説明

フッ素樹脂塗装鋼板

【課題】高彩度・高耐候性・高光沢を兼ね備えたフッ素樹脂塗装鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板1にプライマー層2、フッ素着色層3、フッ素クリヤー層4がこの順に積層されて形成される。前記フッ素クリヤー層4が紫外線吸収剤及び光安定剤を樹脂固形分に対してそれぞれ1質量%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根・壁・看板等の建築材料等に用いられるフッ素樹脂塗装鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフッ素樹脂塗装鋼板は、高耐候性が必要とされるため、無機焼成顔料が使用されている。例えば、特許文献1に記載された塗装金属板は、表面に化成処理皮膜が形成され、その上層にプライマー層が形成された金属板に対して、フッ素樹脂粒子とワックス成分とを含む塗膜が形成されたものであるが、この塗膜形成用の樹脂組成物には無機焼成顔料が使用されている。また、特許文献2、3に記載された耐熱非粘着塗装鋼板は、溶融アルミニウムめっき鋼板又は亜鉛系めっき鋼板に、フルオロアシッド皮膜、プライマ層、トップ塗膜が順次積層されているものであるが、このトップ塗膜を形成するための耐熱非粘着塗料には無機焼成顔料が使用されている。
【特許文献1】特開2002−283497号公報([0031])
【特許文献2】特開2005−186287号公報([0024])
【特許文献3】特開2005−186288号公報([0024])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、無機焼成顔料は一般に彩度が低いので、彩度のある調色は困難である。高彩度にするためには有機顔料を使用すればよいが、有機顔料は紫外線による変退色が大きいため、これまでフッ素樹脂塗装鋼板には使用されていなかった。また、従来のフッ素樹脂塗装鋼板は、上述のように無機焼成顔料が使用されていたため、光沢値が40%以下と低いものであった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高彩度・高耐候性・高光沢を兼ね備えたフッ素樹脂塗装鋼板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係るフッ素樹脂塗装鋼板は、鋼板1にプライマー層2、フッ素着色層3、フッ素クリヤー層4がこの順に積層されて形成され、前記フッ素クリヤー層4が紫外線吸収剤及び光安定剤を樹脂固形分に対してそれぞれ1質量%以上含有して成ることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1において、フッ素クリヤー層4の膜厚が5〜20μmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係るフッ素樹脂塗装鋼板によれば、フッ素着色層に含有されている有機顔料や、無機焼成顔料の中でも比較的色が鮮やかなものによって、彩度を高めることができるものであり、また、フッ素クリヤー層に含有されている紫外線吸収剤及び光安定剤によって、有機顔料が使用されていても高耐候性を得ることができるものであり、また、顔料を含有しないフッ素クリヤー層がフッ素着色層の表面に形成されていることによって、光沢を高めることができるものである。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、フッ素クリヤー層の膜厚が5μm以上であることによって、耐候性及び光沢をさらに高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明に係るフッ素樹脂塗装鋼板は、図1に示すように、鋼板1の表面にプライマー層2、フッ素着色層3、フッ素クリヤー層4をこの順に積層することによって形成されている。
【0011】
本発明において鋼板1としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶融アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板や、ステンレス鋼板等を用いることができる。
【0012】
この鋼板1の表面には、プライマー層2の形成に先立って化成処理層(図1では図示省略)を形成することができる。化成処理層としては、例えば、クロメート(クロム酸塩)処理層、リン酸塩処理層、複合酸化皮膜等を挙げることができる。
【0013】
クロメート(クロム酸塩)処理層は、6価クロムと硫酸等の無機酸とを含む水溶液を用いて鋼板1の表面を処理することによって、3価クロム及び6価クロムを含む水和酸化物からなる層として形成することができる。また、リン酸塩処理層とは、第1リン酸塩とリン酸とを含む水溶液を用いて鋼板1の表面を処理することによって形成された第3リン酸塩からなる層である。リン酸塩の種類としては、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸鉄等を挙げることができる。なお、化成処理層の厚みは、リン酸塩処理層の場合には、1〜2μmが一般的である。
【0014】
プライマー層2は、塗膜の密着性を向上させたり、防錆性を付与したりするなどの目的のために下塗りとして鋼板1の表面(化成処理層を形成する場合にあっては、化成処理層の表面)に形成される。プライマー層2を形成するための下塗り塗料(プライマー)としては、例えば、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等を用いることができ、また、これには必要に応じてクロム酸塩を主体とする防錆顔料等を含有させることができる。そして、スプレー、バーコーター、ローラーカーテンコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター等を用いて下塗り塗料を鋼板1の表面に塗布した後、これを熱風乾燥炉や誘電加熱装置等に通して加熱して乾燥硬化させることによって、プライマー層2を形成することができる。プライマー層2は、化成処理層をあらかじめ形成してある場合にはこの化成処理層に密着するように形成することができ、化成処理層を形成していない場合には鋼板1に直接密着するように形成することができる。またこのとき、プライマー層2として組成の異なる二種以上のものを順次積層して二層以上の多層のプライマー層2を形成してもよい。下塗り塗料の塗布量やプライマー層2の膜厚は適宜に調整することができるが、プライマー層2の膜厚は1〜10μmであることが好ましい。
