説明

フォーム製ノイズダンパを備えているタイヤ

【課題】加硫後のインナーライナに表面浄化なしに吸音材を接着する方法を提供する。
【解決手段】フォーム製ノイズダンパ20を有している空気入りタイヤを作る方法であって、空気入りタイヤは、2つのビード14と、トレッド13部分と、それぞれのビードに結合する1対のサイドウォールと、トレッド部分と1対のサイドウォールとを支持しているカーカス12とタイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面18を持つ内側ライナ16と、を有する。そして、接着剤22が準備された表面を構成するように、シリコン接着剤を内側ライナ表面に塗布するステップと、固体フォームのノイズ低減具(フォーム製ノイズダンパ22)を、前記接着剤が準備された表面に取り付けるステップと、接着剤を硬化させるステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム製ノイズダンパを備えているタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
政府の規制と消費者の好みとによって、乗用乗り物のタイヤから発生する許容可能なノイズレベルは、強制的に減少させようとされ続けている。ロードノイズの1つの原因は、タイヤの最も内側の表面とリムとによって囲まれている空気チャンバー内の共鳴である。タイヤノイズを減少させるという試みの1つの型式は、空気チャンバー内の空気振動による音を減衰させることであって、そのような試みは、タイヤカーカスに隣接しているタイヤの最も内側の表面を変更することに主に集中していた。これらの従来の試みの欠点に加えてノイズ削減に関する新しいより厳格な規制によって、空気チャンバー内の振動による音の伝達を減少させるようにタイヤに対するさらなる改良が必要になってきている。
【0003】
空気入りの未加硫のタイヤのカーカスは、低弾性ゴムに包まれている複数の柔軟な高弾性コードの一連の層として構成されている。内側ライナがタイヤの最も内側の表面を構成するように配置されている。未加硫のタイヤを硬化ブラダを使用して硬化プレスで硬化させ、これによってタイヤを強制的に膨脹させる。硬化中に、内側ライナはカーカスと共に延び、それによって、タイヤのトレッドを構成するように硬化金型内で複数の凹みに押し付けられ、全ての構成部品は互いに実質的に凝集性の接着が実現されるように共に硬化する。
【0004】
空気入りチューブレスタイヤの内側ライナは、たとえば、良好な遮断特性を有することからハロブチルゴムを含有している合成物から通常構成されている。タイヤが硬化する前に、内側ライナの全内側表面と硬化ブラダの外側表面との少なくとも一方は剥離剤で被覆されている。剥離剤は、内側ライナの表面で使用されるときには「ライニングセメント」と一般に呼ばれ、硬化ブラダ上で使用されるときには「ブラダ潤滑剤」または「ブラダスプレー」と一般に呼ばれる。剥離剤は、内側ライナが損傷しないように硬化後の硬化ブラダの内側ライナからの取り外しを促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,669,628号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、従来技術の方法においては、硬化している内側ライナにフォーム製ノイズダンパを接着する前に、成形作業による内側ライナの表面上の汚れを取り除くように、内側ライナを浄化しなければならない。特に、剥離剤は内側ライナ表面から取り除かなければならない。溶剤がこの浄化作業のために通常使用されてきており、剥離剤を取り除くのに効果的な溶剤は危険な空気汚染物質を含んでいる。したがって、これらの溶剤は環境規制の対象であって、環境規制は最近より厳しくなってきている。したがって、厳しい環境規制に準拠するために、溶剤による内側ライナ表面の浄化の必要性を無くすことが好ましい。さらに、溶剤による浄化は、大きな労働力を要するとともにその危険な性質からコストがかかり、そのため、溶剤による浄化過程を無くすことによって著しいコスト削減が実現されるかもしれない。その代わりとして、フォーム製ノイズダンパの接着に対する内側ライナの準備には、接着に適した表面を提供するための内側ライナのバフ仕上げが伴ってもよく、特許文献1を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤを作る方法であって、空気入りタイヤは、互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれのビードを結合するように、トレッド幅を定めているトレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、トレッド部分と1対のサイドウォールとを支持しているカーカスと、カーカスの半径方向内側に配置され、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤを作る方法が、
