−6′−トリフルオロメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,5,6−テトラメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−メチル−3,3−ジフェニル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フルオロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン等、インドリノスピロナフトオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0017】
インドリノスピロフェナントロオキサジン系化合物の例としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンフェナントロオキサジン、1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンフェナントロオキサジン等、インドリノスピロフェナントロオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0018】
インドリノスピロキノリノオキサジン系化合物としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンキノリノオキサジン等、インドリノスピロキノリノオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0019】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロピラン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8′−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン等を例示することができる。
【0020】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーの重量比は、1:1〜1:10000であることが好ましく、より好ましくは1:5〜1:500である。
前記重量比を満たすことによって、耐光性向上効果に優れ、且つ、フォトクロミック化合物は十分な発色濃度を示すことができる。
【0021】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーとからなるフォトクロミック材料中には、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加することにより、耐光堅牢性及び発色濃度を阻害することなく発消色時の変色時間を調節することができる。
前記有機化合物としては、炭素数8以上の脂肪族一価アルコール、炭素数8以上の脂肪族二価アルコール、炭素数7以上の芳香族アルコール、炭素数7以上の脂肪族エステル、炭素数7以上の芳香族エステル、炭素数6以上の脂肪族カルボン酸、炭素数6以上の芳香族カルボン酸が挙げられる。
前記化合物として具体的には、n−オクチルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、n−ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクタデカン−2−オール、シクロドデカノール、ヘキサン−1,6−ジオール、コレステロール、p−クロロベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、エチレングリコール#4000、ポリエチレングリコール#6000、オレイルアルコール、ポリオール(水酸基を有するオリゴマー)、水酸基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルD−6011、同KR−1840〕等のアルコール類。
カプロン酸n−オクチル、カプロン酸ミリスチル、カプリル酸n−ヘプチル、カプリル酸n−ブチル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸n−ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸n−アミル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸n−ヘキシル、ステアリン酸n−オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、ベヘン酸n−ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸3−メチルブチル、ベヘン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸ネオペンチル、ステアリン酸イソブチル、ピバリン酸ステアリル、ベヘン酸ベンジル、パルミチン酸4−メチルベンジル、安息香酸セチル、安息香酸ステアリル、フェノキシ酢酸ステアリル、サリチル酸ミリスチル、2−ナフトエ酸ステアリル、p−メトキシ安息香酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシル、プロピオン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、オクタメチレンジカルボン酸ジミリスチル、オクタメチレンジカルボン酸ジブチル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジステアリル、セバシン酸ジミリスチル、テレフタル酸ジエチル、レブリン酸ステアリル、ステアリン酸テトラヒドロフルフリル、12−ヒドロキシステアリン酸n−ブチル、ブタン−1,2,3,4−テトラドデシルエステル、リンゴ酸ジラウリル、酒石酸ジ−n−オクチル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、エステル基を有するアクリル樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−100〕等のエステル類。カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2−エチル−ヘキサデカン酸、p−tert−ブチル安息香酸、ベンジル酸、p−アミノ安息香酸、1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、セバシン酸、カルボキシル基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−604、同KR−85〕等のカルボン酸類を例示できる。
【0022】
本発明のフォトクロミック材料には、ヒンダードアミン系光安定剤を添加して耐光性を更に向上させることもできる。
ヒンダードアミン系化合物としては下記一般式(2)で示される化合物が好適であるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
一般式(2)で示される化合物としては、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、
