説明

フォトリソグラフィ用現像液

【課題】レジストパターンに対する膨潤作用が小さく、かつ、含まれる成分の析出が抑制されたフォトリソグラフィ用現像液を提供すること。
【解決手段】本発明は、(A)下記一般式(1)で表される塩基性化合物を含むフォトリソグラフィ用現像液である。
(下記一般式(1)中、R及びRは、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成し、R及びRは、分枝を有してもよいアルキル基、又は、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成する。また、上記一般式(1)中、R〜Rにそれぞれ含まれる炭素原子の数の和は、6〜13である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ用現像液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、フォトリソグラフィ技術の進歩により、急速にパターンの微細化が進んでいる。このような微細なパターンは、基板等の表面に作製されるレジストパターンの微細化によって達成される。レジストパターンは、基板等の表面に感光性化合物を含有するレジスト組成物からなるレジスト膜を形成し、当該レジスト膜に対して、所定のパターンが形成されたマスクパターンを介して、光、電子線等の活性エネルギー線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより作製される。このとき、上記レジスト膜のうち、上記マスクパターンに設けられた図形に対応する部分がレジストパターンとなる。そして、このレジストパターンをマスクとして、基板をエッチングにより加工する工程を経て、例えば、半導体素子が製造される。上記レジスト組成物のうち、露光された部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト組成物をポジ型、露光された部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト組成物をネガ型という。
【0003】
半導体素子製造プロセスの現像処理において、現像液としては、アルカリ性である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が常用されている。TMAHは、半導体素子に影響を与える金属イオンを含まないため、半導体素子の作製において好ましく使用されている。しかしながら、半導体素子の集積度が増大し、そのハーフピッチ(HP)サイズが49nm以下にもなると、現像時にTMAHがレジストパターンを膨潤させる膨潤現象が問題となる。TMAHによってレジストパターンが膨潤されると、そのレジストパターンの直進性が低下したり、現像後の洗浄処理においてレジストパターンの倒れを生じたりして、パターンの再現性が低下する要因になる。
【0004】
このようなことから、非特許文献1では、現像液として、TMAHの水溶液ではなく、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)の水溶液を使用することが提案されている。現像液としてTBAHの水溶液を使用することにより、現像時におけるレジストパターンの膨潤現象が緩和され、パターンの再現性が向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第70回応用物理学会学術講演会 講演予稿集No.2、635頁、EUVレジスト用新規現像液の検討、半導体先端テクノロジーズ、Juliusjoseph Santillan、井谷俊郎
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、TBAHは、従来現像液に使用されてきたTMAHに比べて、水に対する溶解性が小さい。本発明者による調査及び検討の結果、TBAHは、現像液の一例として使用される濃度である0.262N(6.79質量%)の水溶液である場合には、その析出温度がおよそ5℃になるので現像中に析出を起こすおそれが小さいが、30質量%付近の水溶液である場合には、その析出温度が最大となり27℃付近になる。このため、濃縮状態の現像液を輸送する場合や、濃縮状態の現像液を希釈する場合等において、現像液に含まれるTBAHが析出するおそれがある。また、現像液の一例として使用される濃度である0.262Nの水溶液であっても、冬季であれば、現像液に含まれるTBAHが輸送中に析出するおそれがある。現像液に析出したTBAHは、加温等を行わない限り、容易に再溶解しない。そのため、TBAHの析出した現像液をそのまま現像工程に使用することはできず、フィルター操作等の手間が必要になる。また、析出したTBAHをフィルターで取り除くと、現像液に含まれるTBAHの濃度が変化するため、現像液の濃度管理が煩雑になるという問題もある。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、第一には、レジストパターンに対する膨潤作用が小さく、かつ、含まれる成分の析出が抑制されたフォトリソグラフィ用現像液を提供することを目的とする。また、本発明は、第二には、レジストパターンに対する膨潤作用が小さく、かつ、濃縮状態において、含まれる成分の析出が抑制されたフォトリソグラフィ用現像液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、現像液に塩基性の液性を付与する塩基性化合物として、分子内に環状構造を有する塩基性化合物を使用することによって、レジストパターンの膨潤の抑制と、現像液に含まれる成分の析出の抑制とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第一の態様は、(A)下記一般式(1)で表される塩基性化合物を含むフォトリソグラフィ用現像液である。
