フランジ付き複層管の製造方法及びフランジ付き複層管
【課題】 耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内周面に備え、繊維強化樹脂層を外周面に備えて強度を高めたフランジ付き複層管を高い生産性のもと好適に製造する。
【解決手段】 一実施形態としての直管本体部11とフランジ部12とを備える複層管1の製造方法は、円柱状外周面を有する金型6の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ金型6の軸方向に移動して螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層2を形成する内層成形工程と、高強度繊維からなる織布又は平行に引き揃えた長繊維材料に熱硬化性樹脂を含浸させ、繊維強化樹脂層3を管状に積層成形する外層成形工程とを含み、前記外層成形工程では、金型6の両端部において長繊維材料を鍔返し状に積層し鍔状のフランジ部12を積層成形する。
【解決手段】 一実施形態としての直管本体部11とフランジ部12とを備える複層管1の製造方法は、円柱状外周面を有する金型6の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ金型6の軸方向に移動して螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層2を形成する内層成形工程と、高強度繊維からなる織布又は平行に引き揃えた長繊維材料に熱硬化性樹脂を含浸させ、繊維強化樹脂層3を管状に積層成形する外層成形工程とを含み、前記外層成形工程では、金型6の両端部において長繊維材料を鍔返し状に積層し鍔状のフランジ部12を積層成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ付き複層管の製造方法、及びこの製造方法により製造されたフランジ付き複層管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾や航路等の浚渫には、水底から採取する土砂の種類や採取の方法により各種の方式が採用されており、特に砂地の浚渫には浚渫土量の大きいポンプ方式が適するとして多用されている。このポンプ方式は、ポンプ船に備えたポンプの吸水管で水底の土砂を水とともに吸い上げ、水と混合した状態の土砂を、水中や地上に配設した排砂管を経由して埋め立て地や土砂捨場等の適宜の場所に送るものである。
【0003】
排砂管には、高い強度を有する長尺の鋼管が用いられている。鋼管同士の接合部には、長尺の排砂管を折曲自在に支持するためにゴム材からなる可撓性スリーブが備えられ、排砂管のフランジ部(ルーズフランジ型)と可撓性スリーブの継手フランジ(固定フランジ型)とが連結ボルトにより連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このように接合して長距離にわたって配設された排砂管は、浚渫対象域の変更に際しては、排砂管と可撓性スリーブを接合した状態のまま、クレーン等により水面に引き上げて移動する作業を行わなければならない。このとき、鋼管の重量が大きいことから重機を必要とする上、作業工程が煩雑であって作業人数及び作業時間のかかるものとなっていた。また、水底に配管されていた排砂管は、腐食により脆くなっており、可撓性スリーブを取り外したり、撤去作業を行ったりする際に破損を生じやすく、新たな排砂管に交換しなければならないことが多かった。しかしながら、近年の建築資材の価格高騰に伴って、鋼管からなる排砂管の価格も上昇していることから、新たな排砂管に交換すると非常にコストがかかってしまうという問題点も抱えていた。
【0005】
上記のような従来の鋼管からなる排砂管に対し、軽量で作業性に富み、材料コストの低減を図ることのできる合成樹脂製の排砂管の開発が望まれた。しかしながら、合成樹脂製の排砂管とする場合、鋼管に劣らない十分な強度と、土砂によっても内周面が摩耗しにくいようにすることが大きな課題点であった。
【0006】
この点で、例えば、特許文献2には、超高分子量ポリエチレンからなる内層と、繊維強化プラスチックからなる外層とを備えた複合パイプについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−49771号公報
【特許文献2】特開昭58−689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献2に開示されたような複合パイプを現実に製造することができれば、内層によって耐摩耗性を備えさせることができ、外層の繊維強化プラスチックにより強度を確保することが可能となって、土砂等の摩耗性流体を移送するのにも適したものとなる。しかしながら、現状で、かかる内層及び外層を備えた複層管について、安価で生産性よく製造する方法は確立されておらず、特許文献2にも具体的な製造方法に関する記載は全くない。
【0009】
また、排砂管に適用できる複層管としては、接合用のフランジ部に可撓性スリーブを連結して用いることから、直管部分のみならずフランジ部においても十分な強度を有することが求められる。つまり、フランジ部には、可撓性スリーブが連結ボルトにより緊結されて高い軸方向力及び摩擦力が作用し、管内の土砂を含む流水や浚渫機械等からの衝撃力も作用する。したがって、これらによってフランジ部に大きな剪断力が作用しても、フランジ部が破損しないように、十分な強度を持たせる必要がある。しかし、従来の合成樹脂製の複層管において、このような課題点を解決する手法は見出されておらず、排砂管に適用可能な複層管として開発が望まれた。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内面に備え、強度を高める繊維強化樹脂層を外面に備えたフランジ付き複層管に係る生産性の高い製造方法を確立し、土砂等の摩耗性流体の移送に用いることのできる十分な強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたフランジ付き複層管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法を前提とする。この複層管の製造方法に対し、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ前記金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、前記直管本体部及びフランジ部の軟質合成樹脂層を一体の管状に形成する内層成形工程と、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して前記直管本体部及びフランジ部の繊維強化樹脂層を一体に形成する外層成形工程とを含ませる構成としている。そして、前記外層成形工程では、前記金型の両端部において、前記長繊維材料を鍔返し状に積層し、前記フランジ部を直管本体部に連続させて鍔状に成形することを特徴としている。
【0012】
このような特定事項により、軟質合成樹脂層及び繊維強化樹脂層を所望の長さで管状に積層成形して複層管を得ることができる。前記金型に対しては、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出するとともに該金型の軸方向に吐出位置を移動させて、軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給することによって、耐摩耗性を備えた内層を管状に成形することができる。また、前記軟質合成樹脂層に繊維強化樹脂層を積層成形して外層を備えさせ、複層管としての強度を高めることができる。この繊維強化樹脂層は、前記金型の両端部では、長繊維材料を鍔返し形状に積層して形成されるので、フランジ部と直管本体部とに連続させて長繊維材料を配設することができ、直管本体部に一体のフランジ部を形成することができる。これにより、フランジ部における破損を防止し、強度の高いフランジ付き複層管を形成することができる。
【0013】
また、前記の目的を達成するための本発明の他の解決手段は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法を前提とする。この複層管の製造方法に対し、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えたフランジ部付きの短管2つを、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面にそれぞれ対向させるとともに各短管のフランジ部を該金型の端部側に位置するように配置して該金型に装着し、前記短管と短管との間の区間において、前記金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層を形成する内層成形工程と、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を管状に積層して繊維強化樹脂層を成形する外層成形工程とを含ませる構成とする。そして、前記外層成形工程では、前記長繊維材料を、各短管の外周面に部分的に重ね合わせて積層し、前記短管の繊維強化樹脂層と一体の繊維強化樹脂層を形成することを特徴としている。
【0014】
この場合、2つの短管を用いてフランジ付き複層管を形成する。その際、複層管の直管本体部の繊維強化樹脂層を、2つの短管の外周面に前記長繊維材料を部分的に重ねて成形している。これにより、別体として形成したフランジ部付きの短管に対し、前記軟質合成樹脂層と、繊維強化樹脂層とを連続させて積層成形することができ、一体的なフランジ部と直管本体部とからなる複層管を得ることができる。得られた複層管は、直管本体部及びフランジ部ともに、軟質合成樹脂層による耐摩耗性と、繊維強化樹脂層による十分な強度とを有するものとなり、フランジ部の破損も防止しうるものとなる。
【0015】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記内層成形工程では、前記軟質合成樹脂層を前記金型の両端部ほど厚肉に形成することが好ましい。
【0016】
これにより、複層管の端部における軟質合成樹脂層が厚肉となり、土砂等の摩耗性流体の衝突が集中しやすい箇所である複層管の端部において、軟質合成樹脂層を厚肉に形成することができる。そのため、複層管の耐摩耗性及び耐久性を一層向上させることができる。また、複層管のフランジ端面に止水層を設ける際には、軟質合成樹脂層が厚肉であることにより、止水層と軟質合成樹脂層との接着面積が増大する。そのため、複層管の端部での止水層の接着性が高められ、より一層止水性を高めることができ、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面の剥離も防ぐことが可能となる。
【0017】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記短管のフランジ部を挟持しうる挟持部を備えた固定治具を前記金型に装着し、該金型の外周面に前記短管を仮固定することが好ましい。
【0018】
これにより、フランジ部付きの短管を用いた場合の各成形工程において、軸まわりに回転する金型の外周面に配置された短管が、がたついたり位置ずれしたりするのを防止することができる。
【0019】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記外層成形工程では、前記軟質合成樹脂層の両端部を覆うように長繊維材料を積層し、前記軟質合成樹脂層の軸方向の端面を繊維強化樹脂層で被覆することが好ましい。
【0020】
