説明

フッ素化シリルエチニルペンタセン化合物及び組成物、並びにその製造及び使用方法

フッ素化シリルエチニルペンタセン、及びフッ素化シリルエチニルペンタセンを含有する組成物を開示する。フッ素化シリルエチニルペンタセン、及びフッ素化シリルエチニルペンタセンを含有する組成物の製造並びに使用方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月29日出願の発明の名称が「FLUORINATED SILYLETHYNYL PENTACENE COMPOUNDS AND COMPOSITIONS AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME」である米国仮特許出願第61/182,561号に基づく優先権を主張する国際特許出願として出願されるものである。
【0002】
本発明は、一般的に、フッ素化シリルエチニルペンタセン及びフッ素化シリルエチニルペンタセンを含有する組成物に関する。本発明は更に、一般的に、フッ素化シリルエチニルペンタセンの製造方法及び使用方法、並びにフッ素化シリルエチニルペンタセンを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ベースのトランジスタで構成される電子デバイスは、無機ベースのトランジスタで構成される電子デバイスと比較した場合に、典型的にはより低コストで製造可能であり、より大きな面積のフォーマットに適用することができる。しかしながら、有機ベーストランジスタは典型的には、性能面で見劣りがするものであった。一般に有機ベーストランジスタでは、小分子又はポリマーを半導体材料として利用している。典型的には、小分子半導体材料は有機溶媒に対する溶解度が低いため、典型的には薄膜を形成するには真空蒸着法を必要とする。有用なデバイスを製造するために多層パターニングを行うには、シャドーマスク又はフォトリソグラフィー法が通常必要とされる。真空蒸着法及びリソグラフィーでは、通常は真空蒸着法及びリソグラフィーを必要としないプロセス(例えば溶液コーティング法)と比較して大幅にコストが嵩むプロセスがしばしば必要とされる。
【0004】
安価な電子デバイスを製造するためのコスト効率の高い手法の1つとして、以下の例示的なコーティング法、すなわちスピンコーティング、ナイフコーティング、ロール・ツー・ロール・ウェブコーティング、及びディップコーティング、並びにインクジェット印刷、スクリーン印刷、及びオフセットリソグラフィーなどの印刷法のいずれかによって有機半導体材料を塗布することがある。しかしながら、上記したように、多くの有機半導体材料は溶媒に溶けにくいことで有名であり、溶解するものも一般に溶液中で不安定である。不溶性及び不安定性の問題のため、安価な電子デバイスを作製するために上記したような安価なコーティング工程を使用して多くの有機半導体材料を塗布する可能性は限定されている。
【0005】
6,13−シリルエチニル置換されたペンタセンに基づいた特定の有機半導体は、(i)有機溶媒に溶解し、(ii)溶液中で安定であり、(iii)有機電界トランジスタ(OFET)で高い性能を与えることが示されている。例えば、6,13−ビス[(トリイソプロピルシラニル)エチニル]ペンタセン(6,13−ビス[(トリイソプロピルシリル)−エチニル]ペンタセンとも呼ばれ、本明細書では「TIPSペンタセン」と呼ぶ)は、(i)有機溶媒に対して一定の溶解度を有し、(ii)溶液中で一定の安定性を有し、(iii)有機電界トランジスタ(OFET)で高い性能を与えることが示されている。しかしながら、TIPSペンタセンであっても、特定の有機溶媒に対しては溶解度が限定されており、例えば電荷キャリア移動度の値によって測定されるような電子デバイスにおける性能も限定されている。
【0006】
更に多くの既知のペンタセン化合物は、以下の難点、すなわち、(i)表面を濡らす性質が限定されている、(ii)疎水性及び/又は疎油性が限定されている、(iii)耐酸化性が限定されている、(iv)光化学的安定性が限定されている、の1つ以上を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は有機化合物、すなわち以下の性質の1つ以上を有する6,13−シリルエチニル置換されたペンタセン化合物の発見によって、当該技術分野における幾つかの問題を解決するものである。すなわち、(i)1つ以上の有機溶媒(例えばフッ素化溶媒)に対する高い溶解度、(ii)所定の有機溶媒(例えばフッ素化溶媒)に取り入れられる際の高い安定性、(iii)表面を濡らす高い性質、(iv)高い疎水性及び/又は疎油性、(v)高い耐酸化性、(vi)電子デバイスの電荷キャリア移動度の値によって測定されるような、電子デバイスに組み込まれる際の高い性能、(vii)電子デバイスのエネルギー変換効率によって測定されるような、半導体層として電子デバイスに組み込まれる際の高い性能、及び(viii)環境中における装置の電子的特性の経時的な安定性によって測定されるような、半導体層として電子デバイスに組み込まれる際の高い性能。本発明のペンタセン化合物は、電子デバイス及び他のコーティングされた基材の製造においてコーティング可能な組成物中で利用することができる。
【0008】
本発明は、特定の6,13−シリルエチニル置換を有するペンタセン化合物に関するものである。例示的な一実施形態では、本発明は下記化学構造を有するペンタセン化合物に関する。
【0009】
【化1】

【0010】
(以後、「構造A」とも呼ぶ)
[式中、
R、R’及びR”はそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(iv)置換若しくは非置換のシクロアルキル基、(v)置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキレン基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)置換若しくは非置換のアリール基、(viii)置換若しくは非置換のアリールアルキレン基、(ix)アセチル基、(x)環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換若しくは非置換の複素環、(xi)置換若しくは非置換のエーテル基又はポリエーテル基、又は(xii)置換若しくは非置換のスルホンアミド基を含み;R、R’及びR”の少なくとも1つが存在し、かつそれが、分枝若しくは非分枝の置換アルキル基、分枝若しくは非分枝の置換アルケニル基、置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルアルキレン基、分枝若しくは非分枝の置換アルキニル基、置換アリール基、置換アリールアルキレン基、環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換複素環、置換エーテル基若しくはポリエーテル基、又は置換スルホンアミド基を含むフッ素化一価ラジカルを含み、該フッ素化一価ラジカルは1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子は両方のケイ素原子から少なくとも原子3個分又は少なくとも共有結合4つ分だけ離れており、
x、y及びzはそれぞれ独立して0、1、2又は3に等しく、
(x+y+z)=3であり、かつ、
Xはそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iv)置換若しくは非置換のアリール基、(v)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)シアノ基、(viii)ニトロ基、(ix)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルコキシ基を含むか、又は(x)任意の2個の隣り合うX基が互いに結合して(a)置換若しくは非置換の炭素環、又は(b)置換若しくは非置換の複素環を形成する。]
本発明は更に、(i)R、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有する少なくとも1種類のペンタセン化合物、及び(II)溶媒を含む組成物に関する。本発明の組成物は、少なくとも1種類のペンタセン化合物及び溶媒をそれらのみで、又はポリマー添加剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、若しくはこれらの任意の組み合わせなどの1つ以上の更なる組成物成分と組み合わせて含んでもよい。
【0011】
本発明は更に、少なくとも1つのコーティング可能な表面と、少なくとも1つのコーティング可能な表面上にコーティングされた層とを有する基材であって、コーティング層が、R、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有するペンタセン化合物を含む基材に関する。例示的な一実施形態では、基材は電子デバイス又は電子デバイス要素を含む。
【0012】
本発明はまた、R、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有するペンタセン化合物の製造方法にも関する。
【0013】
本発明は更に、組成物(例えばインクジェット印刷用組成物)、コーティング、その上にコーティング層を有する基材、電子デバイス要素、及び電子デバイスを形成するために、R、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有する少なくとも1つのペンタセン化合物を使用する方法に関する。
【0014】
本発明のこれらの特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、以下の開示される実施形態の詳細な説明及び付属の「特許請求の範囲」を参照することで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面を参照しながら本発明を更に説明する。
【図1】本発明の少なくとも1つのフッ素化ペンタセン化合物を含有する組成物の溶液を成膜することによって形成された半導体層を含む例示的な薄膜トランジスタの断面図。
【図2】本発明の少なくとも1つのフッ素化ペンタセン化合物を含有する組成物の溶液を成膜することによって形成された半導体層を含む別の例示的な薄膜トランジスタの断面図。
【図3】本発明の少なくとも1つのフッ素化ペンタセン化合物を含有する組成物の溶液を成膜することによって形成された半導体層を含む更に別の例示的な薄膜トランジスタの断面図。
【図4】掃引ゲートバイアスの関数としてトランジスタ出力(IDS及び(IDS)1/2)をプロットした代表的なプロット。
【図5】本発明の異なるフッ素化ペンタセン化合物について約643〜645ナノメートルに吸収極大を有する標準化吸光度(A/A)を、各溶液を紫外線(UV)で照射した時間の関数としてTIPS−ペンタセン溶液と比較してプロットした代表的なプロット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、所定の化学構造(本明細書においては「化合物A」とも呼ぶ)を有するフッ素化ペンタセン化合物に関するものである。
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、
R、R’及びR”はそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(iv)置換若しくは非置換のシクロアルキル基、(v)置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキレン基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)置換若しくは非置換のアリール基、(viii)置換若しくは非置換のアリールアルキレン基、(ix)アセチル基、(x)環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換若しくは非置換の複素環、(xi)置換若しくは非置換のエーテル基又はポリエーテル基、又は(xii)置換若しくは非置換のスルホンアミド基を含み;R、R’及びR”の少なくとも1つが存在し、かつそれが、分枝若しくは非分枝の置換アルキル基、分枝若しくは非分枝の置換アルケニル基、置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルアルキレン基、分枝若しくは非分枝の置換アルキニル基、置換アリール基、置換アリールアルキレン基、環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換複素環、置換エーテル基若しくはポリエーテル基、又は置換スルホンアミド基を含むフッ素化一価ラジカルを含み、該フッ素化一価ラジカルは1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子は両方のケイ素原子から少なくとも原子3個分又は少なくとも共有結合4つ分だけ離れており、
x、y及びzは、それぞれ独立して0、1、2又は3に等しく、
(x+y+z)=3であり、かつ、
Xはそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iv)置換若しくは非置換のアリール基、(v)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)シアノ基、(viii)ニトロ基、(ix)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルコキシ基を含むか、又は(x)任意の2個の隣り合うX基が互いに結合して(a)置換若しくは非置換の炭素環、又は(b)置換若しくは非置換の複素環を形成する。]
本発明のペンタセン化合物を述べるうえで多くの用語が使用される。本明細書中で使用する様々な用語を以下に定義する。
【0019】
「アルキル基」とは、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基のことを指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には1〜30個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルキル基は、4〜30個、1〜20個、4〜20個、1〜14個、1〜10個、4〜10個、4〜8個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第3ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−ヘプチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0020】
「置換アルキル基」とは、1つ以上の置換基を有するアルキル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0021】
「アルケニル基」とは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである一価の基のことを指す。アルケニルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってよく、典型的には2〜30個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルケニルは、2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。例示的なアルケニル基としては、これらに限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、及びブテニルが挙げられる。
【0022】
「置換アルケニル基」とは、(i)1つ以上のC−C二重結合、及び(ii)1つ以上の置換基を有するアルケニル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0023】
「アルキニル基」とは、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する炭化水素であるアルキンのラジカルである一価の基のことを指す。アルキニルは、直鎖状、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであってよく、典型的には2〜30個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルキニルは、2〜20個、2〜14個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。例示的なアルキニル基としては、これらに限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、及びブチニルが挙げられる。
【0024】
「置換アルキニル基」とは、(i)1つ以上のC−C三重結合、及び(ii)1つ以上の置換基を有するアルキニル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0025】
「シクロアルキル基」とは、環構造内の3個以上の炭素原子から構成される環構造である一価の基のことを指す(環構造は炭素原子のみからなり、環構造の炭素原子の1個がラジカルである)。
【0026】
「置換シクロアルキル基」とは、1つ以上の置換基を有するシクロアルキル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する一価の部分(例えばFなどのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0027】
「シクロアルキルアルキレン基」とは、環構造内の3個以上の炭素原子から構成される環構造である一価の基(環構造は炭素原子のみからなる)のことを指し、環構造は非環状アルキル基(典型的には1〜3個の炭素原子、より典型的には1個の炭素原子)に結合し、非環状アルキル基の炭素原子の1個がラジカルである。
【0028】
「置換シクロアルキルアルキレン基」とは、1つ以上の置換基を有するシクロアルキルアルキレン基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する一価の部分(例えばフッ素などのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0029】
「アリール基」とは、芳香族炭素環式化合物のラジカルである一価の基を指す。アリールは1個の芳香環を有するか、あるいは芳香環と結合又は縮合した最大で5個の炭素環式環構造を含み得る。他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであり得る。アリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0030】
「置換アリール基」とは、1つ以上の置換基を有するアリール基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する一価の部分(例えばFなどのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0031】
「アリールアルキレン基」とは、環構造内の5〜10個の炭素原子から構成される芳香環構造である一価の基(環構造は炭素原子のみからなる)のことを指し、芳香環構造は1以上の炭素原子(典型的には1〜3個の炭素原子、より典型的には1個の炭素原子)を有する非環状アルキル基に結合し、非環状アルキル基の炭素原子の1個がラジカルである。
【0032】
「置換アリールアルキレン基」とは、1つ以上の置換基を有するアリールアルキレン基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する1価の部分(例えばFなどのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0033】
「アセチル基」とは、式−C(O)CHを有する一価のラジカルのことを指す。
【0034】
「複素環」とは、環構造内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する飽和、部分飽和、又は不飽和環構造のことを指す。
【0035】
「置換複素環」とは、環構造の1つ以上の環員に1つ以上の置換基が結合した複素環のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する一価の部分(例えばFなどのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0036】
「炭素環」とは、環構造内に炭素のみを含む飽和、部分飽和、又は不飽和環構造のことを指す。
【0037】
「置換炭素環」とは、環構造の1つ以上の環員に1つ以上の置換基が結合した炭素環のことを指し、該1つ以上の置換基はそれぞれ、1以上の原子を含有する一価の部分(例えばFなどのハロゲン、アルキル基、シアノ基、水酸基、又はカルボン酸基)を含む。
【0038】
「エーテル基」とは、Rが分枝又は非分枝のアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン、又はアリールアルキレン炭化水素であり、Rが分枝又は非分枝のアルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキル炭化水素であるような−R−O−Rラジカルを指す。
【0039】
「置換エーテル基」とは、1つ以上の置換基を有するエーテル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0040】
「ポリエーテル基」とは、R及びRが上記に定義したものであり、mが1よりも大きい整数であるような−(R−O)−Rラジカルのことを指す。
【0041】
「置換ポリエーテル基」とは、1つ以上の置換基を有するポリエーテル基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0042】
「スルホンアミド基」とは、R及びRがそれぞれ上記に定義したものであり、Rがそれぞれ独立して水素、又は分枝又は非分枝のアルキル、アリール、アルキルアリール若しくはアリールアルキル炭化水素であるような−R−N(R)S(O)−Rラジカルのことを指す。
【0043】
「置換スルホンアミド基」とは、1つ以上の置換基を有するスルホンアミド基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する一価の部分を含む。
【0044】
「アルコキシ基」とは、Rがアルキル基であるような式−ORの一価の基のことを指す。例としては、これらに限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが挙げられる。
【0045】
「置換アルコキシ基」とは、1つ以上の置換基を有するアルコキシ基のことを指し、1つ以上の置換基はそれぞれ、炭素及び水素以外の1以上の原子を単独で(例えばFなどのハロゲン)、又は炭素(例えばシアノ基)及び/若しくは水素原子(例えば水酸基又はカルボン酸基)と組み合わせて含有する1価の部分を含む。
【0046】
「電荷キャリア移動度の値」とは、電荷キャリアの移動速度を測定するための任意の試験方法によって測定される、印加された単位電場(V/cm)当たりの電荷キャリアの移動速度(cm/s)のことを指し、その測定単位は「cm/V−s」である。
【0047】
上記の化学構造を有するフッ素化ペンタセン化合物は、以下の性質の少なくとも1つを有することが示されている。すなわち、(i)1つ以上の有機溶媒(例えばフッ素化溶媒)に対する高い溶解度、(ii)所定の有機溶媒(例えばフッ素化溶媒)に取り入れられる際の高い安定性、(iii)表面を濡らす高い性質、(iv)高い疎水性及び/又は疎油性、(v)高い耐酸化性、(vi)電子デバイスの電荷キャリア移動度の値によって測定されるような、電子デバイスに組み込まれる際の高い性能、(vii)電子デバイスのエネルギー変換効率によって測定されるような、半導体層として電子デバイスに組み込まれる際の高い性能、及び(viii)環境中における装置の電子的特性の経時的な安定性によって測定されるような、半導体層として電子デバイスに組み込まれる際の高い性能。上記の化学構造のR基(すなわちR、R’及びR”)及びX基を変えることによって、得られるペンタセン化合物を所定の用途(例えば電池装置の半導体層として)に合わせて調整することができる。
【0048】
例えば、本発明の所定のフッ素化ペンタセン化合物を電子デバイスの半導体層を形成する目的で使用しようとする場合、得られる半導体層の電荷キャリア移動度の値に大きく影響する、二次元のスタッキング性(すなわち個々の分子の二次元のスタッキング性)を示すフッ素化ペンタセン化合物の能力が考慮すべき重要な点となる。所定のスタッキング形態の次元性は、所定の材料の単結晶X線構造を調べることによって容易に測定することができる。二次元性、すなわち「レンガ積み」状のスタッキング性を示す所定の材料は、芳香族炭素原子間の接点が概ね炭素のファンデルワールス半径(理想的には3.3〜3.6Å)内に存在する4個の最も近接した隣接分子を有することによって特徴付けられる。単純なペンタセン単位を考えると、ペンタセン環の平面よりも上側に2個の芳香族近接隣接分子を、ペンタセン環の平面よりも下側に2個の芳香族近接隣接分子を有するあらゆる材料は、二次元的相互作用すなわち二次元スタッキング性を有するものとして典型的には分類される。一般的に見られる別の例として、ペンタセン環の平面の上下に近接隣接分子が1個のみ存在する一次元的スタッキング性がある。一般に、二次元的なπスタッキング性を有する分子は、電界効果トランジスタ用途において優れた薄膜形態、及び固体状態における高い電荷移動性を示す。同様に、一次元的なπスタッキング性を有する材料は、光起電力デバイスにおいて、電子供与体要素又は電子受容体要素として使用されるかによらず優れた性能を示す。本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、一次元的又は二次元的スタッキング性のいずれかを示すように改変することができる。
【0049】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、1つ以上のフッ素化一価ラジカルが存在し、該フッ素化一価ラジカルがそれぞれ独立して、分枝若しくは非分枝の置換アルキル基、分枝若しくは非分枝の置換アルケニル基、置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルアルキレン基、分枝若しくは非分枝の置換アルキニル基、置換アリール基、置換アリールアルキレン基、環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換複素環、置換エーテル基若しくはポリエーテル基、又は置換スルホンアミド基を含み、更に該フッ素化一価ラジカルがそれぞれ1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子がペンタセン化合物の両方のケイ素原子(構造Aに示される)から少なくとも原子3個分(あるいは例えば3個よりも多く最大で約18個の任意の数の原子分)、又は少なくとも共有結合4つ分(あるいは例えば4個よりも多く最大で約19個の任意の数の共有結合分)だけ離れているような構造Aを有する。
【0050】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化一価ラジカルはそれぞれ独立して、(i)分枝若しくは非分枝の置換アルキル基(例えばフッ素化されたC3〜C18アルキル基)、(ii)分枝若しくは非分枝の置換アルケニル基(例えばフッ素化されたC3〜C18アルケニル基)、(iii)置換シクロアルキル基、(iv)置換シクロアルキルアルキレン基、(v)分枝若しくは非分枝の置換アルキニル基(例えばフッ素化されたC3〜C18アルキニル基)、(vi)置換アリール基、又は(vii)置換アリールアルキレン基を含み、所定のフッ素化一価ラジカルの1以上のフッ素原子が、ペンタセン化合物の両方のケイ素原子(構造Aに示される)から少なくとも原子3個分又は少なくとも共有結合4つ分だけ離れている。
【0051】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
−CHCH
[式中、Rは一部(すなわち1以上の水素原子を含有する)又は完全にフッ素化(すなわち水素原子を含有しない)アルキル基、典型的にはC1〜C16アルキル基である。]を含むような構造Aを有する。フッ素化アルキル基Rは、分枝、非分枝、非環状、環状、又はこれらの組み合わせである。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0052】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
−CHCHOR
[式中、Rは上記と同様である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0053】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
−(CHOR
[式中、Rは上記と同様であり、oは1以上、典型的には1〜5の範囲の整数である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0054】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
−(CHN(Z)S(O)
[式中、Rは上記と同様であり、pは2以上、典型的には2〜5の整数であり、Zは、−H、−CH、又は−CHCHである。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0055】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
−CHCH=CFR
[式中、Rは上記と同様である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0056】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
【0057】
【化3】

