説明

フォームラバー用共重合体ラテックス、フォームラバー用共重合体ラテックス組成物およびファームラバー

【課題】 耐油性に優れ、かつ、やわらかい感触を有する化粧用スポンジ(パフ)として好適なフォームラバーを提供する。
【解決手段】 シアノ基含有エチレン性不飽和単量体45〜60重量%、1,3−ブタジエン15〜52重量%、イソプレン3〜40重量%、およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を乳化重合してなる共重合体ゴムラテックスであり、該共重合体ゴムのゲル含有量が65重量%以下であることを特徴とするフォームラバー用共重合体ゴムラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油性に優れ、かつ、やわらかい感触を有する化粧用スポンジ(パフ)として好適なフォームラバー、このフォームラバー用の共重合体ゴムラテックス、および該共重合体ゴムラテックスを含有するフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ゴムラテックスを用いて製造されたフォームラバー(ゴム発泡体)は、マットレス、パフ、ロール、衝撃吸収剤等として種々の用途に使用されている。フォームラバーの用途のなかで、特にパフには、化粧料に対する良好な耐油性を有し、やわらかい感触を有するスポンジが求められている。
【0003】
パフに耐油性を付与するために、従来からアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)ラテックスが使用されている(例えば、特許文献1。)
また、特許文献2には、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体15〜45重量%、共役ジエン単量体55〜85重量%、およびこれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を乳化重合してなる共重合体ゴムラテックスであり、その共役ジエン単量体単位のミクロ構造が特定範囲にあり、かつ、ゲル含有量が20〜65重量%の範囲にある共重合体ゴムを含有するフォームラバー用共重合体ゴムラテックスが開示されている。
さらに、特許文献3には、シアノ化ビニル単量体10〜50重量%、脂肪族共役ジエン単量体50〜90重量%、およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を乳化重合して得られた共重合体ラテックスであり、固形分濃度が60重量以上、ムーニー粘度が60〜150であるパフ用共重合体ラテックスが開示されている。
さらに、特許文献4には、極性油を含有する粉体化粧料に好適とされる、EPDMの割合を規定したNBRラテックスとEPDMラテックスとの混合物を用いたパフが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−14811号公報
【特許文献2】特開平11−263847号公報
【特許文献3】特開2006−181051号公報
【特許文献4】特開2007−89965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特許文献4に開示されているように、パフには、従来にも増して、優れた耐油性が求められるようになってきた。NBRラテックスにおいて、耐油性を向上させるためには、通常、アクリロニトリルに代表されるシアノ基含有エチレン性不飽和単量体の使用量を増加させることが行われる。しかしながら、本発明者等の検討によれば、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体の使用量を増やすことにより、耐油性を向上させることは可能であるものの、それに伴って、得られるフォームラバーの柔軟性を損ない、パフとして要求される特性を満足することが困難であることがわかった。
本発明者等は、上記の事情に鑑み、良好な耐油性を有し、且つやわらかい感触を有するパフとして好適なフォームラバーを提供すべく鋭意検討を進めた。その結果、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体を比較的多く使用し、かつ、1,3−ブタジエンおよびイソプレンを、それぞれ、特定量使用して、ゲル含有量を特定範囲に制御した共重合体ゴムラテックスを用いることにより、本発明の目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体45〜60重量%、1,3−ブタジエン15〜52重量%、イソプレン3〜40重量%、およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を乳化重合してなる共重合体ゴムラテックスであり、該共重合体ゴムのゲル含有量が65重量%以下であることを特徴とするフォームラバー用共重合体ゴムラテックスが提供される。