これにより、軟質合成樹脂層の端面を、より硬質であって高い強度を有する繊維強化樹脂層で被覆し、作用する軸方向力を繊維強化樹脂層で受ける構造とすることができ、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面が剥離するのを防ぐことも可能となる。
【0021】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法における前記内層成形工程のより具体的な構成として次のものが挙げられる。つまり、前記内層成形工程は、軟質合成樹脂材料を前記金型に螺旋状に供給する第一工程と、供給した軟質合成樹脂材料が未硬化である間に軟質合成樹脂層の表面を均す第二工程とを含む構成とすることである。
【0022】
このように、第一工程にて前記金型に供給した軟質合成樹脂材料が、硬化しないうちにその表面を均す作業を第二工程として行うことによって、均一な肉厚の軟質合成樹脂層を得ることができる。また、軟質合成樹脂層が均一な肉厚で形成されることで、繊維強化樹脂層の肉厚も一定に管理することが容易となり、複層管としての所定の強度を発現させることが可能となる。
【0023】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記内層成形工程と前記外層成形工程との間に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を前記軟質合成樹脂層の表面に巻きつける工程を行ってもよい。
【0024】
これにより、軟質合成樹脂層の表面を均一に均すことができるので、前記第二工程に代わる工程として行うことができる。したがって、この場合にも、繊維強化樹脂層の肉厚も一定に管理することが容易となり、複層管としての所定の強度を発現させることが可能となる。
【0025】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記内層成形工程の後、層間の接着強度を高めるプライマーを、前記軟質合成樹脂層の外周面に塗布するプライマー塗布工程を行うことが好ましい。
【0026】
これにより、前記内層成形工程にて形成した軟質合成樹脂層に対して繊維強化樹脂層の付着性及び一体性を高めることができる。
【0027】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記フランジ部の軸方向の端面に、軟質合成樹脂材からなる止水層を周設する工程を含むことが好ましい。
【0028】
このような止水層を設けることにより、接合用のフランジ端面が止水層で被覆され、複層管同士の接合部における止水性を高めることが可能になる。また、複層管の端部における軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面を止水層が塞ぐので、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との間への流水の浸入を防止し、層間剥離を防ぐことが可能となる。
【0029】
また、上述した各解決手段に係るフランジ付き複層管の製造方法により製造されたフランジ付き複層管も本発明の技術的思想の範疇である。
【0030】
つまり、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、前記軟質合成樹脂層は、軸方向の端面が繊維強化樹脂層により被覆された構成とされる。
【0031】
また、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、前記軟質合成樹脂層は、軸方向の両端部に厚肉部を有する構成であってもよい。
【0032】
このような構成に係るフランジ付き複層管は、内層の軟質合成樹脂層が耐摩耗性を有し、外層の繊維強化樹脂層が高い強度を確保するので、フランジ部及び直管本体部ともに、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとなり、土砂等の摩耗性流体の移送にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、内層に耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を備え、外層に繊維強化樹脂層を備えるフランジ付き複層管を生産性よく製造することができ、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適した複層管を形成することができる。また、フランジ部においても直管本体部と同等の十分な強度を確保することができ、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れた複層管とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態に係るフランジ付き複層管を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係るフランジ付き複層管の接合形態の一例を示す側面図である。
【図3】実施形態1に係るフランジ付き複層管の製造方法において、内層成形工程を模式的に示す説明図である。
【図4】実施形態1に係る外層成形工程を模式的に示す説明図である。
【図5】実施形態1に係るフランジ付き複層管の端部を模式的に示す半断面図である。
【図6】実施形態1に係るフランジ付き複層管の他の例を模式的に示す半断面図である。
【図7】実施形態1に係るフランジ付き複層管のさらに他の例を模式的に示す半断面図である。
【図8】実施形態2に係るフランジ付き複層管の端部を模式的に示す半断面図である。
【図9】実施形態2に係るフランジ付き複層管の他の例を模式的に示す半断面図である。
【図10】実施形態3に係るフランジ付き複層管の製造方法において、準備工程を模式的に示す説明図である。
【図11】図10の次工程を示す説明図である。
【図12】実施形態3に係る内層成形工程を終えた状態を模式的に示す説明図である。
【図13】実施形態3に係る外層成形工程を終えた状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態に係るフランジ付き複層管の製造方法及びその製造方法により得られるフランジ付き複層管について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1は、実施の形態に係るフランジ付き複層管を示す断面図である。図2は、実施の形態に係るフランジ付き複層管の接合形態の一例を示す側面図である。
【0037】
フランジ付き複層管1(以下、単に複層管1という。)は、直管本体部11と、この直管本体部11の両端部のフランジ部12とを有する。複層管1は、管全体にわたって、内層に耐摩耗性の軟質合成樹脂層2を備え、外層に繊維強化樹脂層3を備えている。両端のフランジ部12のフランジ端面には、軟質合成樹脂材からなる止水層4が周設されている。また、直管本体部11の軟質合成樹脂層2は、両端部において厚肉となるように形成されている。
【0038】
軟質合成樹脂層2は、ポリウレタン、ポリエチレン等の高強度で耐摩耗性に優れた合成樹脂材料、又は合成ゴム材からなる。
【0039】
また、繊維強化樹脂層3は、繊維強化複合材料より構成され、複合材料の母材樹脂(マトリックス)と、補強材である高強度繊維の組合せは多様である。好ましい例を挙げると、高強度繊維には、高強度及び高弾性率であるガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等を用いることができ、かかる高強度繊維からなる織布、不織布、又は高強度繊維を平行に引き揃えた基材を用いる。また、母材樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましく、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート樹脂等を用いることができる。
【0040】
このような複層管1を排砂管として用いる場合、図2に示すように、複数本の複層管1を折曲自在に連結するために、フランジ部12に可撓性スリーブ9が設けられる。複層管1の両端部のフランジ部12は、可撓性スリーブ9の継手フランジ91に挟持され、連結ボルト92を締め付けて固定される。
【0041】
これにより、これらの複層管1が、水底の土砂を、水とともに排送する排砂管を構成する。その際、耐摩耗性のある軟質合成樹脂層2が複層管1の内面を保護するので、内面の損傷を生じにくくし、繊維強化樹脂層3が複層管1の全体強度を確保して耐久性の高い排砂管とすることができる。また、所定箇所の浚渫を終えて次の浚渫箇所へ移動する場合には、水中部分の排砂管を可撓性スリーブと接合した状態のまま、クレーン等により水面に引き上げて、移動させる。この際、複層管1が合成樹脂製であるため、従来の鋼管からなる排砂管に比べ軽量で作業性に富み、腐食しにくい構成であるため、簡単に撤去作業を行うことができる。
【0042】
このように排砂管として好適な複層管1は、円柱状外周面を有して軸まわりに回転する金型を用いて成形される。すなわち、複層管1は、前記金型の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向(長手方向)に吐出位置を移動させて、管状の軟質合成樹脂層2を形成し(内層成形工程)、さらに、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して繊維強化樹脂層3を管状に成形する(外層成形工程)ことによって形成される。
【0043】
ここで、複層管1の直管本体部11に対しフランジ部12を一体に形成する手法は、複数のバリエーションがある。以下では、複層管1の製造方法について、直管本体部11とフランジ部12とを同一工程により成形して複層管1を得る方法(実施形態1及び2)と、フランジ部12を備える短管に対して直管本体部11を成形して複層管1を得る方法(実施形態3)について説明する。
【0044】
(実施形態1)
図3〜図5は、実施形態1に係るフランジ付き複層管1の製造方法を示し、図3は、内層成形工程を模式的に示す説明図、図4は、外層成形工程を模式的に示す説明図である。図5は、複層管の端部を模式的に示す拡大断面図である。
【0045】
複層管1の製造は、円筒状又は円柱状の外周面を有する回転体である金型6を用いて行う。
【0046】
先ず、図3に示すように、軸まわりに回転する金型6の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料21を吐出しながら、吐出位置を金型6の軸方向に移動させて、軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給する(内層成形工程)。金型6の外周面には、複層管1の製品長さに対応する範囲で、あらかじめポリエチレンフィルムを巻き付けて軟質合成樹脂材料21の流動性を高めるようにしてもよい。
【0047】
軟質合成樹脂材料21には、耐摩耗性が良好であって、外層の繊維強化樹脂層3との接着性に優れた材料を選定することが好ましい。具体的には、軟質合成樹脂層2の硬さをJIS K 6235のタイプAデュロメータ硬さ(HA)で30〜110とすることにより、耐摩耗性を十分に備えさせることができる。例えば、JIS K 6235のタイプAデュロメータで計測される硬さが40〜80であって、引張強度が3〜15MPaであるポリウレタン樹脂材が、この軟質合成樹脂材料21として好適である。
【0048】