接着剤が準備された表面を構成するように、シリコン接着剤を内側ライナ表面に塗布するステップと、
固体フォームのノイズ低減具を、接着剤が準備された表面に取り付けるステップと、
接着剤を硬化させるステップと、
を有する方法を対象としている。
【0008】
本発明は、フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤであって、空気入りタイヤは、互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれのビードを結合するように、トレッド幅を定めているトレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、トレッド部分と1対のサイドウォールとを支持しているカーカスと、カーカスの半径方向内側に配置され、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤが、
内側ライナ表面上に配置されている剥離剤と、
剥離剤上に配置されているシリコン接着剤層と、
シリコン接着剤層上に配置されている固体フォーム製ノイズダンパと、
をさらに有するものをさらに対象としている。
【0009】
本発明は、添付の図面を参照して容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の擦過させた一体フォーム構造によって取り付けられているフォーム製ノイズダンパを有しているタイヤの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤを作る方法であって、空気入りタイヤは、互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれのビードを結合するように、トレッド幅を定めているトレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、トレッド部分と1対のサイドウォールとを支持しているカーカスと、カーカスの半径方向内側に配置されており、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤを作る方法が、
接着剤が準備された表面を構成するように、液体接着剤を内側ライナ表面に塗布するステップと、
固体フォームのノイズ低減具を、接着剤が準備された表面に取り付けるステップと、
接着剤を硬化させるステップと、
を有する方法を開示している。
【0012】
フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤであって、空気入りタイヤは、互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれのビードを結合するように、トレッド幅を定めているトレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、トレッド部分と1対のサイドウォールとを支持しているカーカスと、カーカスの半径方向内側に配置され、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤが、
内側ライナ表面上に配置されている剥離剤と、
剥離剤上に配置されているシリコン接着剤層と、
シリコン接着剤層上に配置されている固体フォーム製ノイズダンパと、
をさらに有するものをさらに開示している。
【0013】
図面は本発明のタイヤ組み立て品10の断面を示している。タイヤ組み立て品10は、最も外側の表面上に配置されたトレッド13を有するカーカス12を含んでおり、トレッド13はタイヤの動作時に地面に接触するタイヤ組み立て品10の一部である。当該技術で公知のように、カーカス12は、タイヤ10の2つのビード部分14を巻いている複数のコード(不図示)の1つまたは2つ以上のプライを有していてもよい。内側ライナ16は、空気チャンバー24に面するようにカーカス12の半径方向内側に配置されている。本発明によれば、フォーム製ノイズダンパ20は内側ライナ16の表面18に対し、接着剤22を用いて内側ライナ16に接着されている。図1に示しているように、接着剤22はフォーム製ノイズダンパ20と内側ライナ16の表面18との間に配置されている。他の実施形態において、剥離剤(不図示)が内側ライナ16の表面18上に配置されており、接着剤22が剥離剤とフォーム製ノイズダンパ20との間に配置されている。適切な剥離剤は、シリコン剥離剤とポリテトラフルオロエチレン剥離剤からなるグループから選ばれた剥離剤を有している。
【0014】
