説明

フッ素樹脂材の製造方法及びフッ素樹脂材

【課題】非粘着性能を大幅に改善するフッ素樹脂材を製造する方法及びそのフッ素樹脂材を提供すること。
【解決手段】非耐熱性繊維で構成される基材1をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して前記基材に前記フッ素樹脂含有溶液を含浸させる浸漬・含浸工程と、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を焼成して耐熱性を高める焼成工程と、を有し、前記基材の3次元形状を保持したフッ素樹脂材を製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着物質を取り扱う設備や装置、例えば、粘着テープの製造設備、菓子パンの製造設備、ゴムを成型する金型等において、粘着物の剥離や非粘着に最適なフッ素樹脂材を製造する方法及びその方法で製造されるフッ素樹脂材に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着物を取り扱う設備においては、粘着物の設備への付着を防止することが重要である。耐熱性が要求される非粘着性部材として、これまでは、ガラス繊維や芳香族ポリアミド繊維などの耐熱性織布をフッ素樹脂で被覆したフッ素樹脂材が知られている(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−312236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフッ素樹脂材の断面図を図3に示す。従来のフッ素樹脂材の基材としての耐熱性繊維織布10は、折れやすいため縦糸10aと横糸10bが緩やかに屈曲して織られてなる。緩やかな凹凸の基材10にフッ素樹脂12を被覆すると緩やかな凹凸面のフッ素樹脂材になり、凹凸の段差hが小さかった。
【0005】
上記従来のフッ素樹脂材は、耐熱性繊維から作られた織布を基材としている。耐熱性繊維は、硬くて脆いため単純な形状(例えば、格子状等)の織布等しかできなかった。すなわち、複雑な形状の織布等を作ることができないため、従来のフッ素樹脂材は、表面の凹凸が緩やか且つ単純で、凹凸の段差が小さく非粘着性が不十分であった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、非粘着性能を大幅に改善するフッ素樹脂材を製造する方法及びそのフッ素樹脂材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するためになされた本発明に係るフッ素樹脂材の製造方法は、非耐熱性繊維で構成される基材をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して前記基材に前記フッ素樹脂含有溶液を含浸させる浸漬・含浸工程と、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を焼成して耐熱性を高める焼成工程と、を有し、前記基材の3次元形状を保持したフッ素樹脂材を製造することを特徴とする。
【0008】
基材が植物繊維(綿、麻等)、動物繊維(絹、羊毛等)や化学繊維(レーヨン、アセテート、ナイロン等)といった非耐熱性繊維で構成されるので、複雑な3次元形状の基材にすることができる。その結果、凹凸の段差を大きくすることができ、非粘着性が大きくなる。
【0009】
また、浸漬・含浸工程は基材をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して含浸させるだけであるので、基材の3次元形状が保持される。したがって、例えば基材に多数の貫通孔があいていれば、孔あきのフッ素樹脂材を製造することができる。その結果、凹凸の段差(この場合、孔の深さ)を大きくすることができ、非粘着性が大きくなる。
【0010】
上記のフッ素樹脂材の製造方法において、前記浸漬・含浸工程と前記焼成工程との間に、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を加熱して前記フッ素樹脂以外の含有剤を分解させる予備焼成工程を有するとよい。
【0011】
フッ素樹脂以外の含有剤が分解されるので、焼成工程でフッ素樹脂が基材に強固に付着される。
【0012】
また、前記焼成工程は、前記フッ素樹脂の融点以上、420℃以下の温度で焼成するとよい。焼成工程は、前記フッ素樹脂の融点以上、400℃以下で焼成すると更によい。
【0013】