【0058】
[式中、各Rは独立して、最大で約10個の炭素原子(又は最大で約14個の炭素原子)を有する一部(すなわち1以上の水素原子を含有する)又は完全にフッ素化(すなわち水素原子を含有しない)アルキル基である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0059】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
【0060】
【化4】

【0061】
[式中、Rはそれぞれ独立して、最大で約10個の炭素原子(又は最大で約14個の炭素原子)を有する一部(すなわち1以上の水素原子を含有する)又は完全にフッ素化(すなわち水素原子を含有しない)アルキル基である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0062】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルが式:
【0063】
【化5】

【0064】
[式中、n=0又は1又は2又は3である。]を含むような構造Aを有する。アスタリスクは、構造A内のケイ素原子への結合位置を示す。
【0065】
特定の実施形態では、R、R’及びR”の1つが存在し、かつそれが本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルを含み、R、R’及びR”の残りの基が同じか又は異なる部分を含む。R、R’及びR”の残りの基の1つ以上は水素を含み得るが、より典型的にはR、R’及びR”の残りの基はそれぞれ独立して水素以外の一価のラジカルを含む。例えば、特定の実施形態では、R、R’及びR”の1つが存在し、かつそれが本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルを含み、R、R’及びR”の残りの基がそれぞれ独立して同じか又は異なる分枝若しくは非分枝のアルキル基、より典型的には同じ分枝若しくは非分枝のアルキル基を含む。
【0066】
上記した構造を有する特定の例示的なフッ素化ペンタセン化合物を以下に示す。
【0067】
【化6】

【0068】
【化7】

【0069】
[式中、
I=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルシリルエチニル)ペンタセン;
II=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリルエチニル)ペンタセン;
III=6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;
IV=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;
V=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;
XXVII=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;
XX=6,13−ビス((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;及び
XXI=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン]。
【0070】
特定の実施形態では、R、R’及びR”の1つが存在し、かつそれが本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルを含み、R、R’及びR”の残りの基がそれぞれ独立して同じか又は異なる分枝若しくは非分枝のアルキレン基、より典型的には同じ分枝若しくは非分枝のアルキレン基を含む。例えば、上記した例示的な化合物III、IV、V、XX、XXI及びXXVIIのそれぞれにおいて、イソプロピルラジカルをイソプロペニルラジカルに置き換えることができる。
【0071】
他の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、1つ以上のフッ素化一価ラジカルが存在し、少なくとも1つのフッ素化一価ラジカルが、(i)環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換複素環、置換エーテル基若しくはポリエーテル基、又は置換スルホンアミド基を含み、(ii)1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子がペンタセン化合物の両方のケイ素原子(構造Aに示される)から少なくとも原子3個分、又は少なくとも共有結合4つ分だけ離れており、(iii)前記少なくとも原子3個分(すなわち構造Aに示される両方のケイ素原子からすべてのフッ素原子を分離する前記少なくとも原子3個分)の少なくとも1個の原子が炭素以外の原子を含むような構造Aを有する。例えば、特定の例示的な実施形態では、少なくとも3個の原子の少なくとも1個の原子は、スルホンアミド基におけるような窒素又は硫黄を含む。例えば、特定の例示的な実施形態では、少なくとも3個の原子の少なくとも1個の原子は、酸素を含む。
【0072】
このような構造を有する例示的なフッ素化ペンタセン化合物を下記に示す。
【0073】
【化8】

【0074】
[式中、
VII=6,13−ビス((3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン;及び
XXVI=6,13−ビス((N−メチル−ノナフルオロブチルスルホンアミドプロピル)ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン]。
【0075】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のC1〜C8アルキル基、(iii)少なくとも1個のC3〜C8シクロアルキル基、(iv)少なくとも1個のC2〜C8アルケニル基、又は(v)C1〜C8アルキル基とC3〜C8シクロアルキル基若しくはC2〜C8アルケニル基との組み合わせ、と組み合わせて含むような構造Aを有する。他の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)2個のC1〜C8アルキル基、(iii)2個のC3〜C8シクロアルキル基(例えば2個のシクロプロピル基、2個のシクロブチル基、若しくは2個のシクロペンチル基)、又は(iv)2個のC2〜C8アルケニル基と組み合わせて含むような構造Aを有する。
【0076】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロピル基、(iii)少なくとも1個のイソプロペニル基、又は(iv)イソプロピル基及びイソプロペニル基と組み合わせて含むような構造Aを有する。特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロピル基と組み合わせて含むような構造Aを有する。特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロペニル基と組み合わせて含むような構造Aを有する。
【0077】
特定の例示的な実施形態では、フッ素化ペンタセン化合物は、z=0(すなわちケイ素原子に結合した少なくとも2個の基が同じである)であり、かつR、R’及びR”が共に、(i)1つ以上の本明細書で述べるようなフッ素化一価ラジカルなどの少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)2個のイソプロピル基又は2個のイソプロペニル基と組み合わせて含むような構造Aを有する。
【0078】
上記に示されるように、本明細書のフッ素化ペンタセン化合物の多くは、z=0(すなわちケイ素原子に結合した少なくとも2個の基が同じである)であるような構造Aを有するフッ素化ペンタセン化合物を含む。z=0(すなわちケイ素原子に結合した少なくとも2個の基が同じである)であるような本発明の他の例示的なフッ素化ペンタセン化合物を下記表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1には示されていないが、本発明の他のペンタセン化合物は、ケイ素原子に結合した少なくとも1個のR基が、置換若しくは非置換のフラニル基、置換若しくは非置換のピロリル基、置換若しくは非置換のチエニル基、又は置換若しくは非置換のセレノフェニル基などの環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換若しくは非置換の複素環を含むような構造Aを有し得る点には注意を要する。
【0081】
上記したフッ素化ペンタセン化合物のすべてにおいて、R、R’及び/又はR”の1つ以上が1つ以上の置換基で置換されていてよい。上記したR、R’及び/又はR”基に好適な置換基としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、水酸基、アルキル基、シアノ基、アミノ基、カルボニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ニトロ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、エーテル基、及びスルホンアミド基の典型的な置換基としては、これらに限定されるものではないが、−F、−OH、−OCH、−CN、及び−COOHが挙げられる。シクロアルキル基、シクロアルキレン基、アリール基、アリールアルキレン基、アセチル基、及び環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する複素環(すなわち芳香族又は非芳香族複素環)の典型的な置換基としてはこれらに限定されるものではないが、−F、−OH、−OCH、−CN、及び−COOHが挙げられる。
【0082】
更に、上記した例示的なフッ素化ペンタセン化合物のすべてにおいて、ペンタセン環は1つ以上の上記した置換基Xを更に有し得る。1つ以上の置換基Xを利用することによって所定のペンタセン化合物を所定の用途に合わせて更に調整することができる。例えば、1つ以上の置換基Xを利用することによって、(1)二次元的スタッキング性を示す所定のペンタセン化合物の性質を更に高め、(2)所定のペンタセンの特定の溶媒(例えばフッ素化溶媒)に対する溶解度を高め、(3)所定のペンタセンの特定の溶媒(例えば非フッ素化溶媒)に対する溶解度を低下させ、(4)所定のペンタセンの耐熱性を高め、(5)溶液中又は固体状態での特定のペンタセンの耐酸化性を高め、(6)所定のペンタセンとポリマー又は他の半導体とのブレンドの形態を変化させる、といった1つ以上の更なる効果を得ることができる。
【0083】
特定の例示的な実施形態では、上記したペンタセン化合物のすべてを含む本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、各Xが独立して(i)水素、(ii)ハロゲン、又は(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基を含むような1つ以上の置換基Xを更に含む。例示的な置換基Xとしてはこれらに限定されるものではないが、(i)フッ素、(ii)アルキル基(例えばメチル基)、又は(iii)ペルフルオロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)が挙げられる。
【0084】
特定の例示的な実施形態では、上記したペンタセン化合物のすべてを含む本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のXがハロゲン、望ましくはフッ素を含むような1つ以上の置換基Xを更に含む。特定の例示的な実施形態では、上記したペンタセン化合物のすべてを含む本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも1個のXがメチル基又はトリフルオロメチル基などの分枝又は非分枝、置換又は非置換のアルキル基を含むような1つ以上の置換基Xを更に含む。
【0085】
特定の例示的な実施形態では、上記したペンタセン化合物のすべてを含む本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、少なくとも2個の隣り合うX基が結合して(a)置換若しくは非置換の炭素環、又は(b)置換若しくは非置換の複素環を形成するような1つ以上の置換基Xを更に含む。特定の実施形態では、2個の隣り合うX基が結合してペンタセン核のいずれか一方の末端環と縮合した置換若しくは非置換の非芳香族性の、炭素環であるか又は酸素、窒素、硫黄、又はセレンから選択される1又は2個のヘテロ原子を含む5〜7員環を形成する。
【0086】
1つ以上の置換基Xが−H(水素)以外のものである特定の例示的なフッ素化ペンタセン化合物としては、これらに限定されるものではないが、以下の化合物が挙げられる。
【0087】
【化9】