ここで、軟質合成樹脂層2の材料であるポリウレタン樹脂材を金型6に吐出するには、ポリオール成分とイソシアネート成分とを、ミキシングヘッドにて撹拌混合後、ミキシングヘッド先端に取り付けた吐出ノズル7から混合原液(軟質合成樹脂材料21)を吐出させる。その際、図3に示すように、吐出ノズル7を、回転する金型6の外周面を軸方向に移動させることによって、金型6の外周面に対して軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給することができる。この供給された軟質合成樹脂材料21は、金型6の外周面にて反応が急速に進行して硬化する。これにより、管状の成形体である軟質合成樹脂層2を形成することができる。
【0049】
軟質合成樹脂層2の肉厚は、金型6の回転速度、吐出ノズル7の移動速度、及び吐出量により制御することができる。金型6が低速回転である場合、供給された軟質合成樹脂材料21の表面に凹凸を生じやすく、螺旋状となった材料同士の重合部分に段差を生じてしまいやすい。このため、金型6の回転速度は比較的高速であることが好ましく、高速回転させた金型6に対する吐出ノズル7の移動速度によって、軟質合成樹脂層2の肉厚を制御することが最も好ましい。
【0050】
また、内層成形工程では、軟質合成樹脂層2を金型6の両端部において厚肉に形成する(図5参照)。これは、軟質合成樹脂材料21を供給する第一工程において、吐出量を増大させ、又は吐出ノズルの移動速度を低下させることで、軟質合成樹脂層2の端部を厚肉とすることができる。これにより、軟質合成樹脂層2と、後述するフランジ部12の端面に設ける止水層4との接着面積を増大させることができ、これらの一体性を高めることが可能となる。
【0051】
かかる内層成形工程において、軟質合成樹脂材料21を金型6の外周面に螺旋状に供給する前記工程を第一工程とし、さらに、供給した軟質合成樹脂材料21が未硬化である間に軟質合成樹脂層2の表面を均す第二工程とを続けて行うことが好ましい。
【0052】
前記のように、第一工程では、軟質合成樹脂材料21を供給することで、金型6の外周面をその混合原液の反応性流体が螺旋状を描くように順に覆っていく。このとき、直前に供給された軟質合成樹脂材料21と、これに接して、直後に供給された軟質合成樹脂材料21とは、部分的に重なり合う。この重合部分が、そのまま硬化すると、軟質合成樹脂層2の表面に段差を生じ、平滑な表面が得られにくい。
【0053】
そこで、内層成形工程の第二工程として、軟質合成樹脂材料21が未硬化である間に、その表面の重合部分を平滑に均す作業を行う。軟質合成樹脂層2の表面を均す手段は、金型6の大きさや、軟質合成樹脂材料21の硬化速度に合わせて適宜選択することができる。例えば、ブロアにより圧縮空気を吹き付けて軟質合成樹脂材料21を金型6の外周面に流動させて平滑にしたり、軟質合成樹脂層2の表面に沿う形状のプレート、ヘラ、又はローラ等で均したりする等の手段があげられる。これにより、均一な肉厚の軟質合成樹脂層2が得られる。
【0054】
また、軟質合成樹脂層2の表面を均すことに代えて、内層成形工程の第二工程として、軟質合成樹脂層2の表面にガラス繊維シート状物を巻きつけて積層させ、軟質合成樹脂層2の表面を平滑にする処理を行ってもよい。この場合、軟質合成樹脂層2には、表面にプライマー(接着を促進する塗布材料)を塗布し、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を全面に巻きつける。これにより、軟質合成樹脂材料21の材料同士の重合部分がガラス繊維シート状物により被覆され、軟質合成樹脂層2の表面に生じている段差を解消することができる。また、ガラス繊維シート状物が、この軟質合成樹脂層2と、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との間に介装されることになるので、ガラス繊維のアンカー効果によって繊維強化樹脂層3を安定化させ、軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との密着性を高めるものとなる。かかるガラス繊維シート状物としては、例えばガラス繊維からなるガラスマットやガラスペーパー等を用いることができる。
【0055】
次に、軟質合成樹脂層2の表面に、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との接着強度を高めるため、プライマーを塗布する(プライマー塗布工程)。プライマーには、例えば、イソシアネートを酢酸エチルやジクロロメタン等の溶剤で希釈したものを使用することができる。プライマーの塗布量は、軟質合成樹脂層2の表面を薄く覆う程度でよく、例えば150g/m2の塗布量で足りる。プライマー塗布後、30〜60分間放置し、プライマーを定着させる。
【0056】
次に、プライマーを塗布した軟質合成樹脂層2の表面に、図4に示すように、長繊維材料31を積層し、熱硬化性樹脂32を含浸させて、繊維強化樹脂層3を成形する(外層成形工程)。長繊維材料31は、高強度繊維からなる織布、不織布、又は平行に引き揃えた高強度繊維材とされる。
【0057】
具体的には、長繊維材料31としてガラス繊維からなる長尺のガラスマットに、熱硬化性樹脂32としての不飽和ポリエステル樹脂を含浸させ、回転する金型6に供給する。つまり、図4に示すように、軟質合成樹脂層2の上に、長繊維材料31を螺旋状に巻き回しながら、熱硬化性樹脂32を含浸させていく。
【0058】
次に、巻き回した長繊維材料31を金型6の外周面に固定するため、ガーゼ等の保持シート材を全体に巻き付ける。さらに、熱硬化性樹脂32である不飽和ポリエステル樹脂を含浸させたガラスロービング(長繊維材料31)を、前記保持シート材の上から巻き回して積層成形する。
【0059】
かかる長繊維材料31は、ガラスマット、ガラスロービングのほか、ガラスペーパーやガラスロービングクロス等であってもよく、また、材質はガラス繊維のほか、炭素繊維等であってもよい。熱硬化性樹脂32は、不飽和ポリエステル樹脂のほか、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等であってもよく、適宜、硬化剤や架橋剤を混合してもよい。
【0060】
この外層成形工程において、成形体の両端部においては、熱硬化性樹脂32を含浸したシート状の長繊維材料31を重ね、鍔返し状に積層していく。これにより、図5に示すように、直管本体部11に連続させて鍔状のフランジ部12を積層成形することができる。
【0061】
さらに、熱硬化性樹脂32を含浸した長繊維材料31の上に、図示しないバッグフィルムを巻き、繊維強化樹脂層3の表面を平滑に整える。熱硬化性樹脂32は、約30分でゲル化し、その後硬化して、複合繊維基材を構成する。
【0062】
フランジ部12のフランジ端面には、軟質合成樹脂材からなる円環状の止水層4を接着する。この止水層4は、フランジ部12のフランジ端面を被覆するパッキンとなる。止水層4の軟質合成樹脂材には、内層成形工程と同様のポリウレタン樹脂材を用いることができる。また、止水層4は、軟質合成樹脂材の硬さを、タイプAデュロメータ硬さ(HA)で50〜70とすることにより、十分な止水性及び耐摩耗性を発揮させることができる。
【0063】
止水層4は、図1に示すように、端部の厚肉とされた軟質合成樹脂層2及び繊維強化樹脂層3に接着して一体化され、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面の剥離を防ぐ。また、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2が厚肉であるので、フランジ端面に止水層4を設ける際の、軟質合成樹脂層2と止水層4との接着面積を大きく確保でき、両者の接着性を高めることができる。
【0064】
以上の各工程により、軟質合成樹脂層2を内層に備えて耐摩耗性を有し、繊維強化樹脂層3を外層に備えて高い強度を確保した複層管1を得ることができる。この複層管1は、両端部において、熱硬化性樹脂32を含浸した長繊維材料31を鍔返し形状に積層させることでフランジ部12が形成されているので、フランジ部12と直管本体部11とにまたがって補強繊維材が連続的に配置されており、高い剪断強度を備えたものとなる。これにより、複層管1を、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとし、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適したものとすることができる。
【0065】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るフランジ付き複層管の製造方法及びその製造方法により得られるフランジ付き複層管について説明する。図6〜図9は、実施形態2に係るフランジ付き複層管の端部をそれぞれ模式的に示した半断面図である。
【0066】
複層管1においては、図1及び図5に示した形態のほか、軟質合成樹脂層2の厚肉に形成する範囲を広げ、図6〜図9に示すような各断面形状の軟質合成樹脂層2としてもよい。
【0067】
すなわち、図6に示す形態では、軟質合成樹脂層2は、直管本体部11の軸方向の中央部においては、一定の肉厚で形成されている。これに対し、直管本体部11の端部寄りから、フランジ部12の端部までの範囲では、軟質合成樹脂層2は、漸次拡径して厚肉に形成され厚肉部23を構成している。このような軟質合成樹脂層2の厚肉部23は、例えば管径が2000mmである複層管1では、管端部から軸方向に約300〜700mmの範囲に形成される。また、直管本体部11の軸方向の中央部における軟質合成樹脂層2の肉厚が約3mmであるのに対し、管端部においては約4〜8mmの肉厚となるように厚肉部23が形成される。
【0068】
図7に示す形態では、軟質合成樹脂層2は、直管本体部11の端部寄りからフランジ部12端部にかけて一定の厚さの厚肉部23が形成されている。例えば、管径が2000mmである複層管1では、直管本体部11の軸方向の中央部における軟質合成樹脂層2が約3mmの厚さであるのに対し、直管本体部11の端部及びフランジ部12にかけて形成された厚肉部23では、約4〜8mmの範囲内での一定の肉厚で形成される。
【0069】
軟質合成樹脂層2の厚肉部23は、前記実施形態1と同様、軟質合成樹脂材料21を供給する第一工程において、フランジ部12から直管本体部11の端部にかけて又は直管本体部11の端部からフランジ部12にかけて、軟質合成樹脂材料21の吐出量を増大させ若しくは吐出ノズルの移動速度を低下させることによって、厚肉に形成されている。
【0070】
フランジ部12の軸方向の端面には、軟質合成樹脂材からなる円環状の止水層4を接着する。この止水層4は、フランジ部12のフランジ端面を被覆するパッキンとなる。止水層4は、軟質合成樹脂層2の厚肉部23及び繊維強化樹脂層3に接着して一体化され、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面の剥離を防ぐ。特に、軟質合成樹脂層2に厚肉部23が設けられることにより、接着性の良い軟質合成樹脂層2と止水層4との接着面積を増大させることができ、両者の一体性を高めることが可能となる。
【0071】
また、図2に示したように、複数本の複層管1を可撓性スリーブ9を介して折曲自在に連結して排砂管として用いる場合、複層管1のフランジ部12近傍で管路が曲げられるため、フランジ部12の内周面において土砂等の摩耗性流体の衝突が集中することになる。よって、図6及び図7に示すように、軟質合成樹脂層2に厚肉部23を設けることで、耐摩耗性及び耐久性を一層向上させることができる。
【0072】
さらに、図8又は図9に示すように、複層管1において、軟質合成樹脂層2の軸方向の端面を繊維強化樹脂層3で被覆した断面構造としてもよい。
【0073】
