説明

フラボン類の生産方法

【課題】 ソバのスプラウトから高い収率でフラボン類を取得する方法を提供する。
【解決手段】 ソバのスプラウトからフラボン類を生産するに当たり、生育中のソバのスプラウトに紫外線照射を施し、スプラウトの葉を採取して、その葉を有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出物を有機酸で処理して高収率でフラボン類を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボン類の生産方法に関するものであり、具体的には、ソバ(蕎麦)のスプラウト(芽生え)からフラボン類を高い収率で取得する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソバにはルチン等の健康増進に寄与する成分が含まれていることはよく知られており、古くから健康に良い食品として多くの人に食されている。近年に至り、ソバのスプラウト(芽生え)に関する研究が行われ、ソバのスプラウトには、イソオリエンチン(ルテオリン6−C−グルコシド)、オリエンチン(ルテオリン6−C−グルコシド)、ビテキシン、イソビテキシン等のフラボン類とルチン(フラボノール類)が含まれていることが報告されている。
【0003】
例えば、下記の非特許文献1〜3には、ソバのスプラウト(芽生え)には、ルチンのほかに、オリエンチン、イソオリエンチン等のフラボン類が含有されており、これらのフラボン類はメタノール還流でソバのスプラウトから抽出できること等が記載されている。
【0004】
しかしながら、従来知られた方法では、フラボン類の収率が低いため、この収率を向上させる方法の出現が期待されている。
【非特許文献1】 渡辺満ら「ソバ地上部の生育ステージによる抗酸化能とフラボノイド組成の変動」 日本食品科学工学会誌、49(2)、p119−125、(2002)
【非特許文献2】 渡辺満ら「ソバ幼植物のフラボノイド組成」東北農業研究、p257−258、(2002)
【非特許文献3】 渡辺満ら「ソバ芽生えのフェノール性化合物量に及ぼす光の影響」 日本食品科学工学会誌、50(1)、p32−34、(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、ソバのスプラウトから高い収率でフラボン類を取得する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ソバのスプラウトから高い収率でフラボン類を取得するために、以下の方法が提供される。
(1)ソバのスプラウトからフラボン類を生産するに当たり、生育中のソバのスプラウトに紫外線照射を施し、スプラウトの葉を採取して、その葉を有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出物を有機酸で処理してフラボン類を得ることを特徴とするフラボン類の生産方法。
(2)紫外線照射を1〜6日間行うことを特徴とする上記(1)のフラボン類の生産方法。
(3)紫外線照射に先立ち、ソバのスプラウトを過酸化水素又は次亜塩素酸塩の水溶液を付与しつつ生育させることを特徴とする上記(1)のフラボン類の生産方法。
(4)採取したソバのスプラウトの葉を摺りつぶした状態で有機溶媒又はそれらの水溶液により処理してフラボン類含有成分を抽出することを特徴とする上記(1)のフラボン類の生産方法。
(5)抽出に使用する有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることを特徴とする上記(4)のフラボン類の生産方法。
(6)抽出物を処理する有機酸が、酢酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、グルクロン酸、ガラクロツロン酸、ギ酸、プロピオン酸、カフェ酸、アスコルビン酸、クマル酸、安息香酸、酒石酸、没食子酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種のカルボン酸又はその水溶液であることを特徴とする上記(1)のフラボン類の生産方法。
(7)抽出物を処理する有機酸として、マロン酸を使用することを特徴とする上記(6)のフラボン類の生産方法。
(8)有機酸処理の際、60〜100℃で0.2〜2時間熱処理をすることを特徴とする上記(1)〜(7)のフラボン類の生産方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明方法によれば、ソバのスプラウトからフラボン類を従来よりも高収率で取得することが可能となる。具体的には、従来の方法にくらべて約20%高い収率で、ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin6−C−glucoside),ルテオリン8−C−グルコシド(Luteolin8−C−glucoside),アピゲニン6−C−グルコシド(Apigenin6−C−glucoside)及びアピゲニン8−C−グルコシド(Apigenin8−C−glucoside)等のフラボン類を取得することができる。