一実施形態において、フォーム製ノイズダンパはタイヤの内側を中心に円周方向に、そして軸線方向にビードからビードに延びていてもよい。他の実施形態において、フォーム製ノイズダンパはタイヤの内側を中心に円周方向に、そしてタイヤの幅にわたって部分的にだけ延びていてもよい。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパはトレッド幅の50%を超えないように軸線方向に延びていてもよい。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパはトレッド幅の約10パーセントから50パーセントの範囲で軸線方向に延びていてもよい。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパはタイヤの軸線方向の中心線上で軸線方向に実質的に中心であってもよい。他の実施形態において、複数の円周方向のフォーム製ノイズダンパが使用され、タイヤに対する負荷を均等にし、動的バランスを維持するように配置されていてもよい。
【0015】
フォーム製ノイズダンパ20は図面に示しているようにトレッド13の半径方向内側に配置されている。それに応じて、走行中に容易に変形し、操舵安定性などの走行性能に影響しないように、ダンパの材料は、フォームラバー、フォーム合成樹脂、セルラープラスチックなどの軽量で低密度の柔軟な材料であることが好ましい。発泡材料(つまりスポンジ材料)の場合、連続気泡型と独立気泡型を使用可能であるが、連続気泡型が好ましい。たとえば、エーテル系ポリウレタンフォーム、エステル系ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどなどの合成樹脂フォームと、クロロプレンゴムフォーム、エチレン−プロピレンゴムフォーム、ニトリルゴムフォーム、シリコンゴムフォームなどのゴムフォームを使用することができる。特に、雑音減衰効果、軽量、膨張率の制御のしやすさ、および耐久性を考慮すると、ポリエチレンフォーム、エーテル系ポリウレタンフォームなどのポリウレタンフォームなどを使用することが好ましい。
【0016】
フォーム製ノイズダンパは通常、ポリウエステル型またはポリウレタン型のいずれかとすることができるポリウレタン(PU)フォームからなる連続気泡型フォーム材料である。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパは0.010から0.040グラム/cmの範囲の密度を有している。
【0017】
一実施形態において、フォーム製ノイズダンパの横断面形状は長方形である。
【0018】
一実施形態において、フォーム製ノイズダンパの横断面形状は、半径方向でタイヤの空気キャビティに向いている側では正弦型波形の1つまたは2つの周期を呈しており、接着剤に接触している反対側では平坦である。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパの表面は、半径方向でタイヤの空気キャビティに向いている複数の四角錐または円錐を有している。
【0019】
一実施形態において、フォーム製ノイズダンパの幅は100から130mmの範囲である。一実施形態において、幅は、フォーム幅=ベルト幅−70mmと計算される幅を超えない。
【0020】
一実施形態において、フォーム製ノイズダンパの厚さつまりゲージ(gauge)は15〜30mmの範囲にあって、ゲージは1)タイヤキャビティ内の共鳴の減衰、2)タイヤの性能に対する影響を考慮したときの最大許容可能重量、および3)材料の密度の関数である。
【0021】
ダンパは、継ぎ目を有していてもよいが。そうでない方が、ダンパが取り付けられる表面は見えなくなるので、継ぎ目は閉じて見える。考え得る構成は、ダンパの取り付け前に輪を構成して、両端を1つにのり付けすることによって、継ぎ目を閉じることである。
【0022】
タイヤが使用される環境に依存して、タイヤを膨脹させるようにタイヤキャビティを満たしている空気が湿っていて、閉じているキャビティ内で水が凝結する可能性がある。そのため、エーテル系ポリウレタンなどの加水分解しにくいフォーム材料を使用するのが適している。
【0023】
さらに、水がノイズダンパに進入しないように、撥水処理をフォーム材料上で行うことが好ましいことがある。また、防かび処理を行うことが好ましいことがある。
【0024】
さらに、廃棄タイヤの焼却時に生成される排気気体中の毒を避けるために、フォーム材料を作るのにハロゲンを含んでいない原材料を使用することが好ましい。
【0025】
特定の体積のフォーム材料をタイヤキャビティ内に配置することによって、キャビティ内の空気の共鳴が制御可能であって、トレッド部分の振動が減少する。そのため、走行中にタイヤから発生するノイズを減少させることができる。特に、180から300Hzの周波数で計測されるタイヤキャビティの共振によるノイズの減少が好ましい。
【0026】
フォーム製ノイズダンパは接着剤を使用してタイヤの内側ライナに固定されている。
【0027】
本発明による有用な接着剤は複数のシリコン接着剤である。シリコン接着剤は、たとえば、EPO特許出願公開明細書第0,118,030A号、第0,316,591A号、第0,327,847A号および第0,553,143A号、ドイツ特許出願公開明細書第19,549,425A号および米国特許明細書第4,417,042号から当業者に知られている。
【0028】