図8は、図6に示した複層管1に対し、繊維強化樹脂層3を軟質合成樹脂層2の端面まで被覆させて、繊維強化樹脂層3の端部に環状突部34を設けた例を示す。また、図9は、図7に示した複層管1に対し、繊維強化樹脂層3の端部に同様の環状突部34を設けた例を示す。これらの場合、外層成形工程において、厚肉部23を備えた軟質合成樹脂層2の軸方向の端部を、熱硬化性樹脂32を含浸したシート状の長繊維材料31で包むように折り込んで積層する。その後、長繊維材料31を反対側へ鍔返し状に積層する。これにより、複層管1として、直管本体部11と鍔状のフランジ部12とに連続する繊維強化樹脂層3を形成する。加えて、複層管1のフランジ部12においては、繊維強化樹脂層3に環状突部34を形成し、軟質合成樹脂層2の端面(厚肉部23の端部)を繊維強化樹脂層3で被覆した断面形状とすることができる。
【0074】
このように軟質合成樹脂層2の端面を被覆する環状突部34は、軟質合成樹脂層2よりも硬質であって高い強度を有している。また、フランジ部12の端面には止水層4(パッキン)が設けられ、複層管1同士の連結により圧潰される。この際、止水層4に作用する軸方向力を、硬質の環状突部34で受けることができる。そのため、止水層4は十分に圧潰され、止水性能を向上させることができる。また、環状突部34を形成することにより、軟質合成樹脂層4の厚肉部23に対して軸方向力が作用するのを回避できるので、複層管1の端部において軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面が剥離するのを防ぐことができる。
【0075】
なお、繊維強化樹脂層3の環状突部34の大きさは、軸方向力を受けた際に十分な強度を発揮し、かつ、複層管1の内周面に露出する熱硬化性樹脂32の面積を少なく抑えて耐摩耗性を低下させない範囲で設定されることが好ましい。そのため環状突部34は、例えば、管径が2000mmである複層管1では、フランジ部12の端部から軸方向に5〜15mmの長さで形成されることが好ましい。
【0076】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るフランジ付き複層管の製造方法について説明する。図10〜図13は、実施形態3に係る複層管1の製造方法の各工程を模式的に示す説明図である。
【0077】
なお、この実施形態3では、内層成形工程と外層成形工程との基本構成が実施形態1とほぼ同様であるため、重複する内容及び構成部材については同符号を用いて説明を省略し、この形態の特徴部分について説明を行うこととする。
【0078】
実施形態3では、フランジ部12を備えた短管5を2つ用いて複層管1を形成する。短管5は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層51からなる内層と、繊維強化樹脂層52からなる外層とを有する。また、短管5は、繊維強化樹脂層52が、短管2の先端部(フランジ部12の反対側端部)に向けて、漸次縮径しておりテーパー面が形成されている。
【0079】
先ず、図10に示すように、2つの短管5、5をそれぞれ金型6の両端部寄りに対向させて装着する。このとき、装着する2つの短管5は、それぞれ、フランジ部12が金型6の端部側に位置するように、先端部同士を対向させて配置する。
【0080】
図11に示すように、軸まわりに回転する金型6に対して、各短管5を、固定治具61を用いて仮固定することが好ましい。例示の形態に係る固定治具61は、金型6の端部に装着される支持部62と、支持部62に対してフランジ部12を挟み込み、ボルト締結によりフランジ部12を挟持する挟持部63とを備えている。固定治具61の支持部62は、ビス又はボルト等の止着具により金型6の端部に取り付けられ、容易に取り外すことのできる構成とされている。かかる固定治具61を金型6の両端部に、少なくとも1つずつ取り付けて短管5のフランジ部12を保持する。これにより、短管5が金型6に仮固定され、後の工程での短管5のがたつきや位置ずれを抑えることができる。なお、固定治具61を、金型5の端部に、均等間隔で複数個取り付けて、短管5をより安定的に固定するようにしてもよい。
【0081】
次に、短管5と短管5との間の区間において、内層成形工程を行う。つまり、回転する金型6の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料21を吐出ノズル7から吐出しながら金型6の軸方向に移動させて、軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給する(図3参照)。これにより、図12に示すように、2つの短管5、5の間に、管状の軟質合成樹脂層2を形成することができる。
【0082】
次に、軟質合成樹脂層2の表面に、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との接着強度を高めるため、プライマー(接着を促進する塗布材料)を塗布する(プライマー塗布工程)。
【0083】
続いて、図13に示すように、短管5と短管5との間の区間において、外層成形工程を行う。つまり、図4に示した態様で、長繊維材料31に熱硬化性樹脂32を含浸させつつ、軟質合成樹脂層2に巻き回して繊維強化樹脂層3を管状に積層成形する。図10に示したように、短管5の繊維強化樹脂層52は、先端部に向けて漸次縮径されている。外層成形工程では、長繊維材料31を短管5の繊維強化樹脂層52の外周面に部分的に重ね合わせて積層する。これにより、図13に示すように、短管5の繊維強化樹脂層52と、積層成形する繊維強化樹脂層3とを一体に形成することができ、これらの接着面積を増大させることができる。
【0084】
なお、短管5は、軟質合成樹脂層51を、繊維強化樹脂層52の先端部から延出させて、部分的に露出させておいてもよい。このような短管5を金型6に装着することで、内層成形工程においては、軟質合成樹脂層2を短管5の軟質合成樹脂層51に接合させて成形することができ、これらの接着性を高めることが可能となる。
【0085】
以上の各工程により、2つの短管5、5に連続させて直管本体部11の軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3とを管状に成形することができ、直管本体部11と両端部のフランジ部12とを一体に形成することができる。フランジ部12は、あらかじめ短管5に設けられており、短管5に対して軟質合成樹脂層2及び繊維強化樹脂層3を連続させて成形するので、フランジ部12における一定の強度を確保した状態で複層管1を形成することができる。これにより、複層管1を、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとし、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適したものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、両端部にフランジを備えたフランジ付き複層管に対して好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 フランジ付き複層管
11 直管本体部
12 フランジ部
2 軟質合成樹脂層
21 軟質合成樹脂材料
23 厚肉部
3 繊維強化樹脂層
31 長繊維材料
32 熱硬化性樹脂
34 環状突部
4 止水層
5 短管
51 軟質合成樹脂層
52 繊維強化樹脂層
6 金型
61 固定治具
62 支持部
63 挟持部
7 吐出ノズル
9 可撓性スリーブ
91 継手フランジ
92 連結ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ付き複層管の製造方法、及びこの製造方法により製造されたフランジ付き複層管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾や航路等の浚渫には、水底から採取する土砂の種類や採取の方法により各種の方式が採用されており、特に砂地の浚渫には浚渫土量の大きいポンプ方式が適するとして多用されている。このポンプ方式は、ポンプ船に備えたポンプの吸水管で水底の土砂を水とともに吸い上げ、水と混合した状態の土砂を、水中や地上に配設した排砂管を経由して埋め立て地や土砂捨場等の適宜の場所に送るものである。
【0003】
排砂管には、高い強度を有する長尺の鋼管が用いられている。鋼管同士の接合部には、長尺の排砂管を折曲自在に支持するためにゴム材からなる可撓性スリーブが備えられ、排砂管のフランジ部(ルーズフランジ型)と可撓性スリーブの継手フランジ(固定フランジ型)とが連結ボルトにより連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このように接合して長距離にわたって配設された排砂管は、浚渫対象域の変更に際しては、排砂管と可撓性スリーブを接合した状態のまま、クレーン等により水面に引き上げて移動する作業を行わなければならない。このとき、鋼管の重量が大きいことから重機を必要とする上、作業工程が煩雑であって作業人数及び作業時間のかかるものとなっていた。また、水底に配管されていた排砂管は、腐食により脆くなっており、可撓性スリーブを取り外したり、撤去作業を行ったりする際に破損を生じやすく、新たな排砂管に交換しなければならないことが多かった。しかしながら、近年の建築資材の価格高騰に伴って、鋼管からなる排砂管の価格も上昇していることから、新たな排砂管に交換すると非常にコストがかかってしまうという問題点も抱えていた。
【0005】
上記のような従来の鋼管からなる排砂管に対し、軽量で作業性に富み、材料コストの低減を図ることのできる合成樹脂製の排砂管の開発が望まれた。しかしながら、合成樹脂製の排砂管とする場合、鋼管に劣らない十分な強度と、土砂によっても内周面が摩耗しにくいようにすることが大きな課題点であった。
【0006】
この点で、例えば、特許文献2には、超高分子量ポリエチレンからなる内層と、繊維強化プラスチックからなる外層とを備えた複合パイプについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−49771号公報
【特許文献2】特開昭58−689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献2に開示されたような複合パイプを現実に製造することができれば、内層によって耐摩耗性を備えさせることができ、外層の繊維強化プラスチックにより強度を確保することが可能となって、土砂等の摩耗性流体を移送するのにも適したものとなる。しかしながら、現状で、かかる内層及び外層を備えた複層管について、安価で生産性よく製造する方法は確立されておらず、特許文献2にも具体的な製造方法に関する記載は全くない。
【0009】
また、排砂管に適用できる複層管としては、接合用のフランジ部に可撓性スリーブを連結して用いることから、直管部分のみならずフランジ部においても十分な強度を有することが求められる。つまり、フランジ部には、可撓性スリーブが連結ボルトにより緊結されて高い軸方向力及び摩擦力が作用し、管内の土砂を含む流水や浚渫機械等からの衝撃力も作用する。したがって、これらによってフランジ部に大きな剪断力が作用しても、フランジ部が破損しないように、十分な強度を持たせる必要がある。しかし、従来の合成樹脂製の複層管において、このような課題点を解決する手法は見出されておらず、排砂管に適用可能な複層管として開発が望まれた。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内面に備え、強度を高める繊維強化樹脂層を外面に備えたフランジ付き複層管に係る生産性の高い製造方法を確立し、土砂等の摩耗性流体の移送に用いることのできる十分な強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたフランジ付き複層管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法を前提とする。この複層管の製造方法に対し、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ前記金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、前記直管本体部及びフランジ部の軟質合成樹脂層を一体の管状に形成する内層成形工程と、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して前記直管本体部及びフランジ部の繊維強化樹脂層を一体に形成する外層成形工程とを含ませる構成としている。そして、前記外層成形工程では、前記金型の両端部において、前記長繊維材料を鍔返し状に積層し、前記フランジ部を直管本体部に連続させて鍔状に成形することを特徴としている。
