説明

フォトレジスト用現像液及び現像処理装置

【課題】基板上のレジスト膜を高精度で現像し、当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させる。
【解決手段】現像処理装置30の現像液ノズル133には、当該現像液ノズル133に現像液を供給する現像液供給ブロック136が接続されている。現像液供給ブロック136は、内部に現像原液を貯留する現像原液供給源150と、内部に有機溶剤を貯留する有機溶剤供給源160と、現像原液と有機溶剤を混合して現像液を生成する現像液供給源170とを有している。有機溶剤には、現像原液に可溶であり、且つ現像原液と中和反応しないものが用いられる。現像液は、現像原液に対する有機溶剤の濃度が5質量%以下になるように、現像原液と有機溶剤が混合されて生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上のレジスト膜を現像するフォトレジスト用現像液、及び当該フォトレジスト用現像液を用いた現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、当該レジスト膜に所定のパターンを露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。
【0003】
上述したレジストパターンを形成する際には、半導体デバイスのさらなる高集積化を図るため、当該レジストパターンの微細化が求められている。また、このように微細なレジストパターンを高い寸法精度で形成するため、上述した現像処理においてレジスト膜をより高い精度で現像することが要求されている。
【0004】
そこで、例えば現像液を用いてレジスト膜を現像した後、第四級アンモニウムヒドロキシド水溶液及び該水溶液と相溶性の有機溶剤との混合物で後処理することが提案されている(特許文献1)。かかる場合、後処理において、現像処理後のレジストパターン端部とウェハとの境界部に付着したレジスト残渣を除去して、レジストパターンの寸法精度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−38161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現像処理では、レジストパターンの外側が現像液によって膨潤し、膨潤層が形成される。そして、膨潤量が所定量になった時に、当該膨潤層が溶解してレジスト膜が現像される。
【0007】
しかしながら、所望のレジストパターンの寸法が微細であるため、膨潤層が形成されてから溶解するまでの間に、現像液がレジスト膜の内部に進入する場合があった。かかる場合、特許文献1の方法を用いると、現像処理において現像液がレジスト膜内に進入した状態で混合物によって後処理が行われる。そうすると、後処理において、レジスト膜がさらに溶解する場合があり、レジストパターンの形状が所望の形状にならない場合があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板上のレジスト膜を高精度で現像し、当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板上のレジスト膜を現像するフォトレジスト用現像液であって、前記レジスト膜の現像原液に可溶であり、且つ前記現像原液と中和反応しない有機溶剤を有することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、フォトレジスト用現像液(以下、単に「現像液」という場合がある)が基板上のレジスト膜に供給されると、レジストパターンが形成される部分のレジスト膜の外側が現像液によって膨潤して膨潤層が形成される。そして、この膨潤層の外側が現像液内の有機溶剤によって溶解する。したがって、膨潤層の厚みが薄い状態を維持して、レジスト膜の現像が進行する。換言すれば、従来は膨潤量が所定量にならないと膨潤層を溶解させることができなかったが、本発明によれば、この従来溶解させることができなかった膨潤層を溶解させることができる。そして、このように従来よりも膨潤層の厚みが薄くできるので、従来よりもレジスト膜を速く溶解させて、当該レジスト膜の現像速度を速くすることができる。すなわち、レジスト膜の感度を向上させることができる。そうすると、従来のようにレジスト膜の内部に現像液が進入することがない。したがって、レジスト膜を高精度で現像することができ、当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。
【0011】
前記レジスト膜は、EUV用レジスト膜であってもよい。なお、EUV用レジストとは、例えば波長が13nm〜14nmの極紫外線であるEUV(Extreme Ultra Violet)を用いた露光処理を行う、いわゆるEUVリソグラフィーで用いられるレジストをいう。
【0012】
ここで、近年、レジストパターンの微細化要求に応えて、露光処理に使用される露光光源には、従来用いられていたKrFレーザ(波長248nm)、ArFレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)よりさらに短波長の上記EUVを出力する光源を用いることが検討されている。
【0013】
しかしながら、EUV用レジストは感度が低く、現像液による溶解速度が遅い。しかも、EUVリソグラフィーを行って形成されるレジストパターンの線幅は例えば20nmと極めて微細である。このため、EUV用レジスト膜を現像する場合、膨潤層が形成されてから溶解するまでの間に、現像液がEUV用レジスト膜内に進入し易くなり、レジストパターンを所望の形状に形成し難い。