また、本発明によれば、前記のフォームラバー用共重合体ゴムラテックスおよび加硫剤を含有してなるフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、前記のフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物を発泡させ、凝固、加硫させてなるフォームラバーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフォームラバー用共重合体ゴムラテックスは、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体45〜60重量%、1,3−ブタジエン15〜52重量%、イソプレン3〜40重量%、およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を乳化重合してなる共重合体ゴムラテックスであり、該共重合体ゴムのゲル含有量が65重量%以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明で使用されるシアノ基含有不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。特に好ましいものはアクリロニトリル、メタクリロニトリルである。シアノ基含有エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体混合物中45〜60重量%である。シアノ基含有エチレン性不飽和単量体が少ないと、耐油性が不十分となり、逆に多いとパフの風合が硬くなり、肌ざわりが悪くなる。好ましくは46〜58重量%、さらに好ましくは47〜55重量%である。
【0009】
本発明では、単量体混合物中、1,3−ブタジエンを15〜52重量%、好ましくは
24〜49重量%、より好ましくは33〜43重量%用いる。1,3−ブタジエンの使用量が少ないとパフの風合が硬くなり、肌ざわりが悪くなり、逆に多いと耐油性が不十分となる。
【0010】
本発明では、単量体混合物中、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)を、3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%用いる。イソプレンの使用量が少ないとパフの風合が硬くなり、肌ざわりが悪くなり、逆に多いと耐油性が不十分となる。
【0011】
本発明では、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体、1,3−ブタジエンおよびイソプレン以外に、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の1,3−ブタジエンおよびイソプレン以外の共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノまたはジメチル、フマル酸モノまたはジエチル、フマル酸モノまたはジ−n−ブチル、イタコン酸モノまたはジ−n−ブチル等の前記エチレン性不飽和カルボン酸のモノまたはジアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等の前記エチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド及びその誘導体;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノ基を有するアクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン等の非共役ジエン単量体等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。この使用量が多すぎると、パフとして要求される特性のバランスが悪化する。
【0012】
本発明のファームラバー用共重合体ゴムラテックス中の共重合体ゴムのゲル含有量は、65重量%以下、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜55重量%である。このゲル含有量が高いと、フォームラバーの柔軟性が低下する。このゲル含有量が低すぎると、フォームラバーの強度が低下する傾向にある。フォームラバーの強度が低すぎると、パフとして化粧料などをかきとった際に、欠けが生じる場合がある。
なお、ゲル含有量は、後述するメチルエチルケトン不溶解分で定義されるものである。
【0013】
このような特徴を有する本発明のフォームラバー用共重合体ゴムラテックスは、通常の乳化重合の手法によって得ることができ、ゲル含有量は、重合温度、重合転化率、分子量調整剤の使用量等により調節することができる。
乳化重合に使用する乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、キレート剤、酸素捕捉剤、分子量調整剤等の重合薬剤は、従来公知のそれぞれの薬剤が使用でき、特に限定されない。例えば、乳化剤としては、通常、アニオン系および/またはノニオン(非イオン)系の乳化剤が使用される。乳化剤は、通常、全単量体100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲で使用される。
【0014】
アニオン系乳化剤としては、例えば、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエステル型、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の乳化剤が挙げられる。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等の熱分解型開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;これらと二価の鉄イオン等の還元剤とからなるレドックス系開始剤等が挙げられる。なかでもレドックス系開始剤が好ましい。これらの開始剤の使用量は、通常、全単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲である。