【0008】
これらのフラボン類は、抗酸化活性、抗腫瘍活性等、種々の生理機能を有することが報告されている。したがって、得られたフラボン類は、医薬品、健康食品、化粧品、食品添加剤等の用途において有効に利用できる。また、本発明によれば、試薬調製時の収率増大という利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用する、ソバのスプラウト(芽生え)とは、ソバの種子を培養液又は土壌に蒔き、発芽させ葉が出るまで生育させた幼植物体のことを言い、通常、3〜10日間栽培されたものを指す。ソバは大きく生育するとフラボンの含有量が急激に減少し、ついには実質的に含まなくなるので、上記のごとく葉が出て間がない幼植物を使用する。
【0010】
既に渡辺満らによって報告されているとおり、ソバのスプラウトは4種類のフラボン類を含んでいる。すなわち、ソバのスプラウトに含まれるフラボン類は、フラボン骨格に結合する置換基の位置により、以下の化学式で表されるルテオリン6−C−グルコシド(以下、L6CGと略称)、ルテオリン8−C−グルコシド(以下、L8CGと略称)、アピゲニン6−C−グルコシド(以下、A6CGと略称)及びアピゲニン8−C−グルコシド(以下、A8CGと略称)の4種類に区分される。
本発明は、ソバのスプラウトから、これらのフラボン類を、従来知られている方法よりも高い収率で生産する方法に係るものである。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
<生育中のソバ・スプラウトの培養液に対するストレス付与剤の添加>
本発明の方法によれば、まず、ソバの種子を土壌又は培地に蒔き、暗所で育成して芽生えさせる。本発明で使用するソバの種類は限定されないが、ソバの中でもキタワセ等国産品種が好適である。本発明では、ソバのスプラウト(芽生え)の育成時に、過酸化水素又は次亜塩素酸塩の希薄水溶液を、直接スプラウトに散布するか、あるいは生育する土壌又は培地に添加することにより、スプラウトにストレスを与える。
これらの水溶液における過酸化水素、次亜塩素酸塩の濃度は、通常、0.01〜5重量%が好ましい。該水溶液の付与量は、容器の大きさと播く種の量で変わるが、土壌又は培地が湿る程度でよい。
【0016】
<紫外線照射処理>
上記のようにして約1日〜2日間生育した後、さらに生育中のスプラウトに、紫外線照射(UV照射)を行う。照射強度は0.5〜100ルクスの範囲が適当である。このような照射は1日当たり0.1〜20時間ずつ1〜6日間程度行うのが良い。
【0017】
<スプラウトの葉の採取>
本発明方法では、生育中に以上のような処理を施したソバ・スプラウトの葉を採取し、採取した葉を容器に入れて後述する抽出用有機溶媒を添加し、該溶媒中で擦りつぶして磨砕する。
【0018】
<有機溶媒処置による抽出>
その状態でしばらく静置して有機溶媒中に葉に含まれるフラボン類含有成分を抽出する。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン又はそれらの水溶液が好適である。通常の場合、抽出時の温度は室温でよい。また、抽出時間は3分〜5分程度でよい。続いてフラッシュ程度の遠心分離の工程または濾過の工程に送り、抽出物(抽出した成分)と有機溶媒とを分離する。
【0019】
<有機酸処理>
次に、抽出物を有機酸で処理する。ここで使用する有機酸としては、酢酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、グルクロン酸、ガラクロツロン酸、ギ酸、プロピオン酸,カフェ酸、アスコルビン酸、クマル酸、安息香酸、酒石酸、没食子酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種のカルボン酸が適当であり、中でもマロン酸又は酢酸が最適である。これらの有機酸は水溶液で用いることができ、通常、酸濃度10〜30重量%程度の水溶液として使用するのが好ましい。
有機酸による処理温度は、室温〜100℃が採用されるが、一般に、処理温度が高い方が収率が高くなり、例えば酢酸水溶液では、50〜90℃が好適である。処理時間は15〜200分が好ましい
【0020】
<加熱処理>
本発明方法では、上記有機酸処理の際、加熱処理してもよく、通常、その方が効果的である。この場合、好適な加熱温度は60〜100℃、加熱処理時間は0.2〜2時間である。
【0021】
図1は、以上述べた一連の工程を例示するフローチャートである。ただし、図1は本発明方法の代表的なフローを示すものであって、本発明方法がこれのみに限定されるものではない。
【0022】
<単離・精製>
以上詳述した方法により、L6CG、L8CG、A6CG、A8CGのフラボン類が混在した組成物が得られる。この組成物はフラボン類の混合物であるためそのまま健康食品や化粧品等に原料として有効に使用され得るが、それぞれの化合物ごとに単離・生成する必要があるときは、例えば、以下の方法によって目的化合物ごとに分離精製することが出来る。