N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペレジニル)ピロリジン−2,5−ジオン等を例示することができる。
【0023】
前記フォトクロミック材料は、微小カプセルに内包させて可逆光変色性微小カプセル顔料を形成したり、熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散して可逆光変色性樹脂顔料を形成することで適用される。
なお、前記微小カプセル及び樹脂顔料は、平均粒子径0.2〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、の範囲で、適用する単繊維に応じた粒子径を選択できる。
前記微小カプセル及び樹脂顔料の平均粒子径が50μmを越えると、単繊維への付着時に均一分布され難くなり、一方、平均粒子径が0.2μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のエポキシ系、イソシアネート系等の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更に微小カプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0024】
前記フォトクロミック顔料は、フォトクロミック層中5重量%〜80重量%の範囲が適当であり、特に10重量%〜60重量%が光変色時の変色効果からみて好適である。
5重量%未満では、発色濃度が低く色変化を明瞭に視覚できず、一方、80重量%を越えると明瞭な消色状態を視覚させ難くなる。前記10重量%〜60重量%の範囲は発色濃度と色変化とのバランスが保持された最適の範囲である。
【0025】
フォトクロミック顔料と共にフォトクロミック層を構成する結合材は、前記フォトクロミック顔料を単繊維に結着させるバインダーであり、従来公知のワックス、低融点熱可塑性樹脂、ゴム、天然樹脂、合成樹脂等が用いられる。具体的には、低分子ポリエチレン、低融点ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ゴム、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、アクリル系エマルジョン、スチレン樹脂エマルジョン、ブタンジエン−ニトリルエマルジョン、セラック、カゼイン、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、珪素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル等が例示できる。
【0026】
更に、フォトクロミック層には、必要に応じて染料、顔料、熱変色性顔料等の各種着色剤、酸化防止剤、老化防止剤等を配合して多彩な変色効果を付与したり、光変色性機能を永続させることができる。
【0027】
前記単繊維は、諸種の材料、形態のものが有効であり、具体的には、天然繊維、半合成繊維、合成繊維、共重合繊維等のその他の化学繊維、無機質繊維、金属繊維等の材料が挙げられ、さらにその例として綿、羊毛、ヤギ毛、ラクダ毛、ウサギ毛、絹、天蚕糸、カゼイン繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、けん化アセテート、天然ゴム繊維、アルギン酸繊維、アセテート繊維、トライアセテート繊維、酢化ステープルファイバー、エチルセルロース繊維、塩化ゴム繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、プロミックス繊維、ベンゾエート繊維、ポリクラール繊維、ポリノジック繊維、アクリロニトリル−アルキルビニルピリジン共重合体、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合繊維、塩化ビニル共重合繊維、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体繊維、塩化ビニル−エチレン共重合繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバー、炭素繊維等が挙げられる。
また形態としては、通常の繊維形態の他に、三角形、五角形、八角形、Y形、L形、星形、ドックボーン形、馬蹄形、扁平等の異形断面繊維、マカロニ状、レンコン状、スポンジ状、田形状等の中空繊維、サイド−バイ−サイド型、シース−コア型、マトリックス型、等のコンジュゲード繊維等が挙げられる。異形断面繊維や中空繊維は表面積が大きくて顔料が付着しやすいので濃度が濃くできる特徴がある。
【0028】
フォトクロミック顔料を被覆加工した(フォトクロミック層を積層した)フォトクロミック繊維は、繊維の形態に応じて幾つかの方法で製造される。
まず、単繊維状のフォトクロミック繊維は、対象となる単繊維(必要に応じて捲縮加工がされていてもよい)をフォトクロミック顔料と結合材と、必要に応じて非変色性着色剤とを添加してなるコーティング組成物中に浸漬した後、乾燥処理する、或いは、スプレー等による吹き付けや直接塗装した後に乾燥処理する、或いは、前記乾燥処理後に必要に応じて捲縮加工することで得られる。
【0029】
次に、フォトクロミック原綿は、前記で得られたフォトクロミック繊維を適当な長さにカットすることによって得られる他、対象となる原綿を前記のコーティング組成物中に浸漬した後、遠心分離、ロール絞り、エアーガン等で余分な組成物を除去して乾燥処理する、或いは、ハケやロールコーターによる塗布、スプレー等による吹きつけ後に乾燥処理することで得ることもできる。
【0030】
更に、フォトクロミック糸は、前記フォトクロミック単繊維(捲縮加工されても、されていなくてもよい)をそのまま使用してフォトクロミック性フィラメントとするか、或いは、複数本を束ねて撚りをかけて撚糸としてフォトクロミック性フィラメント糸とするか、或いは、前記のフォトクロミック原綿をカードにかけてフォトクロミック性スライバーとした後、紡績工程を経てフォトクロミック性紡績糸とする方法で得られる。
【0031】
また、前記で得られたフォトクロミック原綿又はフォトクロミック糸を用いて、公知のパイル加工工程により、手触り、風合い等に優れたフォトクロミックパイル生地を得ることができる。その際、未処理(フォトクロミック層を形成していないもの)の原綿や糸を併用することも可能である。
【0032】
前記フォトクロミック顔料を用いたフォトクロミック繊維は、糸、原綿、織物生地、編物生地、パイル生地、不織布等に容易に加工することができ、それを基本素材として衣料用品、寝装用品、インテリア用品、玩具用品等、あらゆる繊維加工品に応用することができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0034】
実施例1
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕30部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をゼラチン/アラビアゴムによるコアセルベーション法を用いてカプセルに内包することで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0035】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約65%)150gを用いて、水性エポキシ樹脂24gと共に、水性ウレタン樹脂エマルジョン(固形分約41%)450g中に均一混合させることでコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、7.7dtexの白色ポリウレタン単繊維(ρ=1.21)500gを浸漬し、取り出した後、110℃で2分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす550gのフォトクロミック性ポリウレタン単繊維が得られた。