【0014】
そこで、EUV用レジストに酸発生剤(PAG;Photo Acid Generator)を添加して、当該EUV用レジストの感度を向上させることが考えられる。しかしながら、現状ではEUV用レジスト内の酸発生剤の添加量はほぼ限界であり、これ以上のEUV用レジストの感度向上は望めない。
【0015】
また、露光処理におけるEUV光源の露光量を増加させて、現像速度を速くすることも考えられる。しかしながら、EUVリソグラフィーで用いられているEUV光源の露光量は従来の露光光源の露光量と比較すると著しく低く、現状ではEUV光源の露光量を増加させることは技術的に困難である。
【0016】
この点、本発明によれば、上述したようにEUV用レジスト膜の膨潤層の厚みを薄くして、EUV用レジスト膜の現像速度を速くできるので、EUV用レジスト膜の内部に現像液が進入することがない。したがって、EUV用レジスト膜を高精度で現像することができ、当該EUV用レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。
【0017】
前記現像原液に対する前記有機溶剤の濃度は、前記レジスト膜の現像速度と、現像後にレジスト膜に形成されるレジストパターンの断面形状とに基づいて設定してもよい。かかる場合、前記現像原液に対する前記有機溶剤の濃度は、5質量%以下であってもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、前記フォトレジスト用現像液を用いて基板上のレジスト膜を現像処理する現像処理装置であって、基板上に前記フォトレジスト用現像液を供給する現像液ノズルと、内部に前記現像原液を貯留する現像原液供給源と、内部に前記有機溶剤を貯留する有機溶剤供給源と、前記現像原液供給源から供給された前記現像原液と前記有機溶剤供給源から供給された前記有機溶剤とを混合して前記フォトレジスト用現像液を生成し、当該フォトレジスト用現像液を前記現像液ノズルに供給するための現像液供給源と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上のレジスト膜を高精度で現像し、当該レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態にかかる現像処理装置を備えた塗布現像処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかる塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】本実施の形態にかかる塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】現像処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図5】現像処理装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図6】現像液供給ブロックの構成の概略を示す説明図である。
【図7】本実施の形態の現像液によって、EUV用レジスト膜にレジストパターンが形成される様子を示す説明図である。
【図8】従来の現像液によって、EUV用レジスト膜にレジストパターンが形成される様子を示す説明図である。
【図9】レジストパターンの線幅と露光量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる現像処理装置を備えた塗布現像処理システム1の構成の概略を示す平面図である。図2は、塗布現像処理システム1の正面図であり、図3は、塗布現像処理システム1の背面図である。なお、本実施の形態において、塗布現像処理システム1では、EUVを用いた露光処理を行う、いわゆるEUVリソグラフィー処理が行われる。
【0022】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部から塗布現像処理システム1に対して搬入出したり、カセットCに対してウェハWを搬入出したりするカセットステーション2と、フォトリソグラフィー工程の中で枚葉式に所定の処理を施す複数の各種処理装置を多段に配置している処理ステーション3と、この処理ステーション3に隣接して設けられている露光装置4との間でウェハWの受け渡しをするインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。なお、露光装置4は、EUV(波長13nm〜14nm)を出力する光源(図示せず)を有している。
【0023】
カセットステーション2には、カセット載置台6が設けられ、当該カセット載置台6は、複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。カセットステーション2には、搬送路7上をX方向に向かって移動可能なウェハ搬送体8が設けられている。ウェハ搬送体8は、カセットCに収容されたウェハWのウェハ配列方向(Z方向;鉛直方向)にも移動自在であり、X方向に配列された各カセットC内のウェハWに対して選択的にアクセスできる。
【0024】
ウェハ搬送体8は、Z軸周りのθ方向に回転可能であり、後述する処理ステーション3側の第3の処理装置群G3に属する温度調節装置60やウェハWの受け渡しを行うためのトランジション装置61に対してもアクセスできる。
【0025】