一実施形態において、接着剤はシリコン系合成物、特にアセテートシリコン、アルコキシシリコン、オキシムシリコン、ベンズアミドシリコン、およびアミンシリコンから選択されたシリコン系合成物である。一実施形態において、接着剤は、ポリオルガノシロキサンと、アセテート加水分解基、アルコキシ加水分解基、オキシム加水分解基、ベンズアミド加水分解基、およびアミン加水分解基を有している有機シリコン化合物と有している。そのような接着剤合成物は、米国特許明細書第5,378,406号において量が記載されている。
【0029】
一実施形態において、接着剤は、EPO特許出願公開明細書第0,327,847号および米国特許明細書第5,077,360号に記載されているような室温架橋システムである。これらは、単成分システムまたは多成分システムであってもよく、多成分システムにおいて、触媒および架橋剤は独立して存在してもよく(たとえば、米国特許明細書第4,891,400号および第5,502,144号で開示)、他の「RTV 2成分」シリコンシステム、特に白金のないシステムであってもよい。
【0030】
接着剤合成物を構成するのに必要な全ての成分を含んでいる「単成分」システムは、大気中の湿気と大気中の酸素の少なくとも一方のない状態で保存され、使用される現場で大気中の湿気と反応して硬化することが特に好ましい。
【0031】
「中性」シリコンシステムを使用してもよく、架橋成分の雰囲気中の水との反応によって腐食性、酸性、アルカリ性、または臭気の強い破壊性の生成物が生成されることはない。そのようなシステムの例は、ドイツ特許発明明細書第19,549,425号、米国特許明細書第4,417,042号、またはEPO特許発明明細書第0,327,847号で開示されている。
【0032】
接着剤合成物の安定性は、有機と無機とにさらに分割されることもある充填剤としても知られている細かく分類された固体の追加によって通常達成される。無機充填剤は、二酸化シリカ/シリコン(被覆または無被覆)、チョーク(被覆または無被覆)、およびゼオライトの少なくとも1つを含んでいる。後者は、さらに乾燥剤として作用してもよい。PVCパウダーはたとえば有機充填剤と見なしてもよい。充填剤は、本明細書において、塗布後の必要な内部凝集を有している密封合成物に実質的に一般的に寄与する。記載した添加剤つまり充填剤は、顔料と、チキソトロープ剤としても知られているチキソトロープ充填剤とに分けてもよい。
【0033】
適切なチキソトロープ剤には、ベントンまたはカオリンなどの公知のチキソトロープ剤、または硬化ヒマシ油または多官能価アミンを含んでいるその誘導体などの有機化合物、またはステアリン酸またはリシノール酸のエチレンジアミンとの反応生成物がある。シリカ、特に焼成シリカを共に使用することが特に好ましいことが証明されている。実質的に膨脹可能なポリマーパウダーもチキソトロープ剤と考えてもよい。例として、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、およびそれらに対応している共重合体がある。特に良好な結果は、細かく分割されているポリ塩化ビニルパウダーを使用して達成されるかもしれない。チキソトロープ剤以外に、メルカプトアルキルシランなどのカップリング剤も使用してもよい。モノメルカプトアルキルトリアルコキシランを使用することが便利なことがわかっている。メルカプトプロピルトリメトキシシランはたとえば、商業的に従来から使用されている。
【0034】
接着剤合成物の属性は、チキソトロープ剤として使用されているプラスチックパウダーに他の成分も追加された場合に、さらに改良されるかもしれない。これらには、可塑剤つまり膨潤剤として分類される物質およびプラスチックで使用される膨潤助剤がある。
【0035】
シリコーンシーラント合成物に対して非常に適している可塑剤には、シリコンオイル、好ましくはポリジメチルシロキサン、炭化水素およびそれらの混合物の少なくとも1つ、特に沸点が200℃、特に230℃よりも高い炭化水素またはそれらの混合物がある。
【0036】
使用される顔料と染料には、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなど、それらの意図する用途に対して公知の物質がある。
【0037】
保存安定性は、塩化ベンゾイル、塩化アセチル、トルエンスルホン酸メチルエステル、カルボジイミド、およびポリカルボジイミドの少なくとも1つなどの安定剤を密封合成物に追加することによって改善できる。8〜20個の炭素原子のあるオレフィンは特に良好な安定剤であることが証明されている。それらの安定作用に加えて、それらは、可塑剤つまり膨潤剤として作用してもよい。好ましいオレフィンは、8〜18個の炭素原子を有しているオレフィン、特に1−2位に二重結合を有しているオレフィンである。安定剤の分子構造が直線型の場合に特に良好な結果が得られる。
【0038】
シリコン接着剤の塗布は、タイヤ加硫工程で使用される離型剤(ブラダ分離潤滑剤またはブラダ分離剤)などの離型剤で汚染された表面で十分に良好な接着を実現する。接着は、フォーム(発泡体)がタイヤの寿命の間に外れないほど内側ライナへの接着が十分に高い場合に十分と考えられるが、上限はなく、接着がフォームの接着境界に対する引裂き抵抗またはフォーム自体の引裂き抵抗を超える必要は無い。さらに、接着剤は、タイヤの寿命の間は柔軟で、屈曲と剪断の下で疲労に耐える状態を維持しなければならない。これらの要件を満たす接着剤は、ヘンケル(Henkel)の5900、5910、および5970を含むロックタイト(Lotcite(登録商標))5900シリーズの接着剤である。