【0010】
【化1】

(上記一般式(1)中、R及びRは、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成し、R及びRは、分枝を有してもよいアルキル基、又は、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成する。また、上記一般式(1)中、R〜Rにそれぞれ含まれる炭素原子の数の和は、6〜13である。)
【0011】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様のフォトリソグラフィ用現像液を用いたレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第一には、レジストパターンに対する膨潤作用が小さく、かつ、含まれる成分の析出が抑制されたフォトリソグラフィ用現像液が提供される。また、本発明によれば、第二には、レジストパターンに対する膨潤作用が小さく、かつ、濃縮状態において、含まれる成分の析出が抑制されたフォトリソグラフィ用現像液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフォトリソグラフィ用現像液について説明する。本発明のフォトリソグラフィ用の現像液は、感光性化合物を含有するレジスト組成物の膜を紫外線や電子線等の活性エネルギー線により選択露光した後に、当該レジスト膜からアルカリ可溶性部分を溶解除去する現像処理で使用される。このような処理を経ることにより、レジスト膜は、所定のパターン形状を有するレジストパターンとなる。なお、本発明の現像液は、レジストパターンの膨潤が問題となる、ハーフピッチ(HP)サイズが49nm以下の微細な半導体素子形成のための超微細レジストパターンの形成において好ましく使用されるものだが、それ以上のハーフピッチサイズを有する半導体素子形成のために使用されてもよいし、半導体素子以外、例えば、液晶表示装置用のカラーフィルタ形成のために使用されてもよい。
【0014】
本発明の現像液は、(A)上記一般式(1)で表される塩基性化合物を含み、好ましくは、(B)水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)や(C)溶解補助成分を含む。以下、これらの成分について説明する。
【0015】
[(A)塩基性化合物]
本発明の現像液で(A)成分として使用される塩基性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であり、露光処理後のレジスト膜を現像するのに必要となるアルカリ性の液性を現像液に付与する。レジスト膜は、未露光状態でアルカリ不溶性であるポジ型レジストであれば、露光部分がアルカリ可溶性に変化し、未露光状態でアルカリ可溶性であるネガ型レジストであれば、露光部分がアルカリ不溶性に変化する。そのため、露光後にアルカリ性の現像液で処理をすることにより、アルカリ不溶性の箇所がレジストパターンとして残ることになる。このような処理に必要とされるアルカリ性の液性を現像液に付与するために、(A)成分が現像液に添加される。
【0016】
既に述べたように、現像液にアルカリ性の液性を付与するために、一般には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が使用されるが、TMAHには、レジストパターンを僅かに膨潤させる性質がある。TMAHによるレジストパターンの膨潤作用は、ハーフピッチサイズが50nm以上のパターンを作製する場合には、殆ど問題にならなかったが、ハーフピッチサイズが50nm未満のパターンを作製する場合には、レジストパターンの直進性の低下やパターン倒れの問題を引き起こす場合がある。このため、本発明では、現像液にアルカリ性の液性を付与するための化合物として、TMAHよりもレジストパターンに対する膨潤性の小さい上記(A)成分を使用する。(A)成分は、レジストパターンを膨潤させる作用がTMAHよりも小さいので、これを含む本発明の現像液を使用することによって、現像液によるレジストパターンの膨潤が抑制される。
【0017】
また、これも既に述べたように、現像液によるレジストパターンの膨潤を抑制するために、上記非特許文献1では、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)を現像液における塩基性化合物として使用することが提案されている。しかしながら、TBAHは、これまで塩基性化合物として使用されてきたTMAHよりも水溶性が乏しい。このため、TBAHが使用された現像液では、冬季の輸送や濃縮状態において、TBAHの析出を生じるおそれがあった。この点、本発明の現像液は、TBAHよりも水溶性の大きい上記(A)成分を塩基性化合物として使用するので、輸送時や濃縮状態における成分の析出が抑制される。
【0018】
以上の理由から、塩基性化合物として(A)成分を使用する本発明の現像液では、レジストパターンに対する膨潤の抑制と、現像液に含まれる成分の析出の抑制とが両立される。そして、本発明の現像液では、濃縮状態においても、現像液に含まれる成分の析出が抑制される。
【0019】
【化2】

【0020】