カセットステーション2に隣接する処理ステーション3は、複数の処理装置が多段に配置された、例えば5つの処理装置群G1〜G5を備えている。処理ステーション3のX方向負方向(図1中の下方向)側には、カセットステーション2側から第1の処理装置群G1、第2の処理装置群G2が順に配置されている。処理ステーション3のX方向正方向(図1中の上方向)側には、カセットステーション2側から第3の処理装置群G3、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5が順に配置されている。第3の処理装置群G3と第4の処理装置群G4の間には、第1の搬送装置A1が設けられており、第1の搬送装置A1の内部には、ウェハWを支持して搬送する第1の搬送アーム10が設けられている。第1の搬送アーム10は、第1の処理装置群G1、第3の処理装置群G3及び第4の処理装置群G4内の各処理装置に選択的にアクセスしてウェハWを搬送できる。第4の処理装置群G4と第5の処理装置群G5の間には、第2の搬送装置A2が設けられており、第2の搬送装置A2の内部には、ウェハWを支持して搬送する第2の搬送アーム11が設けられている。第2の搬送アーム11は、第2の処理装置群G2、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5内の各処理装置に選択的にアクセスしてウェハWを搬送できる。
【0026】
図2に示すように第1の処理装置群G1には、ウェハWに所定の液体を供給して処理を行う液処理装置、例えばウェハWにEUV用のレジスト液を塗布するレジスト塗布装置20、21、22、露光処理時の光の反射を防止する反射防止膜を形成するボトムコーティング装置23、24が下から順に5段に重ねられている。第2の処理装置群G2には、液処理装置、例えばウェハWにフォトレジスト用現像液(以下、単に「現像液」という場合がある)を供給して現像処理する現像処理装置30〜34が下から順に5段に重ねられている。また、第1の処理装置群G1及び第2の処理装置群G2の最下段には、各処理装置群G1、G2内の液処理装置に各種処理液を供給するためのケミカル室40、41がそれぞれ設けられている。
【0027】
図3に示すように第3の処理装置群G3には、温度調節装置60、トランジション装置61、精度の高い温度管理下でウェハWを温度調節する高精度温度調節装置62、63及びウェハWを高温で加熱処理する高温度熱処理装置64〜67が下から順に8段に重ねられている。
【0028】
第4の処理装置群G4には、レジスト塗布処理後のウェハWを加熱処理するプリベーキング装置70〜73及び現像処理後のウェハWを加熱処理するポストベーキング装置74〜77が下から順に8段に重ねられている。
【0029】
第5の処理装置群G5には、ウェハWを熱処理する複数の熱処理装置、例えば高精度温度調節装置80〜82、ポストエクスポージャーベーキング装置83〜87が下から順に8段に重ねられている。
【0030】
図1に示すように第1の搬送装置A1のX方向正方向側には、複数の処理装置が配置されており、図3に示すようにウェハWを疎水化処理するための疎水化処理装置90、91、ウェハWを加熱する加熱装置92、93が下から順に4段に重ねられている。図1に示すように第2の搬送装置A2のX方向正方向側には、例えばウェハWのエッジ部のみを選択的に露光する周辺露光装置94が配置されている。
【0031】
インターフェイスステーション5には、図1に示すようにX方向に向けて延伸する搬送路100上を移動するウェハ搬送体101と、バッファカセット102が設けられている。ウェハ搬送体101は、Z方向に移動可能でかつθ方向にも回転可能であり、インターフェイスステーション5に隣接した露光装置4と、バッファカセット102及び第5の処理装置群G5に対してアクセスしてウェハWを搬送できる。
【0032】
次に、上述した現像処理装置30〜34の構成について説明する。現像処理装置30は、図4に示すように側面にウェハWの搬入出口(図示せず)が形成された処理容器110を有している。
【0033】
処理容器110内の中央部には、ウェハWを保持して回転させるスピンチャック120が設けられている。スピンチャック120は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック120上に吸着保持できる。
【0034】
スピンチャック120は、例えばモータなどを備えたチャック駆動部121を有し、そのチャック駆動部121により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部121には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック120は昇降自在になっている。
【0035】
スピンチャック120の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ122が設けられている。カップ122は、上面にスピンチャック120が昇降できるようにウェハWよりも大きい開口部が形成されている。カップ122の下面には、回収した液体を排出する排出管123と、カップ122内の雰囲気を排気する排気管124が接続されている。
【0036】
図5に示すようにカップ122のX方向負方向(図5の下方向)側には、Y方向(図5の左右方向)に沿って延伸するレール130が形成されている。レール130は、例えばカップ122のY方向負方向(図5の左方向)側の外方からY方向正方向(図5の右方向)側の外方まで形成されている。レール130には、例えば二本のアーム131、132が取り付けられている。