【0015】
フッ素着色層3を形成するための中塗り塗料としては、有機顔料と無機焼成顔料のいずれか一方又は両方を含有するフッ素樹脂塗料を用いる。このフッ素樹脂塗料(フッ素樹脂とアクリル樹脂の質量比は50:50〜90:10)に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリ四フッ化エチレン等を挙げることができ、溶剤としては、例えば、キシレン・イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサン、DBE(二塩基酸エステル)、ソレベッソ等を挙げることができる。
【0016】
また、有機顔料としては、例えば、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等を用いることができる。このような有機顔料のフッ素着色層3における含有量は10〜30質量%であることが好ましい。
【0017】
また、無機焼成顔料としては、比較的色が鮮やかなものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カドミウムレッド、黄鉛等を用いることができる。このような無機焼成顔料のフッ素着色層3における含有量は10〜35質量%であることが好ましい。ただし、有機顔料と無機焼成顔料を両方用いる場合には、有機顔料の彩度を低下させない範囲において、彩度の低い無機焼成顔料を用いることができる。
【0018】
そして、スプレー、バーコーター、ローラーカーテンコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター等を用いて中塗り塗料をプライマー層2の表面に塗布した後、これを熱風乾燥炉や誘電加熱装置等に通して加熱して乾燥硬化させることによって、フッ素着色層3を形成することができる。中塗り塗料の塗布量やフッ素着色層3の膜厚は適宜に調整することができるが、フッ素着色層3の膜厚は10〜20μmであることが好ましい。
【0019】
フッ素クリヤー層4を形成するための上塗り塗料としては、紫外線吸収剤(UVA)及び光安定剤(HALS)を含有するフッ素樹脂塗料を用いる。このフッ素樹脂塗料(フッ素樹脂とアクリル樹脂の質量比は50:50〜90:10)に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリ四フッ化エチレン等を挙げることができ、溶剤としては、例えば、キシレン・イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサン、DBE(二塩基酸エステル)、ソレベッソ等を挙げることができる。なお、上塗り塗料に顔料は含有されていない。
【0020】
また、紫外線吸収剤(UVA)としては、下記式(1)に示すようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、下記式(2)〜(7)に示すようなヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等を用いることができ、これらは一種単独で用いるほか、二種以上を併用することができる。このような紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社から提供されている品番「TINIVIN 384−2」、「TINIVIN 400」、「TINIVIN 411L」、「TINIVIN 900」、「TINIVIN 928」等を用いることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
また、光安定剤(HALS)としては、下記式(8)(9)に示すような高分子量タイプヒンダードアミン系光安定剤、下記式(10)〜(13)に示すようなヒンダードアミン系光安定剤等を用いることができ、これらは一種単独で用いるほか、二種以上を併用することができる。このような光安定剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社から提供されている品番「TINUVIN 111 FDL」、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 144」、「TINUVIN 292」等を用いることができる。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
また、フッ素クリヤー層4は紫外線吸収剤及び光安定剤を樹脂固形分に対してそれぞれ1質量%以上含有する。紫外線吸収剤又は光安定剤の含有量が1質量%未満であると、高耐候性を得ることができない。逆に、紫外線吸収剤又は光安定剤の含有量が過剰であると、フッ素クリヤー層4に著しい黄着色が生じるおそれがあり、また、上塗り塗料の保存時などに低温環境において紫外線吸収剤や光安定剤が結晶化して凝集し、これらを再生することが困難となるおそれがあるので、紫外線吸収剤及び光安定剤の含有量の上限はいずれも3質量%である。
【0029】
そして、スプレー、バーコーター、ローラーカーテンコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター等を用いて上塗り塗料をフッ素着色層3の表面に塗布した後、これを熱風乾燥炉や誘電加熱装置等に通して加熱して乾燥硬化させることによって、フッ素クリヤー層4を形成して、図1に示すようなフッ素樹脂塗装鋼板を製造することができる。