上記一般式(1)中、R及びRは、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成し、R及びRは、分枝を有してもよいアルキル基、又は、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成する。また、上記一般式(1)中、R〜Rにそれぞれ含まれる炭素原子の数の和は、6〜13である。上記一般式(1)中、R及びRが脂肪環構造を形成することにより、レジストパターンの膨潤が抑制される。ここで、R及びRが互いに結合して形成される脂肪環構造は、上記一般式(1)に示すように、R及びRがともに結合する窒素原子を含むので、既にヘテロ原子を含む脂肪環構造であるが、当該脂肪環構造には、この窒素原子以外にも、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれてもよい。すなわち、R及び/又はRには、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれてもよい。このことは、R及びRが互いに結合して脂肪環構造を形成する場合でも同様であり、R及び/又はRには、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が含まれてもよい。また、R〜Rに含まれる炭素原子の数の和が上記範囲であることにより、(A)成分は、現像液における溶解性とレジストパターンの膨潤の抑制とのバランスが良好となる。
【0021】
本発明は、(A)成分として上記脂肪環構造を有する塩基性化合物を使用することにより、レジストパターンに対する膨潤の抑制と現像液に含まれる成分の析出の抑制とを図ることができるとの知見により完成されたものである。そのため、(A)成分として使用される塩基性化合物には、その分子中に少なくとも1つの上記脂肪環構造が含まれる。また、レジストパターンに対する膨潤の抑制という観点からは、(A)成分として使用される塩基性化合物には、その分子中に2つの上記脂肪環構造が含まれることが好ましい。このように、分子中に2つの上記脂肪環構造が含まれる場合、(A)成分である塩基性化合物は、上記一般式(1)において、R及びR並びにR及びRの二組がそれぞれ環構造を形成し、スピロ化合物となる。
【0022】
上記一般式(1)において、R及びRが互いに結合して形成されるヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造は、5員環又は6員環であることが好ましい。また、上記一般式(1)において、R及びRが分枝を有してもよいアルキル基の場合、R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。さらに、R及びRが互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成する場合、当該脂肪環構造は、5員環又は6員環であることが好ましい。なお、既に述べたように、上記脂肪環構造に含まれてもよいヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0023】
このような(A)成分として、水酸化N,N−ジメチルピロリジニウム、水酸化N,N−ジエチルピロリジニウム、水酸化N,N−ジプロピルピロリジニウム、水酸化N,N−ジブチルピロリジニウム、水酸化N−メチル−N−エチルピロリジニウム、水酸化N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、水酸化N−メチル−N−ブチルピロリジニウム、水酸化N−エチル−N−プロピルピロリジニウム、水酸化N−エチル−N−ブチルピロリジニウム、水酸化N−プロピル−N−ブチルピロリジニウム、水酸化N,N−ジメチルピペリジニウム、水酸化N,N−ジエチルピペリジニウム、水酸化N,N−ジプロピルピペリジニウム、水酸化N,N−ジブチルピペリジニウム、水酸化N−メチル−N−エチルピペリジニウム、水酸化N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、水酸化N−メチル−N−ブチルピペリジニウム、水酸化N−エチル−N−プロピルピペリジニウム、水酸化N−エチル−N−ブチルピペリジニウム、水酸化N−プロピル−N−ブチルピペリジニウム、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム、水酸化ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム、水酸化N,N−ジメチルモルホリニウム、水酸化N,N−ジエチルモルホリニウム、水酸化N,N−ジプロピルモルホリニウム、水酸化N,N−ジブチルモルホリニウム、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロブチルヒドロキシド、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロペンチルヒドロキシド、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロヘキシルヒドロキシド等が例示される。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
これらの中でも、レジストパターンの膨潤抑制という観点からは、(A)成分として、スピロ化合物が好ましく使用され、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム、水酸化ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムがより好ましく使用される。
【0025】
