説明

フラットケーブルの接続構造

【課題】簡便にフラットケーブルの偏平導体を接続可能とする。
【解決手段】2枚のフラットケーブル11、12から絶縁シート13、14を剥離して偏平導体15、16を露出し、偏平導体同士の先端を重ね合わせ、偏平導体同士の先端に巻取治具を取り付け、数回巻付けた後に巻取治具を外すことにより偏平導体15、16の先端は重ね合わせた状態で巻回され、この巻回部19により偏平導体15、16同士の接続がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルの偏平導体同士を接続するフラットケーブルの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からフラットケーブルの接続には、特許文献1〜3のように、例えば図16に示すようなフラットケーブル1、2を重ね合わせ、接続個所の偏平導体1a、2aを露出して偏平導体1a、2a同士を接合し、接合した部分Aを超音波溶着、圧接、溶接、半田付け等によって接合する方法が知られている。
【0003】
また、特許文献4のように、例えば図17に示すような接続すべきフラットケーブル1、2が重ね合った個所の偏平導体1a、2aに、短絡片3を貫通することで接続を行う方法も公知である。
【0004】
更に、特許文献5のように、例えばフラットケーブルの端部にコネクタを接続し、そのコネクタを使用して他のフラットケーブルと接続する方法も知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−192949号公報
【特許文献2】特開2004−63082号公報
【特許文献3】特開2002−270252号公報
【特許文献4】特開2004−87322号公報
【特許文献5】特開平7−65913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例の溶接、半田付け及び超音波溶着等による接続作業では、設備面及び作業工数が懸念される。また、偏平導体を貫通する短絡片を用いた方法では、偏平導体に傷を付けるため、耐環境及び長時間使用等を考慮すると、接続部分に異常が発生する可能性がある。更には、コネクタを使用するには、コスト、作業時間がかかる問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、設備面及び作業工数を懸念することなく、容易な接続が可能なフラットケーブルの接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するための本発明に係るフラットケーブルの接続構造の技術的特徴は、複数枚のフラットケーブルの偏平導体同士を接続する場合において、接続すべき偏平導体を露出して先端同士を重合し、この重合部を接続したことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフラットケーブルの接続構造によれば、従来のような接続作業及び接続金具などが不要となり、フラットケーブルの偏平導体同士を容易に接続することができる。特に、車体の天井部やドア等のスペースが限られ、室内灯、スピーカなどの電子機器が多く配置される個所において好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図1〜図15に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は偏平導体を絶縁シート材により覆った2枚のフラットケーブル同士の偏平導体を接続する場合の斜視図である。図1に示すように、例えば2枚のフラットケーブル11、12から絶縁シート13、14を剥離して偏平導体15、16を露出し、偏平導体15、16同士の先端を重ね合わせる。なお、絶縁シート13、14に穿孔された孔部17は、フラットケーブル11、12を正確に重ね合わせるために使用され、後述する保護カバーを取り付ける場合にも用いられる。
【0012】
続いて、図2に示すように、重ね合わせた偏平導体15、16同士の先端に巻取治具18を取り付け、数回巻取った後に巻取治具18を抜き出すと、図3に示すように、偏平導体15、16の先端は重ね合わせた状態で巻回され、この巻回部19により偏平導体15、16同士の接続がなされる。なお、フラットケーブルの枚数は実施例のように2枚に限らず、3枚以上であってもよい。
【0013】
また、隣接する偏平導体15、16同士を接続する場合には、図4に示すように巻回部19の中心に金属製の芯部20を挿入して隣接する偏平導体15、16同士をも導通させることができる。
【0014】
ここで図5に示すように、重ね合わせたフラットケーブル11、12を開いて左右に拡開すると、偏平導体15、16同士の巻回によってフラットケーブル11、12が帯状に連続的に接続された構造が得られる。
【0015】
図6は合成樹脂材から成る保護カバー21の底部22の斜視図、図7は蓋部23の斜視図を示し、これらの保護カバー21をフラットケーブル11、12の巻回部19に被せて接続状態を保護することができる。底部22には、偏平導体15、16を収容する溝部22aが形成され、溝部22aには巻回部19を収納する凹部22bが設けられ、更にフラットケーブル11、12の孔部17に挿通するピン22cが設けられている。一方、蓋部23にも溝部23a、凹部23bが設けられ、底部22のピン22cを嵌入するピン孔23cが設けられている。