【0030】
ここで、上塗り塗料の塗布は、フッ素着色層3を形成する中塗り塗料が乾燥硬化した後に行ってもよいが、乾燥硬化する前の中塗り塗料の表面に上塗り塗料を塗布した後、中塗り塗料及び上塗り塗料を同時に焼付け乾燥して仕上げる、いわゆるウェットオンウェット(ツーコートワンベーク)を使用してもよい。この工法を使用すると、フッ素着色層3とフッ素クリヤー層4との間の密着性をさらに向上させることができる。また、フッ素クリヤー層4の膜厚は5〜20μmであることが好ましい。このようにフッ素クリヤー層4の膜厚が5μm以上であることによって、耐候性及び光沢をさらに高めることができるものである。しかし、フッ素クリヤー層4が過度に厚くなる場合には、わき(あわ)が発生するおそれがあるので、フッ素クリヤー層4の膜厚の上限は上記のように20μmとなる。
【0031】
以上のようにして製造されるフッ素樹脂塗装鋼板にあっては、従来のものと比較して、次のような有利な効果を得ることができる。まず、フッ素着色層3に含有されている有機顔料や、無機焼成顔料の中でも比較的色が鮮やかなものによって、彩度を高めることができるものである。よって、カラーバリエーションに富んだフッ素樹脂塗装鋼板を製造することができ、近年における顧客の多様なニーズに応えることができるものである。次に、フッ素クリヤー層4に含有されている紫外線吸収剤及び光安定剤によって、上記のように有機顔料が使用されていても、無機焼成顔料を用いる場合と同程度に、高耐候性を得ることができるものである。そして、顔料を含有しないフッ素クリヤー層4がフッ素着色層3の表面に形成されていることによって、光沢を高めることができるものである。従って、フッ素樹脂塗装鋼板を屋外において長時間曝露した場合でも、塗膜の割れ・剥離等が防止され、さらに塗膜の変退色や光沢の劣化も防止されることとなる。これは、フッ素クリヤー層4に含有されている紫外線吸収剤や光安定剤の働きにより、日光の照射に基づく樹脂劣化の連鎖反応が遮断されるからである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
鋼板1としては、厚み0.40mmの溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板を用いた。この鋼板1の表面には、塗布クロメート液(日本パーカライジング(株)製「ZM−1300AN」)を用いて化成処理層を形成した。そしてこの化成処理層の表面に下塗り塗料(プライマー)を塗布した後、これを45秒間、最終到達温度190℃に加熱して乾燥硬化させることによって、膜厚5μmのプライマー層2を形成した。
【0034】
ここで、前記下塗り塗料としては、エポキシ樹脂プライマー(日本ファインコーティングス(株)製「ファインタフDプライマーGL64P」)を用いた。
【0035】
次に、プライマー層2の表面に中塗り塗料を塗布した後、これを45秒間、最終到達温度250℃に加熱して乾燥硬化させることによって、膜厚20μmのフッ素着色層3を形成した。
【0036】
ここで、前記中塗り塗料としては、フッ素樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製「ディックフローEF」)に有機顔料及び無機焼成顔料を下記[表1]のように配合したものを用いた。なお、フッ素樹脂とアクリル樹脂の質量比は70:30である。
【0037】
【表1】

【0038】
次に、フッ素着色層3の表面に上塗り塗料を塗布した後、これを45秒間、最終到達温度250℃に加熱して乾燥硬化させることによって、膜厚5μmのフッ素クリヤー層4を形成して、図1に示すようなフッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0039】
ここで、前記上塗り塗料としては、フッ素樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製「ディックフローEFクリヤー」)に紫外線吸収剤(UVA)及び光安定剤(HALS)を配合したものを用いた。紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製「TINIVIN 384−2」を用い、光安定剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製「TINUVIN 123」を用いた。フッ素クリヤー層4は紫外線吸収剤及び光安定剤を樹脂固形分に対してそれぞれ1質量%含有する。なお、フッ素樹脂とアクリル樹脂の質量比は85:15である。
【0040】
(実施例2)
フッ素クリヤー層4の膜厚を10μmとした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0041】
(実施例3)
紫外線吸収剤及び光安定剤をそれぞれ2質量%とし、フッ素クリヤー層4の膜厚を10μmとした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0042】
(実施例4)
フッ素クリヤー層4の膜厚を3μmとした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0043】
(実施例5)
紫外線吸収剤及び光安定剤をそれぞれ3質量%とした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0044】
(実施例6)
紫外線吸収剤及び光安定剤をそれぞれ5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0045】
(実施例7)
フッ素クリヤー層4の膜厚を20μmとした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0046】
(実施例8)