現像液における(A)成分の含有量は、現像液に要求される塩基性の程度を考慮して適宜決定すればよい。一例として、現像液における(A)成分の含有量としては、0.026〜1.310Nが好ましく挙げられ、0.052〜0.524Nがより好ましく挙げられ、0.131〜0.393Nが特に好ましく挙げられる。現像液における(A)成分の含有量が0.026N以上であることにより、現像液に良好な現像性を付与することができ、現像液における(A)成分の含有量が1.310N以下であることにより、(A)成分が過剰に添加されることによる経済性の低下を抑制することができる。本発明の現像液が半導体素子の製造プロセス用として使用される場合、現像液における(A)成分の含有量は、0.262Nであることが最も好ましい。なお、本発明の現像液に下記(B)成分が含まれる場合は、現像液における(A)成分と(B)成分との合計含有量が上記濃度となることが好ましい。また、本明細書における「N」という単位は、規定度を示す。(A)成分は、一酸塩基であるので、1Nの(A)成分の水溶液は、1mol/Lの(A)成分の水溶液となる。
【0026】
本発明の現像液は、輸送時や保管時に濃縮状態としておき、現像液としての使用時に溶剤で上記の濃度に希釈してもよい。このような濃縮状態の現像液も、本発明の現像液に含まれる。濃縮状態における(A)成分の含有量は、特に限定されず、現像液として使用される際の(A)成分の含有量を考慮して適宜決定すればよいが、一例として、0.386〜2.31Nが好ましく挙げられ、0.772〜1.93Nがより好ましく挙げられる。
【0027】
[(B)水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)]
本発明の現像液には、(B)成分として水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)が含まれることが好ましい。(B)成分は、上記(A)成分よりも一分子中に含まれる炭素原子の数が多く、レジストパターンに対する膨潤作用が上記(A)成分よりも小さい。このため、本発明の現像液に塩基性の液性を付与する成分として(A)成分と(B)成分とを併用することにより、現像液に含まれる(A)成分の量を少なくすることができ、現像液によるレジストパターンに対する膨潤作用をより一層小さくすることができる。
【0028】
現像液における(B)成分の含有量は、0.001〜1.091Nであることが好ましい。現像液における(B)成分の含有量が0.001N以上であることにより、レジストパターンの膨潤を十分に抑制することができる程度まで現像液中の(A)成分の量を減少させることができる。また、現像液における(B)成分の含有量が1.091N以下であることにより、現像液における(B)成分の析出を抑制することができる。現像液における(B)成分の含有量は、上記の範囲内で、(A)成分の5倍の規定度以下であることがより好ましく、(A)成分の1倍の規定度以下であることが最も好ましい。ここで、(B)成分は、一酸塩基である。したがって、1Nの(B)成分の水溶液は、1mol/Lの(B)成分の水溶液となる。なお、上記(B)成分の濃度は、実際に使用される現像液における濃度を指すものであり、濃縮状態における現像液の濃度を指すものではない。
【0029】
[(C)溶解補助成分]
本発明の現像液には、(C)成分として、溶解補助成分が添加されることが好ましい。(C)成分は、(C1)水溶性有機溶剤、(C2)界面活性剤及び(C3)包接化合物からなる群より選択される少なくとも1つの成分である。言い換えると、(C)成分は、(C1)水溶性有機溶剤、(C2)界面活性剤及び(C3)包接化合物からなる群より選択される1以上の成分である。(C)成分が現像液に添加されることにより、現像液に含まれる(A)成分及び(B)成分の溶解性が大きくなり、現像液におけるこれら成分の析出温度を下げることができる。現像液に含まれる成分の析出温度が下がることにより、現像液に含まれる成分の析出が抑制され、現像液の安定性が向上する。特に、現像液が濃縮状態の場合には、低温環境において、現像液に含まれる成分が析出し易い状態となるので、(C)成分の添加によって、現像液に含まれる成分の析出温度が低くなることは好ましい。以下、(C)成分として添加される各成分について説明する。
【0030】
[(C1)水溶性有機溶剤]
現像液に(C)成分として水溶性有機溶剤((C1)成分)が添加されることにより、現像液における(A)成分及び(B)成分の溶解性を高くすることができ、現像液に含まれる成分の析出を抑制することができる。このような効果は、特に、現像液が濃縮状態である場合に顕著となる。
【0031】
(C1)成分としては、フォトレジスト膜に与えるダメージの少ないものであれば特に限定されず、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール等のアルコール類等が例示される。これらの中でも、現像時のレジストパターンの溶解や膨潤を抑制しつつ、TBAHの溶解性を十分に向上するという観点からは、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール等のアルコール類が好ましく例示される。上記(C1)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
現像液中における(C1)成分の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。(C1)成分の含有量が1質量%以上であることにより、現像液における(A)成分の析出が効果的に抑制される。この効果は、現像液が濃縮状態であるときに顕著である。また、(C1)成分の含有量が10質量%以下であることにより、(C1)成分によるレジストパターンに対する溶解や膨潤等といった影響を低減させることができる。現像液中における(C1)成分の含有量は、3〜7質量%であることがより好ましい。なお、ここでいう(C1)成分の含有量とは、実際に現像処理に使用される現像液における濃度を指すものであり、濃縮状態における現像液の濃度を指すものではない。