フッ素樹脂は溶融するが、非耐熱性繊維の融点或いは分解温度は、フッ素樹脂の融点未満であるので、基材が脱酸素状態で焼成される。その結果、基材が確実に炭化され、フッ素樹脂が炭化した基材に強固に固定される。
【0014】
また、前記予備焼成工程は、200℃以上、前記フッ素樹脂の融点未満の温度で分解させるとよい。
【0015】
フッ素樹脂以外の界面活性剤や増膜剤などを確実に分解させることができる。
【0016】
ここで、フッ素樹脂の融点に触れておく。融点は当然ながらフッ素樹脂の種類で異なる。例えば、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)の融点は、270℃であり、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の融点は、275℃、テトラフルオロエチレン/パーフルオロビニールエーテル共重合体(PFA)の融点は、310℃、テトラフルオロエチレン単独重合体(PTFE)の融点は、327℃である。
【0017】
また、前記基材は、織布、不織布或いは編み物であるとよい。
【0018】
凹凸の段差が大きなフッ素樹脂材を製造することができる。
【0019】
また、前記基材は、0.2〜10mm離間した複数の凸部をもつとよい。
【0020】
非粘着性が大きくなる。
【0021】
課題を解決するためになされた本発明に係るフッ素樹脂材は、上記の製造方法で製造されたフッ素樹脂材であって、炭化した繊維で構成された基材と、前記基材を被覆するフッ素樹脂皮膜と、を有することを特徴とする。
【0022】
上記のフッ素樹脂材において、前記基材は、織布、不織布或いは編み物であるとよい。
【0023】
また、前記基材は、0.2〜10mm離間した複数の凸部をもつとい。
【発明の効果】
【0024】
基材が植物繊維(綿、麻等)、動物繊維(絹、羊毛等)や化学繊維(レーヨン、アセテート、ナイロン等)といった非耐熱性繊維で構成されるので、複雑な3次元形状の基材にすることができる。その結果、凹凸の段差を大きくすることができ、非粘着性が大きくなる。
【0025】
また、浸漬・含浸工程は基材をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して含浸させるだけであるので、基材の3次元形状が保持される。したがって、例えば基材に多数の貫通孔があいていれば、孔あきのフッ素樹脂材を製造することができる。その結果、凹凸の段差(この場合、孔の深さ)を大きくすることができ、非粘着性が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のフッ素樹脂材の製造工程図である。
【図2】非耐熱性繊維で構成される基材の模式断面図である。
【図3】従来のフッ素樹脂材の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のフッ素樹脂材を製造する方法は、非耐熱性繊維で構成される基材をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して前記基材に前記フッ素樹脂含有溶液を含浸させる浸漬・含浸工程と、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を加熱して前記フッ素樹脂以外の含有剤を分解させる予備焼成工程と、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸し前記予備焼成工程で含有剤が分解した前記基材を焼成して耐熱性を高める焼成工程と、を有する。
【0028】
以下、各工程を図面を参照して説明する。図1は、本発明の非粘着性部材の製造工程図である。
【0029】
<浸漬・含浸工程>
図1(a)に示す非耐熱性繊維で構成される基材1をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬しては引き上げ、乾燥させることを繰り返すことで図1(b)に示すフッ素樹脂含有膜2で覆われた状態にする。
【0030】
非耐熱性繊維としては、植物繊維(綿、麻等)、動物繊維(絹、羊毛等)や化学繊維(レーヨン、アセテート、ナイロン等)等を用いることができるが、化学繊維が好ましい。
【0031】
化学繊維で構成される基材としては、0.2〜10mm離間した複数の凸部をもつ織布、不織布、編み物が好ましく用いられる。
【0032】