【0037】
第1のアーム131には、図4及び図5に示すように現像液を供給する現像液ノズル133が支持されている。第1のアーム131は、図5に示すノズル駆動部134により、レール130上を移動自在である。これにより、現像液ノズル133は、カップ122のY方向正方向側の外方に設置された待機部135からカップ122内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム131は、ノズル駆動部134によって昇降自在であり、現像液ノズル133の高さを調整できる。
【0038】
現像液ノズル133には、図4に示すように、現像液供給ブロック136に連通する現像液供給管137が接続されている。なお、この現像液供給ブロック136の詳細な構成については後述する。
【0039】
第2のアーム132には、洗浄液、例えば純水を供給する洗浄液ノズル140が支持されている。第2のアーム132は、図5に示すノズル駆動部141によってレール130上を移動自在であり、洗浄液ノズル140を、カップ122のY方向負方向側の外方に設けられた待機部142からカップ122内のウェハWの中心部上方まで移動させることができる。また、ノズル駆動部141によって、第2のアーム132は昇降自在であり、洗浄液ノズル140の高さを調節できる。なお、本実施の形態では、ウェハWの洗浄処理を行う洗浄液として純水を用いたが、他の洗浄液を用いてもよい。
【0040】
洗浄液ノズル140には、図4に示すように洗浄液供給源143に連通する洗浄液供給管144が接続されている。洗浄液供給源143内には、洗浄液が貯留されている。洗浄液供給管144には、洗浄液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群145が設けられている。なお、以上の構成では、現像液を供給する現像液ノズル133と洗浄液を供給する洗浄液ノズル140が別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、現像液ノズル133と洗浄液ノズル140の移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0041】
次に、上述した現像液供給ブロック136の構成について説明する。現像液供給ブロック136は、図6に示すように内部に現像原液を貯留する現像原液供給源150を有している。現像原液としては、例えばアルカリ性のTMAH現像原液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像原液)やTBAH現像原液(テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド現像原液)等が用いられる。
【0042】
現像原液供給源150の上部には、当該現像原液供給源150内に空気、例えば不活性ガスを供給するための空気供給管151が接続されている。空気供給管151は、内部に空気を貯留する空気供給源152に連通している。また、空気供給管151には、空気の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群153が設けられている。そして、空気供給源152から現像原液供給源150内に空気が供給され、現像原液供給源150内の圧力が所定の圧力に維持されると共に、現像原液供給源150内の現像原液が後述する現像原液供給管154に供給されるようになっている。
【0043】
また、現像原液供給源150の上部には、後述する現像液供給源170に現像原液を供給するための現像原液供給管154が接続されている。現像原液供給管154には、現像原液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群155が設けられている。
【0044】
また、現像液供給ブロック136は、内部に有機溶剤を貯留する有機溶剤供給源160を有している。有機溶剤としては、例えば現像原液に可溶であり、且つ現像原液と中和反応しない有機溶剤が用いられる。具体的には、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、γブチロラクトン(GBL)、Nメチルピロリジノン(NMP)、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン等が用いられる。また、当該有機溶剤には、乳酸エチル(EL)のようなエステル化合物を用いることはできない。
【0045】
有機溶剤供給源160の上部には、当該有機溶剤供給源160内に空気、例えば不活性ガスを供給するための空気供給管161が接続されている。空気供給管161は、内部に空気を貯留する空気供給源162に連通している。また、空気供給管161には、空気の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群163が設けられている。そして、空気供給源162から有機溶剤供給源160内に空気が供給され、有機溶剤供給源160内の圧力が所定の圧力に維持されると共に、有機溶剤供給源160内の有機溶剤が後述する有機溶剤供給管164に供給されるようになっている。
【0046】
また、有機溶剤供給源160の上部には、後述する現像液供給源170に有機溶剤を供給するための有機溶剤供給管164が接続されている。有機溶剤供給管164には、有機溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群165が設けられている。
【0047】