【0039】
シリコン接着剤の塗布前のタイヤの内側ライナ表面の浄化は任意である。表面は、約65℃と最大90barの高温水高圧(HWHP)ウォータージェットを使用して浄化してもよい。機械的な浄化(研磨、バフ仕上げ)は必要ない。
【0040】
フォーム製ノイズダンパは硬化したタイヤに接着されるので、内側ライナ表面は滑らかな部分を特徴としていてもよいし、していなくてもよい。滑らかな部分は、もし存在すれば、複数のタイヤ硬化プラダがプラダ製造工程に由来する欠陥とバリとがなくなるように通常その中心にあるからである。フォーム製ノイズダンパが備わるタイヤについては、ダンパ幅の約50%よりも広い(つまり約60mm以下)滑らかな部分を有するタイヤ硬化ブラダを使用してもよい。
【0041】
一実施形態において、一様な厚さで取り付け表面全体を覆うように、シリコン接着剤を内側ライナ表面に塗布してもよい。一実施形態において、シリコン接着剤は、たとえばショルダ−中心線−ショルダの構成の3本の帯を使用して、円周方向の複数の帯の状態に塗布してもよい。一実施形態において、シリコン接着剤は、ショルダからショルダに変位する最大10cmの周期の長さの波形の線として塗布してもよい。塗布されたシリコン接着剤の複数の玉は、接着剤が内側ライナ表面上の汚れと確実に混合されて、それらに対する溶剤として作用するように、ローラやへらを使用して延ばされてもよい。
【0042】
フォーム製ノイズダンパは、タイヤの様々な内側部分に配置することができる。たとえば、フォーム製ノイズダンパは、タイヤのトレッドとサイドウォールの両方の部分にわたっている内側ライナを覆うためにビードからビードへと延ばしたり、タイヤの内側ライナの表面上に選択的にそして局所的にのみ配置したりすることができる。一実施形態において、フォーム製ノイズダンパは円周方向に内側ライナ表面上に配置されており、タイヤの赤道面によって2分割されている。
【0043】
タイヤのフォーム製ノイズダンパは、膨脹したタイヤの内側の相当な部分を占めないようなゲージ(厚さ)である。一般に、フォーム製ノイズダンパの厚さは、フォーム製ノイズダンパの構造体積が空気入りタイヤの空気の内包容積の約25パーセント、好ましくは10パーセント未満であるように、タイヤのサイズと意図した用途に何らか依存して、タイヤの総厚さの約1から約80パーセント、好ましくは約10から約50パーセントの範囲である。したがって、通常の厚さは、通常の乗用空気入りタイヤについては、空気入りタイヤ内に内包されている空気の体積の約10パーセント未満の体積である空気入りタイヤの全厚さの約10から約30パーセントの範囲である。
【0044】
タイヤ内のフォーム製ノイズダンパによる適切な雑音減衰効果を得るために、フォーム製ノイズダンパは雑音の減衰に適した範囲の密度または密度と多孔性とを有している。
【0045】
特定の代表的な実施形態と詳細とを本発明の説明のために示してきたが、さまざまな変更と修正とを本発明の精神又は範囲を逸脱することなく実施形態と詳細において行ってもよいことが当業者には明らかになるであろう。

実験作業には、様々な種類の接着剤を研究して得ること、接着剤を比較するための反復可能な試験方法の開発、各接着剤の塗布と硬化の最適な方法の決定、社内製剤の調合と混合、および接着剤の互換性の試験が伴った。この作業の多くは複雑で時間がかかった。たとえば、2液系の混合のために静的な混合装置を購入しなければならず、UV硬化接着剤は外部の仕入れ先で硬化させなければならなかった。
試料の準備
実験室での試験方法のためにゴムの帯が用意された。接着剤の評価に使用されるゴムは標準的なブロモブチル内側ライナ化合物であった。未硬化のゴムがシートを構成するように粉砕された。それから繊維による裏打ちがシートの一方の側に対して行われ、ゴム/繊維が6インチの正方形に切断された。それから、ゴム/繊維を、圧力下で硬化プラダに当てて160℃で30分間、プレス内で硬化させた。マイラの保護層がゴム表面が浄化されるように硬化中にゴムとブラダとの間に配置された。さまざまな剥離剤が硬化ブラダ上に噴霧され、実際のタイヤの内側ライナを模擬する時にはフィルムは使用されなかった。硬化後、正方形のゴムは、1/2インチ幅と6インチ長さの複数の帯に切断された。この複数の帯は、硬化プラダと同様のパティオテクスチャを有していた。
【0046】
接着剤の試料を作るために、接着剤の薄い層が(フィルムが取り除かれている)1つのゴムの帯のテクスチャのある側にできるだけ均等に塗布された。第2のゴムの帯が接着剤の上に配置され、接着剤を2つのゴムの間で挟んだ。それから複数の帯は、約1/16インチの厚さの接着剤の層を構成するように、手によって1つに圧縮された。余分な接着剤は試料の複数の側部からペーパータオルを使用して拭き取られた。試料の端部の約2インチが、インストロン(登録商標)のための把持を実現するように、接着剤を塗布しないままにされた。それから時間をかけて試料を硬化させた。接着剤は、試料を引いて分離したときに、湿った箇所が無くなったときに硬化したと見なした。試料が適切に硬化したことを保証するために、ほとんどの接着剤は2週間の間、雰囲気の条件で乾燥することができるようにした。