織布、不織布、織物の断面図を模式的に示すと、おおよそ図2(a)〜(e)の5種類のパターンに分類される。(a)は、凸部11と凸部11との間に貫通孔12が形成されたパターンで、これをパターンAと呼ぶことにする。(b)は、凸部11の下部から横方向に突き出し孔径を狭める段差部13があるタイプである。すなわち、(b)は、下方で孔径が細くなる貫通孔12aが形成されたパターンで、これをパターンBと呼ぶことにする。(c)は、(a)の貫通孔12が底部14で塞がれ凹部12bとなるタイプで、これをパターンCと呼ぶことにする。(d)は、対向する凸部11の下部から横方向に突き出す高さが異なる段差部13と14aで貫通孔が塞がれ凹部12cとなるタイプで、これをパターンDと呼ぶことにする。(e)は、パターンBとパターンcとを組み合わせたタイプで、これをパターンEと呼ぶことにする。
【0033】
特に編み物の場合、繊維の編み込み及び編成により凸部11の頭頂と凸部間の凹部の底との段差は、図2(a)のパターンAの場合、厚さh0になり、その他のパターンの場合はd0となるため、粘着物との接触面積を確実に低下させることができ、優れた非粘着性を維持できる。
【0034】
粘着物が接触しない凹部12a、12b、12c、12d(パターンAの場合、貫通孔12)の幅r0は、隣り合う凸部11の離間距離でもある。この凸部11の離間距離r0は、0.2mm以上が非粘着性の観点で好ましい。0.5〜10mmがより好ましい。離間距離r0が0.2mm以上が好ましいのは、0.2mmより小さいと、凹部の全体に対する占有面積を大きくできなくなるからである。また、離間距離r0が10mm以下であるのは、10mmより大きいと、粘着物を凸部11で受けきれず、他の支持体及び部品等にくっついて非粘着の効果がなくなるからである。
【0035】
厚さh0或いは段差d0は、通常50μm〜2000μmの範囲に設定される。また、粘着物との接触面積を低減させるファクターとして、凹部12、12a、12b、12c、12dの全体に占める占有面積がある。凹部の全体に占める占有面積は、10〜95%の範囲が好ましい。25〜90%がより好ましく、40〜90%が更に好ましい。
【0036】
凸部11の離間距離r0が0.2mm以上であれば、凹部は、パターンC、パターンD、パターンEのような有底孔でもパターンA、パターンBのような貫通孔でもよい。段差d0或いは貫通孔の場合は厚さh0が50μm〜2000μmの織布、編み物等としては、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂等の化学繊維及び有機天然繊維製がよく、中でもポリエステル系樹脂(PET、PTT、PBT等)、ナイロン系樹脂(PA6、PA66等)、アクリル系樹脂(PAN、アクリルニトリル共重合体)が初期形状の保持性に優れているので好ましい。
【0037】
フッ素樹脂含有溶液は、水とポリオキシアルキルエーテル界面活性剤(ノニオン系)、増膜剤、ハジキ防止剤等を添加したフッ素樹脂濃度30〜70重量%の水分散液である。
【0038】
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン単独重合体(PTFE)及び共重合体が用いられる。共重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロビニールエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)及びテトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられるが、耐熱性、非粘着性の点でパーフルオロ系フッ素樹脂が好ましい。
【0039】
優れた凹凸面をもつ非耐熱性繊維による織布や編み物は、上記フッ素樹脂含有溶液に1回浸漬されては引き上げられて乾燥される。浸漬と乾燥が2〜7回繰り返されて例えば、PTFEが界面活性剤等と共に含浸され、所定の厚さの皮膜2(図1(b)参照。)となる。
【0040】
<予備焼成工程>
次に、図1(b)に示す状態のサンプルを200〜300℃好ましくは220〜280℃の範囲の温度雰囲中で300〜30分間加熱し、界面活性剤や増膜剤等を分解させる。すると、皮膜2は、PTFE皮膜2a(図1(c)参照。)になる。
【0041】
皮膜2の厚さが大であると、長時間の分解時間が必要であるばかりでなく、皮膜2が発泡して脹れたり剥がれたりして最終的に良好なフッ素樹脂材ができない。
【0042】
<焼成工程>
次に、図1(c)に示す状態のサンプルを360〜400℃の温度で5〜60分焼成する。すると、PTFE皮膜2aが溶融して脱酸素状態で非耐熱性繊維で構成される基材1が焼成され炭化した基材1aになる。その結果、耐熱性基材1aが溶融固化したテトラフルオロエチレン単独重合体(PTFE)皮膜2bで被覆された図1(d)に示すフッ素樹脂材となる。
【0043】