<L6CG、L8CG、A6CG、A8CGの単離精製>
有機酸処理後の組成物を、ロータリーエバポレータでそれぞれ濃縮し、水に置換した抽出液1Lを、イオン交換樹脂(XAD)がガラス管(内径10cm、高さ20cm)に充填されたカラムクロマトグラフィーにアプライする。水をカラム体積の2〜5倍程度流した後,溶離液に50〜90%メタノールを用いフラボンを回収した。回収フラクションを得たら濃縮し、フォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行い目的物質を得る。このときのHPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:Cadenza CD−5C18(20mmI.D.×150mm)
移動相:水/メタノール=75/25(v/v)
流速:8.0ml/min
オーブン温度:40℃
【実施例】
【0023】
以下に、本発明方法の実施例を詳述する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその範囲が限定されるものではない。
なお、実施例で使用したHPLC分析の条件は以下のとおりである。
【0024】
【表1】

【0025】
〔実施例1〕
本実施例では、ソバとして国内種のキタワセを使用した。
図1に示す手順で以下の操作を行った。まず、ソバ種子をストレス付与下、2日間暗所でスプラウトを栽培した。その際、UV照射を行う前に、ストレス付与剤として2%過酸化水素水、0.1%塩酸、0.1%次亜塩素酸を水の代りに、培地に与えた。次いで、毎日UV照射4時間ずつ、3日間照射を行い、トータルで5日間栽培を行った。このようにストレス付与及びUV照射処理を実施した結果を図2〜図5に示す。これらの図より、UV照射によるストレスはフラボノイド含量の増大効果が大きく、特に、水+UV照射、2%過酸化水素水+UV照射、0.1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液+UV照射のケースが優れていることが判る。
【0026】
種蒔きから5日後に、スプラウトの葉を採取し、容器に入れて、メタノール、アセトン等の抽出用有機溶媒を添加し、磨砕して抽出した。抽出物を分離後、これに水添加のみの水処理、各種有機酸による処理(80℃,2時間加熱)を行った。この際、有機酸として酢酸を使用する実験では、温度及び時間を変えて処理を行った。そして、各種処理後に、HPLCでの分析を行った。
同じ処理をしたスプラウトに、各種の抽出溶媒で抽出を実施したときの結果を図6〜図7に示す。図6から、抽出溶媒のうち、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルが好適なことがわかる。また、上記の渡辺満らの報告にあるように通風乾燥メタノール還流による抽出も行ったが、図7に示すようにアセトン中に浸漬する場合よりも劣る結果となった。
【0027】
また、同じ条件で抽出した抽出物に、各種の有機酸(ただし酢酸は除く)又はリン酸で処理を行ったときの結果を図8〜図11に示し、酢酸水溶液(濃度20重量%)で温度と時間を変えて処理した結果を図12〜図15に示す。なお、図13〜図15のグラフにおける凡例は図12と同じである。
ここでは有機酸処理時の加熱条件として、80℃、120分とし、有機酸17種による検討を行った。リン酸以外の有機カルボン酸は、フラボン含量を増やすことが分かり、有機酸処理は有効であることが判った。このうち、マロン酸処理での増加率が最も高い結果となった。また、この試験より、有機酸の濃度はおおむね終濃度0.05Mあれば、フラボン類が増加することが確認できた。
【0028】
以上の一連の工程において、有機酸処理としてマロン酸処理を行ったときについて、有機酸処理前の各処理との組み合わせによる結果を図16、図17に示す。上段は一連の処理後のルテオリン8−C−グルコシド量を示す図であり、下段はルテオリン6−C−グルコシド量を示す図である。これらの図から、0.1%次亜塩素酸ナトリウムとUV照射のストレスを与えた後、マロン酸処理を行ったときの増加量が一番高いことがわかる。すなわち、次亜塩素酸ナトリウム+UVにマロン酸処理した試験区が単にメタノールで抽出する場合に比べて約1.9倍と最大に増加した。
【0029】
以上の実施例により、ソバのスプラウト(芽生え)のフラボン含量を増加させる簡易な方法として、ソバ種子を2日間暗所栽培し、3日目から、ストレスとして、0.1%次亜塩素酸を与え、3〜5時間、3日間のUV照射をし、トータル5日間栽培を行い、その後、マロン酸水溶液による有機酸処理を行い、80℃で2時間の加熱処理を行った結果、1.9倍までに増加し、収率が大幅に向上することが確認された。
【0030】
次に、本発明方法で生産されるルテオリン6−C−グルコシド精製品の抗酸化活性等の特性を調べた。その結果を次の表2にまとめて示す。なお、各測定は次のように実施した。