【0016】
分子量調整剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマー、ターピノレン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対し、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.2〜2重量部、特に好ましくは0.3〜1.5重量部である。この使用量が少ないと、ゲル含有量が高くなる傾向にあり、逆に多すぎるとフォームラバーの強度が低下する傾向にある。
【0017】
乳化重合反応は、連続式、回分式のいずれでもよく、重合時間等も特に限定されない。
単量体の添加の方法も特に制限されず、例えば、一括添加法、分割添加法等を用いることができるが、得られるフォームラバーの耐油性と柔軟性のバランスにより優れる点で、重合に用いる1,3−ブタンジエンおよび/又はイソプレンの一部を、重合反応を開始した後に、反応器に添加して重合を継続する方法が好ましく採用できる。
この場合、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体と1,3−ブタンジエンおよび/又はイソプレンの一部とを反応器に添加して、重合反応を開始した後、反応器内の重合反応率が20〜65%の間に、1,3−ブタンジエンおよび/又はイソプレンの残部を一括又は分割して反応器に添加し、さらに重合反応を継続することが好ましい。
【0018】
重合を停止する際の重合転化率は、特に限定されないが、70〜90重量%が好ましく、75〜85重量%がより好ましい。この重合転化率が低すぎると生産性が低下する傾向にあり、逆に高すぎるとゲル含有量が高くなる傾向にある。
重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0〜50℃、より好ましくは5〜35℃である。重合温度が高すぎると、ゲル含有量が高くなる傾向にある。
重合後、必要に応じて、未反応単量体を除去した後、公知の方法で粒径肥大化処理を施すことが好ましい。この粒径肥大化処理を施すことにより、共重合体ラテックスの固形分濃度を、フォームラバー用に好適な範囲まで高めることができる。
【0019】
粒径肥大化方法としては、例えば、重合途中で反応を停止させ、強攪拌する方法;重合終了後、ブタジエン等の共役ジエン単量体やトルエン等を溶剤として加え、強攪拌する方法;カルボキシル基含有重合体ラテックス等の粒径肥大化剤を共重合体ゴムラテックスに添加して攪拌する方法等が挙げられる。
粒径肥大化処理後、濃縮操作により、固形分濃度を最適な範囲に調節する。本発明のフォームラバー用共重合体ラテックスの固形分濃度は、55〜75重量%の範囲にあることが好ましく、60〜70重量%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度が低すぎると泡荒れが生じて外観が悪くなる傾向があり、固形分濃度を上記範囲以上に高めることは困難な傾向にある。
フォームラバー用共重合体ラテックスの重量平均粒子径も、特に限定されないが、通常、300〜3000nm、好ましくは400〜2000nm程度である。
【0020】
本発明のフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物は、前記のフォームラバー用共重合体ゴムラテックスおよび加硫剤を含有してなる。
加硫剤は、重合体ゴムラテックスを使用する通常のフォームラバーの製造に使用される加硫系はいずれも使用することができ、特に限定されない。加硫系としては、例えば、加硫剤としての硫黄、特にコロイド硫黄、加硫助剤としての酸化亜鉛/各種加硫促進剤が使用される。加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール及びその亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバメート系促進剤等が挙げられる。これらの加硫剤や加硫助剤の使用量は特に限定されないが、通常、共重合体ゴムラテックス(固形分)100重量部に対して、硫黄0.1〜10重量部、酸化亜鉛0.5〜10重量部、加硫促進剤0.1〜5重量部程度である。これらの使用量は、フォームラバーの要求性能を満たすように決定される。
【0021】
必要により使用される配合剤としては、例えば、老化防止剤、着色剤、泡安定剤等、また上記の各種配合剤をラテックスに安定して分散させるための分散剤、例えば、NASF(ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)等;増粘剤、例えば、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール等;起泡剤としての界面活性剤、例えば、オレイン酸カリウム等の脂肪族アルカリ石けん、ドデシル硫酸ナトリウム等の高級アルコールの硫酸塩等を、必要有効量用いることができる。凝固剤としては後記のものが使用される。
【0022】
本発明のフォームラバーは、上記のフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物を発泡させ、凝固、加硫することによって得ることができる。