【0088】
[式中、
XXII=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル−エチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセン;
XXIII=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラ−メチルペンタセン;
XXIV=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル−エチニル)−2−ペンタフルオロエチルペンタセン;及び
XXV=6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−1−フルオロペンタセン]。
【0089】
本発明は更に、(I)1つ以上の上記したフッ素化ペンタセン化合物、及び(II)溶媒を含む組成物に関する。本発明の組成物を形成するのに好適な典型的な溶媒としてはこれらに限定されるものではないが、ケトン、芳香族炭化水素、フッ素化溶媒などの有機溶媒が挙げられる。好適な溶媒としてはこれらに限定されるものではないが、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、イソホロン、アニソール、テトラヒドロナフタレン、ブチルシクロヘキサン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。溶媒のブレンドもまた利用することができる。好適な溶媒のブレンドとしてはこれらに限定されるものではないが、デカンとブレンドされたアニソール、及びデカンとブレンドされたブチルベンゼンが挙げられる。
【0090】
例示的な一実施形態では、組成物は1つ以上の上記したフッ素化ペンタセン化合物、及びヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン、(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼン、1,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、3−(トリフルオロ−メチル)アニソール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロアニソール、2,3,5,6−テトラフルオロアニソール、ペンタフルオロ−ベンゾニトリル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン、2’,4’,5’−トリフルオロアセトフェノン、2’−(トリフルオロメチル)アセトフェノン、及び3’−(トリフルオロメチル)−アセトフェノンなどのフッ素化溶媒を含む。組成物は、フッ素化溶媒及び非フッ素化有機溶媒を含む溶媒混合物を含んでもよい。
【0091】
特定の組成物は、上記したフッ素化ペンタセン化合物、フッ素化溶媒、場合に応じて用いられる非フッ素化溶媒、並びに、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロシクロアルカン(例えばペルフルオロデカリン)、ペルフルオロヘテロアルカン(例えばペルフルオロトリブチルアミン及びペルフルオロポリエーテル)、ペルフルオロヘテロシクロアルカン(例えばペルフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン))、及びフッ素化エーテル又はポリエーテル(例えば3−エトキシ−1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン及び2H−ペルフルオロ−5,8,11−トリメチル−3,6,9,12−テトラオキサペンタデカン)などの別のフッ素化された液体を含み得る。これらのフッ素化された液体が添加される場合、フッ素化された液体はしばしば組成物の表面張力を低下させ、各種の基材表面の表面における濡れを促進する。これらのフッ素化された液体は、フッ素化ペンタセン化合物の良好な溶媒としては機能しない場合もある。
【0092】
典型的には、1つ以上の上記したフッ素化ペンタセン化合物は、所定の組成物中に組成物の全重量に対して少なくとも0.1重量%の濃度で存在する。組成物中のフッ素化ペンタセン化合物の濃度の上限値は、電子デバイスの製造時におけるような基材への塗布時の組成物の温度における特定の溶媒に対するその化合物の溶解度の限界値にしばしば近い値である。本発明の典型的な組成物は、上記したフッ素化ペンタセン化合物の1つを、約0.1重量%〜約5.0重量%、より典型的には約0.5重量%〜約3.0重量%の範囲の濃度で含む。
【0093】
特定の実施形態では、本発明の組成物は上記したフッ素化ペンタセン化合物の少なくとも1つ及び溶媒を含む。他の実施形態では、本発明の組成物は、上記したフッ素化ペンタセン化合物の少なくとも1つ及び溶媒を、1つ以上の更なる組成物成分と組み合わせて含む。好適な更なる組成物成分が添加される場合、更なる組成物成分としてはこれらに限定されるものではないが、ポリマー添加剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、フッ素化ペンタセンの相補的な電子移動パートナーである別の半導体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の例示的な実施形態では、本組成物には、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(4−シアノメチルスチレン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、又は米国特許出願公開第2004/0222412(A1)号若しくは同第2007/0146426(A1)号(これらの発明の主題をその全容にわたって本願に援用する)に開示される他の任意の好適なポリマーからなる群から選択されるポリマー添加剤が含まれる。特定の望ましい実施形態では、ポリマー添加剤には、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、又はポリ(メチルメタクリレート)が含まれる。特定の例示的な実施形態では、本組成物には、界面活性剤又はフッ素化界面活性剤から選択される界面活性剤が含まれる。
【0094】
含まれる場合、更なる組成物成分(すなわちフッ素化ペンタセン化合物以外の成分)はそれぞれ、組成物の全重量に対して0〜約50重量%の量で独立して含まれる。典型的には、更なる組成物成分(すなわちフッ素化ペンタセン化合物以外の成分)はそれぞれ、組成物の全重量に対して約0.0001〜約10.0重量%の範囲の量で独立して含まれる。例えば、ポリマー添加剤(例えばポリスチレン)が組成物に含まれる場合、ポリマー添加剤は、組成物の全重量に対して典型的には0〜約5.0重量%、より典型的には約0.5〜約3.0重量%の量で含まれる。例えば、界面活性剤が組成物に含まれる場合、界面活性剤は、組成物の全重量に対して典型的には0〜約1.0重量%、より典型的には約0.001〜約0.5重量%の量で含まれる。
【0095】
特定の実施形態では、得られる組成物が、従来のコーティング法によって基材上に組成物をコーティングすることができるような組成物としての性質(例えば組成物安定性、粘性など)を有することが望ましい。好適な従来のコーティング法としては、これらに限定されるものではないが、スピンコーティング、ナイフコーティング、ロール・ツー・ロール・ウェブコーティング、及びディップコーティング、並びにインクジェット印刷、スクリーン印刷、及びオフセットリソグラフィーなどの印刷法が挙げられる。望ましい一実施形態では、得られる組成物は印刷可能な組成物であり、更により望ましくはインクジェット印刷可能な組成物である。
【0096】
上記した組成物は基材上にコーティングすることができる。得られる基材は、少なくとも1つのコーティング可能な表面と、該少なくとも1つのコーティング可能な表面上のコーティング層とを有し、コーティング層はR、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有するフッ素化ペンタセン化合物を含む。上記したように、コーティング層は更に、少なくとも1つの上記したフッ素化ペンタセン化合物以外の1つ以上の更なる組成物成分を含んでもよい。
【0097】
本発明の組成物は各種の基材上にコーティングすることができる。好適な基材としてはこれらに限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリイミドなどのポリマーフィルム、並びにシリカ、アルミナ、シリコンウェーハ、及びガラスなどの無機基材が挙げられる。所定の基材の表面は、例えばその表面に固有の化学官能基をシランなどの化学試薬と反応させたり、あるいは表面をプラズマに曝露するといった処理を行うことによって表面特性を改変することができる。例示的な一実施形態では、基材は電子デバイス又は電子デバイス要素を含む。例えば、本発明の組成物を基材上にコーティングすることによって、薄膜トランジスタ(TFT)、光電池、有機発光ダイオード(OLED)、又はセンサなどの電子デバイスの半導体層を形成することができる。
【0098】
基材表面にコーティングした時点で、コーティング層中の溶媒を除去して半導体層を形成する。任意の好適な方法を使用して、コーティング層中の溶媒を除去する(すなわち乾燥又は蒸発させる)ことができる。例えば溶媒は蒸発によって除去することができる。典型的には、半導体層を形成するためには溶媒の少なくとも約80%を除去する。例えば、溶媒の少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%を除去する。
【0099】
溶媒はしばしば任意の好適な温度で蒸発させることができる。特定の方法では、溶媒混合物を周囲温度(すなわち、コーティング工程が行われる部屋又は設備の温度で)蒸発させる。他の方法では、溶媒混合物を周囲温度よりも高い又は低い温度で蒸発させる。例えば、基材を支持するプラテンを周囲温度よりも高い又は低い温度に加熱又は冷却することができる。更に他の方法では、溶媒混合物の一部又は大部分を室温で蒸発させ、残りの溶媒を周囲温度よりも高い温度で蒸発させることができる。溶媒混合物を室温より高い温度で蒸発させる方法では、窒素雰囲気などの不活性雰囲気下で蒸発を行うことができる。
【0100】
また、真空の使用など、低圧(すなわち大気圧より低い圧力)を作用させることによって溶媒を除去することもできる。低圧を作用させる際、溶媒は上記したような任意の適当な温度で除去することができる。
【0101】
コーティング層からの溶媒の除去速度は得られる半導体層に影響し得る。例えば除去プロセスが速すぎると、結晶化の際に半導体分子の充填不良が起こりやすくなる。半導体分子の充填不良は、半導体層の電気的性能を低下させ得る。溶媒は、制御しない条件(すなわち時間的制約がない)下で自然に完全に蒸発させるか、又は蒸発の速度を調節するために条件を制御することができる。充填不良を最小に抑えるため、コーティング層を被覆することによって蒸発速度を遅くしつつ溶媒を蒸発させることができる。このような条件によって比較的結晶度の高い半導体層が形成され得る。
【0102】
所望の量の溶媒を除去して半導体層を形成した後、熱又は溶媒蒸気(すなわち熱アニーリング若しくは溶媒アニーリングによる)に半導体層を曝露することによってアニールすることができる。
【0103】
本発明の例示的な電子デバイスは、上記したフッ素化ペンタセンを基材上に成膜することによって製造することができる。フッ素化ペンタセンの成膜は、気相蒸着(例えば真空蒸着)、ペンタセンの溶融物の塗布又はコーティング、又は溶液コーティング及び印刷プロセスなどの任意の手段によって行うことができる。
【0104】
本発明の例示的な電子デバイスは、図1に示されるようなトップコンタクト/ボトムゲート型のTFTの構造を有し得る。図1に示されるように、例示的な電子デバイス10は、基材11、ゲート電極16、誘電体層12、半導体層13、ソース電極14、及びドレイン電極15を含む。例示的な電子デバイス10の基材11、ゲート電極16、誘電体層12、ソース電極14、及びドレイン電極15を形成するための材料は、TFT電子デバイスを形成するために典型的には使用される任意の材料であってよい。
【0105】
基材11を形成するうえで適当な材料としては、これらに限定されるものではないが、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリイミドが挙げられる。誘電体層12を形成するうえで適当な材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(4−シアノメチルスチレン)などの各種のポリマーの任意のものが含まれ、これらは典型的には溶液から成膜されるが、官能性モノマー及び/又はオリゴマーと硬化剤とを含有する配合物を硬化させることによって定位置に形成することもできる。誘電体層12は、これらに限定されるものではないが、誘電体層12の誘電率を高める機能を有するBaTiO、SiO、ZrOなどの無機充填剤を更に含んでもよい。
【0106】
半導体層13を形成するうえで好適な材料には、上記した本発明の組成物が含まれる。ゲート電極16、ソース電極14、及びドレイン電極15のそれぞれを形成するうえで好適な材料としては、これらに限定されるものではないが、カーボンナノチューブ、スルホン化ポリスチレンをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)、金、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウム、白金、クロム、及びこれらのブレンド(例えば各種の電極材料のブレンド、合金、多層複合体)が挙げられる。
【0107】
特定の場合では、基材11、ゲート電極16、及び誘電体層12は、熱酸化物を有する高濃度ドープしたn型シリコンウェーハ(例えばNoel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より市販されるもの)であり、その場合、高濃度ドープしたn型シリコンウェーハが基材及びゲート電極の両方として機能し、熱酸化物が誘電体層として機能する。
【0108】
特定の例示的実施形態では、以下の層、すなわち、ゲート電極16、誘電体層12、半導体層13、ソース電極14、及びドレイン電極15のうちの1つ以上のものが印刷可能(例えばインクジェット印刷可能)な層である。例えば、誘電体層12、ゲート電極16、ソース電極14、及びドレイン電極15を形成するうえで好適な印刷可能な組成物が、現在米国特許第7,498,662号となっている米国特許出願公開第20070114516(A1)号に開示されている(その発明の主題をその全容にわたって本願に援用する)。
【0109】
本発明の電子デバイスは、上記したフッ素化ペンタセン化合物の少なくとも1つを含むことが望ましい。このような電子デバイスは、例えば図2の例示的なデバイス20に示されるような以下の特定のトップコンタクト/ボトムゲート型のTFT構造を有し得る。すなわち、ゲート電極層16を覆って配置された熱酸化物(SiO)層としての第1の誘電体層12aを有する、高濃度にn型ドープされたシリコンウェーハを含むゲート電極層16(例えばNoel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より市販される高濃度にn型ドープされたシリコンウェーハ);SARTOMER(商標)SR−368(Sartomer Company Inc.(ペンシルベニア州エクストン))(約8.5重量%)、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(OSi Specialties(ウェストバージニア州サウスチャールストン)より販売されるSILQUEST(登録商標)A−174シラン)で表面処理され、その発明の主題をその全容にわたって本願に援用する米国特許出願第11/771,787号(現在米国特許出願公開第2009/0004771号として公開)、及び米国特許出願第11/771,859号(現在米国特許出願公開第2009/0001356号として公開)の開示にしたがって形成されたジルコニア粒子(例えばそれぞれの出願の「調製例1−誘電体インク」を参照)(約40.0重量%)、IRGACURE(商標)184光開始剤(Ciba Corporation(デラウェア州ニューポート))(約1.5重量%)、及びイソホロン(Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー))(約50.0重量%)からなるポリマー誘電体組成物を含む第2の誘電体層12b;上記したフッ素化ペンタセン化合物の少なくとも1つ(約2.0重量%)、ポリスチレン(Polymer Source Inc.(モントリオール、カナダ))(約1.0重量%)、及びブチルベンゼン(Sigma−Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー))(約97.0重量%)からなる組成物で形成された半導体層13;金を含むソース電極14;並びに、金を含むドレイン電極15。
【0110】
本発明の他の例示的な電子デバイスは、図3に示されるような構造を有し得る。図3に示されるように、例示的な電子デバイス30は、ゲート電極16、誘電体層12、ソース電極14、ドレイン電極15、及び少なくとも1つの本発明のフッ素化ペンタセン化合物を含む半導体層13を有する。
【0111】
上記したフッ素化ペンタセン化合物を本発明の組成物又は電子デバイスに添加することによって以下の1つ以上の効果が得られると考えられる。
【0112】
(1)本発明のフッ素化ペンタセン化合物のいずれかを添加しない同様の半導体層と比較して、より多くの半導体が、表面から離れる方向すなわち表面のXY平面から外れる方向(すなわちZ方向)ではなく、表面に沿って横方向(すなわちXY平面内)に堆積及び結晶化する。
【0113】
(2)半導体が、(i)表面とポリマーとの間の界面、又は(ii)空気とポリマーの界面に存在するような形態となる(前者の場合、表面がゲート誘電体である場合にボトムゲート型TFTに好ましい形態となる。後者の場合、ゲート誘電体を有機半導体上に更に成膜することによってトップゲート型TFTの構造に有利な形態となる)。
【0114】
(3)本発明のフッ素化ペンタセン化合物のいずれかを添加しない同様の半導体によって得られるものと比較して表面を濡らす溶液の性能が向上する。
【0115】
(4)単独で、又はフッ素化界面活性剤若しくは他のフッ素化液と組み合わせた場合に極めて低い表面張力を有するために、炭化水素及びフルオロカーボン表面を含む低エネルギー表面のような表面に対する優れた濡れ性を与えるフッ素化溶媒に対する溶解度又は分散性が向上する。
【0116】
(5)高い疎水性及び/又は疎油性により、水分及び有機溶媒から電子デバイスが保護される。
【0117】
(6)組成物又は電子デバイスが酸化を受けにくくなる。
【0118】
(7)組成物又は電子デバイスの光化学的安定性が向上する。
【0119】
上記した本発明のフッ素化ペンタセン化合物は、R、R’及びR”置換基の所望の組み合わせを有する置換シリルアセチレンを形成する工程と、次いでこの置換シリルアセチレンを6,13−ペンタセンキノンと反応させる工程とを含む方法によって調製することができる。R、R’及びR”置換基の所望の組み合わせを有する置換シリルアセチレンを形成する工程は、これらに限定されるものではないが、2置換クロロシラン(例えばクロロジイソプロピルシラン)上の不安定基(典型的にはハロゲン)をトリメチルシリルアセチレン基で置換し、次いで多くの既知の変換反応のいずれか(例えばジクロロメタンなどの溶媒中でN−ブロモスクシンイミドで処理するなど)によってシラニル水素をハロゲンに変換し、次いでこの新たに生成した不安定基を第3の置換基(例えばフッ素化一価ラジカル)によって置換する第1の置換反応などの多くの反応工程を含み得る。また、フルオロアルキルトリクロロシランの1個の不安定基をアルキン(例えばトリメチルシリル置換アセチレン)で置換し、次いで残りのハロゲンを他の置換基(例えばイソプロピル基)で置換してもよい。次いで弱塩基性条件下でトリメチリルシリル基を選択的に除去することで、所望の末端アセチレンが生成される。第3の代替法では、市販のフルオロアルキルジアルキルシリル塩化物の塩素置換基を末端アセチリドによって置換することで、所望のアセチレンを直接生成する。第4の代替法では、例えば臭化アリル又は臭化アルキルの存在下で遷移金属触媒を使用した水素−臭素交換反応によって市販のフルオロアルキルジアルキルシランのシラニル水素をハロゲンに変換し、次いでこの新たに生成された不安定基(ハロゲン)をアセチレン又はトリメチルシリルアセチレンによって置換する。後者の場合では、弱塩基性条件下でトリメチルシリル基を選択的に除去することによって所望の末端アセチレンを生成する。本発明のフッ素化ペンタセン化合物を形成する方法は、更に以下の反応工程の1つ以上を含んでもよい。すなわち、少なくとも1工程、場合により2又は3工程の再結晶化工程によるアセトンなどの好適な溶媒からの精製であり、その場合、フッ素化ペンタセン化合物を所定量の沸騰したアセトンに溶解して固形分をすべて溶解した後、光分解を防止するために溶液を光から保護しながら約0℃〜4℃に冷却する。この後、固形分を濾過により回収し、真空下で乾燥して残留アセトンを除去する。
【0120】
本発明のフッ素化ペンタセン化合物が一旦形成されたなら、溶媒及び1つ以上の更なる成分と合わせて印刷可能な組成物などの組成物とすることができる。上記したように、本発明のフッ素化ペンタセン化合物を上記した有機溶媒(例えば3−(トリフルオロメチル)アニソール)の少なくとも1つに加えて第1の組成物を形成することができる。上記したような更なる組成物成分(例えばポリスチレン)を第1の組成物に加えて最終的な組成物としてもよい。この最終組成物は、インクジェット印刷装置によって印刷可能なものであることが望ましい。
【0121】
上記した本発明のフッ素化ペンタセン化合物の少なくとも1つを含有する本発明の組成物を使用することによって、様々なコーティング、コーティング層を有する基材、電子デバイス部品、及び電子デバイスを作ることができる。得られるコーティング、コーティング層を有する基材、電子デバイス部品、又は電子デバイスは、R、R’、R”、x、y、z及びXが上記したものであるような構造Aを有するフッ素化ペンタセン化合物を含んでいることが望ましい。得られるコーティング、コーティング層を有する基材、電子デバイス部品、又は電子デバイスは、z=0であり、R及びR’が共に2個の同じ基(例えば2個のアルキル基、2個のシクロアルキル基、又は2個のアルケニル基)及び1個の異なる基(例えば、1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子がいずれのケイ素原子からも少なくとも原子3個分又は共有結合4つ分だけ離れているようなフッ素化一価ラジカル)を含むような構造Aを有するフッ素化ペンタセン化合物を含んでいることがより望ましい。特定の望ましい実施形態では、得られるコーティング、コーティング層を有する基材、電子デバイス部品、又は電子デバイスは、z=0であり、Rがメチル、イソプロピル、イソプロペニル、又はシクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、又はシクロペンチル)を含み、R’が上記したフッ素化一価ラジカルのいずれか1つを含むような構造Aを有するフッ素化ペンタセン化合物を含む。
【0122】
本発明を上記に説明し、更に実施例により下記に説明するが、こうした実施例はいかなる意味においても発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。逆に本明細書の説明を読むことで、本発明の趣旨及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者にそれ自体を示唆し得る様々な他の実施形態、改変及びその均等物が考えられることは明確に理解されるはずである。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、あくまで例示を目的としたものであって添付の特許請求の範囲を限定することを目的としたものではない。実施例及び明細書の残りの部分における部、比率、比などは、特に断らないかぎりはすべて重量に基づいたものである。実施例で使用する材料は、個々の実施例において特に断らないかぎりは表3に示す供給元より入手した。
【0124】
【表2−1】