さらに、現像液供給ブロック136は、内部で現像原液を生成する現像液供給源170を有している。現像液供給源170には、上述した現像原液供給源150に連通する現像原液供給管154と、有機溶剤供給源160に連通する有機溶剤供給管164とが接続されている。そして、現像液供給源170に対して、現像原液供給源150から現像原液が供給されると共に、有機溶剤供給源160から有機溶剤が供給される。その後、現像液供給源170内で現像原液と有機溶剤が混合され、現像液が生成される。すなわち、現像液供給源170はミキサーとして機能する。また、現像液供給源170には、上述した現像液ノズル133に連通する現像液供給管137が接続されている。そして、現像液供給源170から現像液ノズル133に現像液が供給される。
【0048】
なお、現像処理装置31〜34の構成は、上述した現像処理装置30の構成と同様であるので説明を省略する。
【0049】
以上の塗布現像処理システム1には、図1に示すように制御部200が設けられている。制御部200は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、現像処理装置30〜34におけるウェハWの現像処理を実行するプログラムが格納されている。またこれに加えて、プログラム格納部には、カセットステーション2、処理ステーション3、露光装置4、インターフェイスステーション5間のウェハWの搬送や、処理ステーション3における駆動系の動作などを制御して、塗布現像処理システム1におけるウェハ処理を実行するプログラムが格納されている。なお、このプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0050】
本実施の形態にかかる塗布現像処理システム1は以上のように構成されている。次に、その塗布現像処理システム1で行われるウェハ処理について説明する。
【0051】
先ず、未処理のウェハWが複数枚収容されたカセットCがカセット載置台6上に載置されると、カセットC内のウェハWがウェハ搬送体8によって一枚ずつ取り出され、第3の処理装置群G3の温度調節装置60に搬送される。温度調節装置60に搬送されたウェハWは、所定温度に温度調節される。その後ウェハWは、第1の搬送装置A1によってボトムコーティング装置23に搬送され、ウェハW上に反射防止膜が形成される。反射防止膜が形成されたウェハWは、第1の搬送装置A1によって加熱装置92、高精度温度調節装置62、疎水化処理装置90に順次搬送され、各装置で所定の処理が施される。その後ウェハWは、第1の搬送装置A1によってレジスト塗布装置20に搬送される。レジスト塗布装置20では、ウェハW上にEUV用のレジスト液が塗布され、当該ウェハW上にEUV用レジスト膜が形成される。
【0052】
EUV用レジスト膜が形成されたウェハWは、第1の搬送装置A1によってプリベーキング装置70に搬送され、プリベーク処理が施される。続いて第2の搬送装置A2によって周辺露光装置94、高精度温度調節装置82に順次搬送されて、各装置において所定の処理が施される。その後ウェハWは、インターフェイスステーション5のウェハ搬送体101によって露光装置4に搬送される。露光装置4では、ウェハW上のEUV用レジスト膜にEUVが照射され、当該EUV用レジスト膜に所定のパターンが選択的に露光される。
【0053】
露光処理の終了したウェハWは、ウェハ搬送体101によってポストエクスポージャーベーキング装置83に搬送され、露光後ベーク処理が施される。その後ウェハWは、第2の搬送装置A2によって高精度温度調節装置81に搬送されて温度調節される。
【0054】
その後ウェハWは、第2の搬送装置A2によって現像処理装置30に搬送される。現像処理装置30では、ウェハW上のEUV用レジスト膜に現像液が供給され、当該EUV用レジスト膜が現像される。なお、この現像処理装置30におけるウェハWの現像処理については後述する。
【0055】
現像処理装置30においてウェハW上のEUV用レジスト膜が現像されると、ウェハWは、第2の搬送装置A2によってポストベーキング装置74に搬送され、ポストベーク処理が施された後、第1の搬送装置A1によって高精度温度調節装置63に搬送され温度調節される。そしてウェハWは、第1の搬送装置A1によってトランジション装置61に搬送され、ウェハ搬送体8によってカセットCに戻されて一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0056】
次に、上述した現像処理装置30においてウェハWのEUV用レジスト膜を現像する一連の現像処理について説明する。
【0057】
現像処理装置30に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック120に吸着保持される。続いて第1のアーム131により待機部135の現像液ノズル133がウェハWの外周部上方まで移動する。
【0058】
次に、チャック駆動部121を制御してスピンチャック120によりウェハWを所定の回転数で回転させる。続いて現像液供給ブロック136から現像液ノズル133に現像液が供給され、さらに当該現像液ノズル133からウェハWの外周部に現像液がされる。
【0059】
このとき、現像液供給ブロック136では、供給機器群155によって調節された所定量の現像原液が現像原液供給源150から現像液供給源170に供給される。また、供給機器群165によって調節された所定量の有機溶剤が有機溶剤供給源160から現像液供給源170に供給される。有機溶剤は、現像原液に対する濃度が例えば5質量%以下になるように供給される。そして、現像液供給源170において、これら現像原液と有機溶剤が混合され、現像液が生成される。生成された現像液は、現像液供給源170から現像液ノズル133に供給される。