発泡には通常空気が用いられるが、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を使用することもできる。空気を使用する場合には共重合体ゴムラテックスを攪拌し、空気を巻き込んで泡立てる。この際、例えば、オークス発泡機、超音波発泡機等が用いられる。
所定の発泡倍率に発泡させ、次に、発泡状態を固定化するために、発泡該ラテックス組成物を凝固させる。凝固方法は、ラテックスをゲル化し、固化させることができる方法であれば特に制限されず、従来公知の方法がいずれも使用できる。例えば、凝固剤としてヘキサフルオロ珪酸ナトリウムや同カリウム(珪フッ化ソーダ、同カリ)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物を発泡させた該ラテックス組成物に添加するダンロップ法(常温凝固法);発泡させた該ラテックス組成物にオルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩等の感熱凝固剤を添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。凝固剤の使用量は、特に限定されないが、該ラテックス組成物(固形分)100重量部に対し、通常、0.5〜10重量部程度である。
【0023】
凝固剤が添加された未だ流動性を有する発泡させた該ラテックス組成物を所定形状の型に移し、凝固した後、例えば、100〜160℃程度の温度で15〜60分程度加硫させることによりフォームラバーが得られる。型からフォームラバーを取り出し、例えば、洗濯機等を用い、20〜70℃程度の水で5〜15分程度攪拌下に洗浄する。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30〜90℃程度の温度で乾燥する。例えば、このようにして得られたフォームラバーを所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石で研磨することによって化粧用スポンジ、即ち、パフが製造される。
【0024】
本発明のフォームラバーは、耐油性に優れ、肌ざわりも良好であり、特にパフに好適である。本発明のフォームラバーの耐油性(実施例に記載の方法による)は40%以下が好ましく、更に好ましくは35%以下である。又、本発明のフォームラバーの肌ざわりは硬さ(アスカーF型硬度)と関係があり、該硬度が低いほど柔らかく、好ましい該硬度は65(度)以下、更に好ましくは60(度)以下である。
【実施例】
【0025】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
評価方法を以下に示す。
【0026】
(メチルエチルケトン不溶解分(%)の測定)
共重合体ラテックスを水平に保たれたガラス板上に流し、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室にて48時間乾燥させ、厚みが約0.5mmの乾燥フィルムを作成した。この一部を約2mm×2mmの細片に裁断し、約0.25g秤量し、これを80メッシュの金網に入れ、試験フィルムの重量を精秤した(WB)。試験フィルムが入っている金網を80mlのメチルエチルケトンが入ったビーカーに浸漬し、上記の恒温恒湿室にて48時間静置する。その後、金網を取り出し、乾燥し、精秤して、メチルエチルケトンに不溶な成分の重量(WA)を求めた。これらから、下記式に基づき、メチルエチルケトン不溶解分を求める。
メチルエチルケトン不溶解分(%)=(WA/WB)×100
【0027】
(フォームラバーの密度(g/cm3))
厚みが0.8cmの板状フォームラバーを、直径約38mmの円形に打ち抜き、その重量を測定し、試験片の体積とその重量から密度を求める。
(フォームラバーのF硬度(度))
アスカーゴム硬度計F型(高分子計器社製)を用いて、フォームラバーの硬度を測定した。値が低いほどフォームラバーは柔らかく、肌触りは良好である。
(フォームラバーの耐油性(%))
厚みが0.8cmの板状フォームラバーを、直径約38mmの円形に打ち抜いた試験片を、100mlのトルエンに23℃で1時間浸漬する。その後試験片を取り出し直径を測定し、下記式により線膨張度(%)を求めた。
線膨張度(%)=〔(L´−L)/L〕×100
(L:浸漬前の直径 L´:浸漬後の直径)
線膨張度の値が小さいほどフォームラバーは耐油性に優れる。
【0028】
(フォームラバーの風合い)
フォームラバーの風合いを官能的に検査し、3段階評価を行った。
○:風合いが柔らかく、弾力性に優れる。
△:風合いが柔らかいが、やや弾力性に劣る。
×:風合いが硬く、弾力性が不足している。
(フォームラバーの外観)
フォームラバーの泡の均一性を目視観察し、3段階評価を行った。
○ :均一である。
△ :不均一な部分がある。
×:不均一な部分が目立つ。
【0029】
(実施例1)
(共重合体ラテックスAの製造)
耐圧反応容器に、水200部、オレイン酸カリウム1.5部、アクリロニトリル52部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.03部、硫酸第一鉄0.003部、エチレンジアミン四酢酸・ナトリルム0.008部を添加し、十分に脱気した後、1,3−ブタジエン18部およびイソプレン10部を添加した。
次いで、重合開始剤としてクメンハイドロペルオキサイド0.05部を添加して、反応温度5℃で乳化重合を開始した。