前記フォトクロミック性単繊維は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露するとピンクに変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)に暫く放置したところ、ピンク色が消色して白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0036】
実施例2
1,3,3−トリメチルインドリノ−スピロナフトオキサジン3部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕30部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料を酸クロリド/フェノールによる界面重合法を用いてカプセルに内包することで、粒子径4μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0037】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約60%)500gを用いて、酢酸ビニル−塩化ビニル三元共重合体エマルジョン(固形分約50%)450g中に均一混合させてコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、3.3dtexの白色ポリプロピレン単繊維(ρ=0.91)750gを浸漬し、取り出した後、100℃で5分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす875gのフォトクロミック性ポリプロピレン単繊維が得られた。
更に、得られたフォトクロミック性ポリプロピレン単繊維30本を束にして30回/mの撚りをかけて850gのフォトクロミック性ポリプロピレンフィラメント糸を得た。
前記フォトクロミック性糸は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露すると青色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)に暫く放置したところ、青色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0038】
実施例3
1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕30部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をエポキシ樹脂/アミン硬化剤と混合した後、15%ゼラチン水溶液中に均一分散して固化することで、粒子径4μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0039】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約63%)100gを用いて、アクリル−酢酸ビニル共重合エマルジョン(固形分約45%)700g中に均一混合させることでコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、5.5dtexの白色アクリロニトリル−塩化ビニル共重合扁平断面単繊維(ρ=1.25)800gを浸漬し、取り出した後、100℃で10分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす930gのフォトクロミック性アクリロニトリル−塩化ビニル共重合単繊維が得られた。
更に、得られたフォトクロミック性アクリロニトリル−塩化ビニル共重合単繊維を捲縮加工した後、127mmにカットしてフォトクロミック性アクリロニトリル−塩化ビニル共重合原綿を得た。
前記フォトクロミック性原綿は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露すると紫色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)に暫く放置したところ、紫色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0040】
実施例4
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン2部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ブチルマロネート〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名:チヌビン144〕2部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕20部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をゼラチン/アラビアゴムによるコアセルベーション法を用いてカプセルに内包することで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0041】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約59%)150gを用いて、水性エポキシ樹脂24gと共に、水性ウレタン樹脂エマルジョン(固形分約41%)450g中に均一混合させることでコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、捲縮加工された7.7dtexのポリウレタン単繊維(ρ=1.21)30本を束にして40回/mの撚りをかけて得られた白色ポリウレタンフィラメント糸500gを浸漬し、取り出した後、110℃で2分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たすフォトクロミック性ポリウレタンフィラメント糸550gを得た。
前記フォトクロミック性糸は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露するとピンク色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)に暫く放置したところ、ピンク色が消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0042】
実施例5