【0033】
[(C2)界面活性剤]
現像液に(C)成分として界面活性剤((C2)成分)が添加されることにより、現像液における(A)成分及び(B)成分の溶解性を高くすることができ、現像液に含まれる成分の析出を抑制することができる。このような効果は、特に、現像液が濃縮状態である場合に顕著となる。また、現像液に(C2)成分が添加されると、現像液の濡れ性が向上し、現像残りやスカム等が抑制される効果が得られる。
【0034】
(C2)成分としては、特に限定されるものではなく、従来公知の界面活性剤を用いることができる。具体的には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。
【0035】
アニオン系界面活性剤としては特に限定されるものではなく、アニオン性基を有する従来公知の界面活性剤を用いることができる。そのようなアニオン系界面活性剤としては、例えば、アニオン性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、又はリン酸基を有する界面活性剤を挙げることができる。
【0036】
具体的には、炭素数8〜20のアルキル基を有する高級脂肪酸、高級アルキル硫酸エステル、高級アルキルスルホン酸、高級アルキルアリールスルホン酸、スルホン酸基を有するその他の界面活性剤、若しくは高級アルコールリン酸エステル、又はそれらの塩等を挙げることができる。ここで、上記アニオン系界面活性剤の有するアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよく、分枝鎖中にフェニレン基又は酸素原子等が介在してもよいし、アルキル基が有する水素原子の一部が水酸基やカルボキシル基で置換されてもよい。
【0037】
上記の高級脂肪酸の具体例としては、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等を挙げることができ、高級アルキル硫酸エステルの具体例としては、デシル硫酸エステル、ドデシル硫酸エステル等を挙げることができる。また、上記高級アルキルスルホン酸の例としては、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ステアリン酸スルホン酸等を挙げることができる。
【0038】
また、高級アルキルアリールスルホン酸の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸等を挙げることができる。
【0039】
さらに、スルホン酸基を有するその他の界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ジオクチルスルホサクシネート等のジアルキルスルホサクシネート等を挙げることができる。
【0040】
高級アルコールリン酸エステルの例としては、例えば、パルミチルリン酸エステル、ヒマシ油アルキルリン酸エステル、ヤシ油アルキルリン酸エステル等を挙げることができる。
【0041】
以上のアニオン性界面活性剤の中でも、スルホン酸基を有する界面活性剤を用いることが好ましく、具体的には、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、オレフィンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。これらの中でも、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ジアルキルスルホサクシネートを用いることが好ましい。アルキルスルホン酸のアルキル基の平均炭素数は9〜21であることが好ましく、12〜18であることがより好ましい。また、アルキルベンゼンスルホン酸のアルキル基の平均炭素数は、6〜18であることが好ましく、9〜15であることがより好ましい。アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルキル基の平均炭素数は、6〜18であることが好ましく、9〜15であることがより好ましい。さらに、ジアルキルスルホサクシネートのアルキル基の平均炭素数は、4〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。
【0042】
以上のアニオン性界面活性剤の中でも、平均炭素数15のアルキル基を有するアルキルスルホン酸、及び平均炭素数12のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
【0043】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレン系ノニオン界面活性剤等が例示される。ノニオン系界面活性剤としては水溶性を有するものが望ましい。HLB7〜17の範囲が良い。HLBが小さく水溶性が足りない場合は他の活性剤と混ぜる等して水溶性を持たせても良い。
【0044】
なお、現像液には、(C2)成分として、各種界面活性剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0045】
現像液中における(C2)成分の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましい。(C2)成分の含有量が0.01質量%以上であることにより、現像液に含まれる成分の析出が効果的に抑制される。この効果は、現像液が濃縮状態であるときに顕著である。また、(C2)成分の含有量が10質量%以下であることにより、(C2)成分によるレジストパターンに対する溶解や膨潤等といった影響を低減させることができる。現像液中における(C2)成分の含有量は、0.02〜1質量%であることがより好ましく、0.03〜0.5質量%であることが最も好ましい。なお、ここでいう(C2)成分の含有量とは、実際に現像処理に使用される現像液における濃度を指すものであり、濃縮状態における現像液の濃度を指すものではない。