重合転化率が40%に達した時点で、1,3−ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。さらに、重合転化率が60%に達した時点で、1,3−ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。
重合転化率が80%になった時点で、ジエチルヒドロキシアミン0.25部および水5部からなる重合停止剤溶液を添加して重合反応を停止させた。
未反応単量体を除去した後、1,3−ブタジエンを80部添加し、系内の温度を15℃にして、パドル型攪拌翼を用いて1,000rpmの回転数で5時間攪拌し、粒径肥大化処理を行った。次いで、1,3−ブタジエンを除去した後、濃縮を行い、固形分濃度62%の共重合体ラテックスAを得た。
共重合体ラテックスAのメチルエチルケトン不溶解分を測定し、その結果を表1に示す。
【0030】
(フォームラバーの作製)
共重合体ラテックスAの固形分100部に対して、加硫系水分散液(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤ノクセラーEZ(大内新興化学工業株式会社製)/チアゾール系加硫促進剤ノクセラーMZ(大内新興化学工業株式会社製)=2/1/1(重量比):固形分濃度50%)4部、酸化亜鉛水分散液(固形分濃度50%)3部、気泡安定剤(トリメンベース:Crompton Corp製)1部を添加し十分に分散させ、フォームラバー用共重合体ラテックス組成物を得た。
前記ラテックス組成物を、スタンドミキサー(エレクトロラックス社製ESM945)を用いて攪拌し、体積で5倍程度になるよう発泡させた後、珪フッ化ソーダ水分散液(固形分濃度20%)1.5部添加しさらに1分間攪拌した。
前記発泡物を成型用型枠(直径7cm、高さ8cm)に流し入れ、凝固した後、110℃で1時間加硫して、フォームラバーを得た。
型枠から取り出したフォームラバーを40℃のお湯で10分間水洗し、60℃のオーブンで4時間乾燥した後、長さ方向に厚みが0.8cmとなるように、円板状に切断した。
フォームラバーの特性を測定し、その結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2〜3および比較例1〜4)
重合処方を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体ラテックスB〜Gを得た。メチルエチルケトン不溶解分を測定し、それらの結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスB〜Gを用いる以外は実施例1と同様にして、ファームラバーを作製した。得られたフォームラバーの特性を評価し、それらの結果を表1に示す。
【0032】
(比較例5)
表1に示す重合処方(単量体組成および重合停止時の重合転化率)に代え、固形分濃度が65%になるように行う以外は、実施例1と同様にして、共重合体ラテックスHを得た。メチルエチルケトン不溶解分を測定し、その結果を表1に示す。
共重合体ラテックスAに代えて、共重合体ラテックスHを用いる以外は実施例1と同様にして、フォームラバーを作製した。得られたフォームラバーの特性を評価し、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から次のようなことがわかる。
イソプレンを使用しない共重合体ラテックスD及びEから製造したフォームラバーは、硬度が高く、その風合いがやや劣っている(比較例1および2)。
アクリロニトリルの使用量が多い共重合体ラテックスFから製造したフォームラバーは、硬度が高く、その風合いに劣り、かつ外観も悪化している(比較例3)。
ゲル含有量が高い共重合体ラテックスGから製造したフォームラバーは、硬度が高く、その風合いに劣り、かつ外観も悪化している(比較例4)。
アクリロニトリルの使用量が少ない共重合体ラテックスHから製造したフォームラバーは、耐油性に劣る(比較例5)。
上記に比較例に比して、本発明で規定する範囲の共重合体ラテックスA〜Cから製造したフォームラバーは、耐油性に優れ、かつ、硬度が低く、やわらかい感触を有する化粧用スポンジ(パフ)として好適なフォームラバーである(実施例1〜3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアノ基含有エチレン性不飽和単量体45〜60重量%、1,3−ブタジエン15〜52重量%、イソプレン3〜40重量%、およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を乳化重合してなる共重合体ゴムラテックスであり、該共重合体ゴムのゲル含有量が65重量%以下であることを特徴とするフォームラバー用共重合体ゴムラテックス。
【請求項2】
請求項1に記載のフォームラバー用共重合体ゴムラテックスおよび加硫剤を含有してなるフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のフォームラバー用共重合体ゴムラテックス組成物を発泡させ、凝固、加硫させてなるフォームラバー。

【公開番号】特開2009−263588(P2009−263588A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117964(P2008−117964)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】