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3部を、α−メチルスチレン重合体〔荒川化学工業株式会社製、商品名:クリスタレックス5140、重量平均分子量3950〕30部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料33部を、エポキシ樹脂/アミン硬化剤と混合した後、15%ゼラチン水溶液中に均一分散して固化することで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0043】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約65%)100gを用いて、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分約45%)400gに均一混合させてコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に80mm〜130mmにバイアスカットされた7.7dtexの白色ポリアクリロニトリル原綿(ρ=1.17)500gを浸漬し、遠心分離機により余分なインキ組成物を排除した後、100℃で10分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たすフォトクロミック性ポリアクリロニトリル原綿650gを得た。
前記のフォトクロミック性原綿は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露するとピンク色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、ピンク色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0044】
実施例6
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン2部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ブチルマロネート〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名:チヌビン144〕2部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕20部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をゼラチン/アラビアゴムによるコアセルベーション法を用いてカプセルに内包させることで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0045】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約64%)150gを用いて、水性エポキシ樹脂24gと共に、水性ウレタン樹脂エマルジョン(固形分約41%)450g中に均一混合させることでコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、7.7dtexの白色ポリウレタン単繊維(ρ=1.21)500gを浸漬し、取り出した後、110℃で2分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす580gのフォトクロミック性ポリウレタン単繊維を得た。
【0046】
得られたフォトクロミック性ポリウレタン単繊維を捲縮加工後90mmにカットして550gのフォトクロミック性ポリウレタン原綿とした。
前記フォトクロミック性ポリウレタン原綿をカードによりスライバーに加工した後、製編してブラッシング工程、ポリッシャー工程を行うことでパイル長45mmのフォトクロミック性パイル生地を得た。
前記フォトクロミック性パイル生地は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露するとピンク色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、ピンク色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0047】
実施例7
1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン2部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート〔三共ライフテック製、商品名:サノール765〕4部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕40部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をポリイソシアネート/アミン硬化剤による界面重合法を用いてカプセルに内包することで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0048】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約60%)65gを用いて、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分約40%)100g中に均一混合させてコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、50mm〜80mmにバイアスカットされた5.5dtexの白色アクリロニトリル−塩化ビニル共重合原綿(ρ=1.25)200gを浸漬し、ロールで絞り余分なコーティング組成物を排除した後、100℃で10分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たすフォトクロミック性アクリロニトリル−塩化ビニル共重合原綿280gを得た。
【0049】
前記フォトクロミック性原綿と、未処理の5.5dtex相当の綿とを1:2の比率で混ぜ、カードにより均一に混合してスライバーにした後、ハイパイル編機で製編し、シャーリング加工をすることで、パイル長20mmのフォトクロミック性パイル生地を得た。
得られたフォトクロミック性パイル生地は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露すると紫色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、紫色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0050】
実施例8
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3部、テトラキスビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート〔旭電化製、商品名:アデカスタブLA−52〕3部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕30部中に均一に加温溶解してフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をゼラチン/アラビアゴムによるコアセルベーション法を用いてカプセルに内包することで、粒子径8μmのフォトクロミック性微小カプセルを得た。
【0051】
得られたフォトクロミック性微小カプセル(固形分約60%)150gを用いて、非変色性青色顔料20gと水性エポキシ樹脂24gと共に、水性ウレタン樹脂エマルジョン(固形分約41%)450g中に均一混合させることでコーティング組成物とし、該コーティング組成物中に、7.7dtexの白色ポリウレタン単繊維(ρ=1.21)500gを浸漬し、取り出した後、110℃で2分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす550gのフォトクロミック性ポリウレタン単繊維を得た。