【0125】
【表2−2】

【0126】
本発明で使用するシランA−174で表面処理されたジルコニアナノ粒子を形成する方法については、いずれも3M Company(ミネソタ州セントポール)の出願人名で出願され、同社に譲渡された米国特許出願第11/771,787号及び同第11/771,859号(現在、米国特許出願公開第2009/0004771号及び同第2009/0001356号としてそれぞれ公開されている)(これらの出願の発明の主題をその全容において本願に援用する)に開示されている(例えば各出願の「調製例1−誘電体インク」を参照)。
【0127】
試験方法:
移動度値の試験方法I:
2台のSourse Measureユニット(Keithley Instruments,Inc.)(オハイオ州クリーブランド)より販売されるモデル2400)を使用して空気中で飽和電界効果移動度(μ)を測定した。各装置はS−1160シリーズプローブステーション上に置き、S−725−PRMマニピュレータ(いずれもSignatone Corp.(カリフォルニア州ギルロイ))を使用してプローブを接続した。ドレイン・ソース間バイアス電圧(VDS)を−40Vに維持し、ゲート・ソース間バイアス(VGS)を+10V〜−40Vの範囲で1V刻みで増加させた。ドレイン・ソース間電圧バイアス(VDS)を−40Vに一定に維持し、ゲート・ソース間電圧バイアス(VGS)を+10V〜−40Vで変化させてドレイン・ソース間電流(IDS)を測定した。飽和電界効果移動度(μ)を、VGSに対してIDSの平方根をプロットした直線部分の傾きから次式を使用して計算した。
【0128】
DS=μWC(VGS−V÷2L
式中、Cはゲート誘電体の固有キャパシタンス、Wはチャネル幅、及びLはチャネル長さである。
【0129】
GSに対するIDSの平方根の曲線のプロットを使用し、直線フィッティングのX軸外挿を閾値電圧(V)とした。更に、IDSをVGSの関数としてプロット(対数スケールを使用する)して曲線を得て、Vを含む曲線部分に沿って直線フィッティングを行った。この線の傾きの逆数は、閾値下の傾き(S)であった。オン/オフ比を、IDS−VGS曲線のドレイン電流(IDS)の最小値と最大値との差とした。
【0130】
移動度値の試験方法II:
各試料の平均移動度を、2台のSource Measureユニット(Keithley Instruments,Inc.(オハイオ州クリーブランド)より販売されるモデル2400)を使用して、空気中、周辺光下で測定した。各装置はS−1160シリーズプローブステーション上に置き、S−725−PRMマニピュレータ(いずれもSignatone Corp.(カリフォルニア州ギルロイ))を使用してプローブを接続した。ドレイン・ソース間バイアス電圧(VDS)を−40Vに維持し、ゲート・ソース間バイアス(VGS)を+10V〜−40Vの範囲で1V刻みで増加させた。平均移動度を、各基材について10個のトランジスタの測定値から計算した。
【0131】
ディップコーティングは必ずしも基材を完全に覆うものではないことから、各デバイスの「有効チャネル幅」を測定した。乾燥した半導体組成物で被覆された基材表面の比率(%)を、(i)基材のデジタル写真を高倍率(100倍)で3枚撮影し、次いで(ii)写真編集用ソフトウェア(Adobe Systems Inc.(カリフォルニア州サンホセ)から商品名PHOTOSHOP CS3として市販されるもの)を使用して、露光した基材の領域をL,a,b色空間における均一な黒色(0,0,0)として識別及びレンダリングし、次いで(iii)写真編集ソフトウェアのヒストグラム機能を使用して明度(L)<15である写真の比率(%)を識別し、次いで(iv)3枚の写真の結果を平均して、基材の表面被覆率の値を得ることによって測定した。次いで表面被覆率の値を使用してTFTの有効チャネル幅を計算し、この有効チャネル幅を使用して電荷キャリア移動度の値を計算した。次式を使用して有効チャネル幅を計算した。
【0132】
【数1】

【0133】
式中、Weffは有効チャネル幅であり、Wdepはソース及びドレイン端子の長さ(成膜時)であり、Covは表面被覆率(%)である。例えば、ソース及びドレイン電極が長さ1000マイクロメートル、表面被覆率が80%である場合、有効チャネル幅は800マイクロメートルとなる。
【0134】
図4は、例示的な測定パラメータをグラフで示したものである。図4で、「A」として示されるトレースは、測定されたドレイン電流(IDS)をVGSの関数として示したものである。「B」として示されるトレースは、測定されたドレイン電流(IDS)の平方根をVGSに対して示したものであり、「C」として示されるトレースは測定されたゲート電流(IGS)をVGSに対して示したものである。VGSに対するドレイン電流の平方根のプロット(トレース「B」)の傾き(m)から次式を使用して飽和電界効果移動度(μ)を計算した。
【0135】
【数2】