【0031】
A)脂質過酸化抑制効果
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、試料1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。試料はササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対照として20ppmトコフェロールを試料の代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
生じた過酸化脂質の過酸化物価(POV)を常法に従って測定し、抗酸化剤が無い状態のコントロールのPOVを0%とし、試料の脂質過酸化抑制率を求めた。
【0032】
B)DPPHラジカル消去活性
安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性について検討した。
0.5mMのDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、ラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100(%)として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:40μT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:200
【0033】
C)スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)
ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシターゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。この測定では、原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mMのHypoxanthine(SIGMA H−9377)50μl、5.5mMのDTPA(同仁化学347−01141)35μl、試料50μl、0.4U/mlのXOD(SIGMA X−4376)50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100(%)として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:0.079mT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:200
【0034】
【表2】

【0035】
表2に示す結果から、ルテオリン6−C−グルコシドは、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化物抑制活性に優れていることが確認された。
【0036】
さらに、ルテオリン6−C−グルコシドについて、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果を調べる目的で、一般に知られているPPO活性阻害剤、他のフラボノイド類との比較測定を行った。その測定方法は以下のとおりであり、測定結果は下掲の表3に示すとおりであった。
<PPO(褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ)阻害活性の測定>
0.05Mクロロゲン酸を基質とし酵素液としてタマネギ鱗茎より抽出・部分精製を行った酵素液を用いた。すなわち、1.3mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に1mM濃度、2mM濃度、10mM濃度に調製した阻害剤を0.1ml、酵素液を0.1ml添加し混合、30℃に10分間予備加温後、0.05Mクロロゲン酸基質溶液を0.1ml加え混合し、30℃、30分間加温後の波長420nmにおける褐変度を求めた。阻害剤添加の代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものをコントロールとし、活性を100%として阻害効果を相対活性で示した。
【0037】
この結果、ルテオリン6−C−グルコシドは、一般のPPO活性阻害剤や他のフラボノイド類と比べて卓越したPPO阻害活性を有し、少量の使用でも褐変を防止できることがわかった。従って、本発明方法によるルテオリン6−C−グルコシドは、例えば、食品類の褐変防止剤として有効に利用することができる。
【0038】
【表3】

【0039】