【0016】
図8に示すように、接続したフラットケーブル11、12を底部22に取り付け、ピン22c、ピン孔23cをガイドにして、蓋部23を底部22上に被着し、ピン22cの頂部を溶融するなどして固定することにより、接続構造が完成する。このように、蓋部23を被着することにより、保護カバー21の内部において巻回部19は押し潰され、巻回部19における接続が更に確実となる。
【0017】
また、保護カバー21を耐熱性を有する合成樹脂材とすることで、温度が高い個所において使用しても、熱劣化がないので、好適に使用できる。
【実施例2】
【0018】
図9は実施例2の斜視図であり、2枚のフラットケーブル11、12を重ね合わせ、更に露出した偏平導体15、16同士を重ね合わせ、偏平導体15、16同士の重ね合わせ先端部に、金属クリップ31が固着されて接続部32が形成されている。この金属クリップ31は図10に示すように断面コ字形とされ、偏平導体15、16の先端部同士を弾発的に挟着するようにされている。
【0019】
図11はこの接続部32を保護するための一対の保護カバー33の底部34の斜視図、図12は蓋部35の斜視図である。底部34、蓋部35は共に合成樹脂材から成り、それぞれ接続部32を収納する溝部34a、35aが設けられている。また、底部34には複数本のピン34bが突出され、蓋部35との組合わせ時に蓋部35のピン孔35bに挿通するようにされている。
【0020】
図13は接続部32を底部34の溝部34aに収納した状態の斜視図であり、図14は更に蓋部23を被着した状態、つまり保護カバー33により保護された状態の斜視図である。
【0021】
また、フラットケーブル11、12の隣接する偏平導体15、16間を接続する場合には、図15に示すように幅広の金属クリップ39を使用して、隣接する偏平導体15、16も一体として接続することができる。
【0022】
なお、この実施例2においても、図9の状態から実施例1の図5に示すようにフラットケーブル11、12を開いて左右に帯状に拡開して延在することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の偏平導体同士を重ね合わせた状態の斜視図である。
【図2】偏平導体同士の先端に巻取治具を取り付けた状態の斜視図である。
【図3】偏平導体同士の先端を巻回した状態の斜視図である。
【図4】巻回部に芯部を挿入して短絡した状態の斜視図である。
【図5】接続したフラットケーブルを拡開した状態の斜視図である。
【図6】保護カバーの底部の斜視図である。
【図7】保護カバーの蓋部の斜視図である。
【図8】保護カバーにより巻回部を覆う場合の説明図である。
【図9】実施例2の偏平導体同士を接続した状態の斜視図である。
【図10】金属クリップの斜視図である。
【図11】保護カバーの底部の斜視図である。
【図12】保護カバーの蓋部の斜視図である。
【図13】接続部を底部に収納した状態の斜視図である。
【図14】蓋部を被着した状態の斜視図である。
【図15】幅広の金属クリップを使用し偏平導体同士を短絡した状態の斜視図である。
【図16】従来例の接続部の平面図である。
【図17】従来例の接続部の平面図である。
【符号の説明】
【0024】
11、12 フラットケーブル
13、14 絶縁シート
15、16 偏平導体
18 巻取治具
19 巻回部
21、33 保護カバー
22、34 底部
23、35 蓋部
31、39 金属クリップ
32 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のフラットケーブルの偏平導体同士を接続する場合において、接続すべき偏平導体を露出して先端同士を重合し、この重合部を接続したことを特徴とするフラットケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記重合部を巻回することにより接続したことを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記重合部を金属クリップにより固定することにより接続したことを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記重合部を中心に前記フラットケーブルを左右に拡開したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載のフラットケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記重合部を合成樹脂製の保護カバーにより被覆したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載のフラットケーブルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−234322(P2007−234322A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52662(P2006−52662)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】