【0060】
その後、現像液ノズル133は、ウェハWの中心部に移動しながら、ウェハW上のEUV用レジスト膜に現像液を供給する。そうすると、現像液ノズル133から供給された帯状の現像液は、螺旋状にウェハW上に供給されることになる。そして、現像液はウェハW上を均一に拡散し、ウェハWの全面が現像液に覆われる。これにより、ウェハW上のEUV用レジスト膜が現像され、EUV用レジスト膜の露光部分が溶解して、ウェハW上にレジストパターンが形成される。
【0061】
ここで、EUV用レジスト膜の現像について、図7に基づいて詳しく説明する。図7中、右下がり斜線部分は、ウェハW上のEUV用レジスト膜において、現像液によって膨潤していない領域であるレジスト層Rを示している。また右上がり斜線部分は、EUV用レジスト膜において、現像液によって膨潤した領域である膨潤層Sを示している。また点線部分は、最終的に形成される所望のレジストパターンPを示している。
【0062】
EUV用レジスト膜上に現像液が供給されると、図7に示すようにEUV用レジスト膜の外側が現像液によって膨潤して膨潤層Sが形成される。このとき、従来のように現像液が現像原液のみから構成され、本実施の形態のように有機溶剤が混合されていない場合、図8に示すように膨潤層Sの厚みは厚くなる。すなわち、従来は現像液による膨潤量が所定量にならないと、膨潤層Sを溶解させることができなかった。このため、膨潤層Sが形成されてから溶解するまでの間に、現像液がEUV用レジスト膜のレジスト層Rの内部に進入してしまい、レジストパターンの形状が所望の形状にならない場合があった。これに対して、本実施の形態の現像液を用いた場合、現像液中の有機溶剤がこの膨潤層Sの外側を溶解するので、図7に示すように膨潤層Sの厚みが薄くなる。すなわち、本実施の形態では、膨潤層Sの厚みが薄い状態を維持して、EUV用レジスト膜の現像が進行する。したがって、従来よりもEUV用レジスト膜を速く溶解させて、当該EUV用レジスト膜の現像速度を速くすることができる。すなわち、EUV用レジスト膜の感度を向上させることができる。そうすると、従来のようにレジスト層R内に現像液が進入することがない。したがって、EUV用レジスト膜を高精度で現像することができ、当該EUV用レジスト膜に所望のレジストパターンPを形成することができる。
【0063】
なお、このようにEUV用レジスト膜に所望のレジストパターンPを形成するため、上述したように現像原液に対する有機溶剤の濃度を5質量%以下とした。有機溶剤の濃度は、EUV用レジスト膜の現像速度と、現像後にEUV用レジスト膜に形成されるレジストパターンの断面形状に基づいて設定される。すなわち、有機溶剤の濃度は、有機溶剤が膨潤層Sの外側を適切な速度で溶解して、EUV用レジスト膜の現像速度を適切に維持し、現像液がレジスト層R内に進入しないように設定される。また、有機溶剤の濃度は、有機溶剤によってレジストパターンの形状が崩れず、適切な断面形状、例えば矩形の断面形状を維持するように設定される。そして、発明者らが調べたところ、このような条件を満たす有機溶剤の濃度は5質量%以下が適切であることが分かった。
【0064】
また、このようにEUV用レジスト膜に所望のレジストパターンPを形成するため、上述したように有機溶剤として、現像原液に可溶であり、且つ現像原液と中和反応しない有機溶剤が用いられる。例えば現像原液に不溶な有機溶剤を用いた場合、この有機溶剤が直接EUV用レジストを全て溶解させてしまい、レジストパターン自体を形成することができない。したがって、現像原液に可溶な有機溶剤を用いることが必要となる。また、現像原液と中和反応する有機溶剤、例えば現像原液と鹸化反応する上述した乳酸エチル(EL)のようなエステル化合物を用いた場合、当該乳酸エチルは現像原液のアルカリによって加水分解され、乳酸とエタノールに分解される。この乳酸はアルカリを中和させるため、アルカリ性の現像液の現像能力が低減し、EUV用レジスト膜の現像速度が低下する。このようにEUV用レジスト膜の感度を向上させることができないため、所望のレジストパターンPを形成することができない。したがって、現像原液と中和反応しない有機溶剤を用いることが必要となる。
【0065】
さらに、現像原液としては、上述したようにTMAH現像原液やTBAH現像原液等が用いられるが、TBAH現像原液がより好ましい。TBAHの分子サイズはTMAHの分子サイズよりも大きいため、TBAH現像原液を用いた方が膨潤層Sの厚みを薄くできる。また、TBAHの分子サイズが大きいため、TBAH現像原液はレジスト層Rの内部に入り難い。したがって、EUV用レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度をさらに向上させることができる。
【0066】
以上のようにウェハW上のEUV用レジスト膜が現像されると、第1のアーム131により現像液ノズル133がウェハWの中心部上方から待機部135に移動する。同時に、第2のアーム132により待機部142の洗浄液ノズル140がウェハWの中心部上方まで移動する。その後、ウェハWを回転させると共に、洗浄液ノズル140から洗浄液がウェハWの中心部に供給され、ウェハWの洗浄処理が行われる。
【0067】