従来は、耐熱性繊維の織布をPTEF分散液に1回浸漬・含浸する毎に乾燥(60〜130℃)、焼成(360〜400℃)が繰り返され、PTEF皮膜の厚さが50〜200μmであった。
【0044】
本発明の製造方法でも、図1(d)の状態のPTFE皮膜2bの厚さを更に厚くすることができる。すなわち、図1(d)の状態のサンプル(1aが脱酸素状態で焼成された非耐熱性繊維であり、1aが耐熱性を有しているので)を上記従来の方法で処理して厚くすることができる。図1(d)の状態のサンプルをPTEF分散液に1回浸漬・含浸する毎に乾燥(60〜130℃)、焼成(360〜400℃)を繰り返す。
【0045】
また、図1(d)の状態のサンプルを本発明の<浸漬・含浸工程>、<予備焼成工程>及び<焼成工程>で再処理することで皮膜2bを厚くするこもできる。すなわち、<浸漬・含浸工程>で図1(d)の状態のサンプルに数回含浸、乾燥を繰り返した後、<予備焼成工程>で処理し、その後<焼成工程>で処理することでPTFE皮膜2bの厚さを厚くすることができる。
【0046】
フッ素樹脂皮膜2bの厚さは、耐久性と凹凸形状とのバランスをとる必要性から基材1の厚さの1/50〜1/2がよい。フッ素樹脂皮膜2bの厚さは、25〜1000μmの範囲で、基材1の3次元形状と厚さにより最適化される。
【0047】
本発明の製造方法で製造されるフッ素樹脂材は、フッ素樹脂被膜の厚さをある程度厚くしないと、強度が不足する場合がある。強度を必要とする用途の場合、例えば以下のようにするとよい。
【0048】
耐熱繊維で構成される基材の上に非耐熱性繊維で構成される基材を重ねて、本発明の<浸漬・含浸工程>、<予備焼成工程>及び<焼成工程>で処理する。耐熱繊維で構成される基材が補強材として働き、非耐熱性繊維で構成される基材が優れた凹凸を作り出すので、強度が高くて非粘着性に優れたフッ素樹脂材が製造される。
【0049】
また、従来の耐熱繊維で構成される基材を用いたフッ素樹脂材と本発明の製造方法で製造したフッ素樹脂材とを熱圧着等で一体化する。一体化されたフッ素樹脂材は、従来のフッ素樹脂材で強度が高められ、本発明の製造方法で製造したフッ素樹脂材で非粘着性が高められる。
【0050】
強度が高く非粘着性に優れたフッ素樹脂材の用途としては、搬送ベルト、オーブンベルト、コンベアー、調理シート、シュート、ホッパーなど、がある。強度が高く非粘着性に優れたフッ素樹脂材は、非粘着及び耐熱搬送用など幅広く利用される。
(実施例1)非耐熱性繊維で構成される基材は、繊維径20μmのポリエステル繊維を編み込んだパターンB(図2参照。)の凹凸模様をもち、厚さh0は550μm、大きさは100mm角である。
【0051】
この基材を三井デュポンフロロケミカル社PTFE 31-JR(PTFE ディスバージョン、濃度:60重量%)に浸漬して引き上げ、両端をクリップで固定して過剰含浸PTFEを落とした。その後、80℃の電気炉に入れ、30分間乾燥させ、この操作を5回繰り返した。その後、230℃の電気炉に入れて3時間予備焼成を行った。その後、380℃で30分間焼成した。製造されたフッ素樹脂材は、褐色をしており、以下の諸特性を示した。
【0052】
初期(基材)重量:1.3600g、初期(基材)厚み:550μm
予備焼成後の重量:4.3184g、予備焼成後の厚み:750μm
焼成後の重量 :1.3992g、焼成後の厚み :630μm
PTFE皮膜の膜厚換算:
ポリエステルの分解により目減りした厚み=予備焼成後の厚み(750μm)−焼成後の厚み(630μm)=120μm
焼成後の基材の厚み=初期厚み(550μm)−120μm=430μm
PTFE皮膜の膜厚=焼成後の厚み(630μm)−430μm=200μm
非粘着性テストの結果を表1に示す。
(実施例2)非耐熱性繊維で構成される基材は、繊維径13μmのナイロン繊維を編み込んだパターンB(図2参照。)の凹凸模様(凹部は扇が重なったような模様)をもち、厚さh0は370μm、大きさは100mm角である。
【0053】
この基材を実施例1と同じ方法で含浸及び乾燥→予備焼成→焼成を行った。製造されたフッ素樹脂材は、黒褐色をしており、以下の諸特性を示した。
【0054】
初期(基材)重量:1.4560g、初期(基材)厚み:370μm
予備焼成後の重量:2.9924g、予備焼成後の厚み:430μm
焼成後の重量 :1.2760g、焼成後の厚み :370μm
PTFE皮膜の膜厚 :60μm
非粘着性テストの結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
従来のガラス繊維をフッ素樹脂で被覆した市販品(本多産業(株)製、商品名:HGS−P522)を用いて非粘着性テストを行った。この市販品は、1.15mm角の略正方形の凹部をもつ。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