【0136】
式中、Cはゲート誘電体の固有キャパシタンス、Wは有効チャネル幅、及びLはチャネル長さである。各試料の移動度を、測定範囲において観察された移動度の最大値とした。
【0137】
実施例1−6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した250mL丸底フラスコ中で4.12g(42.0mmol)のトリメチルシリルアセチレンを45mLの無水THFに溶解した。この溶液を0℃に冷却してからn−ブチルリチウム(14.8mL、37mmol、2.5Mヘキサン中)を滴下した。攪拌を1時間継続し、無色の溶液を室温にまで昇温させた。第2のオーブン乾燥した500mL丸底フラスコ中で3,3,3−トリフルオロプロピル−トリクロロシラン(8.1g、35mmol)を無水THF(35mL)中に溶解した。第1の反応混合物を第2の溶液に1時間かけて滴下した後、5時間攪拌した。この新たな反応混合物を0℃に冷却し、次いでイソプロピルリチウム(123mL、86mmol、0.7Mペンタン溶液)を滴下し、溶液を12時間かけて室温にまで昇温させた。混合物の全体を150mLの塩化アンモニウムの希釈溶液に注ぎ、ヘキサン(100mL)を加えた。有機層を分離し、水層をヘキサンで再度抽出した(20mL)。有機層を合わせ、水で洗い(3×20mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。トリメチルシリルでキャップされた生成物を溶離剤としてヘキサンを使用してシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製し(ヘキサン中、R=約0.6)、7.7gの無色の液体を得た。生成物をTHF(20mL)中に溶解し、メタノール(20mL)及び15%水酸化ナトリウム溶液を3滴加えた後、30分間攪拌することによってトリメチルシリル基を除去した。粗生成物を単離し、ヘキサンを使用して薄いシリカパッドを通して流し、真空下で濃縮することによって4.9g(21mmol、開始物質のシランからの収率60%)の無色の液体を得た。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.1(m,14H),0.8(m,2H)。
【0138】
6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
(3,3,3,−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.3g、5.7mmol)及び無水THFを攪拌子を備えたオーブン乾燥した100mL丸底フラスコに加えた。イソプロピルマグネシウムクロリド(2mL、2M THF溶液)を滴下し、溶液を60℃に1時間加熱した。混合物を熱から外してペンタセンキノン(0.47g、1.5mmol)を加えた。60℃での加熱を再開し、12時間継続した。得られた均質な反応混合物を室温に冷却した後、0.5mLの塩化アンモニウムの飽和溶液を加えて反応を停止させた。塩化第一スズ二水和物(1.2g、5.3mmol)を3mLの10%塩酸溶液に溶解し、反応停止させた反応混合物に加え、攪拌を15分間継続した。ヘキサン(50mL)及び水(20mL)を加え、有機層を分離した。有機層を10%塩酸溶液及び水で繰り返し交互に洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、厚いシリカゲルパッド上に流し、更なるヘキサン(200mL)で流した。生成物をヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物により溶出した。溶媒を除去することにより0.50g(0.67mmol、キノンに対する収率45%)の青色粉末が得られ、これをアセトンから再結晶化させて0.44gの青色の針状結晶を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),8.0(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),7.4(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0139】
実施例2−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した250mLの丸底フラスコ中で3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−ヘキシルジメチルクロロシラン(4.58g、13.4mmol)を無水THF(10mL)に溶解し、氷浴中で冷却した。エチニルマグネシウムブロミド(34mL、17mmol、0.5M THF溶液)をゆっくりと加えた後、混合物を60℃に12時間加熱した。水を加えて反応を停止させ、希硫酸(硫酸(95〜98%)の10重量%水溶液)を加えて塩を溶かした後、ヘキサンを加え、有機層を分離した。有機層を水で洗い(5×20mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して粗生成物を得た。溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィー使用して精製し無色の液体を得た(3.52g、10.6mmol、80%)。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.1(m,2H),0.8(m,2H),0.2(s,6H)。
【0140】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルシリル)アセチレン(1.25g、3.78mmol)を無水THF(5mL)に溶解した。イソプロピルマグネシウムクロリド(1.1mL、2.2mmol、2M THF溶液)を加え、溶液を60℃に2時間加熱した。反応溶液を熱から外し、ペンタセンキノン(0.25g、0.80mmol)を加えてから60℃に12時間加熱した。飽和塩化アンモニウム溶液を4滴加えることにより反応を停止させ、1mLの10%塩酸溶液に溶解した塩化第一スズ二水和物(0.63g、2.8mmol)を加え、攪拌を5分間継続した。水(10mL)を加えることにより生成物を沈殿させ、濾過により回収し、次いでヘキサンに溶解して硫酸マグネシウム上で乾燥した。このヘキサン溶液を厚いシリカゲルパッド上に流し、更なるヘキサンで流して余分なアセチレンを溶出させた後、ヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物によって生成物を溶出した。溶媒を除去することにより0.4gの青色固体が得られ、これをアセトン(約12mL)から再結晶化させて0.23g(0.25mmol、31%)の青色の針状結晶を得た。生成物を分析して以下のデータを得た。H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.1(s,4H),8.0(dd,J=3.2Hz,6.6Hz,4H),7.6(dd,J=3.0Hz,6.6Hz,4H),2.4(m,4H),1.2(m,4H),0.6(s,12H)。
【0141】
実施例3−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥させた250mLの丸底フラスコに3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(4.52g、11.9mmol)及び無水THF(20mL)を加えた。イソプロピルリチウム(34mL、24mmol、0.7Mペンタン溶液)を1時間かけて滴下した後、攪拌を4時間継続した。エチニルマグネシウムブロミド(32mL、16mmol、0.5M THF溶液)をゆっくりと加えてから反応混合物を50℃に12時間加熱した。水を加えて反応を停止させ、希硫酸を加えて塩を溶かした後、ヘキサンを加え、有機層を分離した。有機層を水で洗い(5×20mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して粗混合生成物を得た。溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中、R=約0.6)により精製して1.8g(4.6mmol、31%)の所望の生成物を無色の液体として得た。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.1(m,14H),0.8(m,2H)。
【0142】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−ヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.7g、4.5mmol)を無水THF(5mL)に溶解し、氷浴中で冷却した。n−ブチルリチウム(1.4mL、3.6mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下してから攪拌を30分間継続した。ペンタセンキノン(0.44g、1.4mmol)を加え、反応混合物を12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム溶液を4滴加えることにより反応を停止させ、1mLの10%塩酸溶液に溶解した塩化第一スズ二水和物(1.1g、5.0mmol)を加え、この溶液を5分間攪拌した。ヘキサンを加え、有機層を分離して硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。粗生成物をヘキサンに溶かし、厚いシリカパッド上に流した後、ヘキサンで流して余分なアセチレンを溶出させた。生成物をヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物により溶出した。真空下で濃縮することにより粘稠な青色油状物が得られ、これをアセトン(約2mL)から再結晶化させて(室温で5日間)、30mg(0.03mmol、2%)の赤紫色の細長い板状物を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),8.0(dd,J=3.0Hz,6.6Hz,4H),7.4(dd,J=3.2Hz,7.0Hz,4H),2.5(m,4H),1.3(m,28H),0.8(m,4H)。
【0143】
実施例4−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチル−シリルエチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した250mLの丸底フラスコ中で3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルクロロシラン(9.67g、21.9mmol)を20mLの無水THFに溶解した。エチニルマグネシウムブロミド(50mL、25mmol、0.5M THF溶液)を加え、混合物を60℃に12時間加熱した。混合物を室温にまで冷却させた後、水を滴下することにより反応を停止させ、希硫酸を加えてマグネシウム塩を溶解した。有機層を分離し、水(3×20mL)及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物を溶離剤としてヘキサンを使用してシリカゲル上でクロマトグラフィーによって濾過した。溶媒を除去することにより9.0g(21mmol、96%)の生成物を無色の液体として得た。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.1(m,2H),0.8(m,2H),0.2(s,6H)。
【0144】
第1の方法を使用した6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリル)アセチレン(2.3g、5.3mmol)を8mLの無水THFに溶解した。イソプロピルマグネシウムクロリド(2.4mL、2M THF溶液)を滴下し、この溶液を60℃に2時間加熱した。混合物を熱から外してペンタセンキノン(0.63g、2.0mmol)を加えた。60℃での加熱を再開し、12時間継続した。得られた均質な反応混合物を室温に冷却した後、0.5mLの塩化アンモニウムの飽和溶液を加えて反応を停止させた。攪拌子を備えた別の三角フラスコ中で塩化第一スズ二水和物(7.0mmol、1.6g)をメタノール(150mL)に溶解し、2mLの10%塩酸を加えた。メタノール溶液を1時間冷却した後、反応混合物をメタノール(50mL)で希釈し、更なるメタノール(20mL)ですすいで三角フラスコに入れ、室温で15分間攪拌した。この混合物を1時間冷却した後、固体を濾過により回収し、メタノールですすぎ、周囲雰囲気中で乾燥した。この固体を最小量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンで希釈(ヘキサン:ジクロロメタン=約9:1)してから中程度の厚さのシリカゲルパッド上に流し、ヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物で溶出した。溶媒を除去することにより0.61gの光沢のある青色固体が得られ、これをアセトン(約160mL)から再結晶化させて0.48gの青色の針状結晶を得た(0.42mmol、キノンからの収率21%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.1(s,4H),8.0(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),7.4(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),2.4(m,4H),1.2(m,4H),0.6(s,12H)。
【0145】
実施例5−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−デシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピル−シリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した250mLの丸底フラスコ中で3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン(8.7g、15mmol)を無水THF(10mL)に溶解した。別のオーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で(トリメチルシリル)アセチレン(1.7g、18mmol)を無水THF(15mL)に溶解し、氷浴中で冷却した後、n−ブチルリチウム(6.0mL、15mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下した。この第2の溶液を1時間攪拌してから第1の溶液に45分間かけて滴下した。得られた溶液を5時間攪拌し、氷浴中で冷却した。イソプロピルリチウム(43mL、30mmol、0.7Mペンタン溶液)をゆっくりと加えてから攪拌を12時間継続した。反応混合物を100mLの希釈塩化アンモニウム溶液に流し込み、次にヘキサン(40mL)で洗った。有機層を分離し、水層を再度抽出した(30mLヘキサン)。有機層を合わせ、水で洗い(3×20mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して粗混合生成物を得た。生成物を溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーを使用して単離し(ヘキサン中、R=約0.6)、濃縮することによって無色の液体を得た(3.9g、6.0mmol)。トリメチルシリルエンドキャップを除去するため、生成物をTHF(約15mL)及びメタノール(約5mL)に溶かし、15分間激しくパージした。15%水酸化ナトリウム水溶液を4滴加えた後、パージを継続した。パージを(それほど激しくなく)継続しながら反応液を45分間攪拌した。混合物に水を加えてヘキサンで抽出し、10%塩酸溶液(<5mL)及び水(3×20mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮することにより生成物を無色の液体として得た(3.4g、5.9mmol、39%)。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.0(m,14H),0.8(m,2H)。
【0146】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で1.8gの(3,3,4,4,5,5,6,6,−7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル)アセチレン(3.1mmol)を無水THF(5mL)に溶解した。イソプロピルマグネシウムクロリド(1.3mL、2.5mmol、2M THF溶液)を加え、混合物を60℃に2時間加熱した。反応混合物を熱から外した後、ペンタセンキノン(0.34g、1.1mmol)を加え、フラスコを再び60℃に加熱し、これを12時間継続した。飽和塩化アンモニウム溶液を3滴加えることによって反応を停止させた。これとは別に、塩化第一スズ二水和物(0.90グラム、4.0mmol)を1.5mLの10%塩酸水溶液に溶解することにより塩化第一スズ水溶液を調製し、この溶液を反応を停止した反応混合物に加えた。攪拌を10分間継続した後、50mLのメタノールを加え、1時間冷蔵して生成物を沈殿させた。固体を濾過により回収し、ヘキサンに溶かして厚いシリガゲルプラグ上に流した。このプラグにヘキサンを流して余分なアセチレンを溶出させてから生成物をヘキサン:ジクロロメタンの8:1混合物によって溶出した。溶媒を除去することにより0.25グラム(0.17mmol)の青色固体が得られ、これを約15mLのアセトンから再結晶化させることによって0.13グラム(0.9mmol、キノンからの収率8%)の結晶質の青色板状物を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),8.0(dd,J=3.4Hz,6.6Hz),7.4(dd,J=3.2Hz,7.0Hz),2.5(m,4H),1.4(m,28H).1.2(m,4H)。
【0147】
実施例6−6,13−ビス−((3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
((3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
乾燥した250mLの丸底フラスコ中で、(3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリクロロシラン(4.87g、13.5mmol)を無水THF(15mL)に溶解した。溶液を氷浴中で冷却し、イソプロピルリチウム(41mL、28mmol、0.7Mペンタン溶液)を1時間かけて滴下した後、12時間かけて室温にまで昇温させた。エチニルマグネシウムブロミド(35mL、17mmol、0.5M THF溶液)を加えてから溶液を60℃に12時間加熱した。水をゆっくりと加えて反応を停止させ、希硫酸を加えてマグネシウム塩を溶解した。混合物をヘキサンで抽出し(2×50mL)、水で洗い(5×10mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過してから濃縮した。生成物をヘキサンを溶離剤として用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーを使用して精製し(ヘキサン中、R=約0.6)、2.4g(6.5mmol、48%)の無色の液体を得た。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=4.0(t,J=6.2Hz,2H),2.4(s,1H),1.8(m,2H),1.0(m,14H),0.6(m,2H)。
【0148】
6,13−ビス−((3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で((3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)−プロピルジイソプロピルシリル)アセチレン(2.0g、5.4mmol)を無水THF(5mL)に溶解し、氷浴中で冷却した。n−ブチルリチウム(1.8mL、4.5mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下し、溶液を浴中で30分間攪拌した。ペンタセンキノン(0.57g、1.8mmol)を加え、溶液を12時間攪拌した。別の三角フラスコ中で塩化第一スズ二水和物(1.4g、6.4mmol)をメタノール(100mL)に溶解し、1mLの10%塩酸溶液を加えてから、この溶液を1時間冷蔵した。反応混合物に0.5mLの飽和塩化アンモニウム溶液を加えて反応を停止させ、メタノール(20mL)で希釈した。反応を停止させた反応混合物を攪拌下、塩化第一スズ混合物にゆっくりと流し込み、更なるメタノールで洗った。攪拌を30分間継続し、混合物の全体を3時間冷蔵した。固体を濾過により除去し、周囲雰囲気中で乾燥し、次いで溶離剤としてヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物を使用してシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製して0.68gの青色固体を得た。アセトン(約30mL)から再結晶化することにより、0.6g(0.6mmol、34%)の生成物を赤紫色の板状物として得た。無色の生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),7.9(dd,J=3.4Hz,7.0Hz,4H),7.4(dd,J=3.4Hz,7.0Hz,4H),4.1(t,J=6.0Hz,4H),2.1(m,4H),1.3(m,28H),1.0(m,4H)。
【0149】
実施例7−10−6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンのディップコーティング溶液による薄膜トランジスタの調製
6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン及び場合によりポリスチレンの4つの溶液を表3に述べられるように以下の方法によって調製した。所定量の6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンと、場合により加える所定量のポリスチレンを、磁気攪拌子の入ったアンバーガラスバイアル中に秤量し、溶媒(n−ブチルベンゼン(nbb)、アニソール、又はデカン)を秤量して加えることによって、組成物中に所望の濃度の有機半導体、6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、及び場合により加えるポリスチレン、更に複数の溶媒を含む組成物の場合には所望の重量比の溶媒を含有する組成物を調製した。このバイアルにキャップをし、攪拌プレート上に置いて、内容物を攪拌した。バイアルは金属缶で覆い、組成物を光から遮断した。内容物は最低12時間攪拌した。
【0150】
各半導体溶液を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過し、ディップコーティング槽(幅約50mm、深さ約5mm、高さ約30mm)に入れた。約5mLの各溶液を使用した。各溶液/組成物につき、熱酸化物を有するn型シリコンウェーハ(Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より供給される、前面に1000オングストロームの熱酸化物(SiO)、裏面に100オングストロームのTiN及び5000オングストロームのアルミニウムがコーティングされた、固有抵抗0.005Ω−cm未満の高濃度にn+(砒素)型ドープされたシリコン<100>ウェーハ)の基材1枚をディップコーティングした。各基材は、ディップコーティングに先立って、Plasma Cleaningシステム(Yield Engineering Systems,Inc.(カリフォルニア州リバモア)より市販されるモデルYES−G1000)において500Wの出力設定及び約200mTorr(26.7kPa)の酸素圧を使用して3分間処理を行った。各基材試料は、Nima Technology Ltd.(英国コベントリー)よりNIMA D1Lの商品名で市販されるディップコーティング装置を使用して、3mm/分の引き上げ速度で浸漬した。各試料を室温で乾燥させた。
【0151】
コーティング後、基材のSiO表面上に長結晶が存在し、典型的には浸漬軸に平行に配向していた。これは、結晶の長手方向が浸漬方向と同じ方向であったということである。金のソース電極及びドレイン電極(厚さ約800〜1000オングストローム)を、熱エバポレータを使用してシャドーマスクを通して蒸着し、これによりボトムゲート、トップコンタクト構造のトランジスタを形成した。ソース及びドレイン電極は各電極の長手方向(チャネル幅)が浸漬軸と直交する向きに形成した。チャネル幅は約100マイクロメートルとした。移動度値の試験方法IIによって各基材上で10個のトランジスタの移動度を測定し、その平均値を表4に示した。
【0152】
【表3】