【0012】
このような特定事項により、軟質合成樹脂層及び繊維強化樹脂層を所望の長さで管状に積層成形して複層管を得ることができる。前記金型に対しては、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出するとともに該金型の軸方向に吐出位置を移動させて、軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給することによって、耐摩耗性を備えた内層を管状に成形することができる。また、前記軟質合成樹脂層に繊維強化樹脂層を積層成形して外層を備えさせ、複層管としての強度を高めることができる。この繊維強化樹脂層は、前記金型の両端部では、長繊維材料を鍔返し形状に積層して形成されるので、フランジ部と直管本体部とに連続させて長繊維材料を配設することができ、直管本体部に一体のフランジ部を形成することができる。これにより、フランジ部における破損を防止し、強度の高いフランジ付き複層管を形成することができる。
【0013】
また、前記の目的を達成するための本発明の他の解決手段は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法を前提とする。この複層管の製造方法に対し、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えたフランジ部付きの短管2つを、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面にそれぞれ対向させるとともに各短管のフランジ部を該金型の端部側に位置するように配置して該金型に装着し、前記短管と短管との間の区間において、前記金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層を形成する内層成形工程と、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を管状に積層して繊維強化樹脂層を成形する外層成形工程とを含ませる構成とする。そして、前記外層成形工程では、前記長繊維材料を、各短管の外周面に部分的に重ね合わせて積層し、前記短管の繊維強化樹脂層と一体の繊維強化樹脂層を形成することを特徴としている。
【0014】
この場合、2つの短管を用いてフランジ付き複層管を形成する。その際、複層管の直管本体部の繊維強化樹脂層を、2つの短管の外周面に前記長繊維材料を部分的に重ねて成形している。これにより、別体として形成したフランジ部付きの短管に対し、前記軟質合成樹脂層と、繊維強化樹脂層とを連続させて積層成形することができ、一体的なフランジ部と直管本体部とからなる複層管を得ることができる。得られた複層管は、直管本体部及びフランジ部ともに、軟質合成樹脂層による耐摩耗性と、繊維強化樹脂層による十分な強度とを有するものとなり、フランジ部の破損も防止しうるものとなる。
【0015】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記内層成形工程では、前記軟質合成樹脂層を前記金型の両端部ほど厚肉に形成することが好ましい。
【0016】
これにより、複層管の端部における軟質合成樹脂層が厚肉となり、土砂等の摩耗性流体の衝突が集中しやすい箇所である複層管の端部において、軟質合成樹脂層を厚肉に形成することができる。そのため、複層管の耐摩耗性及び耐久性を一層向上させることができる。また、複層管のフランジ端面に止水層を設ける際には、軟質合成樹脂層が厚肉であることにより、止水層と軟質合成樹脂層との接着面積が増大する。そのため、複層管の端部での止水層の接着性が高められ、より一層止水性を高めることができ、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面の剥離も防ぐことが可能となる。
【0017】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記短管のフランジ部を挟持しうる挟持部を備えた固定治具を前記金型に装着し、該金型の外周面に前記短管を仮固定することが好ましい。
【0018】
これにより、フランジ部付きの短管を用いた場合の各成形工程において、軸まわりに回転する金型の外周面に配置された短管が、がたついたり位置ずれしたりするのを防止することができる。
【0019】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記外層成形工程では、前記軟質合成樹脂層の両端部を覆うように長繊維材料を積層し、前記軟質合成樹脂層の軸方向の端面を繊維強化樹脂層で被覆することが好ましい。
【0020】
これにより、軟質合成樹脂層の端面を、より硬質であって高い強度を有する繊維強化樹脂層で被覆し、作用する軸方向力を繊維強化樹脂層で受ける構造とすることができ、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面が剥離するのを防ぐことも可能となる。
【0021】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法における前記内層成形工程のより具体的な構成として次のものが挙げられる。つまり、前記内層成形工程は、軟質合成樹脂材料を前記金型に螺旋状に供給する第一工程と、供給した軟質合成樹脂材料が未硬化である間に軟質合成樹脂層の表面を均す第二工程とを含む構成とすることである。
【0022】
このように、第一工程にて前記金型に供給した軟質合成樹脂材料が、硬化しないうちにその表面を均す作業を第二工程として行うことによって、均一な肉厚の軟質合成樹脂層を得ることができる。また、軟質合成樹脂層が均一な肉厚で形成されることで、繊維強化樹脂層の肉厚も一定に管理することが容易となり、複層管としての所定の強度を発現させることが可能となる。
【0023】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法において、前記内層成形工程と前記外層成形工程との間に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を前記軟質合成樹脂層の表面に巻きつける工程を行ってもよい。
【0024】
これにより、軟質合成樹脂層の表面を均一に均すことができるので、前記第二工程に代わる工程として行うことができる。したがって、この場合にも、繊維強化樹脂層の肉厚も一定に管理することが容易となり、複層管としての所定の強度を発現させることが可能となる。
【0025】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記内層成形工程の後、層間の接着強度を高めるプライマーを、前記軟質合成樹脂層の外周面に塗布するプライマー塗布工程を行うことが好ましい。
【0026】
これにより、前記内層成形工程にて形成した軟質合成樹脂層に対して繊維強化樹脂層の付着性及び一体性を高めることができる。
【0027】
また、前記フランジ付き複層管の製造方法においては、前記フランジ部の軸方向の端面に、軟質合成樹脂材からなる止水層を周設する工程を含むことが好ましい。
【0028】
このような止水層を設けることにより、接合用のフランジ端面が止水層で被覆され、複層管同士の接合部における止水性を高めることが可能になる。また、複層管の端部における軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との界面を止水層が塞ぐので、軟質合成樹脂層と繊維強化樹脂層との間への流水の浸入を防止し、層間剥離を防ぐことが可能となる。
【0029】
また、上述した各解決手段に係るフランジ付き複層管の製造方法により製造されたフランジ付き複層管も本発明の技術的思想の範疇である。
【0030】
つまり、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、前記軟質合成樹脂層は、軸方向の端面が繊維強化樹脂層により被覆された構成とされる。
【0031】
また、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、前記軟質合成樹脂層は、軸方向の両端部に厚肉部を有する構成であってもよい。
【0032】
このような構成に係るフランジ付き複層管は、内層の軟質合成樹脂層が耐摩耗性を有し、外層の繊維強化樹脂層が高い強度を確保するので、フランジ部及び直管本体部ともに、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとなり、土砂等の摩耗性流体の移送にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、内層に耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を備え、外層に繊維強化樹脂層を備えるフランジ付き複層管を生産性よく製造することができ、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適した複層管を形成することができる。また、フランジ部においても直管本体部と同等の十分な強度を確保することができ、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れた複層管とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態に係るフランジ付き複層管を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係るフランジ付き複層管の接合形態の一例を示す側面図である。
【図3】実施形態1に係るフランジ付き複層管の製造方法において、内層成形工程を模式的に示す説明図である。
【図4】実施形態1に係る外層成形工程を模式的に示す説明図である。
【図5】実施形態1に係るフランジ付き複層管の端部を模式的に示す半断面図である。
【図6】実施形態1に係るフランジ付き複層管の他の例を模式的に示す半断面図である。
【図7】実施形態1に係るフランジ付き複層管のさらに他の例を模式的に示す半断面図である。
【図8】実施形態2に係るフランジ付き複層管の端部を模式的に示す半断面図である。
【図9】実施形態2に係るフランジ付き複層管の他の例を模式的に示す半断面図である。
【図10】実施形態3に係るフランジ付き複層管の製造方法において、準備工程を模式的に示す説明図である。
【図11】図10の次工程を示す説明図である。
【図12】実施形態3に係る内層成形工程を終えた状態を模式的に示す説明図である。
【図13】実施形態3に係る外層成形工程を終えた状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態に係るフランジ付き複層管の製造方法及びその製造方法により得られるフランジ付き複層管について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1は、実施の形態に係るフランジ付き複層管を示す断面図である。図2は、実施の形態に係るフランジ付き複層管の接合形態の一例を示す側面図である。