中塗り塗料として、フッ素樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製「ディックフローEF」)に有機顔料のみを下記[表2]のように配合したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例9)
中塗り塗料として、フッ素樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製「ディックフローEF」)に無機焼成顔料のみを下記[表3]のように配合したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0049】
【表3】

【0050】
(比較例1)
紫外線吸収剤及び光安定剤をそれぞれ0質量%とし、フッ素クリヤー層4の膜厚を10μmとした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0051】
(比較例2)
紫外線吸収剤及び光安定剤をそれぞれ0.5質量%とした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0052】
(比較例3)
中塗り塗料として、フッ素樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製「ディックフローEF」)に無機焼成顔料のみを下記[表4]のように配合したものを用いると共に、フッ素クリヤー層4を形成しないようにした以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂塗装鋼板を製造した。
【0053】
【表4】

【0054】
(彩度(C値))
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS Z 8729に基づいてCを求め、彩度を評価した。C≧40であるものは高彩度とした。結果を下記[表5]に示す。
【0055】
(耐候性 DEW)
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS Z 9117に基づくDEWサイクル式促進耐候試験を行って1000HrでのΔEを求め、下記の基準で耐候性を評価した。結果を下記[表5]に示す。
【0056】
「◎」:ΔEが5以下であるもの。
【0057】
「○」:ΔEが5を超えて8以下であるもの。
【0058】
「△」:ΔEが8を超えて10以下であるもの。
【0059】
「×」:ΔEが10を超えるもの。
【0060】
(光沢値)
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS K 5600−4−7に基づいて光沢値を求めた。結果を下記[表5]に示す。
【0061】
(硬度)
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS G 3322の13.2.3に基づく鉛筆硬度試験を行い、硬度を評価した。結果を下記[表5]に示す。
【0062】
(加工性)
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS G 3322の13.2.2に基づく曲げ試験を行い、折り曲げ部におけるクラックの有無を10倍ルーペで観察することによって、加工性を評価した。結果を下記[表5]に示す。なお、下記[表5]中の「2T」は、曲げの内側間隔が表示厚さ(T:0.40mm)の板2枚の場合に、クラックが発生しないことを意味する。
【0063】
(SST)
各フッ素樹脂塗装鋼板について、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験(SST)を行った。結果を下記[表5]に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
上記[表5]にみられるように、いずれの実施例のフッ素樹脂塗装鋼板も高彩度・高耐候性・高光沢を兼ね備えていることが確認される。特に、フッ素クリヤー層4の膜厚が5μm以上である実施例1〜3のものは、フッ素クリヤー層4の膜厚が5μm未満である実施例4のものと比較して、耐候性及び光沢がさらに高められていることが確認される。また、フッ素クリヤー層4の膜厚が20μm以下である実施例1〜9のものはいずれも、わき(あわ)は全く発生していなかった。
【0066】
これに対して、紫外線吸収剤及び光安定剤を用いていない比較例1のものは、高彩度・高光沢であるものの、耐候性が低いことが確認される。
【0067】
また、比較例2のものは、紫外線吸収剤及び光安定剤を用いているが、いずれも1質量%未満であるため、耐候性がそれほど高くないことが確認される。
【0068】
また、無機焼成顔料を用いた比較例3のものは、高耐候性であるものの、彩度・光沢が低いことが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 鋼板
2 プライマー層
3 フッ素着色層
4 フッ素クリヤー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板にプライマー層、フッ素着色層、フッ素クリヤー層がこの順に積層されて形成され、前記フッ素クリヤー層が紫外線吸収剤及び光安定剤を樹脂固形分に対してそれぞれ1質量%以上含有して成ることを特徴とするフッ素樹脂塗装鋼板。
【請求項2】
フッ素クリヤー層の膜厚が5〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂塗装鋼板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44252(P2008−44252A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222719(P2006−222719)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】