【0047】
表1は評価した接着剤のさまざまな種類である。ほとんどの接着剤は、チューブに入れられて供給され、密度の高い接着剤を有している1液系であった。接着剤は、コーキングガンを使用してゴムの帯に塗布された。2液系が使用された場合、各液は、両方のチューブを保持するように構成されているコーキングガンを使用して、製造者によって推奨される割合で供給された。
適切な混合を達成するように、スタティックミキサがコーキングガンの端部に配置された。
【0048】
【表1】

【0049】
実験室での試験方法
剥離試験は、元の試料と層状の試料の両方に対する接着剤の強度を計測するように構成された。接着剤によって1つに接着されている2つのゴム帯からなる硬化した試料が、20インチ/分の速さでインストロン内で剥離して分離された。任意の隙間幅、試料の厚さ、および試料の面積が設定された。同じ設定が全ての試料に対して使用された。試料は3重に試験された。試験は、室温で実施された。定常状態での平均的な力(N)と破壊形状が記録された。許容可能な接着は、凝集性の破壊(接着剤内での引き裂き)による70Nを超える定常状態での値と定められた。
結果と検討
表2は、実験室剥離試験方法で評価された全ての接着剤の一覧を示している。全ての試料は試験前に完全に硬化させた。前述のように、許容可能な接着は、70Nを超える平均引き裂き値による凝集性の引き裂きとして定められた。3つの接着剤が、浄化されたゴム表面に対する良好な接着を有しているとして際だっており、それらは、ロックタイトの5900、ロックタイトのU−05 FL、およびアドケムのシアノアクリレートである。シアノアクリレートはゴムに対する良好な接着性を有していたが、曲げられるとひび割れたのでさらなる評価については考慮されなかった。U−05 FLは、剥離試験中に引き裂き部分がゴム内部に進入するほどほどゴムに強力に接着した。ロックタイトの5900は、好ましい凝集性の破壊を示している一貫している「節状」引き裂きとなった。
【0050】
【表2】

【0051】
ロックタイトのU−05 FLのウレタン接着剤はロックタイトの5900よりもゴムに対してより強力な接着力を有しているようだが、表3に示しているように、接着は剥離剤が存在すると失われた。浄化されたゴムに接着されたときに有望に見えたいくつかの接着剤は、剥離剤を含有している通常の内側ライナに対して全ての接着が失われた。ゴム表面から剥離剤を取り除いて浄化しようとする試みによって接着性は改善されず、それは微量の剥離剤がほとんどの接着剤の効果を打ち消すことを示唆している。微量の剥離剤の存在の下で(浄化後に)ゴムに接着した接着剤はロックタイトのシリコン系接着剤の5900と5910であった。これらの2つのうち、より強力な接着は5900を使用して得られた。
【0052】
【表3】

【符号の説明】
【0053】
10 タイヤ組み立て品
12 カーカス
13 トレッド
14 ビード部分
16 内側ライナ
18 内側ライナの表面
20 フォーム製ノイズダンパ
22 接着剤
24 空気チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤを作る方法であって、前記空気入りタイヤは、互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれの前記ビードを結合するように、トレッド幅を定めている前記トレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、前記トレッド部分と1対の前記サイドウォールとを支持しているカーカスと、前記カーカスの半径方向内側に配置され、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤを作る方法は、
接着剤が準備された表面を構成するように、シリコン接着剤を前記内側ライナ表面に塗布するステップと、
固体フォームのノイズ低減具を、前記接着剤が準備された表面に取り付けるステップと、