【0037】
フランジ付き複層管1(以下、単に複層管1という。)は、直管本体部11と、この直管本体部11の両端部のフランジ部12とを有する。複層管1は、管全体にわたって、内層に耐摩耗性の軟質合成樹脂層2を備え、外層に繊維強化樹脂層3を備えている。両端のフランジ部12のフランジ端面には、軟質合成樹脂材からなる止水層4が周設されている。また、直管本体部11の軟質合成樹脂層2は、両端部において厚肉となるように形成されている。
【0038】
軟質合成樹脂層2は、ポリウレタン、ポリエチレン等の高強度で耐摩耗性に優れた合成樹脂材料、又は合成ゴム材からなる。
【0039】
また、繊維強化樹脂層3は、繊維強化複合材料より構成され、複合材料の母材樹脂(マトリックス)と、補強材である高強度繊維の組合せは多様である。好ましい例を挙げると、高強度繊維には、高強度及び高弾性率であるガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等を用いることができ、かかる高強度繊維からなる織布、不織布、又は高強度繊維を平行に引き揃えた基材を用いる。また、母材樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましく、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート樹脂等を用いることができる。
【0040】
このような複層管1を排砂管として用いる場合、図2に示すように、複数本の複層管1を折曲自在に連結するために、フランジ部12に可撓性スリーブ9が設けられる。複層管1の両端部のフランジ部12は、可撓性スリーブ9の継手フランジ91に挟持され、連結ボルト92を締め付けて固定される。
【0041】
これにより、これらの複層管1が、水底の土砂を、水とともに排送する排砂管を構成する。その際、耐摩耗性のある軟質合成樹脂層2が複層管1の内面を保護するので、内面の損傷を生じにくくし、繊維強化樹脂層3が複層管1の全体強度を確保して耐久性の高い排砂管とすることができる。また、所定箇所の浚渫を終えて次の浚渫箇所へ移動する場合には、水中部分の排砂管を可撓性スリーブと接合した状態のまま、クレーン等により水面に引き上げて、移動させる。この際、複層管1が合成樹脂製であるため、従来の鋼管からなる排砂管に比べ軽量で作業性に富み、腐食しにくい構成であるため、簡単に撤去作業を行うことができる。
【0042】
このように排砂管として好適な複層管1は、円柱状外周面を有して軸まわりに回転する金型を用いて成形される。すなわち、複層管1は、前記金型の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向(長手方向)に吐出位置を移動させて、管状の軟質合成樹脂層2を形成し(内層成形工程)、さらに、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して繊維強化樹脂層3を管状に成形する(外層成形工程)ことによって形成される。
【0043】
ここで、複層管1の直管本体部11に対しフランジ部12を一体に形成する手法は、複数のバリエーションがある。以下では、複層管1の製造方法について、直管本体部11とフランジ部12とを同一工程により成形して複層管1を得る方法(実施形態1及び2)と、フランジ部12を備える短管に対して直管本体部11を成形して複層管1を得る方法(実施形態3)について説明する。
【0044】
(実施形態1)
図3〜図5は、実施形態1に係るフランジ付き複層管1の製造方法を示し、図3は、内層成形工程を模式的に示す説明図、図4は、外層成形工程を模式的に示す説明図である。図5は、複層管の端部を模式的に示す拡大断面図である。
【0045】
複層管1の製造は、円筒状又は円柱状の外周面を有する回転体である金型6を用いて行う。
【0046】
先ず、図3に示すように、軸まわりに回転する金型6の外周面に未硬化の軟質合成樹脂材料21を吐出しながら、吐出位置を金型6の軸方向に移動させて、軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給する(内層成形工程)。金型6の外周面には、複層管1の製品長さに対応する範囲で、あらかじめポリエチレンフィルムを巻き付けて軟質合成樹脂材料21の流動性を高めるようにしてもよい。
【0047】
軟質合成樹脂材料21には、耐摩耗性が良好であって、外層の繊維強化樹脂層3との接着性に優れた材料を選定することが好ましい。具体的には、軟質合成樹脂層2の硬さをJIS K 6235のタイプAデュロメータ硬さ(HA)で30〜110とすることにより、耐摩耗性を十分に備えさせることができる。例えば、JIS K 6235のタイプAデュロメータで計測される硬さが40〜80であって、引張強度が3〜15MPaであるポリウレタン樹脂材が、この軟質合成樹脂材料21として好適である。
【0048】
ここで、軟質合成樹脂層2の材料であるポリウレタン樹脂材を金型6に吐出するには、ポリオール成分とイソシアネート成分とを、ミキシングヘッドにて撹拌混合後、ミキシングヘッド先端に取り付けた吐出ノズル7から混合原液(軟質合成樹脂材料21)を吐出させる。その際、図3に示すように、吐出ノズル7を、回転する金型6の外周面を軸方向に移動させることによって、金型6の外周面に対して軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給することができる。この供給された軟質合成樹脂材料21は、金型6の外周面にて反応が急速に進行して硬化する。これにより、管状の成形体である軟質合成樹脂層2を形成することができる。
【0049】
軟質合成樹脂層2の肉厚は、金型6の回転速度、吐出ノズル7の移動速度、及び吐出量により制御することができる。金型6が低速回転である場合、供給された軟質合成樹脂材料21の表面に凹凸を生じやすく、螺旋状となった材料同士の重合部分に段差を生じてしまいやすい。このため、金型6の回転速度は比較的高速であることが好ましく、高速回転させた金型6に対する吐出ノズル7の移動速度によって、軟質合成樹脂層2の肉厚を制御することが最も好ましい。
【0050】
また、内層成形工程では、軟質合成樹脂層2を金型6の両端部において厚肉に形成する(図5参照)。これは、軟質合成樹脂材料21を供給する第一工程において、吐出量を増大させ、又は吐出ノズルの移動速度を低下させることで、軟質合成樹脂層2の端部を厚肉とすることができる。これにより、軟質合成樹脂層2と、後述するフランジ部12の端面に設ける止水層4との接着面積を増大させることができ、これらの一体性を高めることが可能となる。
【0051】
かかる内層成形工程において、軟質合成樹脂材料21を金型6の外周面に螺旋状に供給する前記工程を第一工程とし、さらに、供給した軟質合成樹脂材料21が未硬化である間に軟質合成樹脂層2の表面を均す第二工程とを続けて行うことが好ましい。
【0052】
前記のように、第一工程では、軟質合成樹脂材料21を供給することで、金型6の外周面をその混合原液の反応性流体が螺旋状を描くように順に覆っていく。このとき、直前に供給された軟質合成樹脂材料21と、これに接して、直後に供給された軟質合成樹脂材料21とは、部分的に重なり合う。この重合部分が、そのまま硬化すると、軟質合成樹脂層2の表面に段差を生じ、平滑な表面が得られにくい。
【0053】
そこで、内層成形工程の第二工程として、軟質合成樹脂材料21が未硬化である間に、その表面の重合部分を平滑に均す作業を行う。軟質合成樹脂層2の表面を均す手段は、金型6の大きさや、軟質合成樹脂材料21の硬化速度に合わせて適宜選択することができる。例えば、ブロアにより圧縮空気を吹き付けて軟質合成樹脂材料21を金型6の外周面に流動させて平滑にしたり、軟質合成樹脂層2の表面に沿う形状のプレート、ヘラ、又はローラ等で均したりする等の手段があげられる。これにより、均一な肉厚の軟質合成樹脂層2が得られる。
【0054】
また、軟質合成樹脂層2の表面を均すことに代えて、内層成形工程の第二工程として、軟質合成樹脂層2の表面にガラス繊維シート状物を巻きつけて積層させ、軟質合成樹脂層2の表面を平滑にする処理を行ってもよい。この場合、軟質合成樹脂層2には、表面にプライマー(接着を促進する塗布材料)を塗布し、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を全面に巻きつける。これにより、軟質合成樹脂材料21の材料同士の重合部分がガラス繊維シート状物により被覆され、軟質合成樹脂層2の表面に生じている段差を解消することができる。また、ガラス繊維シート状物が、この軟質合成樹脂層2と、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との間に介装されることになるので、ガラス繊維のアンカー効果によって繊維強化樹脂層3を安定化させ、軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との密着性を高めるものとなる。かかるガラス繊維シート状物としては、例えばガラス繊維からなるガラスマットやガラスペーパー等を用いることができる。
【0055】
次に、軟質合成樹脂層2の表面に、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との接着強度を高めるため、プライマーを塗布する(プライマー塗布工程)。プライマーには、例えば、イソシアネートを酢酸エチルやジクロロメタン等の溶剤で希釈したものを使用することができる。プライマーの塗布量は、軟質合成樹脂層2の表面を薄く覆う程度でよく、例えば150g/m2の塗布量で足りる。プライマー塗布後、30〜60分間放置し、プライマーを定着させる。
【0056】
次に、プライマーを塗布した軟質合成樹脂層2の表面に、図4に示すように、長繊維材料31を積層し、熱硬化性樹脂32を含浸させて、繊維強化樹脂層3を成形する(外層成形工程)。長繊維材料31は、高強度繊維からなる織布、不織布、又は平行に引き揃えた高強度繊維材とされる。
【0057】
具体的には、長繊維材料31としてガラス繊維からなる長尺のガラスマットに、熱硬化性樹脂32としての不飽和ポリエステル樹脂を含浸させ、回転する金型6に供給する。つまり、図4に示すように、軟質合成樹脂層2の上に、長繊維材料31を螺旋状に巻き回しながら、熱硬化性樹脂32を含浸させていく。
【0058】
次に、巻き回した長繊維材料31を金型6の外周面に固定するため、ガーゼ等の保持シート材を全体に巻き付ける。さらに、熱硬化性樹脂32である不飽和ポリエステル樹脂を含浸させたガラスロービング(長繊維材料31)を、前記保持シート材の上から巻き回して積層成形する。
【0059】
かかる長繊維材料31は、ガラスマット、ガラスロービングのほか、ガラスペーパーやガラスロービングクロス等であってもよく、また、材質はガラス繊維のほか、炭素繊維等であってもよい。熱硬化性樹脂32は、不飽和ポリエステル樹脂のほか、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等であってもよく、適宜、硬化剤や架橋剤を混合してもよい。
【0060】
この外層成形工程において、成形体の両端部においては、熱硬化性樹脂32を含浸したシート状の長繊維材料31を重ね、鍔返し状に積層していく。これにより、図5に示すように、直管本体部11に連続させて鍔状のフランジ部12を積層成形することができる。
【0061】
さらに、熱硬化性樹脂32を含浸した長繊維材料31の上に、図示しないバッグフィルムを巻き、繊維強化樹脂層3の表面を平滑に整える。熱硬化性樹脂32は、約30分でゲル化し、その後硬化して、複合繊維基材を構成する。