かかるウェハWの洗浄処理を行う際には、膨潤層Sの厚みが薄いため、従来の厚い膨潤層Sに比べて残存する現像液が少量となっている。このため、洗浄処理にかかる時間を従来よりも短縮することができる。発明者らが調べたところ、例えば膨潤層Sの厚みが従来の膨潤層Sの厚みの1/2である場合、洗浄処理にかかる時間を従来の約1/4に短縮できることが分かった。
【0068】
ウェハWの洗浄処理後、洗浄液ノズル140からの洗浄液の供給を停止すると共に、ウェハWを加速回転させて、ウェハW上の洗浄液を乾燥させて除去する。こうして一連のウェハWの現像処理が終了する。
【0069】
以上の実施の形態によれば、ウェハWの現像処理に用いられる現像液は、現像原液に可溶であり、且つ現像原液と中和反応しない有機溶剤を有している。この有機溶剤は膨潤層Sの外側を溶解し、膨潤層Sの厚みを薄くできる。すなわち、膨潤層Sの厚みが薄い状態を維持して、EUV用レジスト膜の現像を進行させることができる。このため、EUV用レジスト膜の現像速度を従来よりも速くすることができ、EUV用レジスト膜の感度を向上させることができる。そうすると、従来のようにレジスト層Rの内部に現像液が進入することがない。したがって、EUV用レジスト膜を高精度で現像することができ、当該EUV用レジスト膜レジスト膜に形成されるレジストパターンの寸法精度を向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態では、現像原液に対する有機溶剤の濃度はEUV用レジスト膜の現像速度と、現像後にEUV用レジスト膜に形成されるレジストパターンの断面形状に基づいて設定され、例えば5質量%以下である。かかる場合、有機溶剤が膨潤層Sの外側を適切な速度で溶解して、EUV用レジスト膜の現像速度を適切に維持し、現像液がレジスト層Rに進入するのを防止することができる。また、有機溶剤によってレジストパターンの形状が崩れず、適切な断面形状、例えば矩形の断面形状を維持することができる。したがって、EUV用レジスト膜レジスト膜に所望のレジストパターンを形成することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態の現像液を用いてウェハWの現像処理を行った場合、EUV用レジスト膜の感度を向上させることができる。その結果、現像処理の前に行われる露光処理において、そのEUV光源の露光量を低減することができる。したがって、露光時間を短縮させて、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。例えばEUV用レジスト膜の感度を約10%向上させると、露光量を約10%低減して露光時間を約10%短縮することができる。そうすると、ウェハ処理のスループットも約10%向上させることができる。
【0072】
ここで、発明者らは、上述した露光量を低減できる効果について検証を行った。本検証では、KrFレーザを出力する露光光源を用いてレジスト膜を露光し、当該レジスト膜を3種類の現像液を用いて現像した。具体的な現像液としては、2.38質量%のTMAH現像原液のみの従来の現像液(以下、「従来の現像液」という)と、2.38質量%のTMAH現像原液に対して5質量%のイソプロピルアルコール(IPA)を混合させた本実施の形態にかかる現像液(以下、「IPA含有現像液」という)と、2.38質量%のTMAH現像原液に対して3質量%の乳酸エチル(EL)を混合させた現像液(以下、「EL含有現像液」という)を用いた。そして、現像後のレジストパターンの目標線幅を120nmとして検証を行った。
【0073】
本検証結果を図9に示す。図9の縦軸はレジストパターンの線幅を示し、横軸は露光量を示している。また、図9中、「Reference」は従来の現像液を用いた場合のグラフであり、「IPA5%」はIPA含有現像液を用いた場合のグラフであり、「EL3%」はEL含有現像液を用いた場合のグラフである。なお、本検証はKrF露光を行ってレジストパターンの目標線幅を120nmとしたが、EUV露光を行ってレジストパターンの目標線幅を例えば20nmの微細にした場合にも、図9に示す傾向がみられることが発明者らによって確認されている。
【0074】
図9を参照すると、従来の現像液を用いた場合、レジストパターンを目標線幅120nmにするために必要な露光量は約22mJ/mであった。これに対して、本実施の形態に係るIPA含有現像液を用いた場合、レジストパターンを目標線幅120nmにするために必要な露光量は約19.5mJ/mであった。したがって、本実施の形態の現像液を用いれば、露光量を約11%低減しつつ、所望の寸法のレジストパターンを形成できることが分かった。
【0075】
なお、このように本実施の形態にかかるIPA含有現像液を用いた場合、レジストパターンのLWR(Line Width Roughness)が悪化しないことも確認されている。
【0076】
また、EL含有現像液を用いた場合には、レジストパターンを目標線幅120nmに形成することができなかった。この原因は上述した通りであり、乳酸エチルから加水分解された乳酸によって、アルカリ性の現像液の現像能力が低減したためである。
【0077】
以上の実施の形態によれば、上述のように膨潤層Sの厚みを薄くできるので、従来の厚い膨潤層Sに比べて現像後に残存する現像液が少量となる。このため、洗浄処理にかかる時間を従来よりも短縮することができる。
【0078】
また、以上の実施の形態によれば、現像原液に有機溶剤を混合させているので、現像液の表面張力が小さくなる。ここで、表面張力がレジストパターンに作用すると当該レジストパターンが傾斜して倒れる、いわゆるパターン倒れが発生する場合がある。本実施の形態では、現像液の表面張力が小さくなるので、かかるパターン倒れの発生を抑制することができる。