さらに、ルテオリン6−C−グルコシド及び類似化合物について、ヒト胃ガン細胞及び白血病細胞の増殖抑制効果を測定した。その結果、図18に示すとおり、ルテオリン6−C−グルコシドは、卓越した高い増殖抑制効果を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、ソバのスプラウトからフラボン類を採取するときの収率が増大できるので、フラボンの生産方法として有用である。そして、本発明の方法により得られるフラボン類は抗酸化作用があるため、医薬品、健康食品、化粧品等の材料として有効に利用される。特に、ルテオリン6−C−グルコシドは、卓越した褐変防止効果、増殖抑制効果も有するので、これらの特性を生かした各用途にも有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明方法の代表的なフローチャート
【図2】生育中のソバのスプラウトに対する処理による採取したスプラウト中のルテオリン8−C−グルコシド(L8CG)の含量を無処理の場合との相対値で示すグラフ
【図3】生育中のソバのスプラウトに対する処理による採取したスプラウト中のアピゲニン8−C−グルコシド(A8CG)の含量を無処理の場合との相対値で示すグラフ
【図4】生育中のソバのスプラウトに対する処理による採取したスプラウト中のルテオリン6−C−グルコシド(L6CG)の含量を無処理の場合との相対値で示すグラフ
【図5】生育中のソバのスプラウトに対する処理による採取したスプラウト中のアピゲニン6−C−グルコシド(A6CG)の含量を無処理の場合との相対値で示すグラフ
【図6】抽出に使用した有機溶媒と抽出したフラボン量を示すグラフ
【図7】抽出に使用した有機溶媒と抽出したフラボン量をメタノールに対する相対値で示すグラフ
【図8】抽出分を各種の酸で処理したときのL8CGの量を示すグラフ
【図9】抽出分を各種の酸で処理したときのL6CGの量を示すグラフ
【図10】抽出分を各種の酸で処理したときのA8CGの量を示すグラフ
【図11】抽出分を各種の酸で処理したときのA6CGの量を示すグラフ
【図12】20%酢酸処理によるL8CG含量の温度及び時間依存を示すグラフ
【図13】20%酢酸処理によるA8CG含量の温度及び時間依存を示すグラフ
【図14】20%酢酸処理によるL6CG含量の温度及び時間依存を示すグラフ
【図15】20%酢酸処理によるA6CG含量の温度及び時間依存を示すグラフ
【図16】有機酸としてマロン酸を使用したときの各前処理との組み合わせによるL8CGの増収効果を総合的に示すグラフ
【図17】有機酸としてマロン酸を使用したときの各前処理との組み合わせによるL6CGの増収効果を総合的に示すグラフ
【図18】ルテオリン6−C−グルコシド及び類似化合物について、ヒト胃ガン細胞及び白血病細胞の増殖抑制効果を測定した結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソバのスプラウトからフラボン類を生産するに当たり、生育中のソバのスプラウトに紫外線照射を施し、スプラウトの葉を採取して、その葉を有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出物を有機酸で処理してフラボン類を得ることを特徴とするフラボン類の生産方法。
【請求項2】
紫外線照射を1〜6日間行うことを特徴とする請求項1記載のフラボン類の生産方法。
【請求項3】
紫外線照射に先立ち、ソバのスプラウトを過酸化水素又は次亜塩素酸塩の水溶液を付与しつつ生育させることを特徴とする請求項1記載のフラボン類の生産方法。
【請求項4】
採取したソバのスプラウトの葉を摺りつぶした状態で有機溶媒又はそれらの水溶液により処理してフラボン類含有成分を抽出することを特徴とする請求項1記載のフラボン類の生産方法。
【請求項5】
抽出に使用する有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることを特徴とする請求項4記載のフラボン類の生産方法。
【請求項6】
抽出物を処理する有機酸が、酢酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、グルクロン酸、ガラクロツロン酸、ギ酸、プロピオン酸、カフェ酸、アスコルビン酸、クマル酸、安息香酸、酒石酸、没食子酸、乳酸から選ばれた少なくとも1種のカルボン酸又はその水溶液であることを特徴とする請求項1記載のフラボン類の生産方法。
【請求項7】
抽出物を処理する有機酸として、マロン酸を使用することを特徴とする請求項6記載のフラボン類の生産方法。
【請求項8】
有機酸処理時に、60〜100℃で0.2〜2時間熱処理をすることを特徴とする請求項1〜請求項7記載のフラボン類の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−92922(P2008−92922A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299593(P2006−299593)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(598096991)学校法人東京農業大学 (85)
【Fターム(参考)】