【0046】
[(C3)包接化合物]
現像液に(C)成分として包接化合物((C3)成分)が添加されることにより、現像液における(A)成分及び(B)成分の溶解性を高くすることができ、現像液に含まれる成分の析出を抑制することができる。このような効果は、特に、現像液が濃縮状態である場合に顕著となる。
【0047】
(C3)成分としては、特に限定されるものではなく、従来公知の水溶性の包接化合物を用いることができる。包接化合物となる化合物は、疎水性等の化合物を包接して水溶液に溶解させる。このため、(C3)成分は、従来現像液に使用されてきたTMAHよりも疎水性の高い(A)成分及び(B)成分を包接し、(A)成分及び(B)成分の現像液への溶解性を大きくする。このような作用により、現像液に含まれる成分の析出が抑制される。
【0048】
このような包接化合物としては、環状オリゴ糖が例示され、それらの中でもシクロデキストリンが好ましく例示される。シクロデキストリンは、その構造が台形状(バケツ状)に歪んだ円筒形状をしており、この円筒形の内部にゲスト化合物((A)成分及び(B)成分)を取り込んで包接化合物を形成する。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、及びδ−シクロデキストリンが挙げられる。これらのシクロデキストリンは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、包接化合物としてクラウンエーテルを使用してもよい。
【0049】
[その他の成分]
本発明の現像液には、その他の成分として溶剤成分が添加されてもよい。本発明の現像液に使用される溶剤成分としては、水が挙げられる。金属塩等の不純物が現像液に含まれることにより、作製される半導体素子の歩留まりが低下することを防止するとの観点からは、溶剤成分として使用される水は、イオン交換水や蒸留水のように高度に精製された精製水であることが好ましい。
【0050】
本発明の現像液において、ハロゲンの含有量は、10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。ハロゲンとしては、臭素及び塩素が例示される。ハロゲンの含有量が上記範囲であることにより、製造される半導体素子の歩留まりを向上させることができる。また、本発明の現像液において、金属イオンの含有量は、100ppb以下であることが好ましく、10ppb以下であることがより好ましい、金属イオンの含有量が上記範囲であることにより、製造される半導体素子の歩留まりを向上させることができる。さらに、本発明の現像液において、炭酸イオンの含有量は、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。炭酸イオンの含有量が上記範囲であることにより、現像性を良好に維持することができる。
【0051】
[現像液の調製方法]
本発明の現像液は、上記の各成分を混合することにより調製される。上記の各成分を混合する方法は、特に限定されない。なお、本発明の現像液は、現像液として所定の濃度に調製された状態で輸送し、それをフォトリソグラフィ加工における現像工程で使用してもよいし、濃縮状態に調製されたものを輸送し、それをフォトリソグラフィ加工における現像工程において、精製水等の溶剤成分で希釈して使用してもよい。後者の場合、輸送時に、現像液が濃縮状態となるので、現像液に含まれる成分の析出が生じ易い状態となる。そのため、本発明の現像液における析出抑制効果がより発揮される。
【0052】
本発明のフォトリソグラフィ用現像液によれば、選択露光されたレジスト膜を現像する際に、レジストパターンが膨潤することを抑制できる。レジストパターンの膨潤による弊害は、半導体素子の作製を例にとると、ハーフピッチサイズが50nm未満である場合に、特に顕著に発現する。このため、本発明の現像液は、フォトリソグラフィ加工によって、ハーフピッチサイズが50nm未満である半導体素子を製造する際に好ましく使用される。より具体的には、本発明の現像液は、ハーフピッチサイズが49nm以下の半導体素子の製造用として好ましく使用される。
【0053】
上記本発明のフォトリソグラフィ用現像液を使用したレジストパターン形成方法も本発明の一つである。次に、本発明のフォトリソグラフィ用現像液を用いたレジストパターン形成方法について説明する。
【0054】
本発明のフォトリソグラフィ用現像液を用いたレジストパターン形成方法は、上記本発明の現像液を使用して現像を行う点を除いて、公知のレジストパターン形成方法を特に限定されずに使用することができる。このような方法の一例としては、シリコンウェーハ等の基材の表面に、ネガ型又はポジ型のフォトレジスト組成物を塗布し、所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して、光、電子線等の活性エネルギー線にて選択的露光を行ない、次いで現像処理を施す方法が挙げられる。
【0055】
シリコンウェーハ等の基材の表面にフォトレジスト組成物を塗布するにあたり、フォトレジスト組成物としては、公知のものを特に限定されずに使用することができる。このようなフォトレジスト組成物は、市販されており、容易に入手することができる。また、フォトレジスト組成物を基材の表面に塗布する際は、公知の塗布方法を特に限定されずに使用することができる。このような塗布方法としては、スピンコータを使用した方法が例示される。
【0056】