【0153】
実施例11−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンのナイフコーティング溶液による薄膜トランジスタの調製
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセン(0.0234g)をガラスバイアルに加え、次に3−(トリフルオロメチル)アニソール(1.3016g)をバイアルに加えた。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って組成物を光から遮断した。バイアルを2時間静置した後、IKA LABORTECHNIK HS501シェーカー(IKA Werke GmbH & Co.KG(ドイツ、シュタウフェン))上に置き、約48時間振盪した。バイアルの内容物を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過した。
【0154】
熱酸化物を有するn型シリコンウェーハ(Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より供給される、前面に1000オングストロームの熱酸化物(SiO)、裏面に100オングストロームのTiN及び5000オングストロームのアルミニウムがコーティングされた、固有抵抗0.005Ω−cm未満の高濃度にn+(砒素)型ドープされた直径4インチ(10.16cm)のシリコン<100>ウェーハを大まかに6分割して試験片を得た。)の試験片を、半導体溶液をナイフコーティングするのに先立って、Plasma Cleaningシステム(Yield Engineering Systems,Inc.(カリフォルニア州リバモア)より市販されるモデルYES−G1000)において500Wの出力設定及び約200mTorr(26.7kPa)の酸素圧を使用して4分間処理を行った。
【0155】
ナイフコーターのブレードをシリコンウェーハ試験片の熱酸化物表面の約0.005インチ(0.013cm)上に配置し、使い捨てガラスピペットを使用して小さなビーズ状の半導体溶液をブレードと熱酸化物表面との間に置いた。次いでナイフコーターを手でウェーハ上で引くことによってウェーハを半導体溶液でコーティングした。半導体溶液をナイフコーティングした直後に、溶液がコーティングされたウェーハをガラスペトリ皿(直径約90mm×深さ約15mm)で覆って、溶媒である3−(トリフルオロメチル)アニソールの蒸発を遅らせた。室内光を極力落とし、室温で試料を乾燥させた。
【0156】
約3時間後に試料は乾燥した。金のソース電極及びドレイン電極(厚さ約1000オングストローム)を、サーマルエバポレータを使用してシャドーマスクを通して半導体層上に蒸着させ、これによりボトムゲート、トップコンタクト構造のトランジスタを形成した。ソース及びドレイン電極は、各電極の長手方向(チャネル幅)がナイフコーティング方向と直交する向きに形成した。チャネル幅は約100マイクロメートルとした。移動度値の試験方法Iによって9個のトランジスタの移動度を測定したところ、その平均値は1.20×10−3cm/V−sであった。
【0157】
実施例12−第2の方法を使用した6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で、(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジメチルシリル)アセチレン(2.4g、5.6mmol)(実施例4において合成したもの)をトルエン(10mL)に溶解した。イソプロピルマグネシウムクロリド(2.4mL、2M THF溶液)を滴下し、溶液を60℃に1時間加熱した。無水THF(6mL)を加えると溶液は均質となった。混合物を熱から外してペンタセンキノン(0.63g、2.0mmol)を加えた。60℃での加熱を再開し、12時間継続した。得られた均質な反応混合物を室温に冷却した後、0.5mLの塩化アンモニウムの飽和溶液を加えて反応を停止した。攪拌子を備えた別の三角フラスコ中で塩化第一スズ二水和物(7.0mmol、1.6g)をメタノール(150mL)に溶解し、2mLの10%塩酸を加えた。メタノール溶液を1時間冷却した後、反応混合物をメタノール(50mL)で希釈し、更なるメタノール(20mL)ですすいで三角フラスコに入れ、室温で15分間攪拌した。この混合物を1時間冷却した。固体を濾過により回収し、メタノールですすぎ、周囲雰囲気中で乾燥した。この固体を最小量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンで希釈(ヘキサン:ジクロロメタン=約9:1)してから中程度の厚さのシリカゲルパッド上に流し、ヘキサン:ジクロロメタンの9:1混合物で溶出した。溶媒を除去することにより0.95gの光沢のある青色固体が得られ、これをアセトンから2回再結晶化させて0.80gの青色の針状結晶を得た(0.70mmol、キノンからの収率35%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.1(s,4H),8.0(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),7.4(dd,J=3.3Hz,6.6Hz,4H),2.4(m,4H),1.2(m,4H),0.6(s,12H)。
【0158】
実施例13−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピル−シリルエチニル)ペンタセンの合成
第1の方法を使用した(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した250mLの丸底フラスコ中で3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリクロロシラン(9.8g、21.2mmol)を無水THF(14mL)に溶解した。別のオーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中でトリメチルシリルアセチレン(2.5g、25mmol)を無水THF(18mL)に溶解し、氷浴中で冷却した後、n−ブチルリチウム(8.4mL、21mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下した。この第2の溶液を1時間攪拌してから第1の溶液に45分間かけて滴下した。得られた溶液を5時間攪拌し、氷浴中で冷却した。イソプロピルリチウム(66mL、46mmol、0.7Mペンタン溶液)をゆっくりと加えてから攪拌を12時間継続した。反応混合物を100mLの希釈塩化アンモニウム溶液に流し込み、次にヘキサン(40mL)で洗った。有機層を分離し、水層を再度抽出した(30mLヘキサン)。有機層を合わせ、水で洗い(3×20mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して粗混合生成物を淡褐色の液体として得た。生成物を溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーを使用して単離し(ヘキサン中、R=約0.6)、濃縮することによって無色の液体を得た(4.9g、8.8mmol)。トリメチルシリルエンドキャップを除去するため、生成物をTHF(約15mL)及びメタノール(約5mL)に溶かして15%水酸化ナトリウム水溶液(10滴)で処理した。1時間攪拌した後、混合物に水を加えてヘキサンで抽出し、10% HCl(5mL)及び水(3×20mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して生成物(4.2g、8.7mmol、41%)を無色の液体として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.0(m,14H),0.8(m,2H)。
【0159】
第2の方法を使用した(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
窒素下で冷却した、攪拌子を備えたオーブン乾燥した丸底フラスコ中で、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシラン(1.9g、4.1mmol)を12mLの無水ベンゼン(使用前に10体積%を煮沸で飛ばして乾燥させたベンゼン)に溶解した。この混合物に臭化アリル(0.76g、6.3mmol、1.5当量)及び塩化パラジウム(30mg)を加えた。この溶液を60℃に15時間加熱してから冷却し、回転蒸発により濃縮した。得られた溶液をペンタンに溶解し、濾過して残留触媒を除去した後、溶媒を除去して(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピル−シリル)ブロミド(2.0g)を淡褐色の液体として得た。この臭化物を1.2当量(最初のシランに対して)のエチニルマグネシウムブロミドによって無水条件下で処理し、40℃に6時間加熱した。水及び希硫酸を加えて反応を停止させ、ペンタンを加えて有機層を分離した。有機層を水で洗い(6×50mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発により濃縮した。ヘキサンを使用したフラッシュクロマトグラフィーによって更に精製して純粋な(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.5g、3.1mmol、77%)を無色の液体として得た。
【0160】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
オーブン乾燥した丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−ジイソプロピルシリル)アセチレン(1.4g、2.9mmol)(上記の第1及び第2の方法のいずれかによって調製したもの)をヘキサン(20mL)に溶解し、0℃でn−ブチルリチウム(0.9mL、2.3mmol、2.5Mヘキサン溶液)の滴下により処理した。この溶液を1時間かけて室温にまで昇温させた後、ペンタセンキノン(0.22g、0.70mmol)を加えた。攪拌を15時間継続した後、飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)を加えることにより反応を停止させた。反応グレードのTHF(25mL)、塩化第一スズ二水和物(2g)、及び10% HCl(6mL)を加え、混合物を30分間激しく攪拌した。ヘキサンを加え、有機層を分離してから10% HCl(2×10mL)及び水(2×10mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥して薄いシリカパッドに通して濾過した(ヘキサン:DCM=5:1)。回転蒸発により溶媒を除去し、得られた青色油状物をヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流した。ヘキサン(200mL)を使用して余分なアセチレンを溶出させた後、ヘキサン:DCMの9:1混合物によって生成物を溶出した。溶媒を除去することにより0.55gの青色固体が得られ、これをアセトン(約20mL)から再結晶化させて小さな青色の針状結晶を得た(0.35g、0.28mmol、キノンからの収率40%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),7.9(dd,J=6.4Hz,3.2Hz,4H),7.4(dd,J=6.8Hz,2.8Hz,4H),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0161】
実施例14−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
窒素下で冷却した、攪拌子を備えたオーブン乾燥した丸底フラスコ中で、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシラン(10.1g、27.8mmol)を臭化アリル(20mL)に溶解し、塩化パラジウム(50mg)を加えた。この溶液を60℃に15時間加熱してから冷却し、回転蒸発により濃縮した。得られた溶液をペンタンに溶解し、濾過して残留触媒を除去した後、溶媒を除去して(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)ブロミド(12.1g)を淡褐色の液体として得た。この臭化物を1.2当量(最初のシランに対して)のエチニルマグネシウムブロミドによって無水条件下で処理し、40℃に6時間加熱した。水及び希硫酸を加えて反応を停止させ、ペンタンを加えて有機層を分離した。有機層を水で洗い(6×50mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発により濃縮した。ヘキサンを使用したフラッシュクロマトグラフィーによって更に精製して純粋な(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレン(9.90g、25.6mmol、92%)を無色の液体として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.1(m,14H),0.8(m,2H)。
【0162】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
オーブン乾燥した100mLの丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.1g、2.9mmol)をヘキサン(15mL)に溶解し、氷浴中で冷却した。n−ブチルリチウム(0.8mL、2.0mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下してから攪拌を1時間継続した。ペンタセンキノン(0.22g、0.7mmol)を加え、反応混合物を12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)を加えることによって反応を停止させた後、反応グレードのTHF(20mL)、塩化第一スズ二水和物(1.3g)及び10% HCl(6mL)を加えた。30分間攪拌した後、ヘキサン(20mL)を加え、有機層を分離した。有機層を10% HCl(2×10mL)及び水(2×10mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶離剤としてヘキサン:DCMの5:1混合物を使用して薄いシリカパッドに通した。溶媒を除去し、得られた青色油状物をヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流した。余分なアセチレンをヘキサンにより溶出し、生成物をヘキサン:DCMの9:1混合物で溶出した。真空下で濃縮することにより0.52gの青色固体が得られ、これをジクロロメタン(約8mL)から再結晶化させて0.24g(0.23mmol、キノンからの収率33%)の赤紫色の板状物を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),8.0(dd,J=3.0Hz,6.6Hz,4H),7.4(dd,J=3.2Hz,7.0Hz,4H),2.5(m,4H),1.3(m,28H),0.8(m,4H)。
【0163】
実施例15−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−デシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピル−シリル)アセチレンの合成
窒素下で冷却した、攪拌子を備えたオーブン乾燥した丸底フラスコ中で、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシラン(9.97g、17.7mmol)を15mLの無水ベンゼン(使用前に10体積%を煮沸で飛ばして乾燥させたベンゼン)に溶解した。これに臭化アリル(3.22g、26.6mmol、1.5当量)及び塩化パラジウム(35mg、1mol%)を加えた。この溶液を60℃に15時間加熱してから冷却し、回転蒸発により濃縮した。得られた溶液をペンタンに溶解し、濾過して残留触媒を除去した後、溶媒を除去して(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル)ブロミド(11.3g)を淡褐色の液体として得た。この臭化物を1.2当量(最初のシランに対して)のエチニルマグネシウムブロミドによって無水条件下で処理し、40℃に6時間加熱した。水及び希硫酸を加えて反応を停止させ、ペンタンを加えて有機層を分離した。有機層を水で洗い(6×50mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発により濃縮した。ヘキサンを使用したフラッシュクロマトグラフィーによる更なる精製によって、純粋な(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピル−シリル)アセチレン(9.0g、15mmol、87%)を無色の液体として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.0(m,14H),0.8(m,2H)。
【0164】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
本実施例の上記の手順によって合成したアセチレンを用いた以外は、実施例5で述べたのと同様にしてペンタセン合成を行った。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),8.0(dd,J=3.4Hz,6.6Hz),7.4(dd,J=3.2Hz,7.0Hz),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0165】
実施例16−6,13−ビス((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチル−デシル)ジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
窒素下で冷却した、攪拌子を備えたオーブン乾燥した丸底フラスコ中で、(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシラン(4.86g、7.94mmol)を10mLの無水ベンゼン(使用前に10体積%を煮沸で飛ばして乾燥させたベンゼン)に溶解した。この混合物に臭化アリル(1.44g、11.9mmol、1.5当量)及び塩化パラジウム(30mg)を加えた。この溶液を60℃に15時間加熱してから冷却し、回転蒸発により濃縮した。得られた溶液をペンタンに溶解し、濾過して残留触媒を除去した後、溶媒を除去して((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシリル)−ブロミド(11.3g)を淡褐色の液体として得た。この臭化物を1.2当量(最初のシランに対して)のエチニルマグネシウムブロミドによって無水条件下で処理し、40℃に6時間加熱した。水及び希硫酸を加えて反応を停止させ、ペンタンを加えて有機層を分離した。有機層を水で洗い(6×50mL)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発により濃縮した。ヘキサンを使用したフラッシュクロマトグラフィーによる更なる精製によって純粋な((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシリル)−アセチレン(4.1g、6.5mmol、82%)を無色の液体として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(200MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.0(m,14H),0.8(m,2H)。
【0166】
6,13−ビス((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
オーブン乾燥した丸底フラスコ中で((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピルシリル)アセチレン(0.64g、1.0mmol)をヘキサン(10mL)に溶解し、0℃でn−ブチルリチウム(0.28mL、0.7mmol、2.5Mヘキサン溶液)により処理した。1時間後、ペンタセンキノン(77mg、0.25mmol)を加え、攪拌を15時間継続した。無水THF(10mL)を加えたところ溶液は均一となり、攪拌を1時間継続した。飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)を加えることにより反応を停止させた。反応グレードのTHF(10mL)、塩化第一スズ二水和物(1.0g、4.4mmol)及び10% HCl(6mL)を加え、激しい攪拌を30分間継続した。ヘキサンを加え、有機層を分離してから10% HCl(2×10mL)及び水(2×10mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、薄いシリカパッドに通した(ヘキサン:DCM=5:1)。溶媒を除去することにより粗ペンタセンが得られ、これをヘキサン(50mL)に溶かして厚いシリカパッド上に流した。シリカをヘキサンで流して余分なアセチレンを溶出させた後、生成物をヘキサン:DCMの9:1混合物によって溶出した。溶媒を除去することにより0.16gの青色固体として粗生成物が得られ、これをジクロロエタン(10mL)から再結晶化させて純粋な生成物を小さな青色針状結晶(0.10g、0.065mmol、26%)として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),7.9(dd,J=6.4Hz,3.2Hz,4H),7.4(dd,J=6.8Hz,3.2Hz,4H),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0167】
実施例17−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−デシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの合成
2,3,9,10−テトラメチルペンタセン−6,13−ジオンの合成
1.6g(10mmol)の4,5−ジメチルフタルアルデヒドを20mLエタノールに加えた溶液に0.56g(5mmol)のシクロヘキサン−1,4−ジエンを加えた。開始物質が完全に溶解した時点で15%水酸化ナトリウム水溶液を2滴加えるとキノンが直ちに沈殿しはじめた。この懸濁液を更に2時間攪拌した後、10倍量のメタノールで希釈し、固体を濾過して回収した。固体のキノンを大量のメタノール、次いでエーテルで洗い、一晩風乾した。このキノン(1.5g、82%)を更に精製することなく使用した。
【0168】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル−ジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの合成
上記実施例15で得られた(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.8g、3.0mmol)をオーブン乾燥した丸底フラスコに加えてヘキサン(20mL)に溶解した。0℃に冷却した後、溶液をn−ブチルリチウム(1.0mL、2.5mmol、2.5Mヘキサン溶液)の滴下により処理し、攪拌を1時間継続した。2,3,9,10−テトラメチルペンタセン−6,13−ジオン(0.28g、0.80mmol)を加え、10分後に無水THF(3mL)を加えた。反応を15時間継続させると均質な溶液となった。この溶液に飽和塩化アンモニウム溶液(20mL)、反応グレードのTHF(30mL)、塩化第一スズ二水和物(3g)、及び10% HCl(25mL)を加えてから30分間激しく攪拌した。ヘキサン(20mL)を加えた後、有機層を分離し、10% HCl(2×10mL)及び水(2×10mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、薄いシリカパッドに通した(ヘキサン:DCM=1:1)。溶媒を除去することにより青色油状物が得られ、これをヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流した。更なるヘキサンをシリカに通して余分なアセチレンを溶出させた後、生成物をヘキサン:DCMの7:1混合物によって溶出した。溶媒を除去することによって青色固体が得られ、これをヘプタン:トルエンの約1:1の混合物から再結晶化させることにより、微細な青色針状結晶の繊維状の塊として生成物を得た(0.3g、0.2mmol、キノンからの収率25%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.0(s,4H),7.7(s,4H),2.6(m,4H),2.5(s,12H),1.3(m,28H),1.2(m,4H).13C−NMR(400MHz,CDCl)δ=137,132,131,125,124,118,107,104,21〜18の間に分離不能な多くのピーク,12.
実施例18−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリル)アセチレンの合成
オーブン乾燥した丸底フラスコ中で(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル)ジイソプロピル−シラン(10g、32mmol)を臭化アリル(20mL)に溶解し、フラスコを窒素でフラッシュした。塩化パラジウム(40mg)を加え、溶液を60℃に12時間加熱した。溶媒をロータリーエバポレータで除去することにより褐色の懸濁液が得られ、これをペンタンに溶かして濾過した。溶媒を除去することによりブロモシランを褐色の液体(12.1g)として得た。このブロモシラン、すなわち(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリル)ブロミドを無水THF(20mL)中でエチニルマグネシウムブロミド(70mL、35mmol、0.5M THF溶液)で処理し、40℃に4時間加熱した。冷却後、水(20mL)及びマグネシウム塩を溶解するうえで充分な希硫酸をゆっくりと加えることによって反応を停止させた。ペンタンを加え、有機層を分離した。水層をペンタンで更なる時間、抽出した後、有機層を合わせ、水(5×10mL)及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。溶媒を除去し、粗生成物をヘキサンに溶かして薄いシリカパッドに通した。溶媒を除去することにより生成物を無色の液体として得た(9.7g、29mmol、90%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=2.4(s,1H),2.2(m,2H),1.0(m,14H),0.8(m,2H)。
【0169】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの合成
(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.9g、5.7mmol)をオーブン乾燥した丸底フラスコ中でヘキサンに溶解し、0℃でn−ブチルリチウム(1.9mL、4.2mmol、2.5Mヘキサン溶液)の滴下により処理した。1時間攪拌した後、ペンタセンキノン(0.52g、1.7mmol)を加え、攪拌を15時間継続し、無水THF(15mL)を加えて更に2時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム溶液(15mL)、塩化第一スズ二水和物(4g)、及び10% HCl(15mL)を加え、得られた溶液を30分間激しく攪拌した。ヘキサン(30mL)を加え、有機層を分離した後、10% HCl(2×10mL)及び水で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ヘキサン:DCMの5:1混合物を使用して薄いシリカパッドを通して流した。溶媒を除去し、得られた青色油状物をヘキサンに溶かして薄いシリカパッド上に流し、これをヘキサン(200mL)で流して余分なアセチレンを溶出させた。生成物をヘキサン:DCMの9:1混合物を使用して溶出し、溶媒を除去して青色固体を得た。粗生成物をアセトン(25mL)から再結晶化させて純粋な生成物を赤紫色の板状物(0.91g、0.97mmol、キノンに対する収率57%)として得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.2(s,4H),7.9(dd,J=6.4Hz,3.2Hz,4H),7.4(dd,J=6.4Hz,3.2Hz,4H),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0170】
実施例19−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピル−シリルエチニル)−1−フルオロペンタセンの合成
1−フルオロペンタセン−6,13−ジオンの合成
3−フルオロ−o−キシレン(1.2g、9.7mmol)を攪拌子を備えた丸底フラスコに加え、30mLのジクロロメタンに溶解した。N−ブロモスクシンイミド(7.0g、39mmol)及び少量のAIBNを加え、環流冷却器を取付けて混合物を6時間還流した時点でGC−MSによる点分析を行ったところ、三臭化物が主成分であることが示された。冷却後、水及びジクロロメタンを加え、有機層を分離して水及び希塩酸で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ジクロロメタンを溶離剤として使用して薄いシリカゲルのパッドに通した。溶媒を除去して3.4gの混合生成物を得た。冷却器及び攪拌子を備えた100mLの丸底フラスコに12mLのジメチルホルムアミドを加え、次いで0.54g(2.07mmol)の上記で得られた三臭化物及び0.43g(2.1mmol)の1,4−アントラキノンを加えた。溶液に窒素を20分間バブリングした後、2.1g(12mmol)のヨウ化カリウムを加え、反応液を110℃に3日間加熱した。反応液を冷却し、沈殿物を濾過して回収し、水、アセトン及びジエチルエーテルで順次洗った。得られた固体を風乾して0.29g(0.88mmol、42%)の1−フルオロペンタセン−6,13−ジオン(又は1−フルオロペンタセンキノン)を淡褐色の固体として得た。
【0171】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−1−フルオロペンタセンの合成
オーブン乾燥し、冷却したフラスコ中で、実施例14で得られた(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピル−シリル)アセチレン(1.1g、3.0mmol)をヘキサン(15mL)に溶解して氷浴中で冷却した。n−ブチルリチウム(0.96mL、2.4mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下し、溶液を1時間かけて室温にまで昇温させた。1−フルオロペンタセン−6,13−ジオン(0.28g、0.85mmol)を加え、攪拌を一晩継続した。飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)を加えて反応を停止させてから、試薬グレードのTHF(10mL)、塩化第一スズ二水和物(1.5g)、及び10% HClを加え、反応液を1時間激しく攪拌した。ヘキサンを加えて有機層を分離し、10% HCl(2×10mL)及び水(10mL)で洗ってから硫酸マグネシウム上で乾燥し、薄いシリカパッド上に流した。粗生成物をヘキサン:DCMの5:1混合物を使用して溶出させ、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。得られた青色油状物をヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流した。更なるヘキサンをシリカに通して余分なアセチレンを溶出させた後、生成物をヘキサン:DCMの9:1混合物によって溶出した。溶媒を除去することによって0.28gの青色固体が得られ、これをエタノール:クロロホルム(15mL:2mL)から再結晶化させることによって0.20g(0.20mmol、キノンからの収率24%)の赤紫色の板状物を得た。青色の針状結晶を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.5(s,1H),9.2(s,1H),9.2(s,2H),7,9(m,2H),7.7(d,J=8.8Hz,1H),7.4(dd,J=6.8,3.2Hz,1H),7.2(m,1H),7.0(m,1H),2.5(m,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0172】
実施例20−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル−エチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの合成
オーブン乾燥し、冷却したフラスコ中で、実施例14で得られた(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.5g、4.2mmol)をヘキサン(20mL)に溶解し、氷浴中で冷却した。n−ブチルリチウム(1.4mL、3.4mmol、2.5Mヘキサン溶液)を滴下し、溶液を1時間かけて室温にまで昇温させた。実施例17で得られた2,3,9,10−テトラメチル−ペンタセン−6,13−ジオン(0.44g、1.2mmol)を加え、攪拌を20分間継続した後、無水THF(3mL)を加えた。12時間後、更なる無水THF(15mL)を加えたところ、淡黄色の懸濁液が残った。飽和塩化アンモニウム溶液(15mL)を加えて反応を停止させてから、塩化第一スズ二水和物(3g)及び10% HCl(10mL)を加え、反応混合物を1時間激しく攪拌した。ヘキサンを加えて有機層を分離し、10% HCl(2×10mL)及び水(10mL)で洗ってから硫酸マグネシウム上で乾燥し、薄いシリカパッド上に流した。粗生成物をヘキサン:DCMの5:1混合物を使用して溶出させ、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。得られた青色油状物をヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流した。更なるヘキサンをシリカに通して余分なアセチレンを溶出させた後、生成物をヘキサン:DCMの5:1混合物によって溶出した。溶媒を除去することにより0.11gの青色油状物が得られ、これをアセトン(約8mL)から再結晶化させて0.025g(0.024mmol、キノンに対する収率2%)の青色板状物を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.0(s,4H),7.7(s,4H),2.6(m,4H),2.5(s,12H),1.3(m,28H),1.2(m,4H)。
【0173】
実施例21−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−デシルジイソプロピルシリルエチニル)−2−ペンタフルオロエチルペンタセンの合成
1,2−ジメチル−4−ペンタフルオロエチルベンゼンの合成
窒素でパージし、火炎乾燥した丸底フラスコに、4−ヨード−o−キシレン(15.0g、64.7mmol)、ペンタフルオロプロピオン酸ナトリウム(16.8g、90.5mmol)、ヨウ化銅(I)(12.3g、64.6mmol)及び100mLの無水N−メチルピロリドンを加えた。反応混合物を170℃に16時間加熱した後、室温に冷却し、ヘキサンにより厚いシリカゲルプラグを通じて流した。次いで回収した黄色の液体をロータリーエバポレータで乾燥状態にまで蒸発させ、油状物を60℃(10−1Torr(13.3Pa))で蒸留して所望の生成物(9.14g、63%)を無色の液体として回収した。生成物を分析して以下のデータを得た:H NMR(200MHz,CDCl)δ=2.347(s,6H),7.247(d,J=7.8Hz,1H),7.357(s,1H),7.401(s,1H).13C NMR(50MHz,CDCl)δ=19.810,19.840,124.013(t,J=6.1Hz),127.472(t,J=6.1Hz),130.158,137.563,141.205.GC−MS:m/z:224(C10)。
【0174】
1,2−ビス−ブロモメチル−4−ペンタフルオロエチルベンゼン、1−ブロモメチル−2−ジブロモメチル−4−ペンタフルオロエチルベンゼン、及び1,2−ビス−ジブロモメチル−4−ペンタ−フルオロエチルベンゼンの合成
窒素でパージし、火炎乾燥した2つ口丸底フラスコに9.14g(40.8mmol)の1,2−ジメチル−4−ペンタフルオロエチルベンゼン及び36.3g(204mmol)のN−ブロモスクシンイミドを加えた。1,2−ジクロロエタン(200mL)及び触媒量のAIBNを加えた。反応液を16時間、環流加熱(75℃)した。この後、反応混合物を冷却し、ジクロロメタン:ヘキサンの1:1混合物で洗いながら薄いシリカゲルパッドにより濾過した。28.2gの液体生成物が回収され、GC/MSにより臭素化された2−ペンタフルオロエチル−o−キシレンの混合物であることが示された。この臭素化混合生成物を更に精製することなく次の工程で使用した。臭素化混合生成物を分析して以下のデータを得た:GC−MS:m/z:382(C10Br),379(C10Br−Br),420(C10Br−Br,−2F)。
【0175】
2−ペンタフルオロエチルペンタセン−6,13−ジオンの合成
窒素でパージした丸底フラスコに1,4−アントラキノン(8.50g、40.9mmol)及び約40mmolの臭素化2−ペンタフルオロエチル−o−キシレンの混合物を加えた。パージしたジメチルホルムアミド(30mL)を窒素下でフラスコに加え、反応物質を90℃に加熱した。次いでヨウ化カリウム(45.4g、274mmol)を反応液にゆっくりと加え、温度を130℃にまで昇温した。反応混合物を32時間攪拌した後、室温にまで冷却し、固体を濾過してアセトン、次いで大量のTHF及びジエチルエーテルで洗った。得られた不溶性の黄色固体を空気中で数時間乾燥させることによって5.9g(34%)の生成物を得た。生成物を分析して以下のデータを得た:MS(EI 70eV)m/z 426(100%,M)。
【0176】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル−ジイソプロピルシリルエチニル)−2−ペンタフルオロエチルペンタセンの合成
実施例15で得られた(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル)アセチレン(1.5g、2.6mmol)をオーブン乾燥した丸底フラスコに加えてヘキサン(18mL)に溶解した。0℃に冷却した後、溶液をn−ブチルリチウム(0.8mL、2.0mmol、2.5Mヘキサン溶液)の滴下により処理し、攪拌を1時間継続した。2−ペンタフルオロエチルペンタセン−6,13−ジオン(0.26g、0.61mmol)を加え、攪拌を15時間継続した。無水THF(10mL)を加え、反応を1時間継続させた後、飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)を加えることによって反応を停止させた。反応グレードのTHF(10mL)、塩化第一スズ二水和物(2g)、及び10% HCl(10mL)を加え、溶液を30分間激しく攪拌した。ヘキサン(20mL)を加えて有機層を分離し、10% HCl(2×10mL)及び水(2×10mL)で洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、薄いシリカパッドに通した(ヘキサン:DCM=5:1)。溶媒を除去した後、青色油状物をヘキサンに溶かして厚いシリカパッド上に流し、更なるヘキサン(200mL)によって流して余分なアセチレンを溶出させた。生成物をヘキサン:DCMの9:1混合物によって溶出し、溶媒を除去することによって非常にゆっくりと固まる青色の液体として純粋な生成物を得た(0.16g、0.10mmol、キノンからの収率17%)。生成物を分析して以下のデータを得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ=9.3(s,1H),9.3(s,1H),9.2(s,1H),9,.2(s,1H),8.2(s,1H),8.1(d,J=9.2Hz,1H),7.9(dd,J=6.8Hz,3.2Hz,2H),7.5(s,1H),7.5(s,1H),7.4(dd,J=6.8Hz,3.2Hz,1H),2.5(s,4H),1.4(m,28H),1.2(m,4H)。
【0177】
実施例22−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセンの溶液を硬化トリメチロールプロパントリアクリレートのゲート誘電体層上にナイフコーティングすることによる薄膜トランジスタの調製
実施例15で得られた6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセン(0.0269g)をガラスバイアルに加え、3−(トリフルオロメチル)アニソール(1.4713g)をバイアルに加えた。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って組成物を光から遮断した。バイアルを2時間静置した後、IKA LABORTECHNIK HS501シェーカー(IKA Werke GmbH & Co.KG(ドイツ、シュタウフェン))上に置き、約48時間振盪した。バイアルの内容物を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過して有機半導体溶液を得た。
【0178】
トリメチロールプロパントリアクリレート(16.9992g、SARTOMER(商標)SR−351)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(2.9959g、IRGACURE(商標)184)を磁気攪拌子と共にアンバーガラス容器に入れて容器にキャップをし、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが溶解するまで内容物を攪拌した。3.9931gのこの溶液と15.9678gの3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(イソホロンとも称され、Alfa Aesar(米国マサチューセッツ州ウォードヒル)より販売される)を磁気攪拌子と共に別のアンバーガラス容器に加えて容器にキャップをし、内容物を攪拌してゲート誘電体配合物を得た。
【0179】
熱酸化物を有するn型シリコンウェーハ(直径10.16cm(4インチ))(すなわち、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より供給される、前面に1000オングストロームの熱酸化物(SiO)、裏面に100オングストロームの窒化チタン及び5000オングストロームのアルミニウムがコーティングされた、固有抵抗が0.005Ω−cm未満の高濃度にn+(砒素)型ドープされたのシリコン<100>ウェーハ)を酸素プラズマによってクリーニングした。Plasma Cleaningシステム(Yield Engineering Systems,Inc.(カリフォルニア州リバモア)より販売されるモデルYES−G1000)において500Wの出力設定及び1標準立方cm/分(sccm)の酸素流を使用してウェーハを3分間処理した。プラズマクリーニングしたウェーハはクリーニング後に数分間冷まして確実に室温としてから、ゲート誘電体配合物を、432rpm/sのランプレートで、2000rpmで1分間、ウェーハの熱酸化物表面上にスピンコーティングした。コーティングした基材を100℃に予熱したホットプレート上に10分間置いた。次いで基材を窒素でパージした紫外線照射室(254nm殺菌ランプ)に移動し、コーティングされた誘電体に10分間照射を行った(線量=1.2J/cm)。紫外線照射後、基材を100℃に予熱したホットプレート上に10分間置いた。基材をホットプレートから離して室温にまで冷ました。硬化したトリメチロールプロパントリアクリレートのゲート誘電体層の厚さは、約548オングストロームであった。ゲート誘電体は、硬化したトリメチロールプロパントリアクリレート層と厚さ1000オングストロームの熱酸化物(SiO)層との複合体であった。基材を大まかに6分割して有機半導体溶液をコーティングするための試験片とした。
【0180】
ナイフコーターのブレード(ナイフコーターはGardco Micromアプリケータ−(Paul N.Gardner Company,Inc.(米国フロリダ州ポンパノビーチ)である。)をシリコンウェーハの試験片の硬化トリメチロールプロパントリアクリレート層の表面の約305マイクロメートル(0.012インチ)上に配置し、使い捨てガラスピペットを使用して小さなビーズ状の半導体溶液をブレードと表面との間に置いた。次いでナイフコーターを手でウェーハ上で引くことによってウェーハを半導体溶液でコーティングした。半導体溶液をナイフコーティングした直後に、溶液がコーティングされたウェーハをガラスペトリ皿(直径約90mm×深さ約15mm)で覆って、溶媒である3−(トリフルオロメチル)アニソールの蒸発を遅らせた。試料を暗所で室温で乾燥させた。
【0181】
約3時間後に試料は乾燥した。金のソース電極及びドレイン電極(厚さ約1000オングストローム)を、サーマルエバポレータを使用してシャドーマスクを通して半導体層上に蒸着させ、これによりボトムゲート、トップコンタクト構造のトランジスタを形成した。チャネル長さを約100マイクロメートルとし、チャネル幅を約1000マイクロメートルとした。結晶性又は半結晶性のペンタセンがチャネル領域の全体又はほぼ全体を覆った10個のトランジスタの移動度を移動度値の試験方法Iによって測定したところ、その平均値は7.74×10−3cm/V−sであった。
【0182】
実施例23−6,13−ビス((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)ジイソプロピル−シリルエチニル)−ペンタセンの溶液をSiOゲート誘電体層上にナイフコーティングすることによる薄膜トランジスタの調製
実施例16で得られた6,13−ビス((3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,10,10,10−ヘキサデカフルオロ−9−トリフルオロメチルデシル)−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(0.0271g)をガラスバイアルに加え、3−(トリフルオロメチル)アニソール(1.4719g)をバイアルに加えた。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って組成物を光から遮断した。バイアルを2時間静置した後、IKA LABORTECHNIK HS501シェーカー(IKA Werke GmbH & Co.KG)(ドイツ、シュタウフェン)上に置き、約48時間振盪した。バイアルの内容物を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過した。
【0183】
熱酸化物を有するn型シリコンウェーハ(Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)より供給される、前面に1000オングストロームの熱酸化物(SiO)、裏面に100オングストロームのTiN及び5000オングストロームのアルミニウムがコーティングされた、固有抵抗0.005Ω−cm未満の高濃度にn+(砒素)型ドープされた直径10.16cm(4インチ)のシリコン<100>ウェーハを大まかに6分割して試験片を得た。)の試験片を、半導体溶液をナイフコーティングするのに先立って、Plasma Cleaningシステム(Yield Engineering Systems,Inc.(カリフォルニア州リバモア)より市販されるモデルYES−G1000)において500Wの出力設定及び約200mTorr(26.7kPa)の酸素圧を使用して4分間処理を行った。
【0184】
ナイフコーターのブレードをシリコンウェーハ試験片の熱酸化物表面の約0.012インチ(305マイクロメートル)上に配置し、使い捨てガラスピペットを使用して小さなビーズ状の半導体溶液をブレードと熱酸化物表面との間に置いた。次いでナイフコーターを手でウェーハ上で引くことによってウェーハを半導体溶液でコーティングした。半導体溶液をナイフコーティングした直後に、溶液がコーティングされたウェーハをガラスペトリ皿(直径約90mm×深さ約15mm)で覆って、溶媒である3−(トリフルオロメチル)アニソールの蒸発を遅らせた。試料を暗所で室温で乾燥させた。
【0185】
約3時間後に試料は乾燥した。金のソース電極及びドレイン電極(厚さ約1000オングストローム)を、サーマルエバポレータを使用して、シャドーマスクを通して半導体層上に蒸着させ、これによりボトムゲート、トップコンタクト構造のトランジスタを形成した。チャネル長さを約100マイクロメートルとし、チャネル幅を約1000マイクロメートルとした。結晶性又は半結晶性のペンタセンがチャネル領域の全体又はほぼ全体を覆った7個のトランジスタの移動度を移動度値の試験方法Iによって測定したところ、その平均値は1.46×10−3cm/V−sであった。
【0186】
実施例24−紫外線(UV)に対するペンタセン溶液の安定性
6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS、基本的に米国特許第6,690,029号(Anthonyらに述べられるようにして調製したもの))、6,13−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(CF3)、6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(C3F7)、6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(C4F9)、6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(C6F13)、及び6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(C8F17)を別々のガラスバイアル中に秤量し、トルエン(EMD Chemicals,Inc.(米国ニュージャージー州ギブズタウン)の販売する分光測定に適したOmniSolv高純度溶媒)を各バイアル中に秤量して7.61×10−5M(モル)の溶液とした。バイアルにキャップをし、アルミ箔で包んで暗所に約16時間置いてペンタセンを確実に溶解させた。溶液はいずれも青色であった。約2.0gの各ペンタセン溶液を別々の紫外/可視分光光度計のクォーツセルに入れた。セル(Spectrocell Inc.(米国ペンシルベニア州オールランド)より販売されるRF−3010−Tセル)は、10×10mm(経路長=10mm)、体積3.5mlの、スペクトル範囲すなわちウインドウが170〜2200nmのものであった。温度23℃における溶液中のペンタセンの紫外/可視スペクトルを、Agilent 8453 Diode Array分光計(Agilent Technologies(米国カリフォルニア州サンタクララ)部品番号G11038)により求めた。紫外/可視スペクトルは、1nm間隔で190〜830nmの範囲で吸光度モードで積分時間を5秒間として得た。スペクトルはいずれもよく似ていた。
【0187】
次に各溶液に紫外線を合計時間で90分間照射した。紫外線はランプハウジング(Blak−Rayランプ、モデルXX−15L、UVP(米国カリフォルニア州アップランド))内の2個の15ワット(W)ブラックライト電球(Sylvania GTE 350 Blacklight F15T8/350BL電球)によって得た。2個のブラックライト電球の両方の外周に接する仮想平面が紫外/可視セルの最も近い面とほぼ平行になるように保持し、この平面とセルの最も近い面との間の距離を約70mmとした。セルの紫外線照射の強度は約5.27mW/cmであった。溶液中のペンタセンの紫外/可視スペクトルを紫外線照射の間の異なる時点(約15分毎)で得た。ペンタセンの分解により、各溶液の青色の強さが次第に弱くなり、黄色味がかった色となった。
【0188】
643〜645ナノメートル(nm)における吸収極大における吸光度をすべてのペンタセンについて紫外線照射時間と共に監視した。吸光度は、紫外線照射によるペンタセンの分解を反映して時間と共に低下した。標準化した吸光度A/A(すなわち、照射時間t後の吸光度を紫外線照射前の吸光度A(t=0における吸光度)で割ったもの)を各ペンタセンについて図5に示されるようにプロットした。紫外線照射時間に対する標準化吸光度の減少速度は6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンで最も大きかったが、このことはフルオロアルキル置換されたシリルエチニル基を有するペンタセンが紫外線に対してより安定であることを示している。
【0189】
実施例25−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの溶液をSiOゲート誘電体層上にナイフコーティングすることによる薄膜トランジスタの調製
実施例17で得られた6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジイソプロピルシリル−エチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセン(0.0178g)をガラスバイアルに加え、3−(トリフルオロメチル)アニソール(0.9868g)をバイアルに加えた。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って組成物を光から遮断した。バイアルを約22時間静置した後、IKA LABORTECHNIK HS501シェーカー(IKA Werke GmbH & Co.KG)(ドイツ、シュタウフェン)上に置き、約48時間振盪した。バイアルに加えたペンタセンの全部は溶解しなかった。バイアルの内容物を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過した。
【0190】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル−ジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの3−(トリフルオロメチル)アニソール溶液を使用した以外は、実施例23に述べたのと同様にして薄膜トランジスタを作製及び試験した。12個のトランジスタの平均移動度は、8.45×10−3cm/V−sであった。
【0191】
実施例26−6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの溶液をSiOゲート誘電体層上にナイフコーティングすることによる薄膜トランジスタの調製
実施例20で得られた6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラ−メチルペンタセン(0.0115g)をガラスバイアルに加え、3−(トリフルオロメチル)アニソール(0.6293g)をバイアルに加えた。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って組成物を光から遮断した。バイアルを22時間静置した後、IKA LABORTECHNIK HS501シェーカー(IKA Werke GmbH & Co.KG(ドイツ、シュタウフェン))上に置き、約48時間振盪した。バイアルに加えたペンタセンの全部は溶解しなかった。バイアルの内容物を、Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)よりACRODISC(登録商標)CRの商品名で市販される孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターによって濾過した。
【0192】
6,13−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジイソプロピルシリルエチニル)−2,3,9,10−テトラメチルペンタセンの3−(トリフルオロメチル)アニソール溶液を使用した以外は、実施例23に述べたのと同様にして薄膜トランジスタを作製及び試験した。9個のトランジスタの平均移動度は、1.20×10−2cm/V−sであった。
【0193】
実施例27−6,13−ビス((N−メチル−ノナフルオロブチルスルホンアミドプロピル)ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンの合成
N−アリル−N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミドの合成
313g(1mol)のN−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド(3M Co.、米国特許第第6,664,354号、Savu)、216g(1mol)のナトリウムメトキシドの25%メタノール溶液(Aldrich)、及び100mLのTHF(EMD)の混合物を50℃で1時間攪拌し、溶媒を除去した。残渣を600mLのTHFで希釈し、100mL(1.15mol)の臭化アリル(Aldrich)で処理した。混合物を40℃で約8時間攪拌してから水で希釈した。塩化メチレンで抽出してから蒸留することによって321.7gの無色の液体を得た(bp=75〜80℃/1.1mm Hg(146.7Pa))。
【0194】
3−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)プロピル)ジイソプロピルシリルクロリドの合成
N−アリル−N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド(3.53g、0.01mol)、1.51g(0.01mol)のジイソプロピルクロロシラン(本明細書ではジイソプロピルシリルクロリドとも呼ぶ(Alfa Aesar))、及び0.4gの白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(18%トルエン溶液。スリー・エム社(3M)より供給されるが、同化合物のキシレン溶液がSigma−Aldrichより販売されている)を混合し、約60℃に1.5時間加温した。短行程蒸留により105℃/0.1mm Hg(13.3Pa)で主留分が得られ、GC/MSによって、主成分である所望の生成物(質量503)に、NMeSOによるClの置換に相当する一定量の質量780をともなっていることが示された。35.3g(0.1mol)のN−アリル−N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド、15.1g(0.1mol)のジイソプロピルクロロシラン、及び4.0gの白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体に反応の規模を大きくし、得られた49.7gに24時間後に1プレート蒸留を行ったところ、bp 130〜185/1mm Hg(133.3Pa)の留分23.4gが得られ、GLCにより両成分がほぼ等量で含まれることが示された。
【0195】
3−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)プロピル)ジイソプロピルシリルアセチレンの合成
窒素雰囲気を含むオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコにヘキサン(100mL)、テトラヒドロフラン(20mL)、及びトリメチルシリルアセチレン(4.8g、48.9mmol)を入れ、氷浴で冷却した。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,19.4mL)を滴下し、反応混合物を室温にまで昇温させた。上記した「3−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)プロピル)ジイソプロピルシリルクロリドの合成」の工程で得られた反応生成物(20.0g)をゆっくりと加え、内容物を16時間攪拌した。水(100mL)をゆっくりと加え、混合物を激しく攪拌した。有機層を分離し、水層を100mLのヘキサンで抽出した。有機層を合わせ、減圧下で褐色油状物となるまで濃縮した。油状物を溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーを使用して精製することにより、23.9gのトリメチルシリル保護されたアセチレンを透明な油状物として得た。この油状物(23.9g、42.2mmol)をオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコに入れた。メタノール(50mL)、テトラヒドロフラン(50mL)、及び5%水酸化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、1時間攪拌した。次に水(100mL)を加え、激しく攪拌した。有機層を分離し、水層をヘキサンで2回抽出した(2×100mL)。有機層を合わせ、減圧下で濃縮して3−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)プロピル)ジイソプロピルシリルアセチレンを透明な油状物として得た(11.2g、54%)。
【0196】
6,13−ビス((N−メチル−ノナフルオロブチルスルホンアミドプロピル)ジイソプロピルシリル−エチニル)ペンタセンの合成
窒素雰囲気を含むオーブン乾燥した500mLの丸底フラスコに3−(N−メチルノナフルオロブタンスルホンアミド)プロピル)ジイソプロピルシリルアセチレン(11.2g、22.7mmol)及びヘキサン(100mL)を入れた。これを氷浴で冷却し、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液,7.6mL)を滴下した。反応混合物を室温にまで昇温させた。6,13−ペンタセンキノン(2.1g、6.8mmol)を反応混合物に加え、これを16時間攪拌した。テトラヒドロフラン(80mL)を加え、混合物を6日間攪拌した。飽和塩化アンモニウム(60mL)、次いで塩化第一スズ二水和物(16g、70.9mmol)及び10%塩酸水溶液(60mL)を加えた。丸底フラスコをアルミ箔で覆って光を遮断した。反応混合物を1時間激しく攪拌してから有機層を分離し、10%塩酸水溶液(2×60mL)、次いで60mLの水で洗った。次いで有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過してから減圧下で濃縮して褐色油状物を得た。ジクロロメタンをヘキサンに加えたものを溶離剤として用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーによって油状物を精製することによって6,13−ビス((N−メチルノナフルオロブチルスルホンアミドプロピル)ジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを暗青色の固体として得た(473mg、2%)。少量の1,4−ビス−トリフルオロメチルベンゼンを参照用基準物質として加えた重水素化クロロホルム中で生成物を分析して以下のデータを得た:1H−NMR(500MHz,CDCl)δ:9.23〜9.31(m,4H),7.95〜8.02(m,4H),7.41〜7.47(m,4H),3.70〜3.87(m,2H),3.22〜3.39(m,2H),3.01〜3.05(m,6H),2.02〜2.15(m,4H),1.31〜1.41(m,24H),1.01〜1.10(m,4H),0.94〜1.01(m,4H);19F NMR(470MHz,CDCl)δ ppm−126.99−−126.11(m,2F),−121.96(dd,J=9.34Hz,4.00Hz,2F),−112.48(幅広のs,2F),−82.00−−80.80(m,3F)。
【0197】
以上、本明細書をその特定の実施形態について詳述したが、当業者であれば、上記の記載内容を理解することで、これらの実施形態に対する変更、変形、及びその均等物を容易を想到し得ることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲及びその均等物のいずれかとして評価されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学構造:
【化1】