前記接着剤を硬化させるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接着剤は、ポリオルガノシロキサンと有機シリコンを有しているシリコン接着剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機シリコンは、アセテート加水分解基、アルコキシ加水分解基、オキシム加水分解基、ベンズアミド加水分解基、およびアミン加水分解基からなるグループから選択された加水分解基を有している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内側ライナ表面は、剥離剤を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記内側ライナ表面は、シリコン剥離剤およびポリテトラフルオロエチレン剥離剤からなるグループから選択された剥離剤を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フォーム製ノイズダンパは、ポリウレタンフォームである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フォーム製ノイズダンパは、0.01から0.04g/cmの範囲の密度を有しているポリウレタンフォームを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フォーム製ノイズダンパを有しているタイヤを作る方法であって、
前記タイヤの内部キャビティに面した内側ライナ表面であって、シリコン剥離剤とポリテトラフルオロエチレン剥離剤とからなるグループから選択される剥離剤を備えた内側ライナ表面を持つ内側ライナを有しているタイヤを得るステップと、
接着剤が準備された表面を構成するように、シリコン接着剤を前記内側ライナ表面に塗布するステップと、
固体フォームのノイズ低減具を、前記接着剤が準備された表面に取り付けるステップと、
前記接着剤を硬化させるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記接着剤は、ポリオルガノシロキサンと有機シリコンを有しているシリコン接着剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有機シリコンは、アセテート加水分解基、アルコキシ加水分解基、オキシム加水分解基、ベンズアミド加水分解基、およびアミン加水分解基からなるグループから選択された加水分解基を有している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内側ライナ表面は、剥離剤を有している、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記フォーム製ノイズダンパは、ポリウレタンフォームである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記フォーム製ノイズダンパは、0.01から0.04g/cmの範囲の密度を有しているポリウレタンフォームを有している、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
フォーム製ノイズダンパを有している空気入りタイヤであって、
該空気入りタイヤは、
互いに離れており伸ばすことができない2つのビードと、地面と接触するトレッド部分と、それぞれの前記ビードを結合するように、トレッド幅を定めている前記トレッド部分の軸線方向外側の2つの縁から半径方向内向きに延びている1対の別個のサイドウォールと、前記トレッド部分と1対の前記サイドウォールとを支持しているカーカスと、前記カーカスの半径方向内側に配置され、タイヤの内部キャビティに面している内側ライナ表面を持つ内側ライナと、を有し、
前記空気入りタイヤは、
前記内側ライナ表面上に配置されている剥離剤と、
前記剥離剤上に配置されているシリコン接着剤層と、
前記シリコン接着剤層上に配置されている固体フォーム製ノイズダンパと、
をさらに有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記接着剤は、ポリオルガノシロキサンと有機シリコンを有しているシリコン接着剤である、請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
有機シリコンは、アセテート加水分解基、アルコキシ加水分解基、オキシム加水分解基、ベンズアミド加水分解基、およびアミン加水分解基からなるグループから選択された加水分解基を有している、請求項15に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記内側ライナ表面は、シリコン剥離剤およびポリテトラフルオロエチレン剥離剤からなるグループから選択された剥離剤を有している、請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
前記フォーム製ノイズダンパは、プリウレタンフォームである、請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
前記フォーム製ノイズダンパは、0.01から0.04g/cmの範囲の密度を有しているポリウレタンフォームを有している、請求項14に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−32009(P2013−32009A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166841(P2012−166841)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】