現像処理を施すには、選択的露光が施されたフォトレジスト組成物を上記本発明の現像液に曝露させればよい。このような処理の一例として、フォトレジスト組成物が塗布された基板ごと現像液に浸漬させる方法や、基板の表面に存在するフォトレジスト組成物に現像液を吹き付ける方法が挙げられる。このような処理により、選択的露光後のフォトレジスト組成物におけるアルカリ可溶成分が除去され、レジストパターンが形成される。
【0057】
本発明の現像液は、塩基性化合物としてTMAHのみが使用されたこれまでの現像液に比べて、レジストパターンを膨潤させる作用が小さい。このため、本発明のレジストパターン形成方法によれば、ハーフピッチサイズが49nm以下の微細なパターンを形成させる場合であっても、パターン倒れ等といったレジストパターンの膨潤に伴う問題の発生を抑制することができる。さらに、本発明の現像液は、塩基性化合物としてTBAHが使用されたこれまでの現像液に比べて、現像液に含まれる成分の析出が抑制される。このため、本発明のレジストパターンの形成方法によれば、現像液の管理が容易となり、作業コストを低減させることが可能となる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明のフォトリソグラフィ用現像液について、実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
[現像液の調製]
塩基性化合物として水酸化スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム(SBPrH)、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム(SBPpH)、水酸化ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム(PSPH)、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロペンチルヒドロキシド(MSACPH)、水酸化N,N−ジメチルピロリジニウム(DMPrH)、水酸化N−メチル−N−ブチルピペリジニウム(MBPpH)を表1に示す濃度でそれぞれ純水に溶解し、実施例1〜9の現像液を調製した。なお、実施例9の現像液については、水溶性有機溶剤としてイソプロパノール(IPA)を表1に示す濃度で添加した。また、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)のみを表1に示す濃度で純水に溶解し、比較例1の現像液を調製した。また、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のみを表1に示す濃度で純水に溶解し、比較例2の現像液を調製した。表1に示すSBPrH、SBPpH、PSPH、MSACPH、DMPrH、MBPpH、TBAH、TMAH及び塩基の合計添加量の各数値は、規定度(N)であり、IPAの添加量は、質量%である。なお、通常、半導体素子の製造プロセスにおける現像液としては、TMAHの0.262N水溶液が使用され、これは、比較例2の現像液と同じものである。
【0060】
[レジストパターンの膨潤評価]
膨潤の観察にはQCM(Quartz Crystal Microbalance)測定を用いて評価した。1インチのQuartz crystal基板にARFレジスト TArF−TAI−6144 ME(東京応化工業株式会社製)をスピンコータで塗布し、100℃、1minでPABし、厚さ136nmのレジスト膜を作成した。上記基板をVUVES−4500(リソテックジャパン製)を用い、波長193nm、露光量3mJ/cmで露光し、100℃、1minでPEBを行った。
PEBを行った基板をQCM測定器 RDA−Qz3(リソテックジャパン製)を用いて、各種現像液の膨潤量を評価した。
膨潤の程度はQCM測定で得られるインピーダンスの値が飽和するまでの時間で判断した。インピーダンスの値が飽和するまでの時間が長いほど、膨潤量が多く、短いほど膨潤量が少ない。
評価の基準は下記のとおりであり、評価結果を表1に示す。
◎ リファレンスであるTMAH 0.262N水溶液で現像したときの、インピーダンスが飽和するまでの時間の1/2以下の時間で飽和され、レジストの膨潤はTMAHより極めて小さい
○ リファレンスであるTMAH 0.262N水溶液で現像したときの、インピーダンスが飽和するまでの時間よりも短い時間で飽和され、レジストの膨潤はTMAHより小さい
× リファレンスであるTMAH 0.262N水溶液で現像したときの、インピーダンスが飽和するまでの時間よりも同じか長い時間で飽和され、レジストの膨潤はTMAHと同等か大きい
【0061】
[析出評価]
TBAHの水溶液は、1.158N(30質量%)付近の濃度で最も析出が起こり易い。そこで、実施例1〜9及び比較例1〜2の各現像液について、塩基の合計濃度(塩基性化合物及び補助塩基性化合物の濃度の和)を1.158Nになるように濃縮して濃縮現像液を調製し、その後徐々に冷却し、現像液の成分が析出する温度を測定した。すなわち、実施例1では、SBPrH1.158Nを含む水溶液で成分の析出を評価したことになる。同様に、実施例2では、SBPpH1.158N、実施例3では、PSPH1.158N、実施例4では、MSACPH1.158N、実施例5では、DMPrH1.158N、実施例6では、MBPpH1.158N、実施例7では、PSPH0.579N及びTBAH0.579N、実施例8では、DMPrH0.579N及びTBAH0.579N、実施例9では、PSPH0.579N、TBAH0.579N及びIPA22.1質量%、比較例1では、TBAH1.158N、比較例2では、TMAH1.158Nでそれぞれ評価を行った。析出温度の測定結果を表1に示す。また、各実施例及び比較例について下記の基準で評価を行った。その結果も表1に併せて示す。