[式中、
R、R’及びR”はそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(iv)置換若しくは非置換のシクロアルキル基、(v)置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキレン基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)置換若しくは非置換のアリール基、(viii)置換若しくは非置換のアリールアルキレン基、(ix)アセチル基、(x)環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換若しくは非置換の複素環、(xi)置換若しくは非置換のエーテル基又はポリエーテル基、又は(xii)置換若しくは非置換のスルホンアミド基を含み;R、R’及びR”の少なくとも1つが存在し、かつそれが、分枝若しくは非分枝の置換アルキル基、分枝若しくは非分枝の置換アルケニル基、置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルアルキレン基、分枝若しくは非分枝の置換アルキニル基、置換アリール基、置換アリールアルキレン基、環内にO、N、S及びSeの少なくとも1つを有する置換複素環、置換エーテル基若しくはポリエーテル基、又は置換スルホンアミド基を含むフッ素化一価ラジカルを含み、該フッ素化一価ラジカルは1以上のフッ素原子を含み、該1以上のフッ素原子は両方のケイ素原子から少なくとも原子3個分又は少なくとも共有結合4つ分だけ離れており、
x、y及びzは、それぞれ独立して0、1、2又は3に等しく、
(x+y+z)=3であり、かつ、
xはそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iv)置換若しくは非置換のアリール基、(v)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルケニル基、(vi)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキニル基、(vii)シアノ基、(viii)ニトロ基、(ix)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルコキシ基を含むか、又は(x)任意の2個の隣り合うx基が互いに結合して(a)置換若しくは非置換の炭素環、又は(b)置換若しくは非置換の複素環を形成する。]を有する、ペンタセン化合物。
【請求項2】
R、R’及びR”が共に、2個の同じ基及び1個の異なる基を含む、請求項1に記載のペンタセン化合物。
【請求項3】
前記フッ素化一価ラジカルが、(i)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたC3〜C18アルキル基、(ii)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたC3〜C18アルケニル基、(iii)フッ素化されたシクロアルキル基、(iv)フッ素化されたシクロアルキルアルキレン基、(v)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたC3〜C18アルキニル基、(vi)フッ素化されたアリール基、又は(vii)フッ素化されたアリールアルキレン基を含む、請求項1又は2に記載のペンタセン化合物。
【請求項4】
前記フッ素化一価ラジカルが、(i)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたC3〜C18アルキル基、(ii)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたC3〜C18アルケニル基、(iii)フッ素化されたシクロアルキル基、又は(iv)フッ素化されたシクロアルキルアルキレン基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項5】
前記フッ素化一価ラジカルが−CHCHを含み、Rが一部又は完全にフッ素化されたC1〜C16アルキル基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項6】
前記フッ素化一価ラジカルが下式:
【化2】