【0062】
フランジ部12のフランジ端面には、軟質合成樹脂材からなる円環状の止水層4を接着する。この止水層4は、フランジ部12のフランジ端面を被覆するパッキンとなる。止水層4の軟質合成樹脂材には、内層成形工程と同様のポリウレタン樹脂材を用いることができる。また、止水層4は、軟質合成樹脂材の硬さを、タイプAデュロメータ硬さ(HA)で50〜70とすることにより、十分な止水性及び耐摩耗性を発揮させることができる。
【0063】
止水層4は、図1に示すように、端部の厚肉とされた軟質合成樹脂層2及び繊維強化樹脂層3に接着して一体化され、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面の剥離を防ぐ。また、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2が厚肉であるので、フランジ端面に止水層4を設ける際の、軟質合成樹脂層2と止水層4との接着面積を大きく確保でき、両者の接着性を高めることができる。
【0064】
以上の各工程により、軟質合成樹脂層2を内層に備えて耐摩耗性を有し、繊維強化樹脂層3を外層に備えて高い強度を確保した複層管1を得ることができる。この複層管1は、両端部において、熱硬化性樹脂32を含浸した長繊維材料31を鍔返し形状に積層させることでフランジ部12が形成されているので、フランジ部12と直管本体部11とにまたがって補強繊維材が連続的に配置されており、高い剪断強度を備えたものとなる。これにより、複層管1を、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとし、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適したものとすることができる。
【0065】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るフランジ付き複層管の製造方法及びその製造方法により得られるフランジ付き複層管について説明する。図6〜図9は、実施形態2に係るフランジ付き複層管の端部をそれぞれ模式的に示した半断面図である。
【0066】
複層管1においては、図1及び図5に示した形態のほか、軟質合成樹脂層2の厚肉に形成する範囲を広げ、図6〜図9に示すような各断面形状の軟質合成樹脂層2としてもよい。
【0067】
すなわち、図6に示す形態では、軟質合成樹脂層2は、直管本体部11の軸方向の中央部においては、一定の肉厚で形成されている。これに対し、直管本体部11の端部寄りから、フランジ部12の端部までの範囲では、軟質合成樹脂層2は、漸次拡径して厚肉に形成され厚肉部23を構成している。このような軟質合成樹脂層2の厚肉部23は、例えば管径が2000mmである複層管1では、管端部から軸方向に約300〜700mmの範囲に形成される。また、直管本体部11の軸方向の中央部における軟質合成樹脂層2の肉厚が約3mmであるのに対し、管端部においては約4〜8mmの肉厚となるように厚肉部23が形成される。
【0068】
図7に示す形態では、軟質合成樹脂層2は、直管本体部11の端部寄りからフランジ部12端部にかけて一定の厚さの厚肉部23が形成されている。例えば、管径が2000mmである複層管1では、直管本体部11の軸方向の中央部における軟質合成樹脂層2が約3mmの厚さであるのに対し、直管本体部11の端部及びフランジ部12にかけて形成された厚肉部23では、約4〜8mmの範囲内での一定の肉厚で形成される。
【0069】
軟質合成樹脂層2の厚肉部23は、前記実施形態1と同様、軟質合成樹脂材料21を供給する第一工程において、フランジ部12から直管本体部11の端部にかけて又は直管本体部11の端部からフランジ部12にかけて、軟質合成樹脂材料21の吐出量を増大させ若しくは吐出ノズルの移動速度を低下させることによって、厚肉に形成されている。
【0070】
フランジ部12の軸方向の端面には、軟質合成樹脂材からなる円環状の止水層4を接着する。この止水層4は、フランジ部12のフランジ端面を被覆するパッキンとなる。止水層4は、軟質合成樹脂層2の厚肉部23及び繊維強化樹脂層3に接着して一体化され、複層管1の端部における軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面の剥離を防ぐ。特に、軟質合成樹脂層2に厚肉部23が設けられることにより、接着性の良い軟質合成樹脂層2と止水層4との接着面積を増大させることができ、両者の一体性を高めることが可能となる。
【0071】
また、図2に示したように、複数本の複層管1を可撓性スリーブ9を介して折曲自在に連結して排砂管として用いる場合、複層管1のフランジ部12近傍で管路が曲げられるため、フランジ部12の内周面において土砂等の摩耗性流体の衝突が集中することになる。よって、図6及び図7に示すように、軟質合成樹脂層2に厚肉部23を設けることで、耐摩耗性及び耐久性を一層向上させることができる。
【0072】
さらに、図8又は図9に示すように、複層管1において、軟質合成樹脂層2の軸方向の端面を繊維強化樹脂層3で被覆した断面構造としてもよい。
【0073】
図8は、図6に示した複層管1に対し、繊維強化樹脂層3を軟質合成樹脂層2の端面まで被覆させて、繊維強化樹脂層3の端部に環状突部34を設けた例を示す。また、図9は、図7に示した複層管1に対し、繊維強化樹脂層3の端部に同様の環状突部34を設けた例を示す。これらの場合、外層成形工程において、厚肉部23を備えた軟質合成樹脂層2の軸方向の端部を、熱硬化性樹脂32を含浸したシート状の長繊維材料31で包むように折り込んで積層する。その後、長繊維材料31を反対側へ鍔返し状に積層する。これにより、複層管1として、直管本体部11と鍔状のフランジ部12とに連続する繊維強化樹脂層3を形成する。加えて、複層管1のフランジ部12においては、繊維強化樹脂層3に環状突部34を形成し、軟質合成樹脂層2の端面(厚肉部23の端部)を繊維強化樹脂層3で被覆した断面形状とすることができる。
【0074】
このように軟質合成樹脂層2の端面を被覆する環状突部34は、軟質合成樹脂層2よりも硬質であって高い強度を有している。また、フランジ部12の端面には止水層4(パッキン)が設けられ、複層管1同士の連結により圧潰される。この際、止水層4に作用する軸方向力を、硬質の環状突部34で受けることができる。そのため、止水層4は十分に圧潰され、止水性能を向上させることができる。また、環状突部34を形成することにより、軟質合成樹脂層4の厚肉部23に対して軸方向力が作用するのを回避できるので、複層管1の端部において軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3との界面が剥離するのを防ぐことができる。
【0075】
なお、繊維強化樹脂層3の環状突部34の大きさは、軸方向力を受けた際に十分な強度を発揮し、かつ、複層管1の内周面に露出する熱硬化性樹脂32の面積を少なく抑えて耐摩耗性を低下させない範囲で設定されることが好ましい。そのため環状突部34は、例えば、管径が2000mmである複層管1では、フランジ部12の端部から軸方向に5〜15mmの長さで形成されることが好ましい。
【0076】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るフランジ付き複層管の製造方法について説明する。図10〜図13は、実施形態3に係る複層管1の製造方法の各工程を模式的に示す説明図である。
【0077】
なお、この実施形態3では、内層成形工程と外層成形工程との基本構成が実施形態1とほぼ同様であるため、重複する内容及び構成部材については同符号を用いて説明を省略し、この形態の特徴部分について説明を行うこととする。
【0078】
実施形態3では、フランジ部12を備えた短管5を2つ用いて複層管1を形成する。短管5は、耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層51からなる内層と、繊維強化樹脂層52からなる外層とを有する。また、短管5は、繊維強化樹脂層52が、短管2の先端部(フランジ部12の反対側端部)に向けて、漸次縮径しておりテーパー面が形成されている。
【0079】
先ず、図10に示すように、2つの短管5、5をそれぞれ金型6の両端部寄りに対向させて装着する。このとき、装着する2つの短管5は、それぞれ、フランジ部12が金型6の端部側に位置するように、先端部同士を対向させて配置する。
【0080】
図11に示すように、軸まわりに回転する金型6に対して、各短管5を、固定治具61を用いて仮固定することが好ましい。例示の形態に係る固定治具61は、金型6の端部に装着される支持部62と、支持部62に対してフランジ部12を挟み込み、ボルト締結によりフランジ部12を挟持する挟持部63とを備えている。固定治具61の支持部62は、ビス又はボルト等の止着具により金型6の端部に取り付けられ、容易に取り外すことのできる構成とされている。かかる固定治具61を金型6の両端部に、少なくとも1つずつ取り付けて短管5のフランジ部12を保持する。これにより、短管5が金型6に仮固定され、後の工程での短管5のがたつきや位置ずれを抑えることができる。なお、固定治具61を、金型5の端部に、均等間隔で複数個取り付けて、短管5をより安定的に固定するようにしてもよい。
【0081】
次に、短管5と短管5との間の区間において、内層成形工程を行う。つまり、回転する金型6の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料21を吐出ノズル7から吐出しながら金型6の軸方向に移動させて、軟質合成樹脂材料21を螺旋状に供給する(図3参照)。これにより、図12に示すように、2つの短管5、5の間に、管状の軟質合成樹脂層2を形成することができる。
【0082】
次に、軟質合成樹脂層2の表面に、次工程で形成する繊維強化樹脂層3との接着強度を高めるため、プライマー(接着を促進する塗布材料)を塗布する(プライマー塗布工程)。
【0083】
続いて、図13に示すように、短管5と短管5との間の区間において、外層成形工程を行う。つまり、図4に示した態様で、長繊維材料31に熱硬化性樹脂32を含浸させつつ、軟質合成樹脂層2に巻き回して繊維強化樹脂層3を管状に積層成形する。図10に示したように、短管5の繊維強化樹脂層52は、先端部に向けて漸次縮径されている。外層成形工程では、長繊維材料31を短管5の繊維強化樹脂層52の外周面に部分的に重ね合わせて積層する。これにより、図13に示すように、短管5の繊維強化樹脂層52と、積層成形する繊維強化樹脂層3とを一体に形成することができ、これらの接着面積を増大させることができる。
【0084】
なお、短管5は、軟質合成樹脂層51を、繊維強化樹脂層52の先端部から延出させて、部分的に露出させておいてもよい。このような短管5を金型6に装着することで、内層成形工程においては、軟質合成樹脂層2を短管5の軟質合成樹脂層51に接合させて成形することができ、これらの接着性を高めることが可能となる。
【0085】
以上の各工程により、2つの短管5、5に連続させて直管本体部11の軟質合成樹脂層2と繊維強化樹脂層3とを管状に成形することができ、直管本体部11と両端部のフランジ部12とを一体に形成することができる。フランジ部12は、あらかじめ短管5に設けられており、短管5に対して軟質合成樹脂層2及び繊維強化樹脂層3を連続させて成形するので、フランジ部12における一定の強度を確保した状態で複層管1を形成することができる。これにより、複層管1を、強度、軽量性、耐久性、及び耐腐食性のいずれにも優れたものとし、土砂等の摩耗性流体を移送するのに適したものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、両端部にフランジを備えたフランジ付き複層管に対して好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 フランジ付き複層管