従来のガラス繊維をフッ素樹脂で被覆した市販品(本多産業(株)製、商品名:HGS−P521)を用いて非粘着性テストを行った。この市販品は、3本の繊維束を格子状に編んでなり、0.7mm角の略正方形の凹部をもつ。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記実施例1、2及び比較例1、2のフッ素樹脂材の性状が測定された。繊維径、凸部離間距離、凸部の幅が株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VH−Z75型)で拡大して測定された(拡大倍率50〜175倍)。また、凹部占有面積は、拡大画像から求められた。
【0059】
膜厚は、株式会社ミツトヨ製デジタルマイクロメータで測定された。
【0060】
非粘着性を示すガムテープ剥離力は、以下のようにして測定された。リンレイテープ株式会社のガムテープ(粘着力:7.75N/cm)が10mm幅貼り付けられ、島津製作所製引っ張り試験機(AG−X型)を用いて速度10mm/分、90°の引き剥がし応力が測定された。5回測定され最小安定値と最大安定値が求められた。最小安定値は、連続測定で一番低く出た値で、2回以上カウントされた値であり、最大安定値は、連続測定で一番高く出た値で2回以上カウントされた値である。
【0061】
表1より、本発明の製造方法で製造されたフッ素樹脂材(実施例1、2)は、剥離力が小さく(非粘着性が大きく)、最小、最大の剥離値差(非粘着性のばらつき)が小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・・・・基材
11・・・・凸部
2b・・・・・ フッ素樹脂皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非耐熱性繊維で構成される基材をフッ素樹脂含有溶液中に浸漬して前記基材に前記フッ素樹脂含有溶液を含浸させる浸漬・含浸工程と、
前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を焼成して耐熱性を高める焼成工程と、
を有し、前記基材の3次元形状を保持したフッ素樹脂材を製造することを特徴とするフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項2】
前記浸漬・含浸工程と前記焼成工程との間に、前記浸漬・含浸工程で前記フッ素樹脂含有溶液を含浸した前記基材を加熱して前記フッ素樹脂以外の含有剤を分解させる予備焼成工程を有する請求項1に記載のフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程は、前記フッ素樹脂の融点以上、420℃以下の温度で焼成する請求項1に記載のフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項4】
前記予備焼成工程は、200℃以上、前記フッ素樹脂の融点未満の温度で分解させる請求項2または3に記載のフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項5】
前記基材は、織布、不織布或いは編み物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項6】
前記基材は、0.2〜10mm離間した複数の凸部をもつ請求項1〜5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフッ素樹脂材の製造方法で製造されたフッ素樹脂材であって、
炭化した非耐熱性繊維で構成される基材と、
前記基材を被覆するフッ素樹脂皮膜と、
を有することを特徴とするフッ素樹脂材。
【請求項8】
前記基材は、織布、不織布或いは編み物である請求項7に記載のフッ素樹脂材。
【請求項9】
前記基材は、0.2〜10mm離間した複数の凸部をもつ請求項7または8に記載のフッ素樹脂材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189309(P2011−189309A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58893(P2010−58893)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(592008181)株式会社吉田エス・ケイ・テイ (8)
【Fターム(参考)】