を有し、Rがそれぞれ独立して、4個以下の炭素原子を有する一部又は完全にフッ素化されたアルキル基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項7】
前記フッ素化一価ラジカルが下式:
【化3】

を有し、Rがそれぞれ独立して、4個以下の炭素原子を有する一部又は完全にフッ素化されたアルキル基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項8】
前記フッ素化一価ラジカルが下式:
【化4】

[式中、n=0又は1又は2又は3である。]を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項9】
前記少なくとも3個の原子の少なくとも1個の原子が炭素以外の原子を含む、請求項1又は2に記載のペンタセン化合物。
【請求項10】
前記少なくとも3個の原子の少なくとも1個の原子が酸素、窒素、また硫黄を含む、請求項1、2又は9のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項11】
前記フッ素化一価ラジカルが、(i)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたエーテル基又はポリエーテル基、又は(ii)分枝若しくは非分枝のフッ素化されたスルホンアミド基を含む、請求項1、2、9又は10のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項12】
R、R’及びR”が共に、(i)少なくとも1個の前記フッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のC1〜C8アルキル基、(iii)少なくとも1個のC2〜C8アルケニル基、(iv)少なくとも1個のC3〜C8シクロアルキル基、又は(v)C1〜C8アルキル基とC3〜C8シクロアルキル基若しくはC2〜C8アルケニル基との組み合わせと、組み合わせて含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項13】
R、R’及びR”が共に、(i)少なくとも1個のフッ素化一価ラジカルを、(ii)2個のC1〜C8アルキル基、(iii)2個のC3〜C8シクロアルキル基、又は(iv)2個のC2〜C8アルケニル基と組み合わせて含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項14】
R、R’及びR”が共に、(i)少なくとも1個の前記フッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロピル基、(iii)少なくとも1個のイソプロペニル基、又は(iv)イソプロピル基及びイソプロペニル基と組み合わせて含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項15】
R、R’及びR”が共に、(i)少なくとも1個の前記フッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロピル基と組み合わせて含む、請求項1〜12又は請求項14のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項16】
R、R’及びR”が共に、(i)少なくとも1個の前記フッ素化一価ラジカルを、(ii)少なくとも1個のイソプロペニル基と組み合わせて含む、請求項1〜12又は請求項14のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項17】
xがそれぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルキル基、(iv)シアノ基、又は(v)分枝若しくは非分枝、置換若しくは非置換のアルコキシ基を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項18】
少なくとも1個のxが、(i)フッ素、(ii)アルキル基、又は(iii)ペルフルオロアルキル基を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項19】
少なくとも1個のxが、(i)フッ素、(ii)メチル基、又は(iii)トリフルオロメチル基を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のペンタセン化合物。
【請求項20】
前記組成物が溶媒を更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のペンタセン化合物を含む組成物。
【請求項21】
前記溶媒がフッ素化溶媒を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記フッ素化溶媒が、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロトルエン、(トリフルオロメチル)−ベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、(トリフルオロメトキシ)ベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロアニソール、2,3,5,6−テトラフルオロアニソール、ペンタフルオロベンゾニトリル、2,2,2−トリフルオロアセトフェノン、2’,4’,5’−トリフルオロ−アセトフェノン、2’−(トリフルオロメチル)アセトフェノン、又は3’−(トリフルオロメチル)アセトフェノンを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、(i)フッ素化されていない有機溶媒、(ii)更なるフッ素化された液体、(iii)界面活性剤、又は(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせを更に含む、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーを更に含む、請求項20〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(4−シアノメチルスチレン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1つのコーティング可能な表面と、前記少なくとも1つのコーティング可能な表面上にコーティングされた層と、を有し、前記コーティング層が、請求項1〜19のいずれか一項に記載のペンタセン化合物を含む、基材。
【請求項28】
前記コーティング可能な表面上における水滴の静的接触角が、75°よりも大きい、請求項27に記載の基材。
【請求項29】
半導体層を含み、該半導体層が請求項1〜19のいずれか一項に記載のペンタセン化合物を含む、電子デバイス。
【請求項30】
前記デバイスが、トランジスタ、光電池、発光ダイオード、又はセンサである、請求項29に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−528196(P2012−528196A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513291(P2012−513291)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036559
【国際公開番号】WO2010/138807
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【出願人】(510314301)アウトライダー テクノロジーズ (2)
【Fターム(参考)】