11 直管本体部
12 フランジ部
2 軟質合成樹脂層
21 軟質合成樹脂材料
23 厚肉部
3 繊維強化樹脂層
31 長繊維材料
32 熱硬化性樹脂
34 環状突部
4 止水層
5 短管
51 軟質合成樹脂層
52 繊維強化樹脂層
6 金型
61 固定治具
62 支持部
63 挟持部
7 吐出ノズル
9 可撓性スリーブ
91 継手フランジ
92 連結ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法において、
円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ前記金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、前記直管本体部及びフランジ部の軟質合成樹脂層を一体の管状に形成する内層成形工程と、
熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して前記直管本体部及びフランジ部の繊維強化樹脂層を一体に形成する外層成形工程とを含み、
前記外層成形工程では、前記金型の両端部において、前記長繊維材料を鍔返し状に積層し、前記フランジ部を直管本体部に連続させて鍔状に成形することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項2】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法において、
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えたフランジ部付きの短管2つを、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面にそれぞれ対向させるとともに各短管のフランジ部を該金型の端部側に位置するように配置して該金型に装着し、
前記短管と短管との間の区間において、前記金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層を形成する内層成形工程と、
熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を管状に積層して繊維強化樹脂層を成形する外層成形工程とを含み、
前記外層成形工程では、前記長繊維材料を、各短管の外周面に部分的に重ね合わせて積層し、前記短管の繊維強化樹脂層と一体の繊維強化樹脂層を形成することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程では、前記軟質合成樹脂層を前記金型の両端部ほど厚肉に形成することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記短管のフランジ部を挟持しうる挟持部を備えた固定治具を前記金型に装着し、該金型の外周面に前記短管を仮固定することを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は3に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記外層成形工程では、前記軟質合成樹脂層の両端部を覆うように長繊維材料を積層し、前記軟質合成樹脂層の軸方向の端面を繊維強化樹脂層で被覆したことを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程は、軟質合成樹脂材料を前記金型に螺旋状に供給する第一工程と、供給した軟質合成樹脂材料が未硬化である間に軟質合成樹脂層の表面を均す第二工程とを含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程と前記外層成形工程との間に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を前記軟質合成樹脂層の表面に巻きつける工程を含むことを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程の後、層間の接着強度を高めるプライマーを、前記軟質合成樹脂層の外周面に塗布するプライマー塗布工程を含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記フランジ部の軸方向の端面に、軟質合成樹脂材からなる止水層を周設する工程を含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項10】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、
前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、
前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、
前記軟質合成樹脂層は、軸方向の端面が繊維強化樹脂層により被覆されていることを特徴とするフランジ付き複層管。
【請求項11】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、
前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、
前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、
前記軟質合成樹脂層は、軸方向の両端部に厚肉部を有することを特徴とするフランジ付き複層管。
【請求項1】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法において、
円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ前記金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、前記直管本体部及びフランジ部の軟質合成樹脂層を一体の管状に形成する内層成形工程と、
熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を積層して前記直管本体部及びフランジ部の繊維強化樹脂層を一体に形成する外層成形工程とを含み、
前記外層成形工程では、前記金型の両端部において、前記長繊維材料を鍔返し状に積層し、前記フランジ部を直管本体部に連続させて鍔状に成形することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項2】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備えるとともに繊維強化樹脂層を外層に備え、直管本体部と該直管本体部の両端部のフランジ部とを有するフランジ付き複層管の製造方法において、
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えたフランジ部付きの短管2つを、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面にそれぞれ対向させるとともに各短管のフランジ部を該金型の端部側に位置するように配置して該金型に装着し、
前記短管と短管との間の区間において、前記金型の外周面に、未硬化の軟質合成樹脂材料を吐出しつつ該金型の軸方向に吐出位置を移動させて軟質合成樹脂材料を螺旋状に供給し、管状の軟質合成樹脂層を形成する内層成形工程と、
熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料を管状に積層して繊維強化樹脂層を成形する外層成形工程とを含み、
前記外層成形工程では、前記長繊維材料を、各短管の外周面に部分的に重ね合わせて積層し、前記短管の繊維強化樹脂層と一体の繊維強化樹脂層を形成することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程では、前記軟質合成樹脂層を前記金型の両端部ほど厚肉に形成することを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記短管のフランジ部を挟持しうる挟持部を備えた固定治具を前記金型に装着し、該金型の外周面に前記短管を仮固定することを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は3に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記外層成形工程では、前記軟質合成樹脂層の両端部を覆うように長繊維材料を積層し、前記軟質合成樹脂層の軸方向の端面を繊維強化樹脂層で被覆したことを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程は、軟質合成樹脂材料を前記金型に螺旋状に供給する第一工程と、供給した軟質合成樹脂材料が未硬化である間に軟質合成樹脂層の表面を均す第二工程とを含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程と前記外層成形工程との間に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維シート状物を前記軟質合成樹脂層の表面に巻きつける工程を含むことを特徴とする複層管の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記内層成形工程の後、層間の接着強度を高めるプライマーを、前記軟質合成樹脂層の外周面に塗布するプライマー塗布工程を含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のフランジ付き複層管の製造方法において、
前記フランジ部の軸方向の端面に、軟質合成樹脂材からなる止水層を周設する工程を含むことを特徴とするフランジ付き複層管の製造方法。
【請求項10】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、
前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、
前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、
前記軟質合成樹脂層は、軸方向の端面が繊維強化樹脂層により被覆されていることを特徴とするフランジ付き複層管。
【請求項11】
耐摩耗性を有する軟質合成樹脂層を内層に備え、繊維強化樹脂層を外層に備えるフランジ付き複層管であって、
前記軟質合成樹脂層は、円柱状の外周面を有して軸まわりに回転する金型の外周面に、軟質合成樹脂材料が螺旋状に供給されて成形された管状体であり、
前記繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維材料が前記軟質合成樹脂層の外周面に積層されて形成され、
前記軟質合成樹脂層は、軸方向の両端部に厚肉部を有することを特徴とするフランジ付き複層管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−51361(P2012−51361A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98617(P2011−98617)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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