○ 析出温度が23℃未満である
× 析出温度が23℃以上である
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示すように、実施例1〜9の現像液と比較例1及び2の現像液とを比較すれば、本発明の現像液では、濃縮状態における現像液成分の析出が抑制され、かつレジストパターンに対する膨潤も抑制されることが理解される。また、実施例1〜6を参照すると、塩基性化合物として(A)成分のみを添加し、(B)成分(TBAH)を添加しない場合には、(A)成分として、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム(SBPrH)、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム(SBPpH)又は水酸化ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム(PSPH)といったスピロ化合物を使用すると、レジストパターンに対する膨潤がさらに抑制され、良好であることが理解される。また、実施例5の現像液と実施例8の現像液とを比較すると、塩基性化合物として(A)成分と(B)成分とを併用することにより、レジストパターンに対する膨潤が抑制されることが理解される。さらに、実施例7の現像液と実施例9の現像液とを比較すると、溶解補助成分として水溶性有機溶剤を添加することによって、TBAHの析出温度が低くなり、TBAHの析出がより抑制されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される塩基性化合物を含むフォトリソグラフィ用現像液。
【化1】

(上記一般式(1)中、R及びRは、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成し、R及びRは、分枝を有してもよいアルキル基、又は、互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい脂肪環構造を形成する。また、上記一般式(1)中、R〜Rにそれぞれ含まれる炭素原子の数の和は、6〜13である。)
【請求項2】
前記塩基性化合物がスピロ化合物である請求項1記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項3】
前記スピロ化合物が水酸化スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、水酸化スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム及び水酸化ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムからなる群より選択される少なくとも1つである請求項2記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項4】
さらに、(B)水酸化テトラブチルアンモニウムを含む請求項1から3のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項5】
さらに、(C1)水溶性有機溶剤、(C2)界面活性剤及び(C3)包接化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1から4のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項6】
前記(C1)成分を含み、当該(C1)成分の含有量が1質量%〜10質量%である請求項5記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項7】
前記(C1)成分を含み、当該(C1)成分がイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールからなる群より選択される少なくとも1つである請求項5又は6記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項8】
前記(C2)成分を含み、当該(C2)成分の含有量が0.01質量%〜10質量%である請求項5から7のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項9】
前記(C3)成分を含み、当該(C3)成分がシクロデキストリン、クラウンエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである請求項5から8のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項10】
ハーフピッチサイズが49nm以下であるである半導体素子の製造用として使用される請求項1から9のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項11】
ハロゲンの含有量が10ppm以下であり、金属イオンの含有量が100ppb以下であり、かつ炭酸イオンの含有量が1質量%以下である請求項1から10のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載のフォトリソグラフィ用現像液を用いたレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−145557(P2011−145557A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7413(P2010−7413)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】