前記フォトクロミック性単繊維は、太陽光に晒す前は水色であったが、太陽光に曝露すると紫色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、紫色は消えて水色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0052】
実施例9
1,3,3−トリメチルインドリノ−スピロナフトオキサジン2部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA5、重量平均分子量317〕20部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
前記フォトクロミック材料をポリプロピレン中へ均一混練した後、冷却し、微粉砕させることで、平均粒子径8μmのフォトクロミック性微小粒子を得た。
【0053】
得られたフォトクロミック性微小粒子300gを用いて、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分約50%)500g中に均一混合することでコーティング組成物とし、該コーティング組成物に、捲縮加工させた7.7dtexの白色ポリアクリルニトリルスポンジ状中空繊維(ρ=1.17)500gを浸漬し、取り出した後、100℃で10分間乾燥してフォトクロミック層を設けることで、一般式(1)を満たす700gのフォトクロミック性ポリアクリロニトリル単繊維を得た。
【0054】
更に、得られたフォトクロミック性ポリアクリロニトリル単繊維を100〜150mmにバイアスカットすることでフォトクロミック性ポリアクリロニトリル原綿を得た。
前記フォトクロミック性原綿は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露すると青色に変色した。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、青色は消えて白色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
【0055】
比較例1
フォトクロミック性微小カプセルの粒子径を0.1μmに調整する以外は実施例1と同様の方法を用いて、粒子径0.1μmのフォトクロミック性微小カプセルを含有するフォトクロミック層を備えるフォトクロミック性単繊維を得た。
得られたフォトクロミック性単繊維は、一般式(1)を満たしておらず、太陽光に晒す前は白色であり、太陽光に曝露してもほとんど変色することがなかった。
【0056】
比較例2
フォトクロミック性微小カプセルの粒子径を50μmに調整する以外は実施例6と同様の方法を用いて、粒子径50μmのフォトクロミック性微小カプセルを含有するフォトクロミック層を備えるフォトクロミック性原綿を得た。
得られたフォトクロミック性原綿は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露すると紫色に変色した。しかしながら、前記原綿は一般式(1)を満たしていないため、その外観を実施例6のフォトクロミック性原綿と比較すると、ピンク色が不均一に着色されており、著しい色ムラが生じていた。
更に、前記フォトクロミック性ポリウレタン原綿をカードでスライバーに加工した後、製編してブラッシング工程、ポリッシャー工程を行ったところ、擦過によりカプセル顔料が脱落してしまい、得られたパイル生地はフォトクロミック性を有していなかった。
【0057】
比較例3
1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3部をスチレンモノマー〔分子量104〕40部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。得られたフォトクロミック材料を用いて、実施例7と同様の方法によりフォトクロミック性パイル生地を得た。
得られたフォトクロミック性パイル生地は、太陽光に晒す前は白色で、太陽光に曝露すると紫色に変色したが、実施例7と比べて発色濃度は薄いものであった。その後、室内(紫外線が直接当たらない場所)で暫く放置したところ、紫色は消えて白色となった。しかしながら、前記の工程を数回繰り返すことによってフォトクロミック材料が劣化し、太陽光に曝露しても色変化が起こらなくなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維の表面に、下記一般式(1)を満たす粒径のフォトクロミック顔料と、結合材とからなるフォトクロミック層を設けてなるフォトクロミック繊維。
【数1】

〔r:フォトクロミック顔料の粒径(μm)、D:単繊維の繊度(dtex)、ρ:単繊維の比重(g/cm3 )〕
【請求項2】
前記フォトクロミック繊維が単繊維で形成された糸である請求項1記載のフォトクロミック繊維。
【請求項3】
前記フォトクロミック繊維が単繊維を集合して形成された原綿である請求項1記載のフォトクロミック繊維。
【請求項4】
前記糸又は原綿を用いて形成したパイル生地である請求項2又は3に記載のフォトクロミック繊維。
【請求項5】
前記フォトクロミック顔料が、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物と、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーとをマイクロカプセルに内包してなる顔料、或いは、前記フォトクロミック化合物と前記スチレン系オリゴマーとを樹脂粒子中に分散してなる顔料である請求項1乃至4のいずれかに記載のフォトクロミック繊維。
【請求項6】
前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーとの重量比が1:1〜1:10000である請求項5記載のフォトクロミック繊維。
【請求項7】
前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000である請求項5又は6記載のフォトクロミック繊維。
【請求項8】
水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなる請求項5乃至7のいずれかに記載のフォトクロミック繊維。
【請求項9】
ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなる請求項5乃至8いずれかに記載のフォトクロミック繊維。
【請求項10】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(2)で示される化合物である請求項9記載のフォトクロミック繊維。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)

【公開番号】特開2006−124868(P2006−124868A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314169(P2004−314169)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】