【0079】
また、以上の実施の形態によれば、現像液供給ブロック136には、現像原液を貯留する現像原液供給源150、有機溶剤を貯留する有機溶剤供給源160、現像原液と有機溶剤を混合して現像液を生成する現像液供給源170がそれぞれ設けられているので、ウェハW上に形成されるレジストパターンの目標寸法に応じて、現像原液に対する有機溶剤の濃度を自由に設定することができる。したがって、レジストパターンの寸法精度をさらに向上させることができる。また、現像液供給ブロック136から現像液ノズル133に現像液を供給する直前に、現像液供給源170において現像液を生成することができるので、予め有機溶剤を混合した現像液を貯留しておく場合に比べて、現像液の劣化を抑制することができる。
【0080】
以上の実施の形態では、EUV用レジスト膜を現像していたが、本発明は他のレジスト膜を現像する場合にも適用できる。例えばいわゆるダブルパターニングによってウェハW上に微細なレジストパターンを形成する際にも、本発明は有用である。
【0081】
ダブルパターニングは、2回のフォトリソグラフィー工程を行い、2つのレジストパターンを合成して、微細なレジストパターンを形成する方法である。具体的には、1回目の第1のレジスト膜の形成、露光、現像により、第1のレジスト膜に第1のレジストパターンを形成し、その後2回目の第2のレジスト膜の形成、露光、現像により、第2のレジスト膜に第2のレジストパターンを形成する。そして、これら第1のレジストパターンと第2のレジストパターンとを合成により、微細なレジストパターンが実現されている。
【0082】
これら第1のレジスト膜の現像処理と第2のレジスト膜の現像処理において、上記実施の形態で述べた有機溶剤を有する現像液を用いる。そうすると、それぞれの現像処理において、レジスト膜の膨潤層Sの厚みを薄くして、レジスト膜の現像速度を速くすることができる。したがって、第1のレジストパターンと第2のレジストパターンのそれぞれの寸法精度を向上させることができ、ウェハW上に所望のレジストパターンPを形成することができる。また、レジスト膜の感度を向上させることができるので、露光処理の露光量を低減することができ、露光時間を短縮させて、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。
【0083】
また、1回目の現像処理後に現像液中のTMAHが残存していると、2回目のフォトリソグラフィー工程を適切に行うことができないため、1回目の第1のレジスト膜の現像後、適切に洗浄処理を行う必要がある。この点、本実施の形態では1回目の現像処理において、第1のレジスト膜の膨潤層Sの厚みが薄いため、洗浄にかかる時間を従来よりも短縮できる。例えば膨潤層Sの厚みを従来の膨潤層Sの厚みの1/2となった場合、洗浄処理にかかる時間を従来の1/4に短縮できる。具体的には、例えば従来60秒かかっていた洗浄処理を、本実施の形態では15秒にすることができた。したがって、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 塗布現像処理システム
4 露光装置
30〜34 現像処理装置
133 現像液ノズル
136 現像液供給ブロック
140 洗浄液ノズル
150 現像原液供給源
160 有機溶剤供給源
170 現像液供給源
200 制御部
R レジスト層
S 膨潤層
P (所望の)レジストパターン
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のレジスト膜を現像するフォトレジスト用現像液であって、
前記レジスト膜の現像原液に可溶であり、且つ前記現像原液と中和反応しない有機溶剤を有することを特徴とする、フォトレジスト用現像液。
【請求項2】
前記レジスト膜は、EUV用レジスト膜であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトレジスト用現像液。
【請求項3】
前記現像原液に対する前記有機溶剤の濃度は、前記レジスト膜の現像速度と、現像後にレジスト膜に形成されるレジストパターンの断面形状とに基づいて設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフォトレジスト用現像液。
【請求項4】
前記現像原液に対する前記有機溶剤の濃度は、5質量%以下であることを特徴とする、請求項3に記載のフォトレジスト用現像液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフォトレジスト用現像液を用いて基板上のレジスト膜を現像処理する現像処理装置であって、
基板上に前記フォトレジスト用現像液を供給する現像液ノズルと、
内部に前記現像原液を貯留する現像原液供給源と、
内部に前記有機溶剤を貯留する有機溶剤供給源と、
前記現像原液供給源から供給された前記現像原液と前記有機溶剤供給源から供給された前記有機溶剤とを混合して前記フォトレジスト用現像液を生成し、当該フォトレジスト用現像液を前記現像液ノズルに供給するための現像液供給源と、を有することを特徴とする、現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−22244(P2012−22244A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161715